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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137164
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】消火用スライドシャッター
(51)【国際特許分類】
   A62C 2/06 20060101AFI20230922BHJP
   E06B 9/06 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A62C2/06 502
E06B9/06 610A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043225
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】391060524
【氏名又は名称】有限会社手島通商
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100226713
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】手島 浩光
(72)【発明者】
【氏名】手島 万里
(57)【要約】      (修正有)
【課題】迅速な消火と、近隣への影響の排除と、水や消火剤への非依存とを達成可能な新しい消火装置を提供する。
【解決手段】入れ子状態に収納されている複数の枠体10Aと天井板20Aによって対象物Tを外気と遮断して消火する消火用スライドシャッター1であって、吊持具30と、保持機構である牽引具40と、連結構造50Aと、を有し、前記連結構造50Aにより前記複数の枠体10Aが連結状態のまま上下方向にスライド可能に連結されるとともに前記保持機構の解除により前記複数の枠体10Aが連結された状態で下方に向けてスライド展開する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入れ子状態に収納されている複数の枠体が、燃焼している対象物の上方から下方に順次スライド展開して前記対象物の周囲を囲むとともに、最も内側または外側に位置する前記枠体に天井板が設けられていることにより前記対象物を外気と遮断して消火する消火用スライドシャッターであって、
前記枠体または前記天井板を上方から吊持する吊持具と、
展開前の前記複数の枠体を入れ子状態に保持する保持機構と、
隣接する前記枠体における互いに接する側面間に形成された連結構造と、
を有し、
前記連結構造により前記複数の枠体が連結状態のまま上下方向にスライド可能に連結されるとともに前記保持機構の解除により前記複数の枠体が連結された状態で下方に向けてスライド展開することを特徴とする消火用スライドシャッター。
【請求項2】
前記保持機構が、最も外側または内側に位置する前記枠体に取り付けられたひも状の牽引具からなり、前記牽引具を上方に牽引することにより前記複数の枠体が入れ子状態に収納され、前記牽引具の開放により前記複数の枠体が連結された状態で下方に向けてスライド展開することを特徴とする請求項1記載の消火用スライドシャッター。
【請求項3】
前記天井板に、前記対象物の上方から消火用物質を放出する放出具用の取付口を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の消火用スライドシャッター。
【請求項4】
前記連結構造が、互いに接する一方の前記側面に形成されたスライド方向に延びる長孔と、他方の前記側面の対向位置に形成された固定孔と、軸部の両端に大径の頭部を有する連結具とからなり、前記長孔は内周面に形成された段部により幅狭長孔部と幅広長孔部とを有し、また前記固定孔は内周面に形成された段部により小径孔部と大径孔部とを有し、前記連結具の前記軸部は前記長孔の幅狭長孔部および前記固定孔の小径孔部に挿通されるとともに、前記頭部は前記幅広長孔部および前記大径孔部にそれぞれ収納され、前記幅広長孔部に収納された前記頭部が前記幅広長孔部内をスライド可能であることにより隣接する前記枠体を相互に所定の距離だけ上下方向にスライド可能に連結することを特徴とする請求項1,2または3記載の消火用スライドシャッター。
【請求項5】
前記連結構造が、スライドの戻りを規制するロック機構を有し、前記枠体がスライド展開して伸長した状態を保持することが可能であるロック機構付きの連結構造であって、
互いに接する一方の前記側面に形成されたスライド方向に延びる長孔と、他方の前記側面の対向位置に形成された固定孔と、軸部の両端に大径の頭部を有する連結具とからなり、前記長孔は内周面に形成された段部により幅狭長孔部と幅広長孔部とを有し、また前記固定孔は内周面に形成された段部により小径孔部と大径孔部とを有し、前記連結具の前記軸部は前記長孔の幅狭長孔部および前記固定孔の小径孔部に挿通されるとともに、前記頭部は前記幅広長孔部および前記大径孔部にそれぞれ収納され、前記幅広長孔部に収納された前記頭部が前記幅広長孔部内をスライド可能であり、
さらに、前記連結具の軸部にロック用突部が形成されるとともに、前記長孔の幅狭長孔部のスライド方向端に孔幅が拡張された回転部が形成され、前記回転部のスライド方向側内周面には前記軸部が当接することで当該軸部を回転させるガイド面が、また前記回転部のスライド方向反対側内周面には回転した前記軸部のロック用突部が係止してスライドの戻りを規制する係止段部が形成され、スライドを終結した前記枠体の伸長状態を保持することを特徴とする請求項1,2または3記載の消火用スライドシャッター。
【請求項6】
最も外側または内側に位置する前記枠体の下端が不燃性柔軟モップ状であることを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載の消火用スライドシャッター。
【請求項7】
シート状の不燃カバーが前記天井板または前記枠体に少なくとも一端を固定した状態で備えられており、前記枠体の展開に合わせて前記不燃カバーが下方に広がり前記複数の枠体に形成された連結機構を外側から覆うことを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6記載の消火用スライドシャッター。
【請求項8】
筒状の不燃カバーが前記天井板または前記枠体に少なくとも一端を固定した状態で備えられており、前記枠体の展開に合わせて前記不燃カバーが下方に広がり前記複数の枠体の周囲を囲むことを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6記載の消火用スライドシャッター。
【請求項9】
前記吊持具を移動手段に連結したことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7または8記載の消火用スライドシャッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物や山林などが火災を生じた際に迅速に消火するための装置である消火用スライドシャッターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物や山林などが火災を生じた際は、消防車などの消火装置を用いて、水や消火剤を散布することにより消火を試みるものである。
【0003】
火災が生じた際には消防車などの消火装置が迅速に現場に到着することが求められるが、従来の消火手段では消火までに時間を要することがあった。
【0004】
特に、消防署などから遠い地域や道路整備の整わない地域、あるいは建築物が隣接する住宅街においては道路の道幅や混雑状況によって消防車の到着が遅れることや、うまく間に合ったとしても放水による近隣住宅への影響(水損)が生じることなどのリスクが懸念され、且つ消火のためには大量の水や消火剤も必要とするものだった。
【0005】
また、山林においては近隣への影響を気にする必要は無くなるものの、水源が近隣に存在しない場合もあり、消火活動が円滑に行えない場合もあった。
【0006】
防火防炎の用途としては、例えば特開平4-51969号公報(特許文献1)に記載された発明のように、ビルなどの建築物における火災発生時に延焼を防止するための防火シャッターが知られているが、予め設置した箇所にしか使用することができず、且つ、火災発生箇所と他の部分とを遮断して炎や煙の到達を防ぐのみであって、効果が限定的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4-51969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、迅速な消火と、近隣への影響の排除と、水や消火剤への非依存とを達成可能な新しい消火装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するためになされた本発明は、入れ子状態に収納されている複数の枠体が、燃焼している対象物の上方から下方に順次スライド展開して前記対象物の周囲を囲むとともに、最も内側または外側に位置する前記枠体に天井板が設けられていることにより前記対象物を外気と遮断して消火する消火用スライドシャッターであって、前記枠体または前記天井板を上方から吊持する吊持具と、展開前の前記複数の枠体を入れ子状態に保持する保持機構と、隣接する前記枠体における互いに接する側面間に形成された連結構造と、を有し、前記連結構造により前記複数の枠体が連結状態のまま上下方向にスライド可能に連結されるとともに前記保持機構の解除により前記複数の枠体が連結された状態で下方に向けてスライド展開することを特徴とする。
【0010】
上記本発明によれば、展開した枠体と天井板によって燃焼している対象物の周囲を覆い隠し、前記対象物を含んだ内部空間と外気とを遮断して酸素の供給を断つことによって消火することが可能となるため、迅速で、近隣への影響も無く、水や消火剤を用いることなしに前記対象物を消火することが可能となる。
【0011】
また、前記保持機構が、最も外側または内側に位置する前記枠体に取り付けられたひも状の牽引具からなり、前記牽引具を上方に牽引することにより前記複数の枠体が入れ子状態に収納され、前記牽引具の開放により前記複数の枠体が連結された状態で下方に向けてスライド展開する場合、内部に動力源を要しない非常に簡易かつ堅実な構造によって保持機構を構成することが可能となり、使用後に前記複数の枠体を入れ子状態に復帰させることも容易となる。
【0012】
更に、前記天井板に、前記対象物の上方から消火用物質を放出する放出具用の取付口を形成した場合、例えば水または消火剤などの消火用物質によって消火を行うことも可能となるため、それらの使える環境においてはより迅速かつ安全に消火することができる。
【0013】
また、前記連結構造が、互いに接する一方の前記側面に形成されたスライド方向に延びる長孔と、他方の前記側面の対向位置に形成された固定孔と、軸部の両端に大径の頭部を有する連結具とからなり、前記長孔は内周面に形成された段部により幅狭長孔部と幅広長孔部とを有し、また前記固定孔は内周面に形成された段部により小径孔部と大径孔部とを有し、前記連結具の前記軸部は前記長孔の幅狭長孔部および前記固定孔の小径孔部に挿通されるとともに、前記頭部は前記幅広長孔部および前記大径孔部にそれぞれ収納され、前記幅広長孔部に収納された前記頭部が前記幅広長孔部内をスライド可能であることにより隣接する前記枠体を相互に所定の距離だけ上下方向にスライド可能に連結する場合、動力源などを要しない非常に簡易かつ堅実な構造によって連結構造を構成することが可能となる。
【0014】
あるいは、前記連結構造が、スライドの戻りを規制するロック機構を有し、前記枠体がスライド展開して伸長した状態を保持することが可能であるロック機構付きの連結構造であって、互いに接する一方の前記側面に形成されたスライド方向に延びる長孔と、他方の前記側面の対向位置に形成された固定孔と、軸部の両端に大径の頭部を有する連結具とからなり、前記長孔は内周面に形成された段部により幅狭長孔部と幅広長孔部とを有し、また前記固定孔は内周面に形成された段部により小径孔部と大径孔部とを有し、前記連結具の前記軸部は前記長孔の幅狭長孔部および前記固定孔の小径孔部に挿通されるとともに、前記頭部は前記幅広長孔部および前記大径孔部にそれぞれ収納され、前記幅広長孔部に収納された前記頭部が前記幅広長孔部内をスライド可能であり、さらに、前記連結具の軸部の対向位置にロック用突部が形成されるとともに、前記長孔の幅狭長孔部のスライド方向端に孔幅が拡張された回転部が形成され、前記回転部のスライド方向側内周面には前記軸部が当接することで当該軸部を回転させるガイド面が、また前記回転部のスライド方向反対側内周面には回転した前記軸部のロック用突部が係止してスライドの戻りを規制する係止段部が形成され、スライドを終結した前記枠体の伸長状態を保持する場合、動力源などを要しない非常に簡易かつ堅実な構造によって連結構造を構成するとともに、ロック機構を有していることによって前記枠体が展開後の状態を自立して維持することができるため、特に、可燃性物質や化学物質などの危険物を有し、爆発や有毒ガスなどが生じる危険のある火災現場において、設置後すみやかにその場から離れられるため、安全を確保しつつ消火することが可能となる。
【0015】
また、最も外側または内側に位置する前記枠体の下端が不燃性柔軟モップ状である場合、展開時に前記不燃性柔軟モップ状の部材が接地することによって緩衝効果を発揮するとともに密着性を高めることができる。
【0016】
更に、シート状の不燃カバーが前記天井板または前記枠体に少なくとも一端を固定した状態で備えられており、前記枠体の展開に合わせて前記不燃カバーが下方に広がり前記複数の枠体に形成された連結機構を外側から覆う場合、前記連結機構に空隙があったとしても前記不燃カバーによって覆うことでその空隙を埋めて外気の供給を遮断することができる。
【0017】
また、筒状の不燃カバーが前記天井板または前記枠体に少なくとも一端を固定した状態で備えられており、前記枠体の展開に合わせて前記不燃カバーが下方に広がり複数の前記枠体の周囲を囲む場合、前記枠体に加えて筒状の前記不燃カバーによって前記対象物の周囲を二重に覆い外気と遮断することが可能となるため、より確実に前記対象物を消火することが可能となる。
【0018】
更に、前記吊持具を移動手段に連結した場合、例えばヘリコプターやクレーン車などの移動手段を用いて燃焼している対象物の上方へと本発明である消火用スライドシャッターを運んで使用することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、迅速で、近隣への影響も無く、水や消火剤を用いることなしに燃焼している対象物を消火することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施の形態を示す斜視図。
図2図1に示した実施の形態を示す平面図。
図3図1に示した実施の形態を示す正面図。
図4図1に示した実施の形態における枠体のうち1つを示す斜視図。
図5図1に示した実施の形態における枠体の展開状態を示す斜視図。
図6図3におけるA-A線部分拡大断面図。
図7図3におけるB-B線部分拡大断面図。
図8図1に示した実施の形態における連結構造を構成する連結具を示す(a)分解斜視図および(b)組立状態の斜視図。
図9図1に示した実施の形態の使用状態を示す斜視図。
図10図1に示した実施の形態の運搬状態を示す説明図であり、(a)はヘリコプターによる運搬状態、(b)はクレーン車による運搬状態。
図11】中継具を追加した本発明の第2の実施の形態を示す斜視図。
図12図11に示した実施の形態の枠体展開後の斜視図。
図13】正方形の枠体を用いた本発明の第3の実施の形態を示す斜視図。
図14図13に示した実施の形態の使用状態を示す斜視図。
図15】ロック機構付きの連結構造を用いた本発明の第4の実施の形態の枠体の展開状態を示す斜視図。
図16図15に示した実施の形態における連結構造を構成する連結具を示す(a)分解斜視図および(b)組立状態の斜視図。
図17図15に示した実施の形態において連結構造を構成する長孔および固定孔を示す部分拡大図。
図18図15に示した実施の形態においてロック機構によりスライドを終結した枠体をロックする様子を示す説明図。
図19】シート状の不燃カバー、不燃性柔軟モップ状の緩衝部材および消火用物質の放出具用の取付口を備えた本発明の第5の実施の形態を示す斜視図。
図20図19に示した実施の形態の使用状態を示す斜視図。
図21図19に示した実施の形態の使用状態を示す断面図。
図22】補助枠を追加した本発明の第6の実施の形態を示す斜視図。
図23】筒状の不燃カバーを用いた本発明の第7の実施の形態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、本明細書に示す実施の形態は一例であり、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。
【0022】
図1乃至図10は、本発明である消火用スライドシャッターの第1の実施の形態を示す図である。
【0023】
これら図に示すように、消火用スライドシャッター1は、建築物などが火災を生じた際に迅速に消火するための装置であって、入れ子状態に収納されておりスライド展開が可能な複数の枠体10Aと、前記枠体10Aのうち最も内側の枠体10jに設けられた天井板20Aと、最も内側に位置する前記枠体10jまたは前記天井板20Aを上方から吊持する吊持具30と、前記枠体10Aを入れ子状態に保持する保持機構である牽引具40と、隣接する前記枠体10Aの互いに接する側面間に形成された連結構造50Aと、を有する。
【0024】
前記複数の枠体10Aを構成する各枠体は、板状体を組み合わせて製造され、2対4枚の平板部11を向き合わせて前記各平板部11の隣接する辺同士を各角部12が直角となるように接続した平面視矩形を呈し、難燃性かつ軽量である金属などを材料として形成される(図4参照)。
【0025】
なお、枠体のサイズによっては、板状体の組み合わせによる製造ではなく、一体成型によって製造するものとしてもよい(図示せず)。
【0026】
前記各枠体は入れ子状態に収納可能となるように互いの大きさが異なり、入れ子状態とした際に外側から内側に向けて連なる第1の枠体10a,第2の枠体10b,第3の枠体10c…は徐々に横幅および縦幅が小さくなる構造である。なお、前記複数の枠体10Aの個数として、本実施の形態では10個の枠体を用いるものであるが、2個以上の任意の個数に増減して実施することが可能である。
【0027】
前記天井板20Aは、板状体を組み合わせて製造され、水平部21と前記水平部21の四方に配置された傾斜部22とからなり、四角錐台形を呈する。
【0028】
なお、前記天井板20Aの形状は四角錐台形を呈するものとすることで強度の向上と内部容積の向上を実現できるため最も好適であるが、その他の形状としたものであっても問題なく実施可能である(図示せず)。
【0029】
前記吊持具30は、ワイヤーなどのひも状部材が使用可能である。前記吊持具30によって前記天井板20Aを定位置に保持しておくことで、前記複数の枠体10Aのスライド展開が可能となる。
【0030】
前記天井板20Aの前記水平部21の四隅には、前記吊持具30を取り付け可能な取付具31が設置されており、例えばヘリコプターやクレーン車などの移動手段90に前記吊持具30の一端を連結し、他端を前記取付具31に取り付けることで消火用スライドシャッター1を運搬して使用することが可能となる。
【0031】
前記保持機構は、最も外側に位置する前記枠体10aの四隅に取り付けられたひも状の牽引具40からなり、前記牽引具40を上方に牽引することにより前記複数の枠体10Aが入れ子状態となり、前記牽引具40の開放により前記複数の枠体10Aが連結された状態で下方に向けてスライド展開するものである。
【0032】
このように、ひも状の牽引具を用いることで内部に動力源を要しない非常に簡易かつ堅実な構造によって保持機構を構成可能であるとともに、使用後に前記複数の枠体10Aを入れ子状態に復帰させることも容易となる。
【0033】
前記連結構造50Aは、互いに接する前記枠体のうち、一方の枠体の側面に形成されたスライド方向に延びる長孔60Aと、他方の枠体の側面の対向位置に形成された固定孔70と、軸部83の両端に大径の頭部82,85を有する連結具80Aとからなる。
【0034】
すなわち、互いに接する前記枠体のうち、外側に位置する第1の枠体10aに長孔60Aが形成されているとき、内側に位置する第2の枠体10bには前記長孔60Aに対向する位置に固定孔70が形成される。
【0035】
同時に、前記第2の枠体10bに前記固定孔70とは反対の面且つ離間した位置に長孔60Aが形成されているとき、前記第2の枠体10bよりも更に内側に位置する第3の枠体10cには、前記長孔60Aの近傍に固定孔70が形成される。
【0036】
前記連結構造50Aを構成する前記長孔60Aは、枠体間の対向面側に開口した幅狭長孔部61と、当該幅狭長孔部61に厚み方向に連設される前記幅狭長孔部61よりも幅広の幅広長孔部62と、前記幅狭長孔部61と前記幅広長孔部62の間に位置する段部63とを有する、二段構造の長孔に形成される。
【0037】
前記連結構造50Aを構成する固定孔70は、枠体間の対向面側に開口した小径孔部71と、当該小径孔部71に厚み方向に連設される前記小径孔部71よりも幅広の大径孔部72と、前記小径孔部71と前記大径孔部72の間に位置する段部73とを有する、二段構造の丸孔に形成される。
【0038】
尚、前記長孔60Aの幅狭長孔部61の幅と前記固定孔70の小径孔部71の幅はほぼ同じ幅に形成される。
【0039】
また、前記連結構造50Aを構成する前記連結具80Aは、円柱状の軸部83と、当該軸部83の両端に位置する大径円板状の頭部82,85と、を有する断面I字形に形成されている。
【0040】
前記連結具80Aの前記軸部83は前記長孔60Aの幅狭長孔部61および前記固定孔70の小径孔部71に挿通されるとともに、前記頭部82,85は前記幅広長孔部62および前記大径孔部72にそれぞれ収納され、前記幅広長孔部62に収納された前記頭部82が前記幅広長孔部62内をスライド可能であることにより隣接する前記枠体を相互に所定の距離だけ上下方向にスライド可能に連結しており、動力源などを要しない非常に簡易かつ堅実な構造によって連結構造を構成することが可能となる(図6および図7参照)。
【0041】
なお、前記連結構造50Aを構成する連結具80Aを前記固定孔70および前記長孔60Aに装着するには、一方の頭部85を軸部83から取り外し、前記軸部83を前記固定孔70および前記長孔60Aに挿入して、取り外した頭部85を再度取り付けて装着するものであり、本実施の形態における前記連結具80Aは、図8(a)の分解斜視図に示すように、一方の頭部82に軸部83が突設された凸部品81と、もう一方の頭部85に嵌合穴86が形成された凹部品84と、前記凸部品81および前記凹部品84を嵌合させた状態で固定する固定ねじ87とからなる構成である。
【0042】
尚、本実施の形態における連結具は、一方の頭部に雄ネジを有する軸部が突設された凸部品と、もう一方の頭部に雌ネジが形成された凹部品からなる構成としてもよく(図示せず)、2つの頭部と1つの軸部を別部材で構成した3ピース構成としてもよく(図示せず)、その他従来周知の構成により形成可能であるが、熱や衝撃により分解や破損を生じづらい構造であることが望ましい。
【0043】
本実施の形態において、前記連結構造50Aは、前記枠体の四方に1つずつ(合計4つ)形成されているが、これに限定されるものではなく、所望の大きさや強度に応じて適宜増減が可能である。例えば、故障に備えてより強固にしたい場合、前記連結構造の数を増加させるとよい(図示せず)。
【0044】
前記長孔60Aと前記固定孔70は第1の枠体10a,第2の枠体10b,第3の枠体10c…と外側から内側に向けて枠体が連なっていくなかで隣接する枠体間に互い違いに形成されており、前記長孔60Aと前記固定孔70が連通した状態で前記連結具80Aを挿通して留めることで、前記連結構造50Aが構成され、この連結構造50Aが各枠体に順次繰り返して形成されていることにより、消火用スライドシャッター1を構成する枠体10Aの各枠体は全てスライド可能に連結されている。
【0045】
尚、前記長孔60Aおよび前記固定孔70間に嵌挿させた前記連結具80Aの前記頭部82,85は当該長孔60Aの幅広長孔部61および前記固定孔70の大径孔部71内に収納されているため、隣接する枠体同士のスライド動作を妨げない。
【0046】
このように、本実施の形態の消火用スライドシャッター1における前記複数の枠体10Aは、前記長孔60Aと、前記固定孔70と、前記連結具80Aとからなる連結構造50Aにより、互いに重なる枠体が容易且つ確実に上下方向にスライドして伸長することができる。
【0047】
図9は、本発明である消火用スライドシャッター1の第1の実施の形態の使用状態を示す図である。
【0048】
この図に示すように、建築物等である対象物Tの上方に消火用スライドシャッター1を位置させた後に、前記保持機構である牽引具40による前記複数の枠体10Aの保持を解除することによって、入れ子状態に収納された前記複数の枠体10Aが順次スライド移動して展開し、前記対象物Tの周囲を覆い、前記対象物Tを含んだ内部空間と外気とを遮断する。
【0049】
すなわち、この消火用スライドシャッター1は、前記対象物Tを含んだ内部空間と外気とを遮断することによって、燃焼に必要な酸素を欠乏させることで前記対象物Tの消火を図ることができ、迅速な消火と、近隣への影響の排除と、水や消火剤への非依存とを達成可能な新しい消火装置である。
【0050】
なお、前記保持機構である牽引具40による前記複数の枠体10Aの保持を解除するにあたっては、展開速度を重視する場合には、前記牽引具40による保持の解除後に一切の制御をせずに重力による自由落下に任せて枠体を展開することも可能であるが、衝撃を緩和したい場合には、前記牽引具40をウィンチなどの繰出・巻取速度を制御可能な装置に取り付けておき、保持の解除後に速度の制御をしながら前記複数の枠体10Aを展開することが可能となるとともに、使用後に前記ウィンチを逆方向に回転させることで前記複数の枠体10Aを入れ子状態に復帰させることも容易となる(図示せず)。
【0051】
図10は、本発明である消火用スライドシャッター1の第1の実施の形態の運搬状態を示す図である。
【0052】
消火用スライドシャッターを運搬するための移動手段90として、具体的には、図10(a)は移動手段としてヘリコプター91を用い、前記ヘリコプター91と消火用スライドシャッター1とを前記吊持具30で連結して吊り下げる方法を示し、図10(b)は移動手段としてクレーン車92を用い、前記クレーン車92と消火用スライドシャッター1とを前記吊持具30で連結して吊り下げる方法を示す。これら移動手段90によって、建築物等である対象物Tの上方まで消火用スライドシャッター1を運搬することができ、その後前記保持機構である牽引具40による前記複数の枠体10Aの保持を解除することで使用するものである。
【0053】
図11および図12は、本発明の第2の実施の形態である、前記天井板20Aに中継具41を追加した消火用スライドシャッター2を示す図である。
【0054】
本実施の形態における保持機構は、最も外側に位置する前記枠体10aの四隅に取り付けられたひも状の牽引具40と、前記天井板20Aの四隅に配置された中継具41と、からなる。前記中継具41は、滑車などを用いることができる。
【0055】
前記保持機構によれば、前記牽引具40を前記中継具41に挿通して上方に牽引することにより前記複数の枠体10Aが入れ子状態となり、前記牽引具40の開放により前記複数の枠体10Aが連結された状態で下方に向けてスライド展開するものであり、内部に動力源を要しない非常に簡易かつ堅実な構造であって、前記中継具41を設けたことによって前記牽引具40がガイドされることでより確実に動作可能な保持機構を構成することが可能となり、使用後に前記複数の枠体10Aを入れ子状態に復帰させることも容易となる。
【0056】
図13および図14は、本発明の第3の実施の形態である、正方形型の消火用スライドシャッター3を示す図である。
【0057】
これら図に示すように、複数の枠体10Bの平面視形状を正方形とすることも可能であり、天井板20Bの平面視形状も、前記枠体10Bの平面視形状に合わせて正方形としている。
【0058】
前記枠体10Bおよび前記天井板20Bの構造および動作については、平面視形状が長方形の枠体を用いた前記消火用スライドシャッター1と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0059】
正方形型である消火用スライドシャッター3は、短辺がほぼ同じ長さの長方形型である消火用スライドシャッター1と比較した場合に小型であることから、例えば建築物の密集した住宅地において使用する際に、対象物Tとなる建築物の近隣の建築物との干渉を避けて使用することが可能であるという利点を有している。
【0060】
なお、その他所望の目的やコストなどに応じて枠体の形状は適宜選択可能であって、例えば、略円形の枠体を有する円形型の消火用スライドシャッターとすることも可能である(図示せず)。
【0061】
図15乃至図18は、本発明の第4の実施の形態である、ロック機構付きの連結構造を用いた消火用スライドシャッター4を示す図である。
【0062】
本実施の形態における連結構造50Bは、スライドの戻りを規制するロック機構を有し、前記枠体10Aがスライド展開して伸長した状態を保持することが可能である。そのため、図15に示すように、本実施の形態における展開後の枠体10Aは、ロック機構によりスライドした状態を維持し、吊持具30による牽引を解除したとしても展開後の状態を自立して維持することが可能であるため、特に、可燃性物質や化学物質などの危険物を有し、爆発や有毒ガスなどが生じる危険のある火災現場において、設置後すみやかにその場から離れられるため、安全を確保しつつ消火することが可能となる。
【0063】
本実施の形態におけるロック機構付きの連結構造50Bは、互いに接する前記枠体10Aのうち、一方の枠体の側面に形成されたスライド方向に延びる長孔60Bと、他方の枠体の側面の対向位置に形成された固定孔70と、軸部83の両端に大径の頭部82,85を有する連結具80Bとからなる。
【0064】
前記長孔60Bは内周面に形成された段部63により幅狭長孔部61と幅広長孔部62とを有し、また前記固定孔70は内周面に形成された段部73により小径孔部71と大径孔部72とを有し、前記連結具80Bの前記軸部83は前記長孔60Bの幅狭長孔部61および前記固定孔70の小径孔部71に挿通されるとともに、前記頭部82.85は前記幅広長孔部62および前記大径孔部72にそれぞれ収納され、前記幅広長孔部62に収納された前記頭部82が前記幅広長孔部62内をスライド可能であり、基本的な部分については前記連結構造50Aと同一である。
【0065】
ロック機構は、前記連結具80Bの軸部83に対称形に形成されたロック用突部89,89(図16参照)と、前記長孔60Bの幅狭長孔部61のスライド方向端に孔幅が拡張されて形成された回転部65(図17参照)とからなる。
【0066】
前記回転部65は、スライド方向側内周面においてスライド方向側に傾斜して形成されたガイド面66と、スライド方向反対側内周面において形成された係止段部67とからなる。
【0067】
このロック機構によれば、前記軸部83(前記ロック用突部89,89)が前記ガイド面66に接触しながら移動することで前記連結具80Bごと軸回転し、回転後の前記ロック用突部89,89が前記係止段部67に係止することで前記連結具80Bが前記回転部65内に保持される。したがって、スライドの戻りを規制し、スライドを終結した前記枠体の伸長状態を保持するものである。
【0068】
図18は、本実施の形態においてロック機構によりスライドを終結した枠体をロックする様子を示す説明図である。
【0069】
図18(a)に示すように、回転部65は、枠体10Aに形成される前記長孔60Bにおけるスライド方向の端部において、幅狭長孔部の幅W1以上且つ幅広長孔部の幅W2以下の幅W3に拡張して形成されている。
【0070】
図18(a)から更に枠体10Aがスライドすると、図18(b)に示すように、前記連結具80Bの前記ロック用突部89,89がガイド面66に接触してスライドをほぼ終結した状態となる。このとき、前記ガイド面66に前記連結具80Bの前記ロック用突部89,89が接触しながら傾斜方向に案内されることで、前記連結具80Bが軸回転する。
【0071】
図18(c)はスライドを終結した枠体の連結具80Bが軸回転してロック機構が作動した状態を示す図である。このとき前記回転部65のスライド方向反対側内周面には係止段部67が形成されており、前記幅狭長孔部の幅W1よりもロック用突部の幅W4の方が幅広であるため、前記ロック用突部89,89が前記係止段部67に接触して前記連結具80Bが前記回転部65内から脱出できず保持されることによってスライドを終結した枠体は伸長状態を保持される。
【0072】
図19乃至図21は、本発明の第5の実施の形態である、不燃カバー、不燃性柔軟モップ状の緩衝部材および放出具用の取付口を備えた消火用スライドシャッター5を示す図である。
【0073】
図19の使用状態を示す図に示すように、消火用スライドシャッター5は、枠体10Aの上側に備えられたシート状の不燃カバー100と、前記枠体10Aの下側に備えられた不燃性柔軟モップ状の緩衝部材14と、天井板20Aの中央に備えられた消火用物質の放出具用の取付口24とを有している。
【0074】
前記不燃カバー100は、不燃性または難燃性と、柔軟性とを有する素材で形成されており、例えばガラス繊維を織物にしたシートなどを使用することができ、展開時に前記連結構造を覆うように、四方に配置されている。使用前は、ロール状または蛇腹状に収納されており、少なくとも一端を前記枠体10Aまたは前記天井板20Aに固定しておく。
【0075】
本実施の形態においては、前記天井板20Aに前記不燃カバー100の一端101を固定し、他端102は自由にしておくことで、前記複数の枠体10Aが伸長状態となった際に前記他端102側が落下することによって前記不燃カバー100を展開させることができるが、前記天井板20Aに前記不燃カバー100の一端101を固定し、他端102は前記枠体のうち最も外側の枠体10aに固定しておくことで、前記複数の枠体10Aが伸長状態となった際に前記他端102側が前記枠体10aとともに落下することによって展開させるものとしてもよい(図示せず)。
【0076】
なお、前記不燃カバー100の収納状態を維持するために抑え部材を別途設けるものとしてもよい(図示せず)。前記抑え部材は、例えば、衝撃によって破断するひも状部材やテープなどを用いることができる。
【0077】
このように前記不燃カバー100を備えたことで、前記連結機構50Aの長孔60Aを覆い隠すことが可能となり、より密に前記対象物Tの周囲を覆い、前記対象物Tを含んだ内部空間と外気とを遮断することができる。
【0078】
前記不燃性柔軟モップ状の緩衝部材14は、不燃性または難燃性と、柔軟性とを有する素材で形成されており、例えばアクリル繊維などを使用することができ、前記枠板のうち最も外側の枠体10aの下部に配置されている。
【0079】
このように前記緩衝部材14を備えたことで、前記枠体10aが地面と接触した際に緩衝効果を発揮して衝撃を緩和することが可能となるとともに、地面の凹凸があったとしてもその形状に沿って変形することで隙間を埋め、より密に前記対象物Tの周囲を覆い、前記対象物Tを含んだ内部空間と外気とを遮断することができる。
【0080】
前記消火用物質の放出具用の取付口24は、前記天井板20Aにおける前記水平部21の中央に貫通形成されたパイプ状の通路25の外側端部に形成されている。
【0081】
なお、前記通路25は、蛇腹管など折り曲げ可能な形状としてもよい(図示せず)。
【0082】
このように前記取付口24を備えたことで、例えば消火用物質として水を供給可能な消防ポンプ車や消火栓、または貯水バケツを放出具として用い、前記取付口24に前記放出具を連結して、前記対象物Tの上方から放水を行うことによって消火を行うことも可能となるため、水の使える環境においてはより迅速かつ安全に消火することができる。
【0083】
また、前記通路25の内側端部には複数の散水孔を形成した蓮口部材26が取り付けられており、前記蓮口部材26によって放水を均一に拡散させることが可能である。
【0084】
なお、前記取付口24を介して供給される消火用物質は水に限らず、例えば消火剤や、消火剤を混合した水などを使用できるほか、窒素や二酸化炭素を使用した消火用の不活性ガスなどを使用することもでき、液体,気体,固体,あるいは泡状やゲル状など、その性状を問わず使用可能である。
【0085】
本実施の形態である消火用スライドシャッター5を用いた消火方法によれば、消防ポンプ車からの放水のみによる従来方式の単純な消火方法に比べて、放水による消火・冷却と酸素の遮断による消火とを組み合わせているため、より迅速な消火を果たすことが可能となり、消火後には前記牽引具40または前記吊持具30を巻き上げることですみやかに封鎖を解除して、消防隊などが前記対象物Tの内部に突入することも可能であるため、もし万一逃げ遅れた人などが前記対象物Tの内部に居た場合に、救助できる可能性を高めることが期待できる。
【0086】
図22は、本発明の第6の実施の形態である、補助枠を更に追加した消火用スライドシャッター6を示す図である。
【0087】
前記補助枠110は、外側補助枠111と内側補助枠113とからなる二重構造となっており、前記複数の枠体10Aの上方に配置されている。なお、前記外側補助枠111のみを用いる一重構造としてもよい(図示せず)。
【0088】
前記外側補助枠111の四隅には、前記牽引具40を挿通するための中継具112が設けられている。前記中継具112は、滑車などを用いることができる。
【0089】
前記内側補助枠113は、吊持具114によって前記天井板20Aと連結されており、吊持具30,114によって前記天井板20Aを定位置に保持しておくことで、前記複数の枠体10Aのスライド展開が可能となる。
【0090】
本実施の形態において、前記枠板のうち最も外側の枠体10aに一端を固定した前記牽引具40は、前記外側補助枠111の前記中継具112を通過した後、移動手段などに接続されることで前記複数の枠体10Aの展開および収納を行うことができる。
【0091】
なお、前記外側補助枠111と前記内側補助枠113との間に接続用支柱または接続用ワイヤーを設けて連結したものとしてもよい(図示せず)。
【0092】
このように前記補助枠110を備えたことで、より消火用スライドシャッター全体の強度を向上させることが可能となるほか、前記吊持具30または前記牽引具40を繰出・巻取する際にもバランスを保ちやすくなるため望ましい。
【0093】
図23は、本発明の第7の実施の形態である、筒状の不燃カバーを備えた消火用スライドシャッター7を示す斜視図である。
【0094】
筒状の不燃カバー120は、不燃性または難燃性と、柔軟性とを有する素材で形成されており、例えばガラス繊維を織物にしたシートなどを使用することができ、展開時に前記枠体10Aの外周を覆うように、前記外側補助枠111に一端121を固定して、他端122を前記枠体のうち最も外側の枠体10aに固定して、蛇腹状に収納された状態で配置されている。
【0095】
このように前記筒状の不燃カバー120を備えたことで、前記複数の枠体10Aに加えて前記不燃カバー120によって前記対象物Tの周囲を二重に覆い外気と遮断することが可能となるため、より確実に前記対象物Tを消火することが可能となる。
【0096】
上記各実施の形態においては、対象物Tが建築物などの大型の物体であることを想定しており、消火用スライドシャッターはその対象物Tを覆い隠せるサイズの枠体を有する大型の装置であることを想定しているが、本発明の実施の形態はそれに限られるものではない。例えば、人力で携行可能なサイズの装置として構成し、不意の失火に対する消火や焚火に対する消火を目的とした、比較的小規模の火に対して用いる小型の装置としても使用可能である(図示せず)。
【0097】
また、上記各実施の形態においては、最も外側の枠体が最も下方へとスライド展開し、最も内側の枠体が最も上方にあって天井板を設けた構造であって、展開状態の枠体を正面視した際、上方に凸となる形状であるが、これを逆にすることもできる。すなわち、最も内側の枠体が最も下方へとスライド展開し、最も外側の枠体が最も上方にあって天井板を設けた構造であって、展開状態の枠体を正面視した際、下方に凸となる形状としてもよい(図示せず)。
【0098】
この場合、吊持具は前記天井板に取り付けられる点においては変わりないが、保持機構である牽引具は最も内側の枠体に取り付けられる点において異なる。例えば、前記天井板の一部に貫通孔を形成するなどして、前記貫通孔を介して前記牽引具を前記天井板の外側に露出させて操作可能となるように構成することができる(図示せず)。
【0099】
以上の通り、本発明の消火用スライドシャッターによれば、迅速で、近隣への影響も無く、水や消火剤を用いることなしに燃焼している対象物を消火することが可能となる。更に、ロック機構付きの連結構造を用いた場合には取り扱い性を向上させることが、不燃カバーや不燃性柔軟モップ状の緩衝部材を用いた場合には密閉性を高めることによる消火性能の向上が、消火用物質の放出具用の取付口を用いた場合には水や消火剤などの消火用物質による消火性能の向上がそれぞれ可能となり、これら要素の一部または全部を組み合わせて実施することによってより優れた消火用スライドシャッターを提供することができる。
【符号の説明】
【0100】
1,2,3,4,5,6,7 消火用スライドシャッター、10A,10B,a,10b,10c,10j 枠体、11 平板部、12 角部、14 緩衝部材、20A,20B 天井板、21 水平部、22 傾斜部、24 放出具用の取付口、25 通路、26 蓮口部材、30 吊持具、31 取付具、40 牽引具、41 中継具、50A,50B 連結構造、60A,60B 長孔、61 幅狭長孔部、62 幅広長孔部、63 段部、65 回転部、66 ガイド面、67 係止段部、70 固定孔、71 小径孔部、72 大径孔部、73 段部、80A,80B 連結具、81 凸部品、82 頭部、83 軸部、84 凹部品、85 頭部、86 嵌合穴、87 固定ねじ、89 ロック用突部、90 移動手段、91 ヘリコプター、92 クレーン車、100 不燃カバー、101 一端、102 他端、110 補助枠、111 外側補助枠、112 中継具、113 内側補助枠、114 吊持具、120 不燃カバー、121 一端、122 他端、T 対象物、W1 幅狭長孔部の幅、W2 幅広長孔部の幅、W3 回転部の幅、W4 ロック用突部の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
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