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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137361
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】安全帯使用状況管理システム
(51)【国際特許分類】
   A62B 35/00 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
A62B35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043541
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(71)【出願人】
【識別番号】000233055
【氏名又は名称】株式会社日立ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 考一
(72)【発明者】
【氏名】宮田 岩往
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 年彦
(72)【発明者】
【氏名】増田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】吉村 藤子
(72)【発明者】
【氏名】古川 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】梅村 隆
(72)【発明者】
【氏名】門脇 寛興
(72)【発明者】
【氏名】川口 修
【テーマコード(参考)】
2E184
【Fターム(参考)】
2E184JA03
2E184KA11
2E184LA40
(57)【要約】
【課題】安全帯のフックの使用状況を簡易かつ確実に管理することが可能な安全帯使用状況管理システムを提供する。
【解決手段】安全帯使用状況管理システム100は、安全帯10を装着した作業員Aが作業する現場を撮像した現場画像を取得する画像取得部110と、現場画像から、安全帯に備わるフックの位置を特定するフック位置特定部130と、現場画像から、支持体22の位置を、当該支持体22に設けられた識別部40の位置に基づいて特定する支持体位置特定部140と、現場画像から、特定した支持体22の位置に基づいて、支持体22の間に掛け渡された親綱30の経路を特定する親綱経路特定部160と、フック13の位置と親綱30の経路との位置関係からフック13が親綱30に掛かっているか否かを判別する判別部180とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安全帯を装着した作業員が作業する現場を撮像した現場画像を取得する画像取得部と、
前記現場画像から、前記安全帯に備わるフックの位置を特定するフック位置特定部と、
前記現場画像から、支持体の位置を、当該支持体又は当該支持体から所定の範囲に存する部分に設けられた識別部の位置に基づいて特定する支持体位置特定部と、
前記現場画像から、前記特定した支持体の位置に基づいて、前記支持体の間に掛け渡された親綱の経路を特定する親綱経路特定部と、
前記フックの位置と前記親綱の経路との位置関係から前記フックが前記親綱に掛かっているか否かを判別する判別部とを備えることを特徴とする安全帯使用状況管理システム。
【請求項2】
前記支持体は、前記現場に設置された支柱の頂部に設けられた、前記親綱の一端が支持される支持部であり、
前記識別部は、前記支持部の着色された部分、又は、前記支持部と相違する色を有し、前記支持部に設置された部材であるであることを特徴とする請求項1に記載の安全帯使用状況管理システム。
【請求項3】
前記支持体から所定の範囲に存する部分は、当該支持体に一端が支持された前記親綱の端部であり、
前記識別部は、前記端部の着色された部分、又は、前記支持部と相違する色を有し、前記支持部に設置された部材であることを特徴とする請求項1に記載の安全帯使用状況管理システム。
【請求項4】
安全帯を装着した作業員が作業する現場を撮像した現場画像を取得する工程と、
前記現場画像から、前記安全帯に備わるフックの位置を特定する工程と、
前記現場画像から、支持体の位置を、当該支持体又は当該支持体から所定の範囲に存する部分に設けられた識別部の位置に基づいて特定する工程と、
前記現場画像から、前記特定した支持体の位置に基づいて、前記支持体の間に掛け渡された親綱の経路を特定する工程と、
前記フックの位置と前記親綱の経路との位置関係から前記フックが前記親綱に掛かっているか否かを判別する工程とを備えることを特徴とする安全帯使用状況管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全帯使用状況管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業を行う作業者は、墜落制止用器具である安全帯を装着し、安全帯に備わるフックを親綱に掛けて作業を行うことにより、転落や墜落を防止している。作業者は、作業場所を移動しながら作業を行うが、その際、安全帯のフックの掛け替えを行う。このようなフックの掛け替えは適正に行う必要があるが、頻繁に行う作業であり、管理者が常に管理することも困難である。
【0003】
管理者の管理負担を低減するために、安全帯のフックにスイッチやカメラを組み込むことによって、安全帯の使用状況を確認する技術が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。しかし、この場合、専用の安全帯を作業者全員が装着する必要があるので、高価となる。また、フックは親綱に頻繁に引っ掛けるので、スイッチやカメラが衝撃などによって故障するおそれがある。
【0004】
そこで、作業現場を撮影した現場画像から安全帯使用状況を監視する技術が提案されている。例えば、特許文献3には、安全帯のフックと親綱や手摺のそれぞれに別々の着色を全体に渡って施しておき、フックの色画像と親綱や手摺の色画像が交差する場合に、フックが使用されていると判断する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6409748号公報
【特許文献2】特許第6505555号公報
【特許文献3】特開2021-129953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献3に記載の技術においては、親綱や手摺の全体に渡って一様に着色しておく必要があり、摩擦などによって着色に剥がれや汚れが発生すると、判断に誤りが生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、安全帯のフックの使用状況を簡易かつ確実に管理することが可能な安全帯使用状況管理システム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の安全帯使用状況管理システムは、安全帯を装着した作業員が作業する現場を撮像した現場画像を取得する画像取得部と、前記現場画像から、前記安全帯に備わるフックの位置を特定するフック位置特定部と、前記現場画像から、支持体の位置を、当該支持体又は当該支持体から所定の範囲に存する部分に設けられた識別部の位置に基づいて特定する支持体位置特定部と、前記現場画像から、前記特定した支持体の位置に基づいて、前記支持体の間に掛け渡された親綱の経路を特定する親綱経路特定部と、前記フックの位置と前記親綱の経路との位置関係から前記フックが前記親綱に掛かっているか否かを判別する判別部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の安全帯使用状況管理方法は、安全帯を装着した作業員が作業する現場を撮像した現場画像を取得する工程と、前記現場画像から、前記安全帯に備わるフックの位置を特定する工程と、前記現場画像から、支持体の位置を、当該支持体又は当該支持体から所定の範囲に存する部分に設けられた識別部の位置に基づいて特定する工程と、前記現場画像から、前記特定した支持体の位置に基づいて、前記支持体の間に掛け渡された親綱の経路を特定する工程と、前記フックの位置と前記親綱の経路との位置関係から前記フックが前記親綱に掛かっているか否かを判別する工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の安全帯使用状況管理システム及び方法によれば、現場画像から、支持体の位置を、当該支持体又は当該支持体から所定の範囲に存する部分に設けられた識別部の位置に基づいて特定する。このため、親綱がその間に掛け渡されている支持体を識別部の有無により特定することができる。これにより、作業の進捗状況などに応じて親綱が支持されていない支持体を除いて実際に親綱が支持されている支持体を特定することができるので、親綱の経路を簡易かつ容易に特定することが可能となる。
【0011】
本発明の安全帯使用状況管理システムにおいて、例えば、前記支持体は、前記現場に設置された支柱の頂部に設けられた、前記親綱の一端が支持される支持部であり、前記識別部は、前記支持部の着色された部分、又は、前記支持部と相違する色を有し、前記支持部に設置された部材である。
【0012】
また、本発明の安全帯使用状況管理システムにおいて、例えば、前支持体から所定の範囲に存する部分は、当該支持体に一端が支持された前記親綱の端部であり、前記識別部は、前記端部の着色された部分、又は、前記支持部と相違する色を有し、前記支持部に設置された部材である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る安全帯使用状況管理システムを用いて管理される建築現場の模式図。
図2】安全帯使用状況管理システムのブロック図。
図3】本発明の実施形態に係る安全帯使用状況管理方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る安全帯使用状況管理システム100について説明する。安全帯使用状況管理システム100は、高所作業を行う作業者に装着されている墜落制止用器具である安全帯の使用状況を管理するシステムである。
【0015】
まず、安全帯使用状況管理システム100を用いて管理される建築現場について図1を参照して説明する。この建築現場は、作業者Aが高所作業を行う現場であり、各作業者Aは安全帯10を装着している。
【0016】
安全帯10は、人体に装着するためのベルト11、ベルト11の背中部分に一端に接続された命綱としてのロープ12、及び、ロープ12の他端に接続されたフック13を備えている。安全帯10は2組のロープ12とフック13を有しており、常に少なくとも一方のフック13を支柱20などの間に掛け渡された親綱30に掛けておくことにより、作業者Aの転落や墜落が防止される。支柱20は、建築物の躯体や仮設足場などに固定され、作業者Aが落下した際に親綱30にかかる荷重を支えることが可能に構成されている。
【0017】
安全帯10は、胴ベルトのほか、腿や肩などにもベルトを通して全身を保持するフルハーネス型のベルト11を備えていることが好ましい。フルハーネス型の場合、高所作業時以外のとき、フック13は肩ベルトに引っ掛けて胸部に位置させておくことが推奨されている。
【0018】
親綱30は、通常、作業者Aの腰程度の所定の高さに位置するように2本の支柱20の間に張り渡されている。親綱30は、両端にフック部31が取り付けたロープ32からなっている。なお、図示しない緊張器を用いて、支柱20の間に掛け渡された親綱30のゆるみを減少させて張り渡しておくことが好ましい。
【0019】
支柱20は、鉛直方向に延びる支柱本体21と、支柱本体21の上端部に設けられ、親綱20のフック部を引っ掛けるための環状の保持金具22とを備えている。図示しないが、支柱本体21の下端部は、建築物の躯体や仮設足場などを構成する鉄骨のフランジ部などに万力状の固定治具などを用いて取り付けられている。
【0020】
なお、親綱30は、図示しないが、例えば、環状の保持金具を有するH型鋼用クランプや単管パイプ用クランプなどを用いて、建築物の鉄骨躯体や仮設足場に設けられた保持金具にフック部31が引っ掛けられるものであってもよい。
【0021】
このように、親綱30の両端のフック部31は、それぞれ支柱20の保持金具22や不図示のクランプに設けられた保持金具に支持される。この保持金具22などが本発明の支持体及び支持部に相当する。以下、親綱30のフック部31が支柱20保持金具22に支持される場合について説明し、保持金具22は支持体22とも呼ぶ。
【0022】
そして、ここでは、この支持体22の上部に識別部40が設けられている。識別部40は、現場を撮像した画像から他の部材から識別部40を容易に認識することが可能とする部分である。識別部40は、例えば、支持体22に着色した部分、又は、支持体22と相違する色を有し、支持体22の上部に設置された部材である。識別部40は、特に、現場で使用される部材にあまり使用されない蛍光色などの色に着色されたものや、蛍光色などのマグネット、ステッカーやリボンなどからなる着脱が容易なものであることが好ましい。なお、支柱20の他の部分、例えば、支持体22の下部や端部などに識別部40を設けてもよく、さらに支柱本体21の上部などの一部に識別部40を設けてもよい。
【0023】
また、識別部40は、支持体22から所定の位置に存する部分に設けられたものであってもよい。この場合、当該部分は、支柱20の間に親綱30が掛け渡された際に、親綱30の経路を特定することが可能な位置であることが好ましい。例えば、支持体22の上部に部材などを設け、この部材の支持体22から所定の位置だけ離れた部分を着色などして識別部40を設けてもよい。また、クランプから所定位置だけ離れた鉄骨に識別部40を設けてもよい。
【0024】
さらに、支持体22に支持される親綱30のフック部31に識別部40を設けてもよい。また、親綱30のフック部31から所定の位置だけ離れたロープ32の部分に識別部40を設けてもよい。
【0025】
なお、同じ撮像装置50が撮像する現場において、支持体22に対する識別部40の位置関係は同じであることが好ましい。識別部40を設ける位置関係が異なる場合は、識別部40を設けた位置関係に応じて識別部40の色や形状などを相違させることが好ましい。例えば、支持体22に設けた識別部40とクランプに設けた識別部40とは、黄色蛍光色とオレンジ蛍光色、又は、矩形状と三角形状などと相違させることが好ましい。なお、本明細書において、位置関係や位置には、方向を含めた意味でもあり得る。
【0026】
現場には、高所作業を行う現場を撮像する撮像装置50が設置されている。カメラやビデオカメラなどの撮像装置50を複数台設け、現場を複数の方向から撮像することにより、撮像対象の3次元位置を取得することが可能であることが好ましい。また、撮像対象の3次元位置を取得することが可能な3次元カメラや3次元ビデオカメラを用いてもよい。
【0027】
安全帯使用状況管理システム100は、図2に示すように、ネットワークNを介して送信された、撮像装置50が現場を撮像して取得した現場画像を用いて、安全帯10の使用状況を管理する。なお、ネットワークNは、有線、無線のいずれであってもよく、インターネット、LAN(Local Area Network)やVPN(Virtual Private Network)などの任意の種類の通信網を用いることができる。
【0028】
安全帯使用状況管理システム100は、は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、内部の記憶装置に記憶されているプログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される、PCコンピュータなどのコンピュータから構成されている。
【0029】
安全帯使用状況管理システム100は、画像取得部110、作業者位置特定部120、フック位置特定部130、支持体位置特定部140、親綱範囲設定部150、親綱経路特定部160、仮想親綱推定部170、判定部160及び警告部190を備えている。作業者位置特定部120、フック位置特定部130、支持体位置特定部140、親綱範囲設定部150、親綱経路特定部160、仮想親綱推定部170及び判定部180における処理は、AIを用いて処理してもよい。
【0030】
画像取得部110は、安全帯10を装着した作業員Aが作業する現場を撮像装置50が撮像した現場画像を、ネットワークNを介して取得する。
【0031】
作業者位置特定部120は、画像取得部110が取得した現場画像から作業者Aを識別して、作業者Aの位置を特定する。作業者Aの画像識別は、既存の画像識別技術を用いればよいが、作業者Aが装着するヘルメットや安全帯10などに着目すれば容易に識別することができる。なお、作業者Aが複数人存在する場合は、各作業者Aを区別する必要はなく、それぞれの作業者Aが安全帯10を適切に使用しているか否かを確認し、適切に使用していない作業者Aを特定できればよい。
【0032】
なお、所定の高さ以上を撮像した現場画像に映る全ての範囲の中において、作業者Aを特定してもよいが、所定の範囲内においてのみ作業者Aを特定してもよい。このように範囲を特定する場合、支持体位置特定部140が特定した支持体22の位置に基づき、作業者Aを特定する範囲を設定してもよい。これは、親綱30は支持体22の間に掛け渡されるので、支持体22の存在しない作業範囲は、親綱30による安全確保は必要ないと考えられるからである。
【0033】
ただし、転落や墜落するおそれがある作業場所に親綱30を設置するために支持体22を設置し、この支持体22の位置を簡易かつ確実に特定するために識別部40を設置している。そのため、作業の進捗によって作業者の墜落や転落の危険がなくなり、親綱30が不要となった作業範囲においては、識別部40を除去してから、親綱を外すことが好ましい。しかし、場合によっては、親綱30が不要となった範囲に識別部40や親綱30が存置されている可能性もある。そこで、作業者Aを特定する範囲の設定は管理者が確認することが好ましい。
【0034】
また、所定の高さ以上での作業であっても、デッキスラブや型枠などの設置状況によっては安全帯10を用いた安全確保が必要ない作業範囲が存在する。このような場合は、管理者などが作業範囲を設定し、この作業範囲内に存在する作業者Aは特定しないものとしてもよい。
【0035】
フック位置特定部130は、画像取得部110が取得した現場画像から、作業者位置特定部120が特定した作業者Aが装着する安全帯10に備わるフック13を識別して、フック13の位置を特定する。フック13の画像識別は、既存の画像識別技術を用いればよいが、フック13は大型であるので、識別は比較的容易である。なお、フック13を蛍光色などで着色すれば、さらに識別は容易にしなる。作業者Aが装着する安全帯10には2つのフック13が備わるので、特定した作業者Aごとに2個のフック13の位置を特定する。
【0036】
支持体位置特定部140は、画像取得部110が取得した現場画像から、識別部40を識別し、識別した識別部40の位置に基づいて、支持体22の位置を特定する。支持体位置特定部140は、まず、現場画像から、識別部40の画像を識別し、識別部40の位置を特定する。識別部40は、建築現場の他の箇所と比較して画像による識別が容易となるように着色などが施されたものである。そのため、現場画像から、識別部40の画像を既存の画像識別技術を用いて簡易に識別することが可能である。なお、フック13が着色されている場合、識別部40はこれとは別の色で着色しておくことが好ましい。
【0037】
前述したように、識別部40と支持体22との位置関係は既知であるので、特定した識別部40の位置から支持体22の位置を特定することができる。
【0038】
親綱範囲設定部150は、画像取得部110が取得した現場画像から、支持体位置特定部140が特定した支持体22の位置に基づいて、親綱30が存在し得る範囲を決定する。
【0039】
親綱30は、隣接する支持体22の間に掛け渡される。そこで、特定した支持体22の位置に基づき、支持体22の間に掛け渡されるように親綱30が存在すると推定される範囲を特定する。この範囲内に限定することにより、現場画像全体から親綱30の画像を識別することと比較して、識別に要する作業の容易化や迅速化を図ることが可能となる。親綱30は細く、逆光等の天候状況や背景の画像などによっては、識別が困難であるが、所定の範囲であれば、高精度で識別することも可能となる。
【0040】
ここで、親綱30の画像を識別する範囲は、支持体22の間であるが、親綱30は自重により垂れ下がるので、支持体22よりも上方に位置することはなく、隣接する支持体22の中央付近で最も下方に位置し、支持体22に近接する部分では支持体22よりも少し下方に位置することになる。また、親綱30は、緊張器などを用いて緊張させて掛け渡されるので大きく下方に撓むことはなく、さらに、上方視では直線状となる。そのため、親綱30の存在し得る範囲は所定の狭い範囲と推定することができる。
【0041】
親綱経路特定部160は、画像取得部110が取得した現場画像から、親綱範囲設定部150が設定した範囲内において、親綱30の経路を決定する。なお、親綱範囲設定部150が存在しない場合、親綱経路特定部160は、画像取得部110が取得した現場画像から、直接的に親綱30を識別し、親綱30の経路を決定してもよい。
【0042】
また、親綱30のロープ32の両端部や中央部などの所定の範囲に着色などを施して識別部を設け、この識別部を現場画像から識別することにより、親綱30の経路を特定してもよい。ただし、ロープ32に着色を行う場合、フック13や支持体22とは別の色で着色することが好ましい。
【0043】
仮想親綱位置推定部170は、親綱範囲設定部150が設定した範囲内において、親綱経路特定部160が親綱30の経路を特定できない場合、前記範囲内に親綱30が存在すると仮想した仮想親綱の経路の範囲を推定する。
【0044】
前述したように、親綱30は現場画像からは判別し難いので、親綱範囲設定部150が設定した範囲内の現場画像から親綱30を識別できない場合がある。しかし、識別部40は、この識別部40により特定される支持体22に親綱30のフック部31が引っ掛かっていることを示すために設けられている。そのため、例え、現場画像から親綱30が識別できない場合であっても、識別された識別部40により特定される支持体22には親綱30のフック部31が引っ掛かっていると推定することが可能である。
【0045】
そこで、親綱範囲設定部150が設定した範囲内に親綱30を認識できない場合、隣接する支持体22の間に親綱30が掛け渡されているとして、仮想親綱の経路を推定する。このとき、親綱30は、隣接する支持体22に所定の範囲の撓み具合で掛け渡されていると仮定して、所定の範囲に存在すると推定する。なお、支持体22の間隔に応じて、撓み具合の範囲を変更してもよい。また、親綱範囲設定部150が設定した範囲を仮想親綱の経路の範囲と推定してもよい。
【0046】
なお、仮想親綱は、2つの支持体22の間に張り渡された親綱30を全く識別することができない場合だけでなく、親綱30が部分的に識別できない場合、識別された親綱30の間を繋ぐように所定の範囲において親綱30が存在するとして仮想親綱の部分的な経路を推定してもよい。
【0047】
判別部180は、親綱30又は仮想親綱の位置とフック13の位置との位置関係から当該フック13が親綱30又は仮想親綱に引っ掛かっているかを判別する。なお、これらの位置関係に基づいて、確実に引っ掛かっている場合だけでなく、これらの位置関係に多少の誤差がある場合も、引っ掛かっていると判別してもよい。これは、安全帯10を装着している作業者Aにおいては、安全帯10のフック13が親綱30に引っ掛かっている場合又は引っ掛けようにしている場合を除いては、フック13と親綱30との高さには大きな差があるからである。
【0048】
警告部190は、判別部180が判別した結果に基づいて、警告を発する。安全帯10の2つのフック13の何れか一方が、又は何れもが親綱30に引っ掛かっていないと判別部が判別した場合、当該安全帯10を装着している作業者A又は管理者に向けて警告を発する。警告は、図示しないが、作業現場、作業者、管理建物などに付されたスピーカや警告灯などから警告音、指示や警告光などを発することによって行う。また、警告部190は、液晶ディスプレイなどに表示部に警告情報などを表示させるものであってもよい。
【0049】
以下、上述した安全帯使用状況管理システム100を用いた、本発明の実施形態に係る安全帯使用状況管理方法について図3も参照して説明する。
【0050】
まず、撮像装置50が撮像した現場画像を、画像取得部110が取得する画像取得工程(S1)を行う。
【0051】
次に、画像取得部110が取得した現場画像から作業者Aを識別して、作業者Aの位置を特定する作業者位置特定工程(S2)を行う。
【0052】
次に、画像取得部110が取得した現場画像から、作業者位置特定部120が特定した作業者Aが装着する安全帯10に備わるフック13を識別して、フック13の位置を特定するフック位置特定工程(S3)を行う。そして、画像取得部110が取得した現場画像から、識別部40を識別し、識別した識別部40の位置に基づいて、支持体22の位置を特定する支持体位置特定工程(S4)を行う。さらに、画像取得部110が取得した現場画像から支持体位置特定部140が特定した支持体22の位置に基づいて、親綱30が存在して得る範囲を決定する親綱範囲設定工程(S5)を行う。
【0053】
次に、画像取得部110が取得した現場画像から、親綱範囲設定部150が設定した範囲内において、親綱30の経路を決定する親綱経路特定工程(S6)を行う。そして、親綱範囲設定部150が設定した範囲内において、親綱経路特定部160が親綱30の経路を特定できない場合(S6:NO)、前記範囲内に親綱30が存在すると仮想した仮想親綱の経路の範囲を推定する仮想親綱位置推定工程(S7)を行う。
【0054】
次に、親綱30又は仮想親綱の位置とフック13の位置との位置関係から、各作業者Aが装着する安全帯10の両方、又は少なくとも一方のフック13が親綱30又は仮想親綱に引っ掛かっているかを判別する判別工程(S8)を行う。
【0055】
各作業者Aが装着する安全帯10の両方、又は少なくとも一方のフック13が親綱30又は仮想親綱に引っ掛かっていると判別された場合(S8:YES)、全ての安全帯10は適正に使用されていると判別し、画像取得工程(S1)以下を繰り返す。
【0056】
作業者Aが装着する何れかの安全帯10のフック13が両方の両方とも、又は少なくとも一方が親綱30又は仮想親綱に引っ掛かっていないと判別された場合(S8:NO)、警告を発する警告工程(S9)を行う。
【0057】
なお、所定の作業範囲に親綱30が存在しなくとも安全確保が図られるまで、当該作業範囲に親綱は存在する。すなわち、管理者が親綱30の除去を指示するまで親綱30は同じ経路で存在し続ける。そのため、親綱30が除去されるまで、支持体位置特定部140が特定する支持体22の位置、親綱範囲設定部150が設定する親綱30が存在し得る範囲、及び親綱経路特定部160が特定する親綱30の経路は変化しない。そこで、支持体位置特定工程(S4)から仮想親綱位置推定工程(S7)は、親綱30が除去されるまで省略してもよい。
【0058】
また、親綱範囲設定部150が設定した範囲内において、親綱経路特定部160が親綱30の経路を特定できない場合(S6:NO)であっても、親綱30が変化しない間であれば、それ以前に特定した親綱30の経路を仮想親綱の経路としてもよい。
【0059】
上述した安全帯使用状況管理システム100及びこれを用いた安全帯使用状況管理方法によれば、現場画像から、支持体22の位置を現場画像から識別の容易な識別部の位置に基づいて特定している。このため、親綱30がその間に掛け渡されている支持体22を識別部40の有無により特定することができる。これにより、作業の進捗状況などに応じて親綱30が支持されていない支持体22を除いて実際に親綱30を支持する支持体22を特定することができるので、親綱30の経路を簡易かつ確実に特定することが可能となる。
【0060】
また、現場画像から親綱30の経路を特定できない場合であっても、仮想親綱推定部170が推定した仮想親綱の経路の範囲とフック13との位置関係からフック13が親綱30に引っ掛かっているか否かを判別することができる。これにより、逆光等の天候状況や背景の画像などによっては、現場画像から親綱30の画像を識別することができない場合であっても、フック13の使用状況を簡易かつ確実に判別することが可能となる。
【0061】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、仮想親綱位置推定部170及び仮想親綱位置推定工程(S7)を備えないものであってもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…安全帯、 11…ベルト、 12…ロープ、 13…フック、 20…支柱、 21…支柱本体、 22…保持金具、支持体(支持部)、 30…親綱、 31…フック部、 32…ロープ、 40…識別部、 50…撮像装置、 100…安全帯使用状況管理システム、 110…画像取得部、 120…作業者位置特定部、 130…フック位置特定部、 140…支持体位置特定部、 150…親綱範囲設定部、 160…親綱経路特定部、 170…仮想親綱推定部、 180…判定部、 190…警告部、 A…作業者、 N…ネットワーク。
図1
図2
図3