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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137138
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】物品検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/18 20180101AFI20230922BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20230922BHJP
【FI】
G01N23/18
G01N23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043181
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野々原 靖也
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 修
(72)【発明者】
【氏名】池田 真也
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA08
2G001FA02
2G001FA03
2G001FA08
2G001FA29
2G001HA13
2G001JA09
2G001JA16
2G001KA03
2G001KA05
2G001PA03
2G001PA11
(57)【要約】
【課題】物品検査装置に機差がある場合や各部品の経年劣化が生じた場合であっても、物品の検査での誤検知の発生を低減すること。
【解決手段】一実施形態に係る物品検査装置10は、物品Aに電磁波を照射する照射部15と、電磁波を検出する検出部16と、検出部16によって検出された電磁波の検出結果から電磁波画像を生成し、電磁波画像に基づいて物品Aを検査する検査部18とを備える。検査部18は、正常な物品Aの電磁波画像に対してコントラスト比を変更することによって複数の試験画像100を生成し、複数の試験画像100の各々に基づいて物品Aの検査を行い、検査結果が正常と判断された試験画像100に設定されているコントラスト比に基づいて実際の物品Aの検査に設定するコントラスト比を決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に電磁波を照射する照射部と、
前記電磁波を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記電磁波の検出結果から電磁波画像を生成し、前記電磁波画像に基づいて前記物品を検査する検査部と、を備え、
前記検査部は、
正常な前記物品の前記電磁波画像に対してコントラスト比を変更することによって複数の試験画像を生成し、
前記複数の試験画像の各々に基づいて前記検査を行い、
前記検査結果が正常と判断された前記試験画像に設定されている前記コントラスト比に基づいて、実際の前記検査に設定するコントラスト比を決定する、物品検査装置。
【請求項2】
前記検査部は、前記検査結果が正常と判断された前記試験画像に設定されているコントラスト比のうちの最も小さいコントラスト比を、前記実際の検査に設定するコントラスト比とする、請求項1に記載の物品検査装置。
【請求項3】
前記検査部は、前記検査結果が正常と判断された前記試験画像に設定されているコントラスト比のうちの所定値よりも小さいコントラスト比を表示させる、請求項1に記載の物品検査装置。
【請求項4】
前記検査部は、機械学習によって生成された学習済モデルに基づいて前記検査を行う、請求項1~3のいずれか一項に記載の物品検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機械学習で用いられたパラメータを保存し、かかるパラメータを用いて物品の検査を行うことで検査精度を向上させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-149653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、物品の検査を続けるうちに物品検査装置のX線管やセンサの経年劣化や物品検査装置の機差等により、保存しているパラメータを用いた物品の検査で誤検知が生じるケースがある。そして、かかるケースにおいて、作業者が、手動で、かかるパラメータの微調整を行うことは困難であるという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、物品検査装置の各部品の経年劣化が生じた場合や各物品検査装置に機差がある場合であっても、物品の検査での誤検知の発生を低減することができる物品検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る物品検査装置は、物品に電磁波を照射する照射部と、前記電磁波を検出する検出部と、前記検出部によって検出された前記電磁波の検出結果から電磁波画像を生成し、前記電磁波画像に基づいて前記物品を検査する検査部と、を備え、前記検査部は、正常な前記物品の前記電磁波画像に対してコントラスト比を変更することによって複数の試験画像を生成し、前記複数の試験画像の各々に基づいて前記検査を行い、前記検査結果が正常と判断された前記試験画像に設定されている前記コントラスト比に基づいて、実際の前記検査に設定するコントラスト比を決定することを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、物品検査装置の各部品の経年劣化が生じた場合や各物品検査装置に機差がある場合であっても、物品の検査での誤検知の発生を低減することができる物品検査装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る物品検査システム1の全体構成の一例を説明する図である。
図2図2は、一実施形態に係る物品検査装置10の検査部18によって生成された試験画像100の一例を示す図である。
図3図3は、一実施形態に係る物品検査システム1の動作の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
以下、図1図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る物品検査システム1について説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る物品検査システム1は、物品検査装置10と、振分装置30と、サーバ50とを備えている。
【0012】
物品検査システム1は、機械学習やディープラーニング等により生成される学習済モデルを用いて物品Aの検査を行うことができる。例えば、本実施形態では、かかる物品Aとして、鶏むね肉を想定するが、本発明は、他の物品Aを用いるケースにも適用可能である。
【0013】
物品検査装置10は、装置本体11と、支持脚12と、シールドボックス13と、搬送部14と、照射部15と、検出部16と、表示操作部17と、検査部18とを備えている。
【0014】
なお、本実施形態では、電磁波としてX線を用いるケースについて説明するが、本発明は、かかるケースに限定されるものではなく、電磁波として他のものが用いられていてもよい。
【0015】
図1に示すように、装置本体11は、検査部18等を収容している。支持脚12は、装置本体11を支持している。
【0016】
シールドボックス13は、装置本体11に設けられている。シールドボックス13は、外部へのX線の漏洩を防止する。シールドボックス13の内部には、 X 線による物品Aの検査が実施される検査領域Rが設けられている。シールドボックス13には、搬入口13a及び搬出口13bが形成されている。検査前の物品Aは、搬入コンベア19から搬入口13aを介して検査領域Rに搬入される。検査後の物品Aは、検査領域Rから搬出口13bを介して振分装置30のコンベア31に搬出される。搬入口13a及び搬出口13bのそれぞれには、X線の漏洩を防止するX線遮蔽カーテン(図示省略)が設けられている。
【0017】
図1に示すように、搬送部14は、シールドボックス13内に配置されている。搬送部14は、外部から搬送される物品Aを搬送する。具体的には、搬送部14は、搬入口13aから検査領域Rを介して搬出口13bまで、搬送方向Dに沿って物品Aを搬送する。搬送部14は、例えば、搬入口13aと搬出口13bとの間に掛け渡されたベルトコンベアである。
【0018】
図1に示すように、照射部15は、シールドボックス13内に配置されている。照射部15は、搬送中の物品Aに対してX線を照射する。照射部15は、例えば、X線を出射するX線管と、X線管から出射されたX線を搬送方向Dに垂直な面内において扇状に広げるコリメータとを有している。
【0019】
図1に示すように、検出部16は、シールドボックス13内に配置されている。検出部16は、物品Aを透過したX線を検知する。例えば、検出部16は、搬送方向Dに垂直な水平方向に沿って一次元に配列されたX線検出素子によって構成されているラインセンサである。検出部16は、物品A及び搬送部14の搬送ベルトを透過したX線を検出する。
【0020】
図1に示すように、表示操作部17は、装置本体11に設けられている。表示操作部17は、各種情報を表示すると共に、各種条件の入力を受け付ける。表示操作部17は、例えば、液晶ディスプレイであり、タッチパネルとしての操作画面を表示する。この場合、オペレータは、表示操作部17を介して各種パラメータを入力することができる。
【0021】
図1に示すように、検査部18は、装置本体11内に配置されている。なお、検出部18は、装置本体11の外部に設けられており、ネットワークNを介して表示操作部17や検出部16等と接続されていてもよい。
【0022】
検査部18は、検出部16によって検出された電磁波の検出結果から電磁波画像を生成し、かかる電磁波画像に基づいて物品Aを検査する。
【0023】
具体的には、検査部18は、正常な物品Aの電磁波画像に対してコントラスト比を変更することによって複数の試験画像100を生成する。例えば、検査部18は、上述の表示操作部17を介して入力されたパラメータに基づいて、3.1~4.9の範囲で、正常な物品A(鶏むね肉)の電磁波画像のコントラスト比を変更することによって複数の試験画像100を生成する(図2(A)~図2(E)参照)。
【0024】
ここで、コントラスト比は、最も明るい表示状態(白)と最も暗い表示状態(黒)の輝度(明るさ)の比率である。図2(A)~図2(E)に示すように、コントラスト比が低いほど、物品A全体が暗くなる傾向にある。
【0025】
検査部18は、生成した複数の試験画像100の各々に基づいて、物品検査を行う。具体的には、検査部18は、複数の試験画像100を学習済みモデルに入力することにより物品Aの検査を行う。
【0026】
ここで、学習済モデルは、入力された画像に対する物品Aの検査結果を示す情報を出力する。学習済モデルは、ニューラルネットワークを含む。また、学習モデルは、ディープラーニングによって生成されてもよい。
【0027】
例えば、検査部18は、かかる検査において、試験画像100内に異物等が含まれていることや、試験画像100内の物品Aが割れ欠けしていること等を検出する。
【0028】
検査部18は、上述の検査結果が正常と判断された試験画像100に設定されているコントラスト比に基づいて、実際の物品Aの検査に設定するコントラスト比を決定する。
【0029】
検査部18は、このように決定されたコントラスト比を自動的に設定して、実際の物品Aの検査を行ってもよい。また、表示操作部17が、このように決定されたコントラスト比を表示し、作業者による承認があった場合に、検査部18は、かかるコントラスト比を設定して、実際の物品Aの検査を行ってもよい。
【0030】
かかる構成によれば、物品検査装置10の機差による画像の明るさの違いや、物品検査装置10におけるX線管やセンサ等の経年劣化が生じた場合であっても、上述の試験画像100を用いたコントラスト比の再設定を行うことで、物品Aの検査での誤検知の発生を低減することができる。
【0031】
また、X線管やセンサ等の経年劣化の場合だけでなく、物品検査装置10に機差がある場合も、コントラスト比を調整することで他の物品検査装置10と共通の学習済モデルを使って適切に物品Aの検査を行うことができる。
【0032】
また、図2の例では、検査部18は、図2(A)の領域X1及び図2(B)の領域X2において異物等が含まれていると検出している。このように、一般的にみると、コントラスト比が低くなると異物等の誤検出が増え、コントラスト比が高くなるほど異物等の誤検出が少なくなることが分かる。ただし、コントラスト比を高くしすぎると、異物等の検出精度が低下していく傾向がある。
【0033】
したがって、検査部18は、上述の検査結果が正常と判断された試験画像100に設定されているコントラスト比のうちの最も小さいコントラスト比を、実際の物品Aの検査に設定するコントラスト比としてもよい。
【0034】
例えば、図2の例では、検査部18は、コントラスト比が4.0である試験画像(図2(C)参照)、コントラスト比が4.5である試験画像(図2(D)参照)及びコントラスト比が4.9である試験画像(図2(E)参照)の検査結果が正常であると判断する。したがって、図2の例では、検査部18は、コントラスト比が4.0を実際の物品Aの検査に設定するコントラスト比としてもよい。
【0035】
ここで、検査部18は、実際の物品Aの検査に設定するコントラスト比として4.0を自動的に設定してもよい。また、表示操作部17が、このように決定されたコントラスト比4.0を表示し、作業者による承認があった場合に、検査部18は、実際の物品Aの検査に設定するコントラスト比として4.0を設定してもよい。
【0036】
また、検査部18は、上述の検査結果が正常と判断された試験画像100に設定されているコントラスト比のうちの所定値よりも小さいコントラスト比を表示操作部17に表示させてもよい。また、検査部18は、かかるコントラスト比に対応する試験画像100についても併せて表示操作部17に表示させてもよい。
【0037】
図2の例では、検査部18は、コントラスト比4.0、4.5、4.9を表示操作部17に表示させる。かかる構成によれば、作業者は、表示されたコントラスト比(及び、各コントラスト比に対応する試験画像100)を見ながら、実際の物品Aの検査に設定する最適なコントラスト比を設定することができる。
【0038】
図1に示すように、振分装置30は、物品検査装置10よりも下流側に設けられている。振分装置30は、コンベア31に設けられている。振分装置30は、物品検査装置10から出力された振分信号に基づいて、物品Aを振り分ける。振分装置30は、光電センサ32と、アーム33と、を有している。
【0039】
光電センサ32は、物品Aの通過を検知するセンサである。光電センサ32は、アーム33の上流側に設置されており、振分装置30への物品Aの搬入を検知する。光電センサ32は、投光器から受光器に出射された光が物品Aで遮光された場合に、物品Aが振分装置30に到達したとして、信号を物品検査装置10に送信する。
【0040】
アーム33は、例えば、モータ等の駆動力により基端側を基軸に先端が揺動する。アーム33は、コンベア31の幅方向における一方側へ物品Aを押し出し、当該物品Aを生産ライン外に振り分ける。
【0041】
図1に示すように、サーバ50は、機械学習やディープラーニング等によって学習済モデルを生成する装置である。サーバ50は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等で構成されている。
【0042】
図1に示すように、サーバ50は、通信部51と、学習済モデル生成部52と、を備えている。ここで、物品検査装置10とサーバ50とは、有線又は無線のネットワークNによって通信可能に接続されており、互いに情報の送受信を行うことができる。
【0043】
通信部51は、物品検査装置10と通信を行う。通信部51は、物品検査装置10から送信された学習データを受信して、学習済モデル生成部52に出力する。通信部51は、学習済モデル生成部52から出力された学習済モデルを物品検査装置10に送信する。
【0044】
学習済モデル生成部52は、機械学習やディープラーニング等に用いる学習データを取得して、取得した学習データを用いて機械学習やディープラーニング等を行って学習済モデルを生成する。ここで、学習データは、教師画像を含む。
【0045】
教師画像は、例えば、物品検査装置10において生成された試験画像100等である。
【0046】
なお、学習モデルは、物品検査装置10内ではなく、サーバ50内に保存されていてもよい。かかる場合、物品検査装置10の検査部18は、ネットワークNを介して、サーバ50内に保存されている学習済モデルに試験画像100を入力し、上述の検査結果をサーバ50から取得する。
【0047】
以下、図3を参照して、本実施形態に係る物品検査装置10の動作の一例について説明する。
【0048】
図3に示すように、サーバ50は、ステップS1001において、上述のように学習済モデルを生成して、ステップS1002において、かかる学習済モデルを物品検査装置10に送信する。
【0049】
ステップS1003において、物品検査装置10は、実際の物品Aの検査を開始する前に、正常な物品Aを撮像して電磁波画像を取得し、かかる電磁波画像のコントラスト比を3.1から4.9まで0.1刻みで変化させることで複数の試験画像100を生成する。
【0050】
ステップS1004において、物品検査装置10は、複数の試験画像100を用いて検査を行う。
【0051】
ステップS1005において、物品検査装置10は、検査結果が正常であると判断された試験画像(異物等の誤検出が無いと判断された試験画像)に設定されているコントラスト比を抽出し、抽出したコントラスト比のうちの最も小さいコントラスト比を、実際の検査に設定するコントラスト比として決定し設定する。
【0052】
なお、物品検査装置10は、ステップS1003~S1005の処理を繰り返して、実際の検査に設定するコントラスト比を設定してもよい。
【0053】
ステップS1006において、物品検査装置10は、搬送中の物品Aに電磁波を照射し、かかる電磁波を検出し、検出された電磁波の検出結果から電磁波画像を生成する。
【0054】
ステップS1007において、物品検査装置10は、かかる電磁波画像に基づいて物品Aを検査する。
【0055】
本実施形態によれば、物品検査装置10の各部品の経年劣化が生じた場合であっても、物品Aの検査での誤検知の発生を低減することができる。
【0056】
上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0057】
1…物品検査システム
10…物品検査装置
11…装置本体
12…支持脚
13…シールドボックス
14…搬送部
15…照射部
16…検出部
17…表示操作部
18…検査部
30…振分装置
100…試験画像
A…物品
図1
図2
図3