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特開2023-137323回転機器の異常検出装置、回転機器の異常検出方法、回転機器の異常検出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137323
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】回転機器の異常検出装置、回転機器の異常検出方法、回転機器の異常検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20230922BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G01M99/00 A
G01H17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043473
(22)【出願日】2022-03-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 一般社団法人日本設備管理学会「2021年度春季研究発表大会論文集」(令和3年6月3日発行)第38頁~第41頁に掲載 [刊行物等] 一般社団法人日本設備管理学会「2021年度春季研究発表大会」(令和3年6月14日開催)にて発表 [刊行物等] 一般社団法人日本設備管理学会「2021年度秋季研究発表大会論文集」(令和3年11月10日発行)第67頁~第68頁に掲載 [刊行物等] 一般社団法人日本設備管理学会「2021年度秋季研究発表大会」(令和3年11月12日開催)にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】599071027
【氏名又は名称】サイエンス ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183988
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 泰帥
(72)【発明者】
【氏名】西川 正名
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024BA27
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB22
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC42
2G064CC43
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】
回転機器の点検整備や機器損傷の検知対策が不十分だと、回転機器の劣化を招き、突如、稼働不能になる事態を引き起こす。簡易なしくみで実現でき、かつ、データ分析において高度な技術や経験が不要な回転機器の異常検出装置、回転機器の異常検出方法、回転機器の異常検出プログラムが求められる。
【解決手段】
本発明は、軸回転数と振動加速度(実効値)の相関、もしくは、軸回転数と振動速度(実効値)の相関から求める回転機器の運転状態を判定する指標によって、簡易なしくみで実現でき、かつ、データ分析において高度な技術や経験が不要な回転機器の異常検出装置、回転機器の異常検出方法、回転機器の異常検出プログラムを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機器の異常検出装置であって、
異常検出の対象である前記回転機器について、運転時の振動の計測データを外部から受け取って蓄積する入力部と、
前記入力部が受け取って蓄積したデータから計測された回転機器の運転状態を示す指標の値を算出する算出部と、
前記算出部が算出した計測された前記回転機器の運転状態を示す指標の値から、前記回転機器の前記運転状態を判定する判定部と、
前記判定部が判定した前記運転状態、前記回転機器の運転状態を示す指標の値、から出力情報を生成して出力する出力部と、
を備えることを特徴とする回転機器の異常検出装置
【請求項2】
前記振動が低周波振動である、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転機器の異常検出装置
【請求項3】
前記算出部によって算出された計測された前記回転機器の運転状態を示す指標の値を解析して、前記運転状態を判定する判定指標を生成して保持する解析部を備え、
前記判定部は、前記算出部が算出した計測された前記回転機器の運転状態を示す指標の値を、前記解析部が生成して保持する前記判定指標によって評価することで、前記運転状態を判定する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転機器の異常検出装置
【請求項4】
前記解析部は、前記回転機器の運転状態を示す指標の値をクラスタ分析によって解析して、前記判定指標を生成して保持する、
ことを特徴とする請求項3に記載の回転機器の異常検出装置
【請求項5】
前記判定部は、前記算出部が算出した計測された前記回転機器の運転状態を示す指標の値を、前記運転状態を判定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルに入力することで、前記運転状態を判定する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転機器の異常検出装置
【請求項6】
前記回転機器の運転状態を示す指標が、前記回転機器の回転軸の回転数、振動加速度の実効値である、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の回転機器の異常検出装置
【請求項7】
前記回転機器の運転状態を示す指標が、前記回転機器の回転軸の回転数、振動速度の実効値である、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の回転機器の異常検出装置
【請求項8】
前記解析部は、前記回転機器の運転状態を示す指標の値をスペクトル分析によって解析して、前記判定指標を生成して保持する、
ことを特徴とする請求項3に記載の回転機器の異常検出装置
【請求項9】
前記判定部は、前記回転機器の運転状態を示す指標の値のスペクトルパターンを、前記運転状態を判定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルに入力することで、前記運転状態を判定する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転機器の異常検出装置
【請求項10】
前記判定部は、前記回転機器の前記運転状態が危険運転状態であると判定した場合には、実行しうる対処策を前記出力部に受け渡し、
前記出力部が生成して出力する前記出力情報には前記対処策が含まれる、
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の回転機器の異常検出装置
【請求項11】
回転機器の異常検出方法であって、
異常検出の対象である前記回転機器について、運転時の振動の計測データを外部から受け取って蓄積する入力ステップと、
前記入力ステップで受け取って蓄積したデータから計測された回転機器の運転状態を示す指標の値を算出する算出ステップと、
前記算出ステップで算出した計測された前記回転機器の運転状態を示す指標の値から、前記回転機器の前記運転状態を判定する判定ステップと、
前記判定ステップで判定した前記運転状態、前記回転機器の運転状態を示す指標の値、から出力情報を生成して出力する出力ステップと、
を備えることを特徴とする回転機器の異常検出方法
【請求項12】
回転機器の異常検出プログラムであって、
異常検出の対象である前記回転機器について、運転時の振動の計測データを外部から受け取って蓄積する入力ステップと、
前記入力ステップで受け取って蓄積したデータから計測された回転機器の運転状態を示す指標の値を算出する算出ステップと、
前記算出ステップで算出した計測された前記回転機器の運転状態を示す指標の値から、前記回転機器の前記運転状態を判定する判定ステップと、
前記判定ステップで判定した前記運転状態、前記回転機器の運転状態を示す指標の値、から出力情報を生成して出力する出力ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする回転機器の異常検出プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機器の異常検出装置、回転機器の異常検出方法、回転機器の異常検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
回転機器は使用に伴い、疲労、摩耗、腐食、割れ、材質劣化等が発生し、機器の損傷に至る。このような機器損傷は、機器類の設計で想定した条件下でも経年劣化的に発生するが、過負荷運転に代表される不適切な運転や、設置基礎の不良や潤滑油の劣化、不足等の整備不良は、機器損傷に至る劣化現象を加速する。回転機器の異常が発生すれば機能低下や故障等に到り、生産物の品質低下、生産停止、あるいは事故等が発生するため、早期に異常を発見し、適切な対処をとることが求められる。
【0003】
回転機器の異常を検出する代表的な技術として、振動計測・分析技術がある。一般的には、数~20KHz程度の周波数領域の振動を計測し、計測データから整備状態や損傷状態を特定することが可能であり、例えば、特許文献1や特許文献2に示す技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-101009号公報
【特許文献2】特開2018-36124号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】一般社団法人日本設備管理学会「2021年度春季研究発表大会論文集」(令和3年6月3日発行)第38頁~第41頁
【非特許文献2】一般社団法人日本設備管理学会「2021年度秋季研究発表大会論文集」(令和3年11月10日発行)第67頁~第68頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大型プラント等では、回転機器の異常は当該施設での経済的な影響に留まらず、社会的影響や甚大な事故の要因になることから、回転機器の運転条件は適切な範囲に管理され、また整備も良好に維持されている必要がある。例えば、特許文献1には、回転機器の各種異常の種類を精密に識別できる診断法が提案されている。また、特許文献2には、センサから得た回転機器の状態についてのデータの分析を精度良く行うことができる状態監視装置が提案されている。
【0007】
一方、中小規模の製造設備を備えるいわゆる一般産業では、回転機器の異常は当該施設での経済的な影響に留まることから、大型プラント等のレベルでの回転機器の点検整備および管理は過剰となる。すなわち、特許文献1に示すような診断法の採用は一般産業にとっては過剰となり、管理コストの増大を招く。
【0008】
また、製造業の人手不足は深刻であって、一般産業では、製造現場の熟練者が不足しているとの現実がある。このため、一般産業が、特許文献2に示すようなセンサから得た回転機器の状態についてのデータの分析を精度良く行うことができる状態監視装置を導入したとしても、分析データを読み解くために高度な技術や経験を求められ、熟練者が不足している実情にそぐわない場合も多い。
【0009】
しかし、このような一般産業にあっても、点検整備や機器損傷の検知対策が不十分だと、回転機器の劣化を招き、突如、稼働不能になる事態を引き起こす。このため、一般産業にあっては、簡易なしくみで実現でき、かつ、データ分析において高度な技術や経験が不要な回転機器の異常検出装置、回転機器の異常検出方法、回転機器の異常検出プログラムが求められる
【0010】
本発明の発明者は、振動センサを用いた回転機器の振動計測・分析を行った結果、軸回転数と振動加速度(実効値)の相関、もしくは、軸回転数と振動速度(実効値)の相関が、回転機器の運転状態を判定する指標となることを見出した。詳細は、非特許文献1及び非特許文献2を参照されたい。
【0011】
本発明は、軸回転数と振動加速度(実効値)の相関、もしくは、軸回転数と振動速度(実効値)の相関から求める回転機器の運転状態を判定する指標によって、簡易なしくみで実現でき、かつ、データ分析において高度な技術や経験が不要な回転機器の異常検出装置、回転機器の異常検出方法、回転機器の異常検出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様である回転機器の異常検出装置は、異常検出の対象である回転機器について、運転時の振動の計測データを外部から受け取って蓄積する入力部と、入力部が受け取って蓄積したデータから計測された回転機器の運転状態を示す指標の値を算出する算出部と、算出部が算出した計測された回転機器の運転状態を示す指標の値から、回転機器の運転状態を判定する判定部と、判定部が判定した運転状態、回転機器の運転状態を示す指標の値、から出力情報を生成して出力する出力部と、を備えることを特徴とする。ここで、運転時の振動の計測データとは、異常検出の対象である回転機器の運転時における振動を決定する情報を有する計測データをいう。本願書面において同様である。
【0013】
本発明の一態様である回転機器の異常検出装置は、入力部が外部から受け取って蓄積する計測データが運転時の低周波振動(おおむね100Hz以下)であることを特徴とする。本発明として開示する方法において、計測する振動の周波数領域によって回転機器の運転状態を判定する指標を求めるための軸回転数と振動加速度(実効値)の相関、もしくは、軸回転数と振動速度(実効値)の相関が異なるものではないが、回転機器の異常検出装置において低周波数領域に限ることで、振動センサが安価であり、また、計測データの解析に必要なコンピューターリソースが少なくて済む等の効果を得ることができる。また、非熟練者がセンサを設置しても計測誤差が少ない。
【0014】
本発明の一態様である回転機器の異常検出装置は、算出部によって算出された計測された回転機器の運転状態を示す指標の値を解析して、運転状態を判定する判定指標を生成して保持する解析部をさらに備え、判定部は、算出部が算出した計測された回転機器の運転状態を示す指標の値を、解析部が生成して保持する判定指標によって評価することで、運転状態を判定する、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様である回転機器の異常検出装置は、解析部は、回転機器の運転状態を示す指標の値をクラスタ分析によって解析して、判定指標を生成して保持する、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様である回転機器の異常検出装置は、判定部は、算出部が算出した計測された回転機器の運転状態を示す指標の値を、運転状態を判定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルに入力することで、運転状態を判定する、ことを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様である回転機器の異常検出装置は、回転機器の運転状態を示す指標が、回転機器の回転軸の回転数、振動加速度の実効値である、ことを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様である回転機器の異常検出装置は、回転機器の運転状態を示す指標が、回転機器の回転軸の回転数、振動速度の実効値である、ことを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様である回転機器の異常検出装置は、解析部は、回転機器の運転状態を示す指標の値をスペクトル分析によって解析して、判定指標を生成して保持する、ことを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様である回転機器の異常検出装置は、判定部は、回転機器の運転状態を示す指標の値のスペクトルパターンを、運転状態を判定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルに入力することで、運転状態を判定する、ことを特徴とする。
【0021】
本発明の一態様である回転機器の異常検出装置は、判定部は、回転機器の運転状態が危険運転状態であると判定した場合には、実行しうる対処策を出力部に受け渡し、出力部が生成して出力する出力情報には対処策が含まれる、ことを特徴とする。
【0022】
本発明の一態様である回転機器の異常検出方法は、異常検出の対象である回転機器について、運転時の振動の計測データを外部から受け取って蓄積する入力ステップと、入力ステップで受け取って蓄積したデータから計測された回転機器の運転状態を示す指標の値を算出する算出ステップと、算出ステップで算出した計測された回転機器の運転状態を示す指標の値から、回転機器の運転状態を判定する判定ステップと、判定ステップで判定した運転状態、回転機器の運転状態を示す指標の値、から出力情報を生成して出力する出力ステップと、を備えることを特徴とする。
【0023】
本発明の一態様である回転機器の異常検出プログラムは、異常検出の対象である回転機器について、運転時の振動の計測データを外部から受け取って蓄積する入力ステップと、入力ステップで受け取って蓄積したデータから計測された回転機器の運転状態を示す指標の値を算出する算出ステップと、算出ステップで算出した計測された回転機器の運転状態を示す指標の値から、回転機器の運転状態を判定する判定ステップと、判定ステップで判定した運転状態、回転機器の運転状態を示す指標の値、から出力情報を生成して出力する出力ステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明による回転機器の異常検出装置、回転機器の異常検出方法、回転機器の異常検出プログラムは、軸回転数と振動加速度(実効値)の相関、もしくは、軸回転数と振動速度(実効値)の相関から求める回転機器の運転状態を判定する指標によって、簡易なしくみで、データ分析において高度な技術や経験がなくても、回転機器の異常を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】回転機器の異常検出装置のブロック図である。
図2】回転機器の異常検出装置のハードウェア構成図である。
図3】回転機器の異常検出装置の動作を示すフローチャートである。
図4】振動センサを用いた回転機器の振動計測・分析の図である。
図5】振動センサを用いた回転機器の振動計測・分析の図である。
図6】第1の解析処理について説明する図である。
図7】第2の解析処理について説明する図である。
図8】対処策出力に関する出力処理について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。重複する説明は省略し、各図面において同一又は相当部分には同一の符号を付す。
【0027】
本発明の実施例において、回転機器の異常検出装置、回転機器の異常検出方法、回転機器の異常検出プログラムは、軸回転数と振動加速度(実効値)の相関、もしくは、軸回転数と振動速度(実効値)の相関から求める回転機器の運転状態を判定する指標によって、簡易なしくみで、データ分析において高度な技術や経験がなくても、回転機器の異常を検出できる。
【0028】
本発明について、実施例では、説明理解の容易性を考慮して、異常検出の対象である回転機器に設置した振動センサが振動加速度を計測するセンサであって、一定の時間周期で、一定の時間、一定の時間単位で(例えば、1時間毎に、10秒の間、1ミリ秒単位で、)計測された振動加速度を、運転時の振動の計測データとして入力する例をとって説明する。なお、これは説明理解の容易性を考慮した例示であって、これに限るものではない。異常検出の対象である回転機器の運転時における振動を決定する情報を有する計測データであればよく、例えば、回転機器の振動の振幅、周波数、位相を直接的に計測して、運転時の振動の計測データとして入力するなどでもよい。
【実施例0029】
本発明の実施例1として開示する、回転機器の異常検出装置、回転機器の異常検出方法、回転機器の異常検出プログラムは、回転機器の運転状態を示す指標の値をクラスタ分析によって解析し、生成し、保持された判定指標によって評価することで、運転状態を判定する。実施例1では、回転機器の運転状態を判定する指標を軸回転数と振動加速度(実効値)の相関から求めるとして説明する。
【0030】
本発明の実施形態として、回転機器の運転状態を判定する指標を軸回転数と振動速度(実効値)の相関から求める実施形態があるが、以下に開示する実施例1とは、振動加速度(実効値)と振動速度(実効値)の違いであって、その他の点において、回転機器の異常検出装置、回転機器の異常検出方法、回転機器の異常検出プログラムの構成が異なるものではない。そのため、回転機器の運転状態を判定する指標を軸回転数と振動速度(実効値)の相関から求める実施形態の説明は割愛する。
【0031】
まず、回転機器の異常検出装置について説明する。図1は、回転機器の異常検出装置のブロック図である。回転機器の異常検出装置1は、単独で装置として構成される形態のみならず、他の装置に組み込まれて使用される形態であってもよい。算出装置1を組み込む他の装置は、例えば、回転機器本体の他にも、パーソナルコンピューター、スマートフォン、情報携帯端末等の電化製品であってもよい。
【0032】
図2は、回転機器の異常検出装置1のハードウェア構成図である。図2に示すように、物理的には、中央演算装置(CPU)201、入力装置202、出力装置203、主記憶装置(RAM/ROM)204、補助記憶装置205を含むコンピュータとして構成される。
【0033】
回転機器の異常検出装置1の各機能は、図2に示す中央演算装置(CPU)201、主記憶装置(RAM/ROM)204等に、回転機器の異常検出プログラムを読み込ませることにより、中央演算装置(CPU)201の制御により入力装置202、出力装置203を動作させるとともに、主記憶装置(RAM/ROM)204、補助記憶装置205とデータの読み書きを行うことで実現される。
【0034】
図1に示すように、回転機器の異常検出装置1は、入力部101、算出部102、解析部103、判定部104及び出力部105を備えている。本実施例では、回転機器の異常検出装置1には、外部から入力部101に入力として、回転機器の運転時の振動の計測データとして与えられる。また、回転機器の異常検出装置1は、出力部105を介して外部へ情報を出力する。出力情報については、出力部105の説明で後述する。
【0035】
図1のブロック図に従って、回転機器の異常検出装置1の各ブロックの機能を説明する。なお、各ブロックの詳細な動作については後述する。
【0036】
入力部101は、異常検出の対象である回転機器について、運転時の振動の測データを外部から受け取って蓄積する。
【0037】
算出部102は、入力部101が受け取って蓄積したデータから計測され回転機器の運転状態を示す指標の値を算出する。
【0038】
解析部103は、算出部102によって算出された計測された回転機器の運転状態を示す指標の値を解析して、運転状態を判定する判定指標を生成して保持する。
【0039】
判定部104は、算出部102が算出した計測された回転機器の運転状態を示す指標の値を、解析部103が生成して保持する判定指標によって評価することで、運転状態を判定する。
【0040】
出力部105は、判定部104が判定した運転状態、回転機器の運転状態を示す指標の値、から出力情報を生成して出力する。
【0041】
次に、本実施例に係る回転機器の異常検出装置1の動作について説明する。図3は、本実施例に係る回転機器の異常検出装置1の動作を示すフローチャートである。図3のフローチャートに従って本実施例に係る回転機器の異常検出装置1の動作を説明する。
【0042】
本実施例では、回転機器の異常検出装置1には、処理の対象となる異常検出の対象である回転機器について計測された振動加速度が、運転時の振動の計測データとして外部から入力される。回転機器の異常検出装置1は、処理の対象となるデータが入力された後に動作を開始する。動作の開始は、情報の入力後に自動的であっても、明示的な命令によるものであってもよい。回転機器の異常検出装置1は、動作を開始すると、図3のフローチャートの処理を行う。
【0043】
回転機器の異常検出装置1は、動作を開始すると、入力部101が入力処理(S301)を実行する。本実施例では、入力処理(S301)では、異常検出の対象である回転機器について計測された振動加速度を、運転時の振動の計測データとして外部から受け取って蓄積する。外部から受け取ったデータは、後述する解析処理(S303)で、運転状態を判定する判定指標の生成にも使用される。判定指標は、異常検出の対象である回転機器ごとに固有であって、異常検出の対象である回転機器の過去の運転における振動のデータから生成されるため、入力処理(S301)では、外部からデータを受け取るとともに、判定指標を生成するために蓄積する。
【0044】
本実施例において、入力処理(S301)は、例えば、装置外部の振動センサからデータを逐次受け取って処理するような逐次処理であっても、例えば、一定期間の計測データをまとめて受け取って処理するようなバッチ処理であってもよい。
【0045】
入力処理(S301)が終了すると、算出部102が、算出処理(S302)を開始する。算出処理(S302)では、入力処理(S301)で受け取って蓄積したデータから計測された回転機器の運転状態を示す指標の値を算出する。本実施例では、前述の通り、回転機器の運転状態を判定する指標を軸回転数と振動加速度(実効値)の相関から求めるとして説明する。なお、ここで実効値とは、時間軸波形の一定時間内における各瞬時値の2乗平均値の平方根をいい、本願書面において同様である。
【0046】
本実施例では、算出処理(S302)において、入力処理(S301)で受け取って蓄積したデータから、回転機器の運転状態を示す指標の値として軸回転数、振動加速度(実効値)を算出する。本実施例では、入力処理(S301)で受け取って蓄積したデータから、高速フーリエ変換により得られる回転機器の周波数の次数毎のパワースペクトラムから軸回転数を算出する。なお、これは例示であって、軸回転数が算出できればよく、これに限るものではない。入力処理(S301)で受け取って蓄積したデータから他の方法で算出することでもよい。また、軸回転数、振動加速度(実効値)を間接的/直接的に計測することで値を得ることでもよい。例えば、軸回転数を回転機器のモータ電流から間接的に計測する、回転計により直接計測するなどである。
【0047】
算出処理(S302)が終了すると、解析部103が、解析処理(S303)を開始する。解析処理(S303)は、算出処理(S302)によって算出された計測された回転機器の運転状態を示す指標の値を解析して、運転状態を判定する判定指標を生成して保持する。本実施例では、回転機器の運転状態を示す指標の値は、軸回転数、振動加速度(実効値)である。本実施例では、解析処理(S303)は、回転機器の運転状態を示す指標の値をクラスタ分析によって解析し、判定指標を生成し、保持する。
【0048】
解析処理(S303)の説明に先立って、解析処理(S303)の根拠となる非特許文献1及び非特許文献2から導かれる要旨を概説する。図4は、本発明の発明者が行った、振動センサを用いた回転機器の振動計測・分析の図である。図4は、横軸に振動加速度(実効値)を、縦軸に軸回転数をとる二次元直交座標平面に、軸回転数、振動加速度(実効値)をプロットしている。なお、図4と後述の図5では、縦軸を2倍回転数としているが、これは実験時のスペクトル分析による回転数計測において最も特徴的であったことから、説明容易なことによる。回転機器の固有の特性によって異なるものの、振動加速度(実効値)との相関において、軸回転数が回転機器の運転状態を判定する指標となることは変わらない。振動速度(実効値)と軸回転数の相関においても同様である。
【0049】
本発明の発明者は、振動センサを用いた回転機器の振動計測・分析を行った結果、軸回転数と振動加速度(実効値)の相関が、回転機器の運転状態を判定する指標となることを見出した。回転機器において、負荷が大きくなると軸回転数が減少する。一方、負荷が大きくなれば回転機器の振動加速度が大きくなる。このため、軸回転数と振動加速度(実効値)の間には負の相関を見出すことができる。しかしながら、図4に示す計測結果から、軸回転数が低めの領域において、前述の軸回転数と振動加速度(実効値)の間には負の相関が消滅するデータセットの出現を発見した。図4において、丸印でレッド運転としてプロットされるデータセットである。さらに、軸回転数と振動加速度(実効値)が、このデータセットに含まれる回転機器は、運転条件が不適切、整備状況が不適切、回転機器自体に異常がある、のいずれかであって、継続的な運転が危険な運転状態(以下、危険運転状態)であることが判明した。これに基づいて、解析処理(S303)は、回転機器の運転状態を示す指標(本実施例では、軸回転数と振動加速度(実効値))の値を解析して、危険運転状態となるデータセットを判定する指標を生成して保持する。
【0050】
図5は、本発明の発明者が行った、振動センサを用いた回転機器の振動計測・分析の図である。図5は、横軸に振動速度(実効値)を、縦軸に軸回転数をとる二次元直交座標平面に、軸回転数、振動速度(実効値)をプロットしている。図5図4と対比すると、図5で示されるように軸回転数と振動速度(実効値)の間にも、図4で示される軸回転数と振動加速度(実効値)の間と同様に、危険運転状態であるデータセットが右下(第4象限の方面)に検出される。図5において、丸印でレッド運転としてプロットされるデータセットである。このように、軸回転数と振動加速度(実効値)の間と、軸回転数と振動速度(実効値)の間では、危険運転状態であるデータセットの検出において同様の傾向がみられる。よって、前述の通り、実施例1の説明において、回転機器の運転状態を判定する指標を軸回転数と振動速度(実効値)の相関から求める実施形態の説明は割愛する。
【0051】
前述の通り、解析処理(S303)は、回転機器の運転状態を示す指標の値をクラスタ分析によって解析し、判定指標を生成し、保持する。回転機器の運転状態を示す指標の値が適切に解析できるクラスタ分析であればよく、例えば、クラスタ数を2と設定したk平均法などのアルゴリズムによることでもよい。本実施例では、回転機器の運転状態を示す指標の値が適切に解析でき、かつ、解析に必要なコンピューターリソースの軽減も図つことができる直線によるクラスタ分析の例を開示する。なお、本発明を、この例に限るものではない。
【0052】
本実施例で、解析処理(S303)が行う運転状態を判定する判定指標の生成について、図6及び図7を用いて説明する。解析処理(S303)について、第1の解析処理と第2の解析処理を説明するが、これらは例示であって、運転状態を判定する判定指標の生成をこれらの処理に限るものではない。また、後述する判定処理(S304)では、第1の解析処理による判定指標、第2の解析処理による判定指標のいずれかに基づく判定であっても、もしくは、いずれにも基づく判定であってもよい。
【0053】
図6は、第1の解析処理について説明する図である。図6は、横軸に振動加速度(実効値)を、縦軸に軸回転数をとる二次元直交座標平面に算出処理(S302)によって算出された計測された回転機器の運転状態を示す指標の値である軸回転数、振動加速度(実効値)を示している。
【0054】
危険運転状態のデータセットは、図6において右下(第4象限の方面)に現れる。第1の解析処理では、危険運転状態のデータセットが現れる二次元直交座標平面上の領域(以下、危険領域)を、横軸に平行な直線と、縦軸に平行な直線の2つの直線によって危険領域のクラスタとして指定する。第1の解析処理では、解析処理(S303)は、運転状態を判定する判定指標として、危険領域のクラスタを指定する2つの直線の式を生成して保持する。
【0055】
第1の解析処理では、振動加速度(実効値)及び軸回転数の分布図(図6)において、計測された振動加速度(実効値)が直線Lの右側、かつ、計測された軸回転数が直線Lの下側に位置した場合に危険運転状態であると特定する。第1の解析処理では、直線Lのx座標値α及び直線Lのy座標値βが、運転状態を判定する判定指標として、生成して保持される。過去に計測された一定数のデータから判定指標の生成について説明する。
【0056】
計測されたデータが、直線Lの左側にある場合のx座標値をx、直線Lの右側にある場合のx座標値をxとする。この際、次に示す式(数1)でQを定義する。式(数1)で、Nは直線Lの左側にあるデータの数、Nは直線Lの右側にあるデータの数を示す。
【0057】
【数1】
【0058】
式(数1)は、下に凸の曲線になるので、Qの最小値に対応するαの位置に直線Lを引けば合理的なクラスタを分離できる。よって、式(数1)をαで偏微分すると次の式(数2)となる。
【0059】
【数2】
【0060】
Qの最小値に対応するαでは、式(数2)で左辺が0をとる。kをパラメータとして、αは、次の式(数3)で表される。また、計測されたデータのy座標値について、同様にして、直線Lのy座標値βも式(数3)の通り決定される。
【0061】
【数3】
【0062】
以上が、本実施例で、解析処理(S303)が行う運転状態を判定する判定指標の生成について、第1の解析処理の説明である。
【0063】
図7は、第2の解析処理について説明する図である。図6と同様に、横軸に振動加速度(実効値)を、縦軸に軸回転数をとる二次元直交座標平面に算出処理(S302)によって算出された計測された回転機器の運転状態を示す指標の値である軸回転数、振動加速度(実効値)を示している。
【0064】
危険運転状態のデータセットは、図7において右下(第4象限の方面)に現れる。第2の解析処理では、傾きを持った1つの直線によって危険領域のクラスタを指定する。第2の解析処理では、解析処理(S303)は、運転状態を判定する判定指標として、危険領域のクラスタを指定する1つの直線Lの式(数4)を生成して保持する。
【0065】
【数4】
【0066】
第2の解析処理では、直線Lの式(数4)の傾きa及び切片bが、運転状態を判定する判定指標として、生成して保持される。過去に計測された一定数のデータから判定指標の生成について説明する。
【0067】
計測されたデータが、直線Lの上側にある場合の座標を(x,y)、直線Lの下側にある場合の座標を(x,y)とする。この際、次に示す式(数5)でQを定義する。式(数5)で、Nは直線Lの上側にあるデータの数、Nは直線Lの下側にあるデータの数を示す。
【0068】
【数5】
【0069】
式(数5)で、(x,y)は、(x,y)あるいは(x,y)から直線Lに対して垂線を下した際の交点(いわゆる垂線の足)の座標を意味する。次式(式6)は、(x,y)の場合の(x,y)を示す。(x,y)の場合も同様に求めることができる。
【0070】
【数6】
【0071】
式(数5)は、直線Lの上側にあるデータと下側にあるデータの重心の和を意味するが、これは直線Lの式(数4)を規定する二つの定数a及びbに依存する量である。ここで工学的な手法として直線Lの傾き(a)に適切な値(例えば、a=1)を与えれば、Qはbのみに依存する量となり、bに対して下に凸の曲線となる。したがって、Qが最小となるbをとる直線Lを用いれば、計測データを2つのクラスタに合理的に分離できる。このようなbを求めるには、式(数6)を式(数5)に代入したQをbで偏微分した式を0とすればよく、結果は式(数7)で与えられる。なお、傾きは、データの分布から適切な値を設定する。
【0072】
【数7】
【0073】
以上が、本実施例で、解析処理(S303)が行う運転状態を判定する判定指標の生成について、第2の解析処理の説明である。
【0074】
解析処理(S303)が終了すると、判定部104が、判定処理(S304)を開始する。判定処理(S304)は、算出処理(S302)で算出した計測された回転機器の運転状態を示す指標の値を、解析処理(S303)で生成して保持する判定指標によって評価することで、運転状態を判定する。本実施例では、判定処理(S304)は、算出処理(S302)で算出した計測された回転機器の運転状態を示す指標の値である軸回転数、振動加速度(実効値)を、解析処理(S303)で生成して保持する判定指標によって評価することで、回転機器の運転状態を示す指標の値が危険領域にあって、回転機器の運転状態が危険運転状態であるかを判定する。また、判定指標は、第1の解析処理による危険領域のクラスタを指定する2つの直線の式、及び/または、第2の解析処理による危険領域のクラスタを指定する1つの直線の式である。
【0075】
第1の解析処理で生成して保持された判定指標である直線Lのx座標値α及び直線Lのy座標値βによっての判定は、(振動加速度(実効値))>α、かつ、(軸回転数)<βであるとき、判定処理(S304)で危険運転状態と判定される。
【0076】
第2の解析処理で生成して保持された判定指標である直線Lの傾きa及び切片bによっての判定は、a×(振動加速度(実効値))+b<(軸回転数)であるとき、判定処理(S304)で危険運転状態と判定される。
【0077】
判定処理(S304)が終了すると、出力部105が、出力処理(S305)を開始する。出力処理(S305)は、判定処理(S304)で判定した運転状態、回転機器の運転状態を示す指標の値、から出力情報を生成して出力する。
【0078】
出力情報として、回転機器の運転状況の管理や整備に有用な情報、例えば、軸回転数や振動加速度(実効値)、振動速度(実効値)などのデータを出力情報として生成して出力してもよい。また、これらのデータについて計測期間における最大値、最小値、平均値などの数値を示す表や、計測期間における推移を示すグラフなどを出力情報として生成して出力してもよい。
【0079】
出力情報として、判定処理(S304)で判定した運転状態から実行しうる対処策を出力情報として生成して出力してもよい。対処策の出力は、本発明の実施を想定する中小規模の製造設備を備えるいわゆる一般企業において有効な機能であるため、詳しく説明する。
【0080】
回転機器の異常運転状態における実行しうる対処策は、3つに大別される。第1に、運転条件の遵守である。具体的には、回転機器に許容される範囲内での負荷に留める、環境条件などを越えない運転を行うなど、である。本実施例の説明では、これを第1の対処策とする。第2に、適切な整備である。具体的には、潤滑油の油質や油量を適切に維持する、回転駆動源であるモータと回転機器との間のアライメントを適切に保持する、ベルト等の状況を適切に維持する、回転機器を堅牢な台座に固定する、などについての日常的な点検整備である。本実施例の説明では、これを第2の対処策とする。第3に、設備異常の早期検知と補修である。具体的には、回転機器の経年劣化に伴う機器の破損を可能な限り早期に検知して修理を行うことである。本実施例の説明では、これを第3の対処策とする。中小規模の製造設備を備えるいわゆる一般企業においては、これらの切り分けがスムーズにできない場合が多く、回転機器に異変が生じても対処が遅れたり、誤った対処を行うことで、異変が長期化したり、突如、稼働不能となる事態を引き起こすことが多い。
【0081】
図8は、本実施例で、対処策出力に関する出力処理(S305)について説明するフローチャートである。対処策の出力については、標準的な出力情報として出力してもよいし、回転機器に異変が生じている際に外部から出力指示を行うことで随時出力してもよい。ここでは、説明理解の容易性を考慮して、回転機器に異変が生じていると感じた運転者が対処策出力を指示したとして説明する。
【0082】
対処策出力に関する出力処理(S305)が開始すると、S801の処理で、判定処理(S304)で危険運転状態と判定されたかどうか判断する。判定処理(S304)で危険運転状態ではないと判定されていた場合、回転機器の異変の原因は、運転条件が適正範囲を逸脱している可能性が考えられる。そこで、S802の処理で、運転条件遵守の対処策(第1の対処策)を出力する。具体的な対処策は回転機器によって異なるが、例えば、回転機器に許容される範囲内での負荷であるか確認のうえ問題があれば改善する、環境条件を越えていないか確認のうえ問題があれば改善する、などを対処策として出力する。
【0083】
判定処理(S304)で危険運転状態であると判定されていた場合、回転機器の異変の原因は、適切な整備が行われていない可能性が考えられる。そこで、S803の処理で、適切な整備の対処策(第2の対処策)を出力する。具体的な対処策は回転機器によって異なるが、例えば、潤滑油の油質や油量を確認して適正に維持する、回転駆動源であるモータと回転機器との間のアライメントを確認して適切に保持する、ベルト等の状況を確認して適切に維持する、回転機器の台座への固定を確認する、などを対処策として出力する。
【0084】
判定処理(S304)で危険運転状態であると判定されていた場合は、危険運転状態であるから出力された対処策(第2の対処策)を実行したうえで、再度、本願発明の実行によって危険運転状態であるかどうかの判定を行う。すべての対処策を実行したにも関わらず、判定処理(S304)で危険運転状態であると判定されている場合は、設備異常、例えば、経年劣化に伴う機器の破損などが考えられるため、専門家に精密検査や修理など(第3の対処策)を依頼することになる。
【0085】
このように、出力情報として、判定処理(S304)で判定した運転状態から実行しうる対処策を出力情報として生成して出力することで、中小規模の製造設備を備えるいわゆる一般企業において、熟練者に寄らずとも、回転機器に異変の原因の速やかな切り分けと対処が可能となる。
【0086】
以上が、回転機器の異常検出装置についての説明である。
【0087】
次に、コンピュータを回転機器の異常検出装置として機能させるための回転機器の異常検出プログラムについて説明する。コンピュータの構成は、図2に示す通りである。
【0088】
回転機器の異常検出プログラムは、メインモジュール、入出力モジュール及び演算処理モジュールを備える。メインモジュールは、処理を統括的に制御する部分である。入出力モジュールは、画像データなどの入力情報をコンピュータに取得させ、算出した情報を数値や画像でコンピュータに出力させる。演算処理モジュールは、入力モジュール、算出モジュール、解析モジュール、判定モジュール及び出力モジュールを備える。メインモジュール、入出力モジュール及び演算処理モジュールを実行させることにより実現される機能は、回転機器の異常検出装置1の入力部101、算出部102、解析部103、判定部104及び出力部105の機能とそれぞれ同様である。
【0089】
回転機器の異常検出プログラムは、例えば、ROM等の記憶媒体又は半導体メモリによって提供される。また、算出プログラムは、ネットワークを介して提供されてもよい。
【0090】
以上が、実施例1の説明である。
【実施例0091】
本発明の実施例2として開示する、回転機器の異常検出装置、回転機器の異常検出方法、回転機器の異常検出プログラムは、回転機器の運転状態を示す指標の値を、運転状態を判定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルに入力することで、運転状態を判定する。
【0092】
実施例2では、実施例1と同様に、回転機器の運転状態を示す指標を軸回転数と振動加速度(実効値)として説明する。また、実施例1と同様の理由によって、回転機器の運転状態を示す指標を軸回転数と振動速度(実効値)とする実施形態の説明を割愛する。
【0093】
本実施例の回転機器の異常検出装置について実施例1と対比しつつ説明する。図1に示す実施例1における回転機器の異常検出装置のブロック図で、入力部101、算出部102及び出力部105については、機能及び動作において本実施例と同様である。よって説明を割愛する。
【0094】
本実施例の回転機器の異常検出装置は、解析部103を備えない。一方、回転機器の運転状態を示す指標(本実施例では、軸回転数と振動加速度(実効値))の値から運転状態を判定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルを備える。機械学習は、教師なし学習、教師あり学習のいずれであってもよい。学習モデルは、外部から与えられてもよいし、回転機器の異常検出装置の内部で生成することでもよい。
【0095】
教師なし学習による場合、例えば、回転機器の運転状態を示す指標(本実施例では、軸回転数と振動加速度(実効値))の値を特徴量として与え、運転状態を(本実施例では、危険運転状態と非危険運転状態)を目的変数とした教師なし学習によって、学習モデルが生成される。
【0096】
教師あり学習による場合、例えば、熟練者によって特定された危険運転状態と非危険運転状態のデータを学習することで、学習モデルが生成される。
【0097】
本実施例の回転機器の異常検出装置で、判定部104は、算出部102が算出した計測された回転機器の運転状態を示す指標(本実施例では、軸回転数と振動加速度(実効値))の値を、運転状態を判定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルに入力することで、運転状態を判定する。
【0098】
本実施例の回転機器の異常検出装置のハードウェア構成は、図2に示す実施例1における回転機器の異常検出装置のハードウェア構成と同様である。主記憶装置(RAM/ROM)204もしくは補助記憶装置205に学習モデルを保持する。また、本実施例の回転機器の異常検出装置は、実施例1における回転機器の異常検出装置と同様に、単独で装置として構成される形態のみならず、他の装置に組み込まれて使用される形態であってもよい。算出装置1を組み込む他の装置は、例えば、回転機器本体の他にも、パーソナルコンピューター、スマートフォン、情報携帯端末等の電化製品であってもよい。
【0099】
本実施例におけるコンピュータを回転機器の異常検出装置として機能させるための回転機器の異常検出プログラムについては、回転機器の運転状態を示す指標(本実施例では、軸回転数と振動加速度(実効値))の値から運転状態を判定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルを備えること、判定モジュールを実行させることにより実現される機能が、算出モジュールが算出した計測された回転機器の運転状態を示す指標(本実施例では、軸回転数と振動加速度(実効値))の値を、運転状態を判定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルに入力することで、運転状態を判定することが、実施例1の回転機器の異常検出プログラムと異なる。
【0100】
以上が、実施例2の説明である。
【実施例0101】
本発明の実施例3として開示する、回転機器の異常検出装置、回転機器の異常検出方法、回転機器の異常検出プログラムは、回転機器の運転状態を示す指標の値をスペクトル分析によって解析した結果を利用して、運転状態を判定する。
【0102】
実施例3では、実施例1と同様に、回転機器の運転状態を示す指標を軸回転数と振動加速度(実効値)として説明する。また、実施例1と同様の理由によって、回転機器の運転状態を示す指標を軸回転数と振動速度(実効値)とする実施形態の説明を割愛する。
【0103】
本実施例の回転機器の異常検出装置について実施例1と対比しつつ説明する。図1に示す実施例1における回転機器の異常検出装置のブロック図で、入力部101、算出部102及び出力部105については、機能及び動作において本実施例と同様である。よって説明を割愛する。
【0104】
本実施例の回転機器の異常検出装置で、解析部103は、計測したデータについて、回転機器の運転状態を示す指標である軸回転数と振動加速度(実効値)の値で高速フーリエ変換を用いたエンベロープ解析を行う。これにより、危険運転状態に特徴的なスペクトルを特定して、判定指標として保持する。
【0105】
本実施例の回転機器の異常検出装置で、判定部104は、解析部103が保持する危険運転状態に特徴的なスペクトルが発生した場合、危険運転状態であると判定する。
【0106】
本実施例の回転機器の異常検出装置では、解析部103が特定した危険運転状態に特徴的なスペクトルで判定部104が危険運転状態であると判定した際のスペクトルパターンや、熟練者によって危険運転状態と判断された際のスペクトルパターンをディープラーニング(深層学習)することで生成された運転状態を判定するための学習モデルを備えて判定に用いてもよい。学習モデルは、外部から与えられてもよいし、回転機器の異常検出装置の内部で生成することでもよい。判定部104は、計測されたスペクトルパターンを、運転状態を判定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルに入力することで、運転状態を判定する。
【0107】
本実施例の回転機器の異常検出装置のハードウェア構成は、図2に示す実施例1における回転機器の異常検出装置のハードウェア構成と同様である。主記憶装置(RAM/ROM)204もしくは補助記憶装置205に学習モデルを保持する。また、本実施例の回転機器の異常検出装置は、実施例1における回転機器の異常検出装置と同様に、単独で装置として構成される形態のみならず、他の装置に組み込まれて使用される形態であってもよい。算出装置1を組み込む他の装置は、例えば、回転機器本体の他にも、パーソナルコンピューター、スマートフォン、情報携帯端末等の電化製品であってもよい。
【0108】
本実施例におけるコンピュータを回転機器の異常検出装置として機能させるための回転機器の異常検出プログラムについては、解析モジュールを実行させることにより実現される機能が、回転機器の運転状態を示す指標である軸回転数と振動加速度(実効値)の値で高速フーリエ変換を用いたエンベロープ解析を行い、危険運転状態に特徴的なスペクトルを特定して、判定指標として保持すること、スペクトルパターンをディープラーニング(深層学習)することで運転状態を判定するための学習モデルを備えること、判定モジュールを実行させることにより実現される機能が、危険運転状態に特徴的なスペクトルやスペクトルパターンによって、危険運転状態であると判定することが、実施例1の回転機器の異常検出プログラムと異なる。
【0109】
以上が、実施例3の説明である。
【符号の説明】
【0110】
1 回転機器の異常検出装置
101 入力部
102 算出部
103 解析部
104 判定部
105 出力部
201 中央演算装置(CPU)
202 入力装置
203 出力装置
204 主記憶装置(RAM/ROM)
205 補助記憶装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8