(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137213
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】製造ラインおよび製造ラインの稼働方法
(51)【国際特許分類】
B65G 43/00 20060101AFI20230922BHJP
G05B 9/02 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B65G43/00 A
G05B9/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043309
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】岡本 賢一
【テーマコード(参考)】
3F027
5H209
【Fターム(参考)】
3F027AA02
3F027CA01
3F027DA04
3F027EA01
3F027EA09
3F027FA00
5H209AA09
5H209BB07
5H209BB13
5H209DD02
5H209DD08
5H209FF05
5H209HH04
5H209JJ01
5H209JJ09
(57)【要約】
【課題】処理装置から、物体を搬送する搬送装置への信号伝達が不可能あるいは難しいとしても、処理装置と搬送装置との間にインターロックを実現すること。
【解決手段】製造ラインは、所定の処理を行う処理機構と、所定の操作を行う操作スイッチと、を含む処理装置と、物体を搬送する搬送機構と、処理装置とは制御系が異なる制御部と、を含む搬送装置と、操作スイッチの操作を検知可能に構成されている操作検知部と、を備える。操作検知部は、操作スイッチの操作に対応する出力代替信号を出力する。制御部は、出力代替信号が入力されると、出力代替信号を用いて、搬送機構の搬送動作を開始するために必要な条件の成否状態を設定するインターロック部を含む。本開示によれば、処理装置の電気的な改造が必要となることなく、インターロックを実現することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の処理を行う処理機構と、所定の操作を行う操作スイッチと、を含む処理装置と、
物体を搬送する搬送機構と、前記処理装置とは制御系が異なる制御部と、を含む搬送装置と、
前記操作スイッチの操作を検知可能に構成されている操作検知部と、を備え、
前記操作検知部は、前記操作スイッチの操作に対応する出力代替信号を出力し、
前記制御部は、前記出力代替信号が入力されると、前記出力代替信号を用いて、前記搬送機構の搬送動作を開始するために必要な条件の成否状態を設定するインターロック部を含む、
製造ライン。
【請求項2】
前記処理装置は、1つ以上の前記操作スイッチを含み、
前記制御部は、所定の前記操作スイッチの操作に対応する前記出力代替信号が入力されると、前記搬送機構により前記搬送動作を実行させる、
請求項1に記載の製造ライン。
【請求項3】
前記搬送装置は、
前記条件が成立していないために前記搬送動作を開始できない場合には、所定の情報を報知する報知部を備える、
請求項1または2に記載の製造ライン。
【請求項4】
前記処理装置の起動に対応する前記操作スイッチとしての起動スイッチと、前記処理装置の停止に対応する前記操作スイッチとしての停止スイッチと、を含む前記処理装置を備え、
前記インターロック部は、前記起動スイッチの操作に対応する前記出力代替信号と、前記停止スイッチの操作に対応する前記出力代替信号とを前記条件の成否状態の設定に用いる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の製造ライン。
【請求項5】
前記起動スイッチおよび前記停止スイッチを含み、前記搬送装置により供給される前記物体を検査する前記処理装置としての検査装置を備える、
請求項4に記載の製造ライン。
【請求項6】
光電センサに相当する前記操作検知部を備え、
前記操作検知部は、前記操作スイッチの近傍に配置される部材に設けられる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の製造ライン。
【請求項7】
所定の操作を行う操作スイッチを含む処理装置と、物体を搬送する搬送装置と、を備える製造ラインを稼働させる稼働方法であって、
前記製造ラインは、前記操作スイッチの操作を検知可能に構成される操作検知部を備え、
前記操作検知部は、前記操作スイッチの操作に対応する出力代替信号を出力し、
前記稼働方法は、前記搬送装置に前記出力代替信号が入力されると、前記出力代替信号を用いて、前記搬送装置による搬送動作を開始するために必要な条件の成否状態を設定することで、前記処理装置の所定の前記操作スイッチが操作された場合に限り前記搬送動作の開始を許可するインターロックを実現する、
製造ラインの稼働方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば飲料製品等の物体に対して処理を行う装置、および物体を搬送する装置を備える製造ラインと、当該製造ラインを稼働させる方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料製品等を製造するラインは、例えば、容器に充填されている製品液の液位や、製品液が充填されている容器の重量、あるいは容器のラベルや印字等の状態を検査する検査装置を備えている。検査装置により基準を満たさないと判定された容器は、例えば、特許文献1に記載されているように、当該容器の通過を検出する検出器からの検出信号と搬送速度とから演算されたタイミングで、排出装置により搬送装置上から押し出されて排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
仮に、検査装置を起動しないで、検査装置に容器を供給する搬送装置の動作を開始したとする。その場合は、検査装置が作動していないので、当然、容器の検査が行われない。それを想定すると、検査装置が起動されたことを示す信号が搬送装置に入力されることが好ましい。そうした信号が未入力の状態ならば搬送動作が開始されないように、搬送装置の制御部により搬送動作の開始を制限するとよい。
【0005】
しかし、検査装置の制御部は、専用基板であることが多く、一般的な産業機械とは異なり、起動ボタン等に対応する回路に接点を追加するといった改造が困難である。つまり、必ずしも、検査装置の制御部から、制御系の異なる搬送装置へと信号を出力することができない。また、検査装置の制御部の改造は、可能であるとしても多大なコストを要する。
これは、検査装置の起動に限ったことではない。例えば、製品液の濃度、温度等を検知するセンサ装置や、容器に印字する印字装置等についても、生産を開始する前に、当該装置を起動しておく、あるいは生産開始にあたり必要な状態を当該装置に与えるリセット等の操作を完了しておく必要がある。
【0006】
以上より、本開示は、何らかの処理を行う処理装置から、物体を搬送する搬送装置への信号伝達が不可能あるいは難しいとしても、処理装置と搬送装置との間にインターロックを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る製造ラインは、所定の処理を行う処理機構と、所定の操作を行う操作スイッチと、を含む処理装置と、物体を搬送する搬送機構と、処理装置とは制御系が異なる制御部と、を含む搬送装置と、操作スイッチの操作を検知可能に構成されている操作検知部と、を備える。操作検知部は、操作スイッチの操作に対応する出力代替信号を出力し、制御部は、出力代替信号が入力されると、出力代替信号を用いて、搬送機構の搬送動作を開始するために必要な条件の成否状態を設定するインターロック部を含む。
【0008】
また、本開示は、所定の操作を行う操作スイッチを含む処理装置と、物体を搬送する搬送装置と、を備える製造ラインを稼働させる稼働方法である。製造ラインは、操作スイッチの操作を検知可能に構成される操作検知部を備える。操作検知部は、操作スイッチの操作に対応する出力代替信号を出力する。稼働方法は、搬送装置に出力代替信号が入力されると、出力代替信号を用いて、搬送装置による搬送動作を開始するために必要な条件の成否状態を設定することで、処理装置の所定の操作スイッチが操作された場合に限り搬送動作の開始を許可するインターロックを実現する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、処理装置の操作スイッチの操作に対応する出力代替信号としての操作検知信号を搬送装置の入力として利用することにより、処理装置の制御部を改造することなく、搬送動作の開始に必要な条件に適合するインターロックを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本開示の実施形態に係る製造ラインを示す側面図である。
【
図1B】
図1Aの製造ラインに備わる検査装置と、検査装置に物体を供給する搬送装置の制御盤とを示す立面図である。
【
図2】検査装置および搬送装置のそれぞれの構成を示すブロック図である。
【
図3A】操作スイッチを備えた検査装置の外観斜視図である。
【
図3B】操作スイッチが押下される様子を示す側面図である。
【
図4】各操作スイッチに対応する操作検知部からの出力代替信号の入力、およびインターロック部による搬送動作開始条件の成否状態の設定について説明するための模式図である。
【
図5】出力代替信号の入力による搬送動作の自動開始を説明するための模式図である。
【
図6A】第1変形例に係る操作スイッチおよび操作検知部を示す側面模式図である。
【
図7A】第2変形例に係る操作スイッチおよび操作検知部を示す側面模式図である。
【
図7B】
図7Aに示す操作スイッチが押された状態を示す側面模式図である。
【
図8】第3変形例に係る操作スイッチおよび操作検知部を示す斜視図である。
【
図9】第4変形例に係る操作スイッチおよび操作検知部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態について説明する。
〔実施形態の装置構成〕
図1Aは、飲料製品等の製品の製造ライン1の一部を示している。製造ライン1は、物体2を搬送する搬送装置10と、物体2を処理する処理装置としての検査装置20とを備えている。物体2は、例えば、製品液が充填されている容器や、複数の容器を収容している箱等に相当する。
【0012】
(搬送装置)
搬送装置10は、
図1Aおよび
図1Bに示すように、単一または複数のコンベヤ装置からなる搬送機構11と、搬送開始スイッチ111と、搬送停止スイッチ112と、搬送開始スイッチ111や搬送停止スイッチ112が操作されたことを示す信号、あるいは図示しないセンサが検知する信号等を用いて搬送機構11の動作を制御する制御部12(
図1B)と、外部信号の入出力部13と、所定の音や光等の情報を報知することが可能に構成されている報知部14とを備えている。搬送装置10には、図示しない電源により電力が供給される。
【0013】
搬送開始スイッチ111が操作されると、搬送機構11を駆動する図示しないモータが作動することで、搬送機構11による搬送動作が開始する。搬送停止スイッチ112が操作されると、モータが停止することで搬送機構11が搬送動作を停止する。
ここで、搬送開始スイッチ111の操作等により搬送装置10の動作を開始するにあたっては、搬送装置10により物体2が供給される検査装置20を起動しておく必要がある。仮に、検査装置20を起動しない状態で搬送装置10による物体2の搬送を開始すると、検査装置20による物体2の検査が行われない。
【0014】
そのため、制御部12は、
図2に示すように、検査装置20と搬送装置10との間にインターロックを与えるインターロック部120を備えている。
制御部12は、回路素子を備えた制御回路基板であってもよいし、演算部、メモリ、および記憶部を備えたコンピュータ装置であってもよい。制御部12がコンピュータ装置である場合は、コンピュータプログラムに基づいてインターロック部120を作動させる。
【0015】
(検査装置)
検査装置20は、搬送機構11により供給される物体2の重量、または液位、あるいは外観について検査する。検査装置20は、検査した物体2が基準を満たしていないと判定すると、そのことをブザー等により報知する。
搬送装置10は、検査装置20により基準を満たしていないと判定された物体2を搬送機構11の搬送面11A上から排出させる図示しない排出機構を備えていてもよい。
【0016】
検査装置20は、
図2および
図3Aに示すように、物体2を検査するために作動する検査機構21および制御部22と、筐体23と、報知部24と、2つの操作スイッチとしての起動スイッチ201および停止スイッチ202とを備えている。
起動スイッチ201および停止スイッチ202は、例えば、
図3Bに起動スイッチ201を示すように、指Fで表面201Aを押すことにより操作される押しボタンに相当する。なお、起動スイッチ201および停止スイッチ202は、押しボタンには限らず、例えば、シート状のスイッチであってもよい。
【0017】
起動スイッチ201が操作されると検査装置20は起動され、図示しない電源から供給される電力により検査機構21が物体2を検査可能な状態となる。停止スイッチ202が操作されると、検査機構21および制御部22の作動が停止する。
【0018】
図3Aに示すように、起動スイッチ201の近傍には、起動スイッチ201の操作を検知可能に構成されている起動操作検知部101が配置されている。
起動操作検知部101は、起動スイッチ201を間に挟んで対向する投光部101Aおよび受光部101Bを含んで、透過式の光電センサとして構成されている。投光部101Aおよび受光部101Bは、筐体23に設けられ、スイッチ操作用の開口231Aを有したハウジング231に収容されている。起動操作検知部101は、図示しない電源に接続されるか、あるいはバッテリを内蔵している。
【0019】
図3Bには、投光部101Aにより起動スイッチ201の表面201Aに沿って出射され、受光部101Bに入射する複数の光束のそれぞれの光軸Lが示されている。各光束の光軸Lは、互いに平行に設定されている。少なくとも一部の光束が指Fにより遮られると、起動操作検知部101は、受光部101Bにより出力される電気的な信号に基づいて、起動スイッチ201が操作されたことを検知する。起動スイッチ201の表面201Aを押しボタンの軸線方向に投影したとき、その投影範囲には複数の光束が適宜に分布している。そのため、起動スイッチ201を指Fで押したことを安定して検知することができる。
【0020】
停止スイッチ202の近傍にも、同様に光電センサとしての停止操作検知部102が配置されている。停止操作検知部102は、起動操作検知部101と同様に、投光部102Aおよび受光部102Bを含んで構成されている。
なお、起動操作検知部101および停止操作検知部102は、透過式の光電センサには限らず、反射式あるいは拡散反射式の光電センサであってもよい。
【0021】
〔インターロックの説明〕
図2および
図4を参照し、検査装置20と搬送装置10との間のインターロックについて説明する。
図2に示すように、検査装置20と、搬送装置10とはそれぞれの制御系(制御部22,12)が異なる。検査装置20は外部機器との間で信号を送受信するための入出力部を備えていない。
そのため、例えば、搬送開始スイッチ111を操作することで搬送機構11の動作を開始しても、検査装置20は起動されない。
また、検査装置20の制御部22は、起動スイッチ201等の操作に対応する信号を外部の装置には出力しない。
【0022】
上記の通り、検査装置20の制御部22と搬送装置10の制御部12とは、信号伝達可能な状態にはない。
そこで、起動操作検知部101および停止操作検知部102は、起動スイッチ201および停止スイッチ202の操作に関し、制御部22からの出力信号に代替される出力代替信号として、対応する操作スイッチ(201,202)が操作されると、それを検知して操作検知信号(S1,S2)を出力する。
【0023】
起動操作検知部101から出力される起動操作検知信号S1は、電線W1と、搬送装置10の入出力部13とを介して制御部12へと入力される。同様に、停止操作検知部102から出力される停止操作検知信号S2は、電線W2と、搬送装置10の入出力部13とを介して制御部12へと入力される。
なお、起動操作検知部101および停止操作検知部102と、入出力部13とは、無線接続されていてもよい。その場合、起動操作検知部101、停止操作検知部102、および入出力部13はそれぞれ、アンテナを備えている。
【0024】
本実施形態の起動操作検知部101および停止操作検知部102は、物理的には、起動スイッチ201および停止スイッチ202を備えた検査装置20に設けられている。しかし、起動操作検知部101および停止操作検知部102は、操作検知信号S1,S2を出力し、操作検知信号S1,S2は制御部12に入力されるので、搬送装置10の制御系の一部を構成している。
インターロック部120は、起動操作検知信号S1または停止操作検知信号S2が入力されると、操作検知信号S1,S2を用いて、搬送機構11の動作を開始するための必要条件の成否状態を設定することで、起動スイッチ201が操作された場合に限り搬送機構11の動作開始を許可するインターロックを実現する。
【0025】
本実施形態のインターロック制御の一例を示しつつ、搬送開始のための必要条件の成否状態の設定について説明する。
インターロック制御対象 :搬送機構11による搬送動作の開始
搬送開始必要条件C :検査装置20の起動スイッチ201が操作されたこと。
条件Cが成立(成) :条件成否フラグ121は「搬送許可」
条件Cが不成立(否) :条件成否フラグ121は「搬送禁止」
搬送動作の開始可否の判定:条件成否フラグ121が「搬送許可」ならば、搬送開始動作を行う。条件成否フラグ121が「搬送禁止」ならば、搬送開始動作を行わない。
【0026】
インターロック部120は、条件成否フラグ121として搬送許可および搬送禁止のいずれかを示す情報を保持する。条件成否フラグ121の初期値は、「搬送禁止」である。
【0027】
図4に示すように、検査装置20の起動スイッチ201が操作されると、起動操作検知部101により検知される起動操作検知信号S1が制御部12のインターロック部120へと入力される。インターロック部120は、条件成否フラグ121を「搬送許可」に設定する。
続いて、搬送装置10の搬送開始スイッチ111を操作すると、制御部22は、条件成否フラグ121が「搬送許可」である場合は、搬送機構11により搬送動作を開始する。この場合は、検査装置20は既に起動されて検査可能な状態にあるので、搬送機構11により検査装置20に供給される物体2の検査が行われる。
【0028】
一方、搬送装置10の搬送開始スイッチ111を操作したとき、条件成否フラグ121が「搬送禁止」である場合は、検査装置20の起動スイッチ201の操作が行われていないので、搬送機構11による搬送動作を開始しない。この場合は、搬送装置10の報知部14により、警告音等を発生させることが好ましい。また、報知部24により、例えば、「搬送動作をスタートできません。検査装置を起動してください。」といった情報を制御部12のモニタ画面に表示することも好ましい。
【0029】
検査装置20の停止スイッチ202が操作されると、停止操作検知部102により検知される停止操作検知信号S2がインターロック部120に入力される。インターロック部120は、条件成否フラグ121を搬送禁止に設定する。
【0030】
〔本実施形態による作用効果〕
仮に製造ライン1が起動操作検知部101および停止操作検知部102を備えていないとすると、検査装置20の制御部22から搬送装置10の制御部12へとインターロックに必要な操作信号を送るために、例えば、起動スイッチ201に対応する回路に接点を追加し、検査装置20に出力端子を設けるといった制御部22の改造が必要となる。一般的な産業機械の制御部における汎用スイッチには、接点を容易に追加することができる。産業機械に相当する搬送装置10の制御部12も、こうした改造に対応している。
それに対し、検査装置20は、民生品であったり、そもそも改造が予定されていないため専用基板を備えていたりするので、制御部22の改造は不可能または困難であり、たとえ可能であるとしても多大なコストを要する。
また、水や液滴、あるいは塵埃等から制御部22を保護して誤作動を防ぐため、筐体23の内部を密閉された状態に保つ観点からは、筐体23を開けて制御部22を改造し、筐体23に出力端子等を設けるといった改造を出来るだけ避けたい。
【0031】
本実施形態の製造ライン1、および本実施形態のインターロック制御を伴う製造ライン1の稼働方法によれば、検査装置20の操作スイッチ201,202の操作に対応する出力代替信号としての操作検知信号S1,S2を搬送装置10の入力として利用する。そのため、検査装置20の制御部22を改造することなく、起動スイッチ201が操作された場合に限り搬送機構11の動作開始を許可するインターロックを実現することができる。かかるインターロックによれば、検査装置20を起動させていないにもかかわらず搬送装置10により物体2が検査装置20に供給されてしまうことを未然に防ぐことができる。
【0032】
本実施形態のインターロックを実現するため、操作検知部101,102としては、例えば安価で入手が容易な光電センサ(101A,101B)を筐体23の外側の壁や、操作スイッチ201,202の近傍に位置する部材等に設けることができる。また、搬送装置10の制御部12としては、操作検知信号S1,S2を用いるインターロック部120を付加するために回路やプログラムモジュールの改変を適宜に行うことができる。
こうした操作検知部101,102の設置および制御部12へのインターロック部120の付加は、新規に製造される製造ライン1に対して行われる他、既存の製造ラインに対しても行うことができる。
【0033】
本実施形態のインターロックの目的は、検査装置20の起動操作と、搬送装置10の起動操作との両方が行われた場合に限り搬送動作の開始を許可することにある。よって、検査装置20と搬送装置10との起動順序は問わない。
【0034】
図5は、インターロック制御の他の一例を示している。この例では、起動スイッチ201の操作に対応する起動操作検知信号S1がインターロック部120に入力されると、インターロック部120は、条件成否フラグ121を搬送許可に設定するとともに、搬送機構11により搬送動作を開始させる。この制御によると、起動スイッチ201の操作を行えば、搬送開始スイッチ111を操作することなく、搬送動作を自動的に開始することができる。そのため、オペレーションの省力化に寄与することができる。
【0035】
〔印字装置を備える製造ライン〕
ところで、製造ライン1は、検査装置20に代えて、あるいは検査装置20に加えて、物体2に印字する処理装置としての印字装置30(
図1A)を備えていてもよい。かかる印字装置30は、搬送装置10により供給される物体2に例えばインクジェット印刷方式により日付等の情報を印字する。印字装置30は、検査装置20の起動スイッチ201および停止スイッチ202と同様の起動スイッチおよび停止スイッチを備えている。
【0036】
製造ライン1が、検査装置20に代えて印字装置30を備える場合のインターロック制御は、上記実施形態における検査装置20を印字装置30に読み替えて、上記実施形態と同様に行うことができる。
製造ライン1が、検査装置20に加えて印字装置30を備える場合のインターロック制御は、例えば、下記の要領により、上記実施形態とほぼ同様に行うことができる。
【0037】
インターロック制御対象:搬送機構11による搬送動作の開始
搬送開始必要条件C :検査装置20の起動スイッチ201が操作されたこと(第1条件C1)、および、印字装置30の起動スイッチが操作されたこと(第2条件C2)の論理積(AND)。
第1条件C1が成立(成) :第1条件成否フラグ121は「搬送許可」
第1条件C1が不成立(否) :第1条件成否フラグ121は「搬送禁止」
第2条件C2が成立(成) :第2条件成否フラグ122は「搬送許可」
第2条件C2が不成立(否) :第2条件成否フラグ122は「搬送禁止」
搬送開始可否の判定 :第1条件成否フラグ121が「搬送許可」であり、かつ、第2条件成否フラグ122が「搬送許可」である場合に限り、搬送開始動作を行う。それ以外の場合は、搬送開始動作を行わない。
【0038】
また、検査装置20や印字装置30に限らず、製造ライン1が2以上の処理装置を備える場合も、上記に準じて同様に行うことができる。
【0039】
製造ライン1が例えば検査装置20と印字装置30のように2つの処理装置20,30を備える場合で、
図5と同様に搬送動作を自動的に開始させる場合は、例えば、以下のように行えばよい。
第1の処理装置20の起動スイッチの操作に対応する起動操作検知信号S1-1がインターロック部120に入力されると、インターロック部120は、第1条件成否フラグ121を「搬送許可」に設定するとともに、第2条件成否フラグ122を確認する。そのとき、第1条件成否フラグ121が「搬送許可」であり、かつ、第2条件成否フラグ122も「搬送許可」であるのならば、搬送機構11により搬送動作を開始させるとよい。
また、第2の処理装置30の起動スイッチの操作に対応する起動操作検知信号S1-2がインターロック部120に入力されると、インターロック部120は、第2条件成否フラグ122を「搬送許可」に設定するとともに、第1条件成否フラグ121を確認する。そのとき、第1条件成否フラグ121が「搬送許可」であり、かつ、第2条件成否フラグ122も「搬送許可」であるのならば、搬送機構11により搬送動作を開始させるとよい。
【0040】
他の処理装置として、例えば、部屋同士または屋内と屋外とを仕切ったり開放したりする開閉動作が可能に構成されているシャッター装置を挙げることができる。シャッター装置は、例えば、仕切るための板状部材と、板状部材を駆動する駆動機構とを備えている。また、シャッター装置は、操作スイッチとして、例えば、夜間等に板状部材により部屋を仕切り、動作を停止させるための「切」ボタンと、制御部12等からの指令に応じて板状部材による開または閉の動作を自動的に行わせるための「自動」ボタンとを備えている。シャッター装置を備える製造ラインは、シャッター装置の各ボタンに個別に対応する操作検知部と、各操作検知部の操作に対応する出力代替信号を用いて、搬送動作を開始するために必要な条件の成否状態を設定するインターロック部とを含んで構成される。そうすると、例えば、切ボタンを押した後、自動ボタンが押されない状態のまま、搬送機構11による搬送動作が開始されることを避けることができる。
【0041】
〔第1変形例〕
以下、操作スイッチおよび操作検知部に係る第1~4変形例を説明する。各変形例に示す操作スイッチおよび操作検知部は、上記実施形態の例えば起動スイッチ201に代えて採用可能である。また、上記実施形態および各変形例を適宜に組み合わせることができる。
上記実施形態および第1~第3変形例に係る操作検知部はいずれも、操作スイッチには接触していない状態で当該操作スイッチの操作状態を検知する非接触式センサとしての光電センサに相当する。
【0042】
図6Aおよび
図6Bに示す操作スイッチ203は、押しボタン203Aと、押しボタン203Aの外周部を囲む保護筒203Bとを備えている。操作検知部103は、例えば、保護筒203Bに設けることができる。操作スイッチ203および操作検知部103は、例えば検査装置20や、印字装置30等の処理装置の筐体23に設けられている。
押しボタン203Aが、
図6Aに一点鎖線で示す位置まで押し下げられると、処理装置は、起動または停止等の所定の動作を行う。
【0043】
押しボタン203Aの表面203Cは、湾曲して窪んでいる。保護筒203Bは、筐体23に設けられ、押し下げられていない時の押しボタン203Aの表面203Cを上方へ超える位置まで突出している。
操作検知部103は、押しボタン203Aの表面203Cを超えている保護筒203Bの先端側の領域203Dに設けられている。領域203Dは、操作検知部103を設けるために、必要に応じて保護筒203Bが上方へ延設された領域であってもよい。つまり、領域203Dは、例えば、既存の保護筒203Bに取り付けられた環状部材であってもよい。
【0044】
保護筒203Bには、対をなす投光部103Aおよび受光部103Bが設けられている。図示の例では、3対の投光部103Aおよび受光部103Bが、それぞれの光軸Lが互いに平行になるように配置されている。複数の光軸Lは、押しボタン203Aの軸線方向の同じ位置に配置されている。3対の投光部103Aおよび受光部103Bはそれぞれ、保護筒203Bを貫通する孔203Eに配置されている。
【0045】
押しボタン203Aを指で押し下げる操作を行うとき、上記実施形態と同様に、投光部103Aから光軸Lに沿って出射される光束が指により遮られるので、操作検知部103は、操作スイッチ203が操作されたことを検知することができる。
【0046】
〔第2変形例〕
図7Aおよび
図7Bに示す操作検知部104の投光部104Aおよび受光部104Bは、押しボタン203Aの表面203Cよりも、押しボタン203Aの軸線方向の基端側203Fに位置している。この点を除いて、操作検知部104は、第1変形例の操作検知部103と同様に構成されている。
【0047】
図7Aに示すように、押しボタン203Aが押し下げ操作されていない時は、投光部104Aから出射される光束が押しボタン203Aにより遮られる。このとき、操作検知部104は押しボタン203Aの操作を検知しない。
図7Bに示すように、光軸Lの位置を超える位置まで押しボタン203Aを押し下げると、光束が受光部104Bに入射する。このとき、操作検知部104は押しボタン203Aの操作を検知されるとともに、押しボタン203Aが設けられている処理装置により、押しボタン203Aの操作に対応する動作が行われる。つまり、操作検知部104により押しボタン203Aの操作が検知された時には、処理装置の対応動作が確実に行われている。
【0048】
〔第3変形例〕
図8に示すように、操作スイッチ205は、揺動可能なレバー式に構成されていてもよい。筐体23には、操作スイッチ205を間に挟んで対向する第1支持部材25および第2支持部材26が設けられている。操作検知部105は、投光部105Aおよび受光部105Bからなる。投光部105Aは第1支持部材25に設けられ、受光部105Bは第2支持部材26に設けられる。光軸Lは、図示のように操作スイッチ205が処理装置の起動位置に移動したとき、操作スイッチ205により光束が遮られる位置に設定されている。
そのため、矢印に示すように操作スイッチ205を揺動させて起動位置に移動させると、操作検知部105は、操作スイッチ205の起動位置への操作を検知することができる。
【0049】
〔第4変形例〕
図9に示すように、操作スイッチ206は、シート状のスイッチであってもよい。また、操作スイッチ206が操作されたことを検知する操作検知部は、光電センサであってもよいし、
図9に示す操作検知部106のように、押圧による静電容量の変化を用いる感圧スイッチであってもよい。
【0050】
操作スイッチ206は、例えば、処理装置の操作パネルの裏面に設けることができる。
操作スイッチ206は、上部接点271を含むシート27と、下部接点281を含むシート28と、シート27,28間に配置されるスペーサ29とを含む。
【0051】
図9に示す操作検知部106は、操作スイッチ206の位置で操作パネル41の表面に設けられる静電容量式の膜状の感圧スイッチに相当する。操作検知部106は、例えば粘着シート等により操作パネル41の表面に貼り付けられている。また、操作検知部106は、図示しない電源に接続されるか、あるいはバッテリを内蔵している。
【0052】
操作検知部106が矢印で示す向きに押されると、ゴム材料からなる操作部材106Aの突起106Bにより感圧体106Cのダイアフラム106Dが押される。そのときの感圧体106Cの電極間の静電容量が一定以上に変化することで、操作検知部106は操作スイッチ206が操作されたことを検知する。これと同時に、操作部材106Aおよび感圧体106Cを介して操作スイッチ206も矢印で示す向きに押され、上部接点271と下部接点281とが接触する。そうすると、処理装置の図示しない制御部による所定の処理が行われる。
【0053】
操作検知部106は、シート状のスイッチに設けられるばかりでなく、上述の押しボタンに相当する起動スイッチ201や停止スイッチ202にも設けることができる。
【0054】
その他、操作検知部としては、例えば、操作スイッチ206の位置で操作パネルの表面に設けられる抵抗膜方式または静電容量方式の膜状のタッチセンサを採用することができる。そうしたタッチセンサに指が接触したときに、抵抗膜の接触により電圧が一定以上に変化したり、電極間の静電容量が一定以上に変化したりすることで、操作検知部は操作スイッチ206が操作されたことを検知する。これと同時に、操作スイッチ206が押されて上部接点271と下部接点281とが接触するので、処理装置の図示しない制御部により所定の処理が行われる。
【0055】
処理装置は、温度や圧力等を検知するセンサ装置、あるいは検査装置に備わるカウンタ(計数装置)等であってもよい。処理装置に備わる操作スイッチとしては、例示した起動スイッチ・停止スイッチのみならず、リセットスイッチ、自動スイッチ等の種々の操作に対応するものであってよい。
【0056】
以上で説明したように、それぞれ制御系が独立した装置間にインターロックを実現しつつ、それらの装置を含む製造ラインを稼働させることによれば、生産管理しながら安定した品質の製品を製造することができる。
【0057】
上記以外にも、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
本開示は、飲料製品の製造ラインに限らず、種々の製造ラインに広く適用することができる。
【0058】
〔付記〕
以上で説明した製造ラインおよび製造ラインの稼働方法は、以下を開示する。
〔1〕製造ライン1は、所定の処理を行う処理機構21と、所定の操作を行う操作スイッチ201,202と、を含む処理装置20と、物体2を搬送する搬送機構11と、処理装置20とは制御系が異なる制御部12と、を含む搬送装置10と、操作スイッチ201,202の操作を検知可能に構成されている操作検知部101,102と、を備える。操作検知部101,102は、操作スイッチ201,202の操作に対応する出力代替信号S1,S2を出力する。制御部12は、出力代替信号S1,S2が入力されると、出力代替信号S1,S2を用いて、搬送機構11の搬送動作を開始するために必要な条件Cの成否状態121を設定するインターロック部120を含む。
〔2〕処理装置20は、1つ以上の操作スイッチ201,202を含み、制御部22は、所定の操作スイッチ201の操作に対応する出力代替信号S1が入力されると、搬送機構11により搬送動作を実行させる。
〔3〕搬送装置10は、条件Cが成立していないために搬送動作を開始できない場合には、所定の情報を報知する報知部14を備える。
〔4〕製造ライン1は、処理装置20の起動に対応する操作スイッチとしての起動スイッチ201と、処理装置20の停止に対応する操作スイッチとしての停止スイッチ202と、を含む処理装置20を備える。インターロック部120は、起動スイッチ201の操作に対応する出力代替信号S1と、停止スイッチ202の操作に対応する出力代替信号S2とを条件Cの成否状態121の設定に用いる。
〔5〕製造ライン1は、起動スイッチ201および停止スイッチ202を含み、搬送装置10により供給される物体2を検査する処理装置としての検査装置20を備える。
〔6〕製造ライン1は、光電センサに相当する操作検知部101,102を備える。操作検知部101,102は、操作スイッチ201,202の近傍に配置される部材23,203Bに設けられる。
〔7〕所定の操作を行う操作スイッチ201,202を含む処理装置20と、物体2を搬送する搬送装置10と、を備える製造ライン1を稼働させる稼働方法において、製造ライン1は、操作スイッチ201,202の操作を検知可能に構成される操作検知部101,102を備える。操作検知部101,102は、操作スイッチ201,202の操作に対応する出力代替信号S1,S2を出力する。稼働方法は、搬送装置10に出力代替信号S1,S2が入力されると、出力代替信号S1,S2を用いて、搬送装置10による搬送動作を開始するために必要な条件Cの成否状態121を設定することで、処理装置20の所定の操作スイッチ201が操作された場合に限り搬送動作の開始を許可するインターロックを実現する。
【符号の説明】
【0059】
1 製造ライン
2 物体
10 搬送装置
11 搬送機構
11A 搬送面
12 制御部
13 入出力部
14 報知部
20 検査装置(処理装置)
21 検査機構(処理機構)
22 制御部
23 筐体(部材)
24 報知部
25 第1支持部材(部材)
26 第2支持部材(部材)
27,28 シート
29 スペーサ
30 印字装置(処理装置)
101 起動操作検知部(操作検知部)
101A 投光部
101B 受光部
102 停止操作検知部(操作検知部)
102A 投光部
102B 受光部
103 操作検知部
103A 投光部
103B 受光部
104 操作検知部
104A 投光部
104B 受光部
105 操作検知部
105A 投光部
105B 受光部
106 操作検知部
106A 操作部材
106B 突起
106C 感圧体
106D ダイアフラム
111 搬送開始スイッチ
112 搬送停止スイッチ
120 インターロック部
121,122 条件成否フラグ
201 起動スイッチ(操作スイッチ)
201A 表面
202 停止スイッチ(操作スイッチ)
203A 押しボタン
203B 保護筒(部材)
203C 表面
203D 領域
203E 孔
203F 基端側
205 操作スイッチ
206 操作スイッチ
231 ハウジング
231A 開口
271 上部接点
281 下部接点
C,C1,C2 条件
F 指
L 光軸
S1 起動操作検知信号(出力代替信号)
S2 停止操作検知信号(出力代替信号)
W1,W2 電線