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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137292
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20230922BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
F02D29/02 321B
F02D29/02 321A
F02D45/00 360A
F02D45/00 362
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043427
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】澤田 徹
【テーマコード(参考)】
3G093
3G384
【Fターム(参考)】
3G093AA01
3G093AA07
3G093BA14
3G093CA02
3G093CA03
3G093DA01
3G093DA04
3G093DA05
3G093EA02
3G093FA07
3G384AA01
3G384AA03
3G384AA28
3G384AA29
3G384BA02
3G384CA02
3G384CA03
3G384DA04
3G384EA30
3G384ED06
3G384ED14
3G384EE31
3G384FA28Z
3G384FA56Z
(57)【要約】
【課題】冷却水温と油温との間に温度差があっても、フリクショントルクを正確に補正することが可能な内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関1と、内燃機関1の冷却水温を取得する水温取得手段2と、内燃機関1の油温を取得する油温取得手段3と、前記冷却水温に基づいて、予め記憶されたトルクマップから内燃機関1のフリクショントルクPfOT-BASEを導出するトルク導出手段4と、前記冷却水温と前記油温の差に基づいて、フリクショントルクPfOT-BASEを補正した補正フリクショントルクPfOTを算出するトルク補正手段5と、を有する構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
前記内燃機関の冷却水温を取得する水温取得手段と、
前記内燃機関の油温を取得する油温取得手段と、
前記冷却水温に基づいて、予め記憶されたトルクマップから前記内燃機関のフリクショントルクを導出するトルク導出手段と、
前記冷却水温と前記油温の差に基づいて、前記フリクショントルクを補正した補正フリクショントルクを算出するトルク補正手段と、
を有する内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記トルク補正手段は、前記フリクショントルクに補正係数を乗ずることによって前記補正フリクショントルクを算出し、前記冷却水温から前記油温を除した温度差が大きくなるほど前記補正係数を単調増加させる
請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記補正係数は、前記温度差が正のときは1より大きく、前記温度差が0のときは1であり、前記温度差が負のときは0以上1未満の範囲である
請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記内燃機関の回転数を取得する回転数取得手段をさらに有し、
取得された前記回転数に応じて、前記温度差に対する前記補正係数の大きさを変更する
請求項2または3に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記内燃機関の暖機が完了したと判断されたときに、前記トルク補正手段の使用を停止して、前記トルク導出手段で導出したフリクショントルクを前記内燃機関の制御に適用する一方で、前記暖機の完了後に前記内燃機関が車両の制御に基づいて停止し、さらに再始動したときに、前記トルク補正手段の使用を再開して、前記補正フリクショントルクを算出して前記内燃機関の制御に適用する
請求項1から4のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関(以下、エンジンと称する。)の制御装置においては、従来、下記(1)式に示すように、エンジンの燃焼によって得られる燃焼トルクPから、暖機時フリクショントルクPfSTD、および、補正フリクショントルクP’fOT(油温補正分)を除することによって、エンジンの実質的なアウトプットトルクPOPTを算出している。暖機時フリクショントルクPfSTDは、主にポンプ損失トルクやメカニカルロスに起因するトルクであって、補正フリクショントルクP’fOTは、油温に基づく潤滑油の粘度変化や金属などの膨張に起因する補正項である。
OPT=P-(PfSTD+P’fOT) (1)
【0003】
この補正フリクショントルクP’fOTは、エンジンの回転数と冷却水温に基づいて、予め記憶されたトルクマップから導出されるのが一般的である。ところが、冷却水温と油温は異なる昇降温特性を示すことがあり、この場合、冷却水温に基づいて決定した補正フリクショントルクP’fOTと実際に必要な補正量との間に誤差が生じることがある。
【0004】
例えば、図6に一例として示すように、エンジン始動時からの冷却水温と油温の変化をみると、冷却水温は比較的速やかに暖機温度Tまで上昇してサーモスタットによる制御が行われる一方で、油温は水温に比べて温度上昇に遅れが生じることがある。この場合、冷却水温に基づいて補正フリクショントルクP’fOTを導出してエンジントルクを決定すると、実際には油温が低くフリクショントルクが大きいため、エンジンの実質的なアウトプットトルクが不足するおそれがある。このように、冷却水温と油温が異なることに起因する問題は、ハイブリッド車両において電気自動車としての走行後にエンジンを再始動したとき(冷却水温は低いが油温は高い)や、エンジンを冷態始動したとき(冷却水温は高いが油温は低い)などに顕著となる。
【0005】
冷却水温と油温が異なることに起因する問題を解消するために、例えば下記特許文献1においては、エンジン冷却水温に応じてエンジンフリクショントルクを算出するためのマップが予め記憶されたシステムにおいて、予め記憶された始動時の基準エンジン回転数と、始動後の実エンジン回転数との回転数差を検出し、その回転数差に応じてフリクショントルクマップ値に補正を加えている(特許文献1の段落0024~0027などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-97347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に係る構成においては、始動時の基準エンジン回転数と始動後の実エンジン回転数との回転数差からフリクショントルクマップ値に補正を加えているが、冷却水温と油温が異なるときには、基準エンジン回転数から実エンジン回転数が一時的にずれるのは不可避であるため、安定的なトルク制御の点では問題がある。
【0008】
そこで、この発明は、冷却水温と油温との間に温度差があっても、フリクショントルクを正確に補正することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、この発明においては、
内燃機関と、
前記内燃機関の冷却水温を取得する水温取得手段と、
前記内燃機関の油温を取得する油温取得手段と、
前記冷却水温に基づいて、予め記憶されたトルクマップから前記内燃機関のフリクショントルクを導出するトルク導出手段と、
前記冷却水温と前記油温の差に基づいて、前記フリクショントルクを補正した補正フリクショントルクを算出するトルク補正手段と、
を有する内燃機関の制御装置を構成した。
【0010】
この構成においては、
前記トルク補正手段は、前記フリクショントルクに補正係数を乗ずることによって前記補正フリクショントルクを算出し、前記冷却水温から前記油温を除した温度差が大きくなるほど前記補正係数を単調増加させるのが好ましい。
【0011】
この構成においては、
前記補正係数は、前記温度差が正のときは1より大きく、前記温度差が0のときは1であり、前記温度差が負のときは0以上1未満の範囲であるのが好ましい。
【0012】
この構成においては、
前記内燃機関の回転数を取得する回転数取得手段をさらに有し、
取得された前記回転数に応じて、前記温度差に対する前記補正係数の大きさを変更するのが好ましい。
【0013】
この構成においては、
前記内燃機関の暖機が完了したと判断されたときに、前記トルク補正手段の使用を停止して、前記トルク導出手段で導出したフリクショントルクを前記内燃機関の制御に適用する一方で、前記暖機の完了後に前記内燃機関が車両の制御に基づいて停止し、さらに再始動したときに、前記トルク補正手段の使用を再開して、前記補正フリクショントルクを算出して前記内燃機関の制御に適用するのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
この発明では、冷却水温に基づいて導出した内燃機関のフリクショントルクを冷却水温と油温の差に基づいて補正するので、例えば、ハイブリッド車両において電気自動車としての走行後にエンジンを再始動したときや、エンジンを冷態始動したときなどのように、冷却水温と油温との間に温度差がある場合でも、フリクショントルクを正確に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明に係る内燃機関の制御装置の一実施形態を示すブロック図
図2】水温とフリクショントルクとの関係を示す図
図3】温度差と補正係数との関係を示す図
図4】モータ走行からエンジン走行に切り替わるときの冷却水温および油温の変化を示す図
図5】冷態始動時における冷却水温および油温の変化を示す図
図6】エンジン始動時の冷却水温と油温の変化を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明に係る内燃機関の制御装置(以下、制御装置と略称する。)の一実施形態を模式的に図1に示す。この制御装置は、内燃機関1(以下においてはエンジンと称し、内燃機関1と同じ符号を付する。)、水温取得手段2、油温取得手段3、トルク導出手段4、および、トルク補正手段5を主要な構成要素としている。
【0017】
この制御装置は、下記(2)式に示すように、エンジン1の燃焼によって得られる燃焼トルクPから、暖機時フリクショントルクPfSTD、および、補正フリクショントルクPfOTを除することによって、エンジン1の実質的なアウトプットトルクPOPTを算出している。暖機時フリクショントルクPfSTDは、主にポンプ損失トルクやメカニカルロスに起因するトルクであって、補正フリクショントルクPfOTは、油温に基づく潤滑油の粘度変化や金属などの膨張に起因する補正項である。
OPT=P-(PfSTD+PfOT) (2)
【0018】
エンジン1には、その回転数を取得するための回転数取得手段6が設けられている。以下においては、ガソリンエンジンを備えたハイブリッド車両、特に外部充電または外部給電が可能なプラグインハイブリッド車両(PHEV)を前提に説明する。なお、この制御装置は、ハイブリッド車両に限定されず、一般的なガソリンエンジン車両やディーゼルエンジン車両など、内燃機関を備えた車両に広く適用することができる。
【0019】
水温取得手段2は、エンジン1を冷却する冷却水の温度を取得するための手段であって、この実施形態では水温計を採用している。
【0020】
油温取得手段3は、エンジン1を潤滑する潤滑油の温度を取得するための手段であって、この実施形態では油温計を採用している。
【0021】
トルク導出手段4は、冷却水温に基づいて、車両の制御部(図示せず)に予め記憶されたトルクマップから、エンジン1のフリクショントルクPfOT-BASEを導出する。このトルクマップは、冷却水温およびエンジン回転数と、フリクショントルクPfOT-BASEとの関係をマップにしたものである。このフリクショントルクPfOT-BASEは、図2に示すように、冷却水温(すなわち油温)が低いほど大きく、冷却水温が高いほど小さくなる(0に近付く)特性を有する。このトルクマップは、冷却水温と油温がほぼ一致していることを前提としている。
【0022】
トルク補正手段5は、冷却水温と油温の差に基づいてフリクショントルクPfOT-BASEを補正した補正フリクショントルクPfOTを算出する。この補正フリクショントルクPfOTは、フリクショントルクPfOT-BASEに補正係数KOTを乗ずることによって、すなわち、下記の(3)式によって算出される。
fOT=KOT×PfOT-BASE (3)
【0023】
上記の(2)式および(3)式から、エンジン1の実質的なアウトプットトルクPOPTは下記の(4)式のように表記することができる。
OPT=P-(PfSTD+KOT×PfOT-BASE) (4)
【0024】
補正係数KOTは、図3に示すように、冷却水温から油温を除した温度差ΔTが大きくなるほど単調増加するように決定される。これは、温度差ΔTが大きくなるほど冷却水温よりも油温の低下度合いが大きく、冷却水温に基づいて導出したフリクショントルクPfOT-BASEよりも実際のフリクショントルクが増大するため、冷却水温に基づいて導出したフリクショントルクPfOT-BASEと実際のフリクショントルクとの差分に対応する大きな補正が必要となるためである。
【0025】
なお、ここでいう単調増加とは、温度差ΔTが大きくなるのに伴って補正係数KOTが減少さえしなければよい、ということを意味する広い概念であって、温度差ΔTが大きくなるほど補正係数KOTが常に大きくなることのみならず、温度差ΔTが大きくなった際に補正係数KOTが一部の温度差範囲内で一定値となることも含む。
【0026】
この実施形態では、補正係数KOTを温度差ΔTが正(冷却水温が油温よりも高い)のときは1より大きく、温度差ΔTが0(冷却水温と油温が等しい)のときは1であり、温度差ΔTが負(冷却水温が油温よりも低い)のときは0以上1未満の範囲である、指数関数的な値としている。なお、図3で示す温度差ΔTと補正係数KOTの関係は例示であって、温度差ΔTが正の範囲において、温度差ΔTの大きさに比例して補正係数KOTを増加させることもできる。また、温度差ΔTが負の範囲において、補正係数KOTを0以上1未満の範囲の一定値とすることもできる。
【0027】
この制御装置の適用例について説明する。エンジン1とモータ(図示せず)が併設されたハイブリッド車両においては、エンジン1の駆動によるエンジン走行とモータの駆動によるモータ走行が、車両の走行状態(アクセルの踏み込み量、負荷、車速など)に基づいて適宜切り替わる。エンジン走行においては、冷却水温および油温ともに高い状態となっている。ここで、エンジン走行からモータ走行に切り替わると、例えば図4に示すように、冷却水の温度は大きく低下する一方で、潤滑油の温度は冷却水の温度に比べて低下し難く、暖機温度Tに近い状態を維持している。
【0028】
ここで、モータ走行からエンジン走行に切り替わると、水温取得手段2で取得した冷却水温に基づいて、トルク導出手段4は、予め記憶されたトルクマップからエンジン1のフリクショントルクPfOT-BASEを導出する(図4中に一点鎖線で示すPfOTを参照)。ところが、トルク導出手段4が導出したフリクショントルクPfOT-BASEは、冷却水温と油温がほぼ一致していることを前提としているため、モータ走行からエンジン走行に切り替わった後のように、冷却水温が油温よりも低い場合には、実際の油温(高い油温)に対し過大なフリクショントルクPfOT-BASEを導出していることとなる。この過大なフリクショントルクPfOT-BASEに対する補正を何ら行わない場合、エンジン1は、所定のアウトプットトルクPOPTを得るために、この過大なフリクショントルクPfOT-BASEに対応する燃焼トルクPを出力してしまう。
【0029】
そこで、この制御装置においては、トルク補正手段5が、トルク導出手段4によって導出されたフリクショントルクPfOT-BASEを温度差ΔTに基づいて補正した補正フリクショントルクPfOTを上記の(3)式によって算出することで、冷却水温が油温取得手段3で取得した油温よりも低いことに起因して導出された過大なフリクショントルクPfOT-BASEを補正している。具体的には、冷却水温が油温よりも低い場合、その温度差ΔTは負の値となり、図3に示した温度差ΔTと補正係数KOTの関係に基づいて、補正係数KOTは0以上1未満の値となる。導出されたフリクショントルクPfOT-BASEにこの補正係数KOTを乗ずると、元のフリクショントルクPfOT-BASE図4中に一点鎖線で示すグラフを参照)よりも小さい値の補正フリクショントルクPfOTが算出される(図4中に実線で示すPfOTを参照)。このように算出された補正フリクショントルクPfOTをエンジン1の制御に適用することで、その時点の冷却水温および油温に適応した大きさのアウトプットトルクPOPTを発生させることができる。
【0030】
また、エンジン1を冷態始動(特に氷点下の環境下でのエンジン始動)したときは、例えば図5に示すように、冷却水温は暖機温度Tまで比較的速やかに上昇するのに対して、油温は冷却水温よりも上昇が遅れる傾向がある。ここで、水温取得手段2で取得した冷却水温に基づいて、トルク導出手段4が予め記憶されたトルクマップからエンジン1のフリクショントルクPfOT-BASEを導出すると、そのフリクショントルクPfOT-BASEは、実際の油温(低い油温)に対して過小なフリクショントルクPfOT-BASEを導出していることとなる。この過小なフリクショントルクPfOT-BASEに対する補正を何ら行わない場合、エンジン1に失火などの不具合が生じることがある。
【0031】
冷却水温が油温よりも高い場合、その温度差ΔTは正の値となり、図3に示した温度差ΔTと補正係数KOTの関係に基づいて、補正係数KOTは1よりも大きい値となる。導出されたフリクショントルクPfOT-BASEにこの補正係数KOTを乗ずると、元のフリクショントルクPfOT-BASEよりも大きい値の補正フリクショントルクPfOTが算出される。このように算出された補正フリクショントルクPfOTをエンジン1の制御に適用することで、エンジン1の失火などの不具合を防止することができる。
【0032】
このように、温度差ΔTが正負いずれの場合にも図3に基づいて補正フリクショントルクPfOTを算出することができるため、例えば、ハイブリッド車両におけるモータ走行からエンジン走行への切り替え時とエンジンの冷態始動時とでトルクマップを切り替える必要がない。このため、補正フリクショントルクPfOTの算出に伴う制御の複雑さを低減することができる。
【0033】
この補正係数KOTは、回転数取得手段6で取得されたエンジン1の回転数に応じて、温度差ΔTに対する大きさを変更することもできる。具体的には、図3中に矢印で示すように、エンジン1が高回転のときは温度差ΔTに対する補正係数KOTの大きさを小さくし(矢印HRを参照)、エンジン1が低回転のときは温度差ΔTに対する補正係数KOTの大きさを大きく(矢印LRを参照)することができる。
【0034】
エンジン1が低回転のときは油温が上昇し難く、補正フリクショントルクPfOTを大きく設定したいため温度差ΔTに対する補正係数KOTを大きくするが、エンジン1が高回転のときは比較的油温が上昇し易く(例えば100℃を超える)、温度差ΔTに対する補正係数KOTが大きいと補正フリクショントルクPfOTが適切な値から外れる可能性がある。このように、回転数に応じて温度差ΔTに対する補正係数KOTの大きさを変更することにより、低回転から高回転までの全領域に亘って、適切な大きさの補正フリクショントルクPfOTを算出することができる。
【0035】
また、この制御装置においては、エンジン1の暖機が完了したと判断されたとき(例えば、油温が冷却水温を上回ったとき)に、トルク補正手段5の使用を停止して、トルク導出手段4で導出したフリクショントルクPfOT-BASEをエンジン1の制御に適用する一方で、暖機の完了後にエンジン1が車両の制御に基づいて停止(例えば、エンジン走行からモータ走行へと切り替わったときや、エンジン走行中にアイドリングストップしたときなど)し、さらに再始動したときに、トルク補正手段5の使用を再開して、トルク導出手段4で導出したフリクショントルクPfOT-BASEから補正フリクショントルクPfOTを算出してエンジン1の制御に適用することができる。
【0036】
エンジン1の暖機が完了したときは冷却水温よりも油温が高いため、補正フリクショントルクPfOTを算出する必要性が低い。そこで、このタイミングでトルク補正手段5の使用を停止することにより、制御装置の負荷を低減することができる。また、暖機の完了後にエンジン1が車両の制御に基づいて停止しさらに再始動したときは、図4で示したように冷却水温が低下する一方で油温が高い温態状態となっていることが多い。そこで、このタイミングでトルク補正手段5の使用を再開することにより、高い油温に対応した適切な補正フリクショントルクPfOTを算出することができる。
【0037】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、本実施意形態では車両に搭載される内燃機関を例に説明したが、本発明は、船舶や航空機などの内燃機関に適用してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 内燃機関(エンジン)
2 水温取得手段
3 油温取得手段
4 トルク導出手段
5 トルク補正手段
6 回転数取得手段
fOT-BASE フリクショントルク
fOT 補正フリクショントルク
OT 補正係数
ΔT 温度差
図1
図2
図3
図4
図5
図6