(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137354
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】高受胎性を判定するための検査方法、プローブ、プライマー
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6876 20180101AFI20230922BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C12Q1/6876 Z ZNA
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043532
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】593028562
【氏名又は名称】一般社団法人家畜改良事業団
(74)【代理人】
【識別番号】100191400
【弁理士】
【氏名又は名称】絹川 将史
(72)【発明者】
【氏名】絹川 将史
(72)【発明者】
【氏名】治田 将
(72)【発明者】
【氏名】黒木 一仁
(72)【発明者】
【氏名】難波 陽介
(72)【発明者】
【氏名】内山 京子
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA20
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】高受胎性を判定できるDNA変異を検出するDNA変異マーカーを用いた検査方法、プローブ、プライマーを提供することを課題とする。
【解決手段】ウシの染色体における特定の連続する核酸領域に含まれる、一又は複数の変異マーカーをDNA変異マーカーとして、高受胎性の判定を行う。DNA変異マーカーを検出するためのプローブ及びプライマーを提供する。本発明のDNA変異マーカーは、高受胎性の判定ができる指標であり、ゲノムDNA等を用いて該当のDNA変異を調べることにより、正確かつ簡易に高受胎性が判定できる。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウシ染色体における配列番号2と配列番号20に示す塩基配列により挟まれる連続する核酸領域に含まれる、一又は複数の変異マーカーを受胎性の判定に用いる受胎性の判定方法。
【請求項2】
前記一又は複数の変異マーカーは、ウシ2番染色体のg.50026400T>C、g.50034830T>A、g.50040785T>C、g.50042918C>A、g.50043317delA、g.50045023A>G、g.50049436C>T、g.50049507T>C、g.50049976A>C、g.50050057G>A、g.50050166A>G、g.50051920A>C、g.50052052_50052053insA、g.50052066_50052067insT、g.50052235A>G、g.50055582T>C、g.50072418C>A、g.50084371A>G、g.51359573T>Cのいずれかの変異によって特定され、受胎性の判定に用いる請求項1に記載の受胎性の判定方法。
【請求項3】
ウシ染色体における配列番号71と配列番号72に示す塩基配列により挟まれる連続する核酸領域に含まれる、一又は複数の変異マーカーを受胎性の判定に用いる請求項1又は2に記載の受胎性の判定方法。
【請求項4】
前記一又は複数の変異マーカーは、ウシ23番染色体のg.1376079A>G、g.1460153T>C、g.1471785A>G、g.1781357G>A、g.1869520G>A、g.2947418G>T、g.3028498C>T、g.3050303C>T、g.3136924A>G、g.3174243G>A、g.3305896C>T、g.3414589G>A、g.3417342T>G、g.3419429C>A、g.[3425751G>A;3425751G>T]、g.3764648T>G、g.3964915G>A、g.3987423delC、g.4509426A>C、g.4510470C>T、g.4518696T>C、g.4527084T>C、g.5438282A>G、g.5457659T>C、g.5475419C>T、g.5489802C>T、g.5490214_5490215insTTA、g.5523894C>T、g.5539396A>C、g.5539479T>C、g.5539497G>A、g.5539620G>T、g.5541365C>T、g.[5544516delA;5544516_5544517insA]、g.6076488A>C、g.6222859C>T、g.6285293A>G、g.6362566A>C、g.6373121G>T、g.6377888C>T、g.6382177C>T、g.6382288T>C、g.7229021_7229024delAGAC、g.7247620T>A、g.7998808A>G、g.8002117C>T、g.8004427T>C、g.8004495A>G、g.8026147G>A、g.8031497C>T、g.8045638G>A、g.8049093C>A、g.8071217G>A、g.8098007G>A、g.8108500T>C、g.8120328C>T、g.8132852_8132853insC、g.8133365G>C、g.8144642G>A、g.8144936T>C、g.8145898C>T、g.8152446C>T、g.8157835C>T、g.8157911C>A、g.8157981C>T、g.8174829G>A、g.8176342C>T、g.8183043C>T、g.8184328C>G、g.8895708T>A、g.8990328G>A、g.9017998C>T、g.9026144A>C、g.9110772C>T、g.9255920C>T、g.9277068G>A、g.9284473C>T、g.9403427T>G、g.9408356G>A、g.9417856G>A、g.9440073C>G、g.9440451C>A、g.9444478G>A、g.9455002C>T、g.9460280_9460281insGT、g.9461676C>T、g.9461700G>A、g.9476693A>T、g.9477196G>Aのいずれかの変異によって特定され、受胎性の判定に用いる請求項3に記載の受胎性の判定方法。
【請求項5】
前記一又は複数の変異マーカーは、ウシ1番染色体のg.99992651AT[9];[10];[13];[14];[15];[21]、ウシ5番染色体のg.77095404T>C、g.78187174C>T、ウシ6番染色体のg.20993045G>C、g.20993215G>A、ウシ7番染色体のg.5702673A>G、g.5712229C>T、ウシ10番染色体のg.95920652G>A、ウシ15番染色体のg.57950769A[1];[4];[5]、ウシ16番染色体のg.59310190G>C、ウシ17番染色体のg.47299400T>C、ウシ19番染色体のg.9720693GGC[1];[4]、ウシ23番染色体のg.5457659T>C、g.7210721C>T、g.9417856G>A、g.9440073C>G、g.27485487A>Tのいずれかの変異によって特定され、受胎性の判定に用いる請求項1~4のいずれか一項に記載の受胎性の判定方法。
【請求項6】
前記一又は複数の変異マーカーが、変異ホモ接合型又はヘテロ接合型であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の受胎性の判定方法。
【請求項7】
前記変異ホモ接合型又はヘテロ接合型であれば高受胎と判定することを特徴とする請求項6に記載の受胎性の判定方法。
【請求項8】
ウシ染色体における配列番号73と配列番号74に示す塩基配列により挟まれる連続する核酸領域に含まれる、一又は複数の変異マーカーを受胎性の判定に用いる請求項1~7のいずれか一項に記載の受胎性の判定方法。
【請求項9】
前記一又は複数の変異マーカーは、ウシ5番染色体のg.77030819A>G、g.77031485T>C、g.77034188G>A、g.77034504A>G、g.77036061T>C、g.77038803A>G、g.77047360A>G、g.77056241A>G、g.77056313T>C、g.77066922T>C、g.77072045G>A、g.77074454G>A、g.77074835T>C、g.77177327G>A、g.77180154T>C、g.77196824G>A、g.77203644G>A、g.77206028T>C、g.77219846G>Cのいずれかの変異によって特定され、受胎性の判定に用いる請求項8に記載の受胎性の判定方法。
【請求項10】
前記一又は複数の変異マーカーは、ウシ7番染色体のg.2309012A>G、g.6040807_6040808delTT、g.6049762C>T、ウシ8番染色体のg.94490568T>C、ウシ12番染色体のg.56748136G>A、ウシ27番染色体のg.8611429C>T、g.38823864G>Aのいずれかの変異によって特定され、受胎性の判定に用いる請求項1~9のいずれか一項に記載の受胎性の判定方法。
【請求項11】
前記一又は複数の変異マーカーが、変異ホモ接合型又はヘテロ接合型であることを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載の受胎性の判定方法。
【請求項12】
前記変異ホモ接合型であれば高受胎と判定することを特徴とする請求項11に記載の受胎性の判定方法。
【請求項13】
前記一又は複数の変異マーカーの部位の塩基配列を決定する塩基決定工程と、決定された塩基から受胎性を判定する受胎性判定工程を備える、請求項1~12のいずれか一項に記載の牛の受胎性の判定方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の前記一又は複数の変異マーカーの部位の塩基配列を決定するために、一又は複数の変異マーカーのいずれかの近傍の領域にハイブリダイズし、受胎性の判定に用いるためのプローブ。
【請求項15】
配列番号1~70に記載のいずれかの領域にハイブリダイズし、受胎性の判定に用いるための請求項14に記載のプローブ。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか一項に記載の前記一又は複数の変異マーカーの部位の塩基配列を決定するために、前記一又は複数の変異マーカーのいずれかの近傍の領域にハイブリダイズし、受胎性の判定に用いるためのプライマー。
【請求項17】
配列番号1~70に記載のいずれかの変異を含む領域を複製できるプライマーであって、受胎性の判定に用いるための請求項16に記載のプライマー。
【請求項18】
配列番号75~84のいずれかに記載の塩基配列を含み、受胎性の判定に用いるための請求項16又は17に記載のプライマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高受胎性を判定するためのDNA変異マーカーを用いた検査方法、それに用いるプローブ及びプライマーに関する。
【背景技術】
【0002】
動物において、簡易な方法で繁殖能力を予測できることは、労力やコストの面から極めて有用である。特に、家畜では、効率的に受胎させて産子を得ることが望まれ、雄の受胎性が保証された精液を供給することが望まれる。受胎は、精子と卵子が受精し、受精卵が子宮内膜に着床して妊娠が成立することであるが、雄の受胎性とは、受胎に関して精子等の雄側に起因する能力をいう。例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ等では、優秀な雄の凍結精液を配布して人工授精することにより、乳量や肉質といった経済形質の改良がなされているため、その優秀な雄の受胎性に問題がないことが要求される。
【0003】
一方、例えばウシの繁殖において日本国では人工授精の普及率がほぼ100%であるが、その受胎率は、1989年の初回授精の受胎率が乳用種で62.4%、肉用種で67.5%であったところ、2016年では初回授精の受胎率が乳用種で45.9%、肉用種で56.1%と低下している(非特許文献1)。受胎率が低下傾向にある現状において、雄の高受胎性が保証された精液を供給することは、生産効率の観点からも益々有用である。
【0004】
これまで受胎性を含む繁殖能力に影響を与えるゲノム領域や遺伝子に関して研究がなされてきた。例えば、ウシでは繁殖能力に関連する複数のゲノム領域や遺伝子が特定され、遺伝的不良形質に関連する領域が報告されている(非特許文献2)。また、雄側の要因として、胚性致死等に関連する複数のゲノム領域や遺伝子が特定されている(非特許文献3)。さらに雄側の顕著な低受胎性に関連するゲノム領域も特定されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】一般社団法人家畜改良事業団、平成30年受胎調査成績(2021年)
【非特許文献2】Anim Reprod Sci. Sep, 141(1-2), 1-19, 2013
【非特許文献3】Animal, Jun 12(s1), s172-s183, 2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、受胎性を含めた繁殖能力は一般的に遺伝率が低く、集団内で共通して大きな効果を有するゲノム領域や遺伝子の特定は困難であった。また、これまで胚性致死や顕著な低受胎といった遺伝的不良形質に関する特定は報告されたが、受胎性を高める観点から、雄側の個体の高受胎性に着目して、ゲノム領域や遺伝子を指標として利用して改良はされてこなかった。
【0008】
本発明は、斯かる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する高受胎性を判定するためのDNA変異マーカーを用いた検査方法、それに用いるプローブ及びプライマーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、複数の種雄牛個体の受胎性を検討したところ、高受胎性を有する個体が確認され、この高受胎の形質が遺伝することを想定した。そこで、受胎率の判明している種雄牛のゲノムDNAを用いて、次世代シーケンシング等を用いた解析を行った結果、高受胎性の雄個体に共通する特定のゲノム領域が存在することを突き止めた。この一又は複数のゲノム領域を指標として利用することで、高受胎性の判定を行うことができると考え、高受胎性を判定するためのDNA変異マーカーを用いた検査方法、それに用いるプローブ及びプライマーの発明に至った。
【0010】
したがって、本発明は、以下に掲げる構成である。
本発明の受胎性の判定方法は、ウシ染色体における配列番号2と配列番号20に示す塩基配列により挟まれる連続する核酸領域に含まれる、一又は複数の変異マーカーを受胎性の判定に用いる。
本発明の受胎性の判定方法は、前記一又は複数の変異マーカーは、ウシ2番染色体のg.50026400T>C、g.50034830T>A、g.50040785T>C、g.50042918C>A、g.50043317delA、g.50045023A>G、g.50049436C>T、g.50049507T>C、g.50049976A>C、g.50050057G>A、g.50050166A>G、g.50051920A>C、g.50052052_50052053insA、g.50052066_50052067insT、g.50052235A>G、g.50055582T>C、g.50072418C>A、g.50084371A>G、g.51359573T>Cのいずれかの変異によって特定され、受胎性の判定に用いる。
本発明の受胎性の判定方法は、前記一又は複数の変異マーカーは、配列番号2に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がC;配列番号3に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がA;配列番号4に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がC;配列番号5に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がA;配列番号6に記載の塩基配列の一部であり、101位の欠失部位を含む;配列番号7に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がG;配列番号8に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がT;配列番号9に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がC;配列番号10に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がC;配列番号11に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がA;配列番号12に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がG;配列番号13に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がC;配列番号14に記載の塩基配列の一部であり、101_102位の挿入部位を含み、かつ該挿入の塩基がA;配列番号15に記載の塩基配列の一部であり、101_102位の挿入部位を含み、かつ該挿入の塩基がT;配列番号16に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がG;配列番号17に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がC;配列番号18に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がA;配列番号19に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がG;配列番号20に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がC;のいずれかの変異によって特定され、受胎性の判定に用いる。
本発明の受胎性の判定方法は、ウシ染色体における配列番号71と配列番号72に示す塩基配列により挟まれる連続する核酸領域に含まれる、一又は複数の変異マーカーであって、受胎性の判定に用いる。
本発明の受胎性の判定方法は、前記一又は複数の変異マーカーは、ウシ23番染色体のg.1376079A>G、g.1460153T>C、g.1471785A>G、g.1781357G>A、g.1869520G>A、g.2947418G>T、g.3028498C>T、g.3050303C>T、g.3136924A>G、g.3174243G>A、g.3305896C>T、g.3414589G>A、g.3417342T>G、g.3419429C>A、g.[3425751G>A;3425751G>T]、g.3764648T>G、g.3964915G>A、g.3987423delC、g.4509426A>C、g.4510470C>T、g.4518696T>C、g.4527084T>C、g.5438282A>G、g.5457659T>C、g.5475419C>T、g.5489802C>T、g.5490214_5490215insTTA、g.5523894C>T、g.5539396A>C、g.5539479T>C、g.5539497G>A、g.5539620G>T、g.5541365C>T、g.[5544516delA;5544516_5544517insA]、g.6076488A>C、g.6222859C>T、g.6285293A>G、g.6362566A>C、g.6373121G>T、g.6377888C>T、g.6382177C>T、g.6382288T>C、g.7229021_7229024delAGAC、g.7247620T>A、g.7998808A>G、g.8002117C>T、g.8004427T>C、g.8004495A>G、g.8026147G>A、g.8031497C>T、g.8045638G>A、g.8049093C>A、g.8071217G>A、g.8098007G>A、g.8108500T>C、g.8120328C>T、g.8132852_8132853insC、g.8133365G>C、g.8144642G>A、g.8144936T>C、g.8145898C>T、g.8152446C>T、g.8157835C>T、g.8157911C>A、g.8157981C>T、g.8174829G>A、g.8176342C>T、g.8183043C>T、g.8184328C>G、g.8895708T>A、g.8990328G>A、g.9017998C>T、g.9026144A>C、g.9110772C>T、g.9255920C>T、g.9277068G>A、g.9284473C>T、g.9403427T>G、g.9408356G>A、g.9417856G>A、g.9440073C>G、g.9440451C>A、g.9444478G>A、g.9455002C>T、g.9460280_9460281insGT、g.9461676C>T、g.9461700G>A、g.9476693A>T、g.9477196G>Aのいずれかの変異によって特定され、受胎性の判定に用いる。
本発明の受胎性の判定方法は、前記一又は複数の変異マーカーは、配列番号32に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がG;配列番号33に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がA;配列番号34に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がT;配列番号35に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がT;配列番号36に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がG;配列番号37に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がA;配列番号38に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がG;配列番号39に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がA;配列番号40に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がT;のいずれかの変異によって特定され、受胎性の判定に用いる。
本発明の受胎性の判定方法は、前記一又は複数の変異マーカーは、ウシ1番染色体のg.99992651AT[9];[10];[13];[14];[15];[21]、ウシ5番染色体のg.77095404T>C、g.78187174C>T、ウシ6番染色体のg.20993045G>C、g.20993215G>A、ウシ7番染色体のg.5702673A>G、g.5712229C>T、ウシ10番染色体のg.95920652G>A、ウシ15番染色体のg.57950769A[1];[4];[5]、ウシ16番染色体のg.59310190G>C、ウシ17番染色体のg.47299400T>C、ウシ19番染色体のg.9720693GGC[1];[4]、ウシ23番染色体のg.5457659T>C、g.7210721C>T、g.9417856G>A、g.9440073C>G、g.27485487A>Tのいずれかの変異によって特定され、受胎性の判定に用いる。
本発明の受胎性の判定方法は、前記一又は複数の変異マーカーは、配列番号1に記載の塩基配列の一部であり、101位の挿入(繰返し)部位を含み、かつ該挿入(繰返し)の塩基がAT;配列番号21に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がC;配列番号22に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がT;配列番号23に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がC;配列番号24に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がA;配列番号25に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がG;配列番号26に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がT;配列番号27に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がA;配列番号28に記載の塩基配列の一部であり、101位の挿入(繰返し)部位を含み、かつ該挿入(繰返し)の塩基がA;配列番号29に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がC;配列番号30に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がC;配列番号31に記載の塩基配列の一部であり、101位の挿入(繰返し)部位を含み、かつ該挿入(繰返し)の塩基がGGC;配列番号41に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がT;配列番号65に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がC;配列番号66に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がT;配列番号67に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がA;配列番号68に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がG;のいずれかの変異によって特定され、受胎性の判定に用いる。
本発明の受胎性の判定方法は、前記一又は複数の変異マーカーが、変異ホモ接合型又はヘテロ接合型であることを特徴とする。
本発明の受胎性の判定方法は、前記変異ホモ接合型又はヘテロ接合型であれば高受胎と判定することを特徴とする。
本発明の受胎性の判定方法は、ウシ染色体における配列番号73と配列番号74に示す塩基配列により挟まれる連続する核酸領域に含まれる、一又は複数の変異マーカーを受胎性の判定に用いる。
本発明の受胎性の判定方法は、前記一又は複数の変異マーカーは、ウシ5番染色体のg.77030819A>G、g.77031485T>C、g.77034188G>A、g.77034504A>G、g.77036061T>C、g.77038803A>G、g.77047360A>G、g.77056241A>G、g.77056313T>C、g.77066922T>C、g.77072045G>A、g.77074454G>A、g.77074835T>C、g.77177327G>A、g.77180154T>C、g.77196824G>A、g.77203644G>A、g.77206028T>C、g.77219846G>Cのいずれかの変異によって特定され、受胎性の判定に用いる。
本発明の受胎性の判定方法は、前記一又は複数の変異マーカーは、配列番号42に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がG;配列番号43に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がC;配列番号44に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がA;配列番号45に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がG;配列番号46に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がC;配列番号47に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がG;配列番号48に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がG;配列番号49に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がG;配列番号50に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がC;配列番号51に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がC;配列番号52に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がA;配列番号53に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がC;配列番号54に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がA;配列番号55に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がC;配列番号56に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がA;配列番号57に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がA;配列番号58に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がC;配列番号59に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がC;のいずれかの変異によって特定され、受胎性の判定に用いる。
本発明の受胎性の判定方法は、前記一又は複数の変異マーカーは、ウシ7番染色体のg.2309012A>G、g.6040807_6040808delTT、g.6049762C>T、ウシ8番染色体のg.94490568T>C、ウシ12番染色体のg.56748136G>A、ウシ27番染色体のg.8611429C>T、g.38823864G>Aのいずれかの変異によって特定され、受胎性の判定に用いる。
本発明の受胎性の判定方法は、前記一又は複数の変異マーカーは、配列番号60に記載の塩基配列の一部であり、101_102位の欠失部位を含む;配列番号61に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がT;配列番号62に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がC;配列番号63に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がA;配列番号64に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がA;配列番号69に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がG;配列番号70に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換の塩基がT;のいずれかの変異によって特定され、受胎性の判定に用いる。
本発明の受胎性の判定方法は、前記一又は複数の変異マーカーが、変異ホモ接合型又はヘテロ接合型であることを特徴とする。
本発明の受胎性の判定方法は、前記変異ホモ接合型であれば高受胎と判定することを特徴とする。
本発明の受胎性の判定方法は、前記一又は複数の変異マーカーは、配列番号1~70に記載のいずれかの変異マーカーである。
本発明の受胎性の判定方法は、前記一又は複数の変異マーカーの部位の塩基配列を決定する塩基決定工程と、決定された塩基から受胎性を判定する受胎性判定工程を備える。
本発明のプローブは、前記一又は複数の変異マーカーの部位の塩基配列を決定するために、一又は複数の変異マーカーのいずれかの近傍の領域にハイブリダイズし、受胎性の判定に用いる。
本発明のプローブは、配列番号1~70に記載のいずれかの領域にハイブリダイズし、受胎性の判定に用いる。
本発明のプローブは、前記一又は複数の変異マーカーのいずれかの変異を含む領域にハイブリダイズし、受胎性の判定に用いる。
本発明のプローブは、配列番号1~70に記載のいずれかの変異を含む領域にハイブリダイズし、受胎性の判定に用いる。
本発明のプライマーは、前記一又は複数の変異マーカーの部位の塩基配列を決定するために、一又は複数の変異マーカーのいずれかの近傍の領域にハイブリダイズし、受胎性の判定に用いる。
本発明のプライマーは、配列番号1~70で示す変異マーカーのいずれかの近傍の領域にハイブリダイズし、受胎性の判定に用いる。
本発明のプライマーは、配列番号1~70に記載のいずれかの変異を含む領域を複製できるプライマーであって、受胎性の判定に用いる。
本発明のプライマーは、配列番号75~84のいずれかに記載の塩基配列を含み、受胎性の判定に用いる。
本発明の一対のプライマーは、前記一又は複数の変異マーカーの部位の塩基配列を決定するために、前記一又は複数の変異マーカーのいずれかの変異を含む領域を増幅し、受胎性の判定に用いる。
本発明の一対のプライマーは、配列番号1~70に記載のいずれかの変異を含む領域を増幅し、受胎性の判定に用いる。
本発明の一対のプライマーは、配列番号1~70に記載のいずれかの変異を挟む領域にハイブリダイズする塩基配列であり、受胎性の判定に用いる。
本発明の一対のプライマーは、配列番号10の変異を含む領域を増幅するための配列番号75及び76に記載の塩基配列、配列番号20の変異を含む領域を増幅するための配列番号77及び78に記載の塩基配列、配列番号34の変異を含む領域を増幅するための配列番号79及び80に記載の塩基配列、配列番号37の変異を含む領域を増幅するための配列番号81及び82に記載の塩基配列、若しくは配列番号55の変異を含む領域を増幅するための配列番号83及び84に記載の塩基配列、のいずれかを含み、受胎性の判定に用いる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のDNA変異マーカーは、高受胎性の判定ができる指標であり、ゲノムDNA等を用いて該当のDNA変異を調べることにより、正確かつ簡易に高受胎性が判定できる。高受胎性の雄個体を選抜することにより、近年問題となっているフィールド受胎率低下の課題を解決できる。高受胎性を有する雄個体を繁殖に用いることにより、飼養管理費や人工授精費等のコストを大幅に削減できる。また、経済形質も備わった高受胎性を有する雄個体の選抜により、経済動物の改良に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、顕性モデルで高受胎性を説明できる1481個のゲノムDNA変異について、ウシ染色体の位置順に並べた-log(p値)を示す。
【
図2】
図2は、潜性モデルで高受胎性を説明できる621個のゲノムDNA変異について、ウシ染色体の位置順に並べた-log(p値)を示す。
【
図3A】
図3Aは、ウシ2番染色体のg.51359573T>C(配列番号20)の各遺伝子型における種雄牛の初回受胎率を示す箱ひげ図である。
【
図3B】
図3Bは、ウシ2番染色体の19個のゲノムDNA変異について、変異ホモ接合型及びヘテロ接合型の個体と、リファレンスホモ接合型の個体との初回受胎率の平均±標準偏差を示す。
【
図3C】
図3Cは、19個のゲノムDNA変異をウシ2番染色体の位置順に並べ、変異ホモ接合型又はヘテロ接合型の変異がある場合は黒塗で示す。黒塗が連続している場合は、連鎖していることを示す。
【
図4A】
図4Aは、ウシ23番染色体のg.3414589G>A(配列番号37)の各遺伝子型における種雄牛の初回受胎率を示す箱ひげ図である。
【
図4B】
図4Bは、ウシ23番染色体の89個のゲノムDNA変異について、変異ホモ接合型及びヘテロ接合型の個体と、リファレンスホモ接合型の個体との初回受胎率の平均±標準偏差を示す。
【
図4C】
図4Cは、89個のゲノムDNA変異をウシ23番染色体の位置順に並べ、変異ホモ接合型又はヘテロ接合型の変異がある場合は黒塗で示す。黒塗が連続している場合は、連鎖していることを示す。
【
図5A】
図5Aは、ウシ5番染色体のg.77180154T>C(配列番号55)の各遺伝子型における種雄牛の初回受胎率を示す箱ひげ図である。
【
図5B】
図5Bは、ウシ5番染色体の19個のゲノムDNA変異について、変異ホモ接合型の個体と、ヘテロ接合型及びリファレンスホモ接合型との個体の初回受胎率の平均±標準偏差を示す。
【
図5C】
図5Cは、19個のゲノムDNA変異をウシ5番染色体の位置順に並べ、変異ホモ接合型の変異がある場合は黒塗で示す。黒塗が連続している場合は、連鎖していることを示す。
【
図6A】
図6Aは、配列番号20、34、55のいずれかのマーカーにより、高受胎と判定された場合(y)、判定されない場合(n)の初回受胎率を示す箱ひげ図である。
【
図6B】
図6Bは、配列番号10、20、29、34、37のいずれかのマーカーにより、高受胎と判定された場合(y)、判定されない場合(n)の初回受胎率を示す箱ひげ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に関する高受胎性を判定するためのDNA変異マーカーを用いた検査方法、それに用いるプローブ及びプライマーの実施の形態について説明する。本発明は、下記実施の形態に限るものでなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいてその構成を適宜変更できる。
【0014】
実施の形態1.高受胎を判定するDNA変異マーカー
本発明のDNA変異マーカーは、動物の高受胎性を判定する指標となるDNA変異マーカーである。DNAの塩基は、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)の4種類であるが、DNA変異によってDNAを構成する塩基配列に変化が生じる。DNA変異の例として、1塩基が置換された一塩基多型(SNP,Single Nucleotide Polymorphism)、1個以上の塩基の挿入(Insertion)や欠失(Deletion)、さらに重複(Duplication)、転座(Translocation)、逆位(Inversion)、縦列反復(Tandem repeat)といった構造多型(SV,Structural Variation、SV)等が挙げられる。
【0015】
本発明のDNA変異マーカーは、ウシゲノムから特定した高受胎性の判定に用いるDNA変異である。本明細書中で引用するウシゲノムの染色体及び位置情報は、ウシゲノムアセンブリARS-UCD1.2(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/assembly/GCF_002263795.1/、2018年4月11日)を用いる。DNA変異マーカーは、ウシゲノムアセンブリARS-UCD1.2の持つリファレンス型とは異なる型であり、接合型としてはホモ変異接合型及びヘテロ接合型がある。
【0016】
本明細書中で受胎率は、ある雌にある雄の精液を初めて用いた場合の初回受胎率を用いる。例えば、黒毛和種種雄牛の平成4年~令和2年に調整交配を行った990頭の初回受胎率は、平均が55.8%、標準偏差(σ)が10.8%である。ここで高受胎とは、初回受胎率が平均値以上であって、例えば60%以上、65%以上、70%以上といった実測値で示すこともできるし、平均値に対して標準偏差が+0.5σ以上、+1σ以上、+1.5σ以上、+2σ以上といった統計的な値で示すこともできる。
【0017】
(1)DNA変異マーカーが存在するウシゲノム領域
本発明のDNA変異マーカーは、高受胎の種雄牛の多くにDNA変異を有するが、そうでない雄牛にDNA変異がない領域である。遺伝形式として、顕性(優性)モデルは変異ホモ接合型又はヘテロ接合型が高受胎性を説明でき、潜性(劣性)モデルは変異ホモ接合型が高受胎性を説明できる。ウシゲノム領域は各々の形式に分けて下記に示す。領域は、前後のDNA変異の間隔が染色体上で200万塩基対未満である場合は、連続する領域を「~」で示す。このような近接する領域では、連鎖不平衡ブロックが生じていて、DNA変異マーカーとして同様の指標となり得る。
【0018】
本発明の顕性モデルのDNA変異マーカーは、下記のウシ染色体の範囲に1481個存在する。ウシ1番染色体は、位置676664、29772828、38756472~38812600、66529715~66529792、74209738~74639291、99992650である。ウシ2番染色体は、位置3208885、11515358~12115271、14697000、50026400~51359573、99379655~99912486、107235125~107334629、123570766~124469665である。ウシ3番染色体は、位置5364206、53819846~58465738、118696434である。ウシ4番染色体は、位置112767107~113261696、118278626である。ウシ5番染色体は、位置750542~3437040、45988453、72486803、76042200~78187174、82847402~86283486、89815921、90378789~94565228、97015123~97037949、100459082~100463287、117093475~117138783である。ウシ6番染色体は、位置18920137、20975459~20993215、53867257~53867786、116005790~116005822である。ウシ7番染色体は、位置3139700~7534130、77555521~78174261、103252565~104089381である。ウシ8番染色体は、位置32373781~33941424である。ウシ9番染色体は、位置88638726である。ウシ10番染色体は、位置25226246、45939484、95700943~95920652、98224535~98285609である。ウシ11番染色体は、位置3978681、12017520~12093187、22897193~22905453、39556493~39556508、47219203、58296199~58389262である。ウシ12番染色体は、位置143278~1113527、82178240~85453031である。ウシ14番染色体は、位置363694~3522547、13451290~14005972である。ウシ15番染色体は、位置57950768、84101457~84418483である。ウシ16番染色体は、位置9472378~11245001、32184859、52269453、59310190である。ウシ17番染色体は、位置18651~73568、2338310~3533935、6561593~8300478、10932610~12973448、16436354、23255528~23447699、27479518~27866873、37254846、47299400~47626132、50118828、56647158~56659905、60886678である。ウシ18番染色体は、位置26504921、49525364、61356032~61395551である。ウシ19番染色体は、位置4853270、9720692、32666980~33726035、57087223である。ウシ20番染色体は、位置117638、2715865~4886773、43846380、60728016~60739098である。ウシ21番染色体は、位置12790752、24733318である。ウシ22番染色体は、位置14781384~14781403、18848055、24466187、57916919である。ウシ23番染色体は、位置1108485~9500957、21632416、26721748~29274266、31599725、38150416~38150435である。ウシ25番染色体は、位置41216221~41245978である。ウシ26番染色体は、位置2691577~8097681、39675746、44715240~44715273である。ウシ28番染色体は、位置19009926、37235675~38888961である。ウシ29番染色体は、位置5489368、23283930~23444332、26300250~26410927、38877446~38997918、48263737~48393695である。ウシX染色体は、位置100011985~101770616である。
【0019】
本発明の顕性モデルのDNA変異マーカーは、統計的処理により信頼性が高い領域であることが好ましく、下記のウシ染色体の範囲に存在する。ウシ1番染色体は、位置99992650である。ウシ2番染色体は、位置50026400~51359573である。ウシ3番染色体は、位置53819846~58465738、118696434である。ウシ4番染色体は、位置112767107~113261696である。ウシ5番染色体は、位置76042200~78187174である。ウシ6番染色体は、位置20975459~20993215、116005790~116005822である。ウシ7番染色体は、位置3139700~7534130である。ウシ10番染色体は、位置95700943~95920652である。ウシ14番染色体は、位置13451290~14005972である。ウシ15番染色体は、位置57950768である。ウシ16番染色体は、位置59310190である。ウシ17番染色体は、位置18651~73568、10932610~12973448、23255528~23447699、27479518~27866873、47299400~47626132、50118828である。ウシ18番染色体は、位置61356032~61395551である。ウシ19番染色体は、位置9720692である。ウシ20番染色体は、位置117638、43846380である。ウシ22番染色体は、位置14781384~14781403である。ウシ23番染色体は、位置1108485~9500957、26721748~29274266である。ウシX染色体は、位置100011985~101770616である。
【0020】
本発明の潜性モデルのDNA変異マーカーは、下記のウシ染色体の範囲に621個存在する。ウシ1番染色体は、位置109873802~114008266、118370417~118370736、126761651、129567143、151197683~151372661である。ウシ2番染色体は、位置1333878~1345827、95276410~95290174、122646373~122658639である。ウシ4番染色体は、位置27039939、87607436~87611763である。ウシ5番染色体は、位置52506371~52506372、69628918~69691265、76087872~78341778、86565059~86738585、104900077、117257066~117257140、119403865~119405481である。ウシ6番染色体は、位置53098989~53194255、91060024~91101120である。ウシ7番染色体は、位置2286810~2322003、6040806~6049762、46285430、56134480、87861451~87861937、101283052~101359303である。ウシ8番染色体は、位置18756783~18798647、87519162~87519199、94472404~94519281である。ウシ9番染色体は、位置63443500、87036227~88641039、91180919~91347386、98002495、102417027である。ウシ10番染色体は、位置632896~655664、97368547である。ウシ11番染色体は、位置47164877~47165468、52863918、58389262、101092407である。ウシ12番染色体は、位置56748136~56850511、63598520~64348388である。ウシ14番染色体は、位置14661535~14677967、18808149~18808231、49004110~49004133である。ウシ15番染色体は、位置5143482、12580832、71636098である。ウシ16番染色体は、位置36610665、51691646~52183583、54830961~54881418、65624919、78345186~78417633、80916690である。ウシ17番染色体は、位置18651~19633、18014337~20536171、24492100~31120932、35280662~37550818、40526124~40563860である。ウシ18番染色体は、位置34172644である。ウシ19番染色体は、位置20072996~20251315、36003031、50415136である。ウシ20番染色体は、位置42999466である。ウシ21番染色体は、位置415740~442290、10249359である。ウシ22番染色体は、位置25328016、29988080である。ウシ24番染色体は、位置30145622~30145646である。ウシ25番染色体は、位置874949、10156381~10156425、17146020~17205947である。ウシ26番染色体は、位置5624124、51818684である。ウシ27番染色体は、位置2353154、8585553~8611429、12698593、23725625、38823864である。ウシ28番染色体は、位置21525775、24399960である。ウシ29番染色体は、位置35976038~35976039である。ウシX番染色体は、位置135563438~135592051、137747206である。
【0021】
本発明の潜性モデルのDNA変異マーカーは、統計的処理により信頼性が高い領域であることが好ましく、下記のウシ染色体の範囲に存在する。ウシ5番染色体は、位置52506371~52506372、76087872~78341778、119403865~119405481である。ウシ7番染色体は、位置6040806~6049762である。ウシ8番染色体は、位置94472404~94519281である。ウシ12番染色体は、位置56748136~56850511である。ウシ17番染色体は、位置18651~19633、24492100~31120932である。ウシ27番染色体は、位置2353154、38823864である。ウシ28番染色体は、位置24399960である。
【0022】
(2)ウシゲノム特異的な領域にあるDNA変異マーカー
本発明のDNA変異マーカーは、一又は複数の組合せにより、高受胎種雄牛を判定できる。このような場合、ウシゲノム中に同様の塩基配列を有する領域が単一であり、特異的な領域における変異であることが望ましい。このようなDNA変異マーカーの例を下記に示す。以下の各変異の記述は、Hum Mutat 2016; 37: 564-569.及びhttp://www.hgvs.org/mutnomen/examplesDNA.htmlの方法に従って示す。
【0023】
本発明のDNA変異マーカーは、顕性モデルとして、変異ホモ接合型又はヘテロ接合型が高受胎を説明できる場合として、以下に挙げるものである。ウシ1番染色体では、g.29772828C>T、g.38756472G>A、g.38758011C>T、g.38758527A>G、g.38759126T>C、g.38759136C>T、g.38759161A>G、g.38759554T>G、g.38759738G>T、g.38760180C>A、g.38760204T>C、g.38760222T>C、g.38761136C>G、g.38762509A>G、g.38762511G>T、g.38762531T>A、g.38762562G>A、g.38766178A>G、g.38767911C>T、g.38767929C>T、g.38768615A>T、g.38770375G>A、g.38770377C>T、g.38772616G>A、g.38777718C>T、g.38777764C>T、g.38777776C>A、g.38777808G>A、g.38778592C>A、g.38778640_38778641insA、g.38779546C>T、g.38779550A>G、g.38779565G>A、g.38779666G>A、g.38780027T>C、g.38780110A>G、g.38780140G>A、g.38780168T>A、g.38780189G>A、g.38780195T>G、g.38780499T>C、g.38781140C>T、g.38781203G>A、g.38781341C>T、g.38781356G>A、g.38781380C>T、g.38781391A>T、g.38781397T>A、g.38781406A>C、g.38781424A>G、g.38781438T>G、g.38781457T>C、g.38781530_38781531insTA、g.38781551A>G、g.38781630C>T、g.38781672C>T、g.38781715T>G、g.38782306C>T、g.38782954C>T、g.38782963G>A、g.38783000G>A、g.38783013C>T、g.38783022C>T、g.38792640T>C、g.38793915C>T、g.38796429T>G、g.38801020A>G、g.38802166A>G、g.38805008C>T、g.38809565G>A、g.74382919T>C、g.74382922_74382923insGTCCTGGTGCAGGTAAAA、g.74390295C>G、g.74561216C>T、g.74629139T>A、g.74639291A>G、g.99992651AT[9];[10];[13];[14];[15];[21]がある。ウシ2番染色体では、g.[12115271C>T;12115271C>G]、g.50026400T>C、g.50034830T>A、g.50040785T>C、g.50042918C>A、g.50043317delA、g.50045023A>G、g.50049436C>T、g.50049507T>C、g.50049976A>C、g.50050057G>A、g.50050166A>G、g.50051920A>C、g.50052052_50052053insA、g.50052066_50052067insT、g.50052235A>G、g.50055582T>C、g.50072418C>A、g.50084371A>G、g.51359573T>C、g.99912486T>G、g.107235126delG、g.107238113T>C、g.107272040G>A、g.107334629C>T、g.[124469666_124469667delTT;124469667delT]がある。ウシ3番染色体では、g.5364206C>T、g.55939027G>T、g.56272408G>A、g.56272411T>C、g.56373829G>T、g.56456311T>A、g.57850048_57850049insAAAGGAAAATGCAAAAGGAAAAAT、g.57850051_57850052insAAAAAA、g.57850052_57850053insGGCAAAAAA、g.57850054_57850055insGCAAAAAGGTTCCAAAGGCAAAGCAAAAGCAAAA、g.58080304G>Aがある。ウシ5番染色体では、g.750542G>A、g.1879310T>C、g.2200909T>C、g.[3104452_3insGCT;3104452_3insGGCT]、g.76221275A>T、g.76251829T>C、g.76272438A>G、g.76286176T>C、g.76405873A>G、g.76418692G>A、g.76459079A>C、g.76504596T>G、g.76608592C>A、g.76613065A>G、g.77039005G>T、g.77069997_77069998insCTGTACTAAACTGGTATTAAT、g.77083781A>C、g.77095404T>C、g.77144608G>A、g.77615331C>A、g.77781104C>T、g.78187174C>T、g.82847402C>T、g.92298933G>A、g.92325229C>T、g.92337524G>C、g.92343692C>A、g.92349866T>G、g.92368121G>A、g.92378393A>G、g.92379604C>T、g.92387639C>T、g.92496073A>G、g.100459082T>C、g.117093475T>C、g.117138783C>Tがある。ウシ6番染色体では、g.18920137C>T、g.20993045G>C、g.20993215G>Aがある。ウシ7番染色体では、g.3139700T>G、g.3752005T>G、g.4373028C>G、g.4406401G>A、g.5702673A>G、g.5712229C>T、g.5746656T>A、g.5762018C>T、g.5771829T>C、g.5774165G>T、g.5774972C>T、g.5775171G>T、g.5775184G>A、g.5775342C>T、g.7534130G>A、g.77555521A>G、g.103994185G>Cがある。ウシ8番染色体では、g.32373781C>Tがある。ウシ10番染色体では、g.95700944T[3];[4]、g.95920652G>A、g.98283424C>G、g.98285609A>Tがある。ウシ11番染色体では、g.3978681C>A、g.12017520G>A、g.12074059C>A、g.12074132T>C、g.12085474A>G、g.12091705T>C、g.12091727_12091729delAGT、g.12092577A>G、g.12093060T>G、g.12093187_12093188insAGAAGAGAAG、g.22900702C>G、g.22901940A>Gがある。ウシ12番染色体では、g.179899T>C、g.1113528delT、g.82237866delC、g.82242204G>T、g.82254080G>A、g.82363665A>G、g.82368711C>A、g.82368780C>G、g.82368885C>T、g.82375677T>C、g.82375794C>G、g.82377789G>A、g.82378980G>A、g.82383640A>G、g.82383646C>A、g.82384039A>T、g.82384162delT、g.82384291A>G、g.82384331T>C、g.82384817T>C、g.82385441G>A、g.82386071C>A、g.82386566C>T、g.82386599G>A、g.82387540C>A、g.82392803G>A、g.82394092T>C、g.82394864A>G、g.82395861A>G、g.82395891G>A、g.82396467A>G、g.82396751G>A、g.82402848T>C、g.82402960_82402961insTTTTT、g.82402962_82402963insGC、g.82402964_82402965insGTTTTGGGG、g.82402967_82402968insAAC、g.82411656T>A、g.82443559C>A、g.82450528A>G、g.82515268A>G、g.[82519799T>C;82519799T>A]、g.82519808A>G、g.82520767T>A、g.82524206_82524207insCCA、g.82546237T>G、g.82552055T>C、g.82559953A>G、g.82564932T>G、g.82567716G>A、g.82567835G>A、g.82570868C>T、g.82574057A>G、g.82574915A>G、g.82575726G>A、g.82575744A>C、g.82578465T>G、g.82581748A>G、g.82590730G>C、g.82590769G>A、g.82590820A>T、g.82590985G>A、g.82591196G>A、g.82591674A>G、g.82591676T>C、g.82591739G>A、g.82591996A>G、g.82591998A>C、g.82592007T>C、g.82592017A>G、g.82592110T>C、g.82592150A>G、g.82592213A>G、g.82592220_82592221insGCCG、g.82592554A>G、g.82593186G>A、g.83059950G>C、g.83906480A>G、g.83906494G>A、g.85339371G>A、g.85344068G>A、g.85352614C>T、g.85353735A>G、g.85356955A>G、g.85365006C>T、g.85423141A>G、g.85453031C>Tがある。ウシ14番染色体では、g.363694G>A、g.445932G>A、g.482457T>A、g.483062G>C、g.604743_604754delGGGGTGCCTTGT、g.612298C>T、g.644325C>T、g.2070823C>G、g.2071098C>T、g.2071138G>C、g.2072002C>T、g.2072461A>G、g.2072735A>C、g.2074662C>T、g.2075478C>A、g.2076849C>T、g.2077474_2077493delTCACTGAGCGTCCACGTGCA、g.2077674C>T、g.2080344C>T、g.2080536T>C、g.2080556G>A、g.2082551A>G、g.2082699C>T、g.2082774_2082775insA、g.2082922C>A、g.2082950C>G、g.2082961A>G、g.2083020_2083021insG、g.2083277T>C、g.2083385A>G、g.2083478C>G、g.2083502_2083503insGGGGCCAC、g.2083547C>T、g.2084100_2084151delCCAGGGTCAGCCTGCCGCCCCTGGGAGCTGGGCCGGCCCTCCCCCTGGGCCT、g.2084336C>T、g.2084344C>T、g.2084371G>T、g.2084373T>G、g.2084399C>A、g.2084597T>C、
g.2084659C>G、g.2084676G>A、g.2084695T>C、g.2084721A>G、g.2084775C>T、g.2084937T>C、g.2084979C>T、g.2084982G>T、g.2085015T>C、g.2085018delC、g.2085054G>A、g.2085067G>A、g.2085276T>G、g.2085415C>T、g.2085504A>G、g.2085657A>G、g.2085710G>C、g.2086729C>A、g.2086974G>A、g.2087108A>G、g.2087478T>C、g.2087479G>A、g.2130739T>C、g.2138499T>C、g.3487534G>A、g.3522547T>A、g.13817249G>C、g.13822292C>Tがある。ウシ15番染色体では、g.57950769A[1];[4];[5]、g.[84101458delT: 84101458_84101459insT]、g.84418483_84418484insAがある。ウシ16番染色体では、g.11180701G>A、g.11181535G>A、g.11182214A>G、g.11182237G>A、g.11182257A>T、g.11182259_11182260delAG、g.11182325T>C、g.11182515G>A、g.11184052C>T、g.11185391G>T、g.11185488C>G、g.11185507C>T、g.11213663T>G、g.11218952G>C、g.11219322C>A、g.11219514_11219515CAAT、g.11219555A>T、g.11219731A>T、g.11219791A>T、g.11219792T>C、g.11220570A>T、g.11220818T>C、g.11220846A>G、g.11221500T>A、g.11222378_11222379insG、g.11222542_11222543insACCCAATAAT、g.11223277G>A、g.11224371C>T、g.11240057_11240059delAAG、g.11243593delA、g.52269453T>C、g.59310190G>Cがある。ウシ17番染色体では、g.2338311_2338314delCCCC、g.2347247A>G、g.2360463T>C、g.2385086T>C、g.2385087G>A、g.2385873T>G、g.2406540C>T、g.2412445G>A、g.2416696C>T、g.2422671G>A、g.2423447C>T、g.2423946C>T、g.2426201delT、g.2426216T>C、g.2426219G>T、g.2430017T>A、g.2969997G>A、g.2970613A>G、g.2981209C>A、g.2995315G>A、g.2996145C>G、g.3501894C>T、g.3531248C>A、g.3531953G>A、g.3532449delT、g.3533109G>A、g.6771488C>T、g.8276350T>G、g.8276714G>C、g.[8279699C>T;8279699C>A]、g.8280192C>T、g.8280205C>T、g.8280831C>T、g.8280887G>A、g.8280940C>T、g.8282556C>T、g.[8282688delA;8282688_8282689insA]、g.8282731A>G、g.8282842A>G、g.8282851C>T、g.8283214T>G、g.8283225A>C、g.8283514A>G、g.8283624G>T、g.8283666G>A、g.8283667A>G、g.8284150G>A、g.8284406G>A、g.8285650C>A、g.8285669G>A、g.8286686C>A、g.8291639G>A、g.12683970C>A、g.12684045T>A、g.12684074A>C、g.12685168G>A、g.12685178A>G、g.12685402C>T、g.12686674A>G、g.12686745T>C、g.12687030A>G、g.12687057C>T、g.12687178A>G、g.12687468T>C、g.12687838T>C、g.12688232G>A、g.12688257_12688258insAAAG、g.12690803A>C、g.12694748A>G、g.12695277A>G、g.12695724A>G、g.12916272T>A、g.12916483T>C、g.12916494T>C、g.12916596A>G、g.12916598_12916599insCCTGCC、g.12916599_12916600insG、g.12916619T>C、g.12916698_12916701delCTGT、g.12917329A>C、g.16436355_16436356delTA、g.47299400T>C、g.56647159delT、g.56659905C>T、g.60886678_60886679insTがある。ウシ19番染色体では、g.9720693GGC[1];[4]、g.32684196G>A、g.32705041G>A、g.32705059T>C、g.32720000T>C、g.33162692C>T、g.33166874G>A、g.33175789G>A、g.33181379C>T、g.33198416G>A、g.33206811C>T、g.33209000C>A、g.33215085G>A、g.33249706_33249709delCACT、g.33288975C>A、g.33723343T>G、g.33726035A>Gがある。ウシ20番染色体では、g.2716500A>G、g.60732253_60732254insTがある。ウシ21番染色体では、g.[24733319_24733320delCT;24733320_24733321insCT]がある。ウシ23番染色体では、g.1376079A>G、g.1460153T>C、g.1471785A>G、g.1781357G>A、g.1869520G>A、g.2947418G>T、g.3028498C>T、g.3050303C>T、g.3136924A>G、g.3174243G>A、g.3305896C>T、g.3414589G>A、g.3417342T>G、g.3419429C>A、g.[3425751G>A;3425751G>T]、g.3764648T>G、g.3964915G>A、g.3987423delC、g.4509426A>C、g.4510470C>T、g.4518696T>C、g.4527084T>C、g.5438282A>G、g.5457659T>C、g.5475419C>T、g.5489802C>T、g.5490214_5490215insTTA、g.5523894C>T、g.5539396A>C、g.5539479T>C、g.5539497G>A、g.5539620G>T、g.5541365C>T、g.[5544516delA;5544516_5544517insA]、g.6076488A>C、g.6222859C>T、g.6285293A>G、g.6362566A>C、g.6373121G>T、g.6377888C>T、g.6382177C>T、g.6382288T>C、g.7229021_7229024delAGAC、g.7247620T>A、g.7998808A>G、g.8002117C>T、g.8004427T>C、g.8004495A>G、g.8026147G>A、g.8031497C>T、g.8045638G>A、g.8049093C>A、g.8071217G>A、g.8098007G>A、g.8108500T>C、g.8120328C>T、g.8132852_8132853insC、g.8133365G>C、g.8144642G>A、g.8144936T>C、g.8145898C>T、g.8152446C>T、g.8157835C>T、g.8157911C>A、g.8157981C>T、g.8174829G>A、g.8176342C>T、g.8183043C>T、g.8184328C>G、g.8895708T>A、g.8990328G>A、g.9017998C>T、g.9026144A>C、g.9110772C>T、g.9255920C>T、g.9277068G>A、g.9284473C>T、g.9403427T>G、g.9408356G>A、g.9417856G>A、g.9440073C>G、g.9440451C>A、g.9444478G>A、g.9455002C>T、g.9460280_9460281insGT、g.9461676C>T、g.9461700G>A、g.9476693A>T、g.9477196G>A、g.27485487A>T、g.28958296A>G、g.28958317G>A、g.[31599725G>A;31599725G>C]がある。ウシ25番染色体では、g.41216221C>A、g.41245978A>Tがある。ウシ26番染色体では、g.2691578delA、g.4920679_4920680insATTTT、g.4920682_ins4920683TCGGACATCTCGGATT、g.4924774C>T、g.4924833A>T、g.4924839A>T、g.4925080T>G、g.4925818G>T、g.4928744T>C、g.4929023_4929024insAG、g.4934918_4934936delTTATTTCACTTGAAATAAT、g.4938277A>C、g.4941712G>C、g.5028097_5028098insT、g.5029953A>G、g.[5042366A>C;5042366A>G]、g.6321906C>T、g.7067268T>G、g.7095102G>A、g.7264052G>A、g.7370454C>T、g.7661526C>T、g.[7681891C>T;7681891C>G]、g.7698492C>A、g.7699068G>A、g.7699682C>T、g.39675747T[1];[7];[11];[12]、g.44715240G>A、g.44715273T>Gがある。ウシ28番染色体では、g.37235675A>G、g.37238760_37238761insA、g.37569436G>C、g.38128947C>G、g.38139455A>C、g.38140702A>C、g.38141904G>A、g.38144993G>A、g.38147091G>A、g.38214781A>G、g.38572256C>A、g.38580194T>C、g.38888961T>Cがある。ウシ29番染色体では、g.23283930A>G、g.23444332T>C、g.26300251C[1];[3]、g.26410927C>A、g.48263737T>C、がある。ウシX染色体では、g.[100011986_100011988delAAA;100011987_100011988delAA;100011988delA;100011988_100011989insA;100011988_100011989insAA]がある。
【0024】
本発明のDNA変異マーカーは、潜性モデルとして、変異ホモ接合型により高受胎を説明できる場合として、以下に挙げるものである。ウシ1番染色体では、g.109873802T>C、g.109978734T>C、g.110193212T>C、g.110196449G>A、g.110196909G>A、g.110197830A>G、g.110345738A>G、g.110389460G>A、g.111606343_111606352delTATACAGTAGG、g.113435251G>C、g.113436332A>C、g.113437100A>G、g.113992497G>A、g.113993595A>C、g.114004341C>A、g.114004994A>G、g.114007607T>C、g.114007640C>T、g.114008266A>T、g.[126761652delA;126761652_126761653insA]、g.129567143G>A、g.151247941A>G、g.151258927T>C、g.151315179A>G、g.151317566C>T、g.151317678G>A、g.151318497C>T、g.151318555A>G、g.151318669A>T、g.151321740C>G、g.151372660G>A、g.151372661T>Gがある。ウシ2番染色体では、g.1333878T>C、g.1334015C>G、g.1339017A>C、g.1345827T>C、g.95276417C>G、g.95285915T>C、g.95285964T>C、g.95286298_95286303AGGTGC、g.95286323C>T、g.95286345C>T、g.95286347C>T、g.95286432A>G、g.95286627G>A、g.95286812A>G、g.95290174G>Aがある。ウシ4番染色体では、g.27039939A>G、g.87607436_87607437insC、g.87611763A>Cがある。ウシ5番染色体では、g.69628918T>A、g.69632694T>G、g.69675706A>C、g.69676384_69676385delTA、g.69676822C>T、g.77030819A>G、g.77031485T>C、g.77034188G>A、g.77034504A>G、g.77036061T>C、g.77038803A>G、g.77047360A>G、g.77056241A>G、g.77056313T>C、g.77066922T>C、g.77072045G>A、g.77074454G>A、g.77074835T>C、g.77177327G>A、g.77180154T>C、g.77196824G>A、g.77203644G>A、g.77206028T>C、g.77219846G>C、g.86574988A>G、g.[86576538A>T;86576538A>G]、g.86738585C>A、g.104900077C>T、g.117257066A>G、g.117257133G>A、g.117257140A>Gがある。ウシ6番染色体では、g.53098989C>T、g.53193897C>T、g.53194255A>G、g.[91078077delA;91078077_91078078delinsTTAAGGATAGATCATTTCTACTTGGGGTATCGTAAG]、g.91101120A>Gがある。ウシ7番染色体では、g.2286811delG、g.2289186A>G、g.2306054T>C、g.2315545C>T、g.2318589A>T、g.2318724G>A、g.2322003T>C、g.6040807_6040808delTT、g.6049762C>T、g.56134480A>G、g.87861451C>T、g.87861937G>A、g.101283052T>Gがある。ウシ8番染色体では、g.18756783C>G、g.18792627G>A、g.18798647_18798648insT、g.87519162A>G、g.87519189C>T、g.87519190_87519191TTTTTTTTTCTTTTTTT、g.87519198delC、g.87519199_87519200TTT、g.94490568T>C、g.94490774_94490775insGがある。ウシ9番染色体では、g.63443500C>T、g.88641039T>G、g.91180919_91180920insTT、g.91199297A>C、g.91218542G>T、g.91228747C>T、g.91229360A>G、g.91229375A>G、g.91229708A>T、g.91229710A>G、g.91229951G>A、g.91231471C>A、g.91231492T>C、g.91231537T>C、g.91231610A>C、g.91231683A>C、g.91231737C>T、g.91232364T>G、g.91232381delA、g.91232518C>T、g.91234046C>T、g.91238502T>C、g.91238866G>T、g.91246670A>C、g.91248415A>G、g.91254937G>A、g.91255985_91255986insC、g.91256098C>A、g.91288701A>G、g.91309653A>Gがある。ウシ11番染色体では、g.52863918C>T、g.101092407A>Gがある。ウシ12番染色体では、g.56748136G>A、g.63598520G>Aがある。ウシ14番染色体では、g.14674766A>G、g.14677967A>T、g.49004110T>A、g.49004133T>Aがある。ウシ15番染色体では、g.[5143482A>G;5143482A>T]、g.12580832_12580833insAがある。ウシ16番染色体では、g.51696459G>A、g.51702342T>C、g.51721193T>C、g.51724543C>A、g.51725227C>T、g.51732810A[1];[3]、g.51732831A>G、g.51734535C>A、g.51734615C>T、g.51736688C>T、g.51739527A>G、g.51739676G>C、g.51740534T>G、g.52181311_52181312A、g.54831147G>A、g.54831198_54831199insG、g.54833143C>A、g.54833270G>C、g.54834655G>A、g.54843878G>A、g.54844050G>C、g.54844340G>A、g.54844543C>T、g.54844580C>T、g.54844639A>T、g.54844742C>T、g.54844816T>C、g.54844921_54844924delATAG、g.54845034G>C、g.54845083T>C、g.54845356C>T、g.54845742A>G、g.54845840C>T、g.54845876C>T、g.54845932C>A、g.54846411T>A、g.54846678T>C、g.54848741T>C、g.54848834G>A、g.54848910C>T、g.54849076A>G、g.54849093T>C、g.54849310T>C、g.54849893T>C、g.54849909C>T、g.54850356G>A、g.54850495_54850496insT、g.54850621C>G、g.54850706A>G、g.54856669A>G、g.54859071T>C、g.54859112G>A、g.54880109_54880110G、g.54881096C>T、g.[54881334_54881335insCA;54881335_54881337delTCC]、g.54881335T>C、g.54881335T>C、g.54881388G>A、g.54881418G>T、g.65624919G>A、g.78345186_7834517T、g.78345347C>A、g.78417633C>Gがある。ウシ17番染色体では、g.18014337C>G、g.18932804A>G、g.19095154C>T、g.19095259_19095261delAAG、g.19095528G>A、g.19095647T>A、g.19100155G>C、g.19100177T>C、g.19100183T>C、g.19100205T>C、g.19100463T>G、g.19100548T>C、g.19100603C>T、g.19100657C>T、g.19100671T>C、g.19100850T>C、g.19101187G>A、g.19102427A>G、g.19102442T>C、g.19102586C>T、g.19102640C>A、g.19103001A>C、g.19103664_19103665insAATTAGGATAAAATTAGGAT、g.19107734C>T、g.19108411A>G、g.19108430A>G、g.19108435G>A、g.19110083T>C、g.20528001_20528004TTTT、g.20528015delC、g.20528079G>A、g.20528096G>T、g.20528150A>T、g.20528185A>G、g.20528202T>C、g.20536171G>A、g.24492100G>T、g.29031704A>C、g.35280662G>A、g.35371453T>A、g.35437474A>G、g.37271465C>T、g.37542134C>T、g.37543139T>C、g.37550818C>G、g.40526125_40526126TA、g.40533938A>G、g.40533943G>A、g.40549258T>G、g.40549271G>T、g.40563860C>Tがある。ウシ19番染色体では、g.[20251316delT;20251316_20251317insT]、g.36003031C>Aがある。ウシ20番染色体では、g.42999466T>Aがある。ウシ22番染色体では、g.[29988080_29988088delTGTTTTTTG;29988081delG;29988081_29988088delGTTTTTTG]がある。ウシ25番染色体では、g.17146020G>C、g.17147276G>C、g.17155159G>A、g.17205947A>Gがある。ウシ27番染色体では、g.8585553C>A、g.8585556T>C、g.8589413T>C、g.8589437G>A、g.8589461A>G、g.8590400C>T、g.8611429C>T、g.23725625G>C、g.38823864G>Aがある。ウシX染色体では、g.135569027G>C、g.135569091C>T、g.135569105G>C、g.135569214T>A、g.135571653T>C、g.135572338T>C、g.135572396T>C、g.135572397G>A、g.135575768A>G、g.135575787T>A、g.135592051G>Aがある。
【0025】
本発明のDNA変異マーカーは、単一で用いることもできるし、組合せて用いることもできる。組合せて用いる場合は、例えば2個、3個、5個、10個、20個、60個、100個といった複数のDNA変異マーカーを用いることができる。複数個のDNA変異マーカーにおいて、例えば1個でも高受胎性と判定できた場合、複数個で高受胎性と判定できた場合、マーカー全体の30%とか50%が高受胎性と判定できた場合に高受胎性であると最終的に判定できる。好ましくは、複数個のDNA変異マーカーのうち、1個でも高受胎性と判定できた場合に高受胎性と推定する。組合せて用いることにより、より信頼性が高い高受胎性の判定指標となる。
【0026】
上記のウシゲノム領域は、複数の高受胎個体に共通してDNA変異が確認された領域である。この領域は、(1)で示したように、複数のDNA変異マーカーの間にランダムでない相関があって、連鎖不平衡が保たれている連鎖不平衡ブロックに存在する場合もある。この連鎖不平衡ブロックの範囲にあるDNA変異であって、高受胎性を判定できるDNA変異マーカーであれば適宜用いることができる。また、高受胎性を示す少なくとも1個体にのみ表れる遺伝子型であればDNA変異マーカーとして利用できる。これらのDNA変異マーカーは、次世代シーケンスを用いた全ゲノム解析から特定した高受胎個体に共通するDNA変異から絞り込まれたため、集団内への影響が大きいことが想定され、効率的に高受胎個体を判定することができるDNA変異マーカーである。これらの一又は複数のDNA変異によって、受胎性に関連する遺伝子調節等に影響がもたらされ、高受胎の表現型を示すと考えられる。例えば、DNA変異がプロモーター領域やイントロン領域に生じれば遺伝子の発現量が変化し、エクソン領域に生じればアミノ酸の種類が置き換わり表現型が変化することがある。
【0027】
(3)ウシゲノム特異的な領域にある好ましいDNA変異マーカー
本発明のDNA変異マーカーとして、全ゲノム中において特異性が高く統計的に信頼性も高いマーカーを配列番号1~64に、アミノ酸の非同義置換が生じている可能性が高いマーカーを配列番号31、65~70に示す(表1)。配列番号1~70に記載の塩基配列は、配列番号1~70に記載のDNA変異マーカーの部位の塩基配列を決定するためのプローブやプライマーの作成に用いることができる。
配列番号1~70は、該当の塩基配列の変異部位に加えて、上流及び下流の100塩基程度を示す。表1の先頭行の「配列番号」は、配列表の配列番号と同一である。「変異」は、ウシゲノムリファレンスに対する変異の様式を示し、塩基の「置換」、「挿入」、「欠失」のいずれかを示す。「位置」は、配列番号における変異が生じた部位である。変異が置換であれば、置換された塩基の位置を示す。変異が挿入であれば、挿入された前後の塩基の位置を示す。変異が欠失であれば、欠失された塩基の位置を示す。該当する塩基が複数ある場合は、「_」を用いて範囲を示す。欠失及び置換は、配列表において該当する配列をnで示している。
【0028】
「染色体」及び「位置・変異情報」は、DNA変異マーカーを特定するウシゲノム(ARS-UCD1.2)上の染色体番号及び該当の染色体上の位置を示す。置換は、例えば配列番号2であれば、ウシ2番染色体のg.50026400T>Cと表記し、g.はゲノム、50026400はウシ2番染色体上の位置、T>CのTはリファレンスの塩基、Cは変異の塩基で、>はTからCに変化したことを示す。挿入は、例えば配列番号14であれば、ウシ2番染色体のg.50052052_50052053insAと表記し、insTはTが50052052と50052053の間に付加されたことを示す。挿入(繰返し)は、例えば配列番号1であれば、ウシ1番染色体のg.99992651AT[9];[10];[13];[14];[15];[21]と表記し、99992651のATが角括弧内の回数繰り返されたことを示す。「;」は、複数の変異が存在することを示す。欠失は、例えば配列番号6であれば、ウシ2番染色体のg.50043317delAと表記し、delAは50043317のリファレンスの塩基Aが削除されたことを示す。
【0029】
「アノテーション(効果)」は、変異の効果であり、「missense_variant」は蛋白質のアミノ酸配列が変化する、「frameshift_variant」は蛋白質のアミノ酸配列がフレームシフトを起こす、「intron_variant」は蛋白質のアミノ酸配列を指定しない領域にある、「upstream_gene_variant」と「downstream_gene_variant」はそれぞれ遺伝子の上流と下流5000塩基以内の領域に遺伝子が存在する、「intergenic_region」は遺伝子間の領域であることを各々示す。
「アノテーション(遺伝子)」は、DNA変異マーカーの最も近傍に存在する遺伝子であり、それぞれの遺伝子が高受胎性に影響を与える可能性がある。さらに、アミノ酸の非同義置換が生じる場合は、「位置・変異情報」に追記し、例えば配列番号65であれば、p.His833Argと表記し、FAM83B蛋白質の833番目のアミノ酸がヒスチジンからアルギニンに置換することを示す。また、アミノ酸のフレームシフトが生じる場合は、例えば配列番号31であれば、p.Glu93fsと表記し、PPM1E蛋白質の93番目のアミノ酸であるグルタミン酸がフレームシフトを起こすことを示す。
【0030】
【0031】
本発明のDNA変異マーカーは、遺伝子発現によって作られた蛋白質に何らかの影響をもたらす領域であってもよい。例えば、DNA変異マーカーの下流にある遺伝子の発現を変動させる領域であってもよい。また、遺伝子発現によって作られた蛋白質のアミノ酸等の変異が生じている領域であってもよい。アミノ酸置換によって蛋白質の活性に有害な影響が生じて高受胎性になるDNA変異マーカーであれば、より有効な変異マーカーといえる。例えば、上記の配列番号31、65~70は、アミノ酸の置換が起こった例である。
【0032】
本発明のDNA変異マーカーによる雄の受胎性の判定により、顕性モデルでは変異ホモ接合型及びヘテロ接合型であれば、高受胎性が見込まれるとして選抜対象とする。例えば、配列番号20のDNA変異マーカーは、CC型又はCT型であれば高受胎性が見込まれ選抜対象とし、TT型であれば選抜しないといったことができる。また、潜性モデルでは変異ホモ接合型であれば、高受胎性が見込まれるとして選抜対象とする。例えば、配列番号55のDNA変異マーカーは、CC型であれば高受胎性が見込まれ選抜対象とし、CT型又はTT型であれば選抜しないといったことができる。
【0033】
本発明のDNA変異マーカーを構成する塩基配列の数は、変異の部位を含めば適宜選択できる。例えば、変異マーカーの部位を挟むような形であってもよく、変異の箇所の上流又は下流といった片側のみの配列でもよい。変異マーカーを特定するための塩基の数は、増加すればするほど特異的な配列となる。理論上はDNAの塩基の組合せは、ATGC塩基4種類の塩基総数乗通りとなり、塩基配列が5個のDNAだと約千通り、10個だと約100万通り、15個だと約10億通り、20個だと約1兆通りの組合せがある。例えば、ウシゲノムは約27億個の塩基から構成されるため、DNA変異マーカーの部位を含み15塩基程度、より好ましくは20塩基以上、さらに好ましくは40塩基以上の塩基数があれば、理論上は特異的な配列を検出できる。
【0034】
本発明のDNA変異マーカーは、DNAの塩基が水素結合によって、AとTが相補的に結合し、GとCが相補的に結合するため、相補的な配列でも同様に用いることができる。例えば、配列番号20であれば、Tがリファレンスの塩基でCが変異の塩基であるから、その相補的な配列のDNA変異マーカーであれば、Aがリファレンスの塩基でGが変異の塩基となる。この場合、体細胞2倍体では、2個のアレルにおいてGG型が変異ホモ接合型、GA型が変異ヘテロ接合型、AA型が正常ホモ接合型となる。このような配列番号20と相補的な配列によるDNA変異マーカーによれば、GG型の変異ホモ接合型又はGA型のヘテロ接合型が検出された場合は、高受胎という判定になる。
【0035】
本発明のDNA変異マーカーは、配列表から特定される塩基配列を完全に限定するものではなく、DNA変異となる変異マーカーの部位の塩基配列を決定できれば、100%一致する必要はない。例えば個体によっては、変異マーカーの周辺に変異が生じている場合があり、変異マーカーの部位周辺の塩基配列は一致しない場合がある。相同性は、概ね70%以上が好ましく、さらに好ましくは90%、さらに好ましくは95%以上の塩基配列が一致する配列であれば、DNA変異マーカーとして利用が可能である。
【0036】
本発明のDNA変異マーカーは、ウシの染色体を用いて配列を特定しているが、ホモログ、パラログ、オルソログといった相同性の高い配列として特定できれば、染色体上の位置を問わない。また、対象はウシ以外の動物種であってもよい。例えば、ウシ2番染色体の位置50026400~51359573の領域は、ヒトであれば2番染色体に、マウスであれば2番染色体に相当する領域がある。また、ウシ23番染色体の位置1108485~9500957の領域は、ヒトであれば6番染色体に、マウスであれば1、9、17番染色体に相当する領域がある。また、ウシ5番染色体の位置76087872~78341778の領域は、ヒトであれば16番染色体に、マウスであれば15、16、6番染色体に相当する領域がある。この場合、DNA変異マーカーは、ウシのゲノム配列から特定しているため、他動物種では多少変異マーカーの部位周辺の配列が異なることも想定される。
【0037】
また、例えば、配列番号10の101位を含む配列について、公開データベース(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PAGE_TYPE=BlastSearch)を用いて、ゲノム配列のエントリ[RefSeq Genome Database]に対してMore dissimilar sequences (discontiguous megablast)の条件で相同性検索を行ったところ、例えばコブウシ(Bos indicus)では2番染色体の位置52256313(Bos indicus isolate QUIL7308 breed Nelore chromosome 2, Bos_indicus_1.0)に相同性99.5%の配列が、スイギュウ(Bubalus bubalis)では2番染色体の位置102167868(Bubalus bubalis isolate 160015118507 breed Murrah chromosome 2, NDDB_SH_1)に相同性97.5%の配列が、ロバ(Equus asinus)では4番染色体の位置62,837,172(Equus asinus breed Dezhou chromosome 4, ASM1607732v2)に相同性83.3%の配列が、ブタ(Sus scrofa)では15番染色体の5,693,455(Sus scrofa isolate TJ Tabasco breed Duroc chromosome 15, Sscrofa11.1)に相同性79.6%の配列が、ヒト(Homo sapiens)では2番染色体の位置146,282,454(Homo sapiens chromosome 2, GRCh38.p13 Primary Assembly)に相同性79.7%の配列が、マウス(Mus musculus)では2番染色体の位置46,948,833(Mus musculus strain C57BL/6J chromosome 2, GRCm39)に相同性80.7%の配列が各々ヒットするため、配列番号10の配列は様々な動物種で保存されていることが確認でき、様々な動物種において高受胎性に関わる指標となる可能性もある。
【0038】
実施の形態2.DNA変異マーカーを用いた検査方法
本発明のDNA変異マーカーを用いた検査方法は、動物の受胎性を判定するための指標となる実施の形態1に記載のDNA変異マーカーを用いた検査方法であり、標的となるDNA等に対して、一又は複数のDNA変異マーカーの部位の塩基配列を決定する塩基決定工程と、決定された塩基から受胎性を判定する受胎性判定工程からなる。
【0039】
(i)塩基決定工程
塩基決定工程は、動物の検査試料から抽出されたDNA等を用いて、本発明のDNA変異マーカーの部位の塩基配列の決定を行う工程である。
【0040】
動物は、標的となるDNA変異を検出できれば、任意の動物を用いることができる。例えば、ヒトを含む哺乳動物、家畜動物、愛玩動物、動物園・水族館動物、実験動物、魚類等が挙げられる。家畜動物は、ウシ、ブタ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等が挙げられる。愛玩動物は、イヌ、ネコ、ウサギ等が挙げられる。動物園・水族館動物は、パンダ、イルカ、ウツボ等が挙げられる。実験動物は、マウス、ハムスター、ラット、ウニ、ヒトデ等が挙げられる。受胎性を判定する動物は、より好ましくは家畜動物であり、さらに好ましくはウシである。
【0041】
ウシは、Bos属の動物であり、例えば、Bos taurus種の家畜牛、Bos javanicus種のバンテン、Bos indicus種のコブウシ、Bos sauveli種のコープレイ、Bos mutus種のヤクなどが含まれる。Bos taurus種は、例えば黒毛和種、褐毛和種、無角和種、日本短角種、アバディーン・アンガス種、ショートホーン種、ヘレフォード種、シャロレー種、シンメンタール種、リムーザン種、ホルスタイン種、ジャージー種、ガンジー種、ブラウン・スイス種、エアシャー種、デンマーク赤牛、黄牛、草原紅牛、朝鮮牛、ブラーマン種、ヒンドゥー種、カンペンセン種等があげられる。また、日本の野生化牛である口之島牛、見島牛、見蘭牛等も含む。好ましくは黒毛和種である。
【0042】
本発明の検査方法は、雄の受胎性を判定するが、検査自体は雄のみならず、雌、両性具有、雌雄同体等も含めて適用できる。例えば、雌の染色体構成でありながら、雄の能力を有するような雄化した雌にも適用できる。また、高受胎性は本発明のDNA変異マーカーが、顕性モデルであれば変異ホモ接合型及びヘテロ接合型が該当し、潜性モデルであれば変異ホモ接合型が該当するため、将来の子が雄の場合にそのような個体を作出するため、交配を予定している雌雄双方のDNA変異を調べることによって、将来的に子の遺伝子型が、顕性モデルであれば変異ホモ接合型及びヘテロ接合型が該当し、潜性モデルであれば変異ホモ接合型にするための参考にすることができる。
【0043】
検査試料は、本発明のDNA変異マーカーの部位の塩基配列を特定できるDNA等の核酸配列が含まれていればよい。検査資料は、1個体毎だけでなく、複数個体をプールして用いることもできる。また、マルチプレックス法のように、異なる配列のインデックスを付加する等により1個体毎にDNA等の特定を行い、同時に多個体の塩基配列を決定することもできる。
【0044】
DNA等の核酸配列は、DNAやRNA等の核酸やそれらの修飾体を含むモノマーであるヌクレオチドが多数接続したポリヌクレオチドからなる。ポリヌクレオチドは、約20塩基対程度のオリゴヌクレオチドも含む。ポリヌクレオチドは、プリン塩基又はピリミジン塩基やそれらの修飾塩基からなる塩基を含む。例えば、ゲノムDNA、相補的なDNA、DNAから転写されたmRNA、mRNAから合成したcDNA、合成DNA、PCRによって一部領域を増幅したDNA等があげられる。なお、DNAの塩基は上記の通り、AGTCの4種類であるが、RNAの塩基はTがウラシル(U)に置き換わる。また、DNAやRNA等の核酸は、1本鎖、2本鎖、又は3本鎖以上の任意の数の鎖であってもよく、DNAとRNAのハイブリッド型、DNAとRNAのキメラ型等の形でもよい。また、DNAやRNA等の核酸は、本発明のDNA変異マーカーの部位の塩基配列の決定ができればよく、インデックス配列等の付加、アミノ化、ビオチン化、リン酸化等による修飾、蛍光色素、ハプテン、アフィニティタグ等によって標識されているものも含まれる。
【0045】
検査試料は、検査対象となる動物個体由来のDNA等を用いる。好ましくは、動物個体の細胞から抽出する。例えば毛根、皮膚、唾液、鼻汁、血液、肉、精巣や卵巣等の臓器、精液、精子、卵子、受精卵等が挙げられる。細胞は、幹細胞、精巣幹細胞、iPS細胞、培養細胞といった形で、人工的に培養をして、継代や増殖させたものも用いることができる。検査試料は、ポリヌクレオチドが取得できればよく、冷蔵、凍結、凍結乾燥等していてもよい。
【0046】
検査試料を取得する方法は、毛根、皮膚、唾液、鼻汁であれば直接個体から採取する方法、血液であれば採血による方法、肉や臓器であればと体から採取する方法、精巣由来の精子であれば精巣を採取し精子を吸い出す方法等、精巣上体由来の精子であれば精巣上体を採取し精子を吸い出す若しくは掻き出す方法等、射出精液由来の精子であれば雌体内への射精後に回収する方法や電気刺激や人工腟を用いて採取する方法、受精卵であれば一部の細胞を切り取る方法、幹細胞、精巣幹細胞、iPS細胞、培養細胞であれば細胞培養を行って回収する方法等が挙げられる。取得した精子は、取得直後の精漿に浮遊した状態でも、水溶液等でさらに希釈又は洗浄されていてもよい。
【0047】
DNA等の抽出は、本発明のDNA変異マーカーを検出するためのポリヌクレオチドを回収できれば、任意の方法であってもよい。例えば、フェノール、クロロホルムを用いた方法、ヨウ化ナトリウムを用いた方法が挙げられる。また、ダイレクトPCRのように、DNAの抽出操作を行うことなく細胞から直接DNA等を用いることもできる。
【0048】
塩基配列決定は、本発明のDNA変異マーカーの部位の塩基配列が決定できれば、適宜手法を選択することができる。DNA配列を決定する手法は、例えば、サンガーシーケンスを用いた個別又は複数のポリヌクレオチドシーケンス、SNPタイピングチップ等を用いたマイクロアレイ法、次世代シーケンシングを用いた全ゲノム解析やエクソーム解析又は標的領域の濃縮によるターゲットリシーケンス、リアルタイムPCR、PCR-RFLP、PCR-SSCP、TaqmanPCR、SNaP Shot、Invader法、質量分析法等が挙げられる。
【0049】
サンガーシーケンスは、DNAポリメラーゼを用いて末端が特定の塩基に対応するDNA断片を合成する手法で、4種類の蛍光色素で標識したジデオキシヌクレオチドを伸長反応に使用するダイターミネーター法がある。例えば、DNA変異マーカーの部位を含む塩基配列をPCRによって増幅させた検査試料のDNA等に対して、特異的に結合する一種類のプライマーからの伸長反応でランダムに取り込まれたダイターミネーターの蛍光色素の種類とDNA断片の長さをキャピラリー電気泳動装置で検出して、DNA変異マーカーの部位の塩基配列を決定する。
【0050】
マイクロアレイ法は、基板上に複数の鋳型DNAの部分配列を高密度に配置して固定したポリヌクレオチド断片とハイブリダイゼーションして、結合部位を蛍光や電流により検出する。例えば、DNAマイクロアレイであれば、DNA変異マーカーを検出するDNAプローブを基板に固定化し、それらに相補性のある標識化した検査試料のDNA等をハイブリダイズさせて、DNA変異マーカーを含む塩基配列を決定する。この方法は、複数のDNA変異マーカーを検出するのに有効である。例えば、イルミナ株式会社が提供するInfinium XT又はiSelect HD BeadChipを用いてDNA変異マーカーを検出するSNPタイピングチップを作製し、DNA等が含まれる溶液をこれらのSNPタイピングチップと反応させて、DNA変異マーカーの部位の塩基配列を決定する。例えば、ウシ2番染色体の位置50026400~51359573の領域や他動物種の相当する領域に限定してDNAタイピングを行うカスタムSNPタイピングチップを用いて、DNA変異マーカーの部位の塩基配列を決定し、受胎性に問題がある個体を判定する。
【0051】
また、一部の正常個体で判定に矛盾があっても、他の高受胎個体の多くに共通する複数のSNP型を用いることにより、高受胎性に特異的な連鎖不平衡ブロックを特定することができるため、これらのSNP型をDNA変異マーカーとして用いることで、受胎性に問題がある個体の推定ができる。
【0052】
次世代シーケンシングは、並列処理を行うことで高スループットが実現されたポリヌクレオチドシーケンスである。並列処理は、カスタムアダプター配列を利用して増幅又はライゲーションしたライブラリを基板上の鋳型DNAに固定化し、ヌクレオチド合成過程を顕微鏡等で観察して実現する。シグナルの取得やヌクレオチド合成方法は、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社が提供するパイロシーケンシング、イルミナ株式会社が提供する合成シーケンシング、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社が提供するライゲーションを用いたシーケンシングや半導体シーケンシング、ナノポアオックスフォード・ナノポアテクノロジーズが提供するナノポアを用いたシーケンシング等により、本発明のDNA変異マーカーの部位の塩基配列を決定する。
【0053】
全ゲノム解析は、ゲノムを解析する上で包括的な手法で、1塩基ごとにゲノム全体で捉えることができる。エクソーム解析は、ゲノムの蛋白質コーティング領域等を標的とする手法で、例えばヒトゲノムでは遺伝子コードの2%未満に相当し既知の疾患関連の変異約85%を含むとされ、全ゲノム解析に対するコスト効率の良い手法である。ターゲットリシーケンスは、本発明のDNA変異マーカーの部位の塩基配列を、特殊プローブやプライマーを利用し、キャプチャーして濃縮後にシーケンス解析行う。これらは複数のDNA変異マーカーの部位の塩基配列を決定するのに有効である。
【0054】
リアルタイムPCRは、PCRによる増幅を経時的に測定することで、増幅率に基づいて鋳型DNAの定量を行う。例えば、本発明のDNA変異マーカーを含むDNA等の領域を増幅するプライマーセットと、これらのDNA変異マーカーに対応する2種類の遺伝子型の蛍光プローブを用いて、DNA変異マーカーの塩基配列を決定する。蛍光強度により、変異ホモ接合型、ヘテロ接合型、正常ホモ接合型に分けてDNA変異マーカーの部位の塩基配列を識別して検出できる。
【0055】
PCR-RFLPは、制限酵素断片長多型により変異を検出するものであり、PCRでポリヌクレオチドを増幅し、制限酵素によって切断されたポリヌクレオチド断片の長さが、ゲノムDNA変異に起因して個体間で異なることを検出して、本発明のDNA変異マーカーの部位の塩基配列を決定する。
【0056】
(ii)受胎性判定工程
受胎性判定工程は、塩基決定工程で決定された塩基配列から、受胎性の判定を行う工程である。
【0057】
受胎性の判定は、具体的なDNA変異マーカーによる高受胎性の判定は実施の形態1にも記載したが、決定されたDNA変異マーカーの部位の塩基配列によって行う。顕性モデルであれば、変異ホモ接合型又はヘテロ接合型が高受胎型、リファレンスホモ接合型が非高受胎型と判定する。潜性モデルであれば、変異ホモ接合型が高受胎型、ヘテロ接合型又はリファレンスホモ接合型が非高受胎型と判定する。そして、雄であれば高受胎型であれば選抜対象とし、非高受胎型であれば選抜対象としないといったことができる。雌であれば変異ホモ接合型又はヘテロ接合型であって、子が高受胎型になる可能性があれば、繁殖対象とすることができる。
【0058】
判定に用いるDNA変異マーカーの数は、1個であっても複数個の組合せであってもよい。例えば1個のDNA変異マーカーを用いる場合、配列番号20は顕性モデルなので101位がCC型又はCT型である場合に高受胎型と判断できる。また、配列番号55は潜性モデルなので101位がCC型である場合に高受胎型と判断できる。3個のDNA変異マーカーを用いる場合、例えば配列番号20の101位、配列番号34の101位、配列番号55の101位の組合せを選択でき、それぞれCC型又はCT型、TT型又はTG型、CC型のいずれかである個体は、高受胎型と判断できる。複数個のDNA変異マーカーのうち、2個以上が高受胎型と判定出来る場合は、結果の信頼性がより高まる。また、複数のDNA変異マーカーのうち数個の塩基配列が決定できなかったとしても、他に特定できたDNAマーカーから高受胎性を判定することは可能である。このことから、複数のDNA変異マーカーの部位の塩基配列を決定して、高受胎性の判定を行うことにより、効果的かつ信頼性の高い検査方法となる。
【0059】
実施の形態3.DNA変異マーカーを用いた検査用のプローブ、プライマー
本発明の検査キットは、動物の検査試料から抽出されたDNA等を用いて、本発明のDNA変異マーカーの部位の塩基配列の決定を行うのに必要な試薬である。例えば、サンガーシーケンシングであれば、DNA変異マーカーの部位の塩基配列を含むDNA領域をPCRで増幅するために用いる特異的なDNA等のプライマーである。また、DNAマイクロアレイであれば、DNA変異マーカーの部位の塩基配列を検出するために用いる特異的なDNA等のプローブである。また、ターゲットリシーケンスであれば、DNA変異マーカーの部位を含む領域を濃縮するために用いる特異的なDNA等のプローブや特異的なDNA等のプライマーである。PCR-RFLPであれば、DNA変異マーカーの部位の塩基配列を検出するために用いる特異的な制限酵素である。
【0060】
本発明のプローブは、本発明のDNA変異マーカーの部位の塩基配列を決定するために、鋳型となる検査試料のDNA等のいずれかの領域にハイブリダイズするものである。プローブは、DNA変異マーカーの部位を含む形でハイブリダイズするのが好ましいが、DNA変異マーカーの近傍の領域までハイブリダイズできる形であってもよく、変異の箇所の上流又は下流といった片側のみの塩基配列でもよい。DNA変異マーカーの部位の塩基配列を決定するために適宜選択できる。例えば、配列番号20の101位で示すDNA変異マーカーの塩基配列を決定するプローブであれば、配列番号20の1~201位、50~151位、50~100位、101~201位を含む塩基配列が挙げられる。また、DNA変異マーカーの部位の塩基配列を決定できれば、1~201位のさらに上流又は下流の塩基配列を含んでもよい。また、プローブが、DNA変異マーカーの近辺の塩基までハイブリダイズできる形であって鋳型となる検査試料のDNA等のDNA変異マーカーの部位を含まない場合、マーカーの近辺の塩基までハイブリダイズした後、鋳型となる検査試料から相補的なDNAを合成して、DNA変異マーカーの部位の塩基を決定できる。例えば、イルミナ株式会社が提供するInfiniumアッセイのように、DNA変異マーカーの部位の直前までの配列の50塩基のオリゴプローブに、検査試料DNAをハイブリダイズさせ、次に酵素を用いて1塩基伸長反応を行い、蛍光標識されたヌクレオチドを取り込み、DNA変異マーカーの部位の塩基配列を決定する。
【0061】
本発明のプライマーは、本発明のDNA変異マーカーの部位の塩基配列を決定するために、鋳型となる検査試料のDNA等のいずれかの領域にハイブリダイズするものである。いずれかのDNA変異マーカーの部位を含む領域を増幅するために、一対のプライマーを用いる。プライマーは、DNA変異マーカーの部位を挟むような形で設計するのが好ましいが、変異の箇所の近傍の領域であれば上流又は下流といった片側のみの塩基配列のみの設計でもよい。DNA変異マーカーの部位の塩基配列を決定するために適宜選択できる。例えば、配列番号10の101位で示すDNA変異マーカーの塩基配列を決定するプライマーであれば、配列番号10の20~40位、75~100位、90~110位を含む塩基配列が挙げられる。また、DNA変異マーカーの部位の塩基配列を決定できれば、1~201位のさらに上流又は下流の塩基配列を含んでもよい。好ましくは、変異マーカーの部位を含む連続する核酸領域を増幅させるため、変異マーカーの箇所の上流及び下流に設計する。例えば、配列番号10の10~30位及び140~160位が挙げられる。変異の箇所の上流又は下流といった片側のみのプライマーは、例えば、PCR産物を精製して、シーケンス反応を行う場合に用いる。
【0062】
プローブやプライマーの塩基配列は、本発明のDNA変異マーカーと同様に、配列表から特定される塩基配列から完全に限定するものではなく、DNA変異となる変異マーカーの部位の塩基配列を決定できれば、100%一致する必要はない。相同性は、概ね70%以上が好ましく、さらに好ましくは90%、さらに好ましくは95%以上の塩基配列が一致する配列であれば利用が可能である。また、プローブやプライマーは、本発明のDNA変異マーカーの部位の塩基配列の決定ができればよく、インデックス配列等の付加、アミノ化、ビオチン化、リン酸化等による修飾、蛍光色素、ハプテン、アフィニティタグ等によって標識されているものも含まれる。
【0063】
以下に実施例を挙げて、本発明のDNA変異マーカー、並びにそれを用いた検査方法及び検査キットを具体的に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術分野において通常の変更を行うことができる。
【0064】
実施例1.次世代シーケンス解析による高受胎種雄牛に係るゲノムDNA変異の特定(顕性モデル)
黒毛和種種雄牛125頭について、調整交配時の初回受胎率(平均53.7%、標準偏差20.0%)および次世代シーケンシングによる全ゲノム解析を行った。ウシゲノムDNAは、凍結精液からヨウ化ナトリウムを用いた方法で抽出した。次世代シーケンサによる配列解析は、Illumina NovaSeq 6000を用いて、リード長150bp、ペアエンドシーケンスを行った。1検体あたり標的領域を全ゲノム解析で平均x30程度のデプスでカバーするように行った。次世代シーケンサから得られた配列データは、FastQCを用いてクオリティチェックをおこなった。各配列データをヘレフォード種の参照ゲノム配列(ARS-UCD1.2)を用いて、マッピングを行った。変異検出はGATK(Genome Analysis Toolkit)のHaplotypeCallerを用いて行い、VariantFilterationを用いて変異のクオリティ情報を付与した。解析結果は、IGV(Integrative Genomics Viewer)を用いて可視化した。DNA変異解析は、受胎率70%以上の高受胎種雄牛28頭に変異を有するが、50%以下の低受胎種雄牛41頭に変異がないDNA変異を抽出した。顕性モデルで高受胎性を説明できる変異を絞り込み、受胎率70%以上の種雄牛30%以上(28頭中9頭以上)に共通する変異を絞り込んだ。
【0065】
顕性モデルでは、変異ホモ接合型又はヘテロ接合型が高受胎を説明できるゲノムDNA変異として1481個特定した。ウシ染色体における範囲は、実施の形態1に記載した。p値は、変異ホモ接合型及びヘテロ接合型の個体に対して、リファレンスホモ接合型の個体を比較して、t検定により算出した(
図1)。これらの全てのゲノムDNA変異において、p<0.05で有意差が確認されたが、特にp値が低い領域(p<10^-7)として以下の範囲が特定された。ウシ1番染色体では、位置99992650があった。ウシ2番染色体では、位置50026400~51359573があった。ウシ3番染色体では、位置53819846~58465738、118696434があった。ウシ4番染色体では、位置112767107~113261696があった。ウシ5番染色体では、位置76042200~78187174があった。ウシ6番染色体では、位置20975459~20993215、116005790~116005822があった。ウシ7番染色体では、位置3139700~7534130があった。ウシ10番染色体では、位置95700943~95920652があった。ウシ14番染色体では、位置13451290~14005972があった。ウシ15番染色体では、位置57950768があった。ウシ16番染色体では、位置59310190があった。ウシ17番染色体では、位置18651~73568、10932610~12973448、23255528~23447699、27479518~27866873、47299400~47626132、50118828があった。ウシ18番染色体では、位置61356032~61395551があった。ウシ19番染色体では、位置9720692があった。ウシ20番染色体では、位置117638、43846380があった。ウシ22番染色体では、位置14781384~14781403があった。ウシ23番染色体では、位置1108485~9500957、26721748~29274266があった。ウシX染色体では、位置100011985~101770616があった。
【0066】
この顕性モデルによる高受胎性のDNA変異マーカーとして、特にp値が低い領域(p<10^-7)でかつ、特異的な領域であるマーカーは配列番号1~41及び表1に示した。特に、ボンフェローニの補正により、p<0.05をウシゲノム全塩基配列2,715,853,792で割った値であるp<1.84×10^-11を有意水準とした場合において、ウシ2番染色体の位置50026400~51359573の範囲に有意な領域が存在した。この領域に存在するウシゲノム特異的なDNA変異マーカーは、配列番号2~20があり、特に高受胎性を判定できるDNA変異マーカーとなり得た。
【0067】
実施例2.次世代シーケンス解析による高受胎種雄牛に係るゲノムDNA変異の特定(潜性モデル)
DNA変異の抽出までの過程は実施例1に記載した通りである。潜性モデルで高受胎性を説明できる変異を絞り込み、受胎率70%以上の種雄牛30%以上(28頭中9頭以上)に共通する変異を絞り込んだ。
【0068】
潜性モデルでは、変異ホモ接合型が高受胎を説明できるゲノムDNA変異として621個特定した。ウシ染色体における範囲は、実施の形態1に記載した。p値は、変異ホモ接合型の個体に対して、ヘテロ接合型及びリファレンスホモ接合型の個体を比較して、t検定により算出した(
図2)。これらの全てのゲノムDNA変異において、p<0.05で有意差が確認された。
【0069】
特にp値が低い領域(p<10^-7)として以下の範囲が特定された。ウシ5番染色体では、位置52506371~52506372、76087872~78341778、119403865~119405481に75領域があった。ウシ7番染色体では、位置6040806~6049762があった。ウシ8番染色体では、位置94472404~94519281があった。ウシ12番染色体では、位置56748136~56850511があった。ウシ17番染色体では、位置18651~19633、24492100~31120932があった。ウシ27番染色体では、位置2353154、38823864があった。ウシ28番染色体では、位置24399960があった。この潜性モデルによる高受胎性のDNA変異マーカーとして、特にp値が低い領域(p<10^-7)でかつ、特異的な領域であるマーカーは配列番号42~64及び表1に示した。
【0070】
実施例3.ウシ2番染色体の位置50026400~51359573のDNA変異マーカー
実施例1においてp値が低い領域(p<10^-7)の範囲として特定されたウシ2番染色体の位置50026400(配列番号2の101位)~51359573(配列番号20の101位)には、高受胎性を判定することができる58個のDNA変異マーカーが特定された。そのうちウシゲノム中に特異的な領域が19個特定され、ウシ2番染色体のg.50026400T>C(配列番号2の101位の置換)、g.50034830T>A(配列番号3の101位の置換)、g.50040785T>C(配列番号4の101位の置換)、g.50042918C>A(配列番号5の101位の置換)、g.50043317delA(配列番号6の101位の欠損)、g.50045023A>G(配列番号7の101位の置換)、g.50049436C>T(配列番号8の101位の置換)、g.50049507T>C(配列番号9の101位の置換)、g.50049976A>C(配列番号10の101位の置換)、g.50050057G>A(配列番号11の101位の置換)、g.50050166A>G(配列番号12の101位の置換)、g.50051920A>C(配列番号13の101位の置換)、g.50052052_50052053insA(配列番号14の101_102位の挿入)、g.50052066_50052267insT(配列番号15の101_102位の挿入)、g.50052235A>G(配列番号16の101位の置換)、g.50055582T>C(配列番号17の101位の置換)、g.50072418C>A(配列番号18の101位の置換)、g.50084371A>G(配列番号19の101位の置換)、g.51359573T>C(配列番号20の101位の置換)があった。例えば、配列番号20のDNA変異マーカーであれば、変異ホモ接合型(CC型)とヘテロ接合型(CT型)の個体の受胎率が高く、それに対してリファレンスホモ接合型(TT型)の個体の受胎率が低かった(
図3A)。同様に19個のDNA変異マーカーでは、変異ホモ接合型及びヘテロ接合型の個体は、リファレンスホモ接合型の個体に対して、有意に高い受胎率であった(
図3B)。これらのDNA変異マーカーは、同一個体で重複して存在する場合が多く、染色体上に連鎖不平衡が生じている範囲にあると考えられた(
図3C)。これらの領域に存在するDNA変異マーカーは、単一又は複数の組合せで用いることにより、高受胎性種雄牛の推定を行うことができる。
【0071】
種雄牛の精子から抽出したゲノムDNAを用いて、Quantitect SYBR Green PCR master mix(QIAGEN)によりPCRを行った。例えば、配列番号10の変異を含む領域を増幅するため、配列番号75(ウシ2番染色体の位置50049917~50049938)のフォワードプライマー及び配列番号76(ウシ2番染色体の50050022~50050000)のリバースプライマーを用いて増幅したところ、理論通り106bpsの単一のバンドが検出された。また、配列番号20の変異を含む領域を増幅するため、配列番号77(ウシ2番染色体の位置51359501~51359521)のフォワードプライマー及び配列番号78(ウシ2番染色体の位置51359605~51359585)のリバースプライマーを用いて増幅したところ、理論通り105bpsの単一のバンドが検出された。このことから、これらの領域は特異的であり、高受胎性を判定するDNA変異マーカーとして信頼性が高かった。
【0072】
実施例4.ウシ23番染色体の位置1108485~9500957のDNA変異マーカー
実施例1においてp値が低い領域の範囲として特定されたウシ23番染色体の位置1108485(配列番号71の101位)~9500957(配列番号72の101位)には175個のDNA変異マーカーが特定された。そのうちウシゲノム中に特異的な領域が89個特定され、ウシ23番染色体のg.1376079A>G(配列番号32の101位の置換)、g.1460153T>C、g.1471785A>G、g.1781357G>A、g.1869520G>A(配列番号33の101位の置換)、g.2947418G>T(配列番号34の101位の置換)、g.3028498C>T(配列番号35の101位の置換)、g.3050303C>T、g.3136924A>G(配列番号36の101位の置換)、g.3174243G>A、g.3305896C>T、g.3414589G>A(配列番号37の101位の置換)、g.3417342T>G(配列番号38の101位の置換)、g.3419429C>A(配列番号39の101位の置換)、g.[3425751G>A;3425751G>T]、g.3764648T>G、g.3964915G>A、g.3987423delC、g.4509426A>C、g.4510470C>T、g.4518696T>C、g.4527084T>C、g.5438282A>G、g.5457659T>C(配列番号65の101位の置換)、g.5475419C>T、g.5489802C>T、g.5490214_5490215insTTA、g.5523894C>T、g.5539396A>C、g.5539479T>C、g.5539497G>A、g.5539620G>T、g.5541365C>T、g.[5544516delA;5544516_5544517insA]、g.6076488A>C、g.6222859C>T(配列番号40の101位の置換)、g.6285293A>G、g.6362566A>C、g.6373121G>T、g.6377888C>T、g.6382177C>T、g.6382288T>C、g.7229021_7229024delAGAC、g.7247620T>A、g.7998808A>G、g.8002117C>T、g.8004427T>C、g.8004495A>G、g.8026147G>A、g.8031497C>T、g.8045638G>A、g.8049093C>A、g.8071217G>A、g.8098007G>A、g.8108500T>C、g.8120328C>T、g.8132852_8132853insC、g.8133365G>C、g.8144642G>A、g.8144936T>C、g.8145898C>T、g.8152446C>T、g.8157835C>T、g.8157911C>A、g.8157981C>T、g.8174829G>A、g.8176342C>T、g.8183043C>T、g.8184328C>G、g.8895708T>A、g.8990328G>A、g.9017998C>T、g.9026144A>C、g.9110772C>T、g.9255920C>T、g.9277068G>A、g.9284473C>T、g.9403427T>G、g.9408356G>A、g.9417856G>A(配列番号67の101位の置換)、g.9440073C>G(配列番号68の101位の置換)、g.9440451C>A、g.9444478G>A、g.9455002C>T、g.9460280_9460281insGT、g.9461676C>T、g.9461700G>A、g.9476693A>T、g.9477196G>Aがあった。例えば、配列番号37のDNA変異マーカーであれば、変異ホモ接合型(AA型)とヘテロ接合型(AG型)の個体の受胎率が高く、それに対してリファレンスホモ接合型(GG型)の個体の受胎率が低かった(
図4A)。同様にこれらの89個のDNA変異マーカーでは、変異ホモ接合型及びヘテロ接合型の個体は、リファレンスホモ接合型の個体に対して、有意に高い受胎率であった(
図4B)。これらのDNA変異マーカーは、同一個体で重複して存在する場合が多く、染色体上に連鎖不平衡が生じている範囲にあると考えられた(
図4C)。これらの領域に存在するDNA変異マーカーは、単一又は複数の組合せで用いることにより、高受胎性種雄牛の推定を行うことができる。
【0073】
種雄牛の精子から抽出したゲノムDNAを用いて、Quantitect SYBR Green PCR master mix(QIAGEN)によりPCRを行った。例えば、配列番号34の変異を含む領域を増幅するため、配列番号79(ウシ23番染色体の位置2947371~2947392)のフォワードプライマー及び配列番号80(ウシ23番染色体の2947456~2947436)のリバースプライマーを用いて増幅したところ、理論通り86bpsの単一のバンドが検出された。また、配列番号37の変異を含む領域を増幅するため、配列番号81(ウシ23番染色体の位置3414540~3414561)のフォワードプライマー及び配列番号82(ウシ23番染色体の位置3414645~3414623)のリバースプライマーを用いて増幅したところ、理論通り106bpsの単一のバンドが検出された。このことから、これらの領域は特異的であり、高受胎性を判定するDNA変異マーカーとして信頼性が高かった。
【0074】
実施例5.ウシ5番染色体の位置76087872~78341778のDNA変異マーカー
実施例2においてp値が低い領域(p<10^-7)の範囲として特定されたウシ5番染色体の位置76087872(配列番号73の101位)~78341778(配列番号74の101位)には、53個のDNA変異マーカーが特定された。そのうちウシゲノム中に特異的な領域が19個特定され、ウシ5番染色体のg.77030819A>G(配列番号42の101位の置換)、g.77031485T>C(配列番号43の101位の置換)、g.77034188G>A(配列番号44の101位の置換)、g.77034504A>G(配列番号45の101位の置換)、g.77036061T>C(配列番号46の101位の置換)、g.77038803A>G(配列番号47の101位の置換)、g.77047360A>G(配列番号48の101位の置換)、g.77056241A>G(配列番号49の101位の置換)、g.77056313T>C(配列番号50の101位の置換)、g.77066922T>C(配列番号51の101位の置換)、g.77072045G>A(配列番号52の101位の置換)、g.77074454G>A、g.77074835T>C(配列番号53の101位の置換)、g.77177327G>A(配列番号54の101位の置換)、g.77180154T>C(配列番号55の101位の置換)、g.77196824G>A(配列番号56の101位の置換)、g.77203644G>A(配列番号57の101位の置換)、g.77206028T>C(配列番号58の101位の置換)、g.77219846G>C(配列番号59の101位の置換)があった。例えば、配列番号55のDNA変異マーカーであれば、変異ホモ接合型(CC型)の個体の受胎率が高く、それに対してヘテロ接合型(CT型)及びリファレンスホモ接合型(TT型)の個体の受胎率が低かった(
図5A)。同様にこれらの19個のDNA変異マーカーでは、変異ホモ接合型の個体は、ヘテロ接合型及びリファレンスホモ接合型の個体に対して、有意に高い受胎率であった(
図5B)。これらのDNA変異マーカーは、同一個体で重複して存在する場合が多く、染色体上に連鎖不平衡が生じている範囲にあると考えられた(
図5C)。これらの領域に存在するDNA変異マーカーは、単一又は複数の組合せで用いることにより、高受胎性種雄牛の推定を行うことができる。
【0075】
種雄牛の精子から抽出したゲノムDNAを用いて、Quantitect SYBR Green PCR master mix(QIAGEN)によりPCRを行った。例えば、配列番号55の変異を含む領域を増幅するため、配列番号83(ウシ5番染色体の位置77180079~77180103)のフォワードプライマー及び配列番号84(ウシ5番染色体の77180237~77180215)のリバースプライマーを用いて増幅したところ、理論通り159bpsの単一のバンドが検出された。このことから、これらの領域は特異的であり、高受胎性を判定するDNA変異マーカーとして信頼性が高かった。
【0076】
実施例6.ゲノムDNA変異が影響する遺伝子及びアミノ酸有害変異の推定
実施例1及び2で特定された各々DNA変異マーカーに対して、DNA変異のアノテーションは、ウシゲノムのアノテーション情報(2019/12/18 18:58、https://ftp.ncbi.nlm.nih.gov/genomes/all/GCF/002/263/795/GCF_002263795.1_ARS-UCD1.2/GCF_002263795.1_ARS-UCD1.2_genomic.gff.gz)を用いて、SnpEff(http://snpeff.sourceforge.net/download_donate.html)により、該当の塩基配列に、遺伝子名やコーディング情報、翻訳後の蛋白質に与えるインパクト等の変異情報を付与した。
【0077】
顕性モデルにおいて、本発明の配列番号1~41のDNA変異マーカーの近傍に存在する遺伝子は以下があり、それぞれの遺伝子に影響を与える可能性があった。具体的には、ウシ1番染色体に含まれる遺伝子は、ENSBTAG00000054829、ENSBTAG00000001753、GBE1-U4、NSUN3、Metazoa_SRPがある。ウシ2番染色体に含まれる遺伝子は、ITPRID2、U6、ENSBTAG00000054108、ENSBTAG00000054108、ENSBTAG00000049534、ERBB4、DNAJB2、PTPRN、bta-mir-153-1、RESP18、DNPEP、RESP18、DESがある。ウシ3番染色体に含まれる遺伝子は、LRRC8B、ENSBTAG00000038625、ENSBTAG00000024272、ENSBTAG00000038233、ZNHIT6がある。ウシ5番染色体に含まれる遺伝子は、ENSBTAG00000052661、FGFR1OP2、5S_rRNA、LMO3、PTPRO、bta-mir-2285dm、がある。ウシ6番染色体に含まれる遺伝子は、CXXC4、U6がある。ウシ10番染色体に含まれる遺伝子は、CIAO2A、DAPK2、ENSBTAG00000049950、Y_RNAがある。ウシ12番染色体に含まれる遺伝子は、ENSBTAG00000052153、EFNB2、ARGLU1、ENSBTAG00000048322、ENSBTAG00000048322、ENSBTAG00000052117、bta-mir-2301ENSBTAG00000039334、FAM155AANKRD10、ARHGEF7がある。ウシ14番染色体に含まれる遺伝子は、ARHGAP39、GPT、PPP1R16A、KIFC2、CYHR1SCRT1、DGAT1、HSF1、SCX、BOP1がある。ウシ15番染色体に含まれる遺伝子は、ENSBTAG00000053446、ENSBTAG00000051826、ENSBTAG00000050224、ENSBTAG00000053099がある。ウシ16番染色体に含まれる遺伝子は、ENSBTAG00000038238、SEC16Bがある。ウシ17番染色体に含まれる遺伝子は、CHR_START、TMEM192、DCLK2、ENSBTAG00000049242、ENSBTAG00000033967、U6、U1、7SK、TMEM132D、ENSBTAG00000020532、TMEM132Bがある。ウシ18番染色体に含まれる遺伝子は、bta-mir-11977、ENSBTAG00000051856、がある。ウシ19番染色体に含まれる遺伝子は、PPM1Eがある。ウシ20番染色体に含まれる遺伝子は、5S_rRNA、ENSBTAG00000047333、U6、FGF18がある。ウシ21番染色体に含まれる遺伝子は、ENSBTAG00000049439がある。ウシ22番染色体に含まれる遺伝子は、SLC6A6、ENSBTAG00000051966がある。ウシ23番染色体に含まれる遺伝子は、KHDRBS2、ENSBTAG00000054412、ENSBTAG00000054412、PRIM2、RAB23、ZNF451、BAG2、bta-mir-2285j-2、ENSBTAG00000051082、ENSBTAG00000007075、SFTA2、ENSBTAG00000055092、ENSBTAG00000031835がある。ウシ26番染色体に含まれる遺伝子は、ENSBTAG00000052774、ZWINT、ENSBTAG00000053625、PCDH15、PRKG1がある。ウシ29番染色体に含まれる遺伝子は、LDHA、SAA3、HPS5、ENSBTAG00000004212、DHCR7がある。
【0078】
潜性モデルにおいて、本発明の配列番号42~64のDNA変異マーカーの近傍に存在する遺伝子は以下があり、それぞれの遺伝子に影響を与える可能性があった。具体的には、ウシ1番染色体に含まれる遺伝子は、RBP1、RBP2、がある。ウシ5番染色体に含まれる遺伝子は、CKAP4、NUAK1、USP18、ALG10、PKP2、YARS2、DNM1L、SOX5、TTLL8がある。ウシ7番染色体に含まれる遺伝子は、ZNF354C、ENSBTAG00000055301がある。ウシ9番染色体に含まれる遺伝子は、SNORD22、U6、LRP11、ULBP21、CNKSR3、ENSBTAG00000020723、ENSBTAG00000049872、SCAF8がある。ウシ11番染色体に含まれる遺伝子は、ENSBTAG00000050329、ENSBTAG00000050329、ENSBTAG00000054154、U6、Metazoa_SRPがある。ウシ14番染色体に含まれる遺伝子は、ENSBTAG00000051221がある。ウシ17番染色体に含まれる遺伝子は、PCDH18、ENSBTAG00000023895がある。
【0079】
特に、アミノ酸置換によって蛋白質の活性に影響が生じるDNA変異マーカーであれば、より有効な変異マーカーとなる。このようなDNA変異マーカーとして、顕性モデルでは、ウシ19番染色体では、g.9720693GGC[1];[4]、PPM1E、p.Glu93fs(配列番号31の101位の挿入(繰返し))が特定された。ウシ23番染色体では、g.5457659T>C、FAM83B、p.His833Arg(配列番号65の101位の置換)、g.7210721C>T、H2B、p.Ser56Leu(配列番号66の101位の置換)、g.9417856G>A、FANCE、p.Cys161Tyr(配列番号67の101位の置換)、g.9440073C>G、ENSBTAG00000053636、p.Gln4Glu(配列番号68の101位の置換)が特定された。潜性モデルにおいて、ウシ7番染色体では、g.2309012A>G、ENSBTAG00000055301、p.Asn314Ser(配列番号69の101位の置換)が特定された。ウシ27番染色体では、g.8611429C>T、NEIL3、p.Pro348Leu(配列番号70の101位の置換)が特定された。
【0080】
実施例7.複数のDNA変異マーカーによる高受胎性の推定
実施例1~6で特定されたDNA変異マーカーは、組合せて複数で用いることもできる。複数で用いることにより、より信頼性の高い高受胎性の推定ができる。例えば、配列番号1~70で示したように、より信頼性の高い高受胎性を判定できるDNA変異マーカーを組合せて用いることで、高精度の高受胎種雄牛の判別が可能となった。
【0081】
図6Aに示すように、配列番号20、34、55を組合せた場合、いずれかのマーカーのうち一つでも高受胎となる変異型として特定されれば高受胎であると判定(y)し、そうでなければ高受胎でないと判定(n)した。yと判定された個体の受胎率の平均±標準偏差は、70.4±8.9%であったのに対して、nと判定された個体は46.4±19.1%であった(t検定、p<0.01)。
【0082】
図6Bに示すように、配列番号10、20、29、34、37を組合せた場合、いずれかのマーカーのうち一つでも高受胎となる変異型として特定されれば高受胎であると判定(y)し、そうでなければ高受胎でないと判定(n)した。yと判定された個体の受胎率の平均±標準偏差は、71.5±8.8%であったのに対して、nと判定された個体は46.5±19.1%であった(t検定、p<0.01)。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の受胎性を判定できるDNA変異マーカーを用いて検査を行い、高受胎性が判明した場合は、その個体を優先的に育種改良に用いることにより、集団の受胎率を上げることができる。これにより、飼養管理費や人工授精費等のコストを大幅削減できる。また、両親の型を調べることにより、交配させる雌雄を選択することができる。また、雌雄双方をランダムに調べることにより、遺伝子型頻度を調べることができ、どの程度集団に広まっているか推定でき、今後の繁殖性を加味した雄個体の作出、育種改良集団の形成ができる。
【配列表】