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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137215
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20230922BHJP
【FI】
G16H20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043315
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000186566
【氏名又は名称】小林クリエイト株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内田 智久
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英斗
(72)【発明者】
【氏名】戸次 奏瑛
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】帳票の読み取り作業時のプライバシー侵害リスクの抑制
【解決手段】領域のうち任意の一の領域について、他の領域と合わせて第三者が閲覧した場合に人のプライバシーを侵害するリスクの程度を推定するリスク推定ステップと、それぞれの領域のうちの任意の一の領域を、リスク推定ステップによりリスクの程度が所定の水準を超えないことを条件として他の領域と結合する結合ステップと、を電子計算機に実行させるものであることを特徴とする画像処理プログラム。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帳票に書き込まれた人に関する情報を読み取る作業をさせるために、前記帳票の内容を含む作業用画像を生成する処理を電子計算機に実行させる画像処理プログラムにおいて、
前記帳票の前記複数の情報が書き込まれた面を撮影した帳票画像を取得するスキャンステップと、
該スキャンステップにより取得された帳票画像における前記情報の書き込まれた領域を項目ごとに検出する領域検出ステップと、
該領域検出ステップにより検出された領域のうち任意の一の領域と、他の一の領域とについて、合わせて第三者が閲覧した場合に前記人のプライバシーを侵害するリスクの程度を推定するリスク推定ステップと、
前記領域検出ステップにより検出されたそれぞれの領域のうちの任意の一の領域について、前記リスク推定ステップにより前記リスクの程度が所定の水準を超えないことを条件として他の領域と結合する結合ステップと、を備え、
前記結合ステップにより結合された領域に基づいて、それぞれの領域に対応する前記帳票画像の部分を作業用画像として生成するものであることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項2】
前記作業用画像に対して、前記結合ステップにより結合された領域が対応する部分を含む前記帳票画像を他の前記帳票画像と識別可能な情報を付与する識別情報付与ステップを含むことを特徴とする請求項1記載の画像処理プログラム。
【請求項3】
前記帳票は、人の身体その他の健康に関する情報が書き込まれたものであり、
前記リスク推定ステップは、前記領域検出ステップにより検出された領域に書き込まれた身体その他の健康に関する情報が、前記領域検出ステップにより検出された他の領域に書き込まれた身体その他の健康に関する情報と合わせて第三者に閲覧した場合に、前記人の身体上の特徴が推定される得ることを基準として前記リスクの程度を推定するものであることを特徴とする請求項1または2記載の画像処理プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目視により文字を読み取る作業をさせるために作業者に提示する画像を生成する画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
手書きされた帳票から文字を読み取ってコンピューターに入力する作業がある。プライバシーの観点から、1人の作業者に帳票上のすべての情報を知られることが好ましくない場合があり、帳票を複数の画像に分割し、それぞれ異なる作業者に読み取らせることが行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-153939号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、分割された画像中にも複数の情報が記載される可能性がある。特に、健康診断などの人の検査に関する帳票の場合、氏名は分からずとも身長と体重などの外見上の情報を組み合わせることで、限定されたグループの中から個人を特定できてしまう恐れがあった。人の検査に関する情報は、個人情報であるとともに、他人に知られたくない機微な情報であることも多く、第三者に知られることに対してより高度の配慮が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願に係る発明(以下「本願発明」という)の画像処理プログラムは、帳票に書き込まれた人に関する情報を読み取る作業をさせるために、前記帳票の内容を含む作業用画像を生成する処理を電子計算機に実行させるものであって、前記帳票の前記複数の情報が書き込まれた面を撮影した帳票画像を取得するスキャンステップと、該スキャンステップにより取得された帳票画像における前記情報の書き込まれた領域を項目ごとに検出する領域検出ステップと、該領域検出ステップにより検出された領域のうち任意の一の領域と、他の一の領域とについて、合わせて第三者が閲覧した場合に前記人のプライバシーを侵害するリスクの程度を推定するリスク推定ステップと、前記領域検出ステップにより検出されたそれぞれの領域のうちの任意の一の領域について、前記リスク推定ステップにより前記リスクの程度が所定の水準を超えないことを条件として他の領域と結合する結合ステップと、を備え、前記結合ステップにより結合された領域に基づいて、それぞれの領域に対応する前記帳票画像の部分を作業用画像として生成するものであることを特徴とする。
【0006】
また、本願発明としては、前記作業用画像に対して、元前記結合ステップにより結合された領域が対応する部分を含む前記帳票画像を他の前記帳票画像と識別可能な情報を付与する識別情報付与ステップを含めることが提案される。
【0007】
本願発明にあって特には、前記人に関する複数の情報が書き込まれた帳票は、人の身体その他の健康に関する情報が書き込まれた帳票であり、前記リスク推定ステップは、前記領域検出ステップにより検出された領域に書き込まれた身体その他の健康に関する情報が、前記領域検出ステップにより検出された他の領域に書き込まれた身体その他の健康に関する情報と合わせて第三者に閲覧した場合に、前記人の身体上の特徴が推定され得ることを基準として前記リスクの程度を推定するものであることが有用である。
【発明の効果】
【0008】
本願発明の画像処理プログラムによれば、スキャンステップにより人に関する情報が書き込まれた帳票の面を撮影した画像が取得され、該画像中のそれぞれの情報が書き込まれた領域が領域検出ステップにより検出される。該検出された領域は、リスク推定ステップにより他の領域と合わせて第三者が閲覧した場合にプライバシーが侵害されるリスクが所定の水準を超えないことを条件として、該他の領域と結合される。結合ステップにより結合された領域に基づいて、帳票画像の部分が作業用画像として生成される。すなわち、生成される任意の作業用画像は、リスク推定ステップにより、合わせて第三者が閲覧することでプライバシーが侵害されるリスクが所定の水準を超えて高いと推定された情報の組み合わせを含まないと言える。従って、プライバシーが侵害されるリスクの高い人の情報が書き込まれた帳票から目視により情報を読み取る作業を実施させる場合にあっても、作業用画像を適切に作業者に振り分けて提示することにより、プライバシー侵害のリスクを抑制できるとの効果を奏する。
【0009】
また、本願発明では、識別情報付与ステップにより作業用画像のそれぞれについて、元となった帳票画像を他の帳票画像と識別可能な情報が付与される。これは換言すれば、スキャンステップにより生成される帳票画像の元となった帳票ごとに一意となる情報が付与されるものである。したがって、生成された作業用画像を異なる作業者に渡して情報の読み取りをさせた場合であっても、該符号をもって元の一の帳票についての情報であることを認識できる。特には、複数の帳票について読み取りの作業を要する場合にも、作業者が読み取った情報を正確に帳票ごとに認識することができ、作業性を高められるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】健診結果入力システム1における処理のフロー図である。
図2】健診結果入力システム1の電気的構成を示す模式図である。
図3】(a)は、帳票40の態様を示す模式図である。(b)は、帳票40の記入項目40aの一つの態様を例示する模式図である。
図4】(a)は、作業PC50のモニター(不図示)に表示される画面200の説明図である。(b)は、画面200を参照して作業PC50を操作する作業者60の作業61によって生成される読み取りデータ100の模式図である。
図5】展開プログラム13aに定義される分割処理S100の処理内容を示すフローチャートである。
図6】(a)(b)はいずれも、分割処理S100の途中において画像41の処理過程を示す模式図である。
図7】リスクテーブル13bの構造と内容を表す模式図である。
図8】(a)はいずれも、分割処理S100の途中において画像41の処理過程を示す模式図である。(b)は分割画像42に付されるファイル名の構成を説明するための図である。
図9】統合処理S200における処理内容を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態として、健診結果入力システム1を説明する。健診結果入力システム1は、人の健康診断の結果が記入された帳票40の内容をデータ化するための情報処理システムであって、帳票40に記入された手書き文字40a2を作業者60が目視によって読み取ってその内容を作業PC50に入力する作業のために構成される。
【0012】
帳票40は、健康診断により検査、測定等された当該本人にとっての身体上の機微な情報が記載されたものであり、帳票40に記載された内容に基づいて作業者60が個人を特定または推測できることは好ましくない。そのため、健診結果入力システム1では、帳票40の記入面全体が1人の作業者60に提示されることを回避し、1枚の帳票40について複数の作業者60に分割して前述の読み取りを実施させる。
【0013】
図1は、健診結果入力システム1を用いて帳票40の記入内容をデータ化する処理を表したフロー図である。健診結果入力システム1を用いる場合、まず帳票40をスキャン工程S1によって光学的に撮影して画像41(データ)を生成し、サーバー10(後述)で処理可能にする。その後、画像41を分割工程S2によって複数の分割画像42に分割する。分割工程S2における分割の方法については、後述する。
【0014】
分割画像42は、複数の作業PC50に別々に配信される。次に読み取り工程S3として、それぞれの作業PC50に割り当てられた作業者60が、画面200(後述)の表示を参考に読み取り、その目視によって読み取った文字情報は作業者60によって作業PC50に入力される。作業PC50に入力された情報を元に、読み取りデータ100が生成される。
【0015】
作業PC50で生成された複数の読み取りデータ100は、蓄積工程S4によって統合され、一の帳票40についての一式の読み取りデータ100として、読み取り結果DB13d(後述)に蓄積記憶される。
【0016】
図2は、健診結果入力システム1の電気的構成を示す模式図である。健診結果入力システム1は、クライアント/サーバー型のシステム構成を採用し、サーバー10および複数の作業PC50がLAN(Local Area Network)20を介して相互に通信可能に構成される。
【0017】
サーバー10は、CPU(中央演算装置)11、RAM(主記憶装置)12、ハードディスク13、NIC14を備える。NIC(ネットワークインターフェースカード)14は、LAN20と接続して通信を行うためのインターフェイスである。サーバー10には周辺装置としてスキャナー19が接続される。スキャナー19は、帳票40の表面を撮影して、その画像をサーバー10に入力するための光学式読み取り装置である。
【0018】
ハードディスク13は、不揮発性の補助記憶装置であり、健診結果入力システム1の動作に必要な情報として、展開プログラム13a、リスクテーブル13b、読み取り結果DB13dなどが記憶される。展開プログラム13aは、前述したスキャン工程S1および分割工程S2の処理をCPU11に実行させるためのプログラムである。展開プログラム13aとして定義される処理の詳細は、分割処理S100として後述する。
【0019】
リスクテーブル13bは、健康診断に関する2つの項目(検査項目)間について、同時に知れた場合に個人が特定されるリスクの程度を定義した表である。リスクテーブル13bの詳細は、後述する。
【0020】
読み取り結果DB13dは、複数のデータを蓄積記憶するデータベース領域であり、前述した読み取り工程S3および蓄積工程S4によって読み取りデータ100が蓄積記憶されるものである。
【0021】
作業PC50は、前述した読み取り工程S3(図1)のためのコンピューターであり、作業者60に画面200(図3(a))を提示するためのモニター、当該モニターの表示を参考に読み取った文字情報を入力するためのキーボード、モニターの表示に対応してクリック操作をするためのマウス等が接続される。作業PC50は、作業者60ごとに複数のものが用意される。
【0022】
健診結果入力システム1においては、サーバー10から分割画像42がLAN20を介して作業PC50に送信される一方で、作業PC50からは読み取りデータ100がLAN20を介してサーバー10に送信される。
【0023】
次に図3を参照して、健診結果入力システム1が対象とする帳票40の態様を説明する。帳票40は、人の健康診断の結果が記入された帳票である。図3(a)に示すように、帳票40の表面の情報は、複数の記入項目40aで構成される。個々の記入項目40aは図3(b)に示すように、項目見出し40a1および手書き文字40a2から成る。項目見出し40a1は、その記入項目40aが示す検査項目等を表示するものであり、コンピューターフォントを用いて事前に印刷されたものである。手書き文字40a2は、項目見出し40a1が示す検査項目等について、健康診断を受ける本人や検査技師等が手書きで記入した検査結果等である。例えば「氏名」という項目見出し40a1が付された記入項目40aにつき「小林 太郎」という手書き文字40b1がある場合には、健康診断を受けた人の氏名が「小林 太郎」であるということを意味し、「身長」という項目見出し40a1が付された記入項目40aにつき「177cm」という手書き文字40b1がある場合には、身長の検査結果(測定結果)が「177cm」であったということを意味する。
【0024】
なお、説明として、帳票40は「氏名」「身長」「体重」「腹囲」「血圧」「視力」「聴力」のそれぞれの項目見出し40a1が付された複数の記入項目40aを備えるものとするが、本発明の実施態様として当該構成に限定されるものではない。帳票40としては、健康診断の目的に応じて任意の項目見出し40a1を任意の順または位置で配置したものであってよい。
【0025】
次に、図4(a)を参照して、作業PC50のモニターに表示される画面200を説明する。画面200は、作業者60に帳票40の項目見出し40a1および手書き文字40b2を読み取る作業をさせるための表示である。通常の技術水準に基づいて実現可能であるため詳しい説明は省略するが、作業PC50は、サーバー10から分割画像42を受信した場合に、後述する画面200に関する動作を定義したプログラムを備え、当該プログラムをもって画面200の表示を実現可能に構成される。
【0026】
画面200は、画像表示部201、ファイル名表示部202、入力部203、登録ボタン204の領域で構成される。画像表示部201は分割画像42が表示される領域であり、作業者60は、画像表示部201に表示された内容から、項目見出し40a1および手書き文字40a2を目視で読み取る。
【0027】
ファイル名表示部202は、詳しくは後述するが分割画像42に付されたファイル名42aを表示する領域である。複数の作業PC50には、それぞれ異なる分割画像42が送信されるため、ファイル名表示部202に表示されるファイル名42も作業PCごとにそれぞれ異なるものとなる。
【0028】
入力部203は、作業者60が目視により読み取った情報を作業PC50に入力するための領域であり、テキストボックス(キーボードの操作によって文字情報を入力できる領域)が横方向に2列、縦に4行が配置されて成る。テキストボックスの横方向の配置のうち、左方は項目見出し40a1の内容を入力する領域とし、右方は手書き文字40a2の内容を入力領域とする。
【0029】
テキストボックスの縦方向の配置は、分割画像42に複数の記入項目40aが含まれる場合に、最大4つの記入項目40aの情報を入力できるようにするものである。水平方向に並ぶ2つのテキストボックスの組を、一の記入項目40aの項目見出し40a1と手書き文字40a2に対応するものとする。なお、ここでは縦方向に4行のテキストボックスを配置するとしたが、この数は任意に変更して差し支えない。
【0030】
登録ボタン204は、作業者60のクリック操作により読み取りデータ100を生成する契機を作業PC50に与えるための領域である。作業PC50は、登録ボタン204がクリックされると入力部203への入力内容等に基づいて後述する読み取りデータ100を生成して、サーバー10に送信する。
【0031】
図4(b)を参照して読み取りデータ100を説明する。読み取りデータ100は、前述した通り、作業PC50により、画面200の入力部203の入力内容等に基づいて生成されるデータ(情報)である。
【0032】
一の読み取りデータ100は、ファイル名101と、項目名102と、記入内容103とから成る。ファイル名101は、画面200のファイル名表示領域202に表示された内容であり、画面200の表示の契機となった分割画像42に付されたファイル名42aと同一である。
【0033】
項目名101及び記入内容102は、画面200の入力部203のテキストボックスに入力された情報であり、水平方向に並ぶ1組のテキストボックスのうち、左方のテキストボックスの情報が項目名101に、右方のテキストボックスの情報が記入内容102に設定される。これはすなわち、読み取りデータ100としては、項目名101には、作業者60が分割画像42から読み取った帳票40上の項目見出し40a1が設定され、記入内容103には、作業者60が分割画像42から読み取った帳票40上の手書き文字40a2が設定されること意味する。従って、一の読み取りデータ100は、帳票40上の一の記入項目40aについての情報を示すものとなる。
【0034】
なお、作業者60が画面200の入力部203について、複数の行のテキストボックスに情報を入力した場合は、入力のあった行の分だけ読み取りデータ100が生成される。
【0035】
作業PC50において読み取りデータ100が生成された場合、当該読み取りデータ100がLAN20を介してサーバー10に送信され、ハードディスク13の一時保存DB13dに蓄積記憶されるよう作業PC50およびサーバー10は構成される。
【0036】
次に図5のフローチャートを参照して、展開プログラム13aによって定義される分割処理S100を説明する。分割処理S100は、展開プログラム13aに基づいてサーバー10のCPU11が実行する処理である。分割処理S100は、図1に示す処理の内、分割工程S2に相当し、スキャン工程S1により得られた一の画像41を入力として、該画像41を複数の分割画像42に分割して作業PC50に送信するための処理である。なお、以降のフローチャートの説明において主体の記載を省略した場合は、CPU11が展開プログラム13aに基づいて動作することを意味する。
【0037】
分割処理S100では、まず、画像41を識別するためのユニークID300を生成する(S101)。「画像41を識別」とは、一の画像41と他の画像41とを区別することをいい、ユニークID300は、十分な数の画像41に対して、それぞれに一意の文字列を設定できるよう構成される。一意の文字列の設定方法については、GUID(Global Unique Identifier)のほか公知の手段から選択可能であるので詳しい説明を省略する。
【0038】
なお、本実施例の健診結果入力システム1にあっては、ユニークID300によって画像41を識別可能であることは、画像41の元となった(スキャン工程S1において撮影した)帳票40を識別することと同義である。
【0039】
次に変数iを1に初期化する(S102)。変数iは、RAM12上に確保される一時メモリ領域であり、後述する処理の中でファイル名42aを決定するために利用される。
【0040】
次に、画像41に対して項目見出し40a1の検出を行う(S103)。項目見出し40a1は前述した通りコンピューターフォントによって印刷された文字であり、公知のOCR技術によって位置の検出と、文字情報の取得を行う。なお、他の実施例としては予め帳票40に位置検出用のシンボルを印刷してその位置を検出する方法や、項目見出し40a1ごとに異なるシンボルを付して意味を区別する方法など、本実施例とは異なる構成を採用することも可能である。
【0041】
S103において項目見出し40a1が検出された様子を模式的に表したのが図6(a)である。図中、破線で示す項目見出し40a1が検出される。
【0042】
次に、S103で検出された項目見出し40a1の位置に基づいて、記入項目40aごとの範囲を単位範囲Uとして特定する(S104)。本実施例の帳票40は、一の記入項目40a内において、手書き文字情報40a2は必ず項目見出し40a1の右方にあるため、S103により検出された項目見出し40a1を起点に右方および下方に延伸して他の項目見出し40a1に重複しない矩形領域を、該項目見出し40a1を含む記入項目40aの範囲を単位範囲Uとして特定すればよい。また、特定の結果、画像41の全領域のうち、いずれの単位範囲Uにも属さない領域がある場合には、所定のルールを定めて該属さない領域を近傍の単位範囲Uに含めさせるようにすればよい。
【0043】
図6(b)は、S104により各記入項目40aの範囲が特定された態様を模式的に表したものである。図中、破線で区画された領域が、それぞれ単位範囲Uとして特定された領域である。
【0044】
S105からS112までの処理は、未処理の単位範囲Uがある限り反復実行する処理である。「未処理」とは、後述するS111の処理において「処理済」としてマークされていない状態を意味する。
【0045】
S105において未処理の単位範囲Uがある場合(S105:ある)、未処理の単位範囲Uをすべて結合した領域を仮定範囲Tと定める(S106)。次に仮定範囲Tに含まれる任意の2つの単位範囲Uの組み合わせの中に、リスクテーブル13bを参照してリスクの高い組み合わせがあるか否かを判断する。より具体的には、単位範囲Uの元になった項目見出し40a1に基づいて、双方の単位範囲が示す項目(意味)を判断し、リスクテーブル13bの項目1および項目2が一致する行のリスクの値が所定の値(例えば「0.5」)を超えることをもって、当該単位範囲Uの組み合わせのリスクが高いと判定する。なお、項目2の「*」は任意の項目を意味し、図7のリスクテーブル13bの1行目に相当する「氏名」は、任意の項目に対してリスクの値が「1.0」であることを意味する。氏名は、組み合わされる情報を問わず個人を特定しうるため、この定義によって常にリスクが高いものとして扱うことができる。
【0046】
仮定範囲内Tの単位範囲Uの組み合わせにリスクが高いものがあると判断された場合(S107:ある)、仮定範囲Tから下方優先で単位範囲Uを1つ除外する(S108)。なお、S108の処理において単位範囲Uを1つ除外した結果、仮定範囲Tが2つ以上の領域に分断される場合には、当該分断されたいずれかの領域のみを以降の仮定範囲Tとして扱うようにする。
【0047】
仮定範囲Tから1つ以上の単位範囲Uを除外した場合(S108)、再びS107において仮定範囲内Tにリスクの高い単位範囲Uの組み合わせが存在するか判断する。ここで、S108において単位範囲Uを除外した結果、仮定範囲T内に単位範囲Uが1つしか存在しなくなった場合は、もはや仮定範囲T内に組み合わされる2つ以上の単位範囲Uが存在しないものとして、S107の判断は高いリスクの組み合わせは「ない」とされる。
【0048】
S107の判断において、仮定範囲T内に高いリスクの単位範囲Uの組み合わせはないと判断された場合(S107:ない)、仮定範囲Tを決定範囲Dと定義し(S110)、画像41の全体の内、該決定範囲Dに属する単位範囲Uに相当する領域を1つの分割画像42として生成する。この時、分割画像42に付す名前は、S101において生成したユニークID300に、区切り文字「.」と、連番302として変数iの値と、拡張子303として「.jpg」とを付加した文字列とする(図9(b)参照)。
【0049】
分割画像42を生成した後(S110)、決定範囲Dに含まれる単位範囲Uを「処理済」としてマークし(S111)、変数iに1を加算して(S112)、未処理の単位範囲Uが無くなるまでS105以降の処理を繰り返す。
【0050】
未処理の単位範囲Uがなくなった場合(S105:ない)、画像41のすべての領域の処理が完了したものとして、分割処理S100を終了する。分割処理S100が終了すると、サーバ―10は展開プログラム13aに従って、分割画像42を作業PC50に送信する処理が実行される。
【0051】
図8(a)は、分割処理S100におけるS105からS112までの一連の処理が完了したときの画像41、分割画像42を模式的に表した図である。画像41は、その領域を決定領域Dに従って分割され、それぞれの領域が分割画像42として生成される。それぞれの分割画像42は、図8(b)に示す体系のユニークID300、連番301、拡張子302を含む名前が付される。それぞれの分割画像42には、S107およびS108の処理によって、同時に知られた場合に個人が特定されるリスクの高い記載内容は含まれておらず、これを作業PC50に送信したとしても作業者60によって帳票40の対象である個人のものとして身体的情報が知られる可能性は限りなく低い。
【0052】
分割画像42が作業PC50に送信され、作業者60が読み取りの作業(図1の読み取り工程S3に相当)を実施すると、前述した通り読み取りデータ100が作業PC50からサーバー10へと送信されて読み取り結果DB13dに蓄積記憶される(図1の蓄積工程S4に相当)。図9に示すように、読み取り結果DB13dには、複数の読み取りデータ100が存在しうる。
【0053】
ここで、読み取りデータ100のファイル名101は、画面200のファイル名表示部202に表示されたファイル名、すなわち、分割画像42の名前である。分割画像42の名前は図8(b)に示す通りユニークID301を含んでおり、ユニークID301は、分割処理S100のS101の処理において、帳票40ごとに一意になるように設定されたものである。従って、帳票40ごとに一纏まりの読み取りの結果の取得を希望する場合、一時保存DB13dに記憶された読み取りデータ100の内、同一のユニークID301をファイル名101に含む読み取りデータ100を一の帳票40についての読み取りデータ100として扱えば、複数の作業者60に読み取りの作業をさせたとしても一の帳票40についての読み取りの結果を統合して取得することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 健診結果入力システム
40 帳票
40a 記入項目
40a1 項目見出し
40a2 手書き文字
41 画像(帳票画像)
42 分割画像(作業用画像)
10 サーバー(電子計算機)
13 ハードディスク
13a 展開プログラム(画像処理プログラム)
13b リスクテーブル
13d 入力結果DB
19 スキャナー
50 作業PC
100 読み取りデータ
200 画面
300 ユニークID(識別可能な情報)
S1 スキャン工程(スキャンステップ)
S2 分割工程
S3 読み取り工程
S4 蓄積工程
S103,S104 領域検出ステップ
S107 リスク推定ステップ
S106,S108,S109 結合ステップ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9