(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137222
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】温度センサ
(51)【国際特許分類】
G01K 1/08 20210101AFI20230922BHJP
G01K 1/14 20210101ALI20230922BHJP
【FI】
G01K1/08 Z
G01K1/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043330
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】織田 慎平
(72)【発明者】
【氏名】難波 英樹
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056CE01
(57)【要約】
【課題】本発明は、測定部への取り付方向と外部コネクタとの接続方向とが直交する温度センサに関し、温度センサに取り付けたOリングによる高度な気密性を確保することを目的とする。
【解決手段】本開示の温度センサは、樹脂成形体と、樹脂成形体が装着されたOリングと、樹脂成形体が挿入された金属ケースと、を備え、ターミナルは、第1の方向に沿った第1のターミナル領域と第2の方向に沿った第2のターミナル領域とを備え、樹脂成形体は、感温素子が配置される第1の領域と、ターミナルが配置される第3の領域と、第1の領域と第3の領域との間に配置された第2の領域とを有し、第3の領域には、ターミナルの側面に沿ったパーティングラインを有し、第2の領域は、第1の方向における第1の領域の反対側の稜線に沿ったパーティングラインを有し、第1の領域にはパーティングラインが配置されていない構成とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向の一端側に配置された感温素子と、
前記第1の方向の他端側に配置された一対のターミナルと、
前記感温素子と前記ターミナルを接続するように構成されたリード線と、
前記ターミナルの一部と前記感温素子と前記リード線とを覆うように構成された樹脂成形体と、
前記樹脂成形体が装着されたOリングと、
前記樹脂成形体が挿入された金属ケースと、を備え、
前記ターミナルは、前記第1の方向に沿った第1のターミナル領域と前記第1の方向と直交する第2の方向に沿った第2のターミナル領域とを備え、
前記リード線は、前記第1のターミナル領域に接続されており、
前記樹脂成形体は、
前記感温素子が配置される第1の領域と、
前記ターミナルが配置される第3の領域と、
前記第1の領域と前記第3の領域との間に配置されて前記Oリングの位置決めを行う第2の領域と、を有しており、
前記第3の領域には、前記ターミナルの側面に沿ったパーティングラインを有し、
前記第2の領域は、前記第1の方向における前記第1の領域の反対側の稜線に沿ったパーティングラインを有しており、
前記第1の領域にはパーティングラインが配置されていない、
温度センサ。
【請求項2】
前記樹脂成形体は、内部に前記ターミナルを支持する支持体を有しており、
前記樹脂成形体の前記第1の領域に前記支持体の一部が露出している、
請求項1に記載の温度センサ。
【請求項3】
前記樹脂成形体から露出した前記支持体の表面は、第1の方向に対して傾斜したテーパー面である、
請求項2に記載の温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定部への取り付方向と外部コネクタとの接続方向とが直交する温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、測定部への取り付け方向と外部コネクタとの接続方向とが直交するように構成された温度センサが示されている。この温度センサは、一対の金型を用いた樹脂成形装置により作成されている。なお、この温度センサは、測定部への取り付け方向と外部コネクタとの接続方向が直交する構造であるために、外部コネクタと電気的に接続される温度センサのターミナルが中程で直角に屈曲した構造となっている。また、温度センサは、測定部の内外における気密性を確保しなければならない。このために温度センサは、測定部への取り付け部分に0リングが装着される。
【0003】
そして、樹脂成形装置は、ターミナルの先端を一方の金型が支持するように配置される。したがって、一対の金型の当接面に形成されるパーティングラインは、温度センサの取り付け方向に沿って形成されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような温度センサでは、Oリングがパーティングラインを跨いで配置されるため、パーティングラインがOリングを部分的に温度センサの表面から持ち上げてしまう。この結果、温度センサに取り付けたOリングによる高度な気密性を確保することが困難であった。
【0006】
そこで、本開示はこのような問題を解決し、温度センサに取り付けたOリングによる高度な気密性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、この目的を達成するために本開示の温度センサは、ターミナルの一部と感温素子とリード線とを覆う樹脂成形体と、樹脂成形体が装着されたOリングと、樹脂成形体が挿入された金属ケースと、を備え、ターミナルは、第1の方向に沿った第1のターミナル領域と第1の方向と直交する第2の方向に沿った第2のターミナル領域とを備え、樹脂成形体は、感温素子が配置される第1の領域と、ターミナルが配置される第3の領域と、第1の領域と第3の領域との間に配置されてOリングの位置決めを行う第2の領域と、を有しており、第3の領域には、ターミナルの側面に沿ったパーティングラインを有し、第2の領域は、第1の方向における第1の領域の反対側の稜線に沿ったパーティングラインを有しており、第1の領域にはパーティングラインが配置されていない構成とした。
【発明の効果】
【0008】
この構造により、温度センサに取り付けたOリングによる高度な気密性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施の形態における温度センサの分解斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示の温度センサにおける感温部材の斜視図である。
【
図3】
図3は、本開示の温度センサの断面図である。
【
図4】
図4は、本開示の温度センサにおける樹脂成形体の成形金型の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、本開示の感温部材を支持する支持部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施の形態について図を用いて説明する。
【0011】
図1は、温度センサの分解斜視図である。
図2は、温度センサに用いられる感温部の斜視図である。
図3は、温度センサの断面図である。なお、本一実施の形態では、互いに直交する方向を第1の方向D1、第2の方向D2、第3の方向D3とし、各方向における矢印の指す側を先端側、矢印の指す側と反対側を後端側として説明する。
【0012】
温度センサ100は、測定対象を内部に包含する装置に取り付けられて測定対象の温度を検出する。例えば、装置が流路を含むラジエターで、測定対象がラジエター液である。この場合、温度センサ100は、ラジエターを構成する流路などに取り付けて流路内を流れるラジエター液の温度を検出する。
【0013】
温度センサ100は、感温部材10と、樹脂成形体20とOリング30と金属ケース40を備える。なお、樹脂成形体20の内部には破線で示す感温部材1が配置されている。感温部材10は、
図2に示されるように、熱を感知するための感温素子11と、外部との電気接続するための一対のターミナル12と、感温素子11とターミナル12を電気的に接続するリード線13とを備える。なお、温度センサ100の装置への取り付け方向は、第1の方向D1であり、外部接続する方向は第3の方向D3である。
【0014】
感温素子11は、サーミスタや熱電対などで構成することができる。感温素子11は、
図3に示すように、第1の方向D1における樹脂成形体20の先端側に配置される。
【0015】
ターミナル12は、ステンレスなどの導電性の金属で構成される。ターミナル12は、第1の方向D1における樹脂成形体20の後端側に配置される。ターミナル12は、第1の方向D1の先端から第3の方向の先端の中程の位置に屈曲部12Aを有している。ターミナル12は、屈曲部12Aから第1の方向D1の先端側の一端までを第1のターミナル領域12Bとし、屈曲部12Aから第3の方向D3の先端側の他端までを第2のターミナル領域12Cとする。リード線13は、第1のターミナル領域12Bの先端側に接続される。第2のターミナル領域12Cの先端側は樹脂成形体20の表面から突出している。樹脂成形体20から突出した第2のターミナル領域12Cの先端側は、外部回路と接続され、感温素子11と外部回路との電気的な接続を行う。
【0016】
樹脂成形体20は、
図3に示すように、第1の領域20Aと第2の領域20Bと第3の領域20Cを有する。第1の領域20A第2の領域20Bと第3の領域20Cは第1の方向D1の先端側から後端側に向かってこの順で配置される。樹脂成形体20は、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリフタルアミド(PPA)などの樹脂を用いることができる。第1の領域20Aおよび第2の領域20Bは、金属ケース40に挿入される領域である。第1の領域20Aは、感温素子11が配置される円柱状領域20AAと、円柱状領域20AAと第2の領域を接続する接続領域20ABを含む。接続領域20ABは、円柱状領域20AAの後端から第2の領域20Bに向かって拡開するテーパー状である。第2の領域20Bは、第1の領域20Aよりも径が大きい。第3の領域20Cは、金属ケース40の外側に配置される。第3の領域20Cには、第3の方向に沿って先端側が開口した凹部20CAを有する。凹部20CAには第2のターミナル領域12Cの先端側が突出しており、外部回路に接続するコネクタとして用いられる。
【0017】
Oリング30は、樹脂成形体20の第1の領域20Aの先端側から挿入され、第2の領域20Bの先端側の主面に当接する位置に配置される。
【0018】
金属ケース40は、ステンレスや黄銅で構成することができる。金属ケース40は、樹脂成形体20を挿入する凹部40Aを有する。凹部40Aには、樹脂成形体20の第1の領域20Aと第2の領域20Bが挿入される。凹部40Aは、段差部40Bと段差部40Cを有する。段差部40Bと段差部40Cは、第1の方向D1の後端側に向かって順に配置される。凹部40Aの段差部40Bにより先端側には、樹脂成形体20の第1の領域20Aが配置される。凹部40Aの段差部40Bと段差部40Cの間には、樹脂成形体20の第2の領域20Bが配置される。凹部40Aの段差部40Cにより後端側には、樹脂成形体20の第3の領域20CとOリング30が配置される。なお、樹脂成形体20は、第2の領域20Bの先端側の主面がOリング30を介して段差部40Cの後端側の主面と当接することで、金属ケース40に対する挿入位置の制限を行っている。
【0019】
次に、温度センサ100の製造方法について説明する。温度センサ100は、予め準備した感温部材10に対して樹脂モールド成形を施し樹脂成形体20を作成する。次に
図1に示すように樹脂成形体20の先端側からOリング30を装着し、Oリング30を装着した樹脂成形体20を金属ケース40の凹部40Aに挿入する。そして、
図3に示すように、凹部40Aの開口端を樹脂成形体20の第2の領域20Bの後端側の主面にカシメることで温度センサ100を作成することが出来る。
【0020】
次に、樹脂成形体20の樹脂モールド成形について説明する。
図4は樹脂モールド成形に用いられる成形金型の分解斜視図である。成形金型50は、スライド型51と、分割型52で構成することができる。スライド型51は、樹脂成形体20における第1の領域20Aと第2の領域20Bを形成するキャビティ51Aを有する。分割型52は、第1の金型53と第2の金型54と第3の金型55で構成される。第1の金型53は、第3の方向D3における第3の領域20Cの後端側部分を形成するキャビティ53Aを有する。第2の金型54は、第3の方向D3における第3の領域20Cの先端側部分でかつ第1の方向D1における第2のターミナル領域12Cより先端側部分を形成するキャビティ54Aを有する。第3の金型55は、第3の方向D3における第3の領域20Cの先端側部分でかつ第1の方向D1における第2のターミナル領域12Cより後端側部分を形成するキャビティ55A(図示せず)を有する。なお、第2の金型54と第3の金型55との組み合わせ面には、第2のターミナル領域の突出部を支持する差込部56が構成されている。つまり、第1の金型53と第2の金型54と第3の金型55を組み合わせた分割型52は、樹脂成形体20における第3の領域20Cを形成するキャビティが構成される。
【0021】
このような成形金型50を用いて樹脂成形体20を樹脂モールド成形することで、温度センサ100の構成部材であるOリング30による気密性を確保を高精度なものにできる。すなわち、成形金型50はスライド型51と分割型52の組み合わせにより構成される。したがって、樹脂成形体20に形成されるパーティングラインは、スライド型51と分割型52の組み合わせ面に沿った線と、第1の金型53と第2の金型54の組み合わせ面に沿った線と、第1の金型53と第3の金型55の組み合わせ面に沿った線と、第2の金型54と第3の金型55の組み合わせ面に沿った線となる。
【0022】
つまり、樹脂成形体20に形成されるパーティングライン60は、
図1に示すように、パーティングライン60Aと、パーティングライン60Bと、パーティングライン60Cとが形成される。パーティングライン60Aは、樹脂成形体20の第2の領域20Bにおける第1の方向D1の後端側の稜線に形成される。パーティングライン60Bは、樹脂成形体20の第3の領域20Cにおける第1のターミナル領域12Bにおけるターミナル12の側面に沿った形成される。パーティングライン60Cは、樹脂成形体20における第3の領域20Cにおける第2のターミナル領域12Cにおけるターミナル12の側面に沿って形成される。そして、樹脂成形体20の第1の領域20Aには形成されない構成となる。言い換えると、樹脂成形体20にOリング30を取り付けた際にOリング30が接する第1の領域20Aの表面と第2の領域20Bの先端側の主面には、パーティングライン60が形成されない。これによりOリング30がパーティングラインに接触することがなくなり、パーティングライン60によるOリング30の浮きが防止できる。すなわち、温度センサ100に取り付けたOリング30による金属ケース40の内に配置された感温素子11に対する高度な気密性を確保することができる。
【0023】
また、樹脂成形体20の樹脂モールド成形においては、感温部材10の取り扱いを容易にする必要がある。すなわち、感温部材10は、
図2で説明したように一対のターミナル12と感温素子11とをリード線13で接続したこうぞうであるため、一対のターミナル12の位置関係が不安定な状態となる。このため、樹脂モールド成形における感温部材10の取り扱いが困難になる。そこで一対のターミナル12の相対位置を位置決めするために一対のターミナル12を支持する支持体70を用いることが好ましい。支持体70の斜視図を
図5に示す。なお、
図5において感温部材10は破線で示している。
支持体70は、第1の方向D1に延伸する第1の平板領域70Aと、第3の方向D3に延伸する第2の平板領域70Bとを有する。第1の平板領域70Aと第2の平板領域70Bには、一対の溝71が配置されている。第1の平板領域70Aの溝71には、第1のターミナル領域12Bが嵌め込まれる。第2の平板領域70Bの溝71には、第2のターミナル領域12Cが嵌め込まれる。
【0024】
なお、支持体70を用いた樹脂モールド成形においては、成形金型50のキャビティ内に支持体70が配置されるので、キャビティ内における樹脂の流動を安定させることと、支持体70の位置決めを行うことが重要となる。そこで、樹脂成形体20においては、樹脂成形体20の表面に支持体70の一部を露出させることで支持体70の位置決めを実現している。この構成によれば、樹脂モールド成形において感温部材10は、樹脂成形体20の第3の領域から突出するターミナル12の端部が成形金型50の差込部56で挟持され、樹脂成形体20の表面に露出する支持体70の一部が成形金型50に当接する。このことにより支持体70が成形金型50のキャビティ内で位置決めされる。
【0025】
なお、支持体70の位置決め精度を考慮すれば、第3の領域20Cから突出するターミナル12の突出部から離れた場所に露出面を構成することが望ましい。つまり、露出面は、第1の方向D1における支持体70の先端側に配置することが好ましい。例えば、支持体70の第1の平板領域70Aの先端側を露出面として、樹脂成形体20の第1の領域20Aの表面から露出させる。より好ましくは、支持体70の第1の平板領域70Aの先端側にテーパー面を形成し、このテーパー面を露出面として樹脂成形体20の第1の領域20Aの一部である接続領域20ABのテーパー面から露出させる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、測定部への取り付方向と外部コネクタとの接続方向とが直交する温度センサに関してOリングによる高度な気密性を確保するという効果を有し、特に使用環境が厳しい車載用の温度センサにおいて有効となる。
【符号の説明】
【0027】
100 温度センサ
11 感温素子
12 ターミナル
12B 第1のターミナル領域
12C 第2のターミナル領域
13 リード線
20 樹脂成形体
20A 第1の領域
20B 第2の領域
20C 第3の領域
30 Oリング
40 金属ケース
60,60A,60B,60C パーティングライン
70 支持体
D1 第1の方向
D2 第2の方向