(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137254
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】自動排水装置およびサーモユニット
(51)【国際特許分類】
E03B 7/07 20060101AFI20230922BHJP
E03B 7/10 20060101ALI20230922BHJP
F16K 31/68 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
E03B7/07 Z
E03B7/10 M
F16K31/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043374
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅之
(72)【発明者】
【氏名】小仲 正純
(72)【発明者】
【氏名】魚津 颯二郎
【テーマコード(参考)】
3H057
【Fターム(参考)】
3H057AA02
3H057BB46
3H057BB49
3H057CC03
3H057CC04
3H057DD03
3H057EE01
3H057FA04
3H057FC05
3H057HH03
3H057HH15
(57)【要約】
【課題】上水道管の滞留部における水温上昇を抑制すること。
【解決手段】自動排水装置(1)は、上水道管における滞留部配管(3e)に接続されて、滞留部配管内の水を自動的に捨水する自動排水装置であって、滞留部配管に直接または間接的に接続される排水管(11)と、排水管の途中位置に設けられ、滞留部配管内の水の温度上昇に伴って流路を開く第1のサーモユニット(30A)とを備える。第1のサーモユニットは、内部に弁座を有する第1の管部材と、弁座に係合する弁体、および温度に応じて伸縮する伸縮部を有し、水の温度が規定温度以上に上昇して伸縮部が伸長したことに応じて弁体が弁座から離れるように、第1の管部材の内部に組み付けられた第1のサーモエレメントとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上水道管における滞留部配管に接続されて、前記滞留部配管内の水を自動的に捨水する自動排水装置であって、
前記滞留部配管に直接または間接的に接続される排水管と、
前記排水管の途中位置に設けられ、前記滞留部配管内の水の温度上昇に伴って流路を開く第1のサーモユニットとを備え、
前記第1のサーモユニットは、内部に弁座を有する第1の管部材と、前記弁座に係合する弁体、および温度に応じて伸縮する伸縮部を有し、水の温度が規定温度以上に上昇して前記伸縮部が伸長したことに応じて前記弁体が前記弁座から離れるように、前記第1の管部材の内部に組み付けられた第1のサーモエレメントとを含む、自動排水装置。
【請求項2】
前記第1のサーモユニットと並列に配置され、前記滞留部配管内の水の温度低下に伴って流路を開く第2のサーモユニットをさらに備え、
前記第2のサーモユニットは、内部に弁座を有する第2の管部材と、前記弁座に係合する弁体、および温度に応じて伸縮する伸縮部を有し、水の温度が規定温度以上であり前記伸縮部が伸長した状態で前記弁体が前記弁座に押し付けられるように、前記第2の管部材の内部に組み付けられた第2のサーモエレメントとを含む、請求項1に記載の自動排水装置。
【請求項3】
前記第1のサーモユニットは、前記第1のサーモユニットが設けられた第1管路と前記第2のサーモユニットが設けられた第2管路との交差部に隣接して配置されている、請求項2に記載の自動排水装置。
【請求項4】
前記第1の管部材および前記第2の管部材はいずれも、同じ形状および構造を有しており、
前記第1の管部材および前記第2の管部材は、前記弁座が設けられた中央管部と、前記中央管部の下流側に位置し、前記伸縮部の先端部を支持する支持部が設けられた下流管部と、前記中央管部の上流側に位置し、前記伸縮部が縮む方向に不勢力を与えるスプリングを支持する支持部が設けられた上流管部とにより構成されている、請求項2または3に記載の自動排水装置。
【請求項5】
前記第1のサーモユニットと並列に配置され、タイマ制御により開閉する電磁弁をさらに備える、請求項1~4のいずれかに記載の自動排水装置。
【請求項6】
前記第1のサーモユニットと直列に配置された量水器をさらに備える、請求項1~5のいずれかに記載の自動排水装置。
【請求項7】
水道管における滞留部配管に接続される自動排水装置用のサーモユニットであって、
径方向に延在するリング部が内部に設けられた中央管部と、前記中央管部の下流側に位置する下流管部と、前記中央管部の上流側に位置する上流管部とにより構成された、管部材と、
前記管部材の内部に選択的に取り付けられ、温度に応じて伸縮する伸縮部を有する第1および第2のサーモエレメントとを備え、
前記リング部は、上流に向かって拡径した第1弁座および下流に向かって拡径した第2弁座を一体的に有し、
前記第1のサーモエレメントは、前記第1弁座に係合する弁体を有し、前記第2のサーモエレメントは、前記第2弁座に係合する弁体を有している、サーモユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上水道管における滞留部配管に接続されて、滞留部配管内の水を自動的に捨水する自動排水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上水道の水の残留塩素の濃度低下に対する対策として、多くの事業体では、水道本管の管路末端部や管網等(滞留部配管)から排水溝等の排水系まで捨水配管を設け、捨水配管から排水系への常時排水や、捨水配管に設けた排水バルブの開閉による定期的な排水を行っている。しかし、常時排水の場合は無収水量の増加や水資源の損失が問題となり、定期的排水の場合は、作業員が排水バルブの設置場所に赴いて排水バルブの開閉作業を行う必要があるため、職員の労務負担の問題がある。
【0003】
一方で、特開2009-221762号公報(特許文献1)、特開2013-170376号公報(特許文献2)、および特開2021-130995号公報(特許文献3)に開示されているように、捨水配管の途中に、電磁弁等の排水バルブと、その排水バルブの開閉をタイマ等で制御するコントローラとを備えた自動排水装置を設置し、任意のタイミングで自動的に捨水を行う技術が従来から知られている。
【0004】
たとえば
図14に示される自動排水装置100は、水道本管(上水道管)3の管路末端部等から排水系としての排水溝4までの捨水配管5の途中に設けられている。特許文献3の自動排水装置100は、少なくとも捨水配管5に介設される接続配管と電磁弁とを予め組み立ててユニット化した配管ユニット101を備えている。これにより、自動排水装置100が小型化されるので、コントローラボックス102を含む自動排水装置100の全体が、量水器ボックス2に収納可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-221762号公報
【特許文献2】特開2013-170376号公報
【特許文献3】特開2021-130995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水のおいしさを感じる条件には様々なものがあるが、その一つとして水温が挙げられ、一般に冷たい方がおいしいと感じられる。水道水においても同様のことが言え、利用者の水のおいしさに対する要求の高まりもあって、水温上昇対策への取り組みは重要度を増しつつある。
【0007】
水道管内では特に、滞留部での水温上昇が課題となる。近年は、人口減少や節水機器の普及、ライフスタイルの変化等による水需要量減少の影響で滞留箇所が増加傾向にあることに加え、異常気象の影響で夏場に平年以上の気温となることも多いことから、水道水の水温上昇箇所の増加が懸念される。
【0008】
特許文献1~3のように、電磁弁を含む自動排水装置を水道管の滞留部配管に接続することで残留塩素の濃度低下を防止する技術は存在するものの、滞留部における水温上昇を抑制する技術は存在しない。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、夏場に上水道管の滞留部における水温上昇を抑制することのできる自動排水装置を提供することである。
【0010】
また、自装置が備える排水管が冬場に凍結することを防止することも、本発明の自動排水装置の目的とし、さらに、本発明は、このような自動排水装置に適したサーモユニットを提供することも、他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明のある局面に従う自動排水装置は、上水道管における滞留部配管に接続されて、滞留部配管内の水を自動的に捨水する自動排水装置であって、滞留部配管に直接または間接的に接続される排水管と、排水管の途中位置に設けられ、滞留部配管内の水の温度上昇に伴って流路を開く第1のサーモユニットとを備える。第1のサーモユニットは、内部に弁座を有する第1の管部材と、弁座に係合する弁体、および温度に応じて伸縮する伸縮部を有し、水の温度が規定温度以上に上昇して伸縮部が伸長したことに応じて弁体が弁座から離れるように、第1の管部材の内部に組み付けられた第1のサーモエレメントとを含む。
【0012】
好ましくは、自動排水装置は、第1のサーモユニットと並列に配置され、滞留部配管内の水の温度低下に伴って流路を開く第2のサーモユニットをさらに備える。第2のサーモユニットは、内部に弁座を有する第2の管部材と、弁座に係合する弁体、および温度に応じて伸縮する伸縮部を有し、水の温度が規定温度以上であり伸縮部が伸長した状態で弁体が弁座に押し付けられるように、第2の管部材の内部に組み付けられた第2のサーモエレメントとを含む。
【0013】
上記の場合、第1のサーモユニットは、第1のサーモユニットが設けられた第1管路と第2のサーモユニットが設けられた第2管路との交差部に隣接して配置されていることが望ましい。
【0014】
好ましくは、第1の管部材および第2の管部材はいずれも、同じ形状および構造を有している。この場合、第1の管部材および第2の管部材は、弁座が設けられた中央管部と、中央管部の下流側に位置し、伸縮部の先端部を支持する支持部が設けられた下流管部と、中央管部の上流側に位置し、伸縮部が縮む方向に不勢力を与えるスプリングを支持する支持部が設けられた上流管部とにより構成されていることが望ましい。
【0015】
好ましくは、自動排水装置は、第1のサーモユニットと並列に配置され、タイマ制御により開閉する電磁弁をさらに備える。
【0016】
好ましくは、自動排水装置は、第1のサーモユニットと直列に配置された量水器をさらに備える。
【0017】
この発明の他の局面に従うサーモユニットは、水道管における滞留部配管に接続される自動排水装置用のサーモユニットであって、管部材と、管部材の内部に選択的に取り付けられ、温度に応じて伸縮する伸縮部を有する第1および第2のサーモエレメントとを備える。管部材は、径方向に延在するリング部が内部に設けられた中央管部と、中央管部の下流側に位置する下流管部と、中央管部の上流側に位置する上流管部とにより構成され、リング部は、上流に向かって拡径した第1弁座および下流に向かって拡径した第2弁座を一体的に有している。第1のサーモエレメントは、第1弁座に係合する弁体を有し、第2のサーモエレメントは、第2弁座に係合する弁体を有している。
【発明の効果】
【0018】
本発明の自動排水装置は、第1のサーモユニットを備えるため、上水道管の滞留部における水温上昇を抑制することができる。また、自動排水装置が、第2のサーモユニットをさらに備える場合には、排水管が冬場に凍結することを防止することもできる。
【0019】
さらに、本発明のサーモユニットの構造によれば、共通の管部材で第1のサーモユニットまたは第2のサーモユニットとして機能させることができるので、季節に応じてサーモユニットを入れ替えるなど、自動排水装置に適用する際の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態に係る自動排水装置の概略構成を模式的に示す図である。
【
図2】(A),(B)は、本発明の実施の形態における夏用サーモユニットおよび冬用サーモユニットの外観をそれぞれ示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態における夏用サーモユニットの分解斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態における夏用サーモユニットの内部構造を示す分解破断図である。
【
図5】本発明の実施の形態における冬用サーモユニットの分解斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態における冬用サーモユニットの内部構造を示す分解破断図である。
【
図7】本発明の実施の形態における各サーモユニットが有する中央管部(第1部品)の断面図である。
【
図8】(A)は夏用のサーモエレメントを示す斜視図であり、(B)は冬用のサーモエレメントを示す斜視図である。
【
図9】本発明の実施の形態における夏用サーモユニットの使用状態を模式的に示す断面図である。
【
図10】本発明の実施の形態における冬用サーモユニットの使用状態を模式的に示す断面図である。
【
図11】本発明の実施の形態におけるサーモユニット(夏用サーモユニットまたは冬用サーモユニット)を搭載した自動排水装置の全体構成例を示す図である。
【
図12】本実施の形態の変形例1に係る自動排水装置の全体構成例を示す図である。
【
図13】本実施の形態の変形例2に係る自動排水装置の全体構成例を示す図である。
【
図14】上水道管における滞留部配管に接続された公知の自動排水装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0022】
<自動排水装置の概要>
はじめに、
図1を参照して、本実施の形態に係る自動排水装置1の概要について説明する。自動排水装置1は、上水道管の滞留部に設置される。具体的には、自動排水装置1は、たとえば
図14に示した公知の自動排水装置100と同様に、水道本管3の管路末端部等から排水系としての排水溝4までの捨水配管5の途中に設けられている。
図1の矢印A1は、流水方向を示す。
【0023】
自動排水装置1は、水道本管3の管路末端部等の滞留部配管3eに直接または間接的に接続された排水管11と、排水管11に並列に設けられた電磁弁20およびサーモユニット30を備えている。排水管11は、たとえば、主経路11mと、主経路11mから迂回して設けられた副経路11sとを有しており、電磁弁20が主経路11m、サーモユニット30が副経路11sに設けられている。なお、
図1では、理解を容易にするために、電磁弁20およびサーモユニット30が全閉状態の際に水が滞留する部分をハッチングで示している。
【0024】
電磁弁20は、通常時に全閉状態とされ、図示しないコントローラによって定期的に開状態とするタイマ制御が行われる。これにより、滞留部配管3eにおける残留塩素の濃度低下が防止される。また、定期的に排水されることにより、水道本管3内の水温上昇をある程度抑えることもできる。しかし、水道本管3内の水温は、気温や原水の水温、水需要量の変動等によって日々変化するため、水温状況と排水動作に乖離が生じる可能性があり、水温管理が不十分となるおそれがある。また、排水により確実に水温を低下させるためには、安全側を考慮して排水実施時間を眺めに設定する必要があり、捨水による無収水量の増加が懸念される。
【0025】
これに対し、本実施の形態に係る自動排水装置1は、副経路11sにサーモユニット30を備えているため、最適な水温管理を行うことができる。サーモユニット30は、温度上昇時に伸長するサーモエレメントを含み、水温に応じて流路を機械的に開閉(止水または通水)するように構成されている。サーモエレメントは、たとえばパラフィンワックスが封入されており、パラフィンワックスの体積変化によって伸縮する。したがって、本実施の形態によれば、電磁弁20による水質維持を行うと同時に、簡易に水温管理を行うことができる。
【0026】
ここで、本実施の形態に係る自動排水装置1では、サーモユニット30として、
図2に示す夏用サーモユニット30Aと冬用サーモユニット30Bとを選択的に採用できるようにしている。夏用サーモユニット30Aは、水温上昇時に流路を開き、滞留部配管3eの水を排水するように構成されているため、水道本管3から各給水箇所に、人がおいしいと感じる冷水を供給することができる。冬用サーモユニット30Bは、水温低下時に流路を開き、滞留部配管3eの水を排水するように構成されているため、冬期における排水管11の凍結を防止し、不凍栓として機能させることができる。
【0027】
図2に示されるように、夏用サーモユニット30Aおよび冬用サーモユニット30Bの外観形状および大きさは同じであるが、内部に設けられたサーモエレメントの弁体(フランジ部)の向きが異なっている。以下に、夏用サーモユニット30Aおよび冬用サーモユニット30Bの内部構造の違いについて説明する。
【0028】
<夏用サーモエレメントの構造>
図3および
図4を参照して夏用サーモユニット30Aの構造例について説明する。
図3は、夏用サーモユニット30Aの分解斜視図であり、
図4は、夏用サーモユニット30Aの内部構造を示す分解破断図である。
【0029】
夏用サーモユニット30Aは、3つの部品31~33に分割された管部材39(
図2)と、管部材39の内部に設けられるサーモエレメント34およびスプリング35とを含む。3つの部品31~33は、互いに螺合することにより管部材39を構成している。なお、
図4では、図面が煩雑となるのを避けるために、雌ネジおよび雄ネジの図示を省略している。
【0030】
管部材39の中央に位置する第1部品31は、中央管部であり、流水方向に沿って延びる円筒部311と、円筒部311の内部中央に設けられたリング部312とを一体に含む。リング部312は、円筒部311の軸線Oに直交(交差)し、径方向に延在している。リング部312の外周部が円筒部311の内周面に連結されている。リング部312は、後述するように2つの弁座として機能し、リング部312の中心孔が流路を構成している。円筒部311の内周面には、雌ネジが切られている。
【0031】
第1部品31の上流側に位置する第2部品32は、上流管部であり、流水方向に沿って延びる円筒部321と、円筒部321の内部中央に掛け渡された板状の支持部322とを一体に含む。円筒部321の外周表面には、雄ネジが切られている。円筒部321の雌ネジと、第1部品31の円筒部311の内周面の雌ネジとが螺合する。これにより、支持部322とリング部312との間に、第1空間41が形成される。円筒部321の外周面の軸方向中央部には六角ボルト323が設けられていてもよい。
【0032】
第1部品32の下流側に位置する第3部品33は、下流管部であり、第2部品32と同様に、流水方向に沿って延びる円筒部331と、円筒部331の内部中央に掛け渡された板状の支持部332とを一体に含む。円筒部331の外周表面には、雄ネジが切られている。円筒部331の雌ネジと、第1部品31の円筒部311の内周面の雌ネジとが螺合する。これにより、支持部332とリング部312との間に、第2空間42が形成される。つまり、リング部312は、第1空間41と第2空間42との境界に位置する。円筒部331の外周面の軸方向中央部には六角ボルト333が設けられていてもよい。
【0033】
サーモエレメント34は、たとえば円柱形状のセンサ部341と、直線状に延びる棒状伸縮部342と、センサ部341と棒状伸縮部342との間に位置する円環状に設けられたフランジ部343とを含む。センサ部341およびフランジ部343は、第1空間41に配置され、棒状伸縮部342は、第2空間42に配置される。フランジ部343は、弁体として機能し、通常状態においてリング部312の内周部(具体的には、後述の夏用弁座B1)に係合する。
【0034】
スプリング35は、第1空間41に位置し、第2部品32の支持部322に形成された凹部322aに取り付けられている。スプリング35は、サーモエレメント34のセンサ部341をリング部312側に付勢する圧縮バネである。スプリング35は、サーモエレメント34の伸縮部342が縮む方向に付勢力を与える。サーモエレメント34の棒状伸縮部342の先端部は、第3部品33の支持部332に形成された凹部332aに取り付け支持されている。
【0035】
<冬用サーモエレメントの構造>
図5および
図6を参照して冬用サーモユニット30Bの構造例について説明する。
図5は、冬用サーモユニット30Bの分解斜視図であり、
図6は、冬用サーモユニット30Bの内部構造を示す分解破断図である。
【0036】
冬用サーモユニット30Bは、夏用サーモユニット30Aと同じ管部材39(部品31~33)およびスプリング35を含んでいる。夏用サーモユニット30Aと異なる点は、サーモエレメント34に代えて、サーモエレメント36を含む点のみである。
【0037】
サーモエレメント36は、サーモエレメント34と同様に、センサ部361と、センサ部361の先端部から直線状に延びる棒状伸縮部362と、センサ部361の先端部に円環状に設けられたフランジ部363とを含む。しかし、センサ部361のみが、第1空間41に配置され、フランジ部363および棒状伸縮部362が、第2空間42に配置される。フランジ部363は、弁体として機能し、通常状態においてリング部312の内周部(具体的には、後述の冬用弁座B2)に係合する。
【0038】
このように、どちらのサーモエレメント34,36も、フランジ部343,363において第1部品31のリング部312に係合するように取り付けられるが、両者のリング部312への係合方向(組付け方向)が異なっている。このことについて、
図7および
図8を参照して説明する。
【0039】
<サーモエレメントの組付け方向>
図7は、第1部品31の断面図である。
図8(A)は夏用のサーモエレメント34を示す斜視図であり、
図8(B)は冬用のサーモエレメント36を示す斜視図である。
【0040】
図7に示されるように、リング部312の内周面(中心孔を取り囲む面)は、板厚方向(管部材39の軸方向)中心線Cと重なる中央円筒面312aと、中央円筒面312aの上流側に位置する第1テーパ面312bと、中央円筒面312aの下流側に位置する第2テーパ面312cとを含む。第1テーパ面312bは、中央円筒面312aに隣接する先端位置から第1空間41側に向かって拡径している。第2テーパ面312cは、中央円筒面312aに隣接する先端位置から第2空間42側に向かって拡径している。リング部312のうち、第1テーパ面312bを含む上流側部分が、夏用弁座B1として機能し、第2テーパ面312cを含む下流側部分が、冬用弁座B2として機能する。第1テーパ面312bおよび第2テーパ面312cは、典型的には、中心線Cに重なる仮想面を基準とした面対称に形成される。
【0041】
夏用のサーモエレメント34のフランジ部343は、伸縮部342側に、第1テーパ面312bに適合するテーパ形状を有しており、夏用弁座B1に係合する弁体として機能する。そのため、サーモエレメント34を管部材39に組付ける際には、リング部312の孔に、上流側から(矢印D1方向から)棒状伸縮部342を挿入する(
図3、
図4参照)。第1部品に設けられた夏用弁座B1と、弁体として機能するサーモエレメント34のフランジ部343と、弁棒として機能するサーモエレメント34の棒状伸縮部342とによって、夏用の感温式バルブが構成される。
【0042】
一方、冬用のサーモエレメント36のフランジ部363は、センサ部361側に、第2テーパ面312cに適合するテーパ形状を有しており、冬用弁座B2に係合する弁体として機能する。そのため、サーモエレメント36を管部材39に組付ける際には、リング部312の孔に、下流側から(矢印D2方向から)センサ部361を挿入する(
図5、
図6参照)。第1部品に設けられた冬用弁座B2と、弁体として機能するサーモエレメント36のフランジ部363と、弁棒として機能するサーモエレメント36の棒状伸縮部362とによって、冬用の感温式バルブが構成される。
【0043】
<夏用サーモユニットの使用状態>
図9は、夏用サーモユニット30Aの使用状態を模式的に示す断面図である。(A)は滞留部配管3eに貯められた水の温度が規定温度以下である場合のサーモエレメント34を示し、(B)は滞留部配管3eに貯められた水の温度が規定温度を超えた場合のサーモエレメント34を示しいている。なお、規定温度(動作温度)は、サーモエレメント34の製造時に自由に設定することができる。冬用のサーモエレメント36の規定温度も同様である。
【0044】
図9(A)を参照して、管部材39の第1空間41は、排水管11を介して滞留部配管3eと常時連通しているため、第1空間41には常時水が存在する。そのため、サーモエレメント34のセンサ部341は常時、水に接している。第1空間41内の水の温度が規定温度以下の場合、棒状伸縮部342は縮められているため、棒状伸縮部342の長さは初期長さ(典型的には最小長さ)である。この際、スプリング35の付勢力によって、サーモエレメント34の弁体としてのフランジ部343が第1弁座B1に押し付けられているので、感温式バルブは全閉状態(止水状態)となっている。つまり、第1空間41から第2空間42への流路(リング部312の中心孔)は閉鎖されており、捨水配管5への排水は遮断されている。
【0045】
一方、
図9(B)を参照して、第1空間41内の水の温度が規定温度を超えた場合、サーモエレメント34に内蔵されたパラフィンワックスが熱膨張するので、棒状伸縮部342が伸びる。棒状伸縮部342が伸びることにより、サーモエレメント34の弁体としてのフランジ部343が、スプリング35の付勢力に抗って上流側へ移動するので、フランジ部343と第1弁座B1との間に隙間ができ、感温式バルブは開状態となる。これにより、第1空間41から第2空間42への流路(リング部312の中心孔)が開放されるので、当該流路を介して排水が行われる。つまり、滞留部配管3eに滞留することによって比較的高温となった水が、捨水配管5へ向かって排水される。これにより、滞留部配管3eに水道本管3内の新しい水が流れ込むので、滞留部配管3eに連通する第1空間41内の水の温度が次第に低下する。
【0046】
滞留部配管3eに滞留していた水を排水することによって、第1空間41内の水の温度が再び規定温度以下となると、棒状伸縮部342が縮むので、
図9(B)に示す通水状態から
図9(A)に示す止水状態に戻る。したがって、本実施の形態によれば、無駄な排水を減らしつつ、水温を規定温度以下に自動的に保つことができる。
【0047】
<冬用サーモユニットの使用状態>
図10は、冬用サーモユニット30Bの使用状態を模式的に示す断面図である。(A)は滞留部配管3eに貯められた水の温度が規定温度以上である場合のサーモエレメント36を示し、(B)は滞留部配管3eに貯められた水の温度が規定温度を下回った場合のサーモエレメント36を示しいている。冬用のサーモエレメント36に設定された規定温度は、夏用のサーモエレメント34に設定された規定温度よりも十分に低く、通常の止水状態において、サーモエレメント36の棒状伸縮部362は伸びている。
【0048】
図10(A)を参照して、上述のように、管部材39の第1空間41は、排水管11を介して滞留部配管3eと常時連通しているため、第1空間41には常時水が存在する。そのため、サーモエレメント36のセンサ部361は常時、水に接している。第1空間41内の水の温度が規定温度以上の場合、棒状伸縮部362は伸びているため、棒状伸縮部362の長さは初期長さ(典型的には最小長さ)よりも長い。この際、サーモエレメント36の弁体としてのフランジ部363が、スプリング35の付勢力に抗って上流側へ移動することにより第2弁座B2に押し付けられている。つまり、冬用サーモユニット30Bにおいては、水温が規定温度以上である場合に、感温式バルブは全閉状態(止水状態)となっている。
【0049】
一方、
図10(B)を参照して、第1空間41内の水の温度が規定温度を下回った場合、棒状伸縮部362が縮む。棒状伸縮部362が縮むことにより、スプリング35の付勢力でサーモエレメント36の弁体としてのフランジ部363が下流側へ移動するので、フランジ部363と第2弁座B2との間に隙間ができ、感温式バルブは開状態となる。これにより、第1空間41から第2空間42への流路(リング部312の中心孔)が開放されるので、当該流路を介して排水が行われる。つまり、冬場に滞留部配管3eに滞留することによって比較的低温となった水が、捨水配管5へ向かって排水される。これにより、滞留部配管3eに水道本管3内の新しい水が流れ込むので、滞留部配管3eに連通する第1空間41内の水の温度が次第に上昇する。
【0050】
滞留部配管3eに滞留していた水を排水することによって、第1空間41内の水の温度が再び規定温度以上となると、棒状伸縮部362が伸びるので、
図10(B)に示す通水状態から
図10(A)に示す止水状態に戻る。したがって、本実施の形態によれば、無駄な排水を減らしつつ、自動排水装置1の排水管11の凍結を防止することができる。その結果、排水管11の破損を防止することができる。
【0051】
なお、排水管11全体の凍結を適切に防止するためには、
図1に示したように、主経路11mと副経路11sとの交差部11xが、電磁弁20の直前に位置していることが望ましい。言い換えると、電磁弁20が交差部11xに隣接する位置に設けられていることが望ましい。これにより、交差部11xと電磁弁20とが離れて配置されている場合に比べて、サーモユニット30Bを通水状態としても主経路11mの一部(交差部11xから電磁弁20までの管路)に水が滞留し続けるという不具合を解消することができる。
【0052】
<自動排水装置の全体構成例>
図11は、サーモユニット30(夏用サーモユニット30Aまたは冬用サーモユニット30B)を搭載した自動排水装置1の全体構成例を示す図である。
図11(A)は斜視図であり、
図11(B)は側面図である。
【0053】
図11に示す自動排水装置1は、
図14に示したような量水器ボックス2に収容可能な形状を有している。自動排水装置1の排水管11は、上方から見てたとえば反時計回りに曲げられており、互いに平行に配置された上流側配管111と中間配管112と下流側配管113とを含む。一例として、下流側配管113のみが、上流側配管111および中間配管112よりも上方位置に配置されている。
【0054】
上流側配管111に、逆止弁付き止水栓50および採水バルブ60が設けられている。中間配管112に、量水器70が設けられている。下流側配管113に、電磁弁20が設けられている。下流側配管113には、電磁弁20よりも上流部に一端が接続され、電磁弁20よりも下流部に他端が接続されたフレキシブル管114が連結されている。下流側配管113のうち電磁弁20が設けられた部分が主経路11mに相当し、フレキシブル管114が副経路11sに相当する。
【0055】
この自動排水装置1においては、一例として、サーモユニット30が、フレキシブル管114の下流側端部に縦向きに設置されている。サーモユニット30は、電磁弁20の高さ範囲内に設けられている。これにより、量水器ボックス2のような狭い設置スぺースであっても、サーモユニット30の他、様々な機能を搭載した自動排水装置1を収容することができる。
【0056】
また、上述のように、夏用サーモユニット30Aと冬用サーモユニット30Bの管部材39は共通であるため、季節の変わり目に、夏用サーモユニット30Aと冬用サーモユニット30Bとを簡易に入れ替えることができる。したがって、夏場の水温上昇の防止と冬場の凍結防止との双方を実現することができる。なお、自動排水装置1は、通年、夏用サーモユニット30Aのみを採用してもよい。
【0057】
<変形例1>
本実施の形態では、自動排水装置1が電磁弁20およびサーモユニット30の双方を備えることを前提としたが、自動排水装置は電磁弁20を備えていなくてもよい。つまり、自動排水装置は、少なくともサーモユニット30を備え、水温管理機能を有していればよい。
【0058】
図12は、本実施の形態の変形例1に係る自動排水装置1Aの全体構成例を示す図である。
図12(A)は上面図であり、
図12(B)は側面図である。
【0059】
自動排水装置1Aの排水管11の基本構成は
図11と同様であり、排水管11は、上流側配管111と中間配管112と下流側配管113とを含んでいる。また、上流側配管111に、逆止弁付き止水栓50および採水バルブ60が設けられている。中間配管112に、量水器70が設けられている。一方、下流側配管113には、電磁弁20が設けられていない。この場合、下流側配管113に直接、サーモユニット30を取り付けることができるので、
図11に示したフレキシブル管114を省くことができる。
【0060】
なお、図示しない他の変形例として、自動排水装置は、直線状の排水管11にサーモユニット30のみを備えた装置であってもよい。
【0061】
<変形例2>
本実施の形態では、自動排水装置1に搭載されるサーモユニット30が一つであり、夏用サーモユニット30Aおよび冬用サーモユニット30Bのいずれか一方のみが採用される例について説明したが、夏用サーモユニット30Aおよび冬用サーモユニット30Bの両方を搭載してもよい。
【0062】
図13は、本実施の形態の変形例2に係る自動排水装置1Bの全体構成例を示す図である。
図13(A)は斜視図であり、
図13(B)は側面図である。なお、
図13には、上記変形例1と同様に電磁弁20を備えていない例が示されている。
【0063】
自動排水装置1Bの排水管11の基本構成は
図11および
図12と同様であり、排水管11は、上流側配管111と中間配管112と下流側配管113とを含んでいる。また、上流側配管111に、逆止弁付き止水栓50および採水バルブ60が設けられている。中間配管112に、量水器70が設けられている。
【0064】
下流側配管113は、直線状に延びる主経路11nと、主経路11nに一端および他端が接続された迂回路11dとを含む。主経路11nに夏用のサーモユニット30Aが設けられており、迂回路11dに冬用サーモユニット30Bが設けられている。迂回路11dは、主経路11nよりも上方側に迂回するように配置されており、逆U字形状を有している。
図13(A)に示されるように、冬用サーモユニット30Bは、たとえば、迂回路11dのうち主経路11nと平行な直線部分に設けられている。夏用サーモユニット30Aは、主経路11nと迂回路11dの上流端との交差部11cに隣接して設けられている。これにより、交差部11cから夏用サーモユニット30Aまでの管路に水が滞留し続けることによる凍結を防止することができる。なお、迂回路11dのうち、冬用サーモユニット30Bよりも上流側部分および下流側部分の一方が、フレキシブル管114により構成されていてもよい。
【0065】
本変形例に係る自動排水装置1Bによれば、季節の変わり目に夏用サーモユニット30Aと冬用サーモユニット30Bとを入れ替える必要がないので、通年利用が可能である。
【0066】
<他の変形例>
図11~
図13には、量水器ボックス2に収容するのに適した自動排水装置の構成例を示したが、排水管11の配管構成を適宜変更することにより、自動排水装置を、マンホールなど、他種の点検桝に収容することもできる。
【0067】
また、自動排水装置が設置される位置は、
図14に示したような位置に限定されず、たとえばループ状の上水道管から複数の水道管が分岐する分岐点など、他の滞留部にも設置することも可能である。
【0068】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0069】
1,1A,1B 自動排水装置、2 量水器ボックス、3e 滞留部配管、11 排水管、20 電磁弁、30 サーモユニット、30A 夏用サーモユニット(第1のサーモユニット)、30B 冬用サーモユニット(第2のサーモユニット)、31 第1部品(中央管部)、32 第2部品(上流管部)、33 第3部品(下流管部)、34,36 サーモエレメント、35 スプリング、70 量水器、311,321,331 円筒部、312 リング部、322,332 支持部、341,361 センサ部、342,362 棒状伸縮部、343,363 フランジ部(弁体)、B1 夏用弁座(第1弁座)、B2 冬用弁座(第2弁座)。