(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137279
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
G01B 9/02015 20220101AFI20230922BHJP
G01B 11/06 20060101ALI20230922BHJP
G01S 17/08 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G01B9/02015
G01B11/06 G
G01S17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043412
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(74)【代理人】
【識別番号】100154036
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】横地 界斗
(72)【発明者】
【氏名】塩田 達俊
【テーマコード(参考)】
2F064
2F065
5J084
【Fターム(参考)】
2F064AA01
2F064CC10
2F064FF07
2F064GG22
2F064GG51
2F065AA30
2F065BB17
2F065CC31
2F065FF11
2F065FF31
2F065FF51
2F065GG07
2F065GG24
2F065JJ18
2F065QQ25
5J084AA06
5J084AD01
5J084BA36
5J084BA40
5J084BB01
5J084BB06
5J084BB07
5J084BB14
5J084BB21
5J084BB31
5J084BB32
5J084BB40
5J084CA07
5J084CA48
5J084DA08
5J084EA07
(57)【要約】
【課題】測定可能な距離のレンジをより拡大させることが可能な計測装置を提供する。
【解決手段】第1の時間遅延で繰り返し重畳される広帯域光を含み、測定対象で反射又は透過した第1の光と、前記第1の時間遅延と異なる第2の時間遅延で繰り返し重畳される広帯域光を含む第2の光とを干渉させた光を検出する光検出部と、前記光検出部による検出結果に基づいて、前記測定対象による前記第1の光の遅延時間を計測する時間計測部と、を備える、計測装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の時間遅延で繰り返し重畳される広帯域光を含み、測定対象で反射又は透過した第1の光と、前記第1の時間遅延と異なる第2の時間遅延で繰り返し重畳される広帯域光を含む第2の光とを干渉させた光を検出する光検出部と、
前記光検出部による検出結果に基づいて、前記測定対象による前記第1の光の遅延時間を計測する時間計測部と、
を備える、計測装置。
【請求項2】
前記第1の光、及び前記第2の光は、光源から出射された光を互いに異なる光共振器にそれぞれ通過させることで生成される、請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記光共振器は、それぞれファブリ・ペロー・エタロンである、請求項2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記光源は、低コヒーレンス光源である、請求項2に記載の計測装置。
【請求項5】
前記光源から出射された光は、時間的に振幅変調される、請求項2に記載の計測装置。
【請求項6】
前記光検出部は、アバランシェ増倍素子を含む、請求項1に記載の計測装置。
【請求項7】
前記光検出部は、前記アバランシェ増倍素子を検出面に複数配列させた素子アレイを含む、請求項6に記載の計測装置。
【請求項8】
前記光検出部の前段には、前記第1の光と前記第2の光とを干渉させた光を前記検出面に結像させる結像光学系が設けられる、請求項7に記載の計測装置。
【請求項9】
前記時間計測部は、時間デジタイザ回路を含む、請求項1に記載の計測装置。
【請求項10】
前記時間計測部は、前記第1の光と前記第2の光とのインターフェログラムに基づいて、前記測定対象による前記第1の光の遅延時間を計測する、請求項1に記載の計測装置。
【請求項11】
前記第1の光、又は前記第2の光の少なくともいずれかの光路中には、分散補償素子が設けられる、請求項1に記載の計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ToF(Time of Flight)センサなどの光を用いて対象物との距離を計測する計測装置の開発が進められている。特に、光の干渉を用いて光路長差を測定することで、近距離の対象物との距離を高分解能で測定することが可能な計測装置が注目されている。
【0003】
下記特許文献1には、第1の多波長光源から出射され被検面で反射された被検光束と、第2の多波長光源から出射され参照面で反射された参照光束との干渉信号を検出することで、参照面と被検面との光路長差を計測する光波干渉計測装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された光波干渉計測装置は、被検光束と参照光束との干渉信号を分光器で周波数計測しているため、測定可能な光路長差のレンジが分光器の計測帯域で制限され、狭くなってしまう。
【0006】
そこで、本開示では、測定可能な距離のレンジをより拡大することが可能な、新規かつ改良された計測装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、第1の時間遅延で繰り返し重畳される広帯域光を含み、測定対象で反射又は透過した第1の光と、前記第1の時間遅延と異なる第2の時間遅延で繰り返し重畳される広帯域光を含む第2の光とを干渉させた光を検出する光検出部と、前記光検出部による検出結果に基づいて、前記測定対象による前記第1の光の遅延時間を計測する時間計測部と、を備える、計測装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る計測装置の構成を示す模式図である。
【
図2】光源から出射された光の振幅変調を示す説明図である。
【
図3】第1の光共振器、及び第2の光共振器から出射された光の時間波形を示す説明図である。
【
図4】第1の光共振器から出射された光と、第2の光共振器から出射された光との干渉、及び干渉光の検出を示す説明図である。
【
図5A】表面照射型のAPDの構成を示す縦断面図である。
【
図5B】裏面照射型のAPDの構成を示す縦断面図である。
【
図5D】APDを上面側から平面視した場合のAPDのアレイ配置を示す平面図である。
【
図6】第1の変形例に係る計測装置の構成を示す模式図である。
【
図7】第2の変形例に係る計測装置の構成を示す模式図である。
【
図8】第3の変形例に係る計測装置の構成を示す模式図である。
【
図9】第4の変形例に係る計測装置の構成を示す模式図である。
【
図10】第5の変形例に係る計測装置の構成を示す模式図である。
【
図11】第6の変形例に係る計測装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0010】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.構成例
1.1.計測装置の構成
1.2.計測装置の動作
1.3.APDの構成
2.変形例
2.1.第1の変形例
2.2.第2の変形例
2.3.第3の変形例
2.4.第4の変形例
2.5.第5の変形例
2.6.第6の変形例
【0011】
<1.構成例>
(1.1.計測装置の構成)
まず、
図1を参照して、本開示の一実施形態に係る計測装置の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る計測装置10の構成を示す模式図である。
【0012】
図1に示すように、計測装置10は、光源110と、レンズ系141と、ビームスプリッタ142と、第1の光共振器121と、第2の光共振器122と、ビームスプリッタ145と、光検出部131と、時間計測部132とを備える。
【0013】
計測装置10は、第1の光共振器121から出射された光と、第2の光共振器122から出射された光との干渉光を光検出部131にて検出し、干渉光の遅延を検出することで、測定対象1を透過した光に生じる遅延時間を計測する計測装置である。これによれば、計測装置10は、測定対象1の光路長を決定する膜厚などを導出することができる。
【0014】
光源110は、ブロードなスペクトルを持つ低コヒーレンス光を出射する広帯域光源である。一例として、光源110は、SLD(Super Luminescent Diode)光源であってもよい。SLD光源は、LED(Light Emitting Diode)のように幅広いスペクトルを有すると共に、LD(Laser Diode)のように高い輝度を有する光を出射することができる。他の例として、光源110は、広帯域光を生成するSC(Super Continuum)光源であってもよい。
【0015】
レンズ系141は、光源110から出射された光を成形してビームスプリッタ142に導く光学系である。例えば、レンズ系141は、光源110から出射された光を平行光(コリメート光)に成形するシリンドリカルレンズを含む光学系であってもよい。
【0016】
ビームスプリッタ142は、レンズ系141から入射したコリメート光を互いに直交する2方向の光に分波する光学素子である。ビームスプリッタ142にて分波された一方の光は、第1の光共振器121に入射し、ビームスプリッタ142にて分波された他方の光は、ミラー143で反射された後、第2の光共振器122に入射する。ビームスプリッタ142は、無偏光ビームスプリッタであってもよい。
【0017】
第1の光共振器121は、入射した光を共振させることで、入射した広帯域光を第1の時間遅延で繰り返し重畳させる光学素子である。第2の光共振器122は、入射した光を共振させることで、第1の時間遅延とは異なる第2の時間遅延で入射した広帯域光を繰り返し重畳させる光学素子である。第1の光共振器121、及び第2の光共振器122は、例えば、ファブリ・ペロー・エタロンであってもよい。
【0018】
ファブリ・ペロー・エタロンは、互いに平行になるように対向して配置された一対の半透明鏡(エタロン対)を含む光学素子である。ファブリ・ペロー・エタロンは、エタロン対の間で多重反射された光同士の干渉によって、半波長の整数倍がエタロン対の間の光路長に等しくなる光だけを透過させることができる。したがって、ファブリ・ペロー・エタロンは、エタロン対の間の光路長で決まる波長周期の光を出射することができる。また、ファブリ・ペロー・エタロンは、エタロン対の内側で多重反射される光がエタロン対の間を往復するたびにエタロン対の外側に光を出射する。したがって、ファブリ・ペロー・エタロンは、エタロン対の間を光が往復する時間に対応する時間遅延で上記光を重畳して出射することができる。これにより、ファブリ・ペロー・エタロンは、エタロン対の間の光路長で決まる波長周期を有する光を、エタロン対の間の光の往復時間に対応する時間遅延で繰り返し重畳した広帯域光を出射することができる。
【0019】
第1の光共振器121、及び第2の光共振器122は、例えば、エタロン対の間の距離が互いに異なるファブリ・ペロー・エタロンで構成されることで、上述したように異なる時間遅延で入射した広帯域光を繰り返し重畳させることができる。
【0020】
ビームスプリッタ145は、互いに直交する方向から入射した2つの光を合波する光学素子である。ビームスプリッタ145は、第1の光共振器121から出射され、ミラー144で反射された後、測定対象1を透過した光と、第2の光共振器122から出射された光とを合波することができる。したがって、ビームスプリッタ145で合波された光は、第1の時間遅延で繰り返し重畳される広帯域光と、第2の時間遅延で繰り返し重畳される広帯域光との干渉光となる。ビームスプリッタ145は、無偏光ビームスプリッタであってもよい。
【0021】
光検出部131は、入射する光を電気信号に変換して検出する検出器である。例えば、光検出部131は、APD(Avalanche PhotoDiode)又はSPAD(Single-Photon Avalanche Diode)などの光電変換素子であってもよく、これらのAPD又はSPADを二次元平面に配列した光電変換素子アレイであってもよい。
【0022】
光検出部131は、第1の時間遅延で繰り返し重畳される広帯域光と、第2の時間遅延で繰り返し重畳される広帯域光との干渉光を光電変換によって検出する。後述するように、第1の時間遅延で繰り返し重畳される広帯域光と、第2の時間遅延で繰り返し重畳される広帯域光との干渉光は、異なる周波数の光を互いに干渉させたビートとなる。したがって、光検出部131は、上記ビートを電気信号として検出することができる。
【0023】
時間計測部132は、光検出部131による光の検出結果に基づいて、測定対象1を透過した光の測定対象1による遅延時間を計測する。時間計測部132は、例えば、時間デジタイザ回路(Time-to-Digital Converter: TDC)を含んでもよい。
【0024】
時間デジタイザ回路は、スタート信号とストップ信号との信号エッジの時間差を測定し、測定結果をデジタル値で出力する回路である。時間デジタイザ回路は、例えば、光源110から光が出射された際に発せられた信号をスタート信号とし、光検出部131による光の検出信号をストップ信号とすることで、光源110から光検出部131までの光の到達時間を計測してもよい。例えば、測定対象1を透過した光に遅延が発生した場合、第1の時間遅延で繰り返し重畳される広帯域光と、第2の時間遅延で繰り返し重畳される広帯域光との干渉が変化し、光検出部131にて検出されるビートのタイミングが変化する。そのため、時間計測部132は、ビートの検出タイミングを計測することで、測定対象1による光の遅延時間を計測することができる。
【0025】
(1.2.計測装置の動作)
続いて、
図2~
図4を参照して、本実施形態に係る計測装置10の計測動作について説明する。
図2は、光源110から出射された光の振幅変調を示す説明図である。
図3は、第1の光共振器121、及び第2の光共振器122から出射された光の時間波形を示す説明図である。
図4は、第1の光共振器121から出射された光と、第2の光共振器122から出射された光との干渉、及び干渉光の検出を示す説明図である。
【0026】
本実施形態に係る計測装置10では、光源110から出射された光は、第1の光共振器121、及び第2の光共振器122から出射される広帯域光のS/N比を向上させるために時間的に振幅変調されてもよい。
【0027】
例えば、
図2に示すように、光源110から出射された光111が連続した同一振幅の広帯域光である場合、光源110から出射された光111は、0と1とを交互に繰り返す変調用の光112と重畳されることで時間的に振幅変調されてもよい。振幅変調された光113は、振幅が大きな期間と、振幅が0である期間とが交互に周期的に繰り返される光パルス列となる。したがって、振幅変調された光113は、繰り返し重畳された際に、重畳された光の各々を振幅が0である期間でより明確に分離することができる。これにより、計測装置10は、背景光を抑制することができるため、S/N比を向上させることができる。
【0028】
このように振幅変調された光113は、第1の光共振器121、及び第2の光共振器122に入射することで、第1の光共振器121、及び第2の光共振器122の各々の時間遅延で繰り返し重畳される。
【0029】
具体的には、
図3に示すように、第1の光共振器121、及び第2の光共振器122を構成するファブリ・ペロー・エタロンは、エタロン対の間の光路長で決まる波長周期の光114のみを透過させる。これにより、ファブリ・ペロー・エタロンを透過した光114は、エタロン対の間の往復回数に応じてエタロン対の間の光114の往復時間t
roundの遅延を加算して繰り返し重畳された光となる。したがって、ファブリ・ペロー・エタロンから出射される光125は、エタロン対の間の光114の往復時間t
roundの周期で間欠的に出射される光を含むことになる。
【0030】
その後、第1の光共振器121から出射された光と、第2の光共振器122から出射された光とは、ビームスプリッタ145で合波された後、光検出部131で検出される。
【0031】
図4に示すように、第1の光共振器121、及び第2の光共振器122ではエタロン対の間の距離が互いに異なる。したがって、第1の光共振器121から出射された光と、第2の光共振器122から出射された光とは、互いに異なる波長周期の光を互いに異なる時間遅延で重畳させた光となる。これにより、第1の光共振器121から出射された光と、第2の光共振器122から出射された光とは、異なる周波数の光パルス列が互いに干渉し合うことで両者の周波数の差に等しいうなり(ビート)を発生させる。光検出部131は、干渉によって発生したビートを掃引時間Δtごとに光電変換することで、検出した光を掃引時間Δtごとの積分値(サンプリング値)として検出することができる。なお、掃引時間Δtは、第1の光共振器121から出射される光の繰り返し周期t
1と同じであってもよい。
【0032】
計測装置10では、測定対象1の透過によって第1の光共振器121から出射された光が遅延するため、干渉によって発生するビートの形状又は到達タイミングが変化する。したがって、計測装置10は、光検出部131にて検出されたサンプリング値の波形(インターフェログラムとも称される)の到達タイミングの遅延を時間計測部132にて計測することで、測定対象1の膜厚などを解析することができる。また、計測装置10は、サンプリング値の波形をフーリエ変換することで導出された位相差スペクトルの傾きから、測定対象1によるサンプリング波形の到達タイミングの遅延を導出してもよい。
【0033】
以上にて説明したように、本実施形態に係る計測装置10は、第1の光共振器121から出射された光と、第2の光共振器122から出射された光との干渉によるビートの到達タイミングによって測定対象1による光の遅延時間を導出することができる。
【0034】
また、計測装置10は、干渉によるビートをAPD又はSPADなどの光電変換素子を含む光検出部131で時間的に検出することができる。したがって、計測装置10は、検出器の検出帯域によって測定可能な距離のレンジが制限されることを回避することができる。
【0035】
さらに、第1の光共振器121、及び第2の光共振器122から出射された光の重畳周期(すなわち時間遅延)は、例えば、ファブリ・ペロー・エタロンのエタロン対の間の距離で制御することができる。これによれば、計測装置10は、エタロン対の間の距離を拡大し、第1の光共振器121から出射された光と、第2の光共振器122から出射された光との重畳周期をより大きくすることで、より大きな遅延時間を計測することができる。したがって、計測装置10は、測定対象1の膜厚などのデータの測定可能レンジをより拡大することが可能である。
【0036】
(1.3.APDの構成)
ここで、
図5A~
図5Dを参照して、光検出部131に含まれるAPD又はSPADの構成について説明する。APDは、光電変換にて発生した電荷を高電界のPN接合領域で増倍させる(アバランシェ増倍させる)ことで、入射光を高感度で検出するフォトダイオードである。SPADは、ブレークダウン電圧よりも高いバイアス電圧で動作させたAPDであり、1個のフォトンを検出することが可能である。
【0037】
図5Aは、表面照射型のAPD21の構成を示す縦断面図である。
図5Aに示すように、APD21を含む画素20Aは、APD21の上に配線層22が設けられ、配線層22の上にオンチップレンズ23が設けられて構成される。画素20Aでは、光は、オンチップレンズ23側(
図5Aでは上方側)から入射し、配線層22を透過してAPD21に入射する。画素20Aの各々の画素回路は、画素20Aが設けられた基板と同一の基板内に設けられる。
【0038】
図5Bは、裏面照射型のAPD21の構成を示す縦断面図である。APD21を含む画素20Bは、オンチップレンズ23の上にAPD21が設けられ、APD21の上にセンサ基板41が設けられ、センサ基板41の上に回路基板42が設けられて構成される。画素20Bでは、光は、オンチップレンズ23側(
図5Bでは下方側)から入射し、APD21に入射する。画素20Bの各々の画素回路は、回路基板42に設けられてもよく、画素20Bが設けられた基板と同一の基板内に設けられてもよい。
【0039】
図5Cは、APD21の詳細構成を示す縦断面図である。
図5Cでは、APD21のみを図示し、オンチップレンズ23等の他の構成の図示は省略する。
【0040】
図5Cに示すように、APD21は、第1導電型(例えば、n型)の第1半導体領域101と、第1半導体領域101の下方に設けられた第2導電型(例えば、p型)の第2半導体領域102とを含む。第1半導体領域101及び第2半導体領域102は、例えば、Siで構成されたウェル層103内に設けられる。
【0041】
ウェル層103は、第1導電型又は第2導電型の半導体領域である。例えば、ウェル層103は、1×1014個/cm3程度の低濃度にドーピングされたn型又はp型の半導体領域であってもよい。このような場合、ウェル層103は、より空乏化しやすくなるため、APD21の検出効率(Photon Detection Efficiency: PDE)を向上させることができる。
【0042】
第1半導体領域101及び第2半導体領域102には、界面でpn接合が形成され、第2半導体領域102には、光の入射によって生じた電荷をアバランシェ増倍する増倍領域が形成される。このとき、第2半導体領域102は、さらに空乏化されることで、APD21のPDEを向上させることができる。
【0043】
第1半導体領域101は、カソードとして機能し、コンタクト104を介して回路に接続される。第1半導体領域101と分離領域108との間には、第1半導体領域101と同層にアノード105が設けられる。アノード105は、コンタクト106を介して回路に接続される。
【0044】
APD21の外周には、APD21を他の素子と電気的に分離するための分離領域108が設けられる。分離領域108は、例えば、SiOx、SiN、又はSIONなどの無機絶縁性材料で構成されてもよい。
【0045】
分離領域108とウェル層103との間には、p型の半導体領域であるホール蓄積領域107aが設けられる。具体的には、ホール蓄積領域107aは、アノード105と電気的に接続された状態で、アノード105の下側から分離領域108に沿ってウェル層103の下部側(APD21の裏面側)に延在して設けられる。ホール蓄積領域107aは、異なる材質が接する界面で発生する暗電流を抑制するために、分離領域108とウェル層103との間に設けられる。
【0046】
また、裏面照射型のAPD21では、
図5Bに示すように、ウェル層103の下部側(第1半導体領域101が設けられている側とは反対側)には、オンチップレンズ23が設けられる。そのため、ホール蓄積領域107aは、オンチップレンズ23とウェル層103との界面にも設けられる。
【0047】
一方、表面照射型のAPD21では、ウェル層103の下部側(第1半導体領域101が設けられている側とは反対側)には、図示しないSi基板が設けられる。そのため、図示しないSi基板とウェル層103との界面には、ホール蓄積領域107aが設けられなくともよい。ただし、図示しないSi基板とウェル層103との界面にホール蓄積領域107aが設けられてもよいことは言うまでもない。
【0048】
すなわち、ホール蓄積領域107aは、ウェル層103の上面(第1半導体領域101が設けられている側の面)以外の面に設けられてもよく、ウェル層103の上面及び下面以外の面に設けられてもよい。
【0049】
APD21が二次元平面にアレイ状に配列される場合、分離領域108は、APD21の各々の間に設けられることで、APD21の各々を電気的に分離する。
【0050】
図5Dを参照して、APD21が二次元平面にアレイ状に配列される場合について説明する。
図5Dは、APD21を上面側(第1半導体領域101が設けられている側)から平面視した場合のAPD21のアレイ配置を示す平面図である。
図5Dでは、2×2の4個のAPD21(APD21-1~APD21-4)が配置されている例を示す。
【0051】
図5Dに示すように、分離領域108は、APD21の各々と1対1対応して増倍領域が設けられるように、APD21の各々の増倍領域の周囲を囲んで二次元格子状に設けられる。分離領域108は、ウェル層103の上面側から下面側まで貫通して設けられてもよく、一部のみ貫通して設けられてもよい。
【0052】
また、二次元格子状に設けられた分離領域108の内側にアノード105が設けられる。また、APD21の中央部分に設けられた第1半導体領域101とアノード105との間にはウェル層103が設けられる。ホール蓄積領域107aは
図5Dでは図示されないが、分離領域108の内側のアノード105と略同一となる領域に設けられる。
【0053】
図5Dでは、第1半導体領域101が四角形形状で設けられる例を示した。第1半導体領域101が四角形形状で設けられる場合、APD21は、増倍領域である第1半導体領域101の面積をより広く確保することができるため、APD21のPDEを向上させることができる。一方、第1半導体領域101が円形形状で設けられる場合、APD21は、四角形形状の角部での電界集中を抑制することができるため、角部での意図しないブレークダウンを低減することができる。
【0054】
<2.変形例>
次に、
図6~
図11を参照して、本実施形態に係る計測装置10の第1~第6の変形例について説明する。
【0055】
(2.1.第1の変形例)
図6は、第1の変形例に係る計測装置11の構成を示す模式図である。
図6に示すように、第1の変形例では、
図1に示す計測装置10に対して、ビームスプリッタ145と光検出部131との間にビームスプリッタ145で合波された干渉光を光検出部131の検出面に結像させる結像光学系146がさらに設けられる点が異なる。
【0056】
結像光学系146は、例えば、ビームスプリッタ145からの光を平行光線に変換するレンズと、変換された平行光線を光検出部131の検出面に結像させるレンズと、光検出部131に入射する干渉光の量を制御する絞りとを含んで構成される。また、測定対象1による透過光の散乱が少ない場合、結像光学系146は、ビームスプリッタ145からの光を光検出部131の検出面に結像させる複眼レンズ又はフレネルレンズを含んで構成されてもよい。これによれば、光検出部131は、結像光学系146にて検出面に結像された干渉光をAPD又はSPADを検出面に二次元配列した光電変換素子アレイにて一括して検出することができる。
【0057】
第1の変形例に係る計測装置11は、光源110から測定対象1に対して面として光を照射し、測定対象1を透過した光の干渉光を光検出部131のAPDアレイ又はSPADアレイで面として検出することができる。したがって、第1の変形例に係る計測装置11は、測定対象1を含む測定領域を走査することなく、測定領域全体の測定情報を一括して取得することが可能である。よって、第1の変形例に係る計測装置11は、測定対象1の測定情報をより高速に取得することが可能である。また、第1の変形例に係る計測装置11は、結像光学系146に含まれるレンズを長焦点レンズとすることで、奥行方向に対する水平方向の分解能を維持すること、及びF値制御によって高感度化又は高解像度化することが可能である。
【0058】
(2.2.第2の変形例)
図7は、第2の変形例に係る計測装置12の構成を示す模式図である。
図7に示すように、第2の変形例では、第1の光共振器121から出射された光がビームスプリッタ147を介して測定対象1に照射され、測定対象1からの反射光を含む光がビームスプリッタ145にて第2の光共振器122から出射された光と合波される。
【0059】
ビームスプリッタ147は、第1の光共振器121から出射された光の一部を透過させて測定対象1に導くと共に、測定対象1で反射した光を反射してビームスプリッタ145に導く光学素子である。また、ビームスプリッタ147は、第1の光共振器121から出射された光の一部を反射してビームスプリッタ145に導くことができる。したがって、第1の光共振器121から出射され、ビームスプリッタ145に入射する光には、ビームスプリッタ147から測定対象1までの光の往復時間に対応する遅延時間が加わった光が含まれる。
【0060】
これによれば、第2の変形例に係る計測装置12は、干渉によって発生するビートの到達タイミングを時間計測部132にて計測することで、ビームスプリッタ147から測定対象1までの光の往復時間を計測することができる。よって、第2の変形例に係る計測装置12は、ビームスプリッタ147から測定対象1までの距離を計測する測距センサとして機能することが可能である。
【0061】
(2.3.第3の変形例)
図8は、第3の変形例に係る計測装置13の構成を示す模式図である。
図8に示すように、第3の変形例では、第1の変形例に係る計測装置11に対して、ビームスプリッタ145と光検出部131との間に、ビームスプリッタ145で合波された干渉光を光検出部131の検出面に結像させる結像光学系146がさらに設けられる点が異なる。
【0062】
結像光学系146は、例えば、ビームスプリッタ145からの光を平行光線に変換するレンズと、変換された平行光線を光検出部131の検出面に結像させるレンズと、光検出部131に入射する干渉光の量を制御する絞りとを含んで構成される。光検出部131は、APD又はSPADを検出面に二次元配列した光電変換素子アレイを含み、結像光学系146にて検出面に結像された干渉光を光電変換素子アレイにて一括で検出することができる。
【0063】
これによれば、第3の変形例に係る計測装置13は、光源110から測定対象1に対して面として光を照射し、測定対象1で反射した光の干渉光を光検出部131のAPDアレイ又はSPADアレイで面として検出することができる。したがって、第3の変形例に係る計測装置13は、測定対象1を含む測定領域を走査することなく、測定領域全体の測距情報を一括して取得することが可能である。よって、第3の変形例に係る計測装置13は、測定対象1までの測距情報をより高速に取得することが可能である。
【0064】
(2.4.第4の変形例)
図9は、第4の変形例に係る計測装置14の構成を示す模式図である。
図9に示すように、第4の変形例では、
図1に示す計測装置10に対して、参照ミラー150がさらに設けられる点が異なる。第1の光共振器121から出射された光は、ビームスプリッタ147を介して参照ミラー150に照射され、参照ミラー150からの反射光を含む光がビームスプリッタ145にて第2の光共振器122から出射された光と合波される。
【0065】
ビームスプリッタ147は、第1の光共振器121から出射された光の一部を透過させて測定対象1に導くと共に、測定対象1で反射した光を反射してビームスプリッタ145に導く光学素子である。また、ビームスプリッタ147は、第1の光共振器121から出射された光の一部を反射してビームスプリッタ145に導くことができる。なお、参照ミラー150は、ビームスプリッタ147までの距離を調整可能に設けられる。
【0066】
これによれば、第4の変形例に係る計測装置14は、ビームスプリッタ145に合波される光に測定対象1による遅延を検出するための基準となる参照光を含ませることができる。したがって、第4の変形例に係る計測装置14は、測定対象1による光の遅延時間をより高精度で検出することが可能である。
【0067】
(2.5.第5の変形例)
図10は、第5の変形例に係る計測装置15の構成を示す模式図である。
図10に示すように、第5の変形例では、第1の変形例に係る計測装置11に対して、第1の光共振器121とビームスプリッタ147との間に分散補償素子161がさらに設けられる点が異なる。
【0068】
分散補償素子161は、第1の光共振器121から出射された光の分散による信号波形の歪みを補償する光学素子である。分散補償素子161は、例えば、回折格子対、プリズム対、又は分散補償光ファイバなどの公知の分散補償器であってもよい。
【0069】
これによれば、第5の変形例に係る計測装置15は、第1の光共振器121から出射された光の信号波形の歪みを抑制することができるため、ビームスプリッタ145にてより高精度のビートを生成することができる。したがって、第5の変形例に係る計測装置15は、光検出部131によるビートの検出精度を向上させることができるため、測定対象1までの距離の測定精度を向上させることができる。
【0070】
(2.6.第6の変形例)
図11は、第6の変形例に係る計測装置16の構成を示す模式図である。
図11に示すように、第6の変形例では、第5の変形例に係る計測装置15に対して、第2の光共振器122とビームスプリッタ145との間に分散補償素子162がさらに設けられる点が異なる。
【0071】
分散補償素子162は、第2の光共振器122から出射された光の分散による信号波形の歪みを補償する光学素子である。分散補償素子162は、分散補償素子161と同様に、例えば、回折格子対、プリズム対、又は分散補償光ファイバなどの公知の分散補償器であってもよい。
【0072】
これによれば、第6の変形例に係る計測装置16は、さらに、第2の光共振器122から出射された光の信号波形の歪みを抑制することができるため、ビームスプリッタ145にてより高精度のビートを生成することができる。したがって、第6の変形例に係る計測装置16は、光検出部131によるビートの検出精度を向上させることができるため、測定対象1までの距離の測定精度をさらに向上させることができる。
【0073】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0074】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0075】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
第1の時間遅延で繰り返し重畳される広帯域光を含み、測定対象で反射又は透過した第1の光と、前記第1の時間遅延と異なる第2の時間遅延で繰り返し重畳される広帯域光を含む第2の光とを干渉させた光を検出する光検出部と、
前記光検出部による検出結果に基づいて、前記測定対象による前記第1の光の遅延時間を計測する時間計測部と、
を備える、計測装置。
(2)
前記第1の光、及び前記第2の光は、光源から出射された光を互いに異なる光共振器にそれぞれ通過させることで生成される、前記(1)に記載の計測装置。
(3)
前記光共振器は、それぞれファブリ・ペロー・エタロンである、前記(2)に記載の計測装置。
(4)
前記光源は、低コヒーレンス光源である、前記(2)又は(3)に記載の計測装置。
(5)
前記光源から出射された光は、時間的に振幅変調される、前記(2)~(4)のいずれか一項に記載の計測装置。
(6)
前記光検出部は、アバランシェ増倍素子を含む、前記(1)~(5)のいずれか一項に記載の計測装置。
(7)
前記光検出部は、前記アバランシェ増倍素子を検出面に複数配列させた素子アレイを含む、前記(6)に記載の計測装置。
(8)
前記光検出部の前段には、前記第1の光と前記第2の光とを干渉させた光を前記検出面に結像させる結像光学系が設けられる、前記(7)に記載の計測装置。
(9)
前記時間計測部は、時間デジタイザ回路を含む、前記(1)~(8)のいずれか一項に記載の計測装置。
(10)
前記時間計測部は、前記第1の光と前記第2の光とのインターフェログラムに基づいて、前記測定対象による前記第1の光の遅延時間を計測する、前記(1)~(9)のいずれか一項に記載の計測装置。
(11)
前記第1の光、又は前記第2の光の少なくともいずれかの光路中には、分散補償素子が設けられる、前記(1)~(10)のいずれか一項に記載の計測装置。
【符号の説明】
【0076】
10,11,12,13,14,15,16 計測装置
110 光源
121 第1の光共振器
122 第2の光共振器
131 光検出部
132 時間計測部
141 レンズ系
142,145,147 ビームスプリッタ
143,144 ミラー
146 結像光学系
150 参照ミラー
161,162 分散補償素子