(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137359
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】車両用吊手
(51)【国際特許分類】
B60N 3/02 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
B60N3/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043538
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小牧 一郎
【テーマコード(参考)】
3B088
【Fターム(参考)】
3B088EA01
3B088EB01
(57)【要約】
【課題】吊手本体を素早く把持でき、把持する領域が広く、把持する指の関節の負担を軽減できて握りやすく、吊手本体の軽量化・省資源化にも寄与できる車両用吊手を提供する。
【解決手段】車両のベルト支持部3にベルト幅方向へ所定の間隔で吊り下げられた吊りベルト1と、吊りベルトに保持された環状の吊手本体2とを備え、乗客が姿勢保持のために掴まる車両用吊手10である。吊手本体は、吊りベルトの下端部が表裏方向に巻回された支軸部211を上中央部212のベルト用溝部212aに有し正面視で半円弧状に形成されたベルト保持部21と、当該ベルト保持部の両下端部213から水平状に延設された把持部22とを備え、正面視で半円弧環状に形成されている。把持部は、上下方向に細長い断面形状に形成され、表裏側で指が当接する表当て面221と裏当て面222とが、上下方向の中間部を外方へ膨出させる方向へ鈍角状に屈曲又は湾曲している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のベルト支持部にベルト幅方向へ所定の間隔で吊り下げられた吊りベルトと、当該吊りベルトに保持された環状の吊手本体とを備え、乗客が姿勢保持のために掴まることができる車両用吊手であって、
前記吊手本体は、前記吊りベルトの下端部が表裏方向に巻回され左右方向に延設された支軸部を上中央部のベルト用溝部に有し正面視で半円弧状に形成されたベルト保持部と、当該ベルト保持部の両下端部から水平状に延設され乗客が把持する把持部とを備え、正面視で半円弧環状に形成されていること、
前記把持部は、上下方向に細長い断面形状に形成され、表裏側で指がそれぞれ当接する表当て面と裏当て面とが、上下方向の中間部を外方へ膨出させる方向へ鈍角状に屈曲又は湾曲していることを特徴とする車両用吊手。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用吊手において、
前記ベルト保持部は、外周側で周方向へ半円弧状に延設された外周フランジ部と、当該外周フランジ部の内周側に起立する山型の内周リブ部とを備え、
前記外周フランジ部と前記内周リブ部とが、T字状に交差した断面形状に形成されていることを特徴とする車両用吊手。
【請求項3】
請求項2に記載された車両用吊手において、
前記外周フランジ部は、表裏方向のフランジ幅が前記ベルト保持部における前記下端部から前記上中央部に向けて徐々に広くなるように形成され、
前記外周フランジ部における表端縁面及び裏端縁面と、前記把持部における前記中間部より下方の前記表当て面及び前記裏当て面とが、それぞれ同一平面上で接続されていることを特徴とする車両用吊手。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載された車両用吊手において、
前記内周リブ部は、リブ高さが前記ベルト保持部における前記下端部から前記上中央部に向けて徐々に高くなるように形成され、
前記内周リブ部の内周端部と前記把持部の上端部とが、同一の幅で連続状に接続されていることを特徴とする車両用吊手。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された車両用吊手において、
前記把持部は、前記ベルト保持部の半円弧中心部より下方の位置で、上方又は下方へ向けてアーチ状に湾曲されていることを特徴とする車両用吊手。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載された車両用吊手において、
前記吊りベルトは、前記ベルト支持部に支持された上吊りベルトと前記吊手本体の支軸部に巻回された下吊りベルトとに分割され、
前記上吊りベルトと前記下吊りベルトとが、前記上吊りベルトに対して前記下吊りベルトを水平方向へ回動可能に形成されたベルト連結具によって連結されていることを特徴とする車両用吊手。
【請求項7】
請求項6に記載された車両用吊手において、
前記ベルト連結具には、前記上吊りベルトに連結された上連結部と、前記下吊りベルトに連結された下連結部と、前記上連結部と前記下連結部とを水平方向へ回動自在に連結する中連結部と、前記上連結部と前記下連結部とに係止され前記上連結部と前記下連結部とを前記吊手本体の左右方向と前記吊りベルトの配列方向とが一致する方向に付勢する付勢部材と、を備えていることを特徴とする車両用吊手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用吊手に関し、詳しくは、鉄道車両やバス等の車両の内部に装備される車両用吊手に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両やバス等の車両の内部(例えば、天井部)には、立ち姿勢の乗客が姿勢保持のために掴まることができる車両用吊手が装備されている。例えば、特許文献1、2には、車両の客室内に装備された車両用吊手が開示されている。上記特許文献1に開示された車両用吊手100は、
図15(A)、(B)に示すように、車両の長手方向に延設された支持パイプ101に、所定の間隔で吊り下げられた吊りベルト102と、吊りベルト102の下端部に保持された円環状の吊手本体103とを備えている。吊りベルト102の上端部は、支持パイプ101に巻回され、折り返された箇所が止め具104によって固定されている。また、吊りベルト102の下端部は、吊手本体103の円弧上部103aに巻回され、折り返された箇所が角筒部105内に嵌入された状態で固定されている。したがって、吊手本体103は、円環状に形成され、吊手本体103の左右方向は、吊りベルト102の配列方向(支持パイプ101の長手方向)と一致している。
【0003】
また、特許文献2に開示された車両用吊手200は、
図16(A)、(B)に示すように、車両の上部に延設された支持パイプ201に所定の間隔で吊り下げられた吊りベルト202と、吊りベルト202の下端部に三角頂上部203aが保持され水平な底辺部203bが下方に位置する三角環状の吊手本体203とを備えている。吊りベルト202の上端部は、支持パイプ201に巻回されている。吊りベルト202の下端部は、ベルト片206を挟んで重ね合わされた状態で、吊手本体203の三角頂上部203aに表裏方向へ延設された長孔に挿入され、ネジ部材204によって左右方向から固定されている。また、吊りベルト202の中間部とベルト片206の上端部は、角筒部205内に嵌入されている。したがって、吊手本体203は、水平な底辺部203bが下方に位置する三角環状に形成され、吊手本体203の左右方向は、吊りベルト202の配列方向(支持パイプ201の長手方向)と直交している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭56-35434号公報
【特許文献2】実用新案登録第3139665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載された車両用吊手100、200には、以下のような問題があった。
すなわち、上記特許文献1の車両用吊手100では、吊手本体103は、円環状に形成され、吊手本体103の左右方向は、吊りベルト102の配列方向(支持パイプ101の長手方向)と一致しているので、一般に、吊りベルト102の配列方向(支持パイプ101の長手方向)に並ぶ乗客は、吊手本体103の円環中空部103cを正面側から見ることができ、車両が揺れたとき等にも、吊手本体103の円環中空部103cが見やすく、円環中空部103c内に素早く指を入れて、吊手本体103の円弧下部103bを把持することができる。しかし、吊手本体103は、円環状に形成されているので、身長の低い乗客にとって、把持する円弧下部103bの領域が狭く、指全体を使って安定的に把持することができないという問題があった。
【0006】
また、上記特許文献2の車両用吊手200では、吊手本体203は、水平な底辺部203bが下方に位置する三角環状に形成されているので、把持する底辺部203bの領域が広く、身長の低い乗客でも、指全体を使って安定的に把持することができる。しかし、吊手本体203の左右方向は、吊りベルト202の配列方向(支持パイプ201の長手方向)と直交しているので、乗客は、一般に、三角環状の吊手本体203を側面側から見ることになり、吊手本体203の三角環中空部203cが見えにくい。そのため、車両が揺れたとき等に、吊手本体203の三角環中空部203c内に素早く指を入れて、吊手本体203の底辺部203bを確実に把持することが困難であるという問題があった。
【0007】
また、上記特許文献2の車両用吊手200では、吊りベルト202の下端部は、ベルト片206を挟んで重ね合わされた状態で、吊手本体203の三角頂上部203aに表裏方向へ延設された長孔に挿入され、ネジ部材204によって左右方向から固定されているので、吊りベルト202の下端部を固定するため、吊手本体203の体積及び重量が増大し、軽量化や省資源化に反すると共に、車両の揺れ等によって吊手本体203が乗客に当たった場合の衝撃が増加するという問題があった。
【0008】
さらに、人間の手の骨格TKは、
図17に示すように、親指Y1以外の他の指(人差し指Y2、中指Y3、薬指Y4、小指Y5)が、指先の末節骨K1と、真ん中の中節骨K2と、根元の基節骨K3とを有し、それぞれの関節が親指Y1と対向する方向から屈曲することによって、物を把持することができる構造となっている。上記特許文献1、2の車両用吊手100、200では、
図18に示すように、吊手本体103、203において、把持する円弧下部103bや底辺部203bが、円形断面又は円に近い長円形断面に形成されているので、親指Y1と他の指(人差し指Y2、中指Y3、薬指Y4、小指Y5)とが吊手本体103、203を把持する際、他の指の末節骨K1と中節骨K2との間の第1関節P1の曲げ角θ1を、中節骨K2と基節骨K3との間の第2関節P2の曲げ角θ2と同程度又はそれ以下の角度に屈曲させる必要がある。しかし、一般に、末節骨K1は、中節骨K2及び基節骨K3より短く形成され、第1関節P1は、第2関節P2より曲がりにくい傾向がある。一方、中節骨K2及び基節骨K3は、末節骨K1より長く形成され、第2関節P2は、第1関節P1より曲がりやすい傾向がある。そのため、吊手本体103、203を把持する際、把持する指の曲がりにくい第1関節P1に過度な負担が掛からず、楽に握ることができる車両用吊手が求められている。
【0009】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、吊手本体を素早く把持できると共に、把持する領域が広く、把持する指の関節の負担を軽減できて握りやすく、吊手本体の軽量化・省資源化にも寄与できる車両用吊手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る車両用吊手は、以下の構成を備えている。
(1)車両のベルト支持部にベルト幅方向へ所定の間隔で吊り下げられた吊りベルトと、当該吊りベルトに保持された環状の吊手本体とを備え、乗客が姿勢保持のために掴まることができる車両用吊手であって、
前記吊手本体は、前記吊りベルトの下端部が表裏方向に巻回され左右方向に延設された支軸部を上中央部のベルト用溝部に有し正面視で半円弧状に形成されたベルト保持部と、当該ベルト保持部の両下端部から水平状に延設され乗客が把持する把持部とを備え、正面視で半円弧環状に形成されていること、
前記把持部は、上下方向に細長い断面形状に形成され、表裏側で指がそれぞれ当接する表当て面と裏当て面とが、上下方向の中間部を外方へ膨出させる方向へ鈍角状に屈曲又は湾曲していることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、吊手本体は、吊りベルトの下端部が表裏方向に巻回され左右方向に延設された支軸部を上中央部のベルト用溝部に有し正面視で半円弧状に形成されたベルト保持部と、当該ベルト保持部の両下端部から水平状に延設され乗客が把持する把持部とを備え、正面視で半円弧環状に形成されているので、吊手本体の左右方向と吊りベルトの配列方向とが一致し、一般に、吊りベルトの配列方向に沿って並ぶ乗客は、吊手本体の半円弧環中空部を正面側から見ることができる。そのため、車両が揺れたとき等にも、吊手本体の半円弧環中空部が見やすく、半円弧環中空部内に素早く指を入れて、吊手本体の把持部を確実に把持することができる。
【0012】
また、乗客の把持する把持部がベルト保持部の両下端部から水平状に延設されているので、乗客が把持する把持部の領域を下方に幅広く確保でき、身長の低い乗客でも、安定的に吊手本体を把持することができる。また、吊りベルトの下端部がベルト用溝部の端縁によって規制されるので、吊りベルトに対する吊手本体の位置ズレを回避でき、車両が揺れた場合にも、吊手本体を把持した乗客は、楽に姿勢を保持することができる。
【0013】
また、ベルト保持部は、吊りベルトの下端部が表裏方向に巻回され左右方向に延設された支軸部を上中央部のベルト用溝部に有し正面視で半円弧状に形成されているので、乗客の指を入れる半円弧環中空部のスペースを拡大させつつ、吊りベルトの下端部に保持される上中央部におけるベルト保持部の体積及び重量を効果的に軽減させることができる。そのため、吊手本体における軽量化や省資源化を促進させることができる。
【0014】
また、把持部は、上下方向に細長い断面形状に形成され、表裏側で指がそれぞれ当接する表当て面と裏当て面とが、上下方向の中間部を外方へ膨出させる方向へ鈍角状に屈曲又は湾曲しているので、表当て面と裏当て面とが、把持部の上方位置と下方位置とで互いに鋭角状に交差し、把持部の上下方向の中間位置でそれぞれ鈍角状に屈曲又は湾曲することになる。そのため、乗客の親指と他の指(人差し指、中指、薬指、小指)とが吊手本体の把持部を把持する際、把持部の上方位置で互いに鋭角状に交差する中間位置より上方の表当て面と上方の裏当て面とに沿って、他の指における真ん中の中節骨と根元の基節骨との間の第2関節を鋭角状に屈曲させ、また、上下方向の中間位置で鈍角状に屈曲又は湾曲している表当て面又は裏当て面に沿って、指先の末節骨と真ん中の中節骨との間の第1関節を鈍角状に屈曲させることができる。したがって、他の指の曲げにくい第1関節の曲げ角度を、曲げやすい第2関節の曲げ角度より大きくさせ、第1関節を90度以下の無理な角度に屈曲させることを回避できる。その結果、把持部を握る際、把持する指の第1関節に過度な負担を掛けることを回避でき、楽に握ることができる。
【0015】
よって、本発明によれば、吊手本体を素早く把持できると共に、把持する領域が広く、把持する指の関節の負担を軽減できて握りやすく、吊手本体の軽量化・省資源化にも寄与できる車両用吊手を提供することができる。
【0016】
(2)(1)に記載された車両用吊手において、
前記ベルト保持部は、外周側で周方向へ半円弧状に延設された外周フランジ部と、当該外周フランジ部の内周側に起立する山型の内周リブ部とを備え、
前記外周フランジ部と前記内周リブ部とが、T字状に交差した断面形状に形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、ベルト保持部は、外周側で周方向へ半円弧状に延設された外周フランジ部と、当該外周フランジ部の内周側に起立する山型の内周リブ部とを備え、外周フランジ部と内周リブ部とが、T字状に交差した断面形状に形成されているので、半円弧状の外周フランジ部に対する法線方向の曲げ強度を、山型の内周リブ部によって少ない断面積で効率的に補強することができる。そのため、吊手本体における必要な曲げ強度を確保しつつ、より一層の軽量化・省資源化を図ることができる。
【0018】
(3)(2)に記載された車両用吊手において、
前記外周フランジ部は、表裏方向のフランジ幅が前記ベルト保持部における前記下端部から前記上中央部に向けて徐々に広くなるように形成され、
前記外周フランジ部における表端縁面及び裏端縁面と、前記把持部における前記中間部より下方の前記表当て面及び下方の前記裏当て面とが、それぞれ同一平面上で接続されていることを特徴とする。
【0019】
本発明においては、外周フランジ部は、表裏方向のフランジ幅がベルト保持部における下端部から上中央部に向けて徐々に広くなるように形成され、外周フランジ部における表端縁面及び裏端縁面と、把持部における中間部より下方の表当て面及び下方の裏当て面とが、それぞれ同一平面上で接続されているので、吊手本体の軽量化・省資源化を図りつつ、把持部に対する乗客の荷重を、上方へ行くほど徐々に拡幅された外周フランジ部によって剛性を高めたベルト保持部を介して、吊りベルトに確実に伝達することができる。また、外周フランジ部における表端縁面及び裏端縁面と、把持部における中間部より下方の表当て面及び下方の裏当て面とを、それぞれ同一平面上で接続したことによって、ベルト保持部と把持部との一体感を高めて、見栄えを向上させると共に、咄嗟の場合には、ベルト保持部の下端側を楽に把持することもできる。そのため、吊手本体に対する軽量化・省資源化の向上と利便性の向上とをより一層促進させることができる。
【0020】
(4)(2)又は(3)に記載された車両用吊手において、
前記内周リブ部は、リブ高さが前記ベルト保持部における前記下端部から前記上中央部に向けて徐々に高くなるように形成され、
前記内周リブ部の内周端部と前記把持部の上端部とが、同一の幅で連続状に接続されていることを特徴とする。
【0021】
本発明においては、内周リブ部は、リブ高さがベルト保持部における下端部から上中央部に向けて徐々に高くなるように形成され、内周リブ部の内周端部と把持部の上端部とが、同一の幅で連続状に接続されているので、吊手本体の軽量化・省資源化を図りつつ、把持部に対する乗客の荷重を、上方へ行くほど徐々にリブ高さが高くなる内周リブ部によって剛性を高めたベルト保持部を介して、吊りベルトに確実に伝達することができる。また、内周リブ部の内周端部と把持部の上端部とを、同一の幅で連続状に接続したことによって、ベルト保持部と把持部との一体感を高めて、見栄えを向上させると共に、咄嗟の場合には、ベルト保持部の下端側を楽に把持することもできる。そのため、吊手本体に対する軽量化・省資源化の向上と利便性の向上とを更に促進させることができる。
【0022】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された車両用吊手において、
前記把持部は、前記ベルト保持部の半円弧中心部より下方の位置で、上方又は下方へ向けてアーチ状に湾曲されていることを特徴とする。
【0023】
本発明においては、把持部は、ベルト保持部の半円弧中心部より下方の位置で、上方又は下方へ向けてアーチ状に湾曲されているので、半円弧環中空部に対する乗客の指を入れるスペースを十分確保しつつ、親指と他の指(人差し指、中指、薬指、小指)とが把持部を把持する際、手の大きさ、指同士の長さや太さ等の差に基づいて生じる指と把持部との隙間を、アーチ状に湾曲した把持部に沿って把持することよって低減させることができる。そのため、吊手本体における手の大きさ等に対する汎用性を高めつつ、把持部をより一層楽に把持することができる。
【0024】
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載された車両用吊手において、
前記吊りベルトは、前記ベルト支持部に支持された上吊りベルトと前記吊手本体の支軸部に巻回された下吊りベルトとに分割され、
前記上吊りベルトと前記下吊りベルトとが、前記上吊りベルトに対して前記下吊りベルトを水平方向へ回動可能に形成されたベルト連結具によって連結されていることを特徴とする。
【0025】
本発明においては、吊りベルトは、ベルト支持部に支持された上吊りベルトと吊手本体の支軸部に巻回された下吊りベルトとに分割され、上吊りベルトと下吊りベルトとが、上吊りベルトに対して下吊りベルトを水平方向へ回動可能に形成されたベルト連結具によって連結されているので、吊りベルトの長さが短くて、吊手本体の左右方向を吊りベルトの配列方向と一致する方向から異なる方向へ回動させることが困難な場合でも、乗客の好みに応じて、把持した吊手本体の向き(左右方向)をベルト連結具を介して変更させることができる。そのため、例えば、満員電車の中で、異なる方向に向いた乗客が、それぞれ自分にとって楽な姿勢で吊手本体を把持することができる。
【0026】
(7)(6)に記載された車両用吊手において、
前記ベルト連結具には、前記上吊りベルトに連結された上連結部と、前記下吊りベルトに連結された下連結部と、前記上連結部と前記下連結部とを水平方向へ回動自在に連結する中連結部と、前記上連結部と前記下連結部とに係止され前記上連結部と前記下連結部とを前記吊手本体の左右方向と前記吊りベルトの配列方向とが一致する方向に付勢する付勢部材と、を備えていることを特徴とする。
【0027】
本発明においては、ベルト連結具には、上吊りベルトに連結された上連結部と、下吊りベルトに連結された下連結部と、上連結部と下連結部とを水平方向へ回動自在に連結する中連結部と、上連結部と下連結部とに係止され上連結部と下連結部とを吊手本体の左右方向と吊りベルトの配列方向とが一致する方向に付勢する付勢部材とを備えているので、乗客の好みに応じて、把持した吊手本体の向き(左右方向)を変更させた場合でも、乗客が吊手本体を離して移動したときには、付勢部材によって、吊手本体の向き(左右方向)を吊りベルトの配列方向と一致する方向へ、自動的に復帰させることができる。そのため、次の乗客にとって、吊手本体の向き(左右方向)を素早く把持できる状態に復帰させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、吊手本体を素早く把持できると共に、把持する領域が広く、把持する指の関節の負担を軽減できて握りやすく、吊手本体の軽量化・省資源化にも寄与できる車両用吊手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本実施形態に係る第1実施例の車両用吊手の斜視図である。
【
図2】
図1に示す車両用吊手における吊手本体の正面図である。
【
図5】
図3に示す吊手本体における把持部と、把持部を把持する指の折り曲げ状態を表す詳細断面図である。
【
図7】
図2に示す吊手本体と特許文献1に記載された吊手本体との比較図である。
【
図8】
図2に示す吊手本体と特許文献2に記載された吊手本体との比較図である。
【
図9】
図1に示す車両用吊手の斜視図であって、吊りベルトを捻って吊手本体を水平方向に回動させた状態を示す。
【
図10】本実施形態に係る第2実施例の車両用吊手の斜視図である。
【
図12】
図5に示す吊手本体における把持部の変形例の詳細断面図であって、(A)は第1変形例の吊手本体における把持部の詳細断面図を示し、(B)は第2変形例の吊手本体における把持部の詳細断面図を示す。
【
図13】
図2に示す吊手本体の変形例の正面図であって、(A)は第3変形例の吊手本体の正面図を示し、(B)は第4変形例の吊手本体の正面図を示し、(C)は第5変形例の吊手本体の正面図を示す。
【
図14】
図2に示す吊手本体の変形例の正面図であって、(A)は第6変形例の吊手本体の正面図を示し、(B)は第7変形例の吊手本体の正面図を示す。
【
図15】特許文献1に記載された車両用吊手の図面であって、(A)は車両用吊手の正面図を示し、(B)は車両用吊手の側面図を示す。
【
図16】特許文献2に記載された車両用吊手の図面であって、(A)は車両用吊手の正面図を示し、(B)は車両用吊手の側面図を示す。
【
図18】特許文献1、2に記載された車両用吊手の把持部(円弧下部、底辺部)を把持する指の折り曲げ状態を表す詳細断面図面である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本実施形態の一態様を表す車両用吊手について、図面を参照しながら詳細に説明する。具体的には、本実施形態に係る第1実施例と第2実施例の車両用吊手を詳細に説明する。また、本実施形態に係る車両用吊手の吊手本体における変形例(第1変形例~第5変形例)について、具体的に説明する。
【0031】
<本実施形態に係る車両用吊手(第1実施例)>
まず、本実施形態に係る第1実施例の車両用吊手について、
図1~
図8を用いて説明する。
図1に、本実施形態に係る第1実施例の車両用吊手の斜視図を示す。
図2に、
図1に示す車両用吊手における吊手本体の正面図を示す。
図3に、
図2に示すA-A断面図を示す。
図4に、
図2に示すB-B断面図を示す。
図5に、
図3に示す吊手本体における把持部と、把持部を把持する指の折り曲げ状態を表す詳細断面図を示す。
図6に、
図2に示すC矢視図を示す。
図7に、
図2に示す吊手本体と特許文献1に記載された吊手本体との比較図を示す。
図8に、
図2に示す吊手本体と特許文献2に記載された吊手本体との比較図を示す。
【0032】
図1に示すように、本実施形態に係る第1実施例の車両用吊手10は、車両SRのベルト支持部3に所定の間隔で吊り下げられた吊りベルト1と、当該吊りベルト1の下端部11に保持された環状の吊手本体2とを備え、乗客が姿勢保持のために吊手本体2に掴まることができる車両用吊手10である。本車両用吊手10の吊りベルト1は、ベルト幅方向へ所定の間隔で配列されている。
【0033】
ここで、車両SRは、鉄道車両やバス等の車両であって、立ち姿勢の乗客が乗車可能な車両が含まれる。また、ベルト支持部3は、例えば、車両SRの天井部等に固定された支持パイプ3P等が該当するが、必ずしも支持パイプ3Pに限る必要はない。なお、支持パイプ3Pには、巻回した吊りベルト1の上端部12を所定の間隔で止着させる止め具31が固定されている。また、吊りベルト1は、ベルト支持部3と吊手本体2との間でベルト止め具4によって固定されている。
図1に示すベルト止め具4には、吊りベルト1を表裏側から締結する止めネジ部41と、吊りベルト1を嵌入する角筒部42とを有するが、止めネジ部41又は角筒部42のみでベルト止め具4を構成してもよい。
【0034】
また、
図1~
図6に示すように、吊手本体2は、吊りベルト1の下端部11が表裏方向に巻回され左右方向に延設された支軸部211を上中央部212のベルト用溝部212aに有し正面視で半円弧状に形成されたベルト保持部21と、当該ベルト保持部21の両下端部213から水平状に延設され乗客JKが把持する把持部22とを備え、正面視で半円弧環状に形成されている。なお、上記「半円弧状」、「水平状」、「半円弧環状」とは、厳密な意味の「半円弧」、「水平」、「半円弧環」を意味するのではなく、おおよそ「半円弧」、おおよそ「水平」、おおよそ「半円弧環」であれば良い意味である。以下、形状・形態を表す表現において「~状」と記載した箇所は、特に注記しない限り、上記と同様に解釈する。
【0035】
したがって、吊手本体2の左右方向と吊りベルト1の配列方向とが一致し、一般に、吊りベルト1の配列方向に沿って並ぶ乗客JKは、吊手本体2の半円弧環中空部2aを正面側から見ることができる。そのため、車両SRが揺れたとき等にも、吊手本体2の半円弧環中空部2aが見やすく、半円弧環中空部2a内に素早く指を入れて、吊手本体2の把持部22を確実に把持することができる。
【0036】
なお、ベルト保持部21の上中央部212には、吊りベルト1のベルト幅でベルト用溝部212aが形成され、ベルト用溝部212a内には、吊りベルト1の下端部11を表裏方向に巻回させる支軸部211が、左右方向に延設されている。支軸部211は、車両用吊手10の吊り荷重に十分耐え得る直径の円形断面に形成されている。吊手本体2は、例えば、ポリカーボネイト等の耐衝撃性や耐久性に優れた熱可塑性樹脂材料で形成されている。
【0037】
また、乗客JKの把持する把持部22は、正面視で半円弧状に形成されたベルト保持部21の両下端部213から水平状に延設されている。したがって、乗客JKが把持する把持部22の領域を下方に幅広く確保できる。例えば、
図7に示すように、吊手本体2の把持部22は、特許文献1に記載された円環状に形成された吊手本体103に比較して、把持しにくい円環状のX領域が削除されて、把持しやすい水平領域を大幅に拡大できる。そのため、身長の低い乗客JKでも、安定的に吊手本体2を把持することができる。
【0038】
また、吊手本体2は、吊りベルト1の下端部11が表裏方向に巻回され左右方向に延設された支軸部211を、上中央部212のベルト用溝部212aに有するので、吊りベルト1の下端部11は、ベルト用溝部212aの端縁によって規制され、吊りベルト1に対する吊手本体2の左右方向への位置ズレを回避でき、吊手本体2の把持部22を、円形断面の支軸部211を中心にして表裏方向へ回動させることができる。そのため、車両SRが揺れた場合にも、吊手本体2を把持した乗客JKは、楽に姿勢を保持することができ、又は傾斜した姿勢を楽に立て直すことができる。
【0039】
また、ベルト保持部21は、吊りベルト1の下端部11が表裏方向に巻回され左右方向に延設された支軸部211を上中央部212のベルト用溝部212aに有し正面視で半円弧状に形成されているので、乗客JKの指を入れる半円弧環中空部2aのスペースを拡大させつつ、吊りベルト1の下端部11に保持される上中央部212においてベルト保持部21の体積及び重量を効果的に軽減させることができる。例えば、
図8に示すように、特許文献2に記載された三角環状に形成された吊手本体203に比較して、三角状のY1領域を円弧状のY2領域に縮小できる。そのため、吊手本体2における軽量化や省資源化を促進させることができる。
【0040】
また、
図1~
図5に示すように、把持部22は、上下方向に細長い断面形状に形成され、表裏側で指がそれぞれ当接する表当て面221と裏当て面222とが、上下方向の中間部221a、222aを外方へ膨出させる方向へ鈍角状に屈曲又は湾曲している。ここでは、把持部22は、表裏方向に平坦な上端部223及び下端部224と、上下方向の中間位置Q3、Q4で中間部221a、222aを鈍角状に外方へ屈曲させた上方の表当て面221bと下方の表当て面221c及び上方の裏当て面222bと下方の裏当て面222cとによって、構成された上下方向に細長い六角形断面形状に形成されている。そして、把持部22における上端部223と下端部224との間の上下方向の距離t1は、表当て面221の中間部221aと裏当て面222の中間部222aとの間の表裏方向の距離t2より大きく形成されている。
【0041】
この場合、
図3に仮想線で示すように、把持部22の表当て面221と裏当て面222とが、把持部22の上下方向の中間位置Q3、Q4でそれぞれ鈍角状に交差し、把持部22の上方位置Q1と下方位置Q2とで互いに鋭角状に交差することになる。すなわち、上方の表当て面221bと下方の表当て面221cとが、把持部22の表側の中間位置Q3で鈍角状に交差し、上方の裏当て面222bと下方の裏当て面222cとが、把持部22の裏側の中間位置Q4で鈍角状に交差する。それぞれの交差内角α1は、150~160度程度が好ましい。また、上方の表当て面221bと上方の裏当て面222bとが、把持部22の上方位置Q1で鋭角状に交差し、下方の表当て面221cと下方の裏当て面222cとが、把持部22の下方位置Q2で鋭角状に交差する。上方の交差内角α2は、30~40度程度が好ましく、下方の交差内角α3は、10~20度程度が好ましい。
【0042】
そして、把持部22における表当て面221及び裏当て面222の上記構造によって、乗客JKの親指Y1と他の指(人差し指Y2、中指Y3、薬指Y4、小指Y5)とが吊手本体2の把持部22を把持する際、上下方向の中間位置Q3、Q4で鈍角状に屈曲している表当て面221又は裏当て面222に沿って、他の指における指先の末節骨K1と真ん中の中節骨K2との間の第1関節P1を鈍角状に屈曲させることができる。また、把持部22の上方位置Q1で互いに鋭角状に交差する上方の表当て面221bと上方の裏当て面222bとに沿って、真ん中の中節骨K2と根元の基節骨K3との間の第2関節P2を鋭角状に屈曲させることができる。したがって、他の指の第1関節P1の曲げ角度β1を、第2関節P2の曲げ角度β2より大きくさせ、曲がりにくい第1関節P1を90度以下の無理な角度に屈曲させることを回避できる。その結果、把持部22を握る際、把持する指の第1関節P1に過度な負担を掛けることを防止でき、楽に握ることができる。
【0043】
よって、本第1実施例の車両用吊手10によれば、吊手本体2を素早く把持できると共に、把持する領域が広く、把持する指の関節の負担を軽減できて握りやすく、吊手本体2の軽量化・省資源化にも寄与できる車両用吊手10を提供することができる。
【0044】
また、
図1~
図4に示すように、本第1実施例の車両用吊手10において、吊手本体2のベルト保持部21は、外周側で周方向へ半円弧状に延設された外周フランジ部21Hと、当該外周フランジ部21Hの内周側に起立する山型の内周リブ部21Rとを備え、外周フランジ部21Hと内周リブ部21Rとが、T字状に交差した断面形状に形成されていることが好ましい。
【0045】
この場合、半円弧状の外周フランジ部21Hに対する法線方向の曲げ強度を、山型の内周リブ部21Rによって少ない断面積で効率的に補強することができる。そのため、吊手本体2における必要な曲げ強度を確保しつつ、より一層の軽量化・省資源化を図ることができる。
【0046】
なお、内周リブ部21Rの内周端部21R1から外周フランジ部21Hの表端縁面21H1及び裏端縁面21H2に延びる表壁面21R2と裏壁面21R3とを、内方へ凹む円弧状の湾曲面に形成したことが、好ましい。ベルト保持部21の曲げ強度を確保しつつ、より一層の軽量化・省資源化を図ることができるからである。また、吊手本体2を拭き掃除する際、表壁面21R2と裏壁面21R3とを、凹形状に沿って一度に丸く拭くことができ、清掃時間の短縮にも寄与できる。また、外周フランジ部21Hの外周面21H3を、表端縁面21H1と裏端縁面21H2との間で一定の曲率で外方へ僅かに膨らむように、円弧状の曲面に形成することが、好ましい。外観上の見栄えを向上でき、車両の揺れ等によって吊手本体2が乗客に当たった場合の衝撃をより緩和させることができるからである。
【0047】
また、
図1、
図3、
図4、
図6に示すように、本第1実施例の車両用吊手10において、吊手本体2のベルト保持部21における外周フランジ部21Hは、表裏方向のフランジ幅ω(ω1、ω2)が、ベルト保持部21における下端部213から上中央部212に向けて徐々に広くなるように形成され、外周フランジ部21Hにおける表端縁面21H1及び裏端縁面21H2と、把持部22における中間部221a、222aより下方の表当て面221c及び下方の裏当て面222cとが、それぞれ同一平面で接続されていることが好ましい。
【0048】
この場合、吊手本体2の軽量化・省資源化を図りつつ、把持部22に対する乗客JKの荷重を、上方へ行くほど徐々に拡幅された外周フランジ部21Hによって剛性を高めたベルト保持部21を介して、吊りベルト1に確実に伝達することができる。また、外周フランジ部21Hにおける表端縁面21H1及び裏端縁面21H2と、把持部22における中間部221a、222aより下方の表当て面221c及び下方の裏当て面222cとを、それぞれ同一平面上で接続したことによって、ベルト保持部21と把持部22との一体感を高めて、見栄えを向上させると共に、咄嗟の場合には、ベルト保持部21の下端側を楽に把持することもできる。そのため、吊手本体2に対する軽量化・省資源化の向上と利便性の向上とをより一層促進させることができる。
【0049】
なお、外周フランジ部21Hにおける表端縁面21H1と把持部22における下方の表当て面221cとが、同一平面上に形成され、外周フランジ部21Hにおける裏端縁面21H2と把持部22における下方の裏当て面222cとが、同一平面上に形成されていることによって、ベルト保持部21と把持部22との一体感を高めて、デザイン上の見栄えを更に向上させることができる。
【0050】
また、
図2、
図4に示すように、本第1実施例の車両用吊手10において、吊手本体2のベルト保持部21における内周リブ部21Rは、リブ高さd3がベルト保持部21における下端部213から上中央部212に向けて徐々に高くなるように形成され、内周リブ部21Rの内周端部21R1と把持部22の上端部223とが、同一の幅ω3で連続状に接続されていることが好ましい。
【0051】
この場合、吊手本体2の軽量化・省資源化を図りつつ、把持部22に対する乗客JKの荷重を、上方へ行くほど徐々にリブ高さd3が高くなる内周リブ部21Rによって剛性を高めたベルト保持部21を介して、吊りベルト1に確実に伝達することができる。また、内周リブ部21Rの内周端部21R1と把持部22の上端部223とを、同一の幅ω3で連続状に接続したことによって、ベルト保持部21と把持部22との一体感を高めて、見栄えを向上させると共に、咄嗟の場合には、ベルト保持部21の下端側を楽に把持することもできる。そのため、吊手本体2に対する軽量化・省資源化の向上と利便性の向上とを更に促進させることができる。
【0052】
また、
図2に示すように、本第1実施例の車両用吊手10において、把持部22は、ベルト保持部21の半円弧中心部TBより下方の位置で、上方へ向けてアーチ状に湾曲されていることが好ましい。ここで、ベルト保持部21の半円弧中心部TBは、外周フランジ部21Hの外周面21H3に対する半径R1の中心位置(水平線Xと垂直線Yの交点)に形成されている。また、半円弧中心部TBを通過する水平線Xから把持部22の上端部223までの離間距離は、左右方向両端部における距離d2が左右方向中央部における離間距離d1より大きく形成されている。
【0053】
この場合、半円弧環中空部2aに対する乗客JKの指を入れるスペースを十分確保しつつ、親指Y1と他の指(人差し指Y2、中指Y3、薬指Y4、小指Y5)とが把持部22を把持する際、手の大きさ、指同士の長さや太さ等の差に基づいて生じる指と把持部22との隙間を、アーチ状に湾曲した把持部22に沿って把持することよって低減させることができる。そのため、吊手本体2における手の大きさ等に対する汎用性を高めつつ、把持部22をより一層楽に把持することができる。
【0054】
なお、上方へ向けてアーチ状に湾曲する把持部22の上端部223の半径R2は、外周フランジ部21Hの外周面21H3の半径R1より大きいことが好ましい。把持部22を把持する際、手の甲に対するスペースをより広く確保できるからである。また、把持部22における上端部223と下端部224との間の上下方向の距離t1は、左右方向で一定に形成されていることが好ましい。把持部22を把持する指の関節の曲げ角度が、把持位置の影響を受けにくく、握りやすいからである。
【0055】
<本実施形態に係る車両用吊手(第2実施例)>
次に、本実施形態に係る第2実施例の車両用吊手について、
図9~
図11を用いて説明する。
図9に、
図1に示す車両用吊手の斜視図であって、吊りベルトを捻って吊手本体を水平方向に回動させた状態を示す。
図10に、本実施形態に係る第2実施例の車両用吊手の斜視図を示す。
図11に、
図10に示すD-D断面図を示す。
【0056】
図10、
図11に示すように、本実施形態に係る第2実施例の車両用吊手10Gは、車両SRのベルト支持部3にベルト幅方向へ所定の間隔で吊り下げられた吊りベルト1Gと、当該吊りベルト1Gの下端部に保持された環状の吊手本体2とを備え、乗客が姿勢保持のために吊手本体2に掴まることができる車両用吊手10Gである。
【0057】
また、吊手本体2は、吊りベルト1Gの下端部が表裏方向に巻回され左右方向に延設された支軸部211を上中央部212のベルト用溝部212aに有し正面視で半円弧状に形成されたベルト保持部21と、当該ベルト保持部21の両下端部213から水平状に延設され乗客が把持する把持部22とを備え、正面視で半円弧環状に形成されている。また、把持部22は、上下方向に細長い断面形状に形成され、表裏側で指がそれぞれ当接する表当て面221と裏当て面222とが、上下方向の中間部221a、222aを外方へ膨出させる方向へ鈍角状に屈曲又は湾曲している。この点は、上述した第1実施例の車両用吊手10と共通している。ここでは、第1実施例の車両用吊手10との相違点を中心に説明し、共通点については、共通の符号を附して、原則としてその詳細な説明を割愛する。
【0058】
第2実施例の車両用吊手10Gにおいては、第1実施例の車両用吊手10との相違点として、吊りベルト1Gは、ベルト支持部3に支持された上吊りベルト12Gと吊手本体2の支軸部211に巻回された下吊りベルト11Gとに分割され、上吊りベルト12Gと下吊りベルト11Gとが、上吊りベルト12Gに対して下吊りベルト11Gを水平方向へ回動可能に形成されたベルト連結具5によって連結されている。
【0059】
第1実施例の車両用吊手10は、
図9に示すように、吊りベルト1を上下方向に長く形成することができれば、長い吊りベルト1を水平方向に捻ることによって、吊手本体2の向き(左右方向)を乗客の好みに合わせて回動させることが可能である。しかし、例えば、ベルト支持部3を車両SRの高い位置に配置できず、吊りベルト1を短く形成せざるを得ない場合がある。
【0060】
この点、第2実施例の車両用吊手10Gにおいては、
図10に示すように、吊りベルト1Gの長さが短くて、吊りベルト1Gを水平方向に捻じることが困難な場合でも、乗客JKの好みに応じて、把持した吊手本体2の向き(左右方向)をベルト連結具5を介して変更させることができる。そのため、例えば、満員電車の中で、異なる方向に向いた乗客が、それぞれ自分にとって楽な姿勢で吊手本体2を把持することができる。
【0061】
また、本第2実施例の車両用吊手10Gにおいて、
図10、
図11に示すように、ベルト連結具5には、上吊りベルト12Gに連結された上連結部51と、下吊りベルト11Gに連結された下連結部52と、上連結部51と下連結部52とを水平方向へ回動自在に連結する中連結部53と、上連結部51と下連結部52とに係止され上連結部51と下連結部52とを吊手本体2の左右方向と吊りベルト1Gの配列方向とが一致する方向に付勢する付勢部材56とを備えていることが好ましい。
【0062】
この場合、乗客JKの好みに応じて、把持した吊手本体2の向き(左右方向)を変更させた場合でも、乗客JKが吊手本体2を離して移動したときには、付勢部材56によって、吊手本体2の向き(左右方向)を吊りベルト1Gの配列方向と一致する方向へ、自動的に復帰させることができる。そのため、次の乗客にとって、吊手本体2の向き(左右方向)を素早く把持できる状態に復帰させることができる。
【0063】
なお、上連結部51は、外縁部51gが上向きの半円弧状に形成され、内縁部51nが円筒状にくり抜かれた半球体状に形成されている。また、下連結部52は、外縁部52gが下向きの半円弧状に形成され、内縁部52nが円筒状にくり抜かれた半球体状に形成されている。上連結部51の下端部に形成された円環状の溝部512内には、法線方向へ突設した上鍔部513を備え、下連結部52の上端部に形成された円環状の溝部522内には、法線方向へ突設した下鍔部523を備えている。また、上鍔部513と下鍔部523とは、上下で係合し水平方向へ摺接可能に形成された一対の係合凸部531を備えた中連結部53によって連結されている。中連結部53は、表裏方向で2分割され、両者はネジ部材532を介して連結されている。
【0064】
また、上連結部51の上端部には、上ベルト挿通孔511が形成され、上ベルト挿通孔511から挿入された上吊りベルト12Gの下端部を表裏方向に巻回させる上支軸部54が、内縁部51nに左右方向へ延設されている。また、下連結部52の下端部には、下ベルト挿通孔521が形成され、下ベルト挿通孔521から挿入された下吊りベルト11Gの上端部を表裏方向に巻回させる下支軸部55が、内縁部52nに左右方向へ延設されている。上連結部51の内縁部51nと下連結部52の内縁部52nには、コイルばね状の付勢部材56の上端部と下端部とを係止するばね座514、524が形成されている。
【0065】
乗客JKが、把持した吊手本体2を、吊りベルト1Gの上下軸(垂直線Y)を中心にして、水平方向へ回動させた場合には、下吊りベルト11Gに連結された下連結部52は、上吊りベルト12Gに連結された上連結部51に対して、中連結部53との間で摺接しながら水平方向へ簡単に回動することができる。また、乗客JKが、吊手本体2を離した場合には、付勢部材56の付勢力によって、下吊りベルト11Gに連結された下連結部52は、上吊りベルト12Gに連結された上連結部51に対して、中連結部53との間で摺接しながら水平方向へ回動して、元の状態に復帰することができる。
【0066】
なお、上連結部51が上向きの半球体に形成され、下連結部52が下向きの半円弧状に形成されているので、ベルト連結具5は、全体として球体状に形成されている。そのため、乗客JKは、ベルト連結具5を楽に把持することもできる。また、隣接する乗客JK同士の間で、一方の乗客JKが吊手本体2を把持し、他方の乗客JKがベルト連結具5を把持することもできる。
【0067】
<変形例>
次に、本実施形態に係る車両用吊手の吊手本体における変形例(変形例1~7)について、
図12~
図14を用いて具体的に説明する。
図12に、
図5に示す吊手本体における把持部の変形例の詳細断面図であって、(A)は第1変形例の吊手本体における把持部の詳細断面図を示し、(B)は第2変形例の吊手本体における把持部の詳細断面図を示す。
図13に、
図2に示す吊手本体の変形例の正面図であって、(A)は第3変形例の吊手本体の正面図を示し、(B)は第4変形例の吊手本体の正面図を示し、(C)は第5変形例の吊手本体の正面図を示す。
図14に、
図2に示す吊手本体の変形例の正面図であって、(A)は第6変形例の吊手本体の正面図を示し、(B)は第7変形例の吊手本体の正面図を示す。
【0068】
(第1、2変形例)
本実施形態(第1実施例及び第2実施例)に係る車両用吊手10、10Gの把持部22は、
図3~
図5に示すように、上下方向に細長い断面形状に形成され、表裏側で指がそれぞれ当接する表当て面221と裏当て面222とが、上下方向の中間部221a、222aを外方へ膨出させる方向へ鈍角状に屈曲又は湾曲している。具体的には、把持部22は、表裏方向に平坦な上端部223及び下端部224と、上下方向の中間位置Q3、Q4で中間部221a、222aを鈍角状に外方へ屈曲させた上方の表当て面221bと下方の表当て面221c及び上方の裏当て面222bと下方の裏当て面222cとによって、構成された上下方向に細長い六角形断面形状に形成されている。
【0069】
しかし、把持部22は、必ずしも上記六角形断面形状に形成されている必要はなく、
図12に示す車両用吊手10B、10Cにおける吊手本体2B、2Cの把持部22B、22Cのように形成しても良い。この場合も、曲がりにくい第1関節P1を90度以下の無理な角度に屈曲させることを回避できる。その結果、把持部22B、22Cを握る際、把持する指Y2(Y3、Y4、Y5)の関節に過度な負担を掛けることを防止でき、楽に握ることができる。
【0070】
例えば、
図12(A)に示すように、第1変形例の吊手本体2Bの把持部22Bは、平坦な下端部224Bと、上下方向の中間位置Q3、Q4で中間部221Ba、222Baを鈍角状に外方へ屈曲させた上方の表当て面221Bbと下方の表当て面221Bc及び上方の裏当て面222Bbと下方の裏当て面222Bcとによって、構成された上下方向に細長い五角形断面形状に形成しても良い。なお、上方の表当て面221Bbと上方の裏当て面222Bbとが交差する上端部223Bは、円弧状に形成されている。また、下端部224Bを、円弧状に形成しても良い。
【0071】
また、
図12(B)に示すように、第2変形例の吊手本体2Cの把持部22Cは、平坦な下端部224Cと、上下方向の中間位置Q3、Q4で中間部221Ca、222Caを鈍角状に外方へ湾曲させた上方の表当て面221Cbと下方の表当て面221Cc及び上方の裏当て面222Cbと下方の裏当て面222Ccとによって、構成された上下方向に細長い卵形断面形状に形成されている。なお、上方の表当て面221Cbと上方の裏当て面222Cbとが交差する上端部223Cは、円弧状に形成されている。また、下端部224Cを、円弧状に形成しても良い。
【0072】
(第3~7変形例)
本実施形態(第1実施例及び第2実施例)に係る車両用吊手10、10Gの把持部22は、
図2に示すように、ベルト保持部21の半円弧中心部TBより下方の位置で、上方へ向けてアーチ状に湾曲されている。また、把持部22における上端部223と下端部224との間の上下方向の距離t1は、左右方向で一定に形成されている。
【0073】
しかし、把持部22は、必ずしも上記湾曲形状に形成されている必要はなく、
図13、
図14に示す車両用吊手10D、10E、10F、10H、10Iにおける吊手本体2D、2E、2F、2H、2Iの把持部22D、22E、22F、22H、22Iのように形成しても良い。この場合も、半円弧環中空部2aに対する乗客JKの指を入れるスペースを十分確保することができる。そのため、吊手本体2D、2E、2F、2H、2Iにおける手の大きさ等に対する汎用性を高めつつ、把持部22D、22E、22F、22H、22Iを楽に把持することができる。
【0074】
例えば、第3変形例の吊手本体2Dの把持部22Dは、
図13(A)に示すように、ベルト保持部21の半円弧中心部TBより下方の位置で、下方へ向けてアーチ状に湾曲されている。また、把持部22Dにおける上端部223Dと下端部224Dとの間の上下方向の距離t3は、左右方向で一定状に形成されている。
【0075】
また、第4変形例の吊手本体2Eの把持部22Eは、
図13(B)に示すように、ベルト保持部21の半円弧中心部TBより下方の位置で、上方へ向けてアーチ状に湾曲されている。ここでは、上端部223Eが上方へ向けてアーチ状に湾曲され、下端部224Eが直線状に形成されている。また、把持部22Eにおける上端部223Eと下端部224Eとの間の上下方向の距離t4は、左右方向中央寄りで最大に形成されている。
【0076】
また、第5変形例の吊手本体2Fの把持部22Fは、
図13(C)に示すように、ベルト保持部21の半円弧中心部TBより下方の位置で、下方へ向けてアーチ状に湾曲されている。ここでは、上端部223Fが直線状に形成され、下端部224Fが下方へ湾曲状に形成されている。また、把持部22Fにおける上端部223Fと下端部224Fとの間の上下方向の距離t5は、左右方向中央寄りで最大に形成されている。
【0077】
また、第6変形例の吊手本体2Hの把持部22Hは、
図14(A)に示すように、ベルト保持部21の半円弧中心部TBより下方の位置で、上端部223Hと下端部224Hとが水平方向へ直線状に形成されている。また、把持部22Hにおける上端部223Hと下端部224Hとの間の上下方向の距離t6は、左右方向で一定状に形成されている。
【0078】
また、第7変形例の吊手本体2Iの把持部22Iは、
図14(B)に示すように、ベルト保持部21の半円弧中心部TBより下方の位置で、上端部223Iが上方へ向けてアーチ状に湾曲され、下端部224Iが下方へ向けてアーチ状に形成されている。また、把持部22Iにおける上端部223Iと下端部224Iとの間の上下方向の距離t7は、左右方向中央寄りで最大に形成されている。
【0079】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る車両用吊手10、10B、10C、10D、10E、10F、10G、10H、10Iによれば、吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iは、吊りベルト1、1Gの下端部が表裏方向に巻回され左右方向に延設された支軸部211を上中央部212のベルト用溝部212aに有し正面視で半円弧状に形成されたベルト保持部21と、当該ベルト保持部21の両下端部213から水平状に延設され乗客JKが把持する把持部22、22B、22C、22D、22E、22F、22H、22Iとを備え、正面視で半円弧環状に形成されているので、吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iの左右方向と吊りベルト1、1Gの配列方向とが一致し、一般に、吊りベルト1、1Gの配列方向に沿って並ぶ乗客JKは、吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iの半円弧環中空部2aを正面側から見ることができる。そのため、車両SRが揺れたとき等にも、吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iの半円弧環中空部2aが見やすく、半円弧環中空部2a内に素早く指を入れて、吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iの把持部22、22B、22C、22D、22E、22F、22H、22Iを確実に把持することができる。
【0080】
また、乗客JKの把持する把持部22、22B、22C、22D、22E、22F、22H、22Iがベルト保持部21の両下端部213から水平状に延設されているので、乗客JKが把持する把持部22、22B、22C、22D、22E、22F、22H、22Iの領域を下方に幅広く確保でき、身長の低い乗客JKでも、安定的に吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iを把持することができる。また、吊りベルト1、1Gの下端部がベルト用溝部212aの端縁によって規制されるので、吊りベルト1、1Gに対する吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iの位置ズレを回避でき、車両SRが揺れた場合にも、吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iを把持した乗客JKは、楽に姿勢を保持することができる。
【0081】
また、ベルト保持部21は、吊りベルト1、1Gの下端部が表裏方向に巻回され左右方向に延設された支軸部211を上中央部212のベルト用溝部212aに有し正面視で半円弧状に形成されているので、乗客JKの指を入れる半円弧環中空部2aのスペースを拡大させつつ、吊りベルト1、1Gの下端部に保持される上中央部212におけるベルト保持部21の体積及び重量を効果的に軽減させることができる。そのため、吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iにおける軽量化や省資源化を促進させることができる。
【0082】
また、把持部22、22B、22C、22D、22E、22F、22H、22Iは、上下方向に細長い断面形状に形成され、表裏側で指がそれぞれ当接する表当て面221と裏当て面222とが、上下方向の中間部221a、222aを外方へ膨出させる方向へ鈍角状に屈曲又は湾曲しているので、表当て面221と裏当て面222とが、把持部22、22B、22C、22D、22E、22F、22H、22Iの上方位置Q1と下方位置Q2とで互いに鋭角状に交差し、把持部22、22B、22C、22D、22E、22F、22H、22Iの上下方向の中間位置Q3、Q4でそれぞれ鈍角状に屈曲又は湾曲することになる。そのため、乗客JKの親指Y1と他の指(人差し指Y2、中指Y3、薬指Y4、小指Y5)とが吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iの把持部22、22B、22C、22D、22E、22F、22H、22Iを把持する際、把持部22、22B、22C、22D、22E、22F、22H、22Iの上方位置Q1で互いに鋭角状に交差する上方の表当て面221bと上方の裏当て面222bとに沿って、他の指における真ん中の中節骨K2と根元の基節骨K3との間の第2関節P2を鋭角状に屈曲させ、また、上下方向の中間位置Q3、Q4で鈍角状に屈曲又は湾曲している表当て面221又は裏当て面222に沿って、指先の末節骨K1と真ん中の中節骨K2との間の第1関節P1を鈍角状に屈曲させることができる。したがって、他の指の曲げにくい第1関節P1の曲げ角度β1を、曲げやすい第2関節P2の曲げ角度β2より大きくさせ、第1関節P1を90度以下の無理な角度に屈曲させることを回避できる。その結果、把持部22、22B、22C、22D、22E、22F、22H、22Iを握る際、把持する指の第1関節P1に過度な負担を掛けることを回避でき、楽に握ることができる。
【0083】
よって、本実施形態によれば、吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iを素早く把持できると共に、把持する領域が広く、把持する指の関節の負担を軽減できて握りやすく、吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iの軽量化・省資源化にも寄与できる車両用吊手10、10B、10C、10D、10E、10F、10G、10H、10Iを提供することができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、ベルト保持部21は、外周側で周方向へ半円弧状に延設された外周フランジ部21Hと、当該外周フランジ部21Hの内周側に起立する山型の内周リブ部21Rとを備え、外周フランジ部21Hと内周リブ部21Rとが、T字状に交差した断面形状に形成されているので、半円弧状の外周フランジ部21Hに対する法線方向の曲げ強度を、山型の内周リブ部21Rによって少ない断面積で効率的に補強することができる。そのため、吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iにおける必要な曲げ強度を確保しつつ、より一層の軽量化・省資源化を図ることができる。
【0085】
また、本実施形態によれば、外周フランジ部21Hは、表裏方向のフランジ幅ω(ω1、ω2)がベルト保持部21における下端部213から上中央部212に向けて徐々に広くなるように形成され、外周フランジ部21Hにおける表端縁面21H1及び裏端縁面21H2と、把持部22、22B、22C、22D、22E、22F、22H、22Iにおける中間部221a、222aより下方の表当て面221c及び下方の裏当て面222cとが、それぞれ同一平面で接続されているので、吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iの軽量化・省資源化を図りつつ、把持部22、22B、22C、22D、22E、22F、22H、22Iに対する乗客JKの荷重を、上方へ行くほど徐々に拡幅された外周フランジ部21Hによって剛性を高めたベルト保持部21を介して、吊りベルト1、1Gに確実に伝達することができる。また、外周フランジ部21Hにおける表端縁面21H1及び裏端縁面21H2と、把持部22、22B、22C、22D、22E、22F、22H、22Iにおける中間部221a、222aより下方の表当て面221c及び下方の裏当て面222cとを、それぞれ同一平面上で接続したことによって、ベルト保持部21と把持部22、22B、22C、22D、22E、22F、22H、22Iとの一体感を高めて、見栄えを向上させると共に、咄嗟の場合には、ベルト保持部21の下端側を楽に把持することもできる。そのため、吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iに対する軽量化・省資源化の向上と利便性の向上とをより一層促進させることができる。
【0086】
また、本実施形態によれば、内周リブ部21Rは、リブ高さd3がベルト保持部21における下端部213から上中央部212に向けて徐々に高くなるように形成され、内周リブ部21Rの内周端部21R1と把持部22、22D、22E、22F、22H、22Iの上端部223、223D、223E、223F、223H、223Iとが、同一の幅ω3で連続状に接続されているので、吊手本体2、2D、2E、2F、2H、2Iの軽量化・省資源化を図りつつ、把持部22、22D、22E、22F、22H、22Iに対する乗客JKの荷重を、上方へ行くほど徐々にリブ高さd3が高くなる内周リブ部21Rによって剛性を高めたベルト保持部21を介して、吊りベルト1、1Gに確実に伝達することができる。また、内周リブ部21Rの内周端部21R1と把持部22、22D、22E、22F、22H、22Iの上端部223、223D、223E、223F、223H、223Iとを、同一の幅ω3で連続状に接続したことによって、ベルト保持部21と把持部22、22D、22E、22F、22H、22Iとの一体感を高めて、見栄えを向上させると共に、咄嗟の場合には、ベルト保持部21の下端側を楽に把持することもできる。そのため、吊手本体2、2D、2E、2F、2H、2Iに対する軽量化・省資源化の向上と利便性の向上とを更に促進させることができる。
【0087】
また、本実施形態によれば、把持部22、22D、22E、22F、22Iは、ベルト保持部21の半円弧中心部TBより下方の位置で、上方又は下方へ向けてアーチ状に湾曲されているので、半円弧環中空部2aに対する乗客JKの指を入れるスペースを十分確保しつつ、親指Y1と他の指(人差し指Y2、中指Y3、薬指Y4、小指Y5)とが把持部22、22D、22E、22F、22Iを把持する際、手の大きさ、指同士の長さや太さ等の差に基づいて生じる指と把持部22、22D、22E、22F、22Iとの隙間を、アーチ状に湾曲した把持部22、22D、22E、22F、22Iに沿って把持することよって低減させることができる。そのため、吊手本体2、2D、2E、2F、2Iにおける手の大きさ等に対する汎用性を高めつつ、把持部22、22D、22E、22F、22Iをより一層楽に把持することができる。
【0088】
また、本実施形態によれば、吊りベルト1Gは、ベルト支持部3に支持された上吊りベルト12Gと吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iの支軸部211に巻回された下吊りベルト11Gとに分割され、上吊りベルト12Gと下吊りベルト11Gとが、上吊りベルト12Gに対して下吊りベルト11Gを水平方向へ回動可能に形成されたベルト連結具5によって連結されているので、吊りベルト1Gの長さが短くて、吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iの左右方向を吊りベルト1Gの配列方向と一致する方向から異なる方向へ回動させることが困難な場合でも、乗客JKの好みに応じて、把持した吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iの向き(左右方向)をベルト連結具5を介して変更させることができる。そのため、例えば、満員電車の中で、異なる方向に向いた乗客が、それぞれ自分にとって楽な姿勢で吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iを把持することができる。
【0089】
また、本実施形態によれば、ベルト連結具5には、上吊りベルト12Gに連結された上連結部51と、下吊りベルト11Gに連結された下連結部52と、上連結部51と下連結部52とを水平方向へ回動自在に連結する中連結部53と、上連結部51と下連結部52とに係止され上連結部51と下連結部52とを吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iの左右方向と吊りベルト1Gの配列方向とが一致する方向に付勢する付勢部材56とを備えているので、乗客JKの好みに応じて、把持した吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iの向き(左右方向)を変更させた場合でも、乗客JKが吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iを離して移動したときには、付勢部材56によって、吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iの向き(左右方向)を吊りベルト1Gの配列方向と一致する方向へ、自動的に復帰させることができる。そのため、次の乗客にとって、吊手本体2、2B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iの向き(左右方向)を素早く把持できる状態に復帰させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、鉄道車両やバス等の車両の内部に装備される車両用吊手として利用できる。
【符号の説明】
【0091】
1、1G 吊りベルト
2、2B、2C、2D 吊手本体
2E、2F、2H、2I 吊手本体
3、3P ベルト支持部
5 ベルト連結具
10、10B、10C、10D 車両用吊手
10E、10F、10G 車両用吊手
10H、10I 車両用吊手
11G 下吊りベルト
12G 上吊りベルト
21 ベルト保持部
21H 外周フランジ部
21H1 表端縁面
21H2 裏端縁面
21R 内周リブ部
21R1 内周端部
22、22B、22C、22D 把持部
22E、22F、22H、22I 把持部
51 上連結部
52 下連結部
53 中連結部
56 付勢部材
211 支軸部
212 上中央部
213 下端部
212a ベルト用溝部
221、221b、221c 表当て面
222、222b、222c 裏当て面
221a、222a 中間部
223 上端部
JK 乗客
SR 車両
TB 半円弧中心部
Y2、Y3、Y4、Y5 指
d3 リブ高さ
ω、ω1、ω2 フランジ幅
ω3 幅