(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137287
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】移報装置
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20230922BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G08B17/00 C
G08B25/00 520C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043421
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】楠見 真希
【テーマコード(参考)】
5C087
5G405
【Fターム(参考)】
5C087AA12
5C087AA37
5C087BB76
5C087DD04
5C087EE08
5C087FF03
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG11
5C087GG13
5C087GG17
5C087GG28
5C087GG35
5C087GG52
5C087GG66
5C087GG70
5G405AA01
5G405AA03
5G405AB02
5G405AD02
5G405AD04
5G405AD06
5G405AD07
5G405AD09
5G405CA04
5G405CA09
5G405CA19
5G405CA21
5G405CA25
5G405CA30
5G405CA32
5G405CA41
(57)【要約】 (修正有)
【課題】移報遮断機能を設定して行う試験や試験中の真火災による連動信号の受信に際して不必要な移報信号の出力を確実に防止し、必要な場合は、移報信号を素早く出力する移報装置を提供する。
【解決手段】移報装置12の移報制御部76は、テストスイッチ54の長押し操作で移報遮断機能が設定された場合、表示灯56の点滅により移報遮断中である旨を示す移報遮断中報知を行い、移報遮断中に火災連動信号を受信した場合は火災連動信号を受信した旨の受信履歴を保持する。移報制御部76は、移報遮断中にテストスイッチ54の再度の長押し操作で解除操作が検出された場合に移報遮断機能を解除し、移報出力を保留するために待ち時間を設定し、待ち時間が継続しているあいだスピーカ58の音声出力により警報器が作動中にある旨の警報器作動中報知を行い、待ち時間が経過時に受信履歴の保持が継続していることを条件に移報出力部64から移報信号を出力させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災連動信号を送受信可能な警報器を有する警報システムと所定の外部機器との間の中継を行う移報装置であって、
前記火災連動信号の受信に基づいて前記外部機器へ移報信号を出力する移報出力部と、
前記移報出力部による前記移報信号の出力を遮断する移報遮断機能を制御する移報制御部と、
が設けられ、
更に、前記移報制御部は、
前記移報遮断機能の設定中に前記火災連動信号を受信した場合に当該火災連動信号の受信履歴を保持し、前記受信履歴の火災連動信号に対応する火災復旧信号を受信した場合に前記受信履歴の保持を解除し、
前記移報遮断機能の設定解除を検出した際に前記受信履歴が保持されていない場合は、前記移報遮断機能を解除し、
前記移報遮断機能の設定解除を検出した際に前記受信履歴が保持されている場合は、所定の待ち時間のあいだ、警報器が作動中にある旨を示す警報器作動中報知を行わせ、
前記待ち時間が経過した際に前記受信履歴が継続して保持されている場合に前記移報信号を出力させる
ことを特徴とする移報装置。
【請求項2】
請求項1記載の移報装置に於いて、
前記移報制御部は、前記待ち時間が継続しているあいだに前記受信履歴の保持が解除された場合は、前記待ち時間及び前記警報器作動中報知を途中で停止して前記移報信号の出力を抑止して移報遮断機能を解除することを特徴とする移報装置。
【請求項3】
請求項1記載の移報装置に於いて、
前記移報制御部は、
前記火災連動信号の受信履歴として、当該火災連動信号に含まれる火災発報の順番を示す固有の発報番号を保持し、
前記受信履歴が保持された状態で、前記受信履歴の発報番号と同じ発報番号の前記火災復旧信号を受信した場合に、前記受信履歴の前記火災連動信号に対応する火災復旧信号を受信と判断して、前記受信履歴の保持を解除することを特徴とする移報装置。
【請求項4】
請求項1記載の移報装置に於いて、
前記警報器は、煙を検知して火災発報する警報器であり、
前記待ち時間は、炙り試験により火災発報させた前記警報器から煙が抜けて復旧するまでの復旧時間に基づく所定時間としたことを特徴とする移報装置。
【請求項5】
請求項1記載の移報装置に於いて、
前記移報制御部は、
前記移報遮断機能の設定を検出して前記移報遮断機能を設定した場合に移報遮断中である旨を示す移報遮断中報知として、表示灯を所定の周期又はパターンで点滅又は明滅させ、
前記警報器作動中報知として、音声出力部から警報器が作動中にある旨を示す所定の音声メッセージを出力させること特徴とする移報装置、
【請求項6】
請求項1記載の移報装置に於いて、
前記移報制御部は、前記待ち時間が継続しているあいだに、別の警報器から新たな火災連動信号を受信した場合、前記移報信号を出力させることを特徴とする移報装置。
【請求項7】
請求項6記載の移報装置に於いて、
前記移報制御部は、
前記火災連動信号の前記受信履歴として、当該火災連動信号に含まれる火災発報の順番を示す固有の発報番号を保持し、
前記待ち時間が継続しているあいだに、前記受信履歴の発報番号と異なる発報番号の火災連動信号を受信した場合に、警報器からの新たな火災連動信号の受信と判断して、前記移報信号を出力させることを特徴とする移報装置。
【請求項8】
請求項1記載の移報装置に於いて、
前記移報装置は操作部を備え、
前記移報制御部は、前記待ち時間が継続しているあいだに、前記操作部による所定の移報出力操作が行われた場合、前記待ち時間の経過を待つことなく、前記移報信号を出力させることを特徴とする移報装置。
【請求項9】
請求項1記載の移報装置に於いて、
前記移報装置は、
前記移報遮断機能の設定操作又は解除操作を行う操作部を備え、
前記操作部は、1のスイッチを備え、
前記移報制御部は、
前記移報遮断機能が解除された状態で前記スイッチの操作が検出された場合に、前記移報遮断機能を設定し、
前記移報遮断機能が設定された状態で前記スイッチの同じ操作が検出された場合に、前記移報遮断機能を解除することを検出する
ことを特徴とする移報装置。
【請求項10】
請求項9記載の移報装置に於いて、前記移報制御部は、前記スイッチの操作時間の相違により、前記移報遮断機能の設定及び解除のスイッチ操作と、他のスイッチ操作を識別して検出することを特徴とする移報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の警報器で火災警報を連動して出力させる警報システムからの火災連動信号を受信して外部機器に移報信号を出力する移報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等における火災を検知して警報する火災警報器が普及している。このような住宅用火災警報器にあっては、電池電源で動作し、火災警報器内に火災を検出するセンサ部と火災を警報する警報部を一体に備え、センサ部の検出信号に基づき火災を検知すると警報部から火災警報音を出力するようにしており、所謂自動火災報知設備のように受信機等を必要とせず警報器単体で火災監視と警報報知ができることから、設置が簡単でコスト的にも安価であり、一般住宅での設置義務化に伴い広く普及している。以下、「火災警報器」を単に「警報器」という。
【0003】
また、複数の警報器間で相互に無線通信を行うことによって、任意の警報器で火災警報音が出力されると、他の警報器でも連動して火災警報音を出力させる無線式連動型の警報器を用いた警報システムも実用化され、普及している。
【0004】
更に、火災報知設備の設置義務のない、床面積が300平米未満の特定小規模施設、例えば高齢者や知的障害者の家事支援などを行うグループホーム等に対して、特定小規模施設用自動火災報知設備が導入されている。特定小規模施設用自動火災報知設備は、火災を検出するセンサ部と火災を警報する警報部を一体に備えた住宅用の警報器と同じ感知器によって構成され、感知器同士が無線連動することでいずれかの感知器で火災を検出した際に感施設内の感知器全てが発報して施設全体に火災を報知させるものである。
【0005】
このような無線式連動型の警報器を用いた警報システムでは、警報システムからの火災連動信号を受信して外部機器に移報信号を出力する中継器として機能する移報装置が設けられ、移報装置に例えば消防機関に火災発生を通報する自動通報装置等を接続している。
【0006】
しかしながら、火災による煙を検知して警報する煙感知型の警報器を設けていた場合、煙試験器を使用して警報器を火災発報させる所謂炙り試験を定期的に行う必要があり、警報器が試験発報すると火災でもないのに移報装置から移報信号が出力されて自動通報が行われてしまう不都合があることから、移報装置にはスイッチ操作により移報信号を出力しないようにする移報遮断機能が設けられ、警報器の試験発報で移報信号を出力させないようにしている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-203562号公報
【特許文献2】特開2011-113114号公報
【特許文献3】特開2014-225055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、このような従来の警報システムに設けられた移報装置にあっては、警報器からの火災連動信号を受信しても移報信号を出力しないようにする移報遮断機能がスイッチの操作で設定された後、所定の移報遮断機能の解除条件が成立した場合に移報遮断機能を解除するようしている。この移報遮断機能の解除条件は、例えば、移報遮断機能の設定操作から一定時間が経過した場合、移報遮断中に連動信号を受信した警報器以外の警報器からの火災連動信号を受信した場合、又は、移報遮断中に移報遮断機能を設定するスイッチが再度押された場合としている。
【0009】
このため、警報器の炙り試験を行うときに移報装置のスイッチ操作で移報遮断機能を設定していても、複数の警報器の炙り試験を順番に行っている間に、例えば、一定時間が経過すると移報遮断機能が解除され、また、試験発報した警報器が復旧する前に次の警報器を試験発報させると移報遮断機能が解除され、移報遮断機能の解除により移報信号が出力され、自動通報が誤って行われてしまう問題がある。
【0010】
また、警報器の炙り試験を終了して移報装置のスイッチ操作により移報遮断機能を解除した場合、炙り試験により流入した煙がなくなって火災復旧信号が受信されるまで警報器の試験発報が継続して火災連動信号の送信が繰り返されており、試験発報の継続による火災連動信号の再受信により移報信号が出力されて自動通報が誤って行われてしまう問題がある。
【0011】
更に、警報器の試験中に真火災が発生して火災連動信号が受信されていても、移報装置の移報遮断機能が設定されている間は、真火災による火災連動信号を受信しても移報信号の出力による自動通報は行われず、火災が拡大して他の警報器からの連動信号が受信されるまで移報遮断機能は解除されず、真火災の発生が検知されてから移報信号を出力して自動通報するまでに時間がかかる問題がある。
【0012】
本発明は、移報遮断機能を設定して行う試験や試験中の真火災による連動信号の受信に対し、不必要な移報信号の出力を確実に防止すると共に必要な場合は移報信号を素早く出力することを可能とする警報器を用いた警報システムで使用される移報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(移報装置)
本発明は、火災連動信号を送受信可能な警報器を有する警報システムと所定の外部機器との間の中継を行う移報装置であって、
火災連動信号の受信に基づいて外部機器へ移報信号を出力する移報出力部と、
移報出力部による移報信号の出力を遮断する移報遮断機能を制御する移報制御部と、
が設けられ、
更に、移報制御部は、
移報遮断機能を設定した場合に、移報遮断機能の設定中に火災連動信号を受信した場合に当該火災連動信号の受信履歴を保持し、受信履歴の火災連動信号に対応する火災復旧信号を受信した場合に受信履歴の保持を解除し、
解除操作を検出した際に受信履歴が保持されていない場合は、移報遮断機能を解除し、
解除操作を検出した際に受信履歴が保持されている場合は、所定の待ち時間のあいだ、警報器が作動中にある旨を示す警報器作動中報知を行わせ、
待ち時間が経過した際に前記受信履歴が継続して保持されている場合に前記移報信号を出力させることを特徴とする。
【0014】
(待ち時間中の受信履歴の保持解除による移報出力の抑止)
移報制御部は、待ち時間が継続しているあいだに受信履歴の保持が解除された場合は、待ち時間及び前記警報器作動中報知を途中で停止して移報信号の出力を抑止して移報遮断機能を解除する。
【0015】
(火災復旧信号の受信による受信履歴の保持解除)
移報制御部は、
火災連動信号の受信履歴として、当該火災連動信号に含まれる火災発報の順番を示す固有の発報番号を保持し、
受信履歴が保持された状態で、受信履歴の発報番号と同じ発報番号の火災復旧信号を受信した場合に、受信履歴の火災連動信号に対応する火災復旧信号を受信と判断して、受信履歴の保持を解除させる。
【0016】
(待ち時間)
警報器は、煙を検知して火災発報する警報器であり、
待ち時間は、炙り試験により火災発報させた警報器から煙が抜けて復旧するまでの復旧時間に基づく所定時間とする。
【0017】
(移報遮断中報知と警報器作動中報知の態様)
移報制御部は、
設定操作を検出して移報遮断機能を設定した場合に移報遮断中である旨を示す移報遮断中報知として、表示灯を所定の周期又はパターンで点滅又は明滅させ、警報器作動中報知として、音声出力部から警報器が作動中にある旨を示す所定の音声メッセージを出力させ。
【0018】
(待ち時間での新たな火災連動信号の受信)
移報制御部は、待ち定時間が継続しているあいだに、別の警報器から新たな火災連動信号を受信した場合、移報信号を出力させる。
【0019】
(発報番号による新たな火災連動信号の受信判断)
移報制御部は、
火災連動信号の受信履歴として、当該火災連動信号に含まれる火災発報の順番を示す固有の発報番号を保持し、
待ち時間が継続しているあいだに、受信履歴の発報番号と異なる発報番号の火災連動信号を受信した場合に、別の警報器からの新たな火災連動信号の受信と判断して、移報信号を出力させる。
【0020】
(待ち時間での移報出力操作)
移報装置は操作部を備え、
移報制御部は、待ち時間が継続しているあいだに、操作部による所定の移報出力操作が行われた場合、移報信号を出力させる。
【0021】
(1のスイッチの異なる操作)
移報装置は、
移報遮断機能の設定操作又は解除操作を行う操作部を備え、
操作部は、1のスイッチを備え、
移報制御部は、
移報遮断機能が解除された状態でスイッチの操作が検出された場合に、移報遮断機能を設定し、
移報遮断機能が設定された状態でスイッチの同じ操作が検出された場合に、移報遮断機能を解除する。
【0022】
(スイッチの操作時間による識別)
移報制御部は、スイッチの操作時間の相違により、移報遮断機能の設定及び遮断のスイッチ操作と、他のスイッチ操作を識別して検出する。
【発明の効果】
【0023】
(基本的な効果)
本発明は、火災連動信号を送受信可能な警報器を有する警報システムと所定の外部機器との間の中継を行う移報装置であって、火災連動信号の受信に基づいて外部機器へ移報信号を出力する移報出力部と、移報出力部による移報信号の出力を遮断する移報遮断機能を制御する移報制御部と、が設けられ、更に、移報制御部は、移報遮断機能を設定した場合に、移報遮断機能の設定中に火災連動信号を受信した場合に当該火災連動信号の受信履歴を保持し、受信履歴の火災連動信号に対応する火災復旧信号を受信した場合に受信履歴の保持を解除し、解除操作を検出した際に受信履歴が保持されていない場合は、移報遮断機能を解除し、解除操作を検出した際に受信履歴が保持されている場合は、所定の待ち時間のあいだ、警報器が作動中にある旨を示す警報器作動中報知を行わせ、待ち時間が経過した際に受信履歴が継続して保持されている場合に移報信号を出力させるようにしたため、移報遮断機能を設定した状態で行っていた警報器の炙り試験中に真火災が発生していた場合、炙り試験の終了に伴い移報遮断機能の解除操作を行うと、真火災の火災連動信号の受信履歴に対応して警報器が作動中にある旨を示す警報器作動中報知が行われ、火災復旧信号により受信履歴の保持が解除されない状態で待ち時間が経過すると移報信号が出力され、移報遮断機能を設定して行っていた炙り試験中に発生した真火災に対し移報信号を迅速且つ確実に外部機器へ出力して自動通報等を行うことを可能とする。
【0024】
また、待ち時間が継続しているあいだ、警報器が作動中にある旨を示す警報器作動中報知が行われることで、炙り試験を終了して移報遮断機能の解除操作を行った場合に、警報器が作動中にあることを知り、真火災であれば待ち時間が経過すると移報信号が出力されることから、真火災の発生に備えることを可能とする。
【0025】
(待ち時間中の受信履歴の保持解除による移報出力の抑止の効果)
また、移報制御部は、待ち時間が継続しているあいだに受信履歴の保持が解除された場合は、待ち時間及び警報器作動中報知を途中で停止して移報信号の出力を抑止して移報遮断機能を解除するようにしたため、炙り試験を終了した後に移報遮断機能の解除操作を行った場合に、炙り試験による火災連動信号の受信履歴に対応して警報器が作動中にある旨を示す警報器作動中報知が行われても、炙り試験を行った警報器は待ち時間が経過する前に受信履歴の保持が火災復旧信号の受信により解除され、また、警報器作動中報知も停止し、待ち時間が経過したときに誤って火災移報信号が出力されることなく、移報遮断機能を解除した通常の監視状態に戻ることができる。
【0026】
(火災復旧信号の受信による受信履歴の保持解除の効果)
また、移報制御部は、火災連動信号の受信履歴として、当該火災連動信号に含まれる火災発報の順番を示す固有の発報番号を保持し、受信履歴が保持された状態で、受信履歴の発報番号と同じ発報番号の火災復旧信号を受信した場合に、受信履歴の火災連動信号に対応する火災復旧信号を受信と判断して、受信履歴の保持を解除させるようにしたため、受信履歴の火災連動信号に対応した火災復旧信号であることが確実に識別でき、受信履歴の保持を解除することで、待ち時間が経過したときに誤って移報信号を出力させてしまうことがなく、移報遮断機能を解除した通常状態に戻すことを可能とする。
【0027】
(待ち時間の効果)
また、警報器は、煙を検知して火災発報する警報器であり、待ち時間は、炙り試験により火災発報させた警報器から煙が抜けて復旧するまでの復旧時間に基づく所定時間としているため、警報器の炙り試験を終了し、試験発報が継続している状態で、移報遮断機能の解除操作を行っても、移報遮断機能が解除されるまでの待ち時間のあいだに試験発報した警報器は確実に復旧し、火災復旧信号の受信により受信履歴の保持が解除されることで、待ち時間が経過しても移報信号を出力させてしまうことがない。
【0028】
(移報遮断中報知と警報器作動中報知の態様の効果)
また、移報制御部は、設定操作を検出して移報遮断機能を設定した場合に移報遮断中である旨を示す移報遮断中報知として、表示灯を所定の周期又はパターンで点滅又は明滅させ警報器作動中報知として、音声出力部から警報器が作動中にある旨を示す所定の音声メッセージを出力させるようにしたため、移報遮断機能の設定が継続しているあいだ、移報遮断機能が設定状態にある旨を示す移報遮断中報知が行われることで、警報器の炙り試験を行っている試験員等の関係者は、移報遮断中報知により移報遮断機能が設定されていることを確認でき、また、移報遮断中報知は表示灯で済むことから、移報装置の構成が簡単となり、また、警報器作動中報知は音声メッセージ、例えば「警報器が作動中です」を繰り返すことで、試験発報に対する復旧待ちの状態か又は真火災に対する移報待ちの状態にあるかを試験員等の関係者に知らせることを可能とする。
【0029】
(待ち時間での新たな火災連動信号の受信による効果)
また、移報装置は操作部を備え、移報制御部は、待ち時間が継続しているあいだに、別の警報器から新たな火災連動信号を受信した場合、移報出力部から移報信号を出力させるようにしたため、警報器の炙り試験を終了して移報遮断機能の解除操作を行った警報器作動中報知中に、真火災による新たな火災連動信号を受信すると移報信号が出力され、真火災に対し速やかに移報信号を出力して自動通報等の移報動作を可能とする。
【0030】
(発報番号による新たな火災連動信号の受信判断の効果)
また、移報装置は、移報遮断機能の設定操作又は解除操作を行う操作部を備え、移報制御部は、火災連動信号の受信履歴として、当該火災連動信号に含まれる火災発報の順番を示す固有の発報番号を保持し、待ち時間が継続しているあいだに、受信履歴の発報番号と異なる発報番号の火災連動信号を受信した場合に、別の警報器からの新たな火災連動信号の受信と判断して、移報信号を出力させるようにしたため、真火災による火災連動信号であることを確実に判断して移報信号を出力し、真火災の発生に対し迅速且つ確実に自動通報装置等の外部機器を作動させることを可能とする。
【0031】
(待ち時間での移報出力操作の効果)
また、移報制御部は、待ち時間が継続しているあいだに、操作部による所定の移報出力操作が行われた場合、移報出力部から移報信号を出力させるようにしたため、例えば、音声出力による警報器作動中報知が行われている状態で、試験員等の関係者が真火災に気づいた場合には、待ち時間の経過を待つことなく移報出力操作、例えば、操作部に設けた1のスイッチを短押しすることで、移報信号が強制的に出力されて自動通報装置等の外部機器を作動させることを可能とする。
【0032】
(1のスイッチの異なる操作の効果)
また、操作部は、1のスイッチを備え、移報制御部は、移報遮断機能が解除された状態でスイッチの操作が検出された場合に、移報遮断機能が設定され、移報遮断機能が設定された状態でスイッチの同じ操作が検出された場合に、移報遮断機能が解除され、さらに、移報制御部は、スイッチの操作時間の相違により、移報遮断機能の設定及び遮断のスイッチ操作と、他のスイッチ操作を識別して検出するようにしたため、例えば、移報遮断機能の設定や解除はスイッチの長押し操作を交互に行い、それ以外の操作、例えば移報信号出力操作はスイッチの短押し操作で行うことで、スイッチが1つで済むことから、移報装置の構成が簡単となり、小型軽量化及びコストの低減を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の移報装置が用いられる警報システムを示した説明図である。
【
図2】警報器の機能構成を示したブロック図である。
【
図3】移報装置の機能構成を示したブロック図である。
【
図4】移報遮断機能の設定中に試験発報による火災連動信号を受信して受信履歴を保持し、試験終了により火災復旧信号を受信して受信履歴の保持を解除した後に移報遮断機能を解除した場合の動作を示したタイムチャートである。
【
図5】移報遮断機能の設定中に試験発報による火災連動信号を受信し、試験終了により移報遮断機能を解除して警報器作動中報知を行っている状態で火災復旧信号を受信した場合の動作を示したタイムチャートである。
【
図6】試験中に真火災による火災連動信号を受信し、試験終了で移報遮断機能を解除した後の待ち時間の経過により移報信号を出力させる動作を示したタイムチャートである。
【
図7】試験終了で移報遮断機能を解除して警報器作動中報知を行っている状態で真火災による火災連動信号を受信した場合の動作を示したタイムチャートである。
【
図8】
図3の移報装置による制御動作を示したフローチャートである。
【
図9】
図8に続く移報装置の制御動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明に係る移報装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0035】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に、火災連動信号を送受信可能な警報器を有する警報システムと所定の外部機器との間の中継(移報)を行う移報装置に関するものである。
【0036】
ここで、「警報器」とは、火災を検出するセンサ部と火災を警報する警報部を一体に備え、火災を検知すると警報部から火災警報音を出力し、さらに、無線通信部を備えることで他の警報器との間で信号を送受信して連動する無線連動型の住宅用の火災警報器や特定小規模施設用自動火災報知設備用の火災感知器を含む概念である。
【0037】
また、「警報システム」とは、監視対象とする施設に設置された複数の警報器間で相互に無線通信を行うことによって、いずれかの警報器で火災を検出した際に施設内の警報器の全てが発報して施設全体に火災を報知させるものである。
【0038】
警報システムが設置される施設は、本実施形態にあっては、火災報知設備の設置義務のない、床面積が300平米未満の特定小規模施設、例えば高齢者や知的障害者の家事支援を行うグループホームなどを対象に含むものである。
【0039】
また、本実施形態で使用する警報器は、火災による煙を検知して警報する煙感知型の警報器であり、煙試験器を使用して警報器を火災発報させる所謂炙り試験を定期的に行う必要のある警報器である。
【0040】
また、「移報装置」とは、火災連動信号を送受信可能な警報器を有する警報システムから火災連動信号を受信して外部機器に移報信号を出力する中継器として機能する装置であり、移報出力部、移報制御部及び操作部を備えるものである。
【0041】
ここで、「移報出力部」とは、火災連動信号の受信に基づいて外部機器へ移報信号を出力するものである。また、「外部機器」とは、移報装置からの移報信号を入力して動作する警報システムの外部に設けられた機器であり、機器の種類、構成、機能、用途などは任意であるが、一例として、消防機関に火災発生を通報する自動通報装置などが含まれる。
【0042】
また、「移報制御部」とは、外部機器に対する移報出力部による移報信号の出力を遮断する移報遮断機能を制御するものであり、火災連動信号の受信に伴い外部機器を作動したくない場合は、移報遮断機能を設定して火災連動信号の受信に基づき移報信号を出力させないようにし、一方、火災連動信号の受信に伴い外部機器を作動したい場合は移報遮断機能を解除して火災連動信号の受信に基づき移報信号を出力させるものである。
【0043】
ここで、「移報遮断機能」とは、火災連動信号を受信した場合に外部機器へ移報信号を出力させないようにする機能であり、また「遮断」とは、「停止」、「禁止」、「抑止」などを含む概念である。
【0044】
また、「移報遮断機能の設定」とは、移報遮断機能が働くようにすることであり、「設定」とは「有効化」を含む概念である。また、「移報遮断機能の解除」とは、移報遮断機能が働かないようにすることであり、「解除」とは「無効化」を含む概念であり、さらに「移報遮断解除機能の設定」を意味するものである。
【0045】
また、「火災連動信号の受信に伴い外部機器を作動したくない場合」とは、警報器の炙り試験による火災発報で火災連動信号を受信した場合であり、「火災連動信号の受信に伴い外部機器を作動したい場合」とは、炙り試験中に別の警報器の真火災による火災発報で火災連動信号を受信した場合である。
【0046】
また、「操作部」とは、移報制御部に対し移報遮断機能の設定操作又は解除操作を行うものであり、その構成、構造、種類などは任意であるが、例えば、押釦スイッチなどが用いられる。
【0047】
本実施形態の「移報制御部」は、操作部による設定操作を検出して移報遮断機能を設定した場合に移報遮断中である旨を示す移報遮断中報知を行うものである。このため関係者は移報遮断中報知から移報装置が移報出力の遮断状態にあることを知ることができる。
【0048】
また「移報制御部」は、移報遮断機能の設定した場合に、火災連動信号を受信した場合に、当該火災連動信号の受信履歴を生成して保持するとともに、受信履歴の火災連動信号に対応した火災復旧信号を受信した場合に受信履歴の保持を解除する制御を行うものである。
【0049】
ここで、「受信履歴」とは、火災連動信号を受信した旨を示す履歴情報であり、火災を検出して火災発報した警報器または炙り試験により試験発報した警報器からの火災連動信号を受信した場合に生成され、記憶部に記憶されるなどして保持されるものであり、また、受信履歴の火災連動信号に対応した火災復旧信号を受信した場合に、受信履歴は記憶部から消去されるなどして保持が解除されるものである。
【0050】
また、受信履歴は、同じ警報器から火災連動信号を受信した場合にも生成され、新たに形成された受信履歴で前回の受信履歴が更新され、常に、最新の火災連動信号の受信履歴が保持されるものである。
【0051】
また、受信履歴は、連続した警報器の炙り試練などにより、移報遮断機能の設定状態で連続して火災連動信号が受信された場合、火災連動信号ごとに生成されて保持されるものである。
【0052】
また、「移報制御部」は、解除操作を検出した際に受信履歴が保持されていない場合は、移報遮断機能を解除するものである。このため、炙り試験を終了して試験で火災発報した警報器から煙が抜けて復旧した後に、移報遮断機能の解除操作を行うと、移報遮断機能が解除され、火災連動信号の受信に応じて移報信号を出力する通常状態に戻すことができる。
【0053】
また、「移報制御部」は、操作部による解除操作を検出した際に受信履歴が保持されている場合は、所定の待ち時間のあいだ、警報器が作動中にある旨を示す警報器作動中報知を行わせ、待ち時間が経過した際に受信履歴が継続して保持されている場合に移報信号を出力させる制御を行うものである。
【0054】
ここで、「待ち時間」とは、炙り試験により火災発報させた警報器から煙が抜けて復旧するまでの復旧時間に基づく所定時間であり、待ち時間は任意であるが、実験的に求めた復旧時間に所定の余裕時間を加えた時間であり、具体的には1~2分程度の範囲に入る所定時間とする。
【0055】
本実施形態の「移報遮断機能の解除」にあっては、移報遮断機能が解除されても、直ちに火災連動信号の受信に対し移報信号を出力させる状態とはならず、所定の待ち時間のあいだ移報遮断機能の解除を保留し、警報器が作動中にある旨を示す警報器作動中報知を行いながら待ち時間の経過を待って移報遮断機能の解除を有効とする。このため、警報器の炙り試験が終了し、火災発報した警報器から煙が抜けずに作動中の状態で移報遮断機能を解除しても、解除が待ち時間のあいだ保留され、その間に炙り試験により火災発報した警報器が確実に復旧し、誤って移報信号が出力されてしまうことを防止するものである。一方、待ち時間が経過した際に、火災連動信号の受信履歴が保持されている場合には、何れかの警報器が作動状態にあることから、移報信号を出力させて外部機器を作動させるものである。
【0056】
また、「火災連動信号の受信履歴」とは、火災連動信号に含まれる火災発報の順番を示す固有の発報番号を保持するものであり、受信履歴が保持された状態で、受信履歴の発報番号と同じ発報番号の火災復旧信号を受信した場合に、受信履歴の火災連動信号に対応する火災復旧信号を受信と判断して、受信履歴の保持が解除させるものである。
【0057】
ここで、「発報番号」とは、警報器の識別情報と発報回数を含む番号情報であり、発報番号の形式は任意であるが、例えば、警報器の識別番号「XX」と発報回数「YY」を組み合わせた発報番号「XXYY」とする。具体的には、警報システムを構成する警報器の最大数は15台であることから、「XX」は1~15の値をとり、発報回数「YY」は1~99の値をとることになる。
【0058】
また、発報番号は、警報器ごとに異なる所定の初期値が設定されており、火災発報により火災連動信号を送信し、その後に火災が復旧した場合に、発報番号の発報回数「YY」が1つ増加される。また、本実施形態の警報器は、火災発報による作動中、所定時間ごとに繰り返し火災連動信号を送信するものであり、送信回数に応じて発報番号の発報回数「YY」が1つずつ増加されるものである。
【0059】
また、火災発報した警報器が復旧した場合には、復旧前に送信した最後の火災連動信号の発報番号を含む火災復旧信号が送信されるものである。このため受信履歴の火災連動信号の発送番号と、その後に受信した火災復旧番号の発送番号を比較して一致した場合、受信履歴の火災連動信号に対応した火災復旧信号であると判断して、受信履歴の保持を解除することができる。
【0060】
また、「移報遮断機能が設定中である旨を示す移報遮断中報知」と「警報器が作動中にある旨を示す警報器作動中報知」の態様は任意であるが、移報制御部は、移報遮断中報知として、表示灯を所定の周期又はパターンで点滅又は明滅させ、警報器作動中報知として、音声出力部から警報器が作動中にある旨及び残り待ち時間を示す所定の音声メッセージを出力させる制御を行う。
【0061】
このような移報遮断中報知により、関係者は、移報装置の移報遮断機能が設定された状態にあり、警報器の炙り試験を行っても移報信号が出力されないことを知り、安心して試験作業を行うことを可能とする。また、警報器作動中報知により、関係者は、作動中の警報器に対応して移報出力の待ち状態あることを知ることができる。
【0062】
また、「移報制御部」は、待ち時間が継続しているあいだに、別の警報器から新たな火災連動信号を受信した場合に移報信号を出力させる制御を行うものである。この場合の「別の警報器から新たな火災連動信号の受信」との判断は、移報遮断機能の設定中に受信した火災連動信号の受信履歴として、当該火災連動信号に含まれる火災発報の順番を示す固有の発報番号を保持しており、移報遮断機能が解除されてから待ち時間が経過するまでの間に受信した火災連動信号の発報番号が、受信履歴の火災連動信号の発報番号と比較した場合に相違することで、新たな火災連動信号の受信と判断することができる。
【0063】
また、「移報制御部」は、待ち時間が継続しているあいだに、関係者が真火災の発生を知った場合には、待ち時間の終了を待つことなく、操作部による所定の移報出力操作が行われた場合、強制的に移報信号を出力させる制御を行うものである。
【0064】
また、「操作部」はテストスイッチなどの1のスイッチを備え、これに対応して「移報制御部」は、移報遮断機能が解除された状態でスイッチの操作が検出された場合に、移報遮断機能を設定し、移報遮断機能が設定された状態でスイッチの同じ操作が検出された場合に、移報遮断機能を解除する制御を行うものである。
【0065】
また、「操作部」がテストスイッチなどの1のスイッチを備えた場合、「移報制御部」は、スイッチの操作時間の相違により、移報遮断機能の設定及び解除のスイッチ操作として「長押し操作」を検出し、他のスイッチ操作、例えば、待ち時間中の移報出力操作として「短押し操作」を検出するものである。
【0066】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す具体的な実施形態では、「外部機器」が「自動通報装置」であり、「移報装置で移報遮断機能を設定する場合」が「警報システムに設けられた警報器の炙り試験を行う場合」であり、「移報遮断中にある旨を示す移報遮断中報知」が「表示灯の点滅」であり、「警報器が作動中にある旨を示す警報器作動中報知」が「音声出力部の音声メッセージ」である場合について説明する。
【0067】
[実施形態の具体的内容]
移報装置について、より詳細に説明する。その内容については以下のように分けて説明する。
a.警報システム
b.警報器
b1.機能構成
b2.火災制御機能
c.移報装置
c1.機能構成
c2.移報制御機能
d.移報制御動作]
d1.移報遮断機能の設定状態で試験発報が復旧した場合の動作
d2.移報遮断機能の解除後に試験発報が復旧した場合の動作
d3.移報遮断機能の設定状態で真火災が発生した場合の動作
d4.待ち時間の継続中に真火災が発生した場合の動作
e.移報装置の制御動作
f.本発明の変形例
【0068】
[a.警報システム]
本実施形態の移報装置が設けられる警報システムについて、より詳細に説明する。当該説明にあっては、本実施形態の移報装置が用いられる警報システムを示した
図1を参照する。また、本実施形態における警報システムは、床面積が300平米未満の特定小規模施設、例えば高齢者や知的障害者の家事支援などを行うグループホーム等の施設に設置される無線式の警報器により構成される警報システムを例にとっている。
【0069】
図1に示すように、施設の部屋や廊下等の共有スペースに、火災による煙を検出して警報する無線式連動型の警報器10(10-1)~1(10-4)が設置され、更に、警報器10(10-1)~1(10-4)から送信された火災連動信号を受信して移報信号を出力する本実施形態の移報装置12が設けられ、移報装置12には外部機器として例えば電話回線16を介して消防機関等に自動通報を行う自動通報装置14が接続されている。なお、移報装置12に接続される外部機器は任意であり、自動通報装置12以外に、必要に応じて適宜の機器を接続することができる。
【0070】
警報器10(10-1)~10(10-4)は、火災等の連動信号を無線により相互に送受信する機能を備えている。また、警報器10(10-1)~10(10-4)は、同じチャンネル周波数を使用することにより連動グループを形成している。本実施形態で連動グループを形成する警報器の最大数は任意であるが、例えば15台となる。
【0071】
警報システムの連動グループは、警報器10(10-1)~10(10-4)と移報装置12で構成されており、連動グループを構成するため、設置前に警報器10(10-1)~10(10-4)と移報装置12をテーブル等に並べて行うグループ登録を行う。
【0072】
グループ登録の方法は任意であるが、例えば、テーブル等に並べた警報器10(10-1)~1(10-4)と移報装置12の電池電源をオンし、それぞれの登録スイッチ操作を行う。例えば警報器10(10-1)の登録スイッチ操作を行うと、警報器10(10-1)にアドレスA1が登録され、またアドレスA1が他の警報器10(10-2)~10(10-4)及び移報装置12に送信されて登録される。この登録操作を残りの警報器10(10-2)~10(10-4)及び移報装置12につき順次繰り返すことで、警報器10(10-1)~1(10-4)と移報装置12の各々に自己アドレスA1~A5が登録され、且つ連動関係にある他のアドレスが登録される。
【0073】
いま、警報器10(10-1)が設置された場所で火災が発生したとすると、警報器10(10-1)が火災による煙を検出し(火災発報し)、警報音と警報表示により連動元(火元)を示す火災警報を出力する。また火災を検出した警報器10(10-1)は他の警報器10(10-2)~1(10-4)及び移報装置12に対し、火災発生を示す火災連動信号を無線により送信する。他の警報器10(10-2)~1(10-4)は連動元の警報器10(10-1)からの火災連動信号を受信した場合に、警報音と警報表示により連動先を示す火災警報を出力する。
【0074】
移報装置12は、操作部に設けられたスイッチの設定操作と解除操作により移報遮断機能の設定と解除を行うことができ、通常の監視状態では、移報遮断機能が解除されており、連動元の警報器(10-1)からの火災連動信号を受信した場合に、移報信号を自動通報装置14に出力し、自動通報装置14を動作させて自動通報を行わせる。
【0075】
警報器10(10-1)~1(10-4)は火災警報の出力中に警報停止操作を行うと、自身の警報を停止すると共に警報停止連動信号を他の警報器に送信して警報停止動作を行わせる。また、火災を検出した警報器10(10-1)で火災復旧が検出されると、自身の警報を停止すると共に火災復旧信号を他の警報器10(10-2)~10(10-4)及び移報装置12に送信し、警報器10(10-2)~1(10-4)の警報停止動作を行わせ、移報装置12による移報信号の出力を停止させる。
【0076】
また、本実施形態の特定小規模施設用の警報システムは、定期的な点検が義務付けられており、擬似的な煙を発生する試験治具(煙試験器)を使用して試験発報させる炙り試験を行って火災発報(試験発報)させることで、正常に動作することを確認する。このように警報器10(10-1)~1(10-4)の炙り試験を行う場合には、移報装置12は、スイッチ操作により移報遮断機能が設定され、警報器10(10-1)~1(10-4)の試験発報による火災連動信号を受信しても、自動通報装置14に移報信号を出力しないようする。
【0077】
[b.警報器]
警報システムに設けられた警報器について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、警報器の機能構成を示した
図2を参照する。
【0078】
(b1.機能構成)
警報器の機能構成について、より詳細に説明する。
図2に示すように、警報器10(10-1)は制御プロセッサ18を備え、制御プロセッサ18に対しては、通信部20、検煙部22、テストスイッチ24、LEDを用いた表示灯26及びスピーカ28が設けられている。
図1に示した他の警報器10(10-2)~10(10-4)も同様となる。
【0079】
制御プロセッサ18には、CPU36が設けられ、CPU36からのバス44に、制御ロジック38、ROM40、RAM42が接続されている。なお、制御ロジック38はCPU36の制御処理に伴うバス制御などの各種のハードウェア機能を実現する。
【0080】
通信部20には通信プロセッサ30とアンテナ34が接続された無線通信部32が設けられている。無線通信部32は、他の警報器及び移報装置12との間で所定の通信プロトコルに従って火災等の連動信号を送受信する。この通信プロトコルは、日本国内の場合には、例えば426MHz帯の特定小電力無線局の標準規格として知られたSTD-30(特定小電力セキュリティシステム無線局の無線設備標準規格)に準拠する。
【0081】
426MHz帯の特定小電力セキュリティシステム無線局設備では、426.2500MHz~426.8375MHzの間に12.5kHzの周波数帯域幅を持つ48チャンネルが割り当てられており、何れかのチャンネル周波数を複数の警報器で構成する連動グループに割り当てて使用する。
【0082】
無線通信部32は通信プロセッサ30から出力された火災連動信号等のデータ信号をMSK変調した後にFM変調してアンテナ34から426MHz帯の割当チャンネル周波数の信号電波として送信する。
【0083】
また、無線通信部32は、アンテナ34による他の警報器が送信した信号電波を受信し、FM復調した後に、FSK復調を行い、更にビット判定を行って火災連動信号等のデータ信号を復調する。
【0084】
また、通信プロセッサ30は無線通信部32に指示し、例えば3日に1回の周期(72時間周期)で通信テストを行う。通信テストは、最初に72時間周期に達した警報器から通信テスト信号を送信し、他の全ての警報器及び移報装置から応答信号が受信された場合に正常終了とし、応答信号が受信されない送信先がある場合は異常終了とし、異常終了が所定回数連続した場合に通信エラーと判断して障害報知する。
【0085】
検煙部22は、公知の散乱光式検煙構造をもち、所定周期で赤外LEDを用いた発光部を間欠的に発光駆動し、フォトダイオードなどの受光部で受光した散乱光の受光信号を増幅し、煙濃度検出信号を出力する。
【0086】
テストスイッチ24は例えば押ボタンスイッチであり、通常監視状態でテストスイッチ24を押すと正常動作を示す所定のテストメッセージがスピーカ28から出力される。また、テストスイッチ24はスピーカ28からの音声と表示灯26の表示により火災警報が出力されているとき、警報停止スイッチとして機能し、テストスイッチ24を押すと火災警報が停止し、且つ、警報停止連動信号が他の警報器に送信される。
【0087】
表示灯26はLEDを使用しており、連動元を示す火災警報と連動先を示す火災警報で異なった表示、例えば、一方は点灯、他方は点滅又は明滅が行われる。
【0088】
スピーカ28は、テストメッセージ、連動元火災警報メッセージ、連動先火災警報メッセージ等を音声出力する。
【0089】
(b2.火災制御機能)
警報器の火災制御機能について、より詳細に説明する。CPU36にはROM40に記憶されたプログラムの実行により実現される火災制御部46の機能が設けられる。
【0090】
火災制御部46は、検煙部22から出力された煙濃度の検出信号をAD変換して読み込み、煙濃度が所定の火災判定条件を充足した場合に火災と判定し(火災発報し)、連動元の火災を示す火災警報を出力させる制御を行う。ここで、「火災判定条件を充足した場合」とは、煙濃度が所定の閾値以上又は閾値超えた場合、又は、煙濃度が所定の閾値以上又は閾値超えた状態が所定の蓄積時間継続した場合である。
【0091】
火災制御部46は、火災警報を出力させた場合、固有の発報番号を含む火災連動信号を生成し、通信部20に指示し、他の住戸の警報器へ火災連動信号を送信させる制御を行い、当該火災連動信号を受信した他の住戸の警報器で連動先を示す火災警報を出力させる。
【0092】
発報番号の形式は任意であるが、例えば、警報器の識別番号「XX」と発報回数「YY」を組み合わせた発報番号「XXYY」であり、警報器毎に固有の初期値が設定されており、火災を検出して復旧した後に、再度火災を検出すると、発報番号の発報回数「YY」が1つ増加される。また、火災検出が継続している場合は、所定時間、例えば13分を経過すると発報番号の発報回数「YY」は1つ増加される。このため火災信号を受信した側は、発報番号を調べることで、同じ警報器の火災検出の継続による火災連動信号であるか、別の警報器での火災検出による火災連動信号であるかを判断することができる。
【0093】
また、火災制御部46は、火災連動信号を送信した場合、他の警報器からの応答元アドレスを含む応答信号を受信しており、連動グループに属する他の全ての送信先から応答信号が受信される応答条件が充足された場合に正常終了とし、応答条件が充足されない場合は火災連動信号の再送信を行い、再送信を所定回数繰り返しても応答条件が充足されない場合は通信エラーとして障害報知する。
【0094】
また、火災制御部46は、同じ連動グループとなる住戸内の他の警報器が送信した火災連動信号を受信した場合、連動先を示す火災を出力させる制御を行う。火災制御部46は、他の警報器から火災連動信号を受信すると、自己アドレスを含む応答信号を送信する制御を行う。
【0095】
また、火災制御部46は、火災警報中のテストスイッチ24の操作による警報停止制御、検煙部22の煙濃度が閾値以下に下がる火災復旧制御についても、火災連動信号の場合と同様に、警報停止連動信号及び火災復旧信号の送信を行う。火災制御部36により送信される火災復旧信号には、その前に送信した火災連動信号に含めた発報番号を含めて送信する。また、火災制御部46は、他の警報器から警報停止連動信号又は火災復旧信号を受信すると、自己アドレスを含む応答信号を送信する制御を行い、送信元での送信正常終了の有無を判断可能とする。
【0096】
[c.移報装置]
本実施形態の移報装置について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、移報装置の機能構成を示した
図3を参照する。
【0097】
(c1.機能構成)
移報装置の機能構成について、より詳細に説明する。
図3に示すように、移報装置12は制御プロセッサ48を備え、制御プロセッサ48に対しては、通信部50、操作部として機能するテストスイッチ54、LEDを用いた表示灯56及び音声出力部として機能するスピーカ58が設けられている。
【0098】
制御プロセッサ48には、CPU66が設けられ、CPU66からのバス74に、制御ロジック68、ROM70、RAM72が接続されている。なお、制御ロジック68はCPU66の制御処理に伴うバス制御などの各種のハードウェア機能を実現する。
【0099】
通信部50には、通信プロセッサ60、アンテナ63が接続された無線通信部62及び移報出力部64が設けられている。無線通信部62は、所定の通信プロトコルに従って警報器から送信された火災連動信号、火災復旧信号、警報停止連動信号を受信する。通信プロセッサ60及び無線通信部62の詳細は、
図2の警報器10(10-1)の無線通信部32と基本的に同様となる。
【0100】
移報出力部64は通信プロセッサ60の指示に基づき移報信号を出力し、
図1に示した自動通報装置14を動作させる。移報出力部64の機能や構成は任意であるが、例えば、無電圧a接点回路であり、無電圧a接点信号を移報信号として出力する。
【0101】
操作部に設けられる1のスイッチとして機能するテストスイッチ54は例えば押ボタンスイッチであり、移報遮断機能が解除されている通常監視状態でテストスイッチ54を例えば6秒「長押し」すると、移報遮断機能の設定操作が検出され、移報装置12に移報遮断機能が設定される。また、移報装置12に移報遮断機能が設定された状態で、テストスイッチ54を例えば6秒「長押し」すると、移報遮断機能の解除操作が検出され、移報装置12の移報遮断機能が解除され通常監視状態となる。即ち、テストスイッチ54は移報遮断機能が解除された状態で長押し操作すると移報遮断機能が設定され、続いて、移報遮断機能が設定された状態で長押し操作すると移報遮断機能が解除されるものであり、長押し操作ごとに移報遮断機能の設定と解除が交互に繰り返されるものである。
【0102】
表示灯56はLEDを使用しており、移報遮断機能が解除されている通常監視状態でテストスイッチ54の長押し操作により移報遮断機能を設定すると、移報遮断機能の設定が継続しているあいだ、所定の周期で点滅し、移報遮断機能が設定されて移報遮断状態にある旨を示す移報遮断中報知を行う。移報遮断中報知を行う表示灯56の所定周期による点滅は、例えば2秒周期で0.01秒点灯、1.99秒消灯の点滅とし、これは2秒周期で瞬時点灯が繰り返される表示となる。
【0103】
スピーカ58は、音声出力部として機能し、図示しない音声増幅回路を含み、後述する警報器作動中報知を所定の音声メッセージにより繰り返し出力する。
【0104】
(c2.移報制御機能)
移報装置12の移報制御機能について、より詳細に説明する。
図3に示すCPU66にはROM70に記憶されたプログラムの実行により実現される移報制御部76の機能が設けられる。
【0105】
移報制御部76は、移報遮断機能が解除された状態(通常監視状態)でテストスイッチ54の長押し操作による移報遮断機能の設定操作が行われたことを検出した場合に移報遮断機能を設定し、火災連動信号を受信しても移報出力部64から移報信号を出力させないようにする制御を行う。
【0106】
また、移報制御部76は、移報遮断機能が設定された場合に、移報遮断機能の設定が継続しているあいだ、移報遮断状態にある旨を示す移報遮断中報知を行う。移報遮断中報知は任意であるが、例えば、表示灯56を所定周期で点滅させ、例えば、2秒周期の瞬時点灯を繰り返す。また、移報制御部76は、移報遮断機能が解除された場合に移報遮断中報知を停止させる。
【0107】
また、移報制御部76は、移報遮断機能が設定された移報遮断状態で、警報器から火災連動信号を受信した場合、当該火災連動信号の発報番号を含む受信履歴を生成してRAM72に記憶して保持する制御を行う。移報制御部76により保持された受信履歴は、その後、受信履歴と同じ発報番号を含む火災復旧信号の受信を検出した場合に保持が解除(消去)される。
【0108】
また、移報制御部76は、移報遮断機能が設定された移報遮断状態で、テストスイッチ54の長押し操作による移報遮断機能の解除操作が行われたことを検出した場合、移報遮断機能を解除し、火災連動信号の受信履歴を保持している場合には、移報信号の出力を保留して所定の待ち時間Tを設定し、待ち時間Tが経過した際に受信履歴が継続して保持されている場合には、通信部50の通信プロセッサ60に指示し、移報出力部64から移報信号を出力させる制御を行う。
【0109】
ここで、待ち時間Tは、前述(実施形態基本的な概念)したように、炙り試験により火災発報させた警報器から煙が抜けて復旧するまでの復旧時間を実験的に求め、この復旧時間に所定の余裕時間を加えた時間であり、具体的には1~2分程度の範囲に入る所定時間、例えば100秒(1分40秒)する。
【0110】
また、移報制御部76は、移報出力を保留している待ち時間Tが継続しているあいだ、警報器が作動中である旨を示す警報器作動中報知を行う。移報制御部76による警報器作動中報知は、スピーカ58から例えば「警報器が作動しています」とする音声メッセージを、所定の時間間隔で繰り返し出力させる。
【0111】
また、移報制御部76は、例えば「ピピッ 警報器が作動しています ピピッ」といった注意音と音声メッセージを組み合わせた音声出力を繰り返し出力させても良い。更に、移報制御部76による警報器作動中報知は、スピーカ58からの音声出力に加え、表示灯56を移報遮断状態にある旨を示す移報遮断中報知の周期とは異なる周期又はパターンで点滅又は明滅させるようにしても良い。
【0112】
また、移報制御部76は、待ち時間Tが継続しているあいだに、受信履歴の火災連動信号に対応する火災復旧信号が受信されて受信履歴の保持が解除された場合に、警報器作動中報知を停止させる。このため試験員などの関係者は、待ち時間Tが継続しているあいだの警報器作動中報知の停止から、移報出力が保留されている状態で炙り試験により火災発報した警報器が正常に復旧したことを知ることができる。
【0113】
また、移報制御部76は、待ち時間Tが継続しているあいだに、受信履歴の保持が解除されることなく待ち時間Tが経過した場合にも、警報器作動中報知を停止させる。この場合には、待ち時間Tの経過に伴い警報器作動中報知が停止したとき、移報出力部64から移報信号が出力される。このため試験員などの関係者は、待ち時間Tの経過したときの警報器作動中報知の停止から、火災発報している警報器からの火災連動信号に対応して移報信号が出力されたことを知ることができる。なお、待ち時間Tが経過して警報器作動中報知を停止したときに、移報信号の出力を示す音声メッセージとして、例えば「警報器が作動中です 移報信号を出力しました」を出力するようにしてもよい。
【0114】
このような移報制御部76の制御により、移報遮断機能を設定した状態で行っていた警報器の炙り試験中に真火災が発生していた場合、炙り試験の終了に伴い移報遮断機能を解除すると、火災連動信号の受信履歴の保持に基づき警報器が作動状態にある旨と待ち時間Tの残り時間を示す警報器作動中報知が行われ、真火災であることから火災復旧信号の受信により受信履歴の保持は解除されず、待ち時間Tが経過すると移報信号が出力され、移報遮断機能を設定して行っていた炙り試験中に発生した真火災に対し移報信号を迅速且つ確実に出力して自動通報等を行うことができる。
【0115】
また、移報制御部76は、スピーカ58からの音声出力により警報器作動中報知を行っている待ち時間Tが継続しているあいだに、別の警報器から新たな火災連動信号を受信すると、待ち時間Tが経過した場合に、通信部50の通信プロセッサ60に指示し、移報出力部64から移報信号を出力させる制御を行う。
【0116】
即ち、移報制御部76は、警報器作動中報知を行っている待ち時間Tが継続しているあいだに、受信履歴の発報番号と異なる新たな発報番号の火災連動信号を受信した場合に、真火災の検出に基づく新たな火災連動信号の受信と判断し、待ち時間Tが経過した場合に、通信部50の通信プロセッサ60に指示し、移報出力部64から移報信号を出力させる制御を行う。
【0117】
このため、警報器の炙り試験を終了して移報遮断機能を解除することで、警報器作動中報知が行われている待ち時間Tが継続しているあいだに、真火災による新たな火災連動信号を受信すると、待ち時間Tが経過した場合に移報信号が出力され、真火災に対し速やかに移報信号を出力して自動通報装置14による自動通報を行うことができる。
【0118】
また、移報制御部76は、スピーカ58からの音声出力により警報器作動中報知が行われている待ち時間Tが継続しているあいだに、受信履歴の発報番号と同じ発報番号の火災復旧信号を受信した場合には受信履歴の保持を解除し、待ち時間Tが経過しても移報信号を出力することなく、移報遮断機能が解除された通常監視状態に戻す制御を行う。
【0119】
このため、炙り試験による試験発報が復旧する前に移報遮断機能を解除しても、試験復旧に必要な時間を考慮した待ち時間Tを経過しないと移報信号が出力されず、それまでに試験復旧による火災復旧信号が受信されることで受信履歴の保持が解除されることで移報出力が行われず、誤って移報信号が出力されて外部機器を誤作動させてしまうことを確実に防止できる。
【0120】
[d.移報制御動作]
次に、移報装置による移報制御動作について、より詳細に説明する。
【0121】
(d1.移報遮断機能の設定状態で試験発報が復旧した場合の動作)
まず移報装置の移報遮断機能の設定状態で試験発報が復旧した場合の動作について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、移報遮断機能の設定状態で試験発報による火災連動信号を受信し、試験終了により移報遮断機能を解除する前に火災復旧信号を受信した場合の動作を示した
図4のタイムチャートを参照する。ここで、
図4(A)はテストスイッチ54の操作を示し、
図4(B)は火災連動信号の受信を示し、
図4(C)は火災復旧信号の受信を示し、
図4(D)は火災連動信号の受信履歴の保持を示し、
図4(E)は移報遮断機能の設定又は解除の状態を示し、
図4(F)は表示灯56による移報遮断中報知を示し、
図4(G)はスピーカからの音声出力による警報器作動中報知を示し、
図4(H)は移報信号の出力を示す。
【0122】
図1の警報システムに設けられた警報器10(10-1)~10(10-4)を定期点検に際して炙り試験を行う場合、
図4に示すように、試験員が移報装置12のテストスイッチ54の長押し操作すると、時刻t1でテストスイッチ54の長押し操作による移報遮断機能の設定操作が検出され、移報遮断機能が設定されると共に、表示灯56が所定周期で点滅して移報遮断状態にある旨を示す移報遮断中報知が行われる。
【0123】
時刻t1で移報遮断状態となった後の時刻t2で炙り試験により動作した警報器からの火災連動信号の受信が検出されると、受信した火災連動信号の発報番号を含む受信履歴が生成され、RAMなどのメモリに記憶することで保持される。
【0124】
時刻t2の火災連動信号の受信は、最後の警報器の炙り試験により送信された火災連動信号であり、炙り試験の煙が抜け切ると警報器は同じ発報番号を含む火災復旧信号を送信し、火災復旧信号の受信が時刻t3で検出されると、時刻t2の火災連動信号の受信で保持されている受信履歴の保持が解除(消去)される。
【0125】
続いて、試験員は点検終了に伴いテストスイッチ54を再度長押し操作し、これにより時刻t4で解除操作が検出され、このとき火災連動信号の受信履歴の保持はないことから、移報出力を保留するための待ち時間Tの設定を行うことなく、また、警報器が作動状態にある旨及び待ち時間の残り時間を示す警報器作動中報知を行うことなく、移報遮断機能が解除されて通常状態となる。
【0126】
(d2.移報遮断機能の解除後に試験発報が復旧した場合の動作)
次に、移報遮断機能の解除後に試験発報が復旧した場合の動作について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、移報遮断状態で試験発報による火災連動信号を受信し、試験終了により移報遮断機能を解除して設定された待ち時間のあいだに火災復旧信号を受信した場合の動作を示した
図5のタイムチャートを参照する。なお、
図5(A)~(H)は
図4(A)~(H)に対応する。
【0127】
図5において、時刻t1でテストスイッチ54の長押し操作による移報遮断機能の設定操作が検出されて移報遮断機能が設定され、表示灯56が所定周期で点滅して移報遮断状態を示す移報遮断中報知が行われ、時刻t2で炙り試験により動作した警報器からの火災連動信号の受信が検出されると、受信した火災連動信号の発報番号を含む受信履歴が生成され、メモリに記憶されることで保持される。この点は
図4と同じであるが、
図5にあっては、移報遮断機能の設定状態で試験発報した警報器から煙が抜けきらず、移報遮断機能を解除した後に、警報器から煙が抜けて復旧することで火災復旧信号を受信した点で、相違している。
【0128】
即ち、
図5において、試験員が点検終了に伴いテストスイッチ54を再度長押し操作し、これにより時刻t3で移報遮断機能の解除操作が検出され、移報遮断機能が解除される。このとき移報遮断機能の設定状態で火災連動信号の受信履歴の保持が行われていることから、移報信号の出力を保留するために待ち時間Tが設定され、スピーカ58からの音声出力により、時刻t3から警報器作動中報知が開始される。
【0129】
試験員は、移報装置12からの音声出力による警報器作動中報知を聞くことで、最後に試験発報した警報器が復旧していないことを知り、警報器の復旧を待つことになる。炙り試験により警報器に流入している煙は、ある程度の時間が経過すると抜け切ることで、待ち時間Tが経過する前に火災検出が復旧し、火災復旧信号を送信する。
【0130】
移報装置12は待警報器作動中報知を行っている待ち時間Tが継続しているあいだの時刻t4で火災復旧信号の受信を検出し、火災復旧信号の発報番号は時刻t3で保持した火災連動信号の受信履歴の発報番号と同じであることから、受信履歴の保持を解除(消去)し、スピーカ58からの音声出力による警報器作動中報知が途中で停止し、待ち時間Tを経過しても移報信号が出力されることはない。これにより点検員は、最後に試験発報した警報器の復旧を確認することができ、点検作業を終了することになる。
【0131】
(d3.移報遮断機能の設定状態で真火災が発生した場合の動作)
次に、移報遮断機能の設定状態で真火災が発生した場合の移報装置の動作について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、試験中に真火災による火災連動信号を受信し、試験終了で移報遮断機能を解除してから待ち時間が経過した場合に移報信号を出力させる動作を示した
図6のタイムチャートを参照する。なお、
図6(A)~(H)は
図4(A)~(H)に対応する。
【0132】
図6に示すように、時刻t1でテストスイッチ54の長押し操作による移報遮断機能の設定操作が検出され、移報遮断機能の設定により表示灯56が所定周期で点滅して移報遮断状態を示す移報遮断中報知が行われ、その後、警報器の炙り試験が繰り返えされ、最後の警報器の炙り試験が行われて復旧した後に真火災が発生し、真火災を検出した警報器から火災連動信号の受信が時刻t2で検出されたとする。この場合、時刻t2で受信検出した火災連動信号の発報番号を含む受信履歴が生成され、メモリに記憶されることで保持される。
【0133】
試験員は、点検終了に伴いテストスイッチ54を再度長押し操作し、これにより時刻t3で移報遮断機能の解除操作が検出され、移報遮断機能が解除される。このとき移報遮断機能の設定状態で受信された火災連動信号の受信履歴が保持されていることから、移報遮断機能が解除に伴い待ち時間Tが設定され、また、スピーカ58からの音声出力により警報器が作動状態にある旨及び待ち時間の残り時間を示す警報器作動中報知が行われる。
【0134】
試験員は、スピーカ58からの音声出力による警報器作動中報知を聞くことで、最後に炙り試験を行った警報器が復旧していないと判断し、復旧を待つことになるが、時刻t2で受信検出された火災連動信号は真火災によることから、火災復旧信号は受信されない。
【0135】
このようなスピーカ58からの音声出力による警報器作動中報知が継続し、時刻t4で待ち時間Tが経過すると、火災連動信号の受信履歴の保持が継続していることから、移報信号がLレベルからHレベルに立ち上がることで出力され、例えば自動通報装置を動作して自動通報を行うことができる。
【0136】
このため炙り試験中に真火災が発生した状態で移報遮断機能を解除しても、警報器作動中報知が待ち時間Tに亙り継続すると移報信号が出力され、真火災に対し迅速且つ確実に移報信号を出力して対処することができる。
【0137】
(d4.待ち時間の継続中に真火災が発生した場合の動作)
次に、移報遮断機能の解除に伴う待ち時間Tが継続しているあいだに真火災が発生した場合の移報装置の動作について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、試験終了で移報遮断機能を解除した後の待ち時間のあいだに、真火災による火災連動信号を受信した場合の動作を示した
図7のタイムチャートを参照する。なお、
図7(A)~(H)は
図4(A)~(H)に対応する。
【0138】
図7に示すように、時刻t1でテストスイッチ54の長押し操作による移報解除機能の設定操作が検出され、移報遮断機能の設定により表示灯56が第1周期で点滅して移報遮断を示す旨の移報遮断中報知が行われ、最後の警報器の炙り試験による火災連動信号の受信が時刻t2で検出され、火災連動信号の発報番号を含む受信履歴が生成され、メモリに記憶されることで保持される。
【0139】
試験員は、点検終了に伴いテストスイッチ54を再度長押し操作し、これにより時刻t3で移報遮断機能の解除操作が検出され、移報受信機能が解除される。このとき、移報遮断状態で受信された火災連動信号の受信履歴が保持されていることから、移報出力を保留するために待ち時間Tが設定され、スピーカ58からの音声出力により、警報器が作動状態にある旨を示す警報器作動中報知が行われる。
【0140】
このように時刻t3からの待ち時間Tが継続して音声出力により警報器作動中報知が行われているあいだに、真火災の発生により動作した警報器からの火災連動信号が受信されたとすると、受信した火災連動信号の発報番号は、時刻t2で受信して保持した受信履歴の試験による火災連動信号の発報番号とは相違していることから、発報番号の相違に基づき時刻t4で新たな火災発報信号の受信と判断し、待ち時間Tの経過を待つことなく、移報出力部64からの移報信号がLレベルからHレベルに立ち上がることで出力され、例えば自動通報装置14を動作して自動通報を行うことができる。
【0141】
このため炙り試験が終了して移報遮断を解除した後の待ち時間が継続して警報器作動中報知を行っているときに真火災が発生しても、真火災を確実に検出し、速やかに移報信号を出力して対処することができる。
【0142】
なお、時刻t4で移報信号を出力した後の時刻t5で火災復旧信号が受信され、火災復旧信号の発報番号は時刻t2で保持した受信履歴の火災連動信号の発報番号に一致していることから、受信履歴の保持を解除し、併せて、待ち時間Tが経過する時刻t6より前となる途中で警報器作動中報知を停止しており、この点は
図5の場合と同様となる。
【0143】
[e.移報装置の制御動作]
次に、移報装置の制御動作について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、
図3の移報装置による制御動作を示した
図8のフローチャート及び
図8に続く移報装置の制御動作を示した
図9のフローチャートを参照する。また、
図8及び
図9の移報装置の制御動作は、
図3に示した移報装置12の移報制御部76による制御動作となる。
【0144】
図8に示すように、移報装置12が電源投入により動作すると、移報制御部76はステップS1で移報遮断機能を解除としてステップS2に進む。移報制御部76はステップS2で火災を検出して動作した警報器から火災連動信号の受信を判別するとステップS3に進み、ステップS1で移報遮断機能が解除されていることから、移報出力部64に指示して移報信号を出力し、自動通報装置14を動作して自動通報を行わせる。
【0145】
また、移報制御部76は、ステップS4で例えば警報器の炙り試験に伴い移報遮断機能を設定するためのテストスイッチ54の長押し操作を判別するとステップS5に進み、移報遮断機能を設定し、続いて、ステップS6で表示灯56を所定周期で点滅し、移報遮断状態にある旨を示す移報遮断中報知を行う。
【0146】
移報制御部76は、移報遮断機能が設定状態にあるとき、ステップS7で炙り試験により発報した警報器からの火災連動信号の受信を判別すると、ステップS8で受信した火災連動信号の発報番号を含む受信履歴を生成し、メモリに記憶して保持する。
【0147】
続いて、移報制御部76はステップS9で火災復旧信号の受信の有無を監視しており、ステップS9で火災復旧信号の受信を判別するとステップS10に進み、火災復旧信号に含まれる発報番号がステップS8で保持した受信履歴の発報番号に一致することを条件に、ステップS8で保持した受信履歴の保持を解除して消去する。
【0148】
続いて、移報制御部76は、ステップS11でテストスイッチ54の長押し操作を監視しており、炙り試験の終了に伴うテストスイッチ54の長押し操作を判別するとステップS12に進み、移報遮断機能を解除する。
【0149】
続いて、移報制御部76は、
図9のステップS13に進み、移報遮断中に火災連動信号の受信履歴が保持されているか否か判別し、火災連動信号の受信履歴が保持されている場合にはステップS14に進み、待ち時間Tが設定されたタイマーをスタートし、続いて、ステップS15に進み、スピーカ58からの音声出力により警報器が作動状態にある旨及び待ち時間の残り時間を示す警報器作動中報知を行う。
【0150】
移報制御部76は、ステップS15で行った警報器作動中報知の継続中に、ステップS16で火災復旧信号の受信を判別すると、そのとき保持している受信履歴の発報番号と受信した火災復旧信号の発報番号が一致したことを条件にステップS20に進み、警報器作動中報知を停止して
図8のステップS2に戻る。なお、警報器作動中報知の停止に合わせてタイマーを停止してもよい。
【0151】
また、移報制御部76は、ステップS16で火災復旧信号の受信を判別しない場合はステップS17に進み、移報遮断機能の設定状態で保持した受信履歴の発報番号と同じ発報番号の火災連動信号を受信した場合は、新たな火災連動信号の受信でないことを判別してステップS18に進む。このとき受信履歴は再度受信した火災連動信号の発報番号を含む受信履歴に更新される。
【0152】
ステップS18で待ち時間Tの経過を判別するとステップS19に進み、火災連動信号の受信履歴が保持されていることから、移報出力部64に指示して移報信号を出力させ、続いてステップS20で警報器作動中報知を停止した後に
図8のステップS2に戻り、火災連動信号の受信待機状態となる。
【0153】
また、ステップS17で移報遮断機能の設定状態で保持した受信履歴の発報番号と異なる発報番号の火災連動信号を受信した場合は、新たな火災連動信号の受信と判別してステップS19に進み、待ち時間Tの経過を待つことなく、移報出力部64に指示して移報信号を出力させ、続いてステップS20で警報器作動中報知を停止した後に
図8のステップS2に戻り、火災連動信号の受信待機状態となる。
【0154】
[f.本発明の変形例]
(待ち時間継続中の移報信号出力操作)
上記の実施形態の移報装置12に設けられたテストスイッチ54は、移報遮断機能の解除に伴い待ち時間Tが設定され、スピーカ58からの音声出力により警報器が作動状態にある旨を示す警報器作動中報知を行っているあいだ、移報出力操作スイッチとして機能し、テストスイッチ54を通常の操作である短押し操作すると、移報信号を出力する制御を行うようにしても良い。
【0155】
このためスピーカ58からの音声出力による警報器作動中報知のあいだに、試験員等の関係者が真火災に気づいた場合には、テストスイッチ54を短押し操作することで、待ち時間Tの経過を待つことなく移報信号を強制的に出力して自動通報装置14等の外部機器を作動させることができる。
【0156】
(警報器作動中報知)
上記の実施形態は、警報器作動中報知として警報器が作動状態にある旨を示す音声メッセージとして、例えば「警報器が作動しています」を繰り返し出力するようにしているが、これに加え、待ち時間Tの残り時間を含めるようにしてもよい。例えば、警報器作動中報知として「警報器が作動しています 残り待ち時間は〇〇秒です」とする音声メッセージを繰り返し出力する。このため関係者は、警報器作動中報知から移報出力が行われるまでの残り時間を知ることで、移報信号の出力に備えることを可能とする。
【0157】
(移報遮断中報知と警報器作動中報知)
上記の報知は表示灯56を所定周期で点滅して移報遮断機能が設定状態にある旨を示す移報遮断中報知を行っているが、移報遮断中報知は、表示灯56の点滅以外に、スピーカ58からの音声出力と組み合わせて行うようにしても良い。
【0158】
(親子方式)
上記の実施形態は、警戒区域内に複数の警報器を設置して連動グループを形成する場合、親機/子機の区別が無くそれぞれの警報器が相互に通信するものであるが、親機と複数の子機を設けて連動グループを形成し、グループの子機として移報装置を設けるようにしても良い。
【0159】
(警報器)
上記の実施形態は、火災を検知して警報する無線式連動型の警報器を用いた警報システムに設けられた移報装置を例にとるものであったが、警報器以外の無線式の火災警報器、ガス漏れ警報器、CO警報器、各種の防犯用警報器を配置した警報システムやそれら警報器を複合的に含むシステムに移報装置を設ける場合についても同様に適用できる。
【0160】
また、上記の実施形態は無線式連動型の警報器にセンサ部と警報出力処理部を一体に設けた場合を例にとるが、他の実施形態として、センサ部と警報出力処理部を別体とした無線式連動型の警報器を用いた警報システムの移報装置であっても良い。
【0161】
また、上記の実施形態は移報装置と自動通報装置を別体に設けた場合を例にとるが、一体の機器として構成されていてもよい。例えば、一体の機器の中に、移報装置に相当する機能部と、自動通報装置に相当する機能部が存在し、移報装置に相当する機能部から自動通報装置に相当する機能部に信号を出力するものであるように構成するようにしてもよい。
【0162】
(その他)
また、本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0163】
10(10-1)~10(10-4):警報器
12:移報装置
14:自動通報装置
16:電話回線
18,48:制御プロセッサ
20,50:通信部
22:検煙部
24,54:テストスイッチ
26,56:表示灯
28,58:スピーカ
30,60:通信プロセッサ
32,62:無線通信部
36,66:CPU
38,68:制御ロジック
40,70:ROM
42,72:RAM
44,74:バス
46:火災制御部
64:移報出力部
76:移報制御部