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特開2023-137178超音波画像表示システム、画像表示方法、および記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137178
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】超音波画像表示システム、画像表示方法、および記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043246
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】319011672
【氏名又は名称】ジーイー・プレシジョン・ヘルスケア・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】神山 直久
(72)【発明者】
【氏名】大栗 拓真
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD06
4C601DD14
4C601DE06
4C601EE11
4C601HH05
4C601JB36
4C601JB50
4C601JC06
4C601JC11
4C601JC37
4C601KK02
4C601KK07
4C601KK25
4C601KK31
(57)【要約】      (修正有)
【課題】超音波画像に描出されている複数の部位の中から、注目している部位を特定する作業を支援する。
【解決手段】超音波プローブと、超音波プローブで被検体をスキャンすることにより得られた超音波画像を表示する表示部と、超音波プローブおよび表示部と通信する1つ又は複数のプロセッサとを含む超音波診断装置であって、1つまたは複数のプロセッサが、送信音圧が変化しながら被検体に超音波が送信されるとともに、被検体から反射されたエコー信号を受信するように、超音波プローブを制御すること、受信されたエコー信号を処理することにより得られたエコーデータに基づいて、異なる送信音圧に対応する複数の超音波画像(U1~Uz)を生成すること、複数の超音波画像(U1~Uz)に基づいて、エコー信号の送信音圧依存性を表す支援画像を生成すること、表示部に支援画像を表示させることを含む動作を実行する超音波診断装置。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブと、
前記超音波プローブで被検体をスキャンすることにより得られた超音波画像を表示する表示部と、
前記超音波プローブおよび前記表示部と通信する1つ又は複数のプロセッサと
を含む超音波診断装置であって、
前記1つまたは複数のプロセッサが、
送信音圧が変化しながら前記被検体に超音波が送信されるとともに、前記被検体から反射されたエコー信号を受信するように、前記超音波プローブを制御すること、
受信されたエコー信号を処理することにより得られたエコーデータに基づいて、異なる送信音圧に対応する複数の超音波画像を生成すること、
前記複数の超音波画像に基づいて、エコー信号の送信音圧依存性を表す画像を生成すること、
前記表示部に、前記送信音圧依存性を表す画像を表示させること
を含む動作を実行する超音波画像表示システム。
【請求項2】
前記超音波プローブから送信される超音波の送信音圧は、時間とともに増加する、請求項1に記載の超音波画像表示システム。
【請求項3】
前記エコー信号強度の送信音圧依存性を表す画像を生成することが、
前記複数の超音波画像に基づいて、エコー信号の送信音圧依存性を表す特徴量を求めること、
前記特徴量に基づいて、前記複数の超音波画像のうちの少なくとも1つの超音波画像が表す断面の中から、血管を含む血管領域を特定すること、
前記超音波画像に基づいて、前記血管領域が他の領域よりも強調された画像を、前記エコー信号の送信音圧依存性を表す画像として生成すること、
を含む、請求項2に記載の超音波画像表示システム。
【請求項4】
前記特徴量を求めることが、
前記複数の超音波画像に基づいて、送信音圧の変化量に対するエコー信号強度の変化量の比の最大値を、前記特徴量として求めることを含む、請求項3に記載の超音波画像表示システム。
【請求項5】
前記特徴量を求めることが、
前記被検体の断層面内の各点に対して前記比の最大値を求めることを含む、請求項4に記載の超音波画像表示システム。
【請求項6】
前記血管領域を特定することが、
前記比の最大値が前記血管に対応する値であるか否かを判定するための閾値と、前記比の最大値とを比較し、その比較結果に基づいて、前記血管領域を特定することを含む、請求項5に記載の超音波画像表示システム。
【請求項7】
前記血管領域が、他の領域とは異なる色で表示される、および/又は前記他の領域とは異なる模様で表示される、請求項6に記載の超音波画像表示システム。
【請求項8】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
前記血管領域が他の領域よりも強調された画像に、第1の血管を囲む第1の関心領域と、第2の血管を囲む第2の関心領域とを設置すること、
前記第1の関心領域の第1の時間強度曲線と、前記第2の関心領域の第2の時間強度曲線を作成すること、
前記第1の時間強度曲線と前記第2の時間強度曲線に基づいて、生体内圧を求めること
を含む動作を実行する、請求項6に記載の超音波画像表示システム。
【請求項9】
前記特徴量を求めることが、
前記複数の超音波画像に基づいて、第1の送信音圧における第1のエコー信号強度と、第2の送信音圧における第2のエコー信号強度との差を、前記特徴量として求めることを含む、請求項3に記載の超音波画像表示システム。
【請求項10】
前記特徴量を求めることが、
前記被検体の断層面内の各点に対して、前記エコー信号強度の差を求めることを含む、請求項9に記載の超音波画像表示システム。
【請求項11】
前記血管領域を特定することが、
前記エコー信号強度の差が前記血管に対応する値であるか否かを判定するための閾値と、前記エコー信号強度の差とを比較し、その比較結果に基づいて、前記血管領域を特定すること
を含む、請求項10に記載の超音波画像表示システム。
【請求項12】
前記血管領域が、他の領域とは異なる色で表示される、および/又は前記他の領域とは異なる模様で表示される、請求項11に記載の超音波画像表示システム。
【請求項13】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
前記血管領域が他の領域よりも強調された画像に、第1の血管を囲む第1の関心領域と、第2の血管を囲む第2の関心領域とを設置すること、
前記第1の関心領域の第1の時間強度曲線と、前記第2の関心領域の第2の時間強度曲線を作成すること、
前記第1の時間強度曲線と前記第2の時間強度曲線に基づいて、生体内圧を求めること
を含む動作を実行する、請求項11に記載の超音波画像表示システム。
【請求項14】
超音波プローブが、送信音圧が変化しながら前記被検体に超音波を送信するとともに、前記被検体から反射されたエコー信号を受信すること、
受信されたエコー信号を処理することにより得られたエコーデータに基づいて、異なる送信音圧に対応する複数の超音波画像を生成すること、
前記複数の超音波画像に基づいて、エコー信号強度の送信音圧依存性を表す画像を生成すること、
を含む画像生成方法。
【請求項15】
超音波プローブおよび表示部超と通信する1つ又は複数のプロセッサによって実行可能な1つ又は複数の命令が格納された、1つ又は複数の非一時的でコンピュータ読取可能な記録媒体であって、前記1つ又は複数の命令は、前記1つ又は複数のプロセッサに、
送信音圧が変化しながら前記被検体に超音波が送信されるとともに、前記被検体から反射されたエコー信号を受信するように、前記超音波プローブを制御すること、
受信されたエコー信号を処理することにより得られたエコーデータに基づいて、異なる送信音圧に対応する複数の超音波画像を生成すること、
前記複数の超音波画像に基づいて、エコー信号強度の送信音圧依存性を表す画像を生成すること、
を含む動作を実行させる、記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像を表示する超音波画像表示システム、超音波画像を表示する画像表示方法、および超音波画像を表示するための命令が記憶された記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波を利用した検査方法として、マイクロバブルの造影剤を利用した検査が知られている。造影超音波検査は、例えば、乳腺病変の質的診断、病変の広がり診断などに使用されている。
【0003】
また、造影超音波検査の手法として、SHAPE(Subharmonic-aided pressure estimation)が知られている(非特許文献1参照)。SHAPEは、血管にROI(Region of Interest)を設定し、バブルからのエコー信号の強弱に基づいて生体内圧力を推定する手法である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Eisenbrey, J. R., et al. Chronic liver disease: noninvasive subharmonic aided pressure estimation of hepatic venous pressure gradient. Radiology. 268, (2), 581-588 (2013).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生体内圧力は、被検体を診断する上で有用な情報であるので、SHAPEの手法を検査プロトコルに組み込んだ超音波検査の開発が進められている。
【0006】
しかし、SHAPEの手順は複雑であり、現状では万人が実施できるプロトコルではない。特に、最適なROIの設置場所を特定することは非常に難しく、熟練を要する作業となる。
【0007】
そこで、超音波画像に描出されている複数の部位の中から、注目している部位を特定する作業を支援する技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点は、超音波プローブと、
前記超音波プローブで被検体をスキャンすることにより得られた超音波画像を表示する表示部と、
前記超音波プローブおよび前記表示部と通信する1つ又は複数のプロセッサと
を含む超音波診断装置であって、
前記1つまたは複数のプロセッサが、
送信音圧が変化しながら前記被検体に超音波が送信されるとともに、前記被検体から反射されたエコー信号を受信するように、前記超音波プローブを制御すること、
受信されたエコー信号を処理することにより得られたエコーデータに基づいて、異なる送信音圧に対応する複数の超音波画像を生成すること、
前記複数の超音波画像に基づいて、エコー信号の送信音圧依存性を表す画像を生成すること、
前記表示部に、前記送信音圧依存性を表す画像を表示させること
を含む動作を実行する超音波画像表示システムである。
【0009】
本発明の第2の観点は、超音波プローブが、送信音圧が変化しながら前記被検体に超音波を送信するとともに、前記被検体から反射されたエコー信号を受信すること、
受信されたエコー信号を処理することにより得られたエコーデータに基づいて、異なる送信音圧に対応する複数の超音波画像を生成すること、
前記複数の超音波画像に基づいて、エコー信号強度の送信音圧依存性を表す画像を生成すること、
を含む画像生成方法である。
【0010】
本発明の第3の観点は、超音波プローブおよび表示部超と通信する1つ又は複数のプロセッサによって実行可能な1つ又は複数の命令が格納された、1つ又は複数の非一時的でコンピュータ読取可能な記録媒体であって、前記1つ又は複数の命令は、前記1つ又は複数のプロセッサに、
送信音圧が変化しながら前記被検体に超音波が送信されるとともに、前記被検体から反射されたエコー信号を受信するように、前記超音波プローブを制御すること、
受信されたエコー信号を処理することにより得られたエコーデータに基づいて、異なる送信音圧に対応する複数の超音波画像を生成すること、
前記複数の超音波画像に基づいて、エコー信号強度の送信音圧依存性を表す画像を生成すること、
を含む動作を実行させる、記憶媒体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、送信音圧を変化させながら取得された複数の超音波画像に基づいて、エコー信号の送信音圧依存性を表す画像が生成される。エコー信号の音圧依存性は、被検体内の組織の種類によって異なるので、音圧依存性を表す画像を生成することにより、被検体の撮影部位の中から、注目部位を特定しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態の超音波診断装置1のブロック図である。
図2】時間強度曲線81cおよび82cを示す図である。
図3】ファントムを用いて取得した時間強度曲線を示す図である。
図4】検査フローの一例を示す図である。
図5】スキャンの説明図である。
図6】ステップST3のフローの一例を示す図である。
図7】比Rの最大値の求め方の説明図である。
図8】断層面11の他の点(x2,y2,z2)における比Rの最大値を示す図である。
図9】比Rの最大値を表す画像W1を示す図である。
図10】超音波画像の断面から血管領域を特定する方法の説明図である。
図11】支援画像13を概略的に示す図である。
図12】支援画像13上に設置された関心領域14および15を示す図である。
図13】関心領域14の時間強度曲線TIC1の説明図である。
図14】関心領域14の時間強度曲線TIC1と、関心領域15の時間強度曲線TIC2を概略的に示す図である。
図15】第2の実施形態におけるステップST3のフロー図である。
図16】エコー信号強度の差の求め方の説明図である。
図17】エコー信号強度の差ΔVを表す画像W2を示す図である。
図18】超音波画像の断面から血管領域を特定する方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0014】
(1)第1の実施形態
図1は、本発明の第1の実施形態の超音波診断装置1のブロック図である。
超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送信ビームフォーマ3、送信器4、受信器5、受信ビームフォーマ6、プロセッサ7、表示部8、メモリ9、およびユーザインターフェース10を有している。
【0015】
超音波プローブ2は、アレイ状に配置された複数の振動素子2aを有している。送信ビームフォーマ3および送信器4は、超音波プローブ2内に配列された複数の振動素子2aをドライブし、振動素子2aから超音波が送信される。振動素子2aから送信された超音波は被検体(図1参照)内において反射し、反射エコーが振動素子2aで受信される。振動素子2aは、受信したエコーを電気信号に変換し、この電気信号をエコー信号として受信器5に出力する。受信器5はエコー信号に対して所定の処理を実行し、受信ビームフォーマ6に出力する。受信ビームフォーマ6は、受信器5から受け取った信号に受信ビームフォーミングを実行し、エコーデータを出力する。
【0016】
受信ビームフォーマ6は、ハードウェアビームフォーマであってもよいし、ソフトウェアビームフォーマであってもよい。受信ビームフォーマ6がソフトウェアビームフォーマである場合、受信ビームフォーマ6は、i)グラフィックス処理ユニット(GPU)、ii)マイクロプロセッサ、iii)中央処理装置(CPU)、iv)デジタル信号プロセッサ(DSP)、v)論理演算を実行することができる他の種類のプロセッサ、のうちの1つまたは複数を含む1つまたは複数のプロセッサを備えることができる。受信ビームフォーマ6を構成するプロセッサは、プロセッサ7とは別のプロセッサで構成されていてもよいし、プロセッサ7で構成されていてもよい。
【0017】
超音波プローブ2は、送信ビームフォーミングおよび/または受信ビームフォーミングの全部または一部を行うための電気回路を含むことができる。例えば、送信ビームフォーマ3、送信器4、受信器5、および受信ビームフォーマ6の全部または一部は、超音波プローブ2内に設けることができる。
【0018】
プロセッサ7は、送信ビームフォーマ3、送信器4、受信器5、および受信ビームフォーマ6を制御する。また、プロセッサ7は、超音波プローブ2と電子通信している。プロセッサ7は、どの振動素子2aをアクティブにするのかを制御し、更に、超音波プローブ2から送信される超音波ビームの形状を制御する。プロセッサ7は表示部8およびユーザインターフェース10とも電子通信している。プロセッサ7は、エコーデータを処理して超音波画像を生成することができる。「電子通信」という用語は、有線通信と無線通信の両方を含むように定義することができる。プロセッサ7は、一実施形態によれば中央処理装置(CPU)を含むことができる。他の実施形態によれば、プロセッサ7は、デジタル信号プロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)、または他のタイプのプロセッサなど、処理機能を実行することができる他の電子構成要素を含むことができる。他の実施形態によれば、プロセッサ7は、処理機能を実行することができる複数の電子構成要素を含むことができる。例えばプロセッサ7は、中央処理装置、デジタル信号プロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ、およびグラフィックスプロセッシングユニットを含む電子構成要素のリストから選択された2つ以上の電子構成要素を含むことができる。
【0019】
プロセッサ7は、RFデータを復調する複合復調器(図示せず)を含むこともできる。別の実施形態では、処理チェーン(processing chain)の早い段階で復調を実行することができる。
【0020】
また、プロセッサ7は、受信ビームフォーマ6による処理によって得られたデータに基づいて、様々な超音波画像(例えば、Bモード画像、カラードップラ画像、Mモード画像、カラーMモード画像、スペクトルドップラ画像、エラストグラフィ画像、TVI画像、歪み画像、歪み速度画像、など)を生成することができる。また、1つまたは複数のモジュールが、これらの超音波画像を生成することができる。
【0021】
画像ビームおよび/または画像フレームは保存され、データがメモリに取得された時を示すタイミング情報を記録することができる。前記モジュールは、例えば、画像フレームを座標ビーム空間から表示空間座標に変換するために走査変換演算を実行する走査変換モジュールを含むことができる。被検体に処置が実施されている間にメモリから画像フレームを読み取り、その画像フレームをリアルタイムで表示する映像プロセッサモジュールを設けることもできる。映像プロセッサモジュールは画像フレームを画像メモリに保存することができ、超音波画像は画像メモリから読み取られ表示部8に表示される。
【0022】
本明細書において、「画像」という用語は、可視画像と可視画像を表すデータの両方を広く指すものとすることができる。また、「データ」という用語は、走査変換演算前の超音波データであるローデータ(raw data)と、走査変換演算後のデータである画像データを含み得る。
【0023】
尚、プロセッサ7が担当する上述の処理タスクを、複数のプロセッサで実行するようにしてもよい。
【0024】
また、受信ビームフォーマ6がソフトウェアビームフォーマである場合、ビームフォーマが実行する処理を、単一のプロセッサで実行させてもよいし、複数のプロセッサで実行させてもよい。
【0025】
表示部8は、例えば、LED(Light Emitting Diode)表示部、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)表示部である。表示部8は、超音波画像を表示する。
【0026】
メモリ9は、任意の既知のデータ記憶媒体である。一例では、超音波画像表示ステムは、メモリとして、非一過性の記憶媒体および一過性の記憶媒体を含む。また、超音波画像表示システムは、複数のメモリを含むこともできる。非一過性の記憶媒体は、例えば、HDD(Hard Disk Drive:ハードディスクドライブ)、ROM(Read Only Memory)などの不揮発性の記憶媒体である。非一過性の記憶媒体は、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)などの可搬性の記憶媒体を含むことができる。プロセッサ7によって実行されるプログラムは、非一過性の記憶媒体に記憶されている。一過性の記憶媒体は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性の記憶媒体である。
【0027】
メモリ9には、プロセッサ7による実行が可能な1つ又は複数の命令が格納されている。この1つ又は複数の命令は、プロセッサ7に、後述する第1および第2の実施形態で説明される動作を実行させる。
【0028】
尚、プロセッサ7は、外部記憶装置19に有線接続又は無線接続することができるように構成することもできる。この場合、プロセッサ7に実行させる命令を、メモリ9と外部記憶装置19との両方に分散させて記憶させることも可能である。
【0029】
ユーザインターフェース10は、オペレータの入力を受け付けることができる。例えば、ユーザインターフェース10は、オペレータからの指示や情報の入力を受け付ける。ユーザインターフェース10は、キーボード(keyboard)、ハードキー(hard key)、トラックボール(trackball)、ロータリーコントロール(rotary control)およびソフトキー等を含んでいる。ユーザインターフェース10は、ソフトキー等を表示するタッチスクリーンを含んでいてもよい。
超音波診断装置1は上記のように構成されている。
【0030】
本実施形態では、マイクロバブルの造影剤を利用して検査を実行するSHAPEについて説明する。SHAPEは、血管に関心領域(ROI:Region of Interest)を設定し、バブルからのエコー信号の強弱に基づいて生体内圧力を推定する手法である。
【0031】
生体内圧力は、被検体を診断する上で有用な情報であるので、SHAPEの手法を検査プロトコルに組み込んだ超音波検査の開発が期待されている。
【0032】
しかし、SHAPEの手順は複雑であり、現状では万人が実施できるプロトコルではない。特に、最適な関心領域の設置場所を特定することは非常に難しく、熟練を要する作業となる。
【0033】
そこで、超音波画像に描出されている複数の部位の中から注目している部位を特定する作業を支援する技術が望まれている。
【0034】
この問題に対して、本願発明者は、オペレータが最適な関心領域の設置場所を容易に特定することができるように、オペレータを支援する方法を考えた。以下に、この方法の基本的な概念について説明する。
【0035】
図2は、被検体に造影剤を投与し、送信音圧を変化させながら被検体の断面をスキャンしたときに取得された時間強度曲線81cおよび82cを示す図である。曲線を表すグラフの横軸は送信音圧(時間)であり、縦軸はエコー信号強度である。
【0036】
時間強度曲線81cは、血管に設置された関心領域81における時間強度曲線である。一方、時間強度曲線82cは、他の血管に設置された関心領域82における時間強度曲線である。
【0037】
時間強度曲線81cおよび82cを比較すると、両方の時間強度曲線は概ね類似した曲線を示していることがわかる。
次に、血管における時間強度曲線と、血管以外の組織における時間強度曲線について検討する。
【0038】
図3は、ファントムを用いて取得した時間強度曲線を示す図である。
図3の左側には、ファントムの断面の超音波画像が示されている。超音波画像には、関心領域83および84が設定されている。関心領域83は、ファントムの血管を模擬した部分に設置されている。一方、関心領域84は、ファントムの血管以外の組織を模擬した部分に設置されている。
【0039】
時間強度曲線83cは関心領域83における曲線を表しており、時間強度曲線84cは関心領域84における曲線を表している。
【0040】
血管を模擬した部分に設置されている関心領域83における時間強度曲線83cを、実際の血管に設置された関心領域81および82における時間強度曲線81cおよび82c(図2参照)と比較すると、時間強度曲線83cは、時間強度曲線81cおよび82cと概ね類似した曲線を示していることがわかる。
【0041】
しかし、血管以外の組織を模擬した部分に設置されている関心領域84から得られる時間強度曲線84cは、実際の血管における時間強度曲線81cおよび82cとは大きく異なる曲線を示すことが分かった。
【0042】
本願発明者らは、この点に着目し、生体内の各組織におけるエコー信号の音圧依存性が、組織の種類によって異なることを見出した。そこで、本願発明者らは、生体内の組織によって音圧依存性が異なることを利用して、被検体の検査中にオペレータが最適な関心領域の設置場所を容易に特定することができる方法を考えた。
【0043】
以下に、上記の方法に従って実際に被検体を検査するときの検査フローについて、SHAPEを実行する例を取り上げて説明する。
【0044】
図4は、検査フローの一例を示す図である。
ステップST1では、オペレータは被検体の検査の準備をする。検査の準備ができたら、オペレータは、被検体に造影剤を投与する。
【0045】
ステップST2では、オペレータは、造影剤を投与してから、検査部位における造影剤の濃度が一定になったタイミングで、被検体のスキャンを開始する。例えば、肝臓の肝動脈と門脈の検査を行う場合、造影剤を投与してから60秒~90秒程度経過したタイミングで、被検体のスキャンを開始することができる。
【0046】
図5は、スキャンの説明図である。
スキャンが開始されると、プロセッサ7は、超音波プローブ2の送信音圧が時間とともに徐々に大きくなるように送信音圧を変化させながら、被検体52の所定の断層面11において超音波の送受信が実行されるように、超音波プローブ2を制御する。
【0047】
超音波プローブ2は複数の振動素子2a(図1参照)を有しており、振動素子2aから超音波が送信される。振動素子2aから送信された超音波は被検体52内において反射し、反射エコーが振動素子2aで受信される。振動素子2aは、受信したエコーを電気信号に変換し、この電気信号をエコー信号として受信器5に出力する。受信器5はエコー信号に対して所定の処理を実行し、受信ビームフォーマ6に出力する。受信ビームフォーマ6は、受信器5から受け取った信号に受信ビームフォーミングを実行し、エコーデータを出力する。プロセッサ7は、受信ビームフォーマ6からのエコーデータに基づいて超音波画像を生成する。
【0048】
尚、スキャンは数秒~十数秒間程度実行することができ、スキャンにより、複数のフレームの超音波画像U(j=1~z)を取得することができる。超音波画像U~Uは、異なる送信音圧に対応する超音波画像である。超音波画像U~Uは、メモリ9(図1参照)に記憶される。次に、ステップST3に進む。
【0049】
ステップST3では、プロセッサ7が、超音波画像U~Uに基づいて、エコー信号の送信音圧依存性を表す画像を生成する。この画像は、後述するステップST4において、オペレータが血管に関心領域を設置するときに、オペレータの作業を支援する支援画像として使用されるものである。以下に、ステップST3の具体的なフローについて説明する。
【0050】
図6は、ステップST3のフローの一例を示す図である。
ステップST3は、ステップST31-ST33を含んでいる。以下に、ステップST31-ST33について順に説明する。
【0051】
ステップST31では、プロセッサ7は、超音波画像U~Uに基づいて、エコー信号の送信音圧依存性を表す特徴量を求める。第1の実施形態では、この特徴量として、送信音圧の変化量に対するエコー信号強度の変化量の比Rの最大値を求める。以下に、比Rの最大値の求め方について説明する。
【0052】
図7は、比Rの最大値の求め方の説明図である。
図7には曲線31が示されている。曲線31は、ステップST2において取得された超音波画像U~UのピクセルP~Pにおける送信音圧とエコー信号強度との関係を示す曲線(時間強度曲線)である。
【0053】
プロセッサ7は、送信音圧a(時点t)における超音波画像Uに含まれる複数のピクセルの中から、断層面11の点(x1,y1,z1)におけるピクセルPを選択する。そして、送信音圧a(時点t)におけるピクセルPのピクセル値Vを読み出す。
【0054】
図7では、送信音圧a(時点t)におけるピクセルPのピクセル値Vを表すデータ点を符号「S」で示してある。
【0055】
次に、プロセッサ7は、送信音圧a(時点t)における超音波画像Uに含まれる複数のピクセルの中から、点(x1,y1,z1)におけるピクセルPを選択する。そして、送信音圧a(時点t)におけるピクセルPのピクセル値Vを読み出す。
【0056】
図7では、送信音圧a(時点t)におけるピクセルPのピクセル値Vを表すデータ点を符号「S」で示してある。
【0057】
次に、プロセッサ7は、時間方向に隣接する2つのデータ点SおよびSの送信音圧aおよびa2とエコー信号強度VおよびVに基づいて、送信音圧の変化量(a-a)に対するエコー信号強度の変化量(V-V)の比R(=R21)を計算する。
21=(V-V)/(a-a
プロセッサ7は、比R21の値をメモリに記憶しておく。
【0058】
次に、プロセッサ7は、送信音圧a(時点t)における超音波画像Uに含まれる複数のピクセルの中から、点(x1,y1,z1)におけるピクセルPを選択する。そして、送信音圧a(時点t)におけるピクセルPのピクセル値Vを読み出す。
【0059】
図7では、送信音圧a(時点t)におけるピクセルPのピクセル値Vを表すデータ点を符号「S」で示してある。
【0060】
次に、プロセッサ7は、時間方向に隣接する2つのデータ点SおよびSの送信音圧aおよびaとエコー信号強度VおよびVに基づいて、送信音圧の変化量(a-a)に対するエコー信号強度の変化量(V-V)の比R(=R32)を計算する。
32=(V-V)/(a-a
【0061】
プロセッサ7は、比R32と、メモリに記憶されている比R21とを比較し、比R32が比R21以下の値である場合(R32≦R21)、R32を破棄し、メモリに記憶されているR21を保持する。一方、比R32が比R21よりも大きい場合(R32>R21)、メモリに記憶されている比RをR21からR32に更新する。ここでは、R32>R21であるとする。したがって、プロセッサ7は、比Rを、R21からR32に更新する。
【0062】
次に、プロセッサ7は、送信音圧a(時点t)における超音波画像Uに含まれる複数のピクセルの中から、点(x1,y1,z1)におけるピクセルPを選択する。そして、送信音圧a(時点t)におけるピクセルPのピクセル値Vを読み出す。
【0063】
図7では、送信音圧a(時点t)におけるピクセルPのピクセル値Vを表すデータ点を符号「S」で示してある。
【0064】
次に、プロセッサ7は、時間方向に隣接する2つのデータ点SおよびSの送信音圧aおよびaとエコー信号強度VおよびVに基づいて、送信音圧の変化量(a-a)に対するエコー信号強度の変化量(V-V)の比R(=R43)を計算する。
43=(V-V)/(a-a
【0065】
プロセッサ7は、比R43と、メモリに記憶されている比R32とを比較し、比R43が比R32以下の値である場合(R43≦R32)、R43を破棄し、メモリに記憶されているR32を保持する。一方、R43がR32よりも大きい場合(R43>R32)、メモリに記憶されている比RをR32からR43に更新する。ここでは、R43≦R32であるとする。したがって、プロセッサ7は、R43を破棄し、比RをR32に保持する。
【0066】
以下同様に、比Rを計算し、計算された比Rが、メモリに記憶されている比Rよりも大きい場合、メモリに記憶されている比Rを更新する。
【0067】
次に、送信音圧ai-1(時点ti-1)、送信音圧a(時点t)、および送信音圧ai+1(時点ti+1)について説明する。
【0068】
プロセッサ7は、送信音圧a(時点t)における超音波画像Uに含まれる複数のピクセルの中から、点(x1,y1,z1)におけるピクセルPを選択する。そして、送信音圧a(時点t)におけるピクセルPのピクセル値Vを読み出す。
【0069】
図7では、送信音圧a(時点t)におけるピクセルPのピクセル値Vを表すデータ点を符号「S」で示してある。
【0070】
次に、プロセッサ7は、時間軸方向に隣接する2つのデータ点Si-1および点Sの送信音圧ai-1およびaとエコー信号強度Vi-1およびVに基づいて、送信音圧の変化量(a-ai-1)に対するエコー信号強度の変化量(V-Vi-1)の比R(=Ri,i-1)を計算する。
i,i-1=(V-Vi-1)/(a-ai-1
【0071】
プロセッサ7は、比Ri,i-1と、メモリに記憶された比Rの値とを比較する。ここでは、メモリに記憶された比RはR32であるとする。したがって、プロセッサ7は、Ri,i-1と、R32とを比較する。そして、比Ri,i-1が比R32以下の値である場合(Ri,i-1≦R32)、Ri,i-1を破棄し、メモリに記憶されているR32を保持する。一方、Ri,i-1がR32よりも大きい場合(Ri,i-1>R32)、メモリに記憶されている比RをR32からRi,i-1に更新する。ここでは、Ri,i-1≦R32であるとする。したがって、プロセッサ7は、Ri,i-1を破棄し、比RをR32に保持する。
【0072】
次に、プロセッサ7は、送信音圧ai+1(時点ti+1)における超音波画像Ui+1に含まれる複数のピクセルの中から、点(x1,y1,z1)におけるピクセルPi+1を選択する。そして、送信音圧ai+1(時点ti+1)におけるピクセルPのピクセル値Vi+1を読み出す。
【0073】
図7では、送信音圧ai+1(時点ti+1)におけるピクセルPi+1のピクセル値Vi+1を表すデータ点を符号「Si+1」で示してある。
【0074】
次に、プロセッサ7は、時間方向に隣接する2つのデータ点Si+1および点Sの送信音圧ai+1およびaとエコー信号強度Vi+1およびVに基づいて、送信音圧の変化量(ai+1-a)に対するエコー信号強度の変化量(Vi+1-V)の比R(=Ri+1,i)を計算する。
i+1,i=(Vi+1-V)/(ai+1-a
【0075】
プロセッサ7は、比Ri+1,iと、メモリに記憶された比R32とを比較し、比Ri+1,iが比R32以下の値である場合(Ri+1,i≦R32)、Ri+1,iを破棄し、メモリに記憶されているR32を保持する。一方、Ri+1,iがR32よりも大きい場合(Ri+1,i>R32)、メモリに記憶されている比RをR32からRi+1,iに更新する。ここでは、Ri+1,i>R32であるとする。したがって、プロセッサ7は、R32を破棄し、比RをR32からRi+1,iに更新する。
【0076】
以下同様に、比Rを計算し、計算された比Rが、メモリに記憶されている比Rよりも大きい場合、メモリに記憶されている比Rを更新する。
【0077】
このようにして、プロセッサ7は、超音波画像U~Uの中から、断層面11内の点(x1,y1,z1)に対応するピクセルP~Pのピクセル値に基づいて比Rを計算し、断層面11内の点(x1,y1,z1)における比Rの最大値を求める。点(x1,y1,z1)では、比R=Ri+1,iが最大値であるとする。したがって、プロセッサ7は、断層面11内の点(x1,y1,z1)では、比Ri+1,iを比Rの最大値として求める。この最大値Ri+1,iはメモリに記憶される。
【0078】
また、プロセッサ7は、断層面11の他の点(x,y,z)についても、上記の方法で比Rを計算し、比Rの最大値を求める。
【0079】
図8は、断層面11の他の点(x2,y2,z2)における比Rの最大値を示す図である。
図8には曲線32が示されている。曲線32は、超音波画像U~UのピクセルQ~Qにおける送信音圧とエコー信号強度との関係を表す曲線(時間強度曲線)である。
【0080】
曲線32上には、2つのデータ点FおよびFk+1が示されている。データ点Fは、送信音圧a(時点t)における超音波画像UのピクセルQのピクセル値Vを表している。また、データ点Fk+1は、送信音圧ak+1(時点tk+1)における超音波画像Uk+1のピクセルQk+1のピクセル値Vk+1を表している。
【0081】
断層面11の点(x2,y2,z2)においては、データ点FおよびFk+1における比Rk+1,kが比Rの最大値として求められている。
【0082】
このように、断層面11の点(x,y,z)ごとに、比Rの最大値を求めることができる。図9に、断層面11の各点(x,y,z)における比Rの最大値を表す画像W1を示す。図9では、説明の便宜上、断層面11内の点(x1,y1,z1)における比Rの最大値Ri+1,iと、点(x2,y2,z2)における比Rの最大値Rk+1,kのみを示しているが、他の点についても、比Rの最大値が求められている。
このようにして、比Rの最大値を表す画像W1を求めた後、ステップST32に進む。
【0083】
ステップST32では、比Rの最大値を表す画像W1に基づいて、各超音波画像U(j=1~z)が表す断面の中から、血管を含む血管領域を特定する。
【0084】
図10は、超音波画像の断面から血管領域を特定する方法の説明図である。
プロセッサ7は、ステップST321において、画像W1内の各点(x,y,z)における比Rの最大値と閾値TH1とを比較する。閾値TH1は、比Rの最大値が、血管に対応する値であるのか、それとも、血管以外の組織に対応する値であるのかを判定するための値である。図3を参照しながら説明したように、血管領域では、送信音圧に対してエコー信号強度は急激に立ち上がるが、血管以外の他の組織の領域では、エコー信号強度は緩やかに変化するので、血管領域は、他の組織の領域よりも、比Rは大きい値になる傾向がある。したがって、血管の可能性が高い領域では、比Rの最大値は閾値TH1以上の値になり、血管の可能性が低い領域では、比Rの最大値は閾値TH1未満の値になる。このため、比Rの最大値を閾値TH1と比較することにより、画像W1の中から、血管の可能性が高い領域を特定することができる。図10では、説明の便宜上、画像W1に含まれる2つの領域C1およびC2が、血管の可能性が高い領域として特定されている。
【0085】
次に、プロセッサ7は、ステップST322において、各超音波画像U(j=1~z)の断面の中から、画像W1の領域C1およびC2に対応する領域を特定する。例えば、超音波画像Uを参照すると、超音波画像Uには2つの領域D1およびD2が特定されている。超音波画像Uの領域D1およびD2は、それぞれ、画像W1の領域C1およびC2に対応する領域である。超音波画像Uの領域D1およびD2が、超音波画像Uの血管領域として特定される。以下同様に、他の超音波画像U~Uについても、画像W1の領域C1およびC2に基づいて、血管領域が特定される。
【0086】
このようにして、超音波画像Uごとに血管領域D1およびD2を特定することができる。尚、第1の実施形態では、全ての超音波画像U~Uに対して血管領域D1およびD2を特定しているが、必ずしも全ての超音波画像U~Uに対して血管領域D1およびD2を特定しなくてもよく、1つ以上の超音波画像に対して血管領域D1およびD2を特定してもよい。血管領域D1およびD2を特定した後、ステップST33(図6参照)に進む。
【0087】
ステップST33では、プロセッサ7が、ステップST32で特定した血管領域D1およびD2が他の領域よりも視覚的に強調された支援画像を生成し、表示部に表示させる。図11に、表示部に表示された支援画像13を概略的に示す。支援画像13は、例えば、超音波画像U~Uのうちのいずれかの超音波画像Uに、視覚的に強調された血管領域D1およびD2を重畳することにより生成することができる。
【0088】
支援画像13の血管領域D1およびD2は、他の領域よりも強調されて表示されている。血管領域D1およびD2を強調する方法としては、例えば、血管領域D1およびD2を他の領域とは別の色で表示する、血管領域D1およびD2を他の領域とは異なる模様で表示するなどが考えられる。また、血管領域D1およびD2を点滅表示することも可能である。
支援画像13が表示されたらステップST3のフロー(図6参照)が終了する。
【0089】
図4に戻って説明を続ける。
ステップST3が終了すると、ステップST4に進む。
ステップST4では、オペレータが、支援画像13を参照して、着目する血管に関心領域を設置する。
【0090】
図12は、支援画像13上に設置された関心領域14および15を示す図である。
支援画像13には、血管領域D1およびD2が他の領域よりも強調して表示されている。したがって、オペレータは、支援画像13の中から、着目する血管を容易に特定することができる。オペレータは、ユーザインターフェース10(図1参照)を操作して、関心領域を設置するための信号を入力する。プロセッサ7は、ユーザインターフェースから入力された信号に基づいて、支援画像13上に、血管を囲む関心領域14および15を設置する。ここでは、関心領域14および15は、それぞれ、血管領域D1およびD2内の血管に設置されている。関心領域14および15を設置した後、ステップST5に進む。
【0091】
ステップST5では、プロセッサ7は、関心領域14の時間強度曲線と、関心領域15の時間強度曲線を作成する。
【0092】
図13は、関心領域14の時間強度曲線TIC1の説明図である。
関心領域14にはn個のピクセルが含まれている。プロセッサ7は、先ず、超音波画像Uに対して設定された関心領域14内のn個のピクセルのピクセル値の平均値Mを計算する。次に、プロセッサ7は、超音波画像Uに対して設定された関心領域14内のn個のピクセルのピクセル値の平均値Mを計算する。
【0093】
以下同様に、各超音波画像Uの関心領域14内のn個のピクセルのピクセル値の平均値Mを計算する。
【0094】
図13では、代表して、超音波画像U、U、U、U、Ui-1、U、Ui+1、U、Uに対して求めた平均値M、M、M、M、Mi-1、M、Mi+1、M、Mが示されているが、全ての超音波画像U~Uに対して平均値M~Mが計算される。したがって、関心領域14の時間強度曲線TIC1を求めることができる。
【0095】
また、プロセッサ7は、関心領域15の時間強度曲線TIC2も作成する。したがって、関心領域14の時間強度曲線TIC1と、関心領域15の時間強度曲線TIC2が作成される。図14に、関心領域14の時間強度曲線TIC1と、関心領域15の時間強度曲線TIC2を概略的に示す。
【0096】
次に、プロセッサ7は、時間強度曲線TIC1およびTIC2の接線の傾きが最大になる時点を特定する。ここでは、時点tにおいて、接線の傾きが最大になるとする。プロセッサ7は、複数の超音波画像U~Uの中から、接線の傾きが最大となる時点tの超音波画像Uを選択する。そして、時間強度曲線TIC1の時点tにおける信号Mi1と、時間強度曲線TIC2の時点tにおける信号Mi2との信号比を計算し、生体内圧を求め、フローを終了する。
【0097】
第1の実施形態では、ステップST4においてオペレータが関心領域14および15(図12参照)を設置する前に、ステップST3において、血管領域D1およびD2が強調された支援画像13(図11参照)が表示される。支援画像13は、血管領域D1およびD2が強調されているので、オペレータは血管の場所を容易に特定することができる。したがって、オペレータの関心領域14および15の設置作業を支援することができる。
【0098】
また、SHAPEの検査をする場合、検査部位における造影剤の濃度が一定になるまで待って被検体のスキャンを開始する。したがって、SHAPEの検査を行う場合、造影剤を投与してから60秒~90秒程度はスキャン待ちの時間となる。そこで、造影剤を投与してからSHAPEのスキャンを開始するまでの時間に、別の造影検査(例えば、血管相の造影検査)を実行してもよい。このように、SHAPEのスキャン待ちの時間に、別の造影検査を実行することにより、1回の検査で複数の造影検査を行うことができる。
【0099】
尚、第1の実施形態では、比Rの最大値と閾値TH1とを比較している。しかし、複数の閾値を用意し、比Rの最大値を複数の閾値と比較してもよい。このように、比Rの最大値を複数の閾値と比較することにより、比Rの最大値を更に細かく分類することができるので、組織ごとに分類された支援画像を作成することが可能となる。
【0100】
(2)第2の実施形態
第1の実施形態では、比Rの最大値に基づいて支援画像13を生成する例について説明したが、第2の実施形態では、エコー信号強度の差に基づいて支援画像13を生成する例について説明する。
尚、第2の実施形態は、第1の実施形態と比較して、ステップST3(図4参照)が異なるが、他のステップは同じである。したがって、第2の実施形態の説明に当たってはステップST3について主に説明する。
【0101】
図15は、第2の実施形態におけるステップST3のフロー図である。
ステップST301では、プロセッサ7は、超音波画像U~Uに基づいて、エコー信号の送信音圧依存性を表す特徴量を求める。第2の実施形態では、この特徴量として、エコー信号強度の差を求める。
【0102】
図16は、エコー信号強度の差の求め方の説明図である。
図16には、曲線71および72が示されている。曲線71は、断層面11の点(x1,y1,z1)における送信音圧に対するエコー信号強度の変化を表す時間強度曲線である。曲線72は、断層面11の点(x2,y2,z2)における送信音圧に対するエコー信号強度の変化を表す時間強度曲線である。
【0103】
先ず、曲線71について説明する。
プロセッサ7は、送信音圧a(時点t)における超音波画像Uから、点(x1,y1,z1)におけるピクセルPのエコー信号強度Vaを読み出す。曲線71上のデータ点Sは、送信音圧a(時点t)におけるエコー信号強度Vaを表している。
【0104】
次に、プロセッサ7は、送信音圧a(時点t)から所定の時間経過した後の送信音圧a(時点t)における超音波画像Uから、点(x1,y1,z1)におけるピクセルPのエコー信号強度Vbを読み出す。曲線71上のデータ点Sは、送信音圧a(時点t)におけるエコー信号強度Vbを表している。
【0105】
次に、プロセッサ7は、送信音圧a(時点t)におけるエコー信号強度Vbと、送信音圧a(時点t)におけるエコー信号強度Vaとの差ΔV1(=Vb-Va)を計算する。そして、このエコー信号強度の差ΔV1をメモリに記憶する。
【0106】
次に、曲線72について説明する。
プロセッサ7は、送信音圧a(時点t)における超音波画像Uから、点(x2,y2,z2)におけるピクセルQのエコー信号強度Vcを読み出す。曲線72上のデータ点Fは、送信音圧a(時点t)におけるエコー信号強度Vcを表している。
【0107】
次に、プロセッサ7は、送信音圧a(時点t)から所定の時間経過した後の送信音圧a(時点t)における超音波画像Uから、点(x2,y2,z2)におけるピクセルQのエコー信号強度Vdを読み出す。曲線72上のデータ点Fは、送信音圧a(時点t)におけるエコー信号強度Vdを表している。
【0108】
次に、プロセッサ7は、送信音圧a(時点t)におけるエコー信号強度Vdと、送信音圧a(時点t)におけるエコー信号強度Vcとの差ΔV2(=Vd-Vc)を計算する。そして、このエコー信号強度の差ΔV2をメモリに記憶する。
【0109】
以下同様に、断層面11の他の点においても、エコー信号強度の差ΔVを計算する。したがって、断層面11の点(x,y,z)ごとに、エコー信号強度の差ΔVを計算することができる。図17に、断層面11の各点(x,y,z)におけるエコー信号強度の差ΔVを表す画像W2を示す。図17では、説明の便宜上、断層面11内の点(x1,y1,z1)におけるエコー信号強度の差ΔV1と、点(x2,y2,z2)におけるエコー信号強度の差ΔV2のみを示しているが、他の点についても、エコー信号強度の差が求められている。
このようにして、エコー信号強度の差を表す画像W2を生成した後、ステップST302に進む。
【0110】
ステップST302では、エコー信号強度の差を表す画像W2に基づいて、各超音波画像U(j=1~z)が表す断面の中から、血管を含む血管領域を特定する。
【0111】
図18は、超音波画像の断面から血管領域を特定する方法の説明図である。
プロセッサ7は、ステップST421において、画像W2内の各点(x,y,z)におけるエコー信号強度の差と閾値TH2とを比較する。閾値TH2は、エコー信号強度の差が、血管に対応する値であるのか、それとも、血管以外の組織に対応する値であるのかを判定するための値である。図3を参照しながら説明したように、血管領域では、送信音圧に対してエコー信号強度は急激に立ち上がるが、血管以外の他の組織の領域では、エコー信号強度は緩やかに変化するので、血管領域は、他の領域よりも、エコー信号強度の差は大きい値になる傾向がある。したがって、血管の可能性が高い領域では、エコー信号強度の差は閾値TH2以上の値になり、血管の可能性が低い領域では、エコー信号強度の差は閾値TH2未満の値になる。このため、エコー信号強度の差を閾値TH2と比較することにより、画像W2の中から、血管の可能性が高い領域を特定することができる。図18では、説明の便宜上、画像W2に含まれる2つの領域C1およびC2が、血管の可能性が高い領域として特定されている。
【0112】
次に、プロセッサ7は、ステップST422において、各超音波画像U(j=1~z)の断面の中から、画像W2の領域C1およびC2に対応する領域を特定する。例えば、超音波画像Uを参照すると、超音波画像Uには2つの領域D1およびD2が特定されている。超音波画像Uの領域D1およびD2は、それぞれ、画像W2の領域C1およびC2に対応する領域である。超音波画像Uの領域D1およびD2が、超音波画像Uの血管領域として特定される。以下同様に、他の超音波画像U~Uについても、画像W2の領域C1およびC2に基づいて、血管領域が特定される。
【0113】
このようにして、超音波画像Uごとに血管領域D1およびD2を特定することができる。尚、必ずしも全ての超音波画像U~Uに対して血管領域D1およびD2を特定しなくてもよく、1つ以上の超音波画像に対して血管領域D1およびD2を特定してもよい。血管領域D1およびD2を特定した後、ステップST303(図15参照)に進む。
【0114】
ステップST303では、プロセッサ7が、ステップST302で特定した血管領域12が視覚的に強調された支援画像13を生成し、表示部に表示させる。支援画像13が表示されたら図15に示すステップST3のフローが終了する。
【0115】
支援画像13が表示されたら、図4に示すステップST4~ST7が実行され、フローが終了する。
【0116】
第2の実施形態では、支援画像13を生成するために、断層面11内の点(x,y,z)ごとに、エコー信号強度の差を求める(図16のエコー信号強度の差ΔV1およびΔV2参照)。血管では、バブルの非線形性によって送信音圧とともにエコー信号強度は大きくなるので、エコー信号強度の差は大きな値になる傾向がある。一方、血管以外の組織では、血管とは異なり、送信音圧に対してエコー信号が緩やかな線形を描きながら上昇するので、エコー信号強度の差はあまり大きな値をとらない。このため、エコー信号強度の差の違いを反映した支援画像13を生成することにより、血管領域を強調して表示することができる。したがって、オペレータの関心領域の設置作業を支援することができる。
【0117】
尚、第2の実施形態では、時点tを基準にして、エコー信号強度の差を計算している。しかし、時点tからずれた時点を基準にして、エコー信号強度の差を計算してもよい。
【0118】
尚、第1の実施形態では、エコー信号の送信音圧依存性を表す特徴量として、比Rの最大値を求める例を説明し、第2の実施形態では、エコー信号の送信音圧依存性を表す特徴量として、エコー信号強度の差を求める例を説明した。しかし、本発明では、エコー信号の送信音圧依存性を表すことができるのであれば、特徴量は、比Rの最大値又はエコー信号強度の差に限定されることはなく、別の特徴量を求めてもよい。例えば、超音波画像U~Uから、断層面11の点ごとに時間強度曲線を求め、時間強度曲線の時間積分を行い、その積分値を、エコー信号の送信音圧依存性を表す特徴量として求めてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1 超音波診断装置
2 超音波プローブ
2a 振動素子
3 送信ビームフォーマ
4 送信器
5 受信器
6 受信ビームフォーマ
7 プロセッサ
8 表示部
9 メモリ
10 ユーザインターフェース
11 断層面
12 血管領域
13 支援画像
14、15、81、82、83、84 関心領域
19 外部記憶装置
31、32、71、72 曲線
52 被検体
81c、82c、83c、84c 時間強度曲線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18