(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137286
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】建築用パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
E06B 3/82 20060101AFI20230922BHJP
E06B 3/76 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
E06B3/82
E06B3/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043419
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】野月 雄太
【テーマコード(参考)】
2E016
【Fターム(参考)】
2E016HA03
2E016JA11
2E016KA01
2E016KA07
2E016LA01
2E016LB01
2E016NA05
(57)【要約】
【課題】 パネル厚方向に分離した中骨を有する場合でも生産性が良好である。
【解決手段】
骨材ユニットAの両側に接着材を介して表板21と裏板22を重ね合わせ、これら表板21、骨材ユニットA及び裏板22を両側から加圧するようにした建築用パネルの製造方法であって、骨材ユニットAが、表板21と裏板22の間に挟まれる枠状骨材A1と、枠状骨材A1の内側で表板21に接する表側中骨27と、表側中骨27に近接するとともに裏板22に接する裏側中骨28とを具備し、前記加圧の前には、表側中骨27と裏側中骨28の各々を、表板21と裏板22の間でパネル厚方向へ移動しないように設置する中骨設置工程が行われる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材ユニットの両側に接着材を介して表板と裏板を重ね合わせ、これら表板、骨材ユニット及び裏板を両側から加圧するようにした建築用パネルの製造方法であって、
前記骨材ユニットが、前記表板と前記裏板の間に挟まれる枠状骨材と、前記枠状骨材の内側で前記表板に接する表側中骨と、前記表側中骨に近接するとともに前記裏板に接する裏側中骨とを具備し、
前記加圧の前には、前記表側中骨と前記裏側中骨の各々を、前記表板と前記裏板の間でパネル厚方向へ移動しないように設置する中骨設置工程が行われることを特徴とする建築用パネルの製造方法。
【請求項2】
前記中骨設置工程では、前記表側中骨と前記裏側中骨の両方を、前記枠状骨材に対しパネル厚方向へ離れないように接合することを特徴とする請求項1記載の建築用パネルの製造方法。
【請求項3】
前記接合が、溶接であることを特徴とする請求項2記載の建築用パネルの製造方法。
【請求項4】
前記中骨設置工程には、前記表板の内面に前記表側中骨を接合する工程、又は前記裏板の内面に前記裏側中骨を接合する工程のうち、何れか一方又は双方の工程を含むことを特徴とする請求項1記載の建築用パネルの製造方法。
【請求項5】
前記接合が、接着材を介在した接着であることを特徴とする請求項4記載の建築用パネルの製造方法。
【請求項6】
前記中骨設置工程では、内面を上方へ向けた前記表板又は前記裏板の上面に前記枠状骨材の少なくとも一部を仮置きし、この枠状骨材の一部を目印にして前記表側中骨又は前記裏側中骨を位置合わせする工程を含むことを特徴とする請求項4又は5記載の建築用パネルの製造方法。
【請求項7】
前記枠状骨材の一部を、前記表側中骨又は前記裏側中骨を位置合わせするための治具として用いることを特徴とする請求項6記載の建築用パネルの製造方法。
【請求項8】
内面を上方へ向けた前記表板又は前記裏板の上面に、接着材を介在して、前記枠状骨材と前記表側中骨又は前記裏側中骨とを、接合されていない状態で載置する工程を含むことを特徴とする請求項1,4~7何れか1項記載の建築用パネルの製造方法。
【請求項9】
前記表側中骨又は前記裏側中骨には、前記枠状骨材に対しパネル厚方向の一方から重なり合う重ね合わせ部が設けられ、前記中骨設置工程には、前記枠状骨材に前記重ね合わせ部を重ね合わせる工程を含むことを特徴とする請求項8記載の建築用パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具(戸、扉、窓、障子等を含む)や、パーティション、シャッターカーテン等として用いられる建築用パネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載される金属製扉がある。この金属製扉では、戸厚方向に間隔を置いた表板と裏板の間に枠状骨材を設け、この枠状骨材の内側に、上下方向へわたる横断面溝形鋼状の中骨を幅方向に間隔を置いて複数設けて、撓み等を生じないように補強している。
このよう金属製扉は、表板、枠状骨材及び中骨、裏板を、接着材を介してパネル厚方向へ重ね合わせ、これらを両側から加圧して一体化する製造方法を適用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来技術によれば、金属製扉に対する屋外側又は屋内側に騒音発生源がある場合、中骨が音を振動として伝達するサウンドブリッジとして機能し、前記騒音発生源の音が、表板から裏板へ、あるいは裏板から表板へ伝播してしまうおそれがある。
そこで、中骨をパネル厚方向へ分離してサウンドブリッジによる伝播を遮断することが考えられる。
しかしながら、このようにすると、分離した各中骨についてパネル厚方向の一方側に支えているものがないため、上記製造方法において両側から加圧した際に、各中骨を、表板又は裏板に圧接することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
骨材ユニットの両側に接着材を介して表板と裏板を重ね合わせ、これら表板、骨材ユニット及び裏板を両側から加圧するようにした建築用パネルの製造方法であって、前記骨材ユニットが、前記表板と前記裏板の間に挟まれる枠状骨材と、前記枠状骨材の内側で前記表板に接する表側中骨と、前記表側中骨に近接するとともに前記裏板に接する裏側中骨とを具備し、前記加圧の前には、前記表側中骨と前記裏側中骨の各々を、前記表板と前記裏板の間でパネル厚方向へ移動しないように設置する中骨設置工程が行われることを特徴とする建築用パネルの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、パネル厚方向に分離した中骨を有する場合でも生産性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る建築用パネルの製造方法の適用対象となる建具装置の一例を示す正面図であり、要部を切欠して内部構造を示している。
【
図3】同建具装置における建築用パネル単体の横断面図である。
【
図4】本発明に係る建築用パネルの製造方法の一例を示す分解斜視図である。
【
図5】本発明に係る建築用パネルの製造方法の他例を示す分解斜視図である。
【
図6】本発明に係る建築用パネルの製造方法の他例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第一の特徴は、骨材ユニットの両側に接着材を介して表板と裏板を重ね合わせ、これら表板、骨材ユニット及び裏板を両側から加圧するようにした建築用パネルの製造方法であって、前記骨材ユニットが、前記表板と前記裏板の間に挟まれる枠状骨材と、前記枠状骨材の内側で前記表板に接する表側中骨と、前記表側中骨に近接するとともに前記裏板に接する裏側中骨とを具備し、前記加圧の前には、前記表側中骨と前記裏側中骨の各々を、前記表板と前記裏板の間でパネル厚方向へ移動しないように設置する中骨設置工程が行われる(
図4~
図6参照)。
ここで、「骨材ユニット」とは、前記表板と前記裏板の間で、これら表板と裏板を支持する部材である。この骨材ユニットには、単一の部材からなる態様や、複数の部材からなる態様を含む。
また、前記接着材には、流動性の接着剤や両面テープ等を含む。
【0009】
第二の特徴として、前記中骨設置工程では、前記表側中骨と前記裏側中骨の両方を、前記枠状骨材に対しパネル厚方向へ離れないように接合する(
図4参照)。
【0010】
第三の特徴は、前記接合を溶接にした。
【0011】
第四の特徴として、前記中骨設置工程には、前記表板の内面に前記表側中骨を接合する工程、又は前記裏板の内面に前記裏側中骨を接合する工程のうち、何れか一方又は双方の工程を含む(
図5参照)。
【0012】
第五の特徴として、前記接合が、接着材を介在した接着である(
図5参照)。
【0013】
第六の特徴として、前記中骨設置工程では、内面を上方へ向けた前記表板又は前記裏板の上面に前記枠状骨材の少なくとも一部を仮置きし、この枠状骨材の一部を目印にして前記表側中骨又は前記裏側中骨を位置合わせする工程を含む(
図5参照)。
【0014】
第七の特徴は、前記枠状骨材の一部を、前記表側中骨又は前記裏側中骨を位置合わせするための治具として用いる(
図5参照)。
【0015】
第八の特徴として、内面を上方へ向けた前記表板又は前記裏板の上面に、接着材を介在して、前記枠状骨材と前記表側中骨又は前記裏側中骨とを、接合されていない状態で載置する工程を含む(
図5及び
図6参照)。
【0016】
第九の特徴として、前記表側中骨又は前記裏側中骨には、前記枠状骨材に対しパネル厚方向の一方から重なり合う重ね合わせ部が設けられ、前記中骨設置工程には、前記枠状骨材に前記重ね合わせ部を重ね合わせる工程を含む(
図6参照)。
【0017】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
本明細書中、パネル厚方向とは、当該建築用パネル(扉体)の厚みの方向を意味する。また、パネル面方向とは、当該建築用パネルの表面又は裏面が延設される方向を意味する。このパネル面方向には、パネル幅方向やパネル上下方向等を含む。
また、本明細書中では、便宜上、屋外側と表側、屋内側を裏側と表現しているが、表裏の関係は逆にすることが可能である。
【0018】
図1及び
図2は、本発明に係る建築用パネルの製造方法の適用対象となる建具装置の一例を示す。
この建具装置1は、矩形枠状の枠体10(ドア枠)と、この枠体内の開口部を開閉する扉体20(建築用パネル)と、扉体20を戸尻側で開閉回動させるヒンジ30とを備える。
【0019】
枠体10は、上下に間隔を置いた水平状の横枠部材11,12と、左右に間隔を置いた垂直状の縦枠部材13,14とを具備して矩形枠状に構成され、建物等の躯体開口部に固定される。
横枠部材11,12及び縦枠部材13,14は、それぞれ、硬質金属材料から長尺直線状に形成される。これらは、溶接等によって一体化されている。
【0020】
扉体20は、パネル厚方向に間隔を置いた表板21及び裏板22と、これら表板21と裏板22の間に位置する骨材ユニットAとから一体的に構成される。
【0021】
骨材ユニットAは、表板21と裏板22の間に挟まれる枠状骨材A1と、枠状骨材A1の内側で表板21の内面に接するように固定された表側中骨27と、表側中骨27に対し分離した状態で近接するとともに裏板22の内面に接するように固定された裏側中骨28と、表板21と裏板22の間の空間に充填された芯材29とを具備する。
【0022】
枠状骨材A1は、上下左右の力骨23,24,25,26によって中央側を開口した矩形枠状に形成される。この枠状骨材A1は、表板21と裏板22の周縁側に位置する。
【0023】
表板21と裏板22は、それぞれ、硬質金属材料から正面視略矩形板状に形成される。
図示例の表板21は、その上端部及び左右端部に、裏板22へ向かって折り曲げられた折片部21aを有する(
図2参照)。
同様にして、裏板22も、その上端部及び左右端部に、表板21へ向かって折り曲げられた折片部22aを有する。
【0024】
上下の力骨23,24は、それぞれ、硬質金属材料から長尺な溝形鋼状に形成される。これら力骨23,24は、それぞれ、表板21と裏板22の間の上端側と下端側に位置する。そして、これら力骨23,24は、何れも、表板21と裏板22の双方の内面に接して固定される。
【0025】
左右の力骨25,26は、それぞれ、硬質金属材料から長尺状に形成され、何れも、表板21と裏板22の双方の内面に接して固定される。
これら力骨25,26は、表板21の内面に接する部分の面積と、裏板22の内面に接する部分の面積とが異なる(
図3参照)。
【0026】
詳細に説明すれば、戸先側の力骨25は、上下方向へわたる長尺板状の戸先側片部25aと、この戸先側片部25aにおけるパネル厚方向の一方側で戸尻方向へ曲げられた曲片部25bと、同戸先側片部25aにおけるパネル厚方向の他方側で戸尻方向へ曲げられた曲片部25cとを有する横断面略凹状に形成される(
図2~
図3参照)。
そして、一方の曲片部25bは、他方の曲片部25cよりもパネル厚方向の寸法が大きい。このため、曲片部25bが表板21内面に接する面積は、曲片部25cが裏板22内面に接する面積よりも大きい。
【0027】
戸尻側の力骨26は、戸先側の力骨25に対し左右対称の横断面形状に形成され、戸尻側片部26aと、一方の曲片部26bと、他方の曲片部26cとを有する。
そして、一方の曲片部26bは、他方の曲片部26cよりもパネル厚方向の寸法が大きく、表板21内面に接する面積が、他方の曲片部26cが裏板22内面に接する面積よりも大きい。
【0028】
表側中骨27と裏側中骨28は、これらの間に空間を置くようにしてパネル厚方向に離隔して、一対に設けられる。表側中骨27と裏側中骨28の間に接触する部分はない。
これら表側中骨27及び裏側中骨28は、
図3に示すように、戸先部と戸尻部の間の空間を分割するようにして、パネル幅方向に間隔を置いて複数組(図示例によれば二組)設けられる。
【0029】
各組の表側中骨27と裏側中骨28は、形状、肉厚及び質量等が異なる。
また、各組の表側中骨27と裏側中骨28は、パネル面方向(図示例によれば、扉幅方向)の異なる位置で、パネル厚方向の内側へ突出する補強片を有する(
図3参照)。表側中骨27の補強片の数と、裏側中骨28の補強片の数は異なる。
【0030】
詳細に説明すれば、表側中骨27は、表板21の内面に平坦状に接する接片部27aと、この接片部27aの幅方向の一端側からパネル厚方向内側へ延設された補強片27bと、同接片部27aの幅方向の他端側からパネル厚方向へ延設された補強片27cとを有し、接片部27aを表板21内面に接着して上下方向へわたる長尺状に連続している。この表側中骨27の厚みt1は、本実施態様によれば、約1.6mmである。
【0031】
一方の補強片27bは、パネル厚さ方向内側へ突出する突片部27b1と、この突片部27b1の突端側でパネル面に沿うパネル幅方向内側へ曲げられた曲片部27b2とを有する。
他方の補強片27cは、突片部27b1よりも突出量が大きい平板状に形成される。
二つの補強片27b,27cは、何れも、他の裏側の部材(裏板22及び裏側中骨28)には接しない。
【0032】
また、裏側中骨28は、裏板22の内面に平坦状に接する接片部28aと、この接片部28aの幅方向の一端側からパネル厚方向へ突出する補強片28bとを有し、接片部28aを裏板22内面に接着して上下方向へわたる長尺状に連続している。
接片部28aが裏板22内面に接する面積は、接片部27aが表板21内面に接する面積よりも大きい。
【0033】
この裏側中骨28の厚みt2は、表側中骨27の厚みよりも大きく、本実施態様によれば、約2.3mmである。裏側中骨28の質量は、表側中骨27の質量よりも大きい。
【0034】
補強片28bは、パネル厚さ方向内側へ突出する突片部28b1と、この突片部28b1の突端側でパネル面に沿うパネル幅方向へ曲げられた曲片部28b2とを有する。この補強片28bは、表板21側の部材(表板21及び表側中骨27)に接しないようにして、表側中骨27の二つの補強片27b,27cの間に位置する。このような補強片の配置によれば、補強片同士が干渉するのを防ぐとともに、各補強片のパネル厚方向の突出量を大きく確保することができ、ひいては、表板21,裏板22の撓み抑制効果を向上することができる。
【0035】
表側中骨27の曲片部27b2と、裏側中骨28の曲片部28b2とは、その曲げ方向(パネル幅方向)の長さが異なり、図示例によれば、曲片部27b2の長さが曲片部28b2の長さよりも小さい。
【0036】
芯材29は、グラスウールや発泡樹脂、あるいは段ボール等の紙により構成される。この芯材29は、戸先側の力骨25と表側中骨27の間、両側の表側中骨27,27の間、戸尻側の力骨26と表側中骨27の間等に充填されている。この芯材29は、遮音性や断熱性の向上、振動抑制、強度アップ等の目的で設けられるが、省くことも可能である。
【0037】
上記構成の扉体20は、表板21と裏板22が、パネル厚方向において対称な略同形状且つ同厚であり、表側中骨27と裏側中骨28が、パネル厚方向において非対称形状であって且つ厚みが異なる。
このため、扉体20は、表板21及び表側中骨27等の表側部材の質量と、裏板22及び裏側中骨28等の裏側部材の質量とが異なる。図示例によれば、表側部材(表板21及び表側中骨27)の質量が、裏側部材(裏板22及び裏側中骨28)の質量よりも小さい。
【0038】
そして、扉体20は、前述した質量の違いや、表側中骨の形状の違い、補強片の数の違い、厚みの違い等、表側と裏側の構成の違いにより、前記表側部材の固有振動数と、前記裏側部材の固有振動数とが異なる。
図示例によれば、前記表側部材の固有振動数は、前記裏側部材の固有振動数よりも大きい。
【0039】
ヒンジ30は、一片部31と他片部32とを軸部33を中心に自在に回転するように支持してなり、蝶番等と呼称される場合もある。図示例のヒンジ30は、周知構造の旗蝶番である。
このヒンジ30は、扉体20と縦枠部材14の間に軸部33を配置するようにして、一片部31を扉体20に止着し、他片部32を縦枠部材14に止着している(
図2参照)。
このヒンジ30の他例としては、平蝶番やピポットヒンジ、二軸蝶番等とすることも可能である。
【0040】
なお、図中、符号41は扉体20を開閉操作するためのドアノブ、符号42は全閉状態の扉体20を施錠したり開錠したりするためのサムターン、符号43はドアノブ41やサムターン42の操作によりラッチボルトやデッドボルトを出没させる鍵機構である。
【0041】
上記構成の扉体20(建築用パネル)及び建具装置1は、以下の作用効果を奏する。
扉体20では、表側中骨27と裏側中骨28をパネル厚方向に離して設けたため、これら表側中骨27及び裏側中骨28が媒質となって振動や音が伝達するのを防ぐことができる。
しかも、表側中骨27と裏側中骨28の形状、質量、厚み等の違いにより、表板21及び表側中骨27を含む表側部材の固有振動数と、裏板22及び裏側中骨28を含む裏側部材の固有振動数とが異なるため、表側部材と裏側部材の共振によってパネル厚方向へ伝達する振動及び音が増大するようなことを防ぐことができる。
また、表板21と裏板22に対する力骨25,26、表側中骨27及び裏側中骨28の接触面積の設定や、独自の補強片形状等によって、表板21及び裏板22が横断面弓形に撓むのを抑制するとともに、前記撓みを伴う振動や、表板21と裏板22の共振等を効果的に防ぐことができる。
【0042】
<建築用パネルの第一の製造方法>
次に、上記構成の建築用パネルについて、その製造方法を詳細に説明する。
先ず、表側中骨27と裏側中骨28の各々を、表板21と裏板22の間でパネル厚方向へ移動しないように設置する中骨設置工程が行われる。
【0043】
具体的に説明すれば、この中骨設置工程の一例では、上下の力骨23,24及び左右の力骨25,26を溶接して枠状骨材A1を構成する(
図4参照)。
そして、この枠状骨材A1に対し、表側中骨27と裏側中骨28の両方を、パネル厚方向へ離れないように接合する。詳細に説明すれば、表側中骨27と裏側中骨28について、その一端側と他端側を、表側中骨27と裏側中骨28に溶接する。図中、符号wは、溶接箇所を示す。
【0044】
一方、表板21の内面と裏板22の内面には、それぞれ、流動性かつ熱硬化性の接着剤gが塗布される。接着材gは、前記内面において骨材ユニットAとの接触を想定している部分に設ければよく、例えば、前記内面の略全面にわたって塗布される(
図4参照)。
【0045】
そして、骨材ユニットAの両側に接着材gが介在するように、骨材ユニットAの両側に表板21と裏板22を重ね合わせる。
この重ね合わせの手順を図示例について詳細に説明すれば、表板21をその内面の接着材gを上方へ向けて基台等の上に載置し、この表板21の上面に骨材ユニットAを載置し、さらに骨材ユニットAの上面に、内面の接着材gを下方へ向けた裏板22を載置する。
【0046】
次に、これら表板21、骨材ユニットA及び裏板22を、両側から加圧するとともに加熱する(
図4参照)。
この加熱により、接着材gが熱硬化し、表板21と骨材ユニットAと裏板22を強固に接着される。この後、一体化された表板21、骨材ユニットA及び裏板22は、常温で放置される。
【0047】
上記製造方法によれば、互いに離隔した表側中骨27と裏側中骨28を有する状態で、表板21と骨材ユニットAの間、及び骨材ユニットAと裏板22の間を、それぞれ十分に圧接することができる。ひいては、これら表板21、骨材ユニットA及び裏板22を、高強度に一体化された扉体20(建築用パネル)として構成することができる。
【0048】
<建築用パネルの第二の製造方法>
次に、上記構成の建築用パネルについて、その製造方法の他例を詳細に説明する。
【0049】
図5に示す製造方法では、中骨設置工程として、予め、裏板22の内面に裏側中骨28を接合する。
詳細に説明すれば、内面を上方へ向けた裏板22を基台等の上に載置し、この裏板22の上面に力骨23を仮置きする。
そして、裏板22の内面に接着材gx(例えば、両面テープや、接着剤等)を介して裏側中骨28を圧接する。この際、裏側中骨28は、枠状骨材A1の一部である力骨23を目印にして位置合わせされる。より具体的に説明すれば、裏側中骨28の一端部を力骨23に接触又は近接する。力骨23は、裏側中骨28が裏板22に接着された後に除去される。
言い換えれば、力骨23は、裏側中骨28を位置決めするための治具として用いられる。
この後、裏板22の内面には、その略全面にわたって、接着材gが塗布される。
【0050】
一方、内面を上方へ向けて基台等に載置された表板21の上面には、その略全面にわたって、接着材gが塗布される。そして、塗布された接着材gの上には、接合されない状態の枠状骨材A1と表側中骨27が組み合わせられて、所定位置となるように載置され圧接される(
図5参照)。前記圧接は、枠状骨材A1及び表側中骨27等を作業者等が手等で強く押圧することによる。
【0051】
次に、裏側中骨28と一体的な裏板22が、その内面の接着材gを下方へ向けるようにして、枠状骨材A1及び表側中骨27の上面に重ね合わせられる。
【0052】
この後、これら表板21、表側中骨27と一体の枠状骨材A1、裏側中骨28及び裏板22等を、両側から加圧するとともに加熱する。
この加熱により、接着材gは、熱硬化し、表板21と表側中骨27及び枠状骨材A1、裏側中骨28と裏板22等を強固に接着する。この後、一体化されたこれらの部材は、常温で放置される。
【0053】
よって、
図5に示す製造方法によっても、互いに離隔した表側中骨27と裏側中骨28を有する状態で、表板21と骨材ユニットAの間、及び骨材ユニットAと裏板22の間を、それぞれ十分に圧接して、これらを高強度に一体化することができる。
【0054】
なお、図示例では、裏側中骨28を裏板22に接合する接着材gxと、他の箇所の接着剤gとを、異なる接着材としているが、これらは同一の接着材とすることも可能である。
【0055】
<建築用パネルの第三の製造方法>
図6に示す製造方法では、中骨設置工程として、枠状骨材A1の上に裏側中骨28’の端部側を載置する工程を含む。
【0056】
詳細に説明すれば、表板21の内面と裏板22の内面には、それぞれ、接着材gが塗布される。
内面を上方へ向けて基台等に載置された表板21の上面(接着材g面)には、接合されない状態の枠状骨材A1及び表側中骨27が、所定位置となるように載置され、手等で強く押圧される。
【0057】
裏側中骨28’は、上記裏側中骨28に対し一端側と他端側に、枠状骨材A1に対しパネル厚方向の一方から重なり合う鍔状の重ね合わせ部28cを設けたものである。
この裏側中骨28’は、両端側の重ね合わせ部28c,28cを、ぞれぞれ、力骨23と力骨24に重ね合わせるようにして、枠状骨材A1上に載置される。
【0058】
この後、これら表板21、表側中骨27、枠状骨材A1及び裏側中骨28’、裏板22等を、両側から加圧するとともに加熱する。
この加熱により、接着材gが熱硬化し、表板21と表側中骨27及び枠状骨材A1、裏側中骨28’及び枠状骨材A1と裏板22等が強固に接着される。この後、一体化されたこれらの部材は、常温で放置される。
【0059】
よって、
図6に示す製造方法によっても、表側中骨27と裏側中骨28’を離隔した固定状態に保持しながら、表板21と骨材ユニットAの間、及び骨材ユニットAと裏板22の間を、それぞれ十分に圧接して、これらを高強度に一体化することができる。
【0060】
なお、
図4~
図5では、骨材ユニットAについて表側中骨27と裏側中骨28の組数を一組とし簡略的に図示したが、表側中骨27と裏側中骨28の組数は、
図1~
図3に示すものと同数、あるいは3以上にすることが可能である。
【0061】
<その他の変形例>
図4に示す態様では、骨材ユニットAを構成する複数の部材を溶接により一体化したが、他例としては、骨材ユニットAを構成する複数の部材を接着により一体化する態様や、骨材ユニットAを構成する複数の部材を止着具(例えば、ねじやボルト、リベット等)により一体化する態様、骨材ユニットAを構成する複数の部材を嵌合により一体化する態様等とすることも可能である。
【0062】
図5に示す態様では、上記中骨設置工程として、予め裏板22の内面に裏側中骨28を接合したが、中骨設置工程の他例としては、予め表板21の内面に表側中骨27を接合する工程を含ませることも可能である。
【0063】
また、
図5に示す態様では、裏板22の内面に裏側中骨28を接合する手段を接着としたが、他例としては、前記接着を溶接に変えることも可能である。
【0064】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0065】
1:建具装置
10:枠体
20,20’,20”:扉体(建築用パネル)
21:表板
22:裏板
25,26:力骨
27:表側中骨
27b,27c:補強片
27b1:突片部
27b2:曲片部
28,28’:裏側中骨
28b:補強片
28b1:突片部
28b2:曲片部
A:骨材ユニット
A1:枠状骨材