(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137179
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】オンチップアンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 23/00 20060101AFI20230922BHJP
H01Q 9/42 20060101ALI20230922BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20230922BHJP
H01Q 13/08 20060101ALN20230922BHJP
【FI】
H01Q23/00
H01Q9/42
H01L27/04 L
H01Q13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043248
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087723
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 修
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100087723
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 修
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 英人
(72)【発明者】
【氏名】水野 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】林 宏明
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 淳一
【テーマコード(参考)】
5F038
5J021
5J045
【Fターム(参考)】
5F038AZ04
5F038CA01
5F038CA02
5F038DF02
5J021AB02
5J021AB06
5J021JA07
5J045AB05
5J045DA10
5J045MA07
(57)【要約】
【課題】オンチップアンテナの信号放射量を増加させること。
【解決手段】オンチップアンテナは、ハンドル層1と、ハンドル層1上に設けられた第1絶縁層2と、第1絶縁層2上に設けられたデバイス層3と、デバイス層3上に設けられた第2絶縁層4と、第2絶縁層4上に設けられたアンテナ5と、を有している。ハンドル層1と、第1絶縁層2と、デバイス層3はSOI基板を用いて構成されている。ハンドル層1とデバイス層3のうち、デバイス層3はグランドに接続され、ハンドル層1はフローティングにされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Siからなるハンドル層と、
前記ハンドル層上に設けられ、絶縁体からなる第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に設けられ、Siからなるデバイス層と、
前記デバイス層上に設けられ、絶縁体からなる第2絶縁層と、
前記第2絶縁層上に設けられ、所定の平面パターンの導電体からなるアンテナと、
を有し、
前記ハンドル層と前記デバイス層の少なくとも一方はフローティングである、
ことを特徴とするオンチップアンテナ。
【請求項2】
前記ハンドル層と前記デバイス層のうち薄い方がグランドに接続されている、ことを特徴とする請求項1に記載のオンチップアンテナ。
【請求項3】
前記ハンドル層がグランドに接続されている、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のオンチップアンテナ。
【請求項4】
前記ハンドル層および前記デバイス層の抵抗率は10Ω・cm以下である、ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のオンチップアンテナ。
【請求項5】
前記アンテナは、電界放射型である、ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のオンチップアンテナ。
【請求項6】
前記アンテナは、ミアンダアンテナであり、前記デバイス層は、Si発振回路を含む、ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のオンチップアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路チップとアンテナが一体化されたオンチップアンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型化や低コスト化のために、半導体集積回路のチップ上にアンテナを設けて一体化したオンチップアンテナが知られている。
【0003】
非特許文献1には、Si基板上にミアンダダイポールアンテナを形成したオンチップアンテナが記載されている。
【0004】
特許文献1には、オンチップコイルの直下に絶縁層を格子状に形成することが記載されている。これにより渦電流の発生を抑制して磁界放射量を向上させることが記載されている。
【0005】
特許文献2には、オンチップコイルの直下に空乏層を形成することが記載されている。これにより、特許文献1と同様に渦電流の発生を抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-321802号公報
【特許文献2】特開2009-252965号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】H.Kikkawa, et al., “Gaussian Monocycle Pulse Transmitter Using 0.18um CMOS Technology With On-Chip integrated Antennas for Inter-Chip UWB Communication”, JSSC, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1のように、一般的なSi基板では、オンチップアンテナと混載される回路の動作のためにSi基板がグランドに接続される。そのため、オンチップアンテナの下面がグランド面となり、オンチップアンテナからの信号放射量が低下するという問題があった。
【0009】
また、特許文献1、2の方法は磁界放射型のアンテナには有効であるが、電界放射型のアンテナでは効果が得られにくい。
【0010】
そこで本発明の目的は、オンチップアンテナの信号放射量を増加させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、Siからなるハンドル層と、前記ハンドル層上に設けられ、絶縁体からなる第1絶縁層と、前記第1絶縁層上に設けられ、Siからなるデバイス層と、前記デバイス層上に設けられ、絶縁体からなる第2絶縁層と、前記第2絶縁層上に設けられ、所定の平面パターンの導電体からなるアンテナと、を有し、前記ハンドル層と前記デバイス層の少なくとも一方はフローティングである、ことを特徴とするオンチップアンテナである。
【0012】
本発明において、ハンドル層とデバイス層のうち薄い方がグランドに接続されていることが好ましい。
【0013】
本発明において、ハンドル層がグランドに接続されていてもよい。
【0014】
本発明において、ハンドル層およびデバイス層の抵抗率は10Ω・cm以下であることが好ましい。
【0015】
本発明において、アンテナは、電界放射型であってもよい。
【0016】
本発明において、アンテナは、ミアンダアンテナであり、デバイス層は、Si発振回路を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、オンチップアンテナの信号放射量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態のオンチップアンテナの構成を示した図。
【
図2】第1実施形態のオンチップアンテナの変形例を示した図。
【
図3】ミアンダアンテナの平面パターンを示した図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図を参照に説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のオンチップアンテナの構成を示した図である。
図1のように、第1実施形態のオンチップアンテナは、ハンドル層1と、ハンドル層1上に設けられた第1絶縁層2と、第1絶縁層2上に設けられたデバイス層3と、デバイス層3上に設けられた第2絶縁層4と、第2絶縁層4上に設けられたアンテナ5と、を有している。ハンドル層1と、第1絶縁層2と、デバイス層3はSOI基板を用いて構成されている。
【0021】
ハンドル層1は、Siからなる層である。ハンドル層1の厚さは、たとえば100~1000μmである。ハンドル層1には伝導型制御のため不純物がドーピングされていてもよく、n型、真性、p型のいずれでもよい。
【0022】
第1絶縁層2は、ハンドル層1上に設けられた絶縁体からなる層である。第1絶縁層2の材料は、ハンドル層1とデバイス層3とを十分に絶縁できる材料であれば任意であり、たとえばSiO2、などである。第1絶縁層2の厚さも、ハンドル層1とデバイス層3とを十分に絶縁できる範囲であればよい。たとえば、0.1~10μmである。
【0023】
デバイス層3は、第1絶縁層2上に設けられたSiからなる層である。デバイス層3は、Siからなる半導体素子により構成される集積回路(図示しない)を含んでいる。集積回路は、たとえばSi発振回路を含む。デバイス層3の厚さは、たとえば1~100μmである。SOI基板では、通常、ハンドル層1よりもデバイス層3の方が薄い。デバイス層3には伝導型制御のため不純物がドーピングされていてもよく、n型、真性、p型のいずれでもよい。
【0024】
ハンドル層1およびデバイス層3の抵抗率は10Ω・cm以下が好ましい。ハンドル層1およびデバイス層3の抵抗率が10Ω・cm以下の場合、アンテナ5の直下にSi層が存在していることによるアンテナ5の信号放射量低下が顕著となるが、第1実施形態によれば信号放射量の低下を効果的に抑制できる。より好ましくは5Ω・cm以下、さらに好ましくは1Ω・cm以下である。
【0025】
ハンドル層1とデバイス層3のうち、デバイス層3はグランドに接続され、ハンドル層1はフローティングにされている。逆に、ハンドル層1がグランドに接続され、デバイス層3がフローティングにされていてもよい(
図2)。また、ハンドル層1とデバイス層3の両方をフローティングとしてもよい。
【0026】
グランドとの接続は、たとえば次のようにする。第1実施形態のオンチップアンテナを実装する実装基板にグランドパターンを形成し、そのグランドパターンと接続する配線を形成する。そして、ハンドル層1をグランドに接続する場合には、実装基板の配線とハンドル層1とが接するように第1実施形態のオンチップアンテナを実装基板に実装する。デバイス層3をグランドと接続する場合には、第2絶縁層4の一部を除去してデバイス層3を露出させ、第1実施形態のオンチップアンテナを実装基板に実装後、露出させたデバイス層3と実装基板の配線をワイヤボンディングで接続することでグランドと接続する。
【0027】
第2絶縁層4は、デバイス層3上に設けられた絶縁体からなる層である。第2絶縁層4の材料は、デバイス層3とアンテナ5とを十分に絶縁できる材料であれば任意であり、たとえばSiO2、などである。第1絶縁層2と第2絶縁層4は同一材料でもよい。また、第2絶縁層4の厚さも、デバイス層3とアンテナ5を十分に絶縁できる範囲であればよい。たとえば、1~500μmである。
【0028】
アンテナ5は、第2絶縁層4上に設けられ、所定の平面パターンに形成された導電体の膜である。導電体は、Al、Cu、Auなどである。アンテナ5は、デバイス層3の集積回路と接続されている。アンテナ5の位置は、集積回路の上方であってもよい。
【0029】
アンテナ5の平面パターンは、電磁波の送受信可能な任意のパターンでよい。たとえば、線路をつづら折り状としたメアンダアンテナである(
図3参照)。メアンダアンテナとすることでアンテナの帯域幅を広くすることができる。メアンダアンテナはデバイス層3がSi発振回路を含む場合に好適である。Si発振回路はトランジスタの特性ばらつきや温度特性によって周波数にばらつきを有するが、広帯域なメアンダアンテナを用いることで周波数がばらついても動作させることができる。メアンダアンテナの線路幅や折り返し回数などは、共進周波数や帯域幅に応じて設定される。メアンダアンテナ以外にも、正方形、長方形、円形のパッチアンテナなどでもよい。
【0030】
また、アンテナ5は電界放射型であることが好ましい。従来のオンチップアンテナでは、電界放射型のアンテナの信号放射量を増加させることは困難であったが、第1実施形態のオンチップアンテナでは電界放射型のアンテナであっても信号放射量を増加させることができる。
【0031】
アンテナ5の共振周波数は特に限定されないが、デバイス層3の回路の動作周波数よりも高い周波数が好ましい。たとえば、回路の動作周波数が1~2GHzであれば、アンテナ5の共振周波数は2~3GHzが好ましい。
【0032】
なお、第2絶縁層4上には、アンテナ5の他、デバイス層3の集積回路の各素子を接続する配線が設けられている(図示しない)。第2絶縁層4に空けられた孔を介してデバイス層3の素子と第2絶縁層4上の配線が接続される。第2絶縁層4と配線を交互に多層にした多層配線としてもよい。
【0033】
第1実施形態のオンチップアンテナでは、従来のオンチップアンテナに比べて信号放射量を増加させることができる。その理由は以下の通りである。
【0034】
Siは導電性を有しているため、アンテナ5の下方に存在するグランドと接続されたSi層は、アンテナ5のグランド面として機能する。一般に、アンテナ5の下面にグランド面が存在すると信号放射量が低下してしまう。そこで第1実施形態のオンチップアンテナでは、ハンドル層1とデバイス層3のうち、一方のみをグランドに接続し、他方はフローティングとしている。これにより、グランドと接続されたSi層のトータルの厚さを薄くし、Si層のアンテナ5のグランド面としての機能を弱めている。その結果、第1実施形態のオンチップアンテナではアンテナ5の信号放射量を増加させることができる。
【0035】
上記理由からわかるように、ハンドル層1とデバイス層3のうち、薄い方をグランドに接続することが好ましい。通常、SOI基板ではハンドル層1よりもデバイス層3の方が薄いため、デバイス層3をグランドに接続することが好ましいことになる。
【0036】
以上、第1実施形態のオンチップアンテナでは、アンテナ5の信号放射量を向上させることができる。
【0037】
次に、第1実施形態に関するシミュレーション結果について説明する。
【0038】
第1実施形態のオンチップアンテナについて、アンテナ5を共振周波数3GHzのミアンダアンテナとしたものを2つ用意し、2つのオンチップアンテナをアンテナ5が5mm離間するように配置した。ハンドル層1とデバイス層3は、グランドに接続した状態とフローティングにした状態とで計4つの状態に変えた。ハンドル層1およびデバイス層3の抵抗率は、40Ω・cm、10Ω・cm、1Ω・cmの3通りとした。以下、ハンドル層1をグランドに接続してデバイス層3をフローティングにしたものを実施例1、デバイス層3をグランドに接続してハンドル層1をフローティングにしたものを実施例2、両方フローティングにしたものを実施例3、両方グランドに接続したものを比較例1とする。なお、アンテナ5はデバイス層3の回路と接続せずに、アンテナ5単体で評価した。
【0039】
図4~6は、アンテナ5間の信号伝搬量の周波数特性を示したグラフである。
図4はハンドル層1およびデバイス層3の抵抗率を40Ω・cmとした場合、
図5は10Ω・cmとした場合、
図6は1Ω・cmとした場合である。
図5、6のグラフを見ると、実施例3、実施例1、実施例2、比較例1の順で信号伝搬量が多いことがわかった。この結果、グランドと接続された層数が少ないほど、信号伝搬量が多くなることがわかった。また、ハンドル層1をグランドと接続した場合よりもデバイス層3をグランドと接続した場合の方が、信号伝搬量が多かったことから、グランドと接続されたSi層(ハンドル層1とデバイス層3)のトータルの厚さが薄いほど、信号伝搬量が多くなることがわかった。また、Si層の抵抗率が低いほど、グランドとの接続状態が信号伝搬量に影響することがわかり、抵抗率が10Ω・cm以下でそれが顕著となることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は各種通信に利用できる。
【符号の説明】
【0041】
1:ハンドル層
2:第1絶縁層
3:デバイス層
4:第2絶縁層
5:アンテナ