(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137280
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】積層体及び包装材
(51)【国際特許分類】
B32B 5/18 20060101AFI20230922BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230922BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B32B5/18
B32B27/00 B
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043413
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100154759
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 貴子
(72)【発明者】
【氏名】脇 奈穂美
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 卓哉
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
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4F100AA08
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4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】不透明性を有しつつ、グラビア印刷適性が高い積層体の提供。
【解決手段】積層体は、基材層と、前記基材層上に印刷受容層と、を備える。前記基材層が、熱可塑性樹脂を含有する多孔質層であり、前記印刷受容層側の表面の平滑度が、40000秒以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、前記基材層上に印刷受容層と、を備え、
前記基材層が、熱可塑性樹脂を含有する多孔質層であり、
前記印刷受容層側の表面の平滑度が、40000秒以上である
積層体。
【請求項2】
前記平滑度が、60000秒以上である
請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記積層体の圧縮率が、3.5~8.0%である
請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記基材層が、空孔形成材を含有する延伸多孔質層である
請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記基材層の空孔率が、20~60%である
請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記印刷受容層の坪量が、4g/m2以上である
請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記印刷受容層が、熱可塑性樹脂を含有し、
前記印刷受容層中の前記熱可塑性樹脂が、1種の樹脂からなるか、又は相溶性を有する2種以上の樹脂からなる
請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
前記印刷受容層中の粒子の含有量が、10質量%以下である
請求項1~7のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項9】
前記印刷受容層上に表面層を備える
請求項1~8のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項10】
前記表面層の表面の水との接触角が、55~110°である
請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
前記表面層が、ヒドロキシ基を有する3級又は4級窒素含有(メタ)アクリル系樹脂を含有する
請求項9又は10に記載の積層体。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の積層体を備える、包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及び包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
商品の包装材等の印刷には、美粧性及び情報性を付与するため、グラビア印刷が採用されることが多い(例えば、特許文献1)。グラビア印刷による鮮やかな色表現を可能とし、印刷内容を明確に表示するには、印刷用紙の不透明性が求められる。パルプ紙は不透明度が高いが、耐水性が十分ではなく、実用的ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不透明性だけではなく、耐水性をも有する印刷用紙としては、多孔質樹脂シートが挙げられる。しかしながら、多孔質樹脂シートにグラビア印刷を行うと、ドットスキップが生じやすく、明瞭な印刷が難しかった。ドットスキップは、インクの転写不良によって、一部のドットが再現されない現象である。
【0005】
本発明は、不透明性を有しつつ、グラビア印刷適性が高い積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、以下のとおり本発明を完成した。
【0007】
[1]基材層と、前記基材層上に印刷受容層と、を備え、
前記基材層が、熱可塑性樹脂を含有する多孔質層であり、
前記印刷受容層側の表面の平滑度が、40000秒以上である
積層体。
【0008】
[2]前記平滑度が、60000秒以上である
上記[1]に記載の積層体。
【0009】
[3]前記積層体の圧縮率が、3.5~8.0%である
上記[1]又は[2]に記載の積層体。
【0010】
[4]前記基材層が、空孔形成材を含有する延伸多孔質層である
上記[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
【0011】
[5]前記基材層の空孔率が、20~60%である
上記[1]~[4]のいずれかに記載の積層体。
【0012】
[6]前記印刷受容層の坪量が、4g/m2以上である
上記[1]~[5]のいずれかに記載の積層体。
【0013】
[7]前記印刷受容層が、熱可塑性樹脂を含有し、
前記印刷受容層中の前記熱可塑性樹脂が、1種の樹脂からなるか、又は相溶性を有する2種以上の樹脂からなる
上記[1]~[6]のいずれかに記載の積層体。
【0014】
[8]前記印刷受容層中の粒子の含有量が、10質量%以下である
上記[1]~[7]のいずれかに記載の積層体。
【0015】
[9]前記印刷受容層上に表面層を備える
上記[1]~[8]のいずれかに記載の積層体。
【0016】
[10]前記表面層の表面の水との接触角が、55~110°である
上記[9]に記載の積層体。
【0017】
[11]前記表面層が、ヒドロキシ基を有する3級又は4級窒素含有(メタ)アクリル系樹脂を含有する
上記[9]又は[10]に記載の積層体。
【0018】
[12]上記[1]~[10]のいずれかに記載の積層体を備える、包装材。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、不透明性を有しつつ、グラビア印刷適性が高い積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の積層体及び包装材について詳細に説明する。以下の説明は本発明の一例(代表例)であり、本発明はこれに限定されない。
以下の説明において、「(メタ)アクリル」の記載は、アクリルとメタクリルの両方を示す。
【0022】
(積層体)
本発明の積層体は、基材層と印刷受容層とを備える。基材層は熱可塑性樹脂を含有する多孔質層であるため、積層体の不透明性が高まり、パルプ紙のような風合いが得られやすい。よって、印刷内容を明瞭に表示することができ、グラビア印刷による鮮やかな色表現も可能である。
【0023】
一方で多孔質層の表面は一定の粗さを有することが通常であり、表面が粗いとグラビア印刷時に版の凹部から印刷用紙へのインクの転写が不十分となってドット(網点)の欠け、いわゆるドットスキップが発生することがある。本発明においては、基材層上に印刷受容層を設け、当該印刷受容層側の積層体の表面の平滑度を40000秒以上とすることにより、パルプ紙と同様の風合いを得つつ、グラビア印刷の印刷適性も高めている。
【0024】
((平滑度))
ドットスキップ低減の観点から、本発明の積層体の平滑度は、40000秒以上であり、60000秒以上がより好ましく、70000秒以上がさらに好ましく、80000秒以上が特に好ましい。上記平滑度は、通常100000秒未満である。
上記平滑度は、JIS-K-8119:1998に準拠して測定される。
【0025】
((圧縮率))
クッション性を高めてドットスキップを低減する観点から、本発明の積層体の圧縮率は、3.5%以上が好ましく、4.0%以上がより好ましく、4.5%以上がさらに好ましく、5.0%以上が特に好ましい。機械的強度を高める観点からは、上記圧縮率は、8.0%以下が好ましく、7.5%以下がより好ましく、7.0%以下がさらに好ましい。
【0026】
上記圧縮率は、下記式(F1)により求められる。
(F1) PL(%)=d2/d1×100
式(F1)において、PLは圧縮率(%)を表す。d1は積層体の試験片の厚さ(μm)を表す。d2は153kg/cm2の荷重を加えたときの試験片の圧縮量(μm)を表す。
【0027】
以下、各層について説明する。
((基材層))
基材層は、上述のように熱可塑性樹脂を含有する多孔質層である。基材層は、積層体にクッション性を付与するとともに機械的強度を付与する支持体として機能し得る。
【0028】
<熱可塑性樹脂>
基材層に使用できる熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリフェニレンスルフィド系樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂とは、オレフィンを構成単位として50質量%以上有する樹脂をいう。ポリオレフィン系樹脂は、オレフィンのみを構成単位とするポリオレフィン系樹脂であってもよい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0029】
機械的強度の観点からは、基材層中の熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂を含むことが好ましく、ポリオレフィン系樹脂を含むことがより好ましく、ポリプロピレン系樹脂を含むことがさらに好ましい。なかでも、基材層中の熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂からなることが好ましく、ポリオレフィン系樹脂からなることがより好ましく、ポリプロピレン系樹脂からなることがさらに好ましい。また、基材層が延伸多孔質層である場合の空孔形成の起点をさらに増やし、空孔率をより高める観点から、熱可塑性樹脂はポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂を含むことが好ましく、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂からなることがより好ましい。
【0030】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、又はこれらの共重合体が挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、又は脂肪族ポリエステルが挙げられる。
【0031】
基材層中の熱可塑性樹脂の含有量は、シート成形性又は機械的強度向上の観点から、20質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、60質量%以上が特に好ましい。その他の成分による様々な機能付与の観点からは、上記熱可塑性樹脂の含有量は、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。
【0032】
<空孔形成材>
基材層は、上記熱可塑性樹脂と空孔形成材を含有する延伸多孔質層であることが好ましい。空孔形成材を含有する樹脂フィルムを延伸することにより、フィルム内部に空孔形成材を起点とする微細な空孔が多数形成されやすく、積層体にパルプ紙の風合いを与える多孔質層が得られやすい。上記に加え、機械的強度を得るとともに、高い空孔率を有することにより所望の圧縮率を得る観点から、基材層は二軸延伸多孔質層であることがより好ましい。
空孔形成材としては、例えば無機粒子又は有機粒子が挙げられ、樹脂量を削減することによる環境負荷の低減の観点からは無機粒子が好ましい。
【0033】
<<無機粒子>>
無機粒子としては、例えば炭酸カルシウム、焼成クレイ、タルク、珪藻土、白土、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、チタン酸バリウム、シリカ、アルミナ、ゼオライト、マイカ、セリサイト、ベントナイト、セピオライト、バーミキュライト、ドロマイト、ワラストナイト、又はガラスファイバー等が挙げられる。延伸による空孔形成の安定性の観点からは、炭酸カルシウム、焼成クレイ、又はタルクが好ましく、炭酸カルシウムがより好ましい。
【0034】
<<有機粒子>>
有機粒子としては、例えばポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ環状オレフィン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエチレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルケトン、又はポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。
【0035】
上記の無機粒子及び有機粒子のうち、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。2種以上の場合、無機粒子と有機粒子を併用することもできる。
【0036】
上記無機粒子又は有機粒子の平均粒子径は、熱可塑性樹脂との混合の容易性又は空孔形成性の観点から、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましい。成形時のシート切れの抑制及び基材層の強度向上の観点からは、上記平均粒子径は、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。
【0037】
上記平均粒子径は、フィルムの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより求めることができる。SEM画像からフィルム中の粒子の外接円の直径を測定する。任意に選択した10点の粒子について直径を測定し、個数累積で50%に当たる直径を平均粒子径として求めることができる。
【0038】
無機粒子又は有機粒子を含む場合の基材層中の粒子の含有量(無機粒子と有機粒子の両方を含有する場合はその合計量)は、多孔質構造形成の観点から、5質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。成形性の観点から、上記含有量は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましく、50質量%以下が特に好ましく、40質量%以下がより特に好ましく、30質量%以下がさらに特に好ましい。
【0039】
<その他の添加剤>
基材層は必要に応じて添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、中和剤、核剤、光安定剤、分散剤、滑剤、着色剤、可塑剤、離形剤、難燃剤、帯電防止剤、及び紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0040】
酸化防止剤としては、通常知られているヒンダードフェノール系、リン系、又はアミン系等の熱安定剤の中から1種類又は2種類以上を適宜使用することができる。基材層が酸化防止剤を含有する場合の基材層中の含有量は、熱安定剤の機能を発現する観点から、通常0.01質量%以上であり、好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、成形安定性又は外観を良好にする観点から、1.5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
【0041】
光安定剤としては、通常知られているヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、又はベンゾフェノン系等の光安定剤の中から1種又は2種以上を適宜使用することができる。光安定剤と上記の熱安定剤を併用することも好ましい。二軸延伸層が光安定剤を含有する場合は、光安定剤の機能を発現する観点から、光安定剤の含有量は0.01質量%以上が好ましく、成形安定性又は外観を良好にする観点から、1.5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
【0042】
分散剤及び滑剤としては、シランカップリング剤;オレイン酸やステアリン酸等の炭素数が8~24の脂肪酸、その金属塩、アミド、炭素数が1~6のアルコールとのエステル等;ポリ(メタ)アクリル酸、その金属塩等が挙げられる。これらの中から1種又は2種以上を使用することができる。
【0043】
<空孔率>
基材層の空孔率は、パルプ紙の風合いを得る観点から、10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上が特に好ましく、さらに所望の圧縮率を得る観点から、30%以上がより特に好ましく、40%以上がさらに特に好ましい。基材層の機械的強度を維持する観点から、上記空孔率は、60%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。
【0044】
上記空孔率は、電子顕微鏡で観察したフィルムの断面の一定領域において、空孔が占める面積の比率より求められる。
基材層の空孔率は、空孔形成材の含有量、サイズ、樹脂の種類、延伸軸数、延伸温度等の延伸条件、及びこれらの組み合わせによって、高く制御することができる。
【0045】
<厚み>
基材層の厚みは、機械的強度を付与する観点から、50μm以上が好ましく、60μm以上がより好ましく、70μm以上がさらに好ましい。 軽量化の観点から、上記基材層の厚みは、500μm以下が好ましく、400μm以下がより好ましく、300μm以下がさらに好ましく、200μm以下が特に好ましい。
【0046】
<層構成>
基材層は、単層構造であってもよく、多層構造であってもよい。多層構造の場合、層ごとに異なる機能を付与することができる。各層を形成する樹脂組成物の種類及び含有量等は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0047】
基材層は、無延伸フィルムであっても延伸フィルムであってもよい。機械的強度又は空孔形成性の観点からは、基材層は、少なくとも1軸方向に延伸されたフィルムであることが好ましく、2軸延伸フィルムであることがより好ましい。
【0048】
((印刷受容層))
印刷受容層は、粗さを有する基材層の表面を覆い、積層体の表面の平滑度を高める。印刷受容層は、成形性の観点から、熱可塑性樹脂を含有する樹脂フィルムであることが好ましい。
【0049】
<熱可塑性樹脂>
印刷受容層に使用できる熱可塑性樹脂としては、上述した基材層と同様の熱可塑性樹脂が挙げられる。所望の表面平滑度を得る観点からは、印刷受容層中の熱可塑性樹脂は、1種の樹脂からなるか、又は相溶性を有する2種以上の樹脂からなることが好ましい。ここで、互いに相溶性を有する樹脂とは230℃で混合した際に単一の相を形成する樹脂をいう。
【0050】
印刷受容層中の熱可塑性樹脂の含有量は、所望の表面平滑度を得る観点から、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、97質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることがよりさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。その他の添加剤成分による機能付与の観点から、100質量%未満であってもよい。
【0051】
<粒子>
所望の表面平滑度を得る観点から、印刷受容層は粒子を含有しないか、又は含有したとしても印刷受容層中の粒子の含有量が、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
【0052】
印刷受容層中に含まれ得る粒子としては、上述した基材層と同様の無機粒子又は有機粒子が挙げられる。
【0053】
<その他の添加剤>
印刷受容層は、必要に応じてその他の添加剤を含有することができる。その他の添加剤としては、基材層と同様の添加剤が挙げられ、添加剤の含有量等も基材層と同様である。
【0054】
<空孔率>
印刷受容層の空孔率は、所望の表面平滑度を得る観点から、10%以下であることが好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。
【0055】
<坪量>
基材層が多孔質層であることによる表面粗さが積層体の平滑度に影響することを抑制する観点から、印刷受容層の坪量は、4g/m2以上が好ましく、4.5g/m2以上がより好ましく、5g/m2以上がさらに好ましく、5.5g/m2以上が特に好ましい。パルプ紙と同様の風合いを得る観点からは、上記印刷受容層の坪量は、20g/m2以下が好ましく、15g/m2以下がより好ましく、10g/m2以下がさらに好ましい。同様の観点から、印刷受容層の厚みは、4μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、6μm以上がさらに好ましい。上記印刷受容層の厚みは、15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、8μm以下がさらに好ましい。
【0056】
((表面層))
本発明の積層体は、印刷受容層上に表面層を備えることができる。表面層によってインクと積層体との密着性又はインクの転写性を高めることができる。また表面層によって帯電防止性を付与することもでき、印刷工程又は加工工程における積層体のローラーへの貼り付き、積層体同士のブロッキング等を減らして、搬送性を高めることができる。
【0057】
図1は、表面層を備える場合の積層体の一例を示す。
図1に例示する積層体10は、基材層1の一方の面上に印刷受容層2及び表面層3をこの順に備える。
【0058】
<水との接触角>
表面層の表面における水との接触角は、インクの転写性を高める観点からは、110°以下が好ましく、70°以下がより好ましく、55°以上が好ましい。
【0059】
<ヒドロキシ基を有する3級又は4級窒素含有(メタ)アクリル系樹脂>
表面の濡れ性の調整、帯電防止性能の付与又は積層体とインクとの密着性向上の観点からは、表面層が、ヒドロキシ基を有する3級又は4級窒素含有(メタ)アクリル系樹脂(以下、単に(メタ)アクリル系樹脂(A)と称することがある。)を含むことが好ましい。なかでも、当該(メタ)アクリル系樹脂(A)は、4級アンモニウム塩構造を有する構成単位(a1)を含むことが好ましく、当該構成単位(a1)は4級アンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位であることが好ましい。
【0060】
水との接触角を高める観点からは、上記(メタ)アクリル系樹脂(A)は、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位(a2)を含むことが好ましい。当該構成単位(a2)を形成するモノマーとしては、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記(メタ)アクリル系樹脂(A)における構成単位(a2)の割合は、水との接触角を高める観点から、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、7質量%以上が特に好ましい。印刷受容層と表面層との密着性の観点からは、上記構成単位(a2)の割合は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
【0061】
なかでも、上記(メタ)アクリル系樹脂(A)は、ヒドロキシ基を有する4級アンモニウム塩含有(メタ)アクリル系樹脂であることが好ましい。当該4級アンモニウム塩含有(メタ)アクリル系樹脂は、下記一般式(1)~(3)で表されるモノマーを含むモノマー成分の共重合体であることが好ましい。
【0062】
【0063】
一般式(1)~(3)において、R1、R4及びR6はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表す。R2及びR3は、それぞれ独立に水素又は炭素数1~2のアルキル基を表す。R5は炭素数1~18のアルキル基を表す。A1及びA2は炭素数2~6のアルキレン基を表す。
【0064】
得られる共重合体は、一般式(1)で表されるモノマー由来の構成単位を20~80質量%、一般式(2)で表されるモノマー由来の構成単位を10~70質量%、一般式(3)で表されるモノマー由来の構成単位を1~70質量%の割合で含むことが好ましい。なかでも、一般式(1)で表されるモノマー由来の構成単位の割合は、25~60質量%がより好ましく、30~50質量%がさらに好ましく、一般式(2)で表されるモノマー由来の構成単位の割合は、20~60質量%がより好ましく、30~50質量%がさらに好ましく、一般式(3)で表されるモノマー由来の構成単位の割合は3~50質量%がより好ましく、5~30質量%がさらに好ましい。
【0065】
表面層中の(メタ)アクリル系樹脂(A)の含有量は、固形分換算で、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。上記含有量が20質量%以上であると、積層体表面の濡れ性が向上し、インク転移性が向上しやすい。また、表面層に優れた帯電防止性能を付与しやすく、印刷工程又は加工工程における搬送性が向上しやすい。一方、上記(メタ)アクリル系樹脂(A)の含有量は、固形分換算で、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。上記含有量が50質量%以下であると、他の成分により印刷受容層と表面層との密着性や、表面層とインクとの密着性を改善しやすい。
【0066】
<ポリエチレンイミン系樹脂>
表面層は、ポリエチレンイミン系樹脂を含有することができる。ポリエチレンイミン系樹脂は、表面層と印刷受容層との密着性を高めるとともに表面層とインクとの密着性も高める。
ポリエチレンイミン系樹脂としては、例えばポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体、又はこれらの変性体が挙げられ、表面層を形成する過程でこれらの成分がさらに変性した変性体であってもよい。エチレンイミン系重合体としては、エチレンイミンが付加された重合体、例えばポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加体、ポリエチレンイミンのグリシジルエーテル付加体等が挙げられる。これらのうち、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
ポリエチレンイミン及びエチレンイミン系重合体の各変性体としては、ポリエチレンイミン又はエチレンイミン系重合体を、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化シクロアルキル、ハロゲン化ベンジル等のハロゲン化物、エポキシ基含有化合物、又はハロヒドリン等の変性剤によって変性した化合物等を挙げることができる。変性剤としては、具体的には、塩化メチル、臭化メチル、塩化n-ブチル、塩化ラウリル、ヨウ化ステアリル、塩化オレイル、塩化シクロヘキシル、塩化ベンジル、塩化アリル、塩化シクロペンチル等のハロゲン化物、グリシドール等のエポキシ基含有化合物、エピクロロヒドリン等のハロヒドリン等を挙げることができる。これらの変性体は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0068】
表面層中のポリエチレンイミン系樹脂の含有量は、固形分換算で、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。上記含有量が20質量%以上であると、印刷受容層と表面層との密着性や、表面層とインクとの密着性が改善されやすい。上記ポリエチレンイミン系樹脂の含有量は、固形分換算で、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。上記含有量が60質量%以下であると、上述した(メタ)アクリル系樹脂(A)等の他の成分により、インキ転移性が向上しやすく、表面層に優れた帯電防止性能を付与しやすい。
【0069】
<架橋剤>
表面層は、必要に応じて架橋剤を含有することができる。架橋剤は上述したポリエチレンイミン系樹脂等と架橋反応して網目状の分子構造を形成し、表面層の耐水性が向上する。その結果、印刷用紙として好適な表面が得られやすい。
【0070】
架橋剤としては、例えばエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、ホルマリン系化合物、オキサゾリン系化合物、カルボジイミド系化合物、又はポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物等が挙げられる。より具体的には、ビスフェノールA-エピクロルヒドリン樹脂、ポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物、脂肪族エポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、脂環式エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂イソシアネート系化合物、又はこれらの誘導体等が挙げられる。また架橋剤としては、多価アルコール、エーテル樹脂、又はエステル樹脂と、イソシアネート系化合物とを反応させてNCO基が末端になるように重縮合されたウレタン樹脂系イソシアネート、ポリグリシジルエーテル、これらの誘導体、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、特にポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物、単官能又は多官能のグリシジルエーテル、グリシジルエステル類等が好ましい。
【0071】
表面層中の架橋剤の含有量は、ポリエチレンイミン系樹脂に対して10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。また、架橋剤の含有量は、100質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
【0072】
<その他の添加剤>
表面層は、帯電防止性能又は表面の濡れ性を阻害しない範囲で、その他の添加剤を含有してもよい。そのような添加剤としては、例えばpH調整剤、消泡剤(界面張力調整剤)、希釈剤、流動性改良剤、又は防腐剤等が挙げられる。
【0073】
<塗工量>
表面層は、例えば上記成分を含む塗工液を印刷受容層上に塗工し、乾燥することにより、形成され得る。
印刷適性向上の観点から、表面層形成用塗工液の塗工量は、乾燥後の固形分換算で、0.005g/m2以上が好ましく、0.01g/m2以上がより好ましく、0.1g/m2以上がさらに好ましい。表面のベタツキ抑制の観点からは、上記塗工液の塗工量は、5g/m2以下が好ましく、1g/m2以下がより好ましく、0.75g/m2以下がさらに好ましい。
【0074】
(積層体の製造方法)
本発明の積層体の製造方法は特に限定されず、例えば、基材層及び印刷受容層のフィルムを形成し、積層することにより製造できる。必要に応じてフィルムを延伸することができる。その工程には、公知の種々の方法を使用できる。
【0075】
<フィルムの成形>
フィルムの成形方法としては、例えばスクリュー型押出機に接続された単層又は多層のTダイ、Iダイ等により溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、インフレーション成形等が挙げられる。熱可塑性樹脂と有機溶媒又はオイルとの混合物を、キャスト成形又はカレンダー成形した後、溶媒又はオイルを除去することにより、フィルムを成形してもよい。
【0076】
多層構造のフィルムの成形方法としては、例えばフィードブロック、マルチマニホールドを使用した多層ダイス方式、複数のダイスを使用する押出しラミネーション方式等が挙げられ、各方法を組み合わせることもできる。
【0077】
<延伸>
延伸方法としては、例えばロール群の周速差を利用した縦延伸法、テンターオーブンを利用した横延伸法、これらを組み合わせた逐次二軸延伸法、圧延法、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時二軸延伸法、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸法等が挙げられる。また、スクリュー型押出機に接続された円形ダイを使用して溶融樹脂をチューブ状に押し出し成形した後、これに空気を吹き込む同時二軸延伸(インフレーション成形)法等も使用できる。
【0078】
複数層を延伸する場合は、各層を積層する前に個別に延伸しておいてもよいし、積層した後にまとめて延伸してもよい。また、延伸した層を積層後に再び延伸してもよい。
【0079】
延伸温度は、フィルム中の最も含有量が多い熱可塑性樹脂が、非結晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上の範囲であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合の延伸温度は、当該熱可塑性樹脂の非結晶部分のガラス転移点以上であって、かつ当該熱可塑性樹脂の結晶部分の融点以下の範囲内であることが好ましく、具体的には熱可塑性樹脂の融点よりも2~60℃低い温度が好ましく、高い空孔率を得る観点からは、熱可塑性樹脂の融点よりも2~30℃低い温度がより好ましく、熱可塑性樹脂の融点よりも2~20℃低い温度がさらに好ましく、熱可塑性樹脂の融点よりも2~15℃低い温度が特に好ましい。
【0080】
延伸速度は、特に限定されるものではないが、安定した延伸成形の観点から、20~350m/分の範囲内であることが好ましい。
延伸倍率についても、使用する熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定することができる。 例えば、プロピレンの単独重合体又はその共重合体を含む熱可塑性樹脂フィルムを一方向に延伸する場合、その延伸倍率は、下限が通常は1.2倍以上、好ましくは2倍以上であり、上限が通常は12倍以下、好ましくは10倍以下である。一方、二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で、下限が通常は1.5倍以上、好ましくは10倍以上であり、上限が通常は60倍以下、好ましくは50倍以下である。
【0081】
また、ポリエステル系樹脂を含む熱可塑性樹脂フィルムを一方向に延伸する場合、その延伸倍率は、上限が通常は1.2倍以上、好ましくは2倍以上であり、下限が通常は10倍以下、好ましくは5倍以下である。二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で、下限が通常は1.5倍以上、好ましくは4倍以上であり、上限が通常は20倍以下、好ましくは12倍以下である。
上記延伸倍率の範囲内であれば、目的の空孔率が得られて不透明性が向上しやすい。また、フィルムの破断が起きにくく、安定した延伸成形ができる傾向がある。
【0082】
<表面処理>
フィルムは、積層されるフィルムとの密着性を高める観点及びドットスキップ低減の観点から、表面処理が施されてもよい。
表面処理としては、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理等が挙げられ、これら処理は組み合わせることができる。なかでも、コロナ放電処理又はフレーム処理が好ましく、コロナ処理がより好ましい。
【0083】
<塗工>
表面層を形成する場合、表面層の各成分を含む塗工液を調製し、当該塗工液を印刷受容層上に塗工して乾燥する。塗工には、公知の塗工装置を使用することができる。
【0084】
(包装材)
本発明の包装材は、上述した積層体を備える。本発明の包装材は、上記積層体の基材層側にヒートシール層を備えることができる。包装材のヒートシール層同士をヒートシールすることにより、筒状、袋状等に加工することができる。積層体の印刷受容層側の表面には、印刷によって印刷層が設けられ得る。
【0085】
図2は、包装材の一例を示す断面図である。
図2に例示する包装材20は、基材層1、印刷受容層2及び表面層3がこの順に積層された積層体10を備える。また包装材20は、積層体10の表面層3とは反対側の表面にヒートシール層4を備え得る。
【0086】
<ヒートシール層>
ヒートシール層は、ヒートシール樹脂を含有する。ヒートシール樹脂としては、例えばオレフィン類の単独重合体、オレフィン類2種以上による共重合体、カルボン酸ビニル類の1種類以上とオレフィン類の1種類以上とによる共重合体、(メタ)アクリル酸類の1種類以上とオレフィン類の1種類以上とによる共重合体、その金属塩、アクリル酸類とカルボン酸ビニル類とオレフィン類それぞれ1種類以上よりなる共重合体、又はこれらの変性物等が挙げられる。
【0087】
ヒートシール層の厚みは、接着性の観点から、通常は1μm以上であり、好ましくは2μm以上であり、通常は150μm以下であり、好ましくは120μm以下である。
【0088】
(包装材の製造方法)
本発明の包装材の製造方法は特に限定されず、例えば、上述した積層体の基材層側の表面にヒートシール層を積層することにより製造することができる。積層方法としては、ヒートシール層形成用の樹脂組成物を多層ダイス内で積層体の基材層等の樹脂組成物と積層してシート状に押し出す共押出法、積層体上にヒートシール層形成用の樹脂組成物をダイよりシート状に押し出し、金属ローラーにより冷却する押出ラミネーション法、予め形成されたヒートシール層のフィルムを積層体上に積層して貼り合わせるドライラミネーション法、熱可塑性樹脂の溶液等を積層体上に塗工して乾燥することによりフィルムを形成する塗工法等の公知の手法を用いることができる。
【0089】
本発明により得られる包装材は、印刷工程、ラミネート工程、及び、製袋工程を経ることで、三方袋、合掌袋、ガゼット袋など様々な袋を製造可能なものである。
【実施例0090】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」、「%」等の記載は、断りのない限り、質量基準の記載を意味する。
【0091】
表1は、実施例及び比較例に使用した材料の一覧である。
【表1】
【0092】
(実施例1)
プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)74質量%と、高密度ポリエチレン(商品名:ノバテックHD HJ360、日本ポリエチレン社製)10質量%と、無機粒子(重質炭酸カルシウム、商品名:ソフトン1800、備北粉化工業社製、平均粒子径:1.2μm)16質量%とを混合し、基材層形成用の樹脂組成物(L1)を調製した。
また、プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)100質量%を、印刷受容層形成用の樹脂組成物(L2)として用いた。
【0093】
上記樹脂組成物(L1)を230℃に設定した押出機にて混練した後、250℃に設定した押出ダイスに供給してシート状に押し出し、冷却装置により冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを130℃に加熱し、周速差の異なる多数のロール群を用いて縦方向(MD)に4倍延伸して4倍延伸フィルムを得た。次いで、印刷受容層形成用の樹脂組成物(L2)を250℃に設定した押出機で混練した後、250℃に設定した押出ダイスに供給してシート状に押し出し、上記4倍延伸フィルムの表面に積層した。
【0094】
得られた積層フィルムを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約155℃に加熱し、横方向(TD)に8倍延伸した。次いで、155℃に調整したオーブンによりアニーリング処理を行い、両面に30W・分/m2の強度でコロナ放電処理を施した。耳部をスリットすることにより、樹脂組成物(L2)からなる印刷受容層/樹脂組成物(L1)からなる基材層が積層された2層フィルム(総厚:70μm、印刷受容層の坪量:6g/cm2、各層の厚み:6/64μm、各層の延伸軸数:1軸/2軸)を得た。
【0095】
ポリエチレンイミン系樹脂(ポリエチレンイミン系重合体、商品名:サフトマーAC-72、三菱ケミカル社製)、ヒドロキシ基を有する4級アンモニウム塩含有アクリル系樹脂(商品名:サフトマーST1000、三菱ケミカル社製)、及び架橋剤(ポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物、商品名:WS4082、星光PMC社製)を混合し、表面層形成用の塗工液(L3)を調製した。塗工液(L3)において、ポリエチレンイミン系樹脂、アクリル系樹脂及び架橋剤の各成分の固形分量をそれぞれ30質量%、35質量%及び35質量%とした。
【0096】
上記2層フィルムの印刷受容層側の表面に塗工液(L3)を塗工量0.02g/m2で塗工し、表面層を形成した。これを乾燥することにより、表面層/印刷受容層/基材層がこの順に積層された、実施例1の積層体を得た。
【0097】
(実施例2~4、6、7及び比較例1)
基材層の各成分の配合比、延伸温度又は印刷受容層の坪量を表2及び表3に示すように調整した以外は、実施例1と同様にして実施例2の積層体を得た。
【0098】
(実施例5)
印刷受容層の樹脂組成物(L2)を、プロピレンランダム共重合体(商品名:ノバテックPP FG4、日本ポリプロ社製)100質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例5の積層体を得た。
【0099】
(実施例8)
表面層形成用の塗工液(L3)中のヒドロキシ基を有する4級アンモニウム塩含有アクリル系樹脂を、ヒドロキシ基を有しない4級アンモニウム塩含有アクリル系樹脂(商品名:サフトマーST3200、三菱ケミカル社製)に変更した以外は、実施例6と同様にして実施例8の積層体を得た。
【0100】
(実施例9)
延伸温度及び印刷受容層の坪量を表3に示すように調整した以外は、実施例8と同様にして実施例9の積層体を得た。
【0101】
(実施例10)
表面層を設けなかったこと以外は実施例6と同様にして実施例10の積層体を得た。
【0102】
(比較例2)
延伸温度及び印刷受容層の坪量を表3に示すように変更した以外は、実施例5と同様にして比較例2の積層体を得た。
【0103】
(比較例3)
印刷受容層の樹脂組成物(L2)を、プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)90質量%とエラストマー(商品名:タフマーPN-2070、三井化学社製)10質量%からなる樹脂組成物に変更し、延伸温度及び印刷受容層の坪量を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして比較例3の積層体を得た。
【0104】
(比較例4)
印刷受容層の樹脂組成物(L2)を、プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)55質量%と無機粒子(重質炭酸カルシウム、商品名:ソフトン1800、備北粉化工業社製、平均粒子径:1.2μm)45質量%からなる樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例4の積層体を得た。
【0105】
(測定及び評価)
各積層体の物性の測定及び性能の評価を次のように行った。
【0106】
<空孔率>
印刷受容層及び基材層の空孔率を、電子顕微鏡で観察したフィルムの断面の一定領域において、空孔が占める面積の比率より求めた。具体的には、フィルムの任意の一部を切り取り、エポキシ樹脂で包埋して固化させた後、ミクロトームを用いてフィルムの面方向に垂直に切断し、その切断面が観察面となるように観察試料台に貼り付けた。観察面に金又は金-パラジウム等を蒸着し、電子顕微鏡にて観察しやすい任意の倍率(例えば、500倍~3000倍の拡大倍率)において空孔を観察し、観察した領域を画像データとして取り込んだ。得られた画像データに対して画像解析装置にて画像処理を行い、各層中の空孔部分の面積率(%)を求めた。任意の10箇所以上の観察における面積率を平均して、空孔率(%)とした。
【0107】
<圧縮率>
積層体を10cm×10cmの試験片に切り取り、東洋精機製ミニテストプレス機を用いて試験片に荷重を加えた。試験片の厚さd1(μm)と、153kg/cm2の荷重を加えたときの試験片の圧縮量d2(μm)とを測定し、上記式(F1)により積層体の圧縮率(%)を求めた。
【0108】
<平滑度>
積層体の表面層側の表面のベック平滑度(°)を、JIS-K-8119:1998に準拠して測定した。
【0109】
<接触角>
積層体の表面層側の表面の水との接触角を、イオン交換水を用いて接触角計(協和界面化学(株)製:型式CA-D)により求めた。
【0110】
<グラビア印刷適性>
積層体を21cm×6cmの試験片に切り取り、短手を合わせるようにして3枚張り合わせた。これに、IGT社製グラビア印刷機G1-5を使用して印圧400g/cm、lpi 175、印刷スピード36m/分でグラビア印刷を行った。インキはサカタインクス社製のNT-2000藍800、溶剤はサカタインクス社製のNT-2000 溶剤 2Aを使用した。印刷した試験片の網点率15%の部分をハイロックス社製デジタルマイクロスコープHRX-01で倍率20倍にて観察した。1cm2中のドットスキップの数の割合を以下の基準で判定した。△以上が実用できる印刷適性である。
◎:10%未満
〇:10%以上20%未満
△:20%以上50%未満
×:50%以上
【0111】
【0112】
【0113】
表2及び表3に示すように、平滑度が40000秒以上の実施例1~10は、いずれも優れたグラビア印刷適性が得られている。一方、平滑度が30000秒以下の比較例1~4はグラビア印刷適性が低く、比較例1からは圧縮率が高くてもグラビア印刷適性が低いことが分かる。