(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137228
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】トンネル用換気装置
(51)【国際特許分類】
E21F 1/00 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
E21F1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043336
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 保宏
(57)【要約】
【課題】トンネル用換気装置をトンネル内壁面に沿って車両走行帯上部と路側帯上部とを移動可能にしたトンネル用換気装置を提供することを目的とする。
【解決手段】トンネル1内壁面にトンネル軸に対して垂直に沿って設けられたレール5と、レール5に沿って可動する取付架台3と、取付架台3にトンネル1内の換気もしくは排煙を行うトンネル用換気装置2をターンバックル8などの金具で接続保持し、油圧ダンパー6により、取付架台3をレール5に沿って可動させることで、車両走行車線11の直上と路側帯12の直上との間を移動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内の換気もしくは排煙を行う換気装置であって、
トンネル内壁面にトンネル軸に対して垂直に沿って設けられたレールと、
前記レールに沿って可動する取付架台と、
前記取付架台に前記換気装置を接続保持する金具と、
前記取付架台を前記レールに沿って可動させる油圧ダンパーと、を設けたことを特徴とするトンネル用換気装置。
【請求項2】
前記レールと前記取付架台と油圧ダンパーとにより、
前記換気装置を、車両走行帯の直上と路側帯の直上との間で可動させることを特徴とする請求項1記載のトンネル用換気装置。
【請求項3】
前記換気装置は、車両走行帯の直上に位置する場合に換気動作することを特徴とする請求項1または請求項2記載のトンネル用換気装置。
【請求項4】
前記換気装置は、路側帯の直上に位置する場合に換気動作を停止することを特徴とする請求項1または請求項2記載のトンネル用換気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用トンネル等に置いて、トンネル内の空気の換気や、非常時の排煙を目的として使用されるトンネル用換気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のトンネル用換気装置は、トンネル内の天井部に吊り下げられている。そして、トンネル用換気装置のメンテナンスのために、左右の端部側の壁面にトンネル軸に沿って格納ビーム502を設け、一方の格納ビーム502に横断ビームの一端を連結する。横断ビーム501はこの連結点を中心に回動可能とし、通常時は、横断ビーム501を格納ビーム502に格納され、保守点検時には横断ビーム501を回動させて横断ビーム501の自由端を他方の格納ビーム502に固定する。これにより、車線に直交して渡された横断ビーム501に沿ってトンネル用換気装置504(ジェットファン)を移動させることにより、路肩に近い車線を利用してトンネル用換気装置504の吊り下げや吊り上げができるようにすることで、車両の運行規制を低減してトンネル換気設備の保守を提供できるものが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のトンネル用換気装置は、トンネル内の車両走行帯の直上に設置されており、老朽化や地震等により、トンネル用換気装置が設置されている直下の車両走行帯に落下する可能性があるいう課題を有していた。また、トンネルを利用するトラックの車高が高くなったことによるトンネル用換気装置との接触事故も発生しているという課題を有していた。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、トンネル用換気装置をトンネル内壁面に沿って車両走行帯上部と車両走行帯以外の路側帯の上部を移動可能にしたトンネル用換気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明は、トンネル内の換気もしくは排煙を行う換気装置であって、トンネル内壁面にトンネル軸に対して垂直方向に沿って設けられたレールと、前記レールに沿って可動する取付架台と、前記取付架台に前記換気装置を接続保持する金具と、前記取付架台を前記レールに沿って可動させる油圧ダンパーと、を設けることにより、
所期の目的を達成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、換気や排煙等が必要な際に、トンネル用換気装置が本来の位置に移動すると共に、通常時は車両通行帯上にトンネル用換気装置が無いため、老朽化や地震等の有事の際に、トンネル用換気装置崩落による被害を軽減することが可能となるトンネル用換気装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1のトンネル用換気装置の設置構成を示す図
【
図2】本発明の実施の形態1のトンネル用換気装置の構成を示す図
【
図3】本発明の実施の形態1のレール保持部の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について
図1乃至
図3を参照しながら説明する。
【0010】
図1及び
図2は、本実施の形態のトンネル用換気装置の一例である。
図3は、取付架台をレールに保持する機構の一例である。
【0011】
トンネル1は、トンネル1内に車両が走行できる走行車線11(車両走行帯)と、車両が走行規制されている路側帯12が配設されており、トンネル1内上部にトンネル用換気装置2(ジェットファン)が設置されている。
【0012】
トンネル1内を換気もしくは排煙を行うトンネル用換気装置2は、
図2に示すように、モータを円筒形状のファンケーシングに内装する送風部21と、この送風部21の軸方向の前後に設けた円筒状の消音部22とで構成される。送風部21には、軸流型の羽根車203とモータ202が内蔵されている。羽根車203は、モータ202の軸に取付けられている。送風部21の外郭ケーシングと、消音部22の外郭ケーシングは、ほぼ同径の円筒であって、全体として筒型ケーシング201を構成している。消音部22内部であって、モータ202の前後には、固定ハブコーン204が、支持板205を介して筒型ケーシング201に取付けられている。モータ202は、両軸モータを用いたもので、それぞれの軸に羽根車203が取付けられて2段構成の羽根車となっている。筒型ケーシング201は、内筒201aとその周囲に設けられた外筒201bで構成されている。内筒201aと外筒201bとの間の空間は、吸音材206として、グラスウールが充填されており、吸音効果を持たせている。また、トンネル用換気装置2は、トンネル軸方向(
図1上では手前から奥方向、または奥から手前方向がトンネル軸方向)に対し、送風可能に設置されている。
【0013】
取付架台3は、ターンバックル8などの金具でトンネル用換気装置2を取付架台3に固定している。また、取付架台3には後述するレール5に沿って可動させるためのキャスター部4が設けられており、ジェットコースターのようにレール5を掴持する、メインのキャスター4a、補助としてのサイド側のキャスター4b、滑落防止用のキャスター4cの3種類のキャスターで構成されている。なお、キャスター部4は、取付架台3が落下しないようレール5を掴持してレール5に沿って可動できる機構であればよい。また、トンネル用換気装置2は、トンネルの形状などにより金具の形状やターンバックル8の長さなどが調整されて取付架台3に固定されているものとする。なお、取付架台3とターンバックル8との接続部分、ターンバックル8とトンネル用換気装置2の接続部分については、トンネル用換気装置2が取付架台3に固定されていればどのような構成であってもよく、従来の技術を用いて接続されている。なお、本発明では、ターンバックル8を含め、取付架台にトンネル用換気装置を接続保持する金具と称している。
【0014】
レール5は、トンネル1の内壁面のトンネル軸方向の垂直方向に沿って配設されたレールである。つまり、トンネル1の壁面を形成する弧に沿って配設されている。本実施の形態では、トンネル1の壁面を形成する弧に沿って直線状にレールが配設されており、このレール5は、図示しないトンネル1の壁面に設けられたレール保持部材により保持されている。なお、レール5は、直線状でなく、トンネル1の壁面を形成する弧に沿った湾曲状であってもよい。また、レール保持部材により保持される形状ではなく、トンネル1の壁面に直接埋設されるようにしてもよい。また、レール5の配設方向は、トンネル1の内壁面のトンネル軸方向の垂直方向のみに限るものではなく、トンネル軸方向へ傾いていいてもよい。つまり、油圧ダンパー6により、トンネル用換気装置2が走行車線11(車両走行帯)の直上と路側帯の直上との間を移動できればよく、本発明では、トンネル軸方向へ傾いていることを含めて、トンネル軸方向の垂直方向と称している。
【0015】
油圧ダンパー6は、油圧により伸縮するもので、取付架台3及び取付架台3に固定されたトンネル用換気装置2を矢印A方向に可動させるためのものである。本実施の形態では、油圧ダンパー6の一方端部を、取付架台3もしくは、取付架台3とトンネル用換気装置2を固定するためのターンバックル8に固定しているものとする。
【0016】
油圧ダンパー保持部7は、油圧ダンパー6の他方端部をトンネル1の内壁面に保持させる部材である。油圧ダンパー6の他方端部を油圧ダンパー保持部7が保持することにより、油圧ダンパー6を矢印A方向へ伸縮させることで、取付架台3がレール5に沿って矢印B方向へ可動させることができる。
【0017】
以上のような構成において、図示しない制御部が、取付架台3の位置や、油圧ダンパー6の伸縮量を制御しており、油圧ダンパー6の伸縮によって、トンネル用換気装置2が車両走行帯である走行車線11(追越車線)の直上に位置する場合(
図1(a))には、トンネル用換気装置2を動作させ、トンネル軸方向への換気や排煙を行う。また、油圧ダンパー6の伸縮によって、トンネル用換気装置2が車両の走行が制限されている路側帯12(非常駐車帯)の直上に位置する場合(
図1(b))には、トンネル用換気装置2の動作を停止する。
【0018】
なお、トンネル用換気装置2の位置する場所によるトンネル用換気装置2の動作の切り換え(動作/停止)は、走行車線11と路側帯12との境部分の直上に、図示しないセンサーを配設し、取付架台3が、そのセンサーを用いて、走行車線11(追越車線)の直上に位置しているのか、路側帯12(非常駐車帯)の直上に位置しているのかを判断している。この場合、図示しない制御部は、図示しないセンサーの情報も検出している。なお、センサーを利用する方法だけでなく、制御部が予め、走行車線11(追越車線)の直上に位置している場合の油圧ダンパー6の伸び量(伸びる長さ)、路側帯12(非常駐車帯)の直上に位置している場合の油圧ダンパー6の伸び量(伸びる長さ)を記憶しておき、油圧ダンパー6の伸び量によって、走行車線11(追越車線)の直上に位置しているのか、路側帯12(非常駐車帯)の直上に位置しているのかを判断してもよい。
【0019】
次に、トンネル用換気装置2の動作の切り換え(動作/停止)は、トンネル用換気装置2の近傍に配設された図示しない煙霧量検出センサーの情報に基づいて、図示しない制御部が、トンネル1内の煙霧が多いと判断した場合は、トンネル用換気装置2を動作させるために油圧ダンパー6を制御し、取付架台3及び取付架台3に固定されたトンネル用換気装置2を走行車線11(追越車線)の直上に移動させ、トンネル用換気装置2を動作させる。また、図示しない制御部が、トンネル1内の煙霧が少ない判断した場合には、トンネル用換気装置2の動作を停止するため、油圧ダンパー6を制御して、取付架台3及び取付架台3に固定されたトンネル用換気装置2を路側帯12(非常駐車帯)の直上に移動させ、トンネル用換気装置2の動作を停止させる。
【0020】
従って、通常、トンネル1内は煙霧が少ない状態であるため、通常時は、トンネル用換気装置2は路側帯12(非常駐車帯)の直上にあり、トンネル用換気装置2の動作は停止状態となる。これにより、老朽化や地震等の有事の際に、換気装置崩落による被害を軽減することが可能となる。さらには、通常時は、トンネル用換気装置2は路側帯12(非常駐車帯)の直上にあるため、トンネル用換気装置2のメンテナンス作業を行う場合に、走行車線を走行規制することなく作業を行うことができる。
【0021】
また、火事による煙や車両通行量が多く排気ガスが多い場合には、トンネル1内に煙霧が多くなるため、トンネル用換気装置2は走行車線11(追越車線)の直上にあり、トンネル用換気装置2は動作状態となる。これにより、換気や排煙等が必要な際には、正常な排煙動作が行える。
【0022】
(変形例)
なお、本実施の形態では、トンネル用換気装置2の近傍に煙霧量センサーを配設し、トンネル用換気装置2近傍の煙霧の量に基づいて、トンネル用換気装置2の位置を移動させているが、トンネル1の坑口近傍にカメラやセンサーを設置し、車高の高い車両が通行することを検知した場合に、トンネル用換気装置2の位置を路側帯12(非常駐車帯)の直上に移動させることで、トンネル用換気装置2との接触事故を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、トンネル内において、老朽化や地震等の有事の際に、トンネル用の換気装置が車両通行帯上に崩落する被害を軽減するものであり、トンネル内の換気装置に活用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 トンネル
2 トンネル用換気装置
3 取付架台
4 キャスター部
4a メインキャスター
4b サイド側キャスター
4c 滑落防止用キャスター
5 レール
6 油圧ダンパー
7 油圧ダンパー保持部
8 ターンバックル
21 送風部
22 消音部
201 筒型ケーシング
201a 内筒
201b 外筒
202 モータ
203 羽根車
204 固定ハブコーン
205 支持板
206 吸音材
501 横断ビーム
502 格納ビーム
504 トンネル用換気装置