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  • 特開-X線厚さ計 図1
  • 特開-X線厚さ計 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137306
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】X線厚さ計
(51)【国際特許分類】
   G01B 15/02 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
G01B15/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043447
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】川島 優樹
【テーマコード(参考)】
2F067
【Fターム(参考)】
2F067AA01
2F067AA27
2F067BB11
2F067GG01
2F067HH04
2F067JJ03
2F067NN02
2F067UU05
(57)【要約】
【課題】基準板を用いた校正動作の異常を予兆可能なX線厚さ計を提供すること。
【解決手段】基準板を抜出位置から挿入位置に移動させ及び挿入位置から抜出位置に戻した時の動作時間及びこのときのロータリーソレノイドの電圧、電流、及び温度が、予め比較データとして記憶装置に格納され、監視部は、校正時における動作時間が比較データから所定時間変動した場合に、校正時におけるロータリーソレノイドの電圧、電流、及び温度の少なくともいずれか1つを比較データと比較することで、校正動作の異常を通知する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線発生器と、
前記X線発生器から発生し、被測定板を透過したX線を検出する検出器と、
予め取得された前記被測定板の材質ごとの前記検出信号と前記被測定板の厚さとの関係を表す検量線テーブルを格納した記憶装置と、
測定時における前記検出信号を前記検量線テーブルに基づいて前記被測定板の厚さに換算する演算部と、
ホルダーと、前記ホルダーに固定された基準板と、前記ホルダーを駆動させ、前記基準板をX線中に位置しない抜出位置からX線中に挿入される挿入位置へと移動させるロータリーソレノイドとを有する校正装置と、
前記校正装置の動作を監視する監視部と、
を備え、
前記基準板を前記抜出位置から前記挿入位置に移動させ及び前記挿入位置から前記抜出位置に戻した時の動作時間及びこのときの前記ロータリーソレノイドの電圧、電流、及び温度が、予め比較データとして前記記憶装置に格納され、
前記監視部は、校正時における前記動作時間が前記比較データから所定時間変動した場合に、前記校正時における前記ロータリーソレノイドの電圧、電流、及び温度の少なくともいずれか1つを前記比較データと比較することで、校正動作の異常を通知するX線厚さ計。
【請求項2】
前記校正装置は、前記基準板の前記抜出位置を検出する抜出位置センサと、前記基準板の前記挿入位置を検出する挿入位置センサとをさらに有し、
前記監視部は、前記校正時における前記抜出位置センサ及び前記挿入位置センサがオンした回数も監視する請求項1に記載のX線厚さ計。
【請求項3】
前記監視部は、前記校正時において前記基準板が前記挿入位置にあるときの前記検出器の前記検出信号も監視する請求項1または2に記載のX線厚さ計。
【請求項4】
前記校正装置は、複数の前記基準板を有し、
前記複数の基準板における動作時間の大小関係が予め比較データとして前記記憶部に格納され、
前記監視部は、前記校正時における前記複数の基準板における動作時間の大小関係が前記比較データから変化しないかを監視する請求項1~3のいずれか1つに記載のX線厚さ計。
【請求項5】
前記監視部は、前記校正時における前記動作時間が前記比較データから所定時間長くなった場合に、前記校正時における前記ロータリーソレノイドの前記電圧を前記比較データと比較し、前記電圧が前記比較データよりも所定値低下した場合に前記校正装置の電源異常を通知する請求項1~4のいずれか1つに記載のX線厚さ計。
【請求項6】
前記基準板は、前記挿入位置から前記抜出位置まで前記ロータリーソレノイド内のスプリングにより戻され、
前記校正時において、前記抜出位置から前記挿入位置までの前記基準板の動作時間が前記比較データから所定時間変動せず、前記挿入位置から前記抜出位置までの前記基準板の動作時間が前記比較データよりも所定時間以上長い場合に、前記監視部は前記スプリングの異常を通知する請求項1~5のいずれか1つに記載のX線厚さ計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、X線厚さ計に関する。
【背景技術】
【0002】
X線厚さ計は、被測定板を透過するX線の透過線量(透過したX線の減衰量)が、被測定板の厚さに応じて変化することを利用して、被測定板の厚さを測定する。X線厚さ計は、例えば鉄鋼の圧延ラインに用いられ、周囲の温度変化などの影響をキャンセルする校正のため、厚さが判明している複数の基準板を内蔵している。校正時には、それら基準板を組み合わせてX線ビーム中に挿入して透過線量を測定し、基準板の厚さと透過線量との関係(検量線)を修正し、測定精度を維持している。
【0003】
それぞれの基準板はホルダーに接着されており、ホルダーはロータリーソレノイドに据え付けられている。ロータリーソレノイドに電圧印加することでホルダーが駆動して、基準板がX線ビーム中に挿入される。ロータリーソレノイドへの電圧印加を止めると、ソレノイド内のスプリングにより基準板がX線挿入位置から抜き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-141943号公報
【特許文献2】特開平4-198708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態は、基準板を用いた校正動作の異常を予兆可能なX線厚さ計を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、X線厚さ計は、X線発生器と、前記X線発生器から発生し、被測定板を透過したX線を検出する検出器と、予め取得された前記被測定板の材質ごとの前記検出信号と前記被測定板の厚さとの関係を表す検量線テーブルを格納した記憶装置と、測定時における前記検出信号を前記検量線テーブルに基づいて前記被測定板の厚さに換算する演算部と、ホルダーと、前記ホルダーに固定された基準板と、前記ホルダーを駆動させ、前記基準板をX線中に位置しない抜出位置からX線中に挿入される挿入位置へと移動させるロータリーソレノイドとを有する校正装置と、前記校正装置の動作を監視する監視部と、を備え、前記基準板を前記抜出位置から前記挿入位置に移動させ及び前記挿入位置から前記抜出位置に戻した時の動作時間及びこのときの前記ロータリーソレノイドの電圧、電流、及び温度が、予め比較データとして前記記憶装置に格納され、前記監視部は、校正時における前記動作時間が前記比較データから所定時間変動した場合に、前記校正時における前記ロータリーソレノイドの電圧、電流、及び温度の少なくともいずれか1つを前記比較データと比較することで、校正動作の異常を通知する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態のX線厚さ計の構成を示す模式図である。
図2】(a)は実施形態の校正装置において基準板が抜出位置にある状態の模式図であり、(b)は実施形態の校正装置において基準板が挿入位置にある状態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。
【0009】
図1に示すように、実施形態のX線厚さ計は、X線発生器1と、検出器2と、演算部3と、記憶装置4と、監視部5と、校正装置6とを備える。図1において各構成をつなぐ線は、各構成を接続する信号線を表す。信号線は、有線でも無線でもよい。
【0010】
X線発生器1は、X線管(乾球)内の放電によりX線を発生する。X線発生器1からのX線は、被測定板10に照射される。被測定板10は、例えば、鉄やアルミニウムなどを主成分する金属板である。
【0011】
検出器2は、X線発生器1から発生し、被測定板10を透過したX線を検出する。検出器2は、検出したX線量に応じた検出信号を演算部3に出力する。検出信号は、例えば、電流である。
【0012】
記憶装置4には、検量線テーブルが格納されている。検量線テーブルは、予め取得された被測定板10の材質ごとの検出器2の検出信号と被測定板10の厚さとの関係を表す。記憶装置4として、例えば、磁気ディスク、半導体メモリを用いることができる。
【0013】
演算部3は、厚さ測定時において検出器2からの検出信号の入力を受け、検出器2からの検出信号を、記憶装置4から読み出した検量線テーブルに基づいて、被測定板10の厚さに換算する。また、演算部3は、X線発生器1の動作を制御する。
【0014】
校正装置6は、厚さが判明している複数の基準板を内蔵している。校正時にはそれらを単独で又は組み合わせてX線中に挿入する。そして、基準板を透過したX線の透過線量を検出器2で検出し、この検出信号と、基準板の既知の厚さとから検量線テーブルを修正することで、高い測定精度を維持できる。
【0015】
図2(a)及び(b)に示すように、校正装置6は、ホルダー12と、ホルダー12に固定された基準板11と、ホルダー12を駆動させ、基準板11をX線100中に位置しない抜出位置(図2(a)に示す位置)から、X線100中に挿入される挿入位置(図2(b)に示す位置)へと移動させるロータリーソレノイド13とを有する。
【0016】
校正装置6は、それぞれ厚さが異なる複数の基準板11を有する。それぞれの基準板11に対応して、複数のホルダー12及び複数のロータリーソレノイド13が設けられている。それぞれの基準板11は、それぞれのホルダー12に例えば接着されている。ホルダー12は、ロータリーソレノイド13に連結されている。ロータリーソレノイド13に電圧を印加することで、ホルダー12が抜出位置から挿入位置へと駆動され、基準板11がX線100中に挿入される。ロータリーソレノイド13への電圧の印加を停止すると、基準板11は、例えばロータリーソレノイド13内のスプリングにより挿入位置から抜出位置まで戻される。
【0017】
また、校正装置6は、基準板11の抜出位置を検出する抜出位置センサ14と、基準板11の挿入位置を検出する挿入位置センサ15と、ロータリーソレノイド13の温度を検出する温度センサ16とを有する。抜出位置センサ14及び挿入位置センサ15は、例えば、光学式の位置センサである。
【0018】
図2(a)及び(b)には、基準板11、ホルダー12、ロータリーソレノイド13、抜出位置センサ14、挿入位置センサ15、及び温度センサ16からなるユニットを1つしか図示しないが、それぞれが厚さの異なる基準板11を含む複数のユニットが、X線100の照射位置のまわりに配置されている。
【0019】
異常が検出されない状態(正常動作状態)の校正装置6を予め動作させ、基準板11を抜出位置から挿入位置に移動させ及び挿入位置から抜出位置に戻した時の動作時間及びこのときのロータリーソレノイド13の電圧、電流、及び温度が、予め比較データとして記憶装置4に格納される。
【0020】
監視部5は、校正時における校正装置6の動作を監視する。監視部5は、校正時における基準板11を抜出位置から挿入位置に移動させ及び挿入位置から抜出位置に戻した時の動作時間が、上記比較データから所定時間変動した場合に、その校正時におけるロータリーソレノイド13の電圧、電流、及び温度の少なくともいずれか1つをさらに上記比較データと比較することで、校正動作の異常を通知することができる。
【0021】
基準板11の動作に異常が発生すると校正不能となり、被測定板10の厚さ測定精度を維持できなくなる。基準板11の動作異常は、ほとんどの場合X線厚さ計が客先ラインでの使用中に発生するため、ライン停止しての復旧作業が必要となる場合が多い。例えば、圧延ラインは、定期検査やロール替えなどのとき以外は24時間稼働が続けられる。復旧には、用品交換の後、基準板関連パラメータの調整、測定精度の再確認などが必要であるため、ライン停止時間が長くなりやすい。これは生産効率の低下をまねく。
【0022】
本実施形態によれば、監視部5が校正時における校正装置6の動作を監視し、基準板動作異常が発生して校正不能となる前に異常予兆として検出することができる。このため、客先ラインを停止せずに、例えば定期検査やロール替えなどのときに計画して用品交換など作業を行うことができる。記憶装置4に格納された上記比較データは、用品交換時などに更新することができる。
【0023】
また、校正時における基準板11の動作時間が比較データの動作時間から所定時間変動した場合に、さらにロータリーソレノイド13の電圧、電流、及び温度の少なくともいずれか1つを比較データの電圧、電流、温度と比較し、それらの比較データからの変化傾向によって、異常原因の推測が可能となる。例えば、監視部5は、校正時における基準板11の動作時間が、比較データの動作時間に比べて1割から2割の時間長く又は短くなった場合に、ロータリーソレノイド13の電圧、電流、温度を比較データと比較するステップに進む。
【0024】
ロータリーソレノイド13の電圧と電流は、ロータリーソレノイド13に電力を供給する電源とロータリーソレノイド13とを接続する電気回路に設けた検出素子により検出することができる。ロータリーソレノイド13の温度は、温度センサ16により検出することができる。
【0025】
例えば、監視部5は、校正時における動作時間が比較データから所定時間長くなった場合に、そのときのロータリーソレノイド13の電圧を比較データと比較する。ロータリーソレノイド13の電圧が比較データから所定値低下した場合には、監視部5は校正装置6の電源異常が予測されることを通知する。
【0026】
校正時における動作時間が比較データから所定時間長くなった場合において、ロータリーソレノイド13の電圧が比較データから変動しない又は所定範囲内の変動にとどまる場合には、監視部5はさらにロータリーソレノイド13の電流と温度を比較データと比較する。ロータリーソレノイド13の電流と温度がともに比較データから所定値以上増大している場合には、監視部5は温度上昇によるロータリーソレノイド13の抵抗値の増大が予測されることを通知する。
【0027】
校正時における動作時間が比較データから所定時間長くなった場合において、ロータリーソレノイド13の電圧、電流、温度に異常が見られない場合、監視部5は、校正装置6の経年変化、動作干渉(引っかかりなど)による動作異常が予測されることを通知する。
【0028】
監視部5は、校正時における動作時間として、基準板11が抜出位置から挿入位置に移動する時間(挿入時間)と、挿入位置から抜出位置に戻る時間(抜出時間)と、のそれぞれを監視することができる。例えば、監視部5は、校正時における動作時間が比較データから所定時間短くなった場合において、挿入時間は比較データから所定時間変動せず、抜出時間が比較データから所定時間短くなっていると、基準板11のホルダー12からの脱落が予測されることを通知する。また、監視部5は、挿入時間が比較データから所定時間変動せず、抜出時間が比較データよりも所定時間以上長い場合に、ロータリーソレノイド13内のスプリングの異常が予測されることを通知する。
【0029】
基準板11の抜出位置と挿入位置との間の移動の際に、ホルダー12の跳ね返り(チャタリング)が起こると、その跳ね返り回数に応じて抜出位置センサ14と挿入位置センサ15のオン回数が増えることがある。監視部5は、校正時における抜出位置センサ14及び挿入位置センサ15がオンした回数も監視する。これにより、基準板11の動作時にホルダー12の跳ね返り(チャタリング)が起きて動作時間が比較データよりも長くなっても、監視部5は異常とは判断しない。
【0030】
複数の基準板11のうち、薄いものでは例えば0.1mmの厚さの基準板11もある。このような薄い基準板11は、振動や衝撃で破れることもある。そこで、監視部5は、校正時において基準板11が挿入位置にあるときの検出器2の検出信号も監視する。これにより、監視部5は、X線が破れた基準板11を透過していること、換言すると基準板11の破れについて判定し、通知することができる。
【0031】
複数の基準板11における動作時間の大小関係が予め比較データとして記憶装置4に格納される。厚い基準板11ほど重く、動作時間が長くなる。監視部5は、校正時における複数の基準板11における動作時間の大小関係が比較データの大小関係から変化しないかを監視する。これにより、おかしい動作をしている基準板11がないかどうかを判定することができる。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1…X線発生器、2…検出器、3…演算部、4…記憶装置、5…監視部、6…校正装置、10…被測定板、11…基準板、12…ホルダー、13…ロータリーソレノイド、14…抜出位置センサ、15…挿入位置センサ、16…温度センサ
図1
図2