(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137336
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】止水装置
(51)【国際特許分類】
E06B 7/22 20060101AFI20230922BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20230922BHJP
E06B 7/23 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
E06B7/22 F
E06B5/00 Z
E06B7/23 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043493
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 功明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅人
(72)【発明者】
【氏名】人見 秀哉
(72)【発明者】
【氏名】増田 成悟
(72)【発明者】
【氏名】原 孝士郎
(72)【発明者】
【氏名】保木 栄治
【テーマコード(参考)】
2E036
2E239
【Fターム(参考)】
2E036AA01
2E036BA01
2E036CA01
2E036DA02
2E036EB07
2E036EC03
2E036GA04
2E036HB14
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】扉枠が設置された状態であっても開口部の止水を行うことができる止水装置を提供する。
【解決手段】本実施形態の止水装置3は、構造物の開口部Mに設けられ扉体5が回転可能に連結された扉枠4に取り付けられ、前記扉体5が閉じられた状態で、扉枠4と扉体5との間に介在する枠状である。止水装置3は、枠体60と、弾性部70と、を備える。枠体60は、保持部65を有し、扉枠4に取り付け可能である。弾性部70は、保持部65に保持され、扉体5が閉じられた状態で扉体5と当接することで扉枠4と扉体5との間をシールする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の開口部に設けられ扉体が回転可能に連結された扉枠に取り付けられ、前記扉体が閉じられた状態で、前記扉枠と当該扉体との間に介在する枠状の止水装置であって、
保持部を有し、前記扉枠に取り付け可能な枠体と、
前記保持部に保持され、前記扉体が閉じられた状態で前記扉体と当接することで前記扉枠と前記扉体との間をシールする弾性部と、
を備えた止水装置。
【請求項2】
前記扉枠は、
上縁部と、
下縁部と、
前記上縁部と前記下縁部とを接続し、前記扉体が連結された吊元側の側縁部と、
前記上縁部と前記下縁部とを接続し、前記吊元側の側縁部と対向した戸先側の側縁部と、
を有し、
前記弾性部は、前記吊元側の側縁部と連結された前記扉体の側部における前記扉体の回転中心とは反対側の端部の回転軌跡から離間した、請求項1に記載の止水装置。
【請求項3】
前記扉枠は、
上縁部と、
下縁部と、
前記上縁部と前記下縁部とを接続し、前記扉体が連結された吊元側の側縁部と、
前記上縁部と前記下縁部とを接続し、前記吊元側の側縁部と対向した戸先側の側縁部と、
を有し、
前記弾性部は、
前記上縁部に設けられる上側弾性体と、
前記下縁部に設けられる下側弾性体と、
前記吊元側の側縁部に設けられる吊元側弾性体と、
前記戸先側の側縁部に設けられる戸先側弾性体と、
を有し、
前記上側弾性体、前記下側弾性体、前記吊元側弾性体、および前記戸先側弾性体は、それぞれ、幅方向に圧縮された状態で前記保持部に保持され、
前記吊元側弾性体の前記幅方向の圧縮量は、前記上側弾性体の前記幅方向の圧縮量と、前記下側弾性体の前記幅方向の圧縮量と、前記戸先側弾性体の前記幅方向の圧縮量とのいずれよりも小さい、請求項1に記載の止水装置。
【請求項4】
前記扉体は、前記開口部の一方側と他方側とを仕切り、
前記扉枠は、
上縁部と、
下縁部と、
前記上縁部と前記下縁部とを接続し、前記扉体が連結された吊元側の側縁部と、
前記上縁部と前記下縁部とを接続し、前記吊元側の側縁部と対向した戸先側の側縁部と、
前記上縁部、前記下縁部、前記吊元側の側縁部、および前記戸先側の側縁部に亘り、閉じられた状態の前記扉体の前記他方側に位置し前記扉体と対向する戸当たり面と、
前記上縁部、前記下縁部、前記吊元側の側縁部、および前記戸先側の側縁部に亘り、前記戸当たり面から前記他方側に延びた取付面と、
と有し、
前記枠体は、前記取付面に取り付けられ、
前記弾性部は、
前記上縁部に設けられる上側弾性体と、
前記下縁部に設けられる下側弾性体と、
前記吊元側の側縁部に設けられる吊元側弾性体と、
前記戸先側の側縁部に設けられる戸先側弾性体と、
を有し、
前記吊元側の側縁部の前記戸当たり面からの前記吊元側弾性体の突出量は、前記上縁部の前記戸当たり面からの前記上側弾性体の突出量と、前記下縁部の前記戸当たり面からの前記下側弾性体の突出量と、前記戸先側の側縁部の前記戸当たり面からの前記戸先側弾性体の突出量とのいずれよりも小さい、請求項1に記載の止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、止水扉として、環状の扉枠と、この扉枠の開口部を塞止する扉体とを備え、この扉体にて開口部を塞止することによって、開口部からの浸水を阻止する止水扉が開示されている(例えば、特許文献1)。この止水扉は、扉枠に、止水ゴムを保持する保持部が一体形成されている。そして、この止水扉は、止水ゴムによって扉枠と扉体との間をシールすることで開口部の止水をする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、扉枠に上記の止水装置が設けられていない構成でも、扉枠の設置後に、止水ができれば有益である。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、扉枠が設置された状態であっても開口部の止水を行うことができる止水装置を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る止水装置は、構造物の開口部に設けられ扉体が回転可能に連結された扉枠に取り付けられ、前記扉体が閉じられた状態で、前記扉枠と当該扉体との間に介在する枠状の止水装置であって、保持部を有し、前記扉枠に取り付け可能な枠体と、前記保持部に保持され、前記扉体が閉じられた状態で前記扉体と当接することで前記扉枠と前記扉体との間をシールする弾性部と、を備える。
【0007】
このような構成によれば、枠体が扉枠に取り付け可能であるので、設置された状態の扉枠に枠体を取り付けることができる。この枠体の保持部によって保持された弾性部が扉枠と扉体との間をシールする。よって、扉枠が設置された状態であっても開口部の止水を行うことができる。
【0008】
前記止水装置では、例えば、前記扉枠は、上縁部と、下縁部と、前記上縁部と前記下縁部とを接続し、前記扉体が連結された吊元側の側縁部と、前記上縁部と前記下縁部とを接続し、前記吊元側の側縁部と対向した戸先側の側縁部と、を有し、前記弾性部は、前記吊元側の側縁部と連結された前記扉体の側部における前記扉体の回転中心とは反対側の端部の回転軌跡から離間している。
【0009】
このような構成によれば、弾性部が、扉枠の吊元側の側縁部と連結された扉体の側における扉体の回転中心とは反対側の端部の回転軌跡から離間しているので、弾性部が、回転する扉体の上記端部と当たらないので、弾性部が扉体によって曲げられることが抑制される。よって、弾性部が保持部から脱落するのが抑制される。
【0010】
前記止水装置では、例えば、前記扉枠は、上縁部と、下縁部と、前記上縁部と前記下縁部とを接続し、前記扉体が連結された吊元側の側縁部と、前記上縁部と前記下縁部とを接続し、前記吊元側の側縁部と対向した戸先側の側縁部と、を有し、前記弾性部は、前記上縁部に設けられる上側弾性体と、前記下縁部に設けられる下側弾性体と、前記吊元側の側縁部に設けられる吊元側弾性体と、前記戸先側の側縁部に設けられる戸先側弾性体と、を有し、前記上側弾性体、前記下側弾性体、前記吊元側弾性体、および前記戸先側弾性体は、それぞれ、幅方向に圧縮された状態で前記保持部に保持され、前記吊元側弾性体の前記幅方向の圧縮量は、前記上側弾性体の前記幅方向の圧縮量と、前記下側弾性体の前記幅方向の圧縮量と、前記戸先側弾性体の前記幅方向の圧縮量とのいずれよりも小さい。
【0011】
このような構成によれば、吊元側弾性体の幅方向の圧縮量が、上側弾性体の幅方向の圧縮量と、下側弾性体の幅方向の圧縮量と、戸先側弾性体の幅方向の圧縮量とのいずれよりも小さいので、吊元側弾性体が、上側弾性体、下側弾性体、および戸先側弾性体のいずれよりも保持部に対して変形(移動)しやすい。よって、吊元側弾性体が、回転する扉体によって曲げられても、吊元側弾性体が保持部から脱落するのが抑制される。
【0012】
前記止水装置では、例えば、前記扉体は、前記開口部の一方側と他方側とを仕切り、前記扉枠は、上縁部と、下縁部と、前記上縁部と前記下縁部とを接続し、前記扉体が連結された吊元側の側縁部と、前記上縁部と前記下縁部とを接続し、前記吊元側の側縁部と対向した戸先側の側縁部と、前記上縁部、前記下縁部、前記吊元側の側縁部、および前記戸先側の側縁部に亘り、閉じられた状態の前記扉体の前記他方側に位置し前記扉体と対向する戸当たり面と、前記上縁部、前記下縁部、前記吊元側の側縁部、および前記戸先側の側縁部に亘り、前記戸当たり面から前記他方側に延びた取付面と、と有し、前記枠体は、前記取付面に取り付けられ、前記弾性部は、前記上縁部に設けられる上側弾性体と、前記下縁部に設けられる下側弾性体と、前記吊元側の側縁部に設けられる吊元側弾性体と、前記戸先側の側縁部に設けられる戸先側弾性体と、を有し、前記吊元側の側縁部の前記戸当たり面からの前記吊元側弾性体の突出量は、前記上縁部の前記戸当たり面からの前記上側弾性体の突出量と、前記下縁部の前記戸当たり面からの前記下側弾性体の突出量と、前記戸先側の側縁部の前記戸当たり面からの前記戸先側弾性体の突出量とのいずれよりも小さい。
【0013】
このような構成によれば、吊元側弾性体の突出量が、上側弾性体の突出量と、下側弾性体の突出量と、戸先側弾性体の突出量とのいずれよりも小さいので、吊元側弾性体が、回転する扉体によって曲げられにくい。よって、吊元側弾性体が保持部から脱落するのが抑制される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る止水装置は、扉枠が設置された状態であっても開口部の止水を行うことができる止水装置を提供することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、第1の実施形態の止水扉の概略構成を表す模式的な正面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態の弾性体を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、
図2中の止水装置を含む一部を拡大して示す断面図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態の止水扉の断面図であって、
図2に対応する断面図である。
【
図7】
図7は、
図6中の止水装置を含む一部を拡大して示す断面図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態の弾性体の突出量を説明するための図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態の弾性体の圧縮量を説明するための図である。
【
図10】
図10は、参考例の止水扉の断面図であって、
図2に対応する断面図である。
【
図11】
図11は、参考例の止水扉の断面図であって、
図3に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0017】
<第1の実施形態>
図1は、実施形態の止水扉の概略構成を表す模式的な正面図である。
図2は、
図1のII-II断面図である。
図3は、
図1のIII-III断面図である。
【0018】
図1~
図3に示す実施形態の止水扉1は、ビル、家屋、倉庫等の建築物を含む構造物Sに形成された開口部Mを開放あるいは閉塞するものである。開口部Mは、構造物Sの一方の空間側(例えば、屋外空間側)と他方側の空間側(例えば、屋内空間側)とを連通するように形成される。本実施形態の止水扉1は、開口部Mを通して構造物Sの内部に水が浸入することを防止する、いわゆる止水扉である。また、止水扉1は、開口部Mを開閉して、開口部Mを通して構造物Sに人などを出入りさせるものである。本実施形態の止水扉1は、扉枠4と、扉体5と、止水装置3(
図2、
図3)と、を備える。止水装置3は、シール装置とも称される。
【0019】
なお、以下の説明では、扉体5を閉塞位置に回転させる際の回転方向を「閉塞時回転方向」といい、扉体5を開放位置に回転させる際の回転方向を「開放時回転方向」という場合がある。また、閉塞時回転方向は、典型的には、開口部Mを介して一方の空間側(以後、開口部Mの一方側とも称する)から他方の空間側(以後、開口部Mの他方側とも称する)へ水が浸入する可能性がある場合に、水が流動する可能性がある方向に沿った方向である。つまり、水の流動方向は、典型的には、開放時回転方向側が上流側、閉塞時回転方向側が下流側となる。また、水平方向に沿った方向であって後述の一対の縦枠部材(縦枠)41が向かい合う方向を「扉幅方向」という場合がある。すなわち、下流側(屋内空間側)とは、水の浸入を阻止や抑制したい側であり、上流側(屋外空間側)とは、浸入可能性のある水が流れてくる側のことである。なお、屋外空間側や屋内空間側とは水が浸入する可能性がある場合の上流側や下流側を意味する便宜上の文言であり、本発明は、例えば廊下等の通路のような家屋や部屋等の概念が必ずしも明確にならない場所に設置された扉に対しても適用できる。
【0020】
止水装置3は、後述する扉体5が開口部Mを閉塞させる開口閉塞状態(閉塞位置)で、扉体5と当接することで、扉枠4と扉体5との間をシールするものである。すなわち、止水装置3は、開口部Mをシール(止水)する。
【0021】
扉枠4は、開口部Mの周囲を囲むように構造物Sに固定的に取り付けられている。扉枠4は、一対の縦枠部材41A,41Bと、上枠部材42と、下枠部材43とを含んで構成される四方枠タイプとなっている。一対の縦枠部材41A,41Bは、それぞれ開口部Mの扉幅方向両端部に1つずつ設けられる。一対の縦枠部材41A,41Bの総称として、縦枠部材41を用いる。縦枠部材41Aには、蝶番55を介して、扉体5が回転可能に連結されている。縦枠部材41は、吊元側の縦枠部材41である。縦枠部材41Bは、縦枠部材41Aと対向している。縦枠部材41Bは、戸先側の縦枠部材41である。一対の縦枠部材41は、扉幅方向において開口部Mの空間部分を挟んで対向し、扉幅方向において左右一対で設けられる。一対の縦枠部材41は、高さ方向(鉛直方向)に沿って設けられる。一対の縦枠部材41は、上枠部材42と下枠部材43とを接続している。上枠部材42は、上縁部の一例であり、下枠部材43は、下縁部の一例であり、縦枠部材41Aは、吊元側の側縁部の一例であり、縦枠部材41Bは、戸先側の側縁部の一例である。
【0022】
扉枠4は、開口部Mの内面側にて一対の縦枠部材41の端部と一対の上枠部材42、下枠部材43の端部とが連結されており、全体として開口部Mに対応した環状のロの字型形状に構成される。ここでは、一対の縦枠部材41、上枠部材42、下枠部材43は、それぞれ板状の金属材により中空状の断面形状に形成される。一対の縦枠部材41、上枠部材42、下枠部材43は、開口部Mとの間がコーキング材等により水密状態とされる。
【0023】
上枠部材42および下枠部材43は、それぞれ開口部Mの高さ方向の上側、下側に1つずつ設けられる。ここでは、上枠部材42は、開口部Mの高さ方向上側に設けられる。下枠部材43は、開口部Mの高さ方向下側に設けられる。上枠部材42および下枠部材43は、高さ方向において開口部Mの空間部分を挟んで対向する。上枠部材42および下枠部材43は、水平方向に沿って設けられる。
【0024】
また、扉枠4は、戸当たり面4aと、取付面4bと、対向面4cと、を有する。戸当たり面4aは、上枠部材42、下枠部材43、縦枠部材41A、および縦枠部材41Bに亘って設けられている。戸当たり面4aは、閉じられた状態の扉体5の他方側に位置し扉体5と対向する。
【0025】
取付面4bは、上枠部材42、下枠部材43、縦枠部材41A、および縦枠部材41Bに亘って設けられている。取付面4bは、戸当たり面4aから他方側に延びている。
【0026】
対向面4cは、上枠部材42、下枠部材43、縦枠部材41A、および縦枠部材41Bに亘って設けられている。対向面4cは、戸当たり面4aから一方側に延びている。対向面4cは、閉じられた状態の扉体5と幅方向に対向する。
【0027】
扉体5は、
図1に示すように、扉枠4に回転可能に支持され開口部Mを開閉する開閉体である。すなわち、扉体5は、開口部Mを開放あるいは閉塞する。本実施形態の扉体5は、片開き式の扉である。扉体5は、
図2に示すように、例えば、框、縦桟、横桟等の骨格部材51を組んだものに対して両面から板状の扉表面材52を組み付けることで、全体として矩形パネル状の部材として構成される。
【0028】
扉体5は、
図1に示すように、扉幅方向の一方の端部に当該扉体5を開閉するためのドアノブ9等が設けられる。ドアノブ9は、閉位置に位置した状態で、閉塞位置の扉体5の回転を制限する。また、ドアノブ9は、開位置に位置した状態で、扉体5の回転を許容する。また、扉体5は、扉幅方向の他方の端部に蝶番55が設けられている。蝶番55は、鉛直方向と平行な回転軸を水平方向にずれた位置に2つ設け、扉体5を扉枠4の一方の縦枠部材41に回転可能に支持する。
【0029】
したがって、扉体5は、蝶番55の回転軸を回転中心C1として、開口部Mを閉塞させる閉塞位置と、開口部Mを開放させる開放位置とに亘って扉枠4に対して回転可能となる。扉体5は、閉塞位置から開放位置側に扉枠4に対して回転されることで、屋外空間側に進出し開口部Mを開放する。
【0030】
図2および
図3に示すように、止水装置3は、枠体60と、弾性部70と、を有する。止水装置3は、扉枠4に沿った枠状に形成さている。枠体60および弾性部70は、扉枠4の全周に取り付けられている。弾性部70は、扉体5が開口部Mを閉塞させる閉塞位置にある状態で、扉枠4と扉体5との間に弾性変形した状態で介在し、扉体5と扉枠4との間を水が流れることを抑制するものである。
【0031】
枠体60は、固定枠部材61と、受部材63と、を有する。枠体60は、扉枠4に取り付けられる。すなわち、枠体60は、扉枠4に取り付け可能である。固定枠部材61は、壁部61a~61cを有する。壁部61aは、扉枠4の取付面4bに重ねられて取付面4bにネジ等の固定具64によって固定される。なお、壁部61aは、接着等によって取付面4bに固定されてもよい。壁部61bは、壁部61aから枠体60の内側に延びている。壁部61cは、壁部61bから開口部の一方側に延びている。固定枠部材61は、折り曲げられた板金部材によって構成されている。受部材63は、壁部61bに対して開口部Mの一方側に位置している。受部材63は、例えばゴムなどの弾性体によって構成されている。
【0032】
固定枠部材61の壁部61bおよび壁部61cと、受部材63は、保持部65を構成している。保持部65には、凹部65aが形成されている。凹部65aには、弾性部70が入れられている。保持部65は、凹部65aに入れられた弾性部70を保持する。詳細には、保持部65は、凹部65aに入れられた弾性部70を、取付面4bと挟むことによって保持する。
【0033】
弾性部70は、一部が保持部65から突出した状態で保持部65に保持される。弾性部70は、扉体5が閉じられた状態で扉体5と当接することで扉枠4と扉体5との間をシールする。
【0034】
弾性部70は、上側弾性体62Cと、下側弾性体62Dと、吊元側弾性体62Aと、戸先側弾性体62Bと、を有する。上側弾性体62Cと、下側弾性体62Dと、吊元側弾性体62Aと、戸先側弾性体62Bとの総称として、弾性体62を用いる。上側弾性体62Cは、上枠部材42に設けられる。下側弾性体62Dは、下枠部材43に設けられる。吊元側弾性体62Aは、縦枠部材41Aに設けられる。戸先側弾性体62Bは、縦枠部材41Bに設けられる。各弾性体62は、幅方向に圧縮された状態で凹部65aに入れられて、保持部65に保持される。各弾性体62は、例えばゴム(止水ゴム)によって構成されて、弾性を有する。なお、弾性体62は、他の材料によって構成されていてもよい。
【0035】
図4は、第1の実施形態の弾性体を模式的に示す図である。
図4には、保持部65に保持されていない自由状態の弾性体62が一点鎖線で示され、幅方向に圧縮された弾性体62が実線で示されている。
図4に示すように、弾性体62は、自由状態から幅方向に圧縮されて幅方向と直交する奥行方向(前後方向)に延ばされた状態にされて、凹部65aに入れられる。すなわち、弾性体62は、自由状態から変形した変形状態で凹部65aに入れられる。変形状態の弾性体62の幅方向の寸法L1bは、自由状態の弾性体62の幅方向の寸法L1aよりも小さい。また、変形状態の弾性体62の奥行方向の寸法L2bは、自由状態の弾性体62の奥行方向の寸法L2aよりも大きい。弾性体62は、接着シール66(接着部)等によって保持部65に接着される。
【0036】
図5は、
図2中の止水装置を含む一部を拡大して示す断面図である。
図5には、扉体5が開かれた状態での弾性体62の扉側の端部を含む部分が一点鎖線で示されている。弾性体62は、扉体5が開かれた状態から扉体5に押圧されて奥行方向に圧縮される。これにより、弾性体62は、閉じられた状態の扉体5と密着する。この状態で、弾性体62は、扉枠4と扉体5との間をシールする。なお、本実施形態では、扉体5が開かれた状態において、吊元側弾性体62Aは、縦枠部材41Aと連結された扉体5の側部5aにおける扉体5の回転中心C1とは反対側の端部5b(角部)の回転軌跡T1と重なる。吊元側弾性体62Aは、閉じられる扉体5の端部5bによって曲げられるが、接着シール66によって保持部65に接着されているため、保持部65から外れない。
【0037】
以上のように、本実施形態の止水装置3は、構造物Sの開口部Mに設けられ扉体5が回転可能に連結された扉枠4に取り付けられ、前記扉体5が閉じられた状態で、前記扉枠4と当該扉体5との間に介在する枠状である。止水装置3は、枠体60と、弾性部70と、を備える。枠体60は、保持部65を有し、扉枠4に取り付け可能である。弾性部70は、保持部65に保持され、扉体5が閉じられた状態で扉体5と当接することで扉枠4と扉体5との間をシールする。
【0038】
このような構成によれば、枠体60が扉枠4に取り付け可能であるので、設置された状態の扉枠4に枠体60を取り付けることができる。この枠体60の保持部65によって保持された弾性部70が扉枠4と扉体5との間をシールする。よって、扉枠4が設置された状態であっても開口部Mの止水を行うことができる。
【0039】
したがって、開口部Mの止水対策を行う場合に、既に設置された扉枠4を交換することなくそのまま使用することができる。また、扉体5をグレモンハンドル付きのような扉体5に変更する必要もない。よって、本実施形態によれば、短期間で開口部Mの止水対策を行うことができる。また、止水板を用いる場合には、止水板の保管スペースが必要であるが、本実施形態の構成では、止水装置3の保管スペースが不要である。また、ポンプ等の電動の排水設備を設置するには、長い工期が必要となるが、本実施形態の構成では、電気工事が不要であるので、短い工期で止水対策を行うことができる。
【0040】
また、上記構成では、弾性部70(弾性体62)は交換可能である。よって、止水性能を維持するためのメンテナンスが容易である。
【0041】
上記構成では、例えば、止水装置3を扉枠4に取り付けて扉体5を閉めた状態でJISの漏水等級Ws-4を満たすことが確認できた。また、止水装置3を扉枠4に取り付けて扉体5を例えば10000回開閉させた状態でJISの漏水等級Ws-3を満たすことが確認できた。
【0042】
<第2の実施形態>
図6は、第2の実施形態の止水扉の断面図であって、
図2に対応する断面図である。
図7は、
図6中の止水装置を含む一部を拡大して示す断面図である。
図8は、第2の実施形態の弾性体の突出量を説明するための図である。
図9は、第2の実施形態の弾性体の圧縮量を説明するための図である。
【0043】
本実施形態は、止水装置3の構成の一部が第1の実施形態と主に異なる。
図6に示すように、本実施形態では、止水装置3は、スペーサ81を有する。スペーサ81は、止水装置3において、扉枠4の縦枠部材41Aに重ねられる部分に設けられており、他の部分には設けられていない。
【0044】
図7に示すように、スペーサ81は、固定枠部材61の壁部61bの一方側に位置している。本実施形態では、固定枠部材61の壁部61bおよび壁部61cと、受部材63と、スペーサ81とが、保持部65を構成しており、スペーサ81と壁部61cとの間に凹部65aが設けられている。スペーサ81は、吊元側弾性体62Aと、扉枠4の取付面4bとの間に介在して、吊元側弾性体62Aを取付面4bから離間させる。
【0045】
また、
図8に示すように、縦枠部材41Aの戸当たり面4aからの吊元側弾性体62Aの突出量は、上枠部材42の戸当たり面4aからの上側弾性体62Cの突出量と、下枠部材43の戸当たり面4aからの下側弾性体62Dの突出量と、縦枠部材41Bの戸当たり面4aからの戸先側弾性体62Bの突出量とのいずれよりも小さい。
【0046】
また、
図9に示されるように、自由状態の吊元側弾性体62Aの形状は、自由状態の上側弾性体62C、下側弾性体62D、および戸先側弾性体62Bの形状と異なる。具体的には、自由状態の吊元側弾性体62Aの幅方向の寸法L1aは、自由状態の吊元側弾性体62A、自由状態の上側弾性体62C、自由状態の下側弾性体62D、および自由状態の戸先側弾性体62Bのそれぞれの幅方向の寸法L1aよりも小さい。各弾性体62が入れられる凹部65aの幅方向の寸法および奥行方向の寸法は、同じである。したがって、変形状態の吊元側弾性体62Aの幅方向の圧縮量は、変形状態の上側弾性体62Cの幅方向の圧縮量と、変形状態の下側弾性体62Dの幅方向の圧縮量と、変形状態の戸先側弾性体62Bの幅方向の圧縮量とのいずれよりも小さい。
【0047】
本実施形態では、
図7から分かるように、吊元側弾性体62Aは、縦枠部材41Aと連結された扉体5の側部5aにおける扉体5の回転中心C1とは反対側の端部5bの回転軌跡T1から離間している。すなわち、本実施形態では、弾性部70の全体が、縦枠部材41Aと連結された扉体5の側部5aにおける扉体5の回転中心C1とは反対側の端部5bの回転軌跡T1から離間している。吊元側弾性体62Aを、縦枠部材41Aと連結された扉体5の側部5aにおける扉体5の回転中心C1とは反対側の端部5bの回転軌跡T1から離間させる構成は、スペーサ81だけであってもよいし、吊元側弾性体62Aの形状(突出量)だけであってもよし、それらの両方の組み合わせであってもよい。
【0048】
以上のように、本実施形態では、扉枠4は、上枠部材42(上縁部)と、下枠部材43(下縁部)と、上枠部材42と下枠部材43とを接続し、扉体5が連結された縦枠部材41A(吊元側の側縁部)と、上枠部材42と下枠部材43とを接続し、縦枠部材41Aと対向した縦枠部材41B(戸先側の側縁部)と、を有する。弾性部70は、縦枠部材41Aと連結された扉体5の側部5aにおける扉体5の回転中心C1とは反対側の端部5bの回転軌跡T1から離間している。
【0049】
このような構成によれば、弾性部70が、扉枠4の縦枠部材41Aと連結された扉体5の側における扉体5の回転中心C1とは反対側の端部5bの回転軌跡T1から離間しているので、弾性部70が、回転する扉体5の上記端部5bと当たらないので、弾性部70が扉体5によって曲げられることが抑制される。よって、弾性部70が保持部65から脱落するのが抑制される。
【0050】
また、弾性部70は、上枠部材42に設けられる上側弾性体62Cと、下枠部材43に設けられる下側弾性体62Dと、縦枠部材41Aに設けられる吊元側弾性体62Aと、縦枠部材41Bに設けられる戸先側弾性体62Bと、を有する。上側弾性体62C、下側弾性体62D、吊元側弾性体62A、および戸先側弾性体62Bは、それぞれ、幅方向に圧縮された状態で保持部65に保持される。吊元側弾性体62Aの幅方向の圧縮量は、上側弾性体62Cの幅方向の圧縮量と、下側弾性体62Dの幅方向の圧縮量と、戸先側弾性体62Bの幅方向の圧縮量とのいずれよりも小さい。
【0051】
このような構成によれば、吊元側弾性体62Aの幅方向の圧縮量が、上側弾性体62Cの幅方向の圧縮量と、下側弾性体62Dの幅方向の圧縮量と、戸先側弾性体62Bの幅方向の圧縮量とのいずれよりも小さいので、吊元側弾性体62Aが、上側弾性体62C、下側弾性体62D、および戸先側弾性体62Bのいずれよりも保持部65に対して変形(移動)しやすい。よって、吊元側弾性体62Aが、回転する扉体5によって曲げられても、吊元側弾性体62Aが保持部65から脱落するのが抑制される。
【0052】
また、上側弾性体62Cの幅方向の圧縮量と、下側弾性体62Dの幅方向の圧縮量と、戸先側弾性体62Bの幅方向の圧縮量とは、いずれも、吊元側弾性体62Aの幅方向の圧縮量よりも大きいので、止水性能が向上する。吊元側弾性体62Aは、吊元側であるので、他の弾性体62に比べて、扉体5による押圧力が大きい。よって、吊元側弾性体62Aの幅方向の圧縮量は小さくても、止水性能を確保することができる。
【0053】
また、扉体5は、開口部Mの一方側と他方側とを仕切る。扉枠4は、戸当たり面4aと、取付面4bと、を有する。戸当たり面4aは、上枠部材42(、下枠部材43、縦枠部材41A、および縦枠部材41Bに亘り、閉じられた状態の扉体5の他方側に位置し扉体5と対向する。取付面4bは、上枠部材42、下枠部材43、縦枠部材41A、および縦枠部材41Bに亘り、戸当たり面4aから他方側に延びている。縦枠部材41Aの戸当たり面4aからの吊元側弾性体62Aの突出量は、上枠部材42の戸当たり面4aからの上側弾性体62Cの突出量と、下枠部材43の戸当たり面4aからの下側弾性体62Dの突出量と、縦枠部材41Bの戸当たり面4aからの戸先側弾性体62Bの突出量とのいずれよりも小さい。
【0054】
このような構成によれば、吊元側弾性体62Aの突出量が、上側弾性体62Cの突出量と、下側弾性体62Dの突出量と、戸先側弾性体62Bの突出量とのいずれよりも小さいので、吊元側弾性体62Aが、回転する扉体5によって曲げられにくい。よって、吊元側弾性体62Aが保持部65から脱落するのが抑制される。
【0055】
<参考例>
図10は、参考例の止水扉の断面図であって、
図2に対応する断面図である。
図11は、参考例の止水扉の断面図であって、
図3に対応する断面図である。
【0056】
図10および
図11に示すように、参考例の止水扉100は、止水装置3の保持部65が扉枠4に一体形成されている。止水扉100の弾性体62は、
図8や
図9で示した形状が適用されている。
【0057】
なお、上述した本発明の実施形態に係る止水装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本実施形態に係る止水装置は、以上で説明した各実施形態の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 止水扉
3 止水装置
4 扉枠
4a 戸当たり面
4b 取付面
5 扉体
5a 側部
5b 端部
41A 縦枠部材(吊元側の側縁部)
41B 縦枠部材(戸先側の側縁部)
42 上枠部材(上縁部)
43 下枠部材(下縁部)
60 枠体
70 弾性部
C1 回転中心
M 開口部
S 構造物
T1 回転軌跡