(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137188
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】自動弁
(51)【国際特許分類】
F16T 1/10 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
F16T1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043258
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】河口 翔士郎
(57)【要約】
【課題】ドレン等の排出流体を適切に排出するとともに、蒸気等の流体漏れによる損失を抑えることができる自動弁の提供。
【解決手段】熱応動式スチームトラップ1の弁室2の底面には、上部(矢印92方向)に向けて第1内径L1、第2内径L2及び第3内径L3が順次、大きくなる第1排出路41、第2排出路42及び第3排出路43が形成されており、各々に対応して第1開閉器21、第2開閉器22及び第3開閉器23が配置されている。弁室2に蒸気が流入した場合、その高温によって各開閉器に封入されているサーモリキッドが膨張して第1弁口41a、第2弁口42a及び第3弁口43aを閉弁する。そして、弁室2にドレンが流入して貯留された場合、ドレンの水位(L1、L2又はL3)に応じた開閉器が開弁してドレンを排出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出対象流体が増加方向に沿って増加するように貯留される弁内空間が形成された弁本体、
前記弁本体に形成された複数の排出路であって、前記弁内空間を外部と連通させ、前記排出対象流体を外部に排出する複数の排出路、
前記複数の排出路の各々に対応して配置される複数の開閉機構であって、前記排出対象流体の貯留に応動し、各々独自に前記排出路を開放して前記排出対象流体を排出し、当該排出後は前記排出路を閉塞する複数の開閉機構、
を備えた自動弁であって、
前記複数の排出路における前記排出対象流体の排出可能量は各々異なり、
前記複数の開閉機構は前記増加方向において異なる位置に段階的に配置されており、
前記複数の開閉機構に対応する前記各排出路の排出可能量は、前記複数の開閉機構の段階的な配置に従って、前記増加方向に向けて順次、段階的に大きくなる、
ことを特徴とする自動弁。
【請求項2】
請求項1に係る自動弁において、
前記複数の開閉機構は、前記弁内空間に貯留された前記排出対象流体の温度変化に応動することによって、前記流体の貯留に応動して前記各排出路を開放又は閉塞する、
ことを特徴とする自動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る自動弁は蒸気が液化して発生するドレン等の流体を自動的に外部に排出する自動弁の構成についての技術に関する。
【背景技術】
【0002】
産業プラントには、ボイラーで生成された蒸気等を供給先に向けて高温・高圧で移送する配管系統が設置されていることがある。そして、この配管内で蒸気が液化しドレン(蒸気の凝縮水)が発生した場合、蒸気等の移送の障害になるため、適宜、ドレンを配管外に排出する必要がある。
【0003】
このため、配管系統の随所には、ドレンを自動的に排出するスチームトラップが設けられている。スチームトラップには様々なタイプがあり、その中に蒸気とドレンの温度の高低を利用して開閉する熱応動式のスチームトラップがある。
【0004】
後記特許文献1には、このような熱応動式スチームトラップが開示されている。この熱応動式スチームトラップの弁室3と出口5との間の隔壁6には、弁座部材7がねじ結合によって設けられている。弁座部材7には弁室3と出口5とを連通させる貫通導出路8が形成されている。そして、弁室3には、導出路8を開閉するための温度制御機素9が設けられている。
【0005】
この温度制御機素9には、周辺温度に反応して膨張又は収縮する膨張媒体15が密封されている。膨張媒体15の膨張又は収縮は、第1ダイヤフラム14及び第2ダイヤフラム18を介して弁部材16に伝わり、弁部材16が上下動することによって開閉する。
【0006】
すなわち、弁室3にドレン等の流体が流入して周辺温度が低下した場合、膨張媒体15は収縮し弁部材16が弁座部材7から離座して導出路8は開弁する。これによって、ドレンは導出路8を通じて排出される。そして、蒸気等の高温の流体が弁室3に流入し周辺温度が高まった場合、膨張媒体15は膨張し弁部材16が弁座部材7に着座して導出路8を閉弁する。これによって蒸気等の流体の漏れを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前述の特許文献1に開示された熱応動式スチームトラップにおいては、開弁状態下でドレンを排出した後、開弁状態から閉弁状態に変位するまでの間に蒸気漏れが発生する虞がある。すなわち、導出路8を開弁してドレンを排出した後、温度制御機素9は弁室3に流入する高温の蒸気に応動して導出路8を閉弁するが、この応動にはある程度の時間を要する。したがって、この間、導出路8から蒸気が漏れ出す場合があり得る。
【0009】
特に、装置の作動直後における初期のエアーや、作動中に発生するドレンを迅速に排出することができるように、弁座部材7に形成する導出路8の口径は比較的大きく確保されている。このため、漏れ出す蒸気量も多くなり蒸気ロスによる損失は大きくなる。この点、導出路8の口径を小さく設定すれば蒸気ロスを抑えることができるが、反面、ドレンの排出量が減少し、ドレンを迅速に排出することができなくなる。
【0010】
そこで本願に係る自動弁は、ドレン等の排出対象流体を迅速に排出するとともに、蒸気等の流体漏れによる損失を抑えることができる自動弁の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願に係る自動弁は、
排出対象流体が増加方向に沿って増加するように貯留される弁内空間が形成された弁本体、
前記弁本体に形成された複数の排出路であって、前記弁内空間を外部と連通させ、前記排出対象流体を外部に排出する複数の排出路、
前記複数の排出路の各々に対応して配置される複数の開閉機構であって、前記排出対象流体の貯留に応動し、各々独自に前記排出路を開放して前記排出対象流体を排出し、当該排出後は前記排出路を閉塞する複数の開閉機構、
を備えた自動弁であって、
前記複数の排出路における前記排出対象流体の排出可能量は各々異なり、
前記複数の開閉機構は前記増加方向において異なる位置に段階的に配置されており、
前記複数の開閉機構に対応する前記各排出路の排出可能量は、前記複数の開閉機構の段階的な配置に従って、前記増加方向に向けて順次、段階的に大きくなる、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願に係る自動弁においては、複数の排出路における排出対象流体の排出可能量は各々異なり、複数の開閉機構は増加方向において異なる位置に段階的に配置されている。そして、複数の開閉機構に対応する各排出路の排出可能量は、複数の開閉機構の段階的な配置に従って、増加方向に向けて順次、段階的に大きくなる。
【0013】
このため、排出対象流体の貯留量が比較的少ない場合、この貯留量に応じた開閉機構が、排出可能量が比較的小さい排出路を開放して排出対象流体を排出し、この後、排出路を閉塞する。したがって、排出対象流体の排出後、排出路を閉塞するまでの間における、排出対象以外の流体の流体漏れによる損失を抑えることができる。
【0014】
そして、各排出路の排出可能量は、複数の開閉機構の段階的な配置に従って、増加方向に向けて順次、段階的に大きくなっているため、排出対象流体の貯留量が多くなれば、それに相応して排出対象流体の排出量をより多く確保することができる。したがって、多量のドレン等の排出流体を迅速に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本願に係る自動弁の第1の実施形態を示す熱応動式スチームトラップ1の一部断面図である。
【
図2】
図1に示す熱応動式スチームトラップ1の弁室2の平面図である。
【
図3】
図1に示す第1開閉器21近傍の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る自動弁の下記の要素に対応している。
【0017】
熱応動式スチームトラップ1・・・自動弁
弁室2・・・弁内空間
ケーシング11及びケーシング蓋12・・・弁本体
第1開閉器21、第2開閉器22及び第3開閉器33・・・複数の開閉機構
第1排出路41、第2排出路42及び第3排出路43・・・複数の排出路
矢印92方向・・・増加方向
ドレン・・・排出対象流体
【0018】
[第1の実施形態]
本願に係る自動弁の第1の実施形態を、熱応動式スチームトラップ1を例に掲げて説明する。産業プラントには、ボイラーで生成された蒸気を供給先に向けて高温・高圧で移送する配管系統が設置されていることがある。この配管内で蒸気が液化するとドレン(蒸気の凝縮水)が滞留し、蒸気移送のための空間が縮小される結果、蒸気の移送効率が低下してしまう。
【0019】
このような事態を回避するために、配管には随所に多数のスチームトラップが設けられる。スチームトラップは自動的に開閉を繰り返し、ドレンを適宜、配管系統の外部に排出する自動弁である。スチームトラップには様々な種類があるが、熱応動式スチームトラップは、蒸気とドレンの温度の高低を利用して開閉する自動弁である。
【0020】
(熱応動式スチームトラップ1の構成の説明)
図1は本実施形態における熱応動式スチームトラップ1の一部断面図であり、
図2は弁室2の平面図である。熱応動式スチームトラップ1は、ケーシング11及びケーシング蓋12から構成される本体を備えている。ケーシング11とケーシング蓋12とは固定具13によって固定され、内部に気密性を保った弁室2を形成する。
【0021】
ケーシング蓋12には流入口14が形成され、ケーシング11には流出口15が形成されている。流入口14と流出口15とは同軸上に配置され、鉛直方向に向けて形成される。蒸気移送の配管の主管には支管が連通して設けられており(図示せず)、この支管に流入口14が接続され、ここから蒸気やドレンが上方から下方に向けて(矢印91方向)弁室2に流入する。
【0022】
弁室2の底部は、鉛直方向(矢印91方向及び矢印92方向)に沿って階段状に構成されており、本実施形態においては階段状の各水平面が弁座として構成される。
図1に示すように最下部の水平面から順に第1弁座31、第2弁座32及び第3弁座33として配置される。
【0023】
そして、これら第1弁座31、第2弁座32及び第3弁座33の各々に対応し、ケーシング11には弁室2と流出口15とを連通させる第1排出路41、第2排出路42及び第3排出路43が鉛直方向(矢印91方向及び矢印92方向)に延びて形成されている。第1排出路41、第2排出路42及び第3排出路43は円筒形状を有しており、各々の内径である第1内径L1、第2内径L2及び第3内径L3は互いに異なる長さに形成されている。
【0024】
そして、第2内径L2は第1内径L1よりも大きく、第3内径L3は第2内径L2よりも大きく構成されている。すなわち、第1排出路41の第1内径L1、第2排出路42の第2内径L2及び第3排出路43の第3内径L3は、対応する第1弁座31、第2弁座32及び第3弁座33の上部方向(矢印92方向)に向けて順次、段階的に大きくなるように形成されている。
【0025】
第1弁座31、第2弁座32及び第3弁座33の各上部には、それぞれ近接した状態で第1開閉器21、第2開閉器22及び第3開閉器23が設けられている。各図において第1開閉器21、第2開閉器22及び第3開閉器23は断面図ではなく側面図として表されている。また
図1は、第1開閉器21、第2開閉器22及び第3開閉器23のそれぞれの配置を模式的に示している。なお、第1開閉器21、第2開閉器22及び第3開閉器23は、それぞれ円盤形状を有しており、弁室2内においてケーシング11に支持されて固定されている。
【0026】
図3は、第1弁座31及び第1開閉器21の拡大図である。第1排出路41には第1小径部41b及び第1弁口41aが連続的に接続されており、第1排出路41はこれら第1小径部41b及び第1弁口41aを介して弁室2に連通している。なお、第1小径部41bの内径は、第1排出路41の内径及び第1弁口41aの内径よりも小さく、第1小径部41bの上下端にそれぞれ形成されたテーパー面によって第1排出路41及び第1弁口41aと接続されている。
【0027】
一方、第1開閉器21の底面は弾性薄膜である第1ダイヤフラム21bによって構成されており、この第1ダイヤフラム21bの外側底面には、さらに第1弁体部21aが固定されている。そして、第1弁体部21aは第1弁口41aに近接して配置されている。
【0028】
第1開閉器21の内部にはサーモリキッド(感温液)が封入されており、第1開閉器21の周辺温度が所定の膨張基準温度a1以上になったとき、サーモリキッドが気化して膨張し、第1ダイヤフラム21bを外側に押し出すようになっている。これによって、第1ダイヤフラム21bに固定された第1弁体部21aは第1弁口41aに向けて移動し、第1弁座31に着座して第1弁口41aを閉塞する。
図1及び3は、第1弁体部21aが第1弁口41aを閉塞した閉弁状態を示している。
【0029】
これに対して、第1開閉器21の周辺温度が収縮基準温度a2(a2<a1)を下回ったとき、サーモリキッドは液化して収縮する。この場合、第1開閉器21は弁室2内の流体圧を受け、第1ダイヤフラム21bに固定された第1弁体部21aは第1弁口41aから離れる方向に移動し、第1弁座31から離座して第1弁口41aを開放する(開弁状態:図示しない)。
【0030】
本実施形態においては、膨張基準温度a1は蒸気の温度よりも低く設定されており、収縮基準温度a2はドレンの温度よりも高く設定されている。なお、a1(膨張基準温度)とa2(収縮基準温度)とを、膨張及び収縮のしきい値として同じ値を採用することもできる。
【0031】
第1弁座31及び第1開閉器21は以上のような構成を備えている。そして、第2弁座32及び第2開閉器22、第3弁座33及び第3開閉器23も、上述した第1弁座31及び第1開閉器21と同じ構成を有している。
【0032】
すなわち、第2開閉器22及び第3開閉器23も内部にサーモリキッドが封入されており、周辺温度に応じて膨張又は収縮する。そして、第2開閉器22及び第3開閉器23の各底面に設けられた第2ダイヤフラム及び第3ダイヤフラムを通じて第2弁体部22a及び第3弁体部23aが上下移動し、それぞれ第2弁座32及び第3弁座33に着座又は離座して、各々、第2弁口42a及び第3弁口43aを開閉する。
【0033】
(熱応動式スチームトラップ1の動作の説明)
続いて、熱応動式スチームトラップ1の動作を説明する。配管系統が蒸気の移送を開始する前の初期段階においては、熱応動式スチームトラップ1の弁室2を含む配管系統には初期エアーが充満している。このため、熱応動式スチームトラップ1の第1開閉器21、第2開閉器22及び第3開閉器23の周辺温度は低温で収縮基準温度a2を下回っているため、第1弁口41a、第2弁口42a及び第3弁口43aはすべて開弁状態となっている。
【0034】
この状態で配管系統が蒸気の移送を開始した場合、蒸気の移送圧に従って配管系統の初期エアーは開弁状態の第1弁口41a、第2弁口42a及び第3弁口43aから迅速に排出される。初期エアーの排出後、熱応動式スチームトラップ1の流入口14から弁室2に蒸気が流入し、弁室2には蒸気が充満する。
【0035】
この蒸気の高温を受け、第1開閉器21、第2開閉器22及び第3開閉器23の各々の内部に封入されているサーモリキッドは気化して膨張し、第1弁口41a、第2弁口42a及び第3弁口43aはすべて閉弁状態に至る。この閉弁状態によって、移送中の蒸気が熱応動式スチームトラップ1から漏れ出すことはない。
【0036】
そして、配管内で蒸気が液化してドレンが発生した場合、熱応動式スチームトラップ1の流入口14から矢印91方向に沿って弁室2にドレンが流入する。流入したドレンは弁室2に貯留され、貯留量に応じてドレンの水位は弁室2において矢印92方向に上昇する。
【0037】
この流入するドレン量は配管系統における蒸気の移送状況によって様々であり、たとえばポンプの駆動による高圧の圧送を受けて蒸気が移送されている状況下では、弁室2には多量のドレンが一気に流入することがある。この場合、弁室2には短時間で多量のドレンが貯留され、ドレンの水位は一気に
図1に示す第3レベル63に達する。多量のドレンが発生すると配管系統にドレンが充満してしまう危険があるため、この多量のドレンを迅速に排出する必要がある。
【0038】
ドレンの水位が第3レベル63に達したことによって、第1開閉器21、第2開閉器22及び第3開閉器23はすべてドレンに水没した状態になる。このドレンの水没によって、第1開閉器21、第2開閉器22及び第3開閉器23の周辺温度は急速に低下する。これによって、第1開閉器21、第2開閉器22及び第3開閉器23の各々の内部に封入されているサーモリキッドは液化して収縮し、第1弁口41a、第2弁口42a及び第3弁口43aはすべて開弁状態となる。
【0039】
第1弁口41a、第2弁口42a及び第3弁口43aのすべてが開弁したことによって、弁室2内に貯留されていた多量のドレンは配管系統の高圧の勢いを受け、第1弁口41a、第2弁口42a及び第3弁口43aから自動的に排出される。第1弁口41a、第2弁口42a及び第3弁口43aがすべて開弁しており、かつ第1排出路41、第2排出路42及び第3排出路43の各内径(第1内径L1、第2内径L2及び第3内径L3)は順次大きく構成されているため、この場合の熱応動式スチームトラップ1の排出能力は非常に高くドレンの迅速な排出が実現する。
【0040】
弁室2内のドレンが排出された後、弁室2には再び蒸気が流入する。このため、第1開閉器21、第2開閉器22及び第3開閉器23の各々の内部に封入されているサーモリキッドは気化して膨張し、第1弁口41a、第2弁口42a及び第3弁口43aはすべて閉弁状態に復位する。
【0041】
これに対して、弁室2に少量のドレンが流入し、ドレンの水位が
図1に示す第1レベル61に止まっている場合は、第1開閉器21のみがドレンに水没した状態であり、第2開閉器22及び第3開閉器23は高温の蒸気にさらされたままである。このため、第1開閉器21のみが開弁し、第2開閉器22及び第3開閉器23は閉弁状態を維持する。
【0042】
これによって、第1弁口41aからのみ第1排出路41を通じてドレンが排出される。ここで、第1排出路41の第1内径L1は、他の排出路の第2内径L2及び第3内径L3よりも小さいため排出能力はそれ程高くないが、ドレンの貯留量が比較的少ないため迅速な排出を確保することができ、この点支障はない。しかも、ドレン排出後に弁室2に蒸気が流入した場合、開弁しているのは第1弁口41aのみであり、これに対応する第1排出路41の第1内径L1が比較的小さいことから、閉弁状態に変位するまでの間に流出する蒸気量を低く抑えることができる。
【0043】
また、弁室2に流入したドレンの水位が
図1に示す第2レベル62である場合は、第1開閉器21及び第2開閉器22がドレンに水没した状態であり、第3開閉器23は高温の蒸気にさらされたままである。このため、第1開閉器21及び第2開閉器22が第1弁口41a及び第2弁口42aを開弁し、第3開閉器23は第3弁口43aの閉弁状態を維持する。
【0044】
これによって、第1弁口41a及び第2弁口42aから第1排出路41及び第2排出路42を通じてドレンが迅速に排出される。そして、ドレン排出後に弁室2に蒸気が流入した場合、開弁しているのは第1弁口41a及び第2弁口42aであり、第3弁口43aは閉塞しているため、最も大きな内径(第3内径L3)の第3排出路43から蒸気漏れが生じることはなく、第1弁口41a及び第2弁口42aが閉弁状態に変位するまでの間に流出する蒸気量を低く抑えることができる。
【0045】
以上のように、本実施形態では第1排出路41、第2排出路42及び第3排出路43について、それぞれの第1内径L1、第2内径L2及び第3内径L3が、増加方向である矢印92方向に向けて順次、段階的に大きくなるように形成されている。そして、各第1排出路41、第2排出路42及び第3排出路43に対応して設けられている第1開閉器21、第2開閉器22及び第3開閉器23は、順次、矢印92方向に向けて上部に配置されている。そして、弁室2内に貯留されるドレン量に応じた第1開閉器21、第2開閉器22又は第3開閉器23が、第1弁口41a、第2弁口42a又は第3弁口43aを開放して開弁させる。
【0046】
すなわち、弁室2内におけるドレンの貯留量が比較的少ない場合、この貯留量に応じた開閉器が、排出可能量が比較的小さい排出路を開放してドレンを排出し、この後、排出路を閉塞する。したがって、ドレンの排出後、排出路を閉塞するまでの間における蒸気の蒸気漏れによる損失を抑えることができる。
【0047】
そして、各排出路の排出可能量は、第1開閉器21、第2開閉器22又は第3開閉器23の段階的な配置に従って、矢印92方向に向けて順次、段階的に大きくなっているため、弁室2におけるドレンの貯留量が多くなれば、それに相応してドレンの排出量をより多く確保することができる。したがって、多量のドレンを迅速に排出することができる。
【0048】
[その他の実施形態]
前記実施形態においては、自動弁として熱応動式スチームトラップ1を例示したが、これに限定されるものではなく、他の構成を備えた自動弁に、本願に係る自動弁の構成を適用してもよい。
【0049】
また、前記実施形態においては、排出対象流体としてドレンを例示し、排出対象以外の流体として蒸気を例示したが、これらに限定されるものではなく、ドレン又は蒸気以外の流体を対象とするものであってもよい。
【0050】
さらに、前記実施形態においては、複数の排出路として3つの第1排出路41、第2排出路42及び第3排出路43を例示したが、2つ又は4つ以上の排出路を設けることもできる。また、排出路は、弁本体(ケーシング11及びケーシング蓋12等)に形成され、弁内空間(弁室2等)を外部と連通させ、ドレンを外部に排出するものであれば、他の形状、構造を採用することができる。
【0051】
また、前記実施形態においては、複数の開閉機構として、3つの第1開閉器21、第2開閉器22及び第3開閉器33を例示したが、2つ又は4つ以上の開閉器を設けてもよい。さらに、第1開閉器21、第2開閉器22及び第3開閉器33が、封入されたサーモリキッドの収縮又は膨張によって開閉動作を行う構成を例示したが、複数の排出路の各々に対応して配置され、排出対象流体(ドレン等)の貯留に応動し、各々独自に排出路(第1排出路41、第2排出路42及び第3排出路43等)を開放して排出対象流体を排出し、当該排出後は排出路を閉塞するものであれば、他の形状、構造を採用することができる。
【0052】
たとえば、周辺温度に応動して変形するバイメタルを利用して開閉動作を行う開閉器を用いることもできる。また、たとえば排出対象流体(ドレン等)の貯留に応じて浮動するフロート式の開閉器等、温度以外に応動する構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1:熱応動式スチームトラップ 2:弁室 11:ケーシング 12:ケーシング蓋
21:第1開閉器 22:第2開閉器 33:第3開閉器 41:第1排出路
42:第2排出路 43:第3排出路