(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137340
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】無線端末および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H04M 1/72516 20210101AFI20230922BHJP
H04W 36/08 20090101ALI20230922BHJP
H04W 76/18 20180101ALI20230922BHJP
【FI】
H04M1/72516
H04W36/08
H04W76/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043502
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】松平 浩一
【テーマコード(参考)】
5K067
5K127
【Fターム(参考)】
5K067AA23
5K067DD36
5K067EE02
5K067EE10
5K067FF17
5K067HH23
5K067HH24
5K127AA36
5K127BA03
5K127DA11
5K127JA23
(57)【要約】
【課題】無線端末の利用者にハンドオーバ不可を容易かつ正確に通知する。
【解決手段】本願発明の無線端末20は、ハンドオーバ処理を行う際に、新たな無線基地局10からハンドオーバ不可が通知された場合、新たな無線基地局10へハンドオーバできないことを、無線基地局10の通信圏外であることを通知する形態とは異なる形態で無線端末20の利用者に通知する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線基地局と複数の無線端末とを備えた無線システムで用いられる前記無線端末であって、
通信中の第1の無線基地局との接続状態に基づいて、前記第1の無線基地局と異なる第2の無線基地局へハンドオーバ処理を行う制御部と、
前記制御部からの指示に基づいて、前記無線基地局との接続状態を前記無線端末の利用者に通知する通知部とを備え、
前記制御部は、前記ハンドオーバ処理を行う際に、前記第2の無線基地局からハンドオーバ不可であることを示すハンドオーバ応答が通知された場合、前記第2の無線基地局へハンドオーバできないことを前記通知部に送信し、
前記通知部は、前記第2の無線基地局へハンドオーバができないことを、前記無線基地局の通信圏外であることを通知する第1の形態とは異なる第2の形態で前記無線端末の利用者に通知すること
を特徴とする無線端末。
【請求項2】
前記第1の形態および前記第2の形態は、可聴形態および可視形態の少なくとも何れかの形態であること
を特徴とする請求項1に記載の無線端末。
【請求項3】
前記ハンドオーバ不可であることを示すハンドオーバ応答は、ハンドオーバ不可の理由を含み、
前記制御部は、前記通知部に前記ハンドオーバ不可の理由を通知し、前記通知部は、前記ハンドオーバ不可の理由に応じて、前記第2の形態の通知形態を切り替えること
を特徴とする請求項1または2に記載の無線端末。
【請求項4】
コンピュータを、複数の無線基地局と複数の無線端末とを備えた無線システムで用いられる前記無線端末として機能させるための制御プログラムであって、
前記無線端末は、通信中の第1の無線基地局との接続状態に基づいて、前記第1の無線基地局と異なる第2の無線基地局へハンドオーバ処理を行う制御部と、前記制御部からの指示に基づいて、前記無線基地局との接続状態を前記無線端末の利用者に通知する通知部とを備え、
前記制御部に、前記ハンドオーバ処理を行う際に前記第2の無線基地局からハンドオーバ不可であることを示すハンドオーバ応答が通知された場合、前記第2の無線基地局へハンドオーバできないことを前記通知部に送信するステップを実行させ、
前記通知部に、前記第2の無線基地局へハンドオーバできないことを、前記無線基地局の通信圏外であることを通知する第1の形態とは異なる第2の形態で前記無線端末の利用者に通知するステップを実行させること
を特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末がハンドオーバできない場合に、無線端末の利用者に対してハンドオーバ不可を通知する無線端末に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複数の無線基地局と無線端末とからなる無線システムでは、無線端末が、無線基地局に関する受信電界強度に応じて通信可能な新たな無線基地局を選択した場合には、当該新たな無線基地局へハンドオーバする仕組みを有するものがある。
【0003】
例えば、移動中の無線端末において、接続中の切替元無線基地局に関する受信電界強度の低下が検出された場合、当該無線端末の移動方向に無線エリアを持つ新たな切替先無線基地局との間で制御情報がやり取りされて、当該無線端末の接続先が切替元無線基地局から切替先無線基地局へ切り替えられることになる。これにより、無線端末の通信可能なエリアを、大幅に拡大することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した無線端末では、ハンドオーバ時における切替先無線基地局の通信接続数が上限に達しており通信接続数に空きがない場合や、切替先無線基地局の無線回線容量が足りない場合など、切替先無線基地局のリソースが不足している場合、切替先無線基地局でハンドオーバ不可と判断される。
【0006】
このため、無線端末がさらに移動した場合、切替元無線基地局に関する受信電界強度がさらに低下して、切替元無線基地局の通信圏外に出てしまい、場合によっては当該無線端末との無線通信が切断されることになる。したがって、ハンドオーバ不可であることを、切替先無線基地局から当該無線端末へ通知する必要がある。
【0007】
従来、無線端末が無線基地局の通信圏外に出てしまうような場合、通信圏外となることを示す圏外警報を、無線基地局から無線端末に対して通知する圏外通知技術が提案されている(例えば、特許文献1など参照)。この圏外通知技術をハンドオーバ不可通知に適用した場合、無線端末に対してハンドオーバ不可が圏外警報として通知されることになる。
【0008】
しかし、このような従来技術では、圏外とは区別してハンドオーバ不可を正確に通知できないので、無線端末の利用者が、本来の通信圏外を警報するための圏外警報と、ハンドオーバ不可を通知するための圏外警報とを、区別することができないという問題点がある。このため、ハンドオーバ不可を通知するための圏外警報を、本来の通信圏外を示す圏外警報と誤認して、例えば、利用者が切替先無線基地局の通信圏内へ足早に移動した場合、無線通信が切断されることになりかねない。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、無線端末の利用者に対してハンドオーバ不可であることを容易かつ正確に通知することができる無線端末を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明にかかる無線端末は、複数の無線基地局と複数の無線端末とを備えた無線システムで用いられる前記無線端末であって、通信中の第1の無線基地局との接続状態に基づいて、前記第1の無線基地局と異なる第2の無線基地局へハンドオーバ処理を行う制御部と、前記制御部からの指示に基づいて、前記無線基地局との接続状態を前記無線端末の利用者に通知する通知部とを備え、前記制御部は、前記ハンドオーバ処理を行う際に、前記第2の無線基地局からハンドオーバ不可であることを示すハンドオーバ応答が通知された場合、前記第2の無線基地局へハンドオーバできないことを前記通知部に送信し、前記通知部は、前記第2の無線基地局へハンドオーバができないことを、前記無線基地局の通信圏外であることを通知する第1の形態とは異なる第2の形態で前記無線端末の利用者に通知することを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる上記無線端末の一構成例は、前記第1の形態および前記第2の形態は、可聴形態および可視形態の少なくとも何れかの形態であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる上記無線端末の一構成例は、前記ハンドオーバ不可であることを示すハンドオーバ応答は、ハンドオーバ不可の理由を含み、前記制御部は、前記通知部に前記ハンドオーバ不可の理由を通知し、前記通知部は、前記ハンドオーバ不可の理由に応じて、前記第2の形態の通知形態を切り替えることを特徴とする。
【0013】
このような目的を達成するために、本発明にかかる制御プログラムは、コンピュータを、複数の無線基地局と複数の無線端末とを備えた無線システムで用いられる前記無線端末として機能させるための制御プログラムであって、前記無線端末は、通信中の第1の無線基地局との接続状態に基づいて、前記第1の無線基地局と異なる第2の無線基地局へハンドオーバ処理を行う制御部と、前記制御部からの指示に基づいて、前記無線基地局との接続状態を前記無線端末の利用者に通知する通知部とを備え、前記制御部に、前記ハンドオーバ処理を行う際に前記第2の無線基地局からハンドオーバ不可であることを示すハンドオーバ応答が通知された場合、前記第2の無線基地局へハンドオーバできないことを前記通知部に送信するステップを実行させ、前記通知部に、前記第2の無線基地局へハンドオーバできないことを、前記無線基地局の通信圏外であることを通知する第1の形態とは異なる第2の形態で前記無線端末の利用者に通知するステップを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、無線端末の利用者に対してハンドオーバ不可であることを容易かつ正確に通知する無線端末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、無線システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、無線システムにおける無線端末の移動を説明するための図である。
【
図3】
図3は、無線端末の通信圏外移動時における警報表示動作を示すシーケンス図である。
【
図4】
図4は、無線端末のハンドオーバ時におけるハンドオーバ不可通知動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
[無線システム]
まず、
図1を参照して、本実施の形態にかかる無線システム1について説明する。
図1は、無線システムの構成を示すブロック図である。
【0017】
無線システム1は、主な構成として、無線基地局10(10A,10B,10C)と無線端末20(20A,20B,20C)とを備え、通信網NWを利用する無線端末20の音声通話などのデータ通信を無線基地局10が中継する無線通信システムである。相手装置50は、通信網NWに接続されて無線端末20の通信相手となる一般的な通信装置である。通信網NWは、インターネットに代表されるIP通信網や携帯通信網などの公知の通信網からなる。
【0018】
無線基地局10は、有線の通信回線Lを介して通信監視装置30に接続されている。通信監視装置30は、各無線基地局10における無線端末20の接続状態や通信状態等の動作状態を監視することができる装置である。例えば、各無線基地局10における無線端末20の通信接続数や無線回線容量などのリソース使用量等を監視することができる。なお、通信監視装置30は、各無線基地局10と通信網NWを介して接続するように構成してもよい。
【0019】
以下では、無線システム1が3つの無線基地局10と3つの無線端末20とから構成されている場合を例として説明するが、これに限定されるものではない。2つ以上の無線基地局10を設け、これらの無線基地局10と接続可能な複数の無線端末20とから無線システム1を構成した場合に本発明を適用でき、同様の作用・効果を得ることが可能となる。
【0020】
[無線基地局]
無線基地局10(10A,10B,10C)は、無線端末20の呼制御を行う呼制御部11を備えている。呼制御部11は、CPU、記憶部、I/F部等(図示せず)を備えたコンピュータにより構成することができ、記憶部に保存されている制御プログラムを、CPUで実行させることにより呼制御における様々な機能を実現することができる。
【0021】
[呼制御部]
呼制御部11は、無線端末20からの接続要求に応じて、自己が有するリソース範囲内で無線端末20を接続し、無線回線を介して無線端末20と接続し、通信回線Lを介して無線端末20のデータ通信を通信網NWへ中継転送するように構成されている。
【0022】
呼制御部11は、無線端末20からのハンドオーバ要求に応じて、自己の通信接続数や無線回線容量などの最新のリソース使用量を確認するように構成されている。接続を許可する無線端末20の数については、通信接続数の上限、無線回線容量などのリソース使用量により制限される。無線端末20の追加接続が可能な程度に、リソースに空きがある場合、呼制御部11は、接続許可を示すハンドオーバ応答を返送して無線端末20と新たに接続し、一方、リソースが不足していて無線端末20を追加接続できない場合には、接続不可を示すハンドオーバ応答を返送するように構成されている。
【0023】
[無線端末]
無線端末20(20A、20B、20C)は、無線端末20の動作を制御する制御部21(21A、21B、21C)と、制御部21からの指示に応じて無線端末20の利用者に対して各種の通知を行う通知部22(22A、22B、22C)とを備えている。制御部21(21A、21B、21C)は、CPU、記憶部、I/F部等(図示せず)を備えたコンピュータにより構成することができ、記憶部に保存されている制御プログラムを、CPUで実行させることにより無線端末における様々な機能を実現することができる。
【0024】
[制御部]
制御部21(21A、21B、21C)は、各無線基地局10が送信する無線信号の受信電界強度を監視し、良好に通信可能な無線基地局10と無線回線を接続する。無線端末20において、利用者操作により通信開始が指示された場合には、無線回線および無線基地局10を介して通信網NWと接続するように構成されている。
【0025】
制御部21(21A、21B、21C)は、無線基地局10から受信した受信電界強度が、予め設定されている閾値レベルより低下して通信不可と判定された場合には、当該無線端末20が通信圏外となったことを通知部22(22A、22B、22C)に通知するように構成されている。無線端末20の利用者は、通知部22における圏外通知により、無線端末20が通信圏外となったことを認識することができる。
【0026】
制御部21(21A、21B、21C)は、通信中の無線基地局10(第1の無線基地局)との通信が通信不良と判定された場合には、他の無線基地局10(第2の無線基地局)への接続の切り替えを行うハンドオーバ処理を行って通信を維持することができるように構成されている。
【0027】
ハンドオーバ処理では、各無線基地局10が送信する無線信号の受信電界強度に応じて通信可能な新たな無線基地局10を選択して、当該新たな無線基地局10へハンドオーバ要求を送信し、ハンドオーバ要求に対して当該新たな無線基地局10から接続許可を示すハンドオーバ応答が通知された場合、無線接続先を接続中の無線基地局10から当該新たな無線基地局10へ切り替えるように構成されている。
【0028】
一方、制御部21(21A、21B、21C)は、新たな無線基地局10へハンドオーバ処理の際に、新たな無線基地局10から接続不可を示すハンドオーバ応答が通知された場合は無線接続先を切り替えず、新たな無線基地局10へハンドオーバできないことを通知部22(22A、22B、22C)に通知するように構成されている。
【0029】
[通知部]
通知部22(22A、22B、22C)は、可聴装置や可視装置からなり、制御部21からの指示に応じて、呼制御に関する情報、無線基地局との接続状態や通信状態等の動作状態に関する情報、利用者操作に関する情報などを無線端末20の利用者に、可聴形態あるいは可視形態で通知するように構成されている。可聴装置は、音源とスピーカから構成し、可視装置は、LCDやLEDなどの可視表示デバイスで構成することができる。
【0030】
通知部22(22A、22B、22C)は、可聴装置および可視装置のいずれか一方または両方を用いて、無線端末20が通信圏外となったことや新たな無線基地局10へハンドオーバできないことを通知するように構成されている。ここで、本実施の形態の通知部22(22A、22B、22C)では、ハンドオーバできないことを、通信圏外になったことを通知する形態(第1の形態)とは異なる形態(第2の形態)で通知するように構成されている。
【0031】
例えば、通信圏外になったことおよびハンドオーバできないことを可聴装置で通知する場合、互いに異なる音声により音声通知すればよい。また、これらの情報を可視装置で通知する場合には、互いに異なる表示図柄、表示色、点灯/点滅方法などの表示形態で表示すればよい。このように、ハンドオーバできないことを、通信圏外になったことを通知する形態(第1の形態)とは異なる形態(第2の形態)で通知することで、通信圏外となったことと無線基地局へハンドオーバできないことを、利用者が容易に識別することが可能となる。
【0032】
さらに、通知部22(22A、22B、22C)は、通信監視装置30から通知されたハンドオーバ不可の理由に応じて、利用者への通知形態を切り替えるようにしてもよい。これにより、無線端末の利用者は、ハンドオーバ不可の理由を認識することができるので、利用者がハンドオーバ不可時において、ハンドオーバ不可の理由に応じて様々な行動を選択するための手助けを行うことができる。
【0033】
[本実施の形態の動作]
次に、
図2~
図4を参照して、本実施の形態にかかる無線システム1の動作について説明する。
図2は、無線システムにおける無線端末の移動を説明するための図である。
図3は、無線端末の通信圏外移動時における警報表示動作を示すシーケンス図である。
図4は、無線端末のハンドオーバ時におけるハンドオーバ不可通知動作を示すシーケンス図である。
【0034】
[通信圏外移動時]
図2と
図3を参照して、無線端末20Aの通信圏外移動時における警報表示動作について説明する。
図3に示すように、初期状態として、良好な通信品質で無線基地局10A(第1の無線基地局)と無線接続している無線端末20Aが
図2の位置Pに存在していて、無線基地局10Aを介して相手装置50とデータ通信をしているものとする(ステップ100)。
【0035】
ここで、無線端末20Aが、位置Pから位置Qの方向へ移動して、無線基地局10Aの無線エリアZAの圏外に出た場合(ステップ101)、無線基地局10Aに関する受信電界強度が低下して通信品質が不良となる(ステップ102)。
【0036】
無線端末20Aは、無線基地局10A以外の無線基地局10から検出した受信電界強度に基づいて、ハンドオーバ先となる無線基地局10を確認する。ここで、良好な通信品質で無線接続可能な無線基地局10が存在せず、ハンドオーバ先が見つからない場合(ステップ103)、ハンドオーバできなくなり、前述したステップ102の状態を維持することになる。
【0037】
この後、無線端末20Aは、ステップ102の通信品質の不良状態が継続し、無線端末20Aがさらに移動して、通信品質がさらに悪化した場合、通信圏外であると判定し(ステップ104)、通信圏外警報を所定の形態(第1の形態)で通知する(ステップ105)。これにより、無線端末20Aの利用者に対して、無線基地局10Aの無線エリアZAの圏外に出たことが通知される。
【0038】
[ハンドオーバ時]
図2と
図4を参照して、無線端末20Aのハンドオーバ時におけるハンドオーバ不可表示動作について説明する。
【0039】
図4に示すように、初期状態として、良好な通信品質で無線基地局10A(第1の無線基地局)と無線接続している無線端末20Aが
図2の位置Pに存在していて、無線基地局10Aを介して相手装置50とデータ通信をしているものとする(ステップ110)。ここで、無線端末20Aが、位置Pから位置Rの方向へ移動して、無線基地局10Aの無線エリアZAの圏外に出た場合(ステップ111)、無線基地局10Aに関する受信電界強度が低下して通信品質が不良となる(ステップ112)。
【0040】
無線端末20Aは、無線基地局10A以外の無線基地局10から検出した受信電界強度に基づいて、ハンドオーバ先となる無線基地局10を選択する。ここで、良好な通信品質で無線接続可能な無線基地局10B(第2の無線基地局)が存在しており、ハンドオーバ先が見つかった場合(ステップ113)、無線端末20Aは、無線基地局10Bに対してハンドオーバ要求を送信する(ステップ114)。
【0041】
無線基地局10Bは、無線端末20Aからのハンドオーバ要求に応じて、自己の最新のリソース使用量を確認する。ここで、リソースに空きがある場合、無線基地局10Bは、接続許可を示すハンドオーバ応答を無線端末20Aに返送する(ステップ115)。
【0042】
無線端末20Aは、ハンドオーバ要求に対して無線基地局10Bから接続許可を示すハンドオーバ応答が通知された場合、無線接続先を無線基地局10Aから無線基地局10Bに切り替えることによりハンドオーバ処理を行う。これにより、良好な通信品質で無線基地局10Bを介して相手装置50とデータ通信が継続されることになる。
【0043】
一方、無線基地局10Bは、リソースに空きがない場合、接続不可を示すハンドオーバ応答を無線端末20Aに返送する(ステップ120)。この接続不可を示すハンドオーバ応答には、接続不可の理由が含まれていてもよい。例えば、
図2のように、無線基地局10Bに2台の無線端末20B、20Cが接続されていて通信接続数が2であり、上限(最大接続数)が2の場合、無線基地局10Bは、無線端末20を追加接続することはできないと判断して、接続数が上限であることを含む接続不可のハンドオーバ応答を送信する。
【0044】
無線端末20Aは、ハンドオーバ要求に対して無線基地局10Bから接続不可を示すハンドオーバ応答が通知された場合、
図3の通信圏外警報を通知する形態(第1の形態)と異なる形態(第2の形態)で、ハンドオーバ不可を通知部22で通知する(ステップ121)。これにより、無線端末20Aの利用者は、ハンドオーバが不可であることを、通常の通信圏外警報と区別して認識することができる。
【0045】
このように、無線端末20Aの利用者に対してハンドオーバ不可を容易かつ正確に通知でき、利用者は、ハンドオーバ不可を、通常の圏外警報と区別して容易かつ正確に認識することができる。無線端末20Aの利用者は、ハンドオーバ不可時には、そのまま新たな無線基地局10Bの方向へ移動してもハンドオーバできないことを認識できるので、元の無線基地局10Aの方向へ戻るというような、ハンドオーバ不可時における適切な行動を選択することができる。このような選択をした場合には、無線端末20Aの利用者による相手装置との通信の切断を回避することが可能となる。
【0046】
また、無線基地局10Bにおける通信接続数が上限に達している旨や、無線回線の容量が上限に達している旨など、無線基地局10Bからハンドオーバ不可の理由が通知された場合には、無線端末20Aは、ハンドオーバ不可の理由に応じてハンドオーバ不可通知の通知形態を切り替えてもよい。これにより、利用者はハンドオーバ不可の理由を把握できるので、それに応じて、混雑している無線エリアを避ける等、より適切な行動を選択することが可能となる。
【0047】
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、無線端末20の制御部21が、ハンドオーバ処理の際に、新たな無線基地局10からハンドオーバ不可が通知された場合、新たな無線基地局10へハンドオーバできないことを、通信圏外である旨を示す圏外警報通知とは異なる通知形態で、通知部22で通知するように構成したものである。
【0048】
これにより、無線端末の利用者に対してハンドオーバ不可であることを容易かつ正確に通知でき、無線端末の利用者は、ハンドオーバ不可を、圏外警報と区別して容易かつ正確に認識することができる。このため、利用者は、ハンドオーバ不可時には、そのまま新たな無線基地局10の方向へ移動してもハンドオーバできないことを認識できるので、元の無線基地局10の方向へ戻るというような、ハンドオーバ不可時における適切な行動を選択することができる。本発明は、ハンドオーバ時におけるデータ通信の切断回避に極めて有効であり、RTP(Real-time Transport Protocol)を用いた音声通信や映像通信など、通信切断により品質が大きく劣化するリアルタイム通信に極めて好適である。
【0049】
また、無線基地局10における通信接続数が上限に達している旨や、無線回線の容量が上限に達している旨など、無線基地局10からハンドオーバ不可の理由が通知された場合には、無線端末20は、ハンドオーバ不可の理由に応じてハンドオーバ不可通知の通知形態を切り替えてもよい。これにより、利用者はハンドオーバ不可の理由を把握できるので、それに応じて、混雑している無線エリアを避ける等、より適切な行動を選択することが可能となる。
【0050】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の実施形態は、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0051】
上述した実施形態では、無線システム1を無線基地局10と無線端末20とから構成した場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、無線基地局10と無線端末20を、コードレス電話装置を用いたシステムにおける親機とハンドオーバ可能な複数の子機により構成してもよい。IP電話網などの一般的な電話網に子機を中継接続する無線システムにおいても、本発明を適用して、本発明と同様の作用効果を得る無線システムを実現することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…無線システム、10,10A,10B,10C…無線基地局、11…呼制御部、20,20A,20B,20C…無線端末、21A,21B,21C…制御部、22A,22B,22C…通知部、30…通信監視装置、50…相手装置、L…通信回線、NW…通信網、ZA、ZB…無線エリア。