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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001373
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】眼屈折力測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/103 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
A61B3/103
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181668
(22)【出願日】2022-11-14
(62)【分割の表示】P 2018104694の分割
【原出願日】2018-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】辺 光春
(72)【発明者】
【氏名】山藤 大輔
(57)【要約】
【課題】子供を含む落ち着かない被検査者に良く適合した眼屈折力測定装置を提供する。
【解決手段】測定装置は、被検眼の眼底に向けて測定光を投光し、測定光に対応する眼底からの反射光を受光し、その受光信号に基づき、被検眼の眼屈折力を測定し、眼屈折力の測定値を、ディスプレイに表示するように構成される。測定装置は更に、測定値の信頼度を判定するように構成される。具体的に、測定装置は、受光信号に基づき眼屈折力を測定する処理を、所定の終了条件が満足されるまで、不定回数、連続的に実行し、処理の実行毎に得られる眼屈折力の測定値を、測定値の信頼度を表す情報と共に、順次、ディスプレイに表示するように構成される(S320)。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の眼底に向けて測定光を投光するように構成される投光部と、
前記測定光に対応する前記眼底からの反射光を受光するように構成される受光部と、
前記被検眼の眼屈折力を測定するように構成される測定部と、
前記測定部によって測定された前記眼屈折力の測定値を、ディスプレイに表示するように構成される表示制御部と、
前記測定値の信頼度を判定するように構成される判定部と、
を備え、
前記測定部は、前記受光部からの受光信号に基づき前記眼屈折力を測定する処理を、所定の終了条件が満足されるまで、不定回数、連続的に実行し、
前記表示制御部は、前記処理の実行毎に前記測定部から得られる前記眼屈折力の測定値を順次、前記判定部により判定された前記測定値の信頼度を表す情報と共に前記ディスプレイに表示する眼屈折力測定装置。
【請求項2】
前記測定部は、自動雲霧なしで、前記処理の連続実行を開始する請求項1記載の眼屈折力測定装置。
【請求項3】
操作者からの指令を入力するように構成される入力部
を備え、
前記測定部は、前記入力部を通じて開始指令が入力されてから前記入力部を通じて終了指令が入力されるまでの期間、前記処理を連続的に実行する請求項1又は請求項2記載の眼屈折力測定装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記測定値を、予め定められた複数の表示形態の内、前記測定値の信頼度に応じた表示形態で、前記ディスプレイに表示することにより、前記測定値を前記測定値の信頼度を表す情報と共に前記ディスプレイに表示する請求項1~請求項3のいずれか一項記載の眼屈折力測定装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、予め定められた複数の色の内、前記信頼度に応じた色で、前記測定値を前記ディスプレイに表示する請求項4記載の眼屈折力測定装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記測定部から得られた前記眼屈折力の測定値を、前記ディスプレイのリスト表示領域に一覧表示する請求項1~請求項5のいずれか一項記載の眼屈折力測定装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記測定部から得られた前記眼屈折力の測定値を、順次、前記リスト表示領域に追加表示することにより、前記眼屈折力の測定値を前記リスト表示領域に一覧表示し、前記眼屈折力の新たな測定値を前記リスト表示領域に追加表示するための領域が前記リスト表示領域に不足している場合には、前記リスト表示領域に既に表示されている前記眼屈折力の測定値の内、前記信頼度が最低の測定値を前記リスト表示領域から除去して、前記新たな測定値を前記リスト表示領域に追加表示する請求項6記載の眼屈折力測定装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記測定部から得られた前記眼屈折力の測定値の内、最新の測定値を前記ディスプレイの一時表示領域に表示すると共に、前記測定部から得られた前記眼屈折力の測定値の内、前記信頼度が基準以上の測定値を、前記ディスプレイのリスト表示領域に一覧表示する請求項1~請求項7のいずれか一項記載の眼屈折力測定装置。
【請求項9】
前記表示制御部は、前記信頼度に対応した順序で、前記測定値を前記リスト表示領域に
一覧表示する請求項6~請求項8のいずれか一項記載の眼屈折力測定装置。
【請求項10】
前記被検眼の位置を検出するように構成される検出部
を備え、前記判定部は、前記信頼度を、前記検出部により検出された前記被検眼の位置に基づき判定する請求項1~請求項9のいずれか一項記載の眼屈折力測定装置。
【請求項11】
前記判定部は、更に前記受光信号が示す前記反射光の空間分布を加味して、前記信頼度を判定する請求項10記載の眼屈折力測定装置。
【請求項12】
前記測定部は、複数の動作モードのうちのいずれかの動作モードで、前記眼屈折力を測定するように構成され、
前記複数の動作モードは、第一の動作モードと第二の動作モードとを含み、
前記測定部は、前記第一の動作モードでは、自動雲霧を実行した後、前記受光部からの受光信号に基づき前記眼屈折力を測定し、前記第二の動作モードでは、自動雲霧を実行することなく、前記処理の連続実行を開始する請求項1~請求項11のいずれか一項記載の眼屈折力測定装置。
【請求項13】
前記測定部は、前記第一の動作モードでの動作開始後、特定条件が満足されると、前記第一の動作モードに代えて、前記第二の動作モードでの動作を開始し、前記自動雲霧を実行することなく、前記処理の連続実行を開始する請求項12記載の眼屈折力測定装置。
【請求項14】
前記測定部は、前記第一の動作モードで前記眼屈折力の測定に失敗したこと、及び、前記第一の動作モードにおける前記眼屈折力の測定値の信頼度が所定の水準より低いことの少なくとも一方を条件に、前記第二の動作モードでの動作を開始する請求項13記載の眼屈折力測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼屈折力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼の屈折力を測定するための測定装置が既に知られている。正しい測定値を得るために、測定は、被検眼が測定系に対して適切に位置合わせされている状態、及び、被検眼が弛緩した状態で行われるのが好ましい。そのために、従来の測定装置は、被検眼のアライメント状態を検出する機能、及び、視標を雲霧状態にする機能を備える。測定装置は、例えば、アライメント状態が適切であることを条件に、眼屈折力を測定する。測定装置は、眼屈折力の本測定前に、予備測定を行い、その測定結果に基づき視標を雲霧状態にすることで、被検眼を弛緩させる。
【0003】
眼屈折力を複数回連続測定する測定装置も知られている(例えば特許文献1参照)。この測定装置は、測定値の信頼度を算出し、算出した信頼度の情報に基づいて、信頼度の高い測定値を選択的に表示部に表示する。あるいは、この測定装置は、信頼度の情報に基づき各回の測定値を重み付けし、測定値の重み付け平均を表示部に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-94516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、眼屈折力の測定は、大人だけではなく子供も対象になる。子供の眼に関しては、子供の落ち着きがないことに起因して、適切な測定を行うことが難しい。例えば、視標を雲霧状態にするためには、被検眼に対する屈折力の予備測定が先立って必要となるが、雲霧状態を適切に形成するためにアライメント状態が適切になるのを待ってから予備測定を行うと、予備測定を行うまでに時間を要する。
【0006】
また、被検査者が子供である場合には、アライメント状態の変動が激しいことに起因して、アライメント状態が適切になるのを待って測定を行うケースでも、測定時のアライメント状態が適切でないことが多い。規定回数の連続測定を行うケースでも、その全て又はほとんどの測定値の信頼度が低く、再度の連続測定が必要となる可能性がある。測定に要する時間が長引くほど、子供が測定に非協力的になっていく傾向があることも、適切な測定を難しくする原因となっている。
【0007】
そこで、本開示の一側面では、子供を含む落ち着かない被検査者に良く適合した眼屈折力測定装置を提供できることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面に係る眼屈折力測定装置は、投光部と、受光部と、測定部と、表示制御部と、判定部と、を備える。投光部は、被検眼の眼底に向けて測定光を投光するように構成される。受光部は、測定光に対応する眼底からの反射光を受光するように構成される。測定部は、被検眼の眼屈折力を測定するように構成される。表示制御部は、測定部によって測定された眼屈折力の測定値を、ディスプレイに表示するように構成される。判定部は、測定値の信頼度を判定するように構成される。
【0009】
測定部は、受光部からの受光信号に基づき眼屈折力を測定する処理を、所定の終了条件が満足されるまで、不定回数、連続的に実行するように構成される。表示制御部は、処理の実行毎に測定部から得られる眼屈折力の測定値を、判定部により判定された測定値の信頼度を表す情報と共に、順次、ディスプレイに表示するように構成される。
【0010】
本開示者らは、落ち着きのない被検査者に関しては、アライメント状態が適切になるのを待ってからの散発的な測定が、測定精度向上の観点で大きく貢献しないことに気づいた。眼屈折力の測定を、連続的に終了条件が満足されるまで不定回数実行する測定装置の構成によれば、アライメント状態が適切であることを条件とする散発的な測定よりも、時間当たりの測定回数を増やすことができ、結果として、信頼度の高い測定値を短時間で多く取得することができる可能性が高まる。
【0011】
本開示の測定装置によれば更に、信頼度を表す情報が測定値と共に、順次、ディスプレイに表示されるため、検査者は、ディスプレイにおける表示情報に基づき、適切な測定が行われているか否かに関する状況を適切に把握することができる。この把握により、検査者は、状況に適切に対処して、適切な検査を短時間で終わらせることができる。従って、本開示の一側面によれば、落ち着きのない被検査者に良く適合した眼屈折力測定装置を提供することができる。
【0012】
本開示の別側面によれば、測定部は、自動雲霧なしで、上記処理の連続実行を開始するように構成されてもよい。自動雲霧は、被検眼に呈示する視標を雲霧状態にすることであってもよい。自動雲霧は、被検眼の眼屈折力の予備測定値に基づいて、被検眼に呈示する視標を雲霧状態にすることであってもよい。自動雲霧は、視標の呈示距離を変化させて、被検眼に呈示する視標を雲霧状態にすることであってもよい。
【0013】
落ち着きのない被検査者に関しては、自動雲霧の効果が乏しい。自動雲霧を適切に行うためには、アライメント状態が適切になるのを待ってからの眼屈折力の予備測定が通常必要になる。この場合、本測定を開始するまでに時間がかかる。自動雲霧なしで、上記処理の連続実行を開始すれば、素早く眼屈折力の連続測定を行うことができる。
【0014】
本開示の別側面によれば、測定装置は、操作者からの指令を入力するように構成される入力部を備えていてもよい。測定部は、入力部を通じて開始指令が入力されたことを条件に、上記処理の連続実行を開始するように構成されてもよい。上記終了条件が満足されることは、入力部を通じて終了指令が入力されることであってもよい。測定部は、上記の処理を、入力部を通じて開始指令が入力されてから終了指令が入力されるまでの期間、連続的に実行するように構成されてもよい。
【0015】
終了指令に基づく連続測定の終了は、必要な測定結果が得られるまで連続測定を測定装置に継続させる一方で、必要な測定結果が得られた状況で迅速に測定を終了させるオペレーションを可能にする。
【0016】
本開示の別側面によれば、表示制御部は、測定値を、予め定められた複数の表示形態の内、測定値の信頼度に応じた表示形態でディスプレイに表示するように構成されてもよい。具体的には、表示制御部は、予め定められた複数の色の内、信頼度に応じた色で、測定値をディスプレイに表示するように構成されてもよい。色による信頼度の表示は、検査者による検査状況の把握を容易にする。
【0017】
本開示の別側面によれば、表示制御部は、測定部から得られた眼屈折力の測定値を、ディスプレイのリスト表示領域に一覧表示するように構成されてもよい。一覧表示により、検査者は、連続測定による眼の検査状況をより深く把握することができる。
【0018】
本開示の別側面によれば、表示制御部は、測定部から得られた眼屈折力の測定値を、順次、リスト表示領域に追加表示することにより、眼屈折力の測定値をリスト表示領域に一覧表示するように構成されてもよい。
【0019】
表示制御部は、眼屈折力の新たな測定値をリスト表示領域に追加表示するための領域がリスト表示領域に不足している場合には、リスト表示領域に既に表示されている眼屈折力の測定値の内、信頼度が最低の測定値をリスト表示領域から除去して、新たな測定値をリスト表示領域に追加表示するように構成されてもよい。
【0020】
本開示の別側面によれば、表示制御部は、測定部から得られた眼屈折力の測定値の内、最新の測定値をディスプレイの一時表示領域に表示するように構成されてもよい。表示制御部は、測定部から得られた眼屈折力の測定値の内、信頼度が基準以上の測定値を、ディスプレイのリスト表示領域に一覧表示するように構成されてもよい。
【0021】
本開示の別側面によれば、表示制御部は、信頼度に対応した順序で、測定値をリスト表示領域に一覧表示するように構成されてもよい。この構成によれば、検査者が所望する情報を一覧表示により分かりやすく提供することができる。
【0022】
本開示の別側面によれば、眼屈折力測定装置は、被検眼の位置を検出するように構成される検出部を備えていてもよい。測定値の信頼度は、測定系に対する被検眼の位置ずれ量によって変化する。従って、判定部は、測定値の信頼度を、検出部により検出された被検眼の位置に基づき判定するように構成されてもよい。
【0023】
判定部は、更に受光信号が示す反射光の空間分布を加味して、信頼度を判定するように構成されてもよい。測定値の信頼度は、反射光の空間分布、一例によれば受光画像の質によって評価することができる。従って、上述した構成によれば、信頼度をより適切に判定することができる。
【0024】
本開示の別側面によれば、測定部は、複数の動作モードのうちのいずれかの動作モードで、眼屈折力を測定するように構成されてもよい。複数の動作モードは、第一の動作モードと第二の動作モードとを含むことができる。測定部は、第一の動作モードでは、自動雲霧を実行した後、受光部からの受光信号に基づき眼屈折力を測定することができ、第二の動作モードでは、自動雲霧を実行することなく、上記処理の連続実行を開始することができる。この眼屈折力測定装置によれば、被検査者のそれぞれに応じて、適切な測定を行うことができる。
【0025】
本開示の別側面によれば、測定部は、第一の動作モードでの動作開始後、特定条件が満足されると、第一の動作モードに代えて第二の動作モードでの動作を開始し、これにより、自動雲霧を実行することなく上記処理の連続実行を開始するように構成されてもよい。測定部は、第一の動作モードで眼屈折力の測定に失敗したことを条件に、第二の動作モードでの動作を開始するように構成されてもよい。測定部は、第一の動作モードにおける眼屈折力の測定値の信頼度が所定の水準より低いことを条件に、第二の動作モードでの動作を開始するように構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】測定装置の光学系を表す概略構成図である。
図2】測定装置の制御系を表すブロック図である。
図3】制御装置が実行する主制御処理を表すフローチャートである。
図4】制御装置が実行する第一測定処理を表すフローチャートである。
図5】制御装置が実行する第二測定処理を表すフローチャートである。
図6】制御装置が実行する反復測定処理を表すフローチャートである。
図7】ディスプレイに表示される画面の構成例を表す図である。
図8】制御装置が実行するリスト更新処理を表すフローチャートである。
図9】信頼度に応じた測定値の表示に関する説明図である。
図10】制御装置が実行するモード切替処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本開示の例示的実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1に示す本実施形態の測定装置1は、眼屈折力測定装置であり、窓Wを通じて被検眼Eの眼底に測定光を投光し、測定光に対応する眼底からの反射光を受光し、その受光信号に基づき、被検眼Eの屈折力を測定するように構成される。
【0028】
測定装置1は、図1に示すように、装置光学系3と、制御系7と、を備える。装置光学系3は、被検眼Eの前眼部を観察するための観察光学系OS1と、視標24を提示するための視標光学系OS2と、装置光学系3に対する被検眼Eの位置を検出するためのアライメント検出光学系OS3と、被検眼Eの屈折力を測定するための眼屈折力測定光学系OS4と、を備える。
【0029】
観察光学系OS1は、主に、照明光源11,12、レンズ14、ホットミラー16、レンズ18、及び観察用撮像素子20から構成される。照明光源11,12は、例えば波長780nmの赤外光を照射するように構成される。ホットミラー16は、照明光源11,12からの光を透過し、後述するアライメント光源34、測定光源40、及び視標光源22からの光を反射するように構成される。
【0030】
この構成により、照明光源11,12から照射され、被検眼Eの前眼部で反射された光は、レンズ14を介してホットミラー16を透過し、レンズ18を介して観察用撮像素子20上に導かれる。
【0031】
視標光学系OS2は、主に、視標光源22、視標24、レンズ26、ハーフミラー28、反射ミラー30、ホットミラー32、ホットミラー16、及びレンズ14から構成される。この説明から理解できるように、視標光学系OS2は、観察光学系OS1と共用されるいくつかの光学部材を含む。視標光源22は、例えば波長400~700nmの可視光を照射するように構成される。視標24は、制御系7が備える第1駆動装置61(図2参照)により光軸方向に移動可能に配置される。
【0032】
ハーフミラー28は、視標光源22からの光を透過し、アライメント光源34からの光を反射するように構成される。ホットミラー32は、視標光源22及びアライメント光源34からの光を透過し、測定光源40からの光を反射するように構成される。
【0033】
この構成により、視標光源22から発せられた光は、視標24を介して、レンズ26、ハーフミラー28を透過した後、反射ミラー30で反射され、更に、ホットミラー32を透過し、ホットミラー16で反射された後、レンズ14を介して被検眼Eに照射される。
【0034】
アライメント検出光学系OS3は、主に、アライメント光源34、ハーフミラー28、反射ミラー30、ホットミラー32、ホットミラー16、レンズ14、及びアライメント検出センサ36,38(プロファイルセンサ)から構成される。
【0035】
アライメント光源34は、例えば波長810nmの赤外光を照射するように構成される。アライメント光源34からの光は、ハーフミラー28で反射され、反射ミラー30で反
射され、ホットミラー32を透過してホットミラー16で反射された後、レンズ14を介して被検眼Eに照射される。この照射光は、被検眼Eの角膜で反射され、アライメント検出センサ36,38上に導かれる。
【0036】
眼屈折力測定光学系OS4は、投光光学系OS41と受光光学系OS42とを含む。投光光学系OS41は、主に、測定光源40、レンズ42、反射ミラー44、穴あきミラー46、平行平面板48、ホットミラー32、ホットミラー16、及びレンズ14から構成される。
【0037】
受光光学系OS42は、主に、投光光学系OS41と共用されるレンズ14、ホットミラー16、ホットミラー32、平行平面板48、及び穴あきミラー46と、レンズ50、リングレンズ52、及び測定用撮像素子54と、から構成される。測定光源40は、例えば、干渉性の高いスーパールミネッセントダイオード(SLD)で構成され、例えば波長880nmの赤外光を発するように構成される。測定用撮像素子54は、制御系7が備える第3駆動装置63(図2参照)により光軸方向に移動可能に構成される。
【0038】
平行平面板48は、投光光学系OS41と受光光学系OS42との共用光路に配置される。具体的には、平行平面板48は、被検眼Eの瞳孔中心から所定距離の位置に測定光束が入射するように傾いた状態で、共用光路の光軸を中心として回転するように配置される。平行平面板48は、制御系7が備える第2駆動装置62(図2参照)により回転される。この平行平面板48の回転により、測定光束は、被検眼Eの瞳上で周方向に回転する。この回転は、干渉性の高い光源を使用することにより発生するスペックルノイズを抑制することを可能にする。平行平面板48は、例えば被検眼Eの瞳孔との共役位置に配置される。
【0039】
測定光源40からの光束は、レンズ42を介して反射ミラー44で反射され、穴あきミラー46の中央部の穴、及び平行平面板48を通り、ホットミラー32及びホットミラー16で反射された後、レンズ14を介して被検眼Eの眼底に照射される。被検眼Eの眼底で反射された光束は、レンズ14を介してホットミラー16及びホットミラー32で反射され、平行平面板48を通り、穴あきミラー46におけるリング状のミラー部分で反射された後、レンズ50及びリングレンズ52を介して測定用撮像素子54上に導かれる。
【0040】
このように構成される装置光学系3は、制御系7が備える第4駆動装置64(図2参照)によりその全体がXYZ方向に変位可能であるように配置される。変位は、被検眼Eと装置光学系3との位置合わせのために行われる。ここでいうX方向は、左右方向に対応し、Y方向は上下方向に対応し、Z方向は、前後(光軸)方向に対応する。
【0041】
制御系7は、図2に示すように、制御装置70と、ディスプレイ75と、入力インタフェース79と、を更に備える。制御装置70は、プロセッサ71と、メモリ73と、を備える。メモリ73は、ROM、RAM、及びフラッシュメモリを含む。プロセッサ71は、メモリ73に記録されたコンピュータプログラムに従って、測定装置1を制御し、各種機能を実現するための処理を実行する。
【0042】
ディスプレイ75は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)である。このディスプレイ75は、制御装置70に制御されて、検査者向けに各種情報を表示する。入力インタフェース79は、検査者が測定装置1を操作するためのレバー及びキースイッチを備え、入力部あるいは操作部として機能する。入力インタフェース79は、検査者からの指令信号を制御装置70に入力する。図示しないが制御系7は、更に、検査者に測定結果を印刷物として提供するための印刷装置や外部の情報処理装置に測定結果を提供するためのデータ通信装置を備えていてもよい。
【0043】
図2に示す例によれば、制御装置70には、第1駆動装置61と、第2駆動装置62と、第3駆動装置63と、第4駆動装置64と、ディスプレイ75と、入力インタフェース79と、観察用撮像素子20と、アライメント検出センサ36,38と、測定用撮像素子54とが接続される。
【0044】
第1駆動装置61は、制御装置70に制御されて、視標24を光軸方向に移動させる。第2駆動装置62は、制御装置70に制御されて、平行平面板48を光軸中心に回転させる。第3駆動装置63は、制御装置70に制御されて、測定用撮像素子54を光軸方向に移動させる。第4駆動装置64は、制御装置70に制御されて、装置光学系3をXYZ方向に移動させる。
【0045】
制御装置70には、観察用撮像素子20から前眼部の撮影画像を表す映像信号が入力される。制御装置70は、この映像信号に基づき、ディスプレイ75に、前眼部の撮影画像を表示する(図7参照)。
【0046】
制御装置70には更に、アライメント検出センサ36,38で受光された角膜反射光(スポット光)の受光分布を表す信号が検出信号としてアライメント検出センサ36,38から入力される。
【0047】
制御装置70は、このアライメント検出センサ36,38からの検出信号に基づき、アライメント指標として、装置光学系3に対する被検眼Eの三次元位置座標(XYZ位置座標)を算出する。制御装置70は更に、必要に応じて、このアライメント指標に基づき第4駆動装置64を制御し、これにより装置光学系3と被検眼Eとの位置合せを行う。
【0048】
制御装置70には更に、測定用撮像素子54上に形成されたリング像の受光信号、即ち、被検眼Eの眼底で反射した測定光束に対応するリング像の受光信号が測定用撮像素子54から入力される。制御装置70は、この受光信号が表すリング像から被検眼Eの屈折力を測定する。
【0049】
具体的に、制御装置70は、リング像の各経線方向のリング像座標を検出する。検出されたリング像位置座標に基づいて、リング像を、最小二乗法等を用いて楕円近似する。そして、近似された楕円の形状から被検眼Eの屈折力に関する測定値として、S(球面度数)、C(乱視度数)、及びA(乱視軸角度)の屈折値を算出する。制御装置70は、このように算出された被検眼Eの測定値を、ディスプレイ75に表示するとともに、メモリ73に測定履歴データとして保存する。
【0050】
測定履歴データは、例えば検査終了後に検査者からの要求に従って検査者に測定結果を提供する目的でメモリ73に、特にはフラッシュメモリに保存される。例えば、測定履歴データは、印刷物として検査者に提示可能に、あるいは、外部の情報処理装置に転送可能に保存される。
【0051】
続いて、眼屈折力の測定のために、制御装置70が実行する処理の詳細を説明する。制御装置70は、図3に示す主制御処理を繰返し実行するように構成される。主制御処理において、制御装置70は、検査者から入力インタフェース79を通じて開始指令が入力されるまで待機する(S110)。そして、開始指令が入力されると(S110でYes)、指定された測定モードが連続測定モードであるか否かを判断する(S120)。
【0052】
制御装置70は、モード選択のためのグラフィカルユーザインタフェースをディスプレイ75に表示することにより、入力インタフェース79を通じて、検査者による測定モー
ドの指定操作を受け付けることができる。
【0053】
制御装置70は、指定された測定モードが連続測定モードではないと判断すると(S120でNo)、通常測定モードに対応する第一測定処理を実行する(S130)。制御装置70は、指定された測定モードが連続測定モードであると判断すると(S120でYes)、連続測定モードに対応する第二測定処理を実行する(S140)。その後、主制御処理を終了する。
【0054】
図4に示すように、第一測定処理(S130)において、制御装置70は、自動雲霧を実行した後、被検眼Eの屈折力を測定する。第一測定処理では、およそ従来の手順で屈折力を測定するため、ここでは簡単に第一測定処理における各手順を説明する。
【0055】
制御装置70は、第一測定処理を開始すると、被検眼Eの屈折力を予備測定する(S210)。予備測定では、雲霧状態を適切に形成する目的で、被検眼Eの屈折力が測定される。具体的に、制御装置70は、上述のアライメント指標に基づいて、第4駆動装置64を制御し、これによって、被検眼Eに対する装置光学系3のXYZ方向の位置を調整する。即ち、装置光学系3を被検眼Eに位置合わせする。
【0056】
その後、制御装置70は、測定光源40を点灯し、平行平面板48を回転させながら、被検眼Eの眼底上にスポット状の点光源像を形成する。眼底に投影された点光源像は反射され、リングレンズ52によって測定用撮像素子54にリング状に結像する。このとき、制御装置70は、測定用撮像素子54を光軸方向に移動させて、最も細く、明るくなるリング像を測定用撮像素子54上に形成する。制御装置70は、このリング像から被検眼Eの屈折力を予備測定する。
【0057】
このようにして予備測定(S210)を終えた後、制御装置70は、予備測定で得られた屈折力の測定値に基づき、自動雲霧を実行する(S220)。即ち、制御装置70は、視標24を光軸方向に移動させることで、視標24を被検眼Eの眼底との共役位置に置き、その後適当なディオプター分だけ遠方に移動させることにより、被検眼Eに対する視標24の雲霧状態を形成する(S220)。
【0058】
制御装置70は、この雲霧状態で本測定を実行する(S230)。即ち、制御装置70は、予備測定と同様に、測定光源40を点灯し、測定用撮像素子54上にリング像を形成する。このリング像に対応する測定用撮像素子54の受光信号に基づいて、被検眼Eの屈折力を測定する。
【0059】
その後、制御装置70は、屈折力の測定値を、ディスプレイ75に表示すると共に、その測定値を、メモリ73に測定履歴データとして保存し(S240)、第一測定処理(S130)を終了する。
【0060】
一方、図5に示す第二測定処理(S140)において、制御装置70は、予備測定及び自動雲霧なしで、被検眼Eの屈折力を連続測定する。制御装置70は、第二測定処理を開始すると、予備測定により被検眼Eの屈折力を測定することなく、更には、その測定値に基づいた自動雲霧を実行することなく、視標24及び測定用撮像素子54を標準位置に固定する(S310)。標準位置は、予め定められる。
【0061】
別例によれば、制御装置70は、標準位置に代えて、検査者から入力インタフェース79を通じて指定された位置に、視標24及び測定用撮像素子54を固定してもよい。制御装置70は更に、第4駆動装置64を制御して、装置光学系3を標準位置に、あるいは、検査者から入力インタフェース79を通じて指定された位置に配置してもよい。
【0062】
その後、制御装置70は、図6に示す反復測定処理(S320)を、入力インタフェース79を通じて検査者から終了指令が入力されるまで繰返し連続的に実行する。終了指令が入力されると(S330でYes)、制御装置70は、第二測定処理を終了し、これにより、屈折力の連続測定を終了する。
【0063】
反復測定処理を開始すると、制御装置70は、リング像を取得する(S410)。即ち、制御装置70は、測定光源40を点灯し、測定用撮像素子54上にリング像を形成し、このリング像を表す測定用撮像素子54の受光信号を測定用撮像素子54から取り込む。
【0064】
更に、制御装置70は、リング像が形成されたときの被検眼Eのアライメント指標を取得する(S420)。即ち、アライメント検出センサ36,38の検出信号を取得し、この検出信号に基づき、装置光学系3に対する被検眼Eの三次元位置座標を、アライメント指標として演算する。
【0065】
その後、制御装置70は、S410で取り込んだ受光信号が表すリング像から屈折力の測定値を算出する(S430)。即ち、被検眼Eに関するS(球面度数)、C(乱視度数)、及びA(乱視軸角度)の屈折値を算出する(S430)。
【0066】
更に、制御装置70は、S430で算出した最新の測定値の信頼度を算出する(S440)。算出される信頼度は、次のスコアZ1,Z2,Z3,Z4のいずれか一つ、あるいは、スコアZ1,Z2,Z3,Z4の二つ以上の重み付け和であり得る。
【0067】
スコアZ1は、被検眼Eと装置光学系3との間のアライメント誤差に基づくスコアである。アライメント誤差は、装置光学系3に対する被検眼Eの三次元位置座標P=(X,Y,Z)の基準位置P0=(X0,Y0,Z0)からの誤差(dX,dY,dZ)=P-P0として算出可能である。スコアZ1は、アライメント誤差(絶対値)が大きいほど小さな値を示し、アライメント誤差が小さいほど大きな値を示すように定義される。例えば、スコアZ1は、アライメント誤差(絶対値)にマイナス符号を付した値であり得る。
【0068】
スコアZ2は、測定用撮像素子54で受光されたリング像の欠落量に基づくスコアである。欠落量は、測定用撮像素子54でリング像が検出された点の数の理論値からの誤差に対応する。スコアZ2は、欠落量が大きいほど小さな値を示し、欠落量が小さいほど大きな値を示すように定義される。
【0069】
スコアZ3は、測定用撮像素子54で検出されたリング像の歪みの大きさに基づくスコアである。歪みの大きさは、リング像の理論的な形状からの誤差に対応する。スコアZ3は、歪みが大きいほど小さな値を示し、歪みが小さいほど大きな値を示すように定義される。
【0070】
スコアZ4は、測定値の平均値又は中央値からの差に基づくスコアである。スコアZ4は、差が大きいほど小さな値を示し、差が小さいほど大きな値を示すように定義される。スコアZ4は、屈折力の連続測定の過程で、所定個以上の測定値が得られた後、算出可能である。
【0071】
S440で信頼度を算出すると、制御装置70は、測定値の表示色を、信頼度に対応した色に決定する(S450)。例えば、制御装置70は、予め定められた判定基準に従って、測定値の信頼度が「高」「中」「低」のいずれの水準にあるかを判定し、信頼度が「低」であるとき、表示色を第1色(例えば「赤」)に決定し、信頼度が「中」であるとき、表示色を第1色とは異なる第2色(例えば「白」)に決定し、信頼度が「高」であると
き、表示色を第1色及び第2色とは異なる第3色(例えば「青」)に決定することができる。
【0072】
その後、制御装置70は、S430で算出した屈折力の最新の測定値を、S450で決定した色でディスプレイ75のリアルタイム表示エリア751に表示する(S460)。これにより、ディスプレイ75には、最新の測定値と共に、その測定値の信頼度が色情報として表示される。
【0073】
第二測定処理において、制御装置70は、ディスプレイ75に、図7に示す画面750を表示することができる。この画面750は、リアルタイム表示エリア751と、操作オブジェクト表示エリア753と、リスト表示エリア755とを含む。
【0074】
リアルタイム表示エリア751には、制御装置70によるディスプレイ75の制御によって、屈折力の最新の測定値と共に、被検眼Eの前眼部の最新の撮影画像(リアルタイム動画像)が表示される。制御装置70は、リアルタイム表示エリア751に、前回の測定値が表示されている場合には、その前回の測定値に代えて、最新の測定値を表示するよう、ディスプレイ75を制御することができる(S460)。
【0075】
操作オブジェクト表示エリア753には、複数の操作オブジェクトを含むグラフィカルユーザインタフェースが表示される。リスト表示エリア755には、連続測定で得られた複数の測定値が一覧表示される。具体的に、リスト表示エリア755には、信頼度が基準以上の測定値が一覧表示される。
【0076】
制御装置70は、最新の測定値をリアルタイム表示エリア751に表示する一方、この最新の測定値の信頼度が基準以上であるか否かを判断する(S470)。そして、信頼度が基準以上であると判断すると(S470でYes)、S480に移行して、図8に示すリスト更新処理を実行する。これにより、リスト表示エリア755には、最新の測定値を含む信頼度が基準以上の測定値が一覧表示される。その後、制御装置70は、反復測定処理を一旦終了する。
【0077】
一方、信頼度が基準未満であると判断すると(S470でNo)、制御装置70は、最新の測定値をリスト表示エリア755に追加表示することなく、当該反復測定処理を一旦終了する。そして検査者からの終了指令が入力されていなければ(S330でNo)、再度、反復測定処理を実行する(S320)。
【0078】
続いて、S480で制御装置70が実行するリスト更新処理の詳細を、図8を用いて説明する。リスト更新処理を開始すると、制御装置70は、リスト表示エリア755に、最新の測定値を追加表示するための空き領域が存在するか否かを判断する(S510)。ここで、空き領域が存在すると判断すると(S510でYes)、制御装置70は、S530に移行する。
【0079】
一方、空き領域が存在しないと判断すると(S510でNo)、制御装置70は、リスト表示エリア755に表示されている測定値の一群、即ち、測定値のリストの中で、信頼度が最低の測定値を、リスト表示エリア755から削除する(S520)。信頼度が最低の測定値が複数存在する場合には、信頼度が最低、且つ、最も古い測定値を、リスト表示エリア755から削除する(S520)。その後、S530に移行する。
【0080】
S530において、制御装置70は、最新の測定値を、リスト表示エリア755に追加表示する。制御装置70は、S450で決定した信頼度に対応する色で、測定値を、リスト表示エリア755に追加表示することができる。一例によれば、制御装置70は、測定
値が時系列に配列されて一覧表示されるように、リスト表示エリア755に、最新の測定値を追加表示することができる。
【0081】
別例として、制御装置70は、S530に代わるS535の処理を実行してもよい。S535において、制御装置70は、測定値が信頼度順に配列されて一覧表示されるように、リスト表示エリア755に、最新の測定値を追加表示する。
【0082】
その後、制御装置70は、リスト表示エリア755に追加表示した測定値を、メモリ73に測定履歴データとして保存し(S540)、リスト更新処理(S480)を終了する。
【0083】
即ち、第二測定処理によれば、被検眼Eの屈折力が連続測定され、各回の測定が終了する毎に、リアルタイム表示エリア751に最新の測定値が、図9に示すように、信頼度に応じた色で表示される。これにより、最新の測定値と共に信頼度の情報がリアルタイムにディスプレイ75に表示される。更に、信頼度が基準以上である場合には、最新の測定値がリスト表示エリア755に追加表示され、これにより、最新の測定値が、信頼度が基準以上の古い測定値と共に、ディスプレイ75に一覧表示される。図9に示す例では、信頼度が基準以上であることは、信頼度が「中」以上であることに対応する。
【0084】
以上に説明した本実施形態の測定装置1によれば、次の効果が得られる。この測定装置1には、落ち着きのない被検査者、特に子供の被検眼Eを測定するために、連続測定モードが設けられている。眼屈折力を測定する場合には、自動雲霧を行い、被検眼Eを弛緩させることが好ましいが、落ち着きのない被検査者に関しては、被検眼Eと装置光学系3との間のアライメント状態が安定しないため、自動雲霧を適切に行うことが難しいか、時間がかかる。従って落ち着いた大人と比較して自動雲霧の効果が乏しい。更に、子供は、測定時間が長引くほど、測定に非協力的になっていく。
【0085】
本実施形態の連続測定モード(第二測定処理)では、上述した点を考慮して、検査者から入力インタフェース79を通じて開始指令が入力されると終了指令が入力されるまでの間、予備測定及び自動雲霧を行わず、素早く屈折力の連続測定を開始する。この連続測定により、時間当たりの測定回数を増し、適切なアライメント状態での信頼度の高い測定値を短時間で多く取得する。
【0086】
本実施形態の測定装置1によれば、連続測定の過程で、各回の測定値を、各回の測定終了毎に、順次ディスプレイ75に表示することも有意義である。この際には、測定値を信頼度に応じた表示形態、具体的には、信頼度に応じた色でディスプレイ75に表示することにより、測定値と併せて信頼度の情報もディスプレイ75に表示する。
【0087】
従って、本実施形態によれば、検査者は、ディスプレイ75における表示情報に基づき、適切な測定が行われているか否かに関する状況を適切に把握することができる。この把握により、検査者は、状況に適切に対処して、適切な検査を短時間で終わらせることができる。具体的には、必要な測定結果が得られるまで連続測定を測定装置1に継続させる一方で、必要な測定結果が得られた状況で終了指令を入力して迅速に連続測定を終了することができる。
【0088】
このように、本実施形態では、自動雲霧なしの連続測定により短時間で多くの測定値を得ることができる。更に、検査者は、リアルタイムの測定値及び信頼度表示により連続測定中に適切な測定が行われているか否かを容易に把握することができる。従って、落ち着きのない被検査者に良く適合した眼屈折力測定装置を提供することが可能である。
【0089】
特に、本実施形態では、信頼度の高い測定値がリアルタイム表示エリア751だけでなく、リスト表示エリア755にも表示されるため、検査者は、連続測定による眼の検査状況を深く把握することができる。
【0090】
更に、本実施形態では、画面750に表示される測定値のリストが一杯であるとき、リスト内から信頼度の低い測定値及び古い測定値を優先的に削除して、検査者にとって価値のある情報をできるだけリストに残すようにする。従って、本実施形態では、検査者が所望する屈折力の測定情報を一覧表示により検査者に分かりやすく提供することができる。特に、リスト表示エリア755に信頼度順に測定値を一覧表示する例(S535)によれば、検査者が所望する情報を一覧表示により、より分かりやすく提供することができる。
【0091】
また、一例では、信頼度を、被検眼Eの位置、具体的には被検眼Eのアライメント誤差と、反射光の空間分布、具体的には、リング像の欠落量及び歪みの大きさとに基づき、判定する。この構成によれば、信頼度をより適切に判定することができる。
【0092】
また、本実施形態では、連続測定モード及び通常測定モードを検査者からの指定に基づき切り替えて実行することにより、子供及び大人のそれぞれによく適合した屈折力の測定を行うことが可能である。従って、本実施形態によれば、利便性の高い眼屈折力測定装置を提供することができる。
【0093】
本開示が、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができるものであることは言うまでもない。上記実施形態では、連続測定を、入力インタフェース79からの検査者の終了指令に基づき終了したが、制御装置70は、終了指令によらず連続測定を終了するように動作してもよい。例えば、制御装置70は、連続測定開始後、信頼度が基準以上の測定値が規定数得られたことを条件に、連続測定を終了するように動作してもよい。
【0094】
リスト表示エリア755には、信頼度が基準未満の測定値も表示されてもよい。ディスプレイ75の表示面積が小さい場合には、リスト表示エリア755を設けないことも考えられる。即ち、測定装置1は、測定値をリアルタイム表示するが、一覧表示しない構成にされてもよい。この場合、測定装置1は、各回の測定値をメモリ73に保存し、検査終了後に、測定値のリストを信頼度の情報と共に、例えば印刷物の形態で検査者に提供することができる。この測定値のリストは、測定装置1から外部の情報処理装置にディジタルデータとして提供されてもよい。
【0095】
測定装置1は、連続測定時には、リスト表示エリア755を備えず上述のリアルタイム表示エリア751を備える画面をディスプレイ75に表示し、連続測定終了後に、リアルタイム表示エリア751に代えてリスト表示エリア755を備える画面をディスプレイ75に表示するように構成されてもよい。即ち、測定装置1は、連続測定終了後のみに、測定値のリストをディスプレイ75に表示するように構成されてもよい。
【0096】
測定装置1の制御装置70が実行する処理は、説明した手順で実行されなくてもよい。即ち、実行順序を入れ替えても同一の結果が生じる複数のステップの実行順序は、上述した順序に限定されない。同様に、いくつかのステップは、並列実行されてもよい。
【0097】
例えば、制御装置70は、測定用撮像素子54から受光信号を取り込んで屈折力の測定値を算出する処理、及び、アライメント検出センサ36,38からの検出信号に基づきアライメント指標を算出する処理を並列実行するように構成されてもよい。この場合、測定時のアライメント指標を精度よく算出するために、アライメント検出センサ36,38は、検出動作を、測定用撮像素子54による撮像動作よりも短い周期で実行することができ
る。制御装置70は、屈折力の測定値を算出する周期よりも短い周期でアライメント指標を繰返し算出してもよい。例えば、制御装置70は、屈折力の測定値をおよそ200ミリ秒周期で算出し、アライメント指標をおよそ20ミリ秒周期で算出してもよい。
【0098】
測定装置1は、上述した被検査者の両眼の屈折力を同時に、あるいは検査者の指示に従って切り替えて測定可能であるように構成されてもよい。このために、測定装置1は、装置光学系3及び制御系7の少なくとも一部を、左右の眼のそれぞれに対して備えることができる。この場合、ディスプレイ75には、左右の眼の屈折力の測定値が、リアルタイム表示及びリスト表示の少なくとも一方の形態で表示され得る。
【0099】
測定装置1は、通常測定モードでの動作を開始した後、特定条件が満足されると、測定モードを通常測定モードから連続測定モードに自動で切り替えるように構成されてもよい。例えば、制御装置70は、第一測定処理(S130)の実行中、図10に示すモード切替処理を繰返し並列実行し、特定条件が満足されていないときには(S610でNo)、第一測定処理を継続し、特定条件が満足されたときには(S610でYes)、第一測定処理を中断して(S620)、第二測定処理(S630)を開始するように構成されてよい。特定条件は、測定の失敗、及び/又は、測定値の信頼度に基づく条件であり得る。
【0100】
例えば、測定装置1は、通常測定モードで複数回連続して測定に失敗した場合、又は、信頼度が所定水準より低い測定値(例えば、信頼度が「低」の測定値)しか得られなかった場合には、測定モードを、連続測定モードに自動で切り替えるように構成されてもよい。あるいは、測定装置1は、自動切替に代えて、「連続測定モードに切り替えますか?」等の連続測定モードへの切替を提案するメッセージを表示後、検査者からの指令に従って、測定モードを通常測定モードから連続測定モードに切り替えるように構成されてもよい。
【0101】
この他、上記実施形態における1つの構成要素が有する機能は、複数の構成要素に分散して設けられてもよい。複数の構成要素が有する機能は、1つの構成要素に統合されてもよい。上記実施形態の構成の一部は、省略されてもよい。上記実施形態の構成の少なくとも一部は、他の実施形態の構成に対して付加又は置換されてもよい。特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0102】
最後に用語間の対応関係を説明する。投光光学系OS41は、投光部の一例に対応し、受光光学系OS42は、受光部の一例に対応し、アライメント検出光学系OS3は、検出部の一例に対応する。入力インタフェース79は、入力部の一例に対応する。
【0103】
制御装置70が実行するS210,S220,S230,S410,S430,S610,S620,S630の処理は、測定部が実行する処理の一例に対応し、制御装置70が実行するS240、S450-S480の処理は、表示制御部が実行する処理の一例に対応し、制御装置70が実行するS440の処理は、判定部が実行する処理の一例に対応する。
【符号の説明】
【0104】
1…測定装置、3…装置光学系、7…制御系、11,12…照明光源、20…観察用撮像素子、22…視標光源、24…視標、34…アライメント光源、36,38…アライメント検出センサ、40…測定光源、54…測定用撮像素子、61…第1駆動装置、62…第2駆動装置、63…第3駆動装置、64…第4駆動装置、70…制御装置、71…プロセッサ、73…メモリ、75…ディスプレイ、79…入力インタフェース、750…画面、751…リアルタイム表示エリア、755…リスト表示エリア、E…被検眼、OS1…観察光学系、OS2…視標光学系、OS3…アライメント検出光学系、OS4…眼屈折力測
定光学系、OS41…投光光学系、OS42…受光光学系。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-12-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の眼底に向けて測定光を投光するように構成される投光部と、
前記測定光に対応する前記眼底からの反射光を受光するように構成される受光部と、
前記被検眼の眼屈折力を測定するように構成される測定部と、
前記測定部によって測定された前記眼屈折力の測定値を、ディスプレイに表示するように構成される表示制御部と、
備え、
前記測定部は、予備測定なしで、所定の開始条件が満足されると、前記被検眼の眼屈折力に関する連続測定を開始し、前記連続測定では、前記受光部からの受光信号に基づき前記眼屈折力を測定する処理を、前記連続測定の終了まで前記予備測定なしで、不定回数、連続的に実行し、所定の終了条件が満足されると、前記連続測定を終了し、
前記表示制御部は、前記処理の実行毎に前記測定部から得られる前記眼屈折力の測定値を順次、前記ディスプレイに表示する眼屈折力測定装置。
【請求項2】
操作者からの指令を入力するように構成される入力部
を備え、
前記測定部は、前記入力部を通じて開始指令が入力されると、予備測定なしで、前記被検眼の眼屈折力に関する連続測定を開始する請求項1記載の眼屈折力測定装置。
【請求項3】
前記測定部は、前記入力部を通じて終了指令が入力されたときに、前記連続測定を終了する請求項2記載の眼屈折力測定装置。
【請求項4】
前記測定部は、前記予備測定なし及び自動雲霧なしで、前記連続測定を開始し、前記連続測定では、前記処理を、前記連続測定の終了まで、前記予備測定なし及び前記自動雲霧なしで、不定回数、連続的に実行する請求項1~請求項3のいずれか一項記載の眼屈折力測定装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記測定部から得られた前記眼屈折力の測定値を、前記ディスプレイのリスト表示領域に一覧表示する請求項1~請求項のいずれか一項記載の眼屈折力測定装置。
【請求項6】
前記測定値の信頼度を判定するように構成される判定部
を更に備え、
前記表示制御部は、前記処理の実行毎に前記測定部から得られる前記眼屈折力の測定値を順次、前記判定部により判定された前記測定値の信頼度を表す情報と共に前記ディスプレイに表示する請求項1~請求項5のいずれか一項記載の眼屈折力測定装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記測定値を、予め定められた複数の表示形態の内、前記測定値の信頼度に応じた表示形態で、前記ディスプレイに表示することにより、前記測定値を前記測定値の信頼度を表す情報と共に前記ディスプレイに表示する請求項記載の眼屈折力測定装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、予め定められた複数の色の内、前記信頼度に応じた色で、前記測定値を前記ディスプレイに表示する請求項記載の眼屈折力測定装置。
【請求項9】
前記表示制御部は、前記測定部から得られた前記眼屈折力の測定値を、順次、前記ディスプレイのリスト表示領域に追加表示することにより、前記眼屈折力の測定値を前記リスト表示領域に一覧表示し、前記眼屈折力の新たな測定値を前記リスト表示領域に追加表示するための領域が前記リスト表示領域に不足している場合には、前記リスト表示領域に既に表示されている前記眼屈折力の測定値の内、前記信頼度が最低の測定値を前記リスト表示領域から除去して、前記新たな測定値を前記リスト表示領域に追加表示する請求項6~請求項8のいずれか一項記載の眼屈折力測定装置。
【請求項10】
前記表示制御部は、前記測定部から得られた前記眼屈折力の測定値の内、最新の測定値を前記ディスプレイの一時表示領域に表示すると共に、前記測定部から得られた前記眼屈折力の測定値の内、前記信頼度が基準以上の測定値を、前記ディスプレイのリスト表示領域に一覧表示する請求項~請求項のいずれか一項記載の眼屈折力測定装置。
【請求項11】
前記表示制御部は、前記信頼度に対応した順序で、前記測定値を前記ディスプレイのリスト表示領域に一覧表示する請求項6~請求項10のいずれか一項記載の眼屈折力測定装置。
【請求項12】
前記被検眼の位置を検出するように構成される検出部
を備え、前記判定部は、前記信頼度を、前記検出部により検出された前記被検眼の位置に基づき判定する請求項~請求項11のいずれか一項記載の眼屈折力測定装置。
【請求項13】
前記判定部は、更に前記受光信号が示す前記反射光の空間分布を加味して、前記信頼度を判定する請求項12記載の眼屈折力測定装置。
【請求項14】
前記測定部は、複数の動作モードのうちのいずれかの動作モードで、前記眼屈折力を測定するように構成され、
前記複数の動作モードは、第一の動作モードと第二の動作モードとを含み、
前記測定部は、前記第一の動作モードでは、前記予備測定を実行した後、前記受光部からの受光信号に基づき前記眼屈折力を測定し、前記第二の動作モードでは、前記予備測定なしで、前記連続測定を開始する請求項1~請求項のいずれか一項記載の眼屈折力測定装置。
【請求項15】
前記測定部は、前記第一の動作モードでは、前記予備測定及び自動雲霧を実行した後、前記受光部からの受光信号に基づき前記眼屈折力を測定し、前記第二の動作モードでは、前記予備測定なし及び前記自動雲霧なしで、前記連続測定を開始し、前記連続測定では、前記受光部からの受光信号に基づき前記眼屈折力を測定する処理を、前記連続測定の終了まで前記予備測定なし及び前記自動雲霧なしで、不定回数、連続的に実行し、前記終了条件が満足されると、前記連続測定を終了する請求項14記載の眼屈折力測定装置。
【請求項16】
前記測定部は、複数の動作モードのうちのいずれかの動作モードで、前記眼屈折力を測定するように構成され、
前記複数の動作モードは、第一の動作モードと第二の動作モードとを含み、
前記測定部は、前記第一の動作モードでは、前記予備測定及び前記自動雲霧を実行した後、前記受光部からの受光信号に基づき前記眼屈折力を測定し、前記第二の動作モードでは、前記予備測定なし及び前記自動雲霧なしで、前記連続測定を開始し、
前記第一の動作モードでは、眼屈折力測定用の撮像素子の位置を光軸方向に調整して前記予備測定を行い、前記予備測定により得られた前記眼屈折力の測定値に基づいて、視標を光軸方向に移動させる動作を含む前記自動雲霧を実行し、
前記第二の動作モードでは、前記予備測定及び前記自動雲霧を実行することなく、前記撮像素子及び前記視標の前記光軸方向における位置を所定位置に固定した状態で、前記連続測定を開始する請求項4記載の眼屈折力測定装置。
【請求項17】
前記測定部は、前記第一の動作モードでの動作開始後、特定条件が満足されると、前記第一の動作モードに代えて、前記第二の動作モードでの動作を開始する請求項14~請求項16のいずれか一項記載の眼屈折力測定装置。
【請求項18】
前記測定値の信頼度を判定するように構成される判定部
を備え、
前記測定部は、前記第一の動作モードで前記眼屈折力の測定に失敗したこと、及び、前記第一の動作モードにおける前記眼屈折力の測定値の信頼度が所定の水準より低いことの少なくとも一方を条件に、前記第二の動作モードでの動作を開始する請求項17記載の眼屈折力測定装置。