(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137249
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】チタンクラッド管台を備える機器
(51)【国際特許分類】
F16L 58/08 20060101AFI20230922BHJP
B01J 3/04 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
F16L58/08
B01J3/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043366
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】柿本 健一
(72)【発明者】
【氏名】中邑 健児
(72)【発明者】
【氏名】田中 拓美
(72)【発明者】
【氏名】小倉 優也
【テーマコード(参考)】
3H024
【Fターム(参考)】
3H024EA04
3H024EC15
3H024ED08
3H024EE02
3H024EF17
(57)【要約】
【課題】耐食性を有する被覆部が与えられる管台であって、溶接等により被覆部を容器や配管等に接合する箇所に過大な応力が加えられることを避けることのできる管台を備える機器を提供すること。
【解決手段】本発明は、壁10の孔10Hの位置に設けられるチタンクラッド管台2と、壁10とを備える圧力容器1である。管台2は、管台本体21と、チタンから形成され、管台本体21の内周部21Bを覆う被覆部22と、を備える。管台本体21と被覆部22とは、いずれもパイプ状に形成されている状態で圧着されてクラッド管20をなしている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁の孔の位置に設けられる管台と、前記壁と、を備える機器であって、
前記管台は、
管台本体と、
チタンから形成され、前記管台本体の内周部を覆う管台被覆部と、を備え、
前記管台本体と前記管台被覆部とは、いずれもパイプ状に形成されている状態で圧着されてクラッド管をなしている、機器。
【請求項2】
前記管台本体と前記管台被覆部とは、爆発圧着により前記クラッド管をなしている、
請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記管台本体は、前記壁の外側にフランジを備え、
前記管台被覆部は、チタンから形成されて前記フランジに配置される封止部材に溶接されている、
請求項1または2に記載の機器。
【請求項4】
チタンから形成されて前記壁の内側で前記管台本体の端面を覆い、前記管台被覆部の外周部または端面に溶接されるとともに、前記壁の内側を被覆する壁被覆部に溶接される当板を備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタンから形成されている被覆部が内側に与えられる管台を備える機器に関する。
【背景技術】
【0002】
クラッド鋼は、種々の産業用のプラント、発電設備等において、例えば、反応器をなす圧力容器等に用いられる。腐食性の液体やガスと接触する圧力容器には、チタン等の耐食性が良好な合わせ材と炭素鋼等の母材とを圧着させてなるクラッド鋼板が用いられる。圧力容器は、クラッド鋼板の曲げ加工により、筒状の胴部を有した形状に成形される。
【0003】
圧力容器には、液体やガスを流入または流出させる出入口としての管台、あるいは容器内の流体の温度、圧力、密度、液位等を計測する計装品を設置するための管台が溶接される。こうした管台の内周面は、必要に応じて、特許文献1に示すように、耐食性の良好なスリーブ(ライニング)により覆われる。管台の内周面を覆う被覆部としてのスリーブは、耐食性の良好なチタンから形成することができる。チタンと鉄とを溶接することは実質的に不可能であるため、チタンから形成されるスリーブと、鋼から形成される管台とを例えば軸方向の両端で溶接することはできない。また、管台の内周面をチタンの肉盛り溶接により覆うこともできない。
【0004】
特許文献1のスリーブは、容器の内側で当板に溶接されるとともに、管台のフランジにろう付けされるフランジシートに溶接される。当板は、管台の端面を覆い、容器の内壁をなす合わせ材に溶接される。スリーブ、当板、およびフランジシートのいずれも、チタンから形成することができる。
また、高温流体の処理サイクルに伴うスリーブの伸縮を規制するため、管台の内周部には、スリーブの外周部の溝に嵌るストッパーが形成されている。つまり、ストッパーと溝との係合により、スリーブの軸方向への熱膨張を規制することで、フランジシートの破損を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
管台のスリーブおよび管台の本体は、別体にそれぞれ作製される。そして、管台本体と、その内側に挿入されるスリーブは、当板やフランジシートと共に容器に組み付けられる。
圧力容器を備える機器の稼働時において、スリーブと管台本体との温度差に起因する軸方向への熱膨張量の違いにより、スリーブには軸方向の荷重が作用する。これに加えて、容器の外側または内側で管台に接続される装置や配管、計装品等から振動、衝撃等の外力がスリーブに加えられるのならば、スリーブには軸とは直交する方向の荷重も作用する。
【0007】
機械加工により管台本体とスリーブとの間には殆ど隙間がないとしても、管台本体の内周部とスリーブの外周部とは接合されていないので、上記荷重により、スリーブと管台本体とが相対変位する。かかる相対変位により、例えば、容器の合わせ材と当板との接合箇所や、管台のフランジとフランジシートとの接合箇所等へ過大な応力が加えられることは避けたい。
【0008】
以上より、本発明は、耐食性を有する被覆部が与えられる管台を備える機器であって、溶接等による部材の接合箇所に過大な応力が加えられることを避けることのできる管台を備える機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、壁の孔の位置に設けられる管台と、前記壁と、を備える機器であって、管台は、管台本体と、チタンから形成され、管台本体の内周部を覆う管台被覆部と、を備える。管台本体と管台被覆部とは、いずれもパイプ状に形成されている状態で圧着されてクラッド管をなしている。
【0010】
本発明の機器において、管台本体と管台被覆部とは、爆発圧着によりクラッド管をなしていることが好ましい。
【0011】
本発明の機器において、管台本体は、壁の外側にフランジを備え、管台被覆部は、チタンから形成されてフランジに配置される封止部材に溶接されていることが好ましい。
【0012】
本発明の機器において、管台は、チタンから形成されて壁の内側で管台本体の端面を覆い、管台被覆部の外周部または端面に溶接されるとともに、壁の内側を被覆する壁被覆部に溶接される当板を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、管台本体の内周部と管台被覆部の外周部とが圧着により一体に接合されているので、管台被覆部の変位が管台本体により拘束される。そのため、管台被覆部と管台本体との温度差に起因する熱膨張差により、管台被覆部から部材の接合箇所に過大な応力が加えられることがなく、また、管台被覆部に接続される部材の振動等の外力による荷重は全て管台本体および壁により受けるので、当該荷重により、管台被覆部から部材の接合箇所に過大な応力が加えられることもない。
【0014】
つまり、管台被覆部と管台本体とが圧着により一体に接合されていることによれば、溶接等による接合箇所に過大な応力が加えられることを未然に防ぐことができるので、接合箇所をより長期に亘り健全に維持することができる。
【0015】
加えて、管台被覆部と管台本体とが圧着により一体に接合されていることによれば、従来技術の如くに突起および溝によって管台本体と管台被覆部とを係合させる必要がないので、突起や溝の無い簡素な構造の管台を提供することができる。
【0016】
本発明によれば、管台本体と、チタンから形成される管台被覆部とをいずれもパイプの状態で圧着させてなるクラッド管を用いているので、平坦なクラッド鋼板を曲げてパイプ状に成形する場合とは異なり、径を選ばずにチタンクラッド管台を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るチタンクラッド管台を備えた圧力容器の外観側面図である。
【
図2】
図1に示す各管台に適用可能な管台の構造を示す縦断面図である。
【
図3】比較例に係るチタンライニング管台の構造を示す縦断面図である。
【
図5】本発明の第2変形例に係るチタンクラッド管台の構造を示す縦断面図である。
【
図6】本発明の第3変形例に係るチタンクラッド管台の構造を示す縦断面図である。
【
図7】本発明の第4変形例に係るチタンクラッド管台の構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
〔圧力容器の説明〕
図1に示す圧力容器1は、液体やガス等を反応させる反応器をなし、図示しない他の容器や機器、バルブ、およびポンプ等と共にプラント等の設備を構成している。圧力容器1は、空間11(
図2)を内包する外殻をなす壁10と、壁10に設けられる複数の管台2(nozzle)とを備えている。なお、
図1に示されている管台2の数および位置は一例である。圧力容器1は、
図1に示す管台2に加えて、他の管台を備えていてもよい。
【0019】
壁10は、円筒状の胴12と、いずれも胴12に組み付けられる上鏡板13および下鏡板14とを備え、規定の圧力に耐える耐圧性を有している。管台2は、胴12、上鏡板13、および下鏡板14のいずれかに設けられる。
壁10は、耐食性を有する合わせ材としての壁被覆部101を母材としての壁本体100に圧着させてなるクラッド鋼板から作製されている。壁本体100は、例えば、炭素鋼、低合金鋼、およびステンレス鋼等のいずれかから形成されている。
【0020】
壁被覆部101は、例えば、チタンから形成されている。本明細書において「チタン」は、純チタンまたはチタン合金を意味する。
【0021】
壁10に用いられるクラッド鋼板は、壁被覆部101に相当するチタンの板と、壁本体100に相当する鋼板とから、圧延または爆発圧着により得ることができる。そのクラッド鋼板を曲げ加工により成形し、鋼板の継ぎ目を溶接することにより、胴12、上鏡板13、および下鏡板14がそれぞれ作製される。胴12、上鏡板13、下鏡板14、および管台2等を組み付けることで、圧力容器1が製造される。
【0022】
〔管台の基本的な説明〕
管台2は、壁10に形成された孔10Hを通じて、壁10の内側の空間11に連通している。管台2のうち、管台2-1は、圧力容器1の外側で配管31と接続され、配管31を通じて圧力容器1に液体やガス等の流体を流入させる入口、または圧力容器1から配管31を通じて流体を流出させる出口として使用される。管台2-1は、必要に応じて、圧力容器1内の空間11で内部部品32あるいは配管33等の部材と接続される。
【0023】
管台2のうち、管台2-2は、圧力容器1内の流体の温度、圧力、密度、液位等を計測する計装品34を設置するために使用される。同様の計装品は、流体の入口または出口に相当する管台2-1に接続される配管31や配管33の内部に設置することも可能である。
【0024】
図2を参照し、本実施形態の管台2の構造を説明する。
図2は、圧力容器1に備わる複数の管台2を代表して、胴12に設けられた管台2-1の構造を示している。
圧力容器1内の空間11には、腐食性の液またはガスが存在する。管台2-1の内側には、非腐食性の流体または腐食性の流体が流れる。
図2に示す管台2は、耐食性を有するチタンから形成される被覆部22を含むチタンクラッド管台に相当する。圧力容器1内の腐食性流体や、管台2の内部流路を流れる腐食性流体に対する耐食のため、あるいは内部部品32や配管31,33がチタンから形成される場合に内部部品32や配管31,33と溶接する目的で、チタンから形成される被覆部22を備える管台2を採用することができる。本実施形態の内部部品32は、例えば、加熱用コイルであり、圧力容器1内の腐食性流体に接触する加熱用コイルの外面の耐食のため、チタンから形成されている。
【0025】
管台2は、壁10を貫通する円形の孔10Hに配置される管台本体21と、管台本体21の内周部21Bを全周に亘り覆うことで、管台本体21を腐食から保護する被覆部22と、壁10の外側で管台本体21のフランジ21Fに配置される封止部材23と、壁10の内側で管台本体21の端面21Eを覆う当板24とを備えている。
【0026】
被覆部22の他、腐食性流体に接触する当板24、および被覆部22と溶接される封止部材23もまた、チタンから形成することができる。
フランジ21Fに接続される配管31は、腐食性流体に接触する場合はチタン配管、非腐食性流体に接触する場合は炭素鋼配管を用いることができる。腐食性雰囲気にある壁10の内側で被覆部22の内端222に接続される配管33は、チタン配管から形成することができる。
【0027】
図2に示す孔10Hは、壁10の板厚方向に壁10を貫通しており、孔10Hに配置される管台本体21の軸線Lは、壁10の直径方向に延びているが、その限りではない。孔10Hは、壁10の側面視あるいは平面視において、壁10の直径方向に対して傾斜した方向に壁10を貫通していてもよい。
【0028】
〔クラッド管の説明〕
管台本体21と被覆部22とは、いずれもパイプ状に形成されている状態で圧着されて、クラッド管20(clad pipe)をなしている。
管台本体21は、クラッド管20の母材に相当し、被覆部22は、クラッド管20の合わせ材に相当する。管台本体21は、例えば、炭素鋼、低合金鋼、およびステンレス鋼等のいずれかを用いて形成することができる。
【0029】
被覆部22は、例えば、JIS H 4600:2012に記載の材料のいずれかを用いて形成することができる。耐圧が不要であればJIS H 4600:2012の1種、耐圧が必要、かつ1種では板厚が厚くなり、板厚を薄くしたい場合は2種を用いることができる。純チタンよりも耐食性が必要ならばPdやTa等を添加した耐食チタン合金を用いることができる。
【0030】
クラッド管20には、孔10Hの内径に対応する外径が与えられるともに、壁10から外側に突出する所定の長さが与えられている。そして、管台本体21の外周部21Aは、壁10の外面10Aと内面10Bとにそれぞれ対応する位置で、壁10の孔10Hの周りに溶接される。外面10A側と内面10B側との両方で溶接されることは、圧力容器1の耐圧の確保に寄与する。
【0031】
外面10A側の溶接部21C、内面10B側の溶接部21Dのいずれも、孔10Hの内周部に沿って全周に亘り形成されている。内面10B側で壁10と管台本体21とを溶接するため、壁被覆部101は、壁本体100における孔10Hの周りの領域には形成されていない。
溶接による接合強度を高めるため、孔10Hの内周部には、適宜な形状の開先10Cが形成されることが好ましい。なお、他の溶接部にも、可能であれば開先を形成することが好ましい。
【0032】
チタンから形成される部材と、鉄を主成分として含む材料から形成される部材とを溶接したとしても、溶接箇所にはチタンと鉄との脆い金属間化合物が生成されるので、それらの部材を溶接することは実質的に不可能である。つまり、管台本体21と被覆部22とを例えば軸方向の両端で溶接するといったことはできない。但し、それらは圧着により一体に接合されている。
【0033】
圧着前において、管台本体21および被覆部22は、例えば、引抜加工、切削加工、板材を管状に曲げ加工して継ぎ合わせ部分を溶接する板曲げ溶接、あるいは鋳造等により別体にそれぞれ作製されたパイプに相当する。作製方法は、管台2の肉厚等に応じて選択される。管台本体21と被覆部22とを圧着させる方法として、爆発圧着を採用することが好ましい。
【0034】
爆発圧着前の被覆部22に相当するパイプ(内パイプ)の外径は、爆発圧着前の管台本体21に相当するパイプ(外パイプ)の内径に対して隙間を持たせるよう小さく設定されている。外パイプの内側に同心に内パイプを配置し、内パイプの内側に配置した爆薬を爆発させると、爆発により内パイプの軸心から径方向外側に向かう莫大な物理的エネルギーにより内パイプの径が瞬時に拡大し、内パイプが外パイプに衝突する。外パイプへの内パイプの衝突により、外パイプの内周部21Bと内パイプの外周部22Aとが強固な接合強度で圧着されているクラッド管20を得ることができる。
【0035】
上述の通り、圧着前に予めパイプ状に形成されている状態で管台本体21と被覆部22とを圧着させてなるクラッド管20は、平坦なクラッド鋼板を曲げ加工によりパイプ状に成形し、継ぎ目(seam)を溶接することで得られるクラッド管とは製法が相違する上、内パイプおよび外パイプともシームレス(seamless)とすることができるため、構成も相違している。管台本体21および被覆部22がそれぞれ、板曲げ溶接により作製されている場合は、管台本体21および被覆部22のそれぞれを単体として見れば継ぎ目が存在するが、両者を板厚方向に横断する継ぎ目は存在しない。その意味で両者はシームレスなクラッド管20をなしている。
【0036】
管台2の径に対して、圧力容器1の胴12の径は、十分に大きい。胴12は、クラッド鋼板から曲げ加工により作製することができる。しかし、管台2をクラッド鋼板から曲げ加工により作製することは難しい。クラッド鋼板の曲げ加工により管台2を作製する場合は、管台本体21および被覆部22の各々に、継ぎ合わせ部として軸方向に沿った少なくとも1本の溶接が必要である。ここで、既に管台本体21と外面が圧着されている被覆部22の溶接は、内面側から行わなくてはならない。被覆部22の内面の溶接は、径が小さい程、手や治具が届きにくいので作業性が悪い。例えば、径が500 mm以上の場合は溶接可能であるとしても、径が200 mm以下の場合には、内面の溶接が困難を極めるので、クラッド鋼板から曲げ加工により管台2を製作することは実質的に不可能である。
【0037】
〔管台の構成要素の説明〕
引き続き、
図2を参照し、管台本体21、被覆部22、封止部材23、および当板24のそれぞれの詳細な構成および配置の一例を説明する。
管台本体21は、軸線Lの方向の一端にフランジ21Fを有した円形断面の直管に相当する。フランジ21Fは、管台本体21に溶接されていてもよい。管台本体21のフランジ21Fは、配管31のフランジ31Fとボルト31Bにより締結される。
フランジ21Fには、封止部材23が配置される円環状の凹部211が形成されている。管台本体21の内周部21Bの径は一定であり、内周部21Bに突起や溝は形成されていない。
なお、管台2が、計装品34を設置するための管台2-2である場合は、フランジ21Fには計装品34が設置される。
【0038】
被覆部22は、フランジ21Fの位置から、管台本体21の端面21Eを超えて壁10の内側まで軸線Lの方向に延在している。被覆部22の内端222が実際に管台本体21から壁10の内側に突出している量は僅かである。
内部部品32は、壁10の内側に位置する被覆部22の内端222に例えば溶接により接合される。
【0039】
封止部材23は、円環状に形成され、フランジ21Fを被覆するために配置される。これは、管台2の内側を流れる内部流体が非腐食流体であれば不要となる。封止部材23とフランジ31Fとの間に配置されるガスケットによりフランジ21F,31Fの間が封止される。封止部材23の内径は、被覆部22の内径と同等である。被覆部22の外端221側で、封止部材23と、被覆部22とは、全周に亘り溶接されて溶接部23Aをなしている。また、封止部材23の径方向外側の端部は、フランジ21Fにろう付けすることもある。
【0040】
当板24は、円環状に形成され、腐食性雰囲気の空間11に臨む管台本体21の端面21Eを覆う。壁10の内側へ突出している被覆部22は、当板24の内側の開口240に通される。この当板24は、側面視において軸線Lに対し垂直の姿勢で、壁被覆部101に配置される。当板24が、壁被覆部101の曲率半径に倣って、湾曲して形成されていてもよい。
管台本体21の端面21Eは、壁10の内面10Bと面一に配置される必要はない。端面21Eが、内面10Bよりも内側に位置していてもよい。
【0041】
開口240の内周部と、被覆部22の外周部22Aとは、全周に亘り溶接されて溶接部24Aをなしている。また、当板24の径方向外側の端部241と、壁被覆部101とは、全周に亘り溶接されて溶接部24Bをなしている。
なお、当板24は、
図4を参照して後述するように、被覆部22の必ずしも外周部22Aに溶接されている必要はない。
【0042】
〔管台の製造方法〕
管台2を製造する手順の一例を簡単に説明する。まず、いずれもパイプ形状に成形されている状態の管台本体21と被覆部22とを爆発圧着させることで、クラッド管20を得る(第1ステップ)。そのクラッド管20のフランジ21Fに封止部材23を配置し、封止部材23を被覆部22に溶接する(第2ステップ)。
続いて、クラッド管20を壁10の孔10Hに挿入し、壁10の外面10A側と内面10B側との両方に管台本体21を溶接する(第3ステップ)。
さらに、当板24を被覆部22と壁被覆部101とに溶接する(第4ステップ)。
【0043】
〔比較例の説明〕
図3に示す比較例の管台2-Zは、管台本体41と、管台本体41とは別体の被覆スリーブ42とを備えている。管台本体41は、本実施形態の管台本体21と同様に鋼から形成され、被覆スリーブ42は、本実施形態の被覆部22と同様にチタンから形成されている。
【0044】
管台本体41と被覆スリーブ42とは、本実施形態と同様に、封止部材23、当板24、および壁10と共に組み立てられる。比較例の管台本体41および被覆スリーブ42は、本実施形態のクラッド管20をなす管台本体21および被覆部22とは異なり、互いに接合されていない。
そのため、管台本体41の内周部41Bと被覆スリーブ42の外周部42Aとの間の隙間Gが如何に小さくても、あるいは、焼き嵌め・冷やし嵌め、ねじ等により内周部41Bと外周部42Aとを係合させたとしても、熱膨張や振動等に起因して被覆スリーブ42と管台本体41とが相対的に変位してしまう。
【0045】
例えば、圧力容器1を含むプロセスの処理サイクルの開始時に、管台2-Zを通じて圧力容器1内に高温流体が流入したとする。上述したように、被覆スリーブ42と管台本体41とが接合されていない以上、管台本体41に対する被覆スリーブ42の変位は許容される。
したがって、高温流体に直接接触することで急激に温度の上昇した被覆スリーブ42が、軸線Lの方向への熱膨張により、管台本体41に対して、矢印A1の向きに伸長する。チタンの線膨張係数は鉄の線膨張係数よりも若干小さいが、被覆スリーブ42の急激な温度変化により被覆スリーブ42と管台本体41との温度差が大きいことで、管台本体41に対して被覆スリーブ42が伸長する。
【0046】
被覆スリーブ42のA1の向きへの熱膨張により、被覆スリーブ42に接合されている当板24に軸方向荷重F1が作用することで、溶接部24A,24Bにせん断力が発生し、溶接部23Aには圧縮応力が発生する。また、管台2-Zを通じて圧力容器1内に低温流体が流入した場合は、被覆スリーブ42が管台本体41に対し矢印A2の向きに収縮することで、溶接部24A,24Bにせん断力が発生し、溶接部23Aには引張応力が発生する。
【0047】
さらに、管台2に接続される内部部品32の振動や衝撃、または内部部品32の熱膨張による荷重が被覆スリーブ42に加えられる場合がある。あるいは、配管31,33や計装品34の振動や衝撃、熱膨張による荷重が被覆スリーブ42に加えられる場合もある。そうした荷重は、軸方向荷重F1と同様に軸線Lの方向に作用する場合もあるし、
図3に示す軸直角荷重F2のように、軸線Lに対して直交する方向に作用する場合もある。軸直角荷重F2により、管台本体41に対して被覆スリーブ42が変位することで、軸直角荷重F2は、被覆スリーブ42に接合されている当板24の溶接部24A,24Bや封止部材23の溶接部23Aに作用する。
【0048】
〔本実施形態の管台による作用〕
図3の比較例に対し、クラッド管20を含む本実施形態の管台2によれば、管台本体21の内周部21Bと被覆部22の外周部22Aとが圧着により接合されているので、被覆部22の軸方向への変位が管台本体21により拘束される。そのため、被覆部22の軸方向への変位によって当板24の溶接部24A,24Bや封止部材23の溶接部23Aに過大な応力が加えられることがない。
ここで、管台本体21から被覆部22が露出している部分の軸方向への熱膨張による応力発生を考慮したとしても、その応力は比較例における軸方向への熱膨張と比べて十分に小さいから、被覆部22が露出している側の当板24の溶接部24A,24Bには過大な応力が作用しない。
一方、軸直角方向の荷重に関しては、圧着により被覆部22と管台本体21との相対変位が規制されていることで、振動等の外力による軸直角荷重F2は全て管台本体21および壁10により受けるので、被覆部22に接合されている部材、例えば当板24や封止部材23には軸直角荷重F2が加えられない。また、被覆部22の径方向への熱膨張による軸直角荷重F2を考慮したとしても、その応力は振動等の外力と比べて十分に小さいから、被覆部22に接合されている部材、例えば当板24や封止部材23に過大な軸直角荷重F2が加えられることがない。
【0049】
以上で説明したように、被覆部22と管台本体21とが圧着により一体に接合されていることによれば、上述のように、被覆部22に接合されている当板24の溶接部24A,24Bや、被覆部22に接合されている封止部材23の溶接部23Aに過大な応力が加えられることを未然に防ぐことができる。
本実施形態の管台2には、被覆部22と管台本体21とが圧着により一体に接合されてなるクラッド管20が用いられる。被覆部22と管台本体21とは、いずれもパイプの状態で圧着されるので、クラッド鋼板を曲げてパイプ状に成形する場合とは異なり、径を選ばずにチタンクラッド管台2を提供することが可能である。また、管台本体21および被覆部22のうち少なくとも管台本体21が圧着前においてシームレスである場合は、圧力容器1の耐圧の確保に寄与する。
【0050】
当板24や封止部材23は被覆部22と同様にチタンから形成されており、チタン材の溶接は鋼材の溶接と比べて難易度が高い。本実施形態によれば、溶接部23A,24A,24Bをより長期に亘り健全に維持することができるので、圧力容器1の点検、整備時における溶接部23A,24A,24Bの補修頻度が減少する。そうすると、プラントの稼働率が向上し、圧力容器1の気密性を保ちつつ、安定して操業することができる。
【0051】
さらに、被覆部22と管台本体21とが圧着により一体に接合されていることによれば、従来技術の如くに突起および溝によって管台本体21と被覆部22とを係合させる必要がない。本実施形態によれば、突起や溝の無い簡素な構造の管台2を提供することができる。
【0052】
圧力容器1に複数の管台2が設けられるとき、管台2が設置される位置や温度条件、配管31,33等から加えられる荷重等に応じて、被覆部22と管台本体21との熱膨張差、および、部材間の接合箇所に作用する応力は相違する。そのため、圧力容器1において、熱膨張差や応力が相対的に小さい部位には、従来構造のようにチタンスリーブを備えた管台を設けることができる。つまり、同一の圧力容器1が、チタンクラッド管台2と、チタンスリーブ管台とを備えていてもよい。
【0053】
〔変形例〕
以下、本発明の各変形例に係る管台の構造を説明する。
図4に示す管台2-X1の当板24-1は、上記実施形態とは異なり、被覆部22の外周部22Aには溶接されていない。
図4に示すように、当板24-1の開口240の内周部が、被覆部22の端面22Eに溶接されていてもよい。
【0054】
図5に示す管台2-X2、フランジ21Fに接続される配管31、および被覆部22の内端222に接続される配管33には、腐食性の液やガスが流れる。しかし、壁10の空間11には腐食性の液やガスが存在しない。そのため、管台2-X2は、管台本体21の端面21Eを覆う当板24,24-1を備えていない。また、壁10は、壁本体100を覆う壁被覆部101を備えていない。
【0055】
管台2-X2によれば、上記実施形態と同様に、管台本体21と被覆部22とが圧着により一体に接合されているので、被覆部22の軸方向への変位が管台本体21により拘束される。そのため、被覆部22の軸方向への変位によって封止部材23の溶接部23Aに過大な応力が加えられることがない。加えて、配管33または配管31の振動や衝撃、熱膨張等の外力によって被覆部22に作用する軸直角荷重F2は全て管台本体21および壁10により受けるので、軸直角荷重F2によって封止部材23の溶接部23Aに過大な応力が加えられることもない。
その他、管台2-X2によれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
図6に示す管台2-X3のように、管台本体21-1は、壁10の外面10Aに突き当てられて壁10に溶接されていてもよい。管台本体21-1の先端213と壁10とは、開先溶接により、溶接部21Cをなしている。壁10の孔10H-1の内径は、被覆部22の外径に対応している。
【0057】
図7は、内側を非腐食性の流体が流れる管台2-X4の構造を示す。壁10の内側は腐食性流体が存在するため、管台本体21には、端面21Eを覆う当板24が設けられている。被覆部22は、管台本体21のフランジ21F側から基端側(端面21E側)に亘る内周部21Bの基端側の領域を覆っているとともに、端面21Eを超えて壁10の内側へ延在している。内周部21Bにおける被覆部22により覆われていない領域は、管台2-X4の内部流路に露出している。流体の抵抗を抑えるため、内周部21Bの段差21Gに配置される被覆部22と、内周部21Bとが面一に配置されることが好ましい。本例の管台構造は、被覆部22の外端221側で被覆部22と溶接される封止部材23を備えていない。
【0058】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
本発明の管台は、必ずしも圧力容器1の壁10に設けられる必要はなく、耐圧性が要求されない容器の壁や、装置筐体の壁にも設けることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 圧力容器(機器)
2,2-1,2-2,2-X1,2-X2,2-X3,2-X4 チタンクラッド管台
2-Z 比較例の管台
10 壁
10A 外面
10B 内面
10C 開先
10H 孔
11 空間
12 胴
13 上鏡板
14 下鏡板
20 クラッド管
21,21-1 管台本体
21A 外周部
21B 内周部
21C,21D 溶接部
21E 端面
21F フランジ
21G 段差
22 被覆部(管台被覆部)
22A 外周部
22E 端面
23 封止部材
23A 溶接部
24,24-1 当板
24A,24B 溶接部
31 配管
31B ボルト
31F フランジ
32 内部部品
33 配管
34 計装品
41 管台本体
41B 内周部
42 被覆スリーブ
42A 外周部
100 壁本体
101 壁被覆部
211 凹部
213 先端
221 外端
222 内端
240 開口
241 端部
F1 軸方向荷重
F2 軸直角荷重
G 隙間
L 軸線