(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137365
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】熱交換器の伝熱チューブ用封止器具
(51)【国際特許分類】
F28D 7/16 20060101AFI20230922BHJP
F28F 1/40 20060101ALI20230922BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
F28D7/16 A
F28F1/40 Z
F28F21/08 G
F28F21/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043547
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】591107333
【氏名又は名称】株式会社SPF
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼安 彰
(72)【発明者】
【氏名】大塚 真言
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA13
(57)【要約】
【課題】複数の伝熱チューブを備えた熱交換器における一部の伝熱チューブに欠陥が生じた場合に、欠陥の伝熱チューブを簡単に封止できる伝熱チューブ用封止器具を提供する。
【解決手段】伝熱チューブ用封止器具1は、伝熱チューブ101に挿入される棒状部2と、棒状部2の両端6に装着されるブッシュ10及びナット18と、伝熱チューブ101の出入口103、104を封止する第1シール材20及び第2シール材21とを備える。ブッシュ10は、棒状部2の端に設けられる雄ネジ部6に装着されて、伝熱チューブ101を支持する管板120の外側から伝熱チューブ101の出入口103、104を塞ぐ。ナット18は雄ネジ部6に螺合により締結する。第1シール材20は、ブッシュ10と管板120の間に挟み込まれ、かつ、管板120の穴122aを囲むように設けられる。第2シール材21は、伝熱チューブ101の内周面と棒状部2の間に設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度調整対象の流体を流して、前記流体へ伝熱させるための複数の伝熱チューブと、
各々の前記伝熱チューブの端部が挿入される前記伝熱チューブごとの穴が形成された外表面を有する管板とを備える熱交換器に適用され、
前記伝熱チューブ内に挿入される棒状部と、
前記棒状部の両端のそれぞれに設けられて、前記外表面の外側から前記伝熱チューブの出入口を塞ぐ閉塞部と、
前記閉塞部との間で前記伝熱チューブを封止するシール部とを備え、
少なくとも一方の前記閉塞部は前記棒状部に着脱可能である、
熱交換器の伝熱チューブ用封止器具。
【請求項2】
前記棒状部と前記閉塞部とは螺合により接続する請求項1に記載の熱交換器の伝熱チューブ用封止器具。
【請求項3】
前記棒状部の端部は、前記伝熱チューブに挿入されたときに前記外表面の前記穴から外側に突出するとともに、外周にネジ山が形成された雄ネジ部であり、
前記閉塞部は、
前記雄ネジ部が挿入される貫通穴が形成されて、前記シール部の位置を保持するシール保持部を有した本体部と、
前記本体部の前記貫通穴から突出した前記雄ネジ部に締結する雌ネジ部とを備える請求項1又は2に記載の熱交換器の伝熱チューブ用封止器具。
【請求項4】
前記棒状部は、棒状本体と、前記棒状本体の端部に接続された、前記閉塞部が取り付けられる取付部とを備え、
前記取付部は前記棒状本体よりも耐酸性の高い材料で形成される請求項1~3のいずれか1項に記載の熱交換器の伝熱チューブ用封止器具。
【請求項5】
前記シール部は、前記閉塞部と前記外表面との間に設けられる外側シール部を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の熱交換器の伝熱チューブ用封止器具。
【請求項6】
前記シール部は、前記閉塞部と前記棒状部との間で前記伝熱チューブの内周面に接触するように設けられる内側シール部を含む請求項1~5のいずれか1項に記載の熱交換器の伝熱チューブ用封止器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の伝熱チューブを備えた熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、温度調整対象の流体を流して、その流体へ伝熱させるための複数の伝熱チューブを備えた多管式熱交換器が知られている(例えば特許文献1参照)。伝熱チューブの両端の位置には管板が設けられており、伝熱チューブの端部はその管板に形成された伝熱チューブごとの穴に挿入される形態で支持されている。また、特許文献1には、酸洗プロセスラインにおける酸洗液の温度を調整する熱交換器の、酸洗液と接触する部材又は部分が高融点活性材料(チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル等の金属若しくはこれらの合金)で構成されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の熱交換器にあっては、伝熱チューブを流れる流体中に混入した異物や、熱交換器の稼働と停止が繰り返されることによる温度変化により生じる熱応力などにより、伝熱チューブ、又は伝熱チューブと管板との溶接部などに表面欠陥、貫通穴などの損傷が生じる場合がある。また、メンテンナンス時に伝熱チューブに物がぶつかってしまうと、伝熱チューブが変形してしまう場合もある。
【0005】
このような場合、欠陥の伝熱チューブから流体が漏れてしまうのを防ぐための処置が必要となる。ところが、伝熱チューブは管板に溶接されており、簡単には取り外しができない。また、伝熱チューブ及び管板が高融点活性材料(タンタル、タンタル合金、ニオブ、ニオブ合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、チタン、チタン合金など)で構成されている場合、高融点活性材料に対してガスシールドアーク溶接を行うときの、不活性ガスによるシールドが現場では難しい。そのため、従来では、熱交換器を設置現場から外して、修理工場に持ち込み、修理工場において、欠陥の伝熱チューブを新しい伝熱チューブに交換し、又は欠陥の伝熱チューブに対して補修溶接を行うなどの処置を実施していた。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、一部の伝熱チューブに欠陥が生じた場合に、修理工場に持ち込まなくても、欠陥の伝熱チューブから流体の漏れを防ぐ処置を設置現場で簡単に行うことができる発明を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の熱交換器の伝熱チューブ用封止器具は、
温度調整対象の流体を流して、前記流体へ伝熱させるための複数の伝熱チューブと、
各々の前記伝熱チューブの端部が挿入される前記伝熱チューブごとの穴が形成された外表面を有する管板とを備える熱交換器に適用され、
前記伝熱チューブ内に挿入される棒状部と、
前記棒状部の両端のそれぞれに設けられて、前記外表面の外側から前記伝熱チューブの出入口を塞ぐ閉塞部と、
前記閉塞部との間で前記伝熱チューブを封止するシール部とを備え、
少なくとも一方の前記閉塞部は前記棒状部に着脱可能である。
【0008】
本発明の熱交換器の伝熱チューブ用封止器具によれば、閉塞部及びシール部により、伝熱チューブを封止できるので、伝熱チューブ内に流体が入るのを抑制でき、ひいては伝熱チューブから流体が漏れてしまうのを抑制できる。また、棒状部の両端のそれぞれに設けられた閉塞部の少なくとも一方は棒状部に着脱可能なので、閉塞部を棒状部から取り外した状態で、棒状部を対象の伝熱チューブ内に挿入できる。その後、伝熱チューブに挿入された状態の棒状部に閉塞部を取り付けることで、その閉塞部で、管板外表面の外側から伝熱チューブの出入口を塞ぐことができるとともに、シール部の位置を保持させた状態にできる。また、管板の外側に閉塞部が設けられることで、伝熱チューブ用封止器具が伝熱チューブから外れてしまうのを抑制できる。以上より、一部の伝熱チューブに欠陥が生じた場合に、修理工場に持ち込まなくても、欠陥の伝熱チューブから流体の漏れを防ぐ処置(具体的には伝熱チューブを封止する処置)を設置現場で簡単に行うことができる。なお、本発明の「棒状部」における「棒状」とは、中空の棒(つまり管、筒)と中実の棒の両方を含む意味である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】伝熱チューブに伝熱チューブ用封止器具が取り付けられた状態の断面図である。
【
図2】伝熱チューブ用封止器具の一部を構成する棒状部の断面図である。
【
図3】伝熱チューブ用封止器具の一部を構成するブッシュの断面図である。
【
図4】伝熱チューブ用封止器具の一部を構成するナットの断面図(同図(a))及び平面図(同図(b))である。
【
図5】伝熱チューブ用封止器具の一部を構成する第1シール材の断面図である。
【
図6】伝熱チューブ用封止器具の一部を構成する第2シール材の断面図である。
【
図9】熱交換器の伝熱チューブ及びこの端部を支持する管板の断面図であって、伝熱チューブ用封止器具が取り付けられていない状態を示す図である。
【
図10】熱交換器の伝熱チューブ及びこの端部を支持する管板の断面図であって、管板外面部の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は熱交換器の伝熱チューブに、本実施形態の伝熱チューブ用封止器具を取り付けた状態を示している。また、
図2~
図6は、伝熱チューブ用封止器具を構成する各部品を示している。また、
図7~
図9は、伝熱チューブ用封止器具の取付対象となる熱交換器を示している。先ず、
図7~
図9を参照して、熱交換器について説明する。
【0011】
図7の熱交換器100は、複数の伝熱チューブ101を備えた多管式熱交換器として構成されている。熱交換器100は、例えば熱延鋼帯、冷延鋼板、ステンレス鋼帯等のデスケーリングのために、高温・高濃度の塩酸又は硫酸等の酸洗液を用いる酸洗プロセスラインにおいて、その酸洗液の温度を調整(例えば70~120℃程度に調整)するために用いられる。
【0012】
熱交換器100は、複数の伝熱チューブ101と、ハウジング110と、管板120とを備えている。各伝熱チューブ101は、温度調整対象の流体を流して、外部(熱媒又は冷媒)とその流体との間で熱を伝導させるための管である。なお、温度調整対象の流体は例えば上記酸洗液(塩酸、硫酸等)である。各伝熱チューブ101は真っすぐに伸びた管状(言い換えれば円筒状)に形成されている。また、各伝熱チューブ101は互いに同一形状(同一長さ及び同一径)かつ同一材料で形成されている。また、熱交換器100のコストを抑えるために、伝熱チューブ101の厚みは例えば1mm以下としてよい。
【0013】
また、複数の伝熱チューブ101はハウジング110内において、伝熱チューブ101の軸線L2に直角な方向に間隔をあけて互いに平行に設けられる。各伝熱チューブ101の両端部102は管板120に支持されている。具体的には、各端部102は、管板120に形成された貫通穴121a、122a(
図8、
図9参照)に挿入された形態で管板120に支持されている。端部102の外周面は貫通穴121a、122aの内周面に接触している。また、端部102の先端に位置する開口103、104の外周部と、管板120の外表面であるシート面122に形成された穴122aの外周部とが溶接123により固定されている(
図9参照)。
【0014】
伝熱チューブ101の軸線L2方向における先端に形成される一方の開口103(
図7、
図9の紙面で左側の開口)は伝熱チューブ101への流体(温度調整前の流体)の入口に定められる。その入口103の、伝熱チューブ101の軸線L2方向における位置は、複数の伝熱チューブ101の間で互いに同一の位置に設定される。また、入口103は管板120の外表面であるシート面122に位置する(
図7、
図9参照)。伝熱チューブ101の他方の開口104は、伝熱チューブ101からの流体(温度調整後の流体)の出口に定められる。その出口104の、伝熱チューブ101の軸線L2方向における位置は、複数の伝熱チューブ101の間で互いに同一の位置に設定される。また、出口104は、入口103を支持する管板120と反対側の管板120のシート面122に位置する(
図7、
図9参照)。
【0015】
伝熱チューブ101は、ハウジング110内に供給される熱媒又は冷媒と、伝熱チューブ101内を流れる流体との間で伝熱が可能な材料(具体的には例えば金属)で形成される。なお、熱媒又は冷媒は例えば気体(高温の蒸気又は冷気)でもよいし、液体でもよい。また、伝熱チューブ101は、例えば高温かつ高濃度の酸に耐性を有する材料(耐酸性かつ耐熱性の材料)で形成され、具体的には例えば高融点活性材料で形成される。高融点活性材料は、例えばタンタル(Ta)、タンタル合金、ジルコニウム(Zr)、ジルコニウム合金、ニオブ(Nb)、ニオブ合金、チタン(Ti)、チタン合金である。タンタル、ジルコニウム、ニオブ、チタンのうち、最も耐酸性かつ耐熱性を有しているのはタンタルである。また、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、チタンのうち最も安価なものはチタンであるが、タンタル、ジルコニウム、ニオブに比べると耐酸性又は耐熱性に劣る。なお、高融点活性材料としては、上記タンタル等の材料以外に、モリブデン、モリブデン合金、タングステン、タングステン合金もある。
【0016】
ハウジング110は、内側に、各伝熱チューブ101を収容するとともに、熱媒又は冷媒が供給される空間111を有した形状に形成される。本実施形態では、ハウジング110は、伝熱チューブ101の軸線L2に平行な中心軸線L1(
図7参照)を有した管状に形成されている。ハウジング110は、内側空間111内に熱媒又は冷媒を入れる導入部112と、内側空間111から熱媒又は冷媒を排出する排出部113とを備える。導入部112及び排出部113は、ハウジング110の中心軸線L1に直角な方向(径方向)から熱媒又は冷媒を導入又は排出するように設けられる。また、導入部112及び排出部113は、中心軸線L1の方向における互いに反対側に位置する。すなわち、導入部112は、2つの管板120のうちの一方(
図7の紙面で右側の管板120)に寄った位置に設けられる。これに対して、排出部113は他方の管板120(
図7の紙面で左側の管板120)に寄った位置に設けられる。伝熱チューブ101の出口104は排出部113よりも導入部112に近い位置に設けられる。伝熱チューブ101の入口103は導入物112よりも排出部113に近い位置に設けられる。すなわち、内側空間111における熱媒又は冷媒の流れ方向は、伝熱チューブ101内を流れる温度調整対象の流体の流れ方向と逆方向に設定されている。
【0017】
また、導入部112及び排出部113は、中心軸線L1に直角な方向において互いに反対側に位置する。導入部112は
図7の紙面で上側に位置しているのに対し、排出部113は下側に位置している。
【0018】
ハウジング110は耐熱性を有する材料で形成され、例えばステンレス鋼、銅などの金属で形成される。なお、ハウジング110に、高温・高濃度の塩酸又は硫酸等の酸洗液が接触することは想定していないので、ハウジング101は伝熱チューブ101よりも耐酸性が劣る材料で形成されてよい。
【0019】
管板120は、ハウジング110の中心軸線L1の方向における両端を塞ぐように該両端のそれぞれに設けられている。各管板120は、上述したように、各伝熱チューブ101の端部102を支持する。管板120は、
図8、
図9に示すように、管板本体121と外面部122とを備える。管板本体121はハウジング110の端を塞ぐとともに、外面部122を支持する。具体的には、管板本体121は、ハウジング110の外径よりも大きい径の円板状に形成されている。管板本体121の径方向の中心が、ハウジング110の中心軸線L1上に位置する。管板本体121の厚み(ハウジング110の中心軸線L1に平行な方向いおける板厚)は外面部122よりも大きい。また、管板本体121は、ハウジング110に対して径方向外側に張り出した張出部を有する。
【0020】
管板本体121は、各伝熱チューブ101が挿入される貫通穴121aが形成されている。管板本体121に、温度調整対象の流体(酸洗液)が接触することは想定していないので、管板本体121は外面部122及び伝熱チューブ101よりも耐酸性が劣る材料で形成されてよい。具体的には例えば管板本体121はステンレス鋼、銅などの金属で形成される。
【0021】
外面部122は管板120の外表面(シート面)を形成する部材である。外面部122は、管板本体121よりも小さい板厚、かつ管板本体121よりも小さい径の円板状に形成されている。外面部122は、管板本体121の表面に固定されている。このとき、外面部122の中心と管板本体121の中心とが一致している。
【0022】
外面部122には、伝熱チューブ101ごとの貫通穴122aが形成されている。この穴122aは、
図9に示すように、伝熱チューブ101の軸線L2又はハウジング110の中心軸線L1に平行な方向かつ外側に突出するように設けられる。なお、
図10の変形例の管板外面部130のように、伝熱チューブ101ごとの貫通穴131が外側に突出せずに、管板外面部130がフラットに構成されてもよい。以下では、
図9の管板外面部122の説明をするが、以下の説明の内容は
図10の外面部130にも当てはまる。外面部122の穴122aの中心軸線と、管板本体121の貫通穴121aの中心軸線とが一致している。また、穴122aの径は、管板本体121の貫通穴121aの径と同じである。各穴122aに、伝熱チューブ101の端部102が挿入されている。上述したように、穴122aの先端外周部には、伝熱チューブ101の出入口103、104の外周部を固定する溶接部23が設けられる。
【0023】
外面部122には温度調整対象の流体(酸洗液)が接触する。そのため、外面部122は、伝熱チューブ101と同様に、耐酸性かつ耐熱性の材料で形成されている。具体的には、上記高融点活性材料(タンタル(Ta)、タンタル合金、ジルコニウム(Zr)、ジルコニウム合金、ニオブ(Nb)、ニオブ合金、チタン(Ti)、チタン合金など)で形成されている。より具体的には、外面部122は、高融点活性材料のうちの、伝熱チューブ101と同じ材料で形成されている。また、外面部122は、管板本体121よりも耐酸性が高い材料で形成されてよい。
【0024】
上記した構成を備えた熱交換器100は、ハウジング110の中心軸線L1が鉛直方向に向くように設けられてもよいし、中心軸線L1が水平方向に向くように設けられてもよい。熱交換器100は、
図7の左側から各伝熱チューブ101に流体が導入されるとともに、ハウジング110内に熱媒や冷媒が導入される。各伝熱チューブ101に導入された流体は熱媒によって温められたり冷媒によって冷やされた後、
図7の右側へと流出する。
【0025】
次に、
図1~
図6を参照して、伝熱チューブ用封止器具1(以下、単に封止器具という場合がある)について説明する。封止器具1は、
図2の棒状部2と、
図3のブッシュ10と、
図4のナット18と、
図5の第1シール材20と、
図6の第2シール材21とを備えている。
【0026】
図2の棒状部2は筒部3とボルト部4とを備える。筒部3は、真っすぐに伸びた円筒状(言い換えれば管状)に形成されている。筒部3の外径は、伝熱チューブ101の内径より小さい径に定められる。すなわち、筒部3が伝熱チューブ101内に挿入された状態で、筒部3の外周面と伝熱チューブ101の内周面との間に隙間を有している。
【0027】
また、筒部3の長さは、伝熱チューブ101よりも短いが、伝熱チューブ101の長さに近い長さに定められている。具体的には、筒部3の長さは、例えば、伝熱チューブ101内に筒部3が挿入されたときに、筒部3の端部(ボルト部4との接合部)が管板本体121の貫通穴121a内に位置するように定められている。また、筒部3の長さは、例えば伝熱チューブ100に形成された穴、傷等の欠陥部105(
図1参照)を内側から覆うように定められる。
【0028】
筒部3は高融点活性材料(タンタル(Ta)、タンタル合金、ジルコニウム(Zr)、ジルコニウム合金、ニオブ(Nb)、ニオブ合金、チタン(Ti)、チタン合金など)で形成されている。なお、筒部3は、ボルト部4、ブッシュ10、及びナット18に比べて温度調整対象の流体(酸洗液)に接触する可能性が低い。そこで、筒部3は、ボルト部4、ブッシュ10、及びナット18よりも耐酸性に劣る材料(安価な材料)で形成されてよい。ただし、ボルト部4が高融点活性材料で形成される場合に、筒部3が高融点活性材料以外の材料で形成されると、筒部3とボルト部4との溶接による固定が難しくなる。そこで、筒部3とボルト部4との溶接による固定を容易にするために、筒部3は上記高融点活性材料の中で、ボルト部4よりもコストが安い材料(例えばチタン)で形成されてよい。これによれば、封止器具1のコストを抑えることができる。なお、これに限定されず、筒部3は、ボルト部4と同一材料で形成されてもよい。なお、筒部3が本発明の棒状本体に相当する。
【0029】
ボルト部4は、
図4のナット18と螺合により接続可能な接続部である。ボルト部4は、筒部3の両端のそれぞれに設けられている。各ボルト部4は、筒部3に溶接により固定されて、筒部3と一体化されている。すなわち、ボルト部4と筒部3との接合部9には溶接部が含まれる。各ボルト部4は、具体的には、筒部3の端部に溶接により固定される基部5と、基部5から突出する雄ネジ部6とを有する。基部5の側面には、雄ネジ部6の軸線L4に直角な方向に突出する凸部7が形成されている。凸部7は、軸線L4周りの全周に亘って連続して形成されている。換言すれば、凸部7は、軸線L4に直角な断面で見て、軸線L4を中心とした円を描くように形成される。凸部7は、
図6の第2シール材21を着座させる着座部として機能する。言い換えれば、凸部7は、第2シール材21が棒状部2に装着された状態(つまり
図1の状態)で、軸線L4の方向における筒部3の側への第2シール材21の移動を規制する規制部である。凸部7は、棒状部2が伝熱チューブ101内に挿入された状態(
図1の状態)で、伝熱チューブ101の内周面に接触するよう形成されてもよいし、該内周面との間で若干隙間を有するように形成されてもよい。
【0030】
基部5の、凸部7よりも雄ネジ部6側の外周側面8は、軸線L4に直角な断面で見て、軸線L4を中心とした円を描くように形成される。
図1の状態では、外周側面8の外側に環状の第2シール材21が装着される。言い換えれば、第2シール材21の内側に外周側面8が挿入される。
図1の状態では、外周側面8と第2シール材21の内周面とが接触する。このように、外周側面8は第2シール材21の内周面を支持する支持部として機能する。
【0031】
雄ネジ部6は、基部5と同一材料で一体に形成されている。また、雄ネジ部6はボルト部4の軸線L4を規定する丸棒状に形成される。雄ネジ部6は基部5よりも小径に形成されている。雄ネジ部6の外周面には、
図4のナット18と螺合締結するネジ溝が形成されている。雄ネジ部6は、その軸線L4が筒部3の軸線L3と一致するように、かつ、筒部3から遠ざかる方向に基部5から突出するように設けられる。なお、筒部3の両端に設けられる2つのボルト部4は、基部5からの雄ネジ6の突出方向が互いに反対方向である点を除いて、互いに同一形状に形成されている。
【0032】
ボルト部4(雄ネジ部6)の長さは、封止器具1が伝熱チューブ101に取り付けられた状態(
図1の状態)で、管板120の外表面122(シート面)から外側に突出し、なおかつ、ブッシュ10からも突出するように定められる。
【0033】
ボルト部4は、高融点活性材料(タンタル(Ta)、タンタル合金、ジルコニウム(Zr)、ジルコニウム合金、ニオブ(Nb)、ニオブ合金、チタン(Ti)、チタン合金など)で形成されている。なお、ボルト部4は、筒部3に比べて温度調整対象の流体(酸洗液)に接触する可能性が高い。そこで、ボルト部4は、高融点活性材料のうち、筒部3よりも耐酸性の高い材料(例えばタンタル)で形成されてよい。また、ボルト部4は、高融点活性材料のうち、ブッシュ10又はナット18と同一材料で形成されてもよいし、異なる材料で形成されてもよい。なお、ボルト部4が本発明の雄ネジ部及び取付部に相当する。
【0034】
図3のブッシュ10は、封止器具1が伝熱チューブ101に取り付けられた状態(
図1の状態)で、棒状部2の両端6(雄ネジ部)のそれぞれに設けられる。2つのブッシュ10は互いに同一形状かつ同一材料で形成されている。ブッシュ10は、ボルト部4(雄ネジ部6)に着脱可能であり、管板120の外表面122の外側から伝熱チューブ101の出入口103、104を塞ぐための部材である。また、ブッシュ10は、管板120の外表面122との間で
図5の第1シール20材を挟み込むための部材である。さらに、ブッシュ10は、ボルト部4の凸部7との間で
図6の第2シール材21を挟み込むための部材である。また、ブッシュ10は、第1シール材20を介して間接的に又は直接に管板120の外表面122に接触することで、封止器具1が伝熱チューブ101から外れないようにするための部材である。すなわち、ブッシュ10は、外表面122の外側に設けられて、管板120の穴122aよりも大径に形成される。
【0035】
ブッシュ10は貫通穴11を有した筒状に形成されている。貫通穴11は雄ネジ部6を挿入させるための穴である。なお、貫通穴11の内周面にはネジ溝が形成されていない。貫通穴11の径は、雄ネジ部6が挿入された状態で、雄ネジ部6の外周面と貫通穴11の内周面とが接触するよう定められてもよいし、それら外周面と内周面との間に若干隙間を有するように定められてもよい。ブッシュ10の軸線L5(貫通穴11の中心軸線)方向における一方の端面17は平坦面に形成されている。この端面17は、
図1の状態でナット18側を向いた面であり、ナット18が着座する着座面に設定される。すなわち、端面17は、雄ネジ部6とナット18との嵌合量を規定する面である。
【0036】
ブッシュ10の軸線L5方向における端面17と反対側の端部18は、
図1の状態で管板120の外表面122の方を向く。その端部18には、軸線L5に平行な方向に突出する突出部12が形成されている。突出部12は、軸線L5周りの全周に亘って連続して形成されている。換言すれば、突出部12は、軸線L5に直角な断面で見て、軸線L5を中心とした円を描くように形成される。この突出部12は、
図1の状態において、管板120の外表面122の外側から、管板120の外表面122の穴122a及び伝熱チューブ101の内側に入って、ボルト部4の凸部7との間で第2シール材21を挟み込むための部分である。
図1の状態では、突出部12の先端13側の一部がボルト部4の基部5の側面の外側を囲むとともに、突出部12の先端13が第2シール材21に接触している。
図1の状態において、突出部12は、管板120の穴122aの内周面に接触してもよいし、その内周面と突出部12との間で若干隙間を有してもよい。このように、突出部12は、軸線L5の方向における貫通穴11の側への第2シール材21の移動を規制する規制部として機能し、言い換えれば、第2シール材21の位置を保持するシール保持部として機能する。
【0037】
また、端部18の、突出部12より径方向外側かつ突出部12の隣りの位置に、凹部14が形成されている。この凹部14は、管板120の外表面122から突出するように形成された環状部122a(穴122aを形成する部分)を入れるための部分である。凹部14は、軸線L5周りの全周に亘って連続して形成されている。換言すれば、凹部14は、軸線L5に直角な断面で見て、軸線L5を中心とした円を描くように形成される。
【0038】
さらに、端部18は、凹部14より径方向外側かつ凹部14の隣りの位置に、外側部15を有する。外側部15は、軸線L5周りの全周に亘って連続して形成されている。換言すれば、外側部15は、軸線L5に直角な断面で見て、軸線L5を中心とした円を描くように形成される。外側部15は、
図1の状態で、管板120の外表面122に形成された穴122aよりも径方向外側に位置する。すなわち、外側部15は、
図1の状態で、外表面122の穴122aの周りを全周に亘って囲むように設けられる。
【0039】
外側部15は、外表面122との間で第1シール材20を挟み込むための部分である。具体的には、外側部15の、軸線L5方向における端面には凹部16が形成されている。凹部16は、軸線L5周りの全周に亘って連続して形成されている。換言すれば、凹部16は、軸線L5に直角な断面で見て、軸線L5を中心とした円を描くように形成される。凹部16は、第1シール材20の軸方向における一部を入れて、第1シール材20の位置を保持するための部分である。すなわち、凹部16は第1シール材20の位置を保持するシール保持部として機能する。
【0040】
ブッシュ10は、高融点活性材料(タンタル(Ta)、タンタル合金、ジルコニウム(Zr)、ジルコニウム合金、ニオブ(Nb)、ニオブ合金、チタン(Ti)、チタン合金など)で形成されている。なお、ブッシュ10は、筒部3に比べて温度調整対象の流体(酸洗液)に接触する可能性が高い。そこで、ブッシュ10は、高融点活性材料のうち、筒部3よりも耐酸性の高い材料(例えばタンタル)で形成されてよい。また、ブッシュ10は、高融点活性材料のうち、ボルト部4又はナット18と同一材料で形成されてもよいし、異なる材料で形成されてもよい。
【0041】
図4のナット18は、封止器具1が伝熱チューブ101に取り付けられた状態(
図1の状態)で、棒状部2の両端6(雄ネジ部)のそれぞれに設けられる。2つのナット18は互いに同一形状かつ同一材料で形成されている。ナット18は、ボルト部4(雄ネジ部6)に着脱可能である。具体的には、ナット18は貫通穴19を有した筒状に形成されている。この貫通穴19の内周面にネジ溝が形成されている。なお、ナット18は例えば六角ナットとしてよい(
図4(b)参照)。ナット18は、
図1に示すように、ブッシュ10が装着された雄ネジ部6の、ブッシュ10から突出した部分に螺合締結することで、管板120の外表面122との間でブッシュ10を挟み込みための部材である。
【0042】
ナット18は、高融点活性材料(タンタル(Ta)、タンタル合金、ジルコニウム(Zr)、ジルコニウム合金、ニオブ(Nb)、ニオブ合金、チタン(Ti)、チタン合金など)で形成されている。なお、ナット18は、筒部3に比べて温度調整対象の流体(酸洗液)に接触する可能性が高い。そこで、ナット18は、高融点活性材料のうち、筒部3よりも耐酸性の高い材料(例えばタンタル)で形成されてよい。また、ナット18は、高融点活性材料のうち、ボルト部4又はブッシュ10と同一材料で形成されてもよいし、異なる材料で形成されてもよい。なお、ナット18が本発明の雌ネジ部に相当する。また、ブッシュ10及びナット18が本発明の閉塞部に相当する。ブッシュ10が閉塞部の本体部に相当する。
【0043】
図5の第1シール材20は、欠陥を有した伝熱チューブ101内に温度調整対象の流体が入らないよう、伝熱チューブ101の出入口103、104を封止するための部材である。具体的には、
図1に示すように、第1シール材20は、ブッシュ10に形成された凹部14に第1シール材20の一部が嵌められて、ブッシュ10の外側部15と、管板120の外表面122との間に挟み込まれた状態に設けられる。このように、第1シール材20は、ブッシュ10と外表面122との間を封止するためのシール部であり、換言すれば、外表面122の穴122aの周囲を取り囲むように封止するシール部である。
【0044】
第1シール材20は、封止器具1が伝熱チューブ101に取り付けられた状態(
図1の状態)で、伝熱チューブ101の入口103側と出口104側のそれぞれに1個ずつ設けられる。2つの第1シール材20は互いに同一形状かつ同一材料で形成されている。
【0045】
第1シール材20は、
図6の第2シール材21よりも大径の環状に形成されている。なお、
図5では、第1シール材20の断面が四角形の例(つまり、第1シール材20が角リングの例)を示しているが、断面が円形のOリングであってもよい。
【0046】
また、第1シール材20は、例えばエラストマー(弾性体、ゴム)で形成されている。具体的には、第1シール材20は、耐熱性及び耐腐食性(耐薬品性、耐酸性)の高い材料で形成されており、例えば、パーフロロエラストマーと分類される高分子材料であるカルレッツ(登録商標)で形成されている。カルレッツ(登録商標)(パーフロロエラストマー)は、主鎖部(TFE:テトラフルオロエチレン)、枝分れ部(PMVE:パーフロロメチルビニルエーテル)、及び架橋部から成るフッ素系高分子である。なお、一般的なシール材の材料としては、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、シリコンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン等)などがある。熱交換器100の使用環境に耐えることができるのであれば、第1シール材20は、パーフロロエラストマー以外の材料で形成されてもよい。なお、第1シール材20が本発明のシール部及び外側シール部に相当する。
【0047】
図6の第2シール材21は、欠陥を有した伝熱チューブ101内に温度調整対象の流体が入らないよう、伝熱チューブ101の出入口103、104を封止するための部材である。具体的には、
図1に示すように、第2シール材21は、ボルト部4の基部5の外側に嵌めこまれて、伝熱チューブ101の内側において、基部5の凸部7と、ブッシュ10の突出部12との間に挟み込まれた状態に設けられる。また、第2シール材21は、
図1の状態で、伝熱チューブ101の内周面と棒状部2の側面(ボルト部4の基部5の側面)との間に設けられる。このとき、第2シール材21は、伝熱チューブ101の内周面と棒状部2の側面のそれぞれに接触している。このように、第2シール材21は、ブッシュ10(突出部12)とボルト部4の基部5(凸部7)との間、及び、伝熱チューブ101の内周面と棒状部2の側面(基部5の側面)との間を封止するシール部である。
【0048】
第2シール材21は、封止器具1が伝熱チューブ101に取り付けられた状態(
図1の状態)で、伝熱チューブ101の入口103側と出口104側のそれぞれに2個ずつ設けられる。合計4つの第2シール材21は互いに同一形状かつ同一材料で形成されている。なお、本実施形態では、片側に2個の第2シール材21が設けられる例を示したが、所望のシール性能を確保できるのであれば、片側に1個の第2シール材21が設けられてもよい。また、片側に3個以上の第2シール材21が設けられてもよい。
【0049】
第2シール材21は、
図5の第1シール材20よりも小径の環状に形成されている。なお、
図6では、第2シール材21の断面が円形の例(つまり、第2シール材21がOリングの例)を示しているが、断面が四角形の角リングであってもよい。
【0050】
また、第2シール材21は、第1シール材20と同様に、例えばエラストマー(弾性体、ゴム)で形成されている。具体的には、第2シール材21は、耐熱性及び耐腐食性(耐薬品性、耐酸性)の高い材料で形成されており、例えば、上述のカルレッツ(登録商標)で形成されている。なお、第2シール材21は第1シール材20と同じ材料で形成されてもよいし、異なる材料で形成されてもよい。また、熱交換器100の使用環境に耐えることができるのであれば、第2シール材21は、パーフロロエラストマー以外の材料で形成されてもよい。なお、第2シール材21が本発明のシール部及び内側シール部に相当する。
【0051】
上述の構成を有する封止器具1は、欠陥を有した伝熱チューブ101に取り付けられるように用いられる。例えば、温度調整対象の流体中に石等の異物が混入した場合には、この異物により、伝熱チューブ101に穴又は傷等の欠陥部105(
図1、
図9参照)が形成されることがある。また、熱交換器100は稼働時には高温になる一方で停止時には低温となる。熱交換器100の稼働と停止が繰り返されることによる温度変化によって、熱交換器100の各部(伝熱チューブ101及びそれを支持する管板120など)に熱応力が発生する。この熱応力により、伝熱チューブ101と管板120との溶接部123(
図9参照)が切断されたり、伝熱チューブ101の側面に欠陥部105(
図9参照)が発生したりすることがある。特に、伝熱チューブ101が上記高融点活性材料で形成され、管板120が高融点活性材料以外の材料(ステンレス鋼など)で形成される場合には、伝熱チューブ101の材料と管板120の材料との線膨張係数が異なることで、伝熱チューブ101に大きな応力が加わることがある。さらに、熱交換器100のメンテナンス時や稼働中に、伝熱チューブ101に物や内容物がぶつかってしまうと、伝熱チューブ101が変形してしまうこともある。
【0052】
伝熱チューブ101は、管板120に溶接されており、また、伝熱チューブ101の材料と管板120の材料との線膨張係数の違いにより、伝熱チューブ101は管板120の穴121a、122aの内周面に強く固着しているので、伝熱チューブ101に欠陥が生じたとしても簡単には取り外しができない。
【0053】
このような場合に、欠陥を有した伝熱チューブ101に封止器具1が
図1のように取り付けられる。なお、欠陥を有しない伝熱チューブ101には封止器具1は取り付けられない。
【0054】
以下、封止器具1を伝熱チューブ101に取り付ける手順の一例を説明する。なお、封止器具1を伝熱チューブ101に取り付ける前に予め、伝熱チューブ101の両端を支持する各管板120の外表面122を露出させておく。先ず、
図2の棒状部2の両端4(ボルト部)のそれぞれに
図6の第2シール材21を装着させる。本実施形態では、各ボルト部4にそれぞれ2個の第2シール材21を装着させる。このとき、第2シール材21を、ボルト部4の基部5の外側に装着させる。第2シール材21は、基部5の凸部7及び外周側面8に支持される。
【0055】
次に、第2シール材21が装着された棒状部2を、封止対象の伝熱チューブ101の内側に挿入する。このとき、棒状部2を、伝熱チューブ101の入口103側から挿入してもよいし、出口104側から挿入してもよい。そして、棒状部2の両側の雄ネジ部6を、管板120の外表面122の穴122a(言い換えれば、伝熱チューブ101の出入口103、104)から外側に突出させる。
【0056】
なお、上記では、棒状部2を伝熱チューブ101に挿入する前に予め棒状部2に第2シール材21を装着させていた。これに代えて、棒状部2を伝熱チューブ101に挿入した後に、第2シール材21を棒状部2の基部5の外側に装着させてもよい。
【0057】
次に、
図3のブッシュ10の凹部16に
図5の第1シール材20を嵌める(装着させる)。そして、伝熱チューブ101に挿入された棒状部2の各雄ネジ部6に、第1シール材20が装着されたブッシュ10を挿入する。その後、ブッシュ10の貫通穴11から突出した雄ネジ部6に、
図4のナット18を締結させる。これにより、
図1に示すように、管板120の外側の穴122a及び伝熱チューブ101の出入口103、104は管板120の外表面122の外側からブッシュで塞がれる。加えて、第1シール材20は、ブッシュ10と管板120の外表面122との間に挟みこまれる。さらに、第2シール材21は、基部5の凸部7とブッシュ10の突出部12との間に挟み込まれる。以上により、封止器具1が伝熱チューブ101に取り付けられた状態(
図1の状態)となる。
【0058】
なお、上記では、棒状部2を伝熱チューブ101に挿入した後に、棒状部2の両端6のそれぞれに第1シール材20、ブッシュ10及びナット18を装着させた例を示した。これに代えて、棒状部2を伝熱チューブ101に挿入する前に予め、棒状部2の片方の端部6(雄ネジ部)のみに、第1シール材20、ブッシュ10及びナット18を装着させておく。その後、この棒状部2を、第1シール材20、ブッシュ10及びナット18が装着されていない側から、伝熱チューブ101に挿入して、第1シール材20、ブッシュ10及びナット18が装着されていない方の雄ネジ部6を管板120の穴122aから突出させる。その後、この雄ネジ部6に、第1シール材20、ブッシュ10及びナット18を装着させてもよい。
【0059】
以下、本実施形態の効果を説明する。本実施形態によれば、伝熱チューブ101に欠陥が発生した場合に、その伝熱チューブ101を熱交換器100から取り外さなくてもその伝熱チューブ101を封止器具1で封止できる。これにより、熱交換器100を修理工場に持ち込まなくても、熱交換器100の稼働を続けることができる。また、熱交換器100の稼働中に、欠陥の伝熱チューブ101に、温度調整対象の流体が入ってしまうのを抑制でき、ひいては、欠陥の伝熱チューブ101から外側に流体が漏れてしまうのを抑制できる。伝熱チューブ101への封止器具1の取り付けは雄ネジ部6とナット18との螺合により行われるので、熱交換器100が設置された現場で簡単に封止器具1の取り付け(欠陥の伝熱チューブを封止する処置)を行うことができる。
【0060】
また、伝熱チューブ101の内周面と棒状部2の間には第2シール材21が設けられるので、仮に、雄ネジ部6と、ナット18の貫通穴19又はブッシュ10の貫通穴11との隙間を流体が通過したとしても、第2シール材21により、筒部3側へのこの流体の進入を抑制できる。
【0061】
また、ブッシュ10と管板120の外表面122との間には第1シール材20が設けられるので、ブッシュ10と外表面122との間から流体が進入するのを抑制できる。また、伝熱チューブ101と管板120との溶接部123は、第1シール材20と第2シール材21の間の経路に位置するので、溶接部123が破損している場合であっても、この溶接部123から流体がハウジング110内に進入するのを抑制できる。
【0062】
また、棒状部2(筒部3、ボルト部4)、ブッシュ10及びナット18は高融点活性材料で形成されるので、封止器具1が取り付けられた状態で熱交換器100を稼働させたとしても、棒状部2、ブッシュ10及びナット18が、高温、高濃度の酸(流体)で劣化するのを抑制できる。また、第1シール材20及び第2シール材21は例えばカルレッツ(登録商標)で形成されるので、封止器具1が取り付けられた状態で熱交換器100を稼働させたとしても、第1シール材20及び第2シール材21が高温、高濃度の酸(流体)で劣化するのを抑制できる。
【0063】
また、棒状部2はボルト部4以外の部分3は筒状に形成されるので、封止器具1の重量及びコストを抑えることができる。
【0064】
また、ブッシュ10は、管板120の外側に設けられ、かつ、管板120の穴122aより大径に形成されるので、封止器具1が伝熱チューブ101から外れてしまうのを抑制できる。
【0065】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、棒状部の両端のそれぞれに設けられる2つの閉塞部(ブッシュ、ナット)が共に棒状部に着脱可能な例を示した。これに代えて、一方の閉塞部は棒状部に着脱可能に設けられ、他方の閉塞部は棒状部に着脱不可能(つまり棒状部と一体)に設けられてもよい。これによれば、先ず、着脱可能な方の閉塞部を棒状部から取り外した状態で、棒状部を伝熱チューブに挿入する。その後、この閉塞部を管板外表面の外側から棒状部に装着させることで、伝熱チューブの出入口の両方を、管板外表面の外側から閉塞部で塞いだ状態にできる。
【0066】
また、上記実施形態では、棒状部の棒状本体(棒状部のボルト部以外の部分)が中空の棒状(筒状)に形成された例を示した。これに代えて、棒状本体が中実の棒状に形成されてもよい。この場合、中実の棒状本体とその端部の雄ネジ部とが同一材料で一体に形成されてよい。これによれば、棒状本体と雄ネジ部との接合部(溶接部)を無くすことができる。
【0067】
また、上記実施形態では、棒状部の端部が雄ネジ部、閉塞部が雌ネジ部で構成された例を示した。これに代えて、棒状部の端部が雌ネジ部、閉塞部が雄ネジ部で構成されてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 伝熱チューブ用封止器具
2 棒状部
3 筒部(棒状本体)
4 ボルト部(取付部)
5 ボルト部の基部
6 雄ネジ部
10 ブッシュ(閉塞部の本体部)
18 ナット(雌ネジ部)
20 第1シール材(外側シール部)
21 第2シール材(内側シール部)
100 熱交換器
101 伝熱チューブ
110 ハウジング
120 管板
122 管板の外表面
122a 管板外表面の穴
【手続補正書】
【提出日】2023-03-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度調整対象の流体を流して、前記流体へ伝熱させるための複数の伝熱チューブと、
各々の前記伝熱チューブの端部が挿入される前記伝熱チューブごとの穴が形成された外表面を有する管板とを備える熱交換器に適用され、
前記伝熱チューブ内に挿入される棒状部と、
前記棒状部の両端のそれぞれに設けられて、前記外表面の外側から前記伝熱チューブの出入口を塞ぐ閉塞部と、
前記閉塞部との間で前記伝熱チューブを封止するシール部とを備え、
少なくとも一方の前記閉塞部は前記棒状部に着脱可能であり、
前記棒状部の端部は、前記伝熱チューブに挿入されたときに前記外表面の前記穴から外側に突出するとともに、外周にネジ山が形成された雄ネジ部であり、
前記閉塞部は、
前記雄ネジ部が挿入される貫通穴が形成されて、前記シール部の位置を保持するシール保持部を有した本体部と、
前記本体部の前記貫通穴から突出した前記雄ネジ部に締結する雌ネジ部とを備え、
前記シール部は、
前記閉塞部と前記外表面との間に設けられる外側シール部と、
前記閉塞部と前記棒状部との間で前記伝熱チューブの内周面に接触するように設けられる内側シール部とを含み、
前記棒状部は、前記内側シール部を着座させる着座部を有し、
前記貫通穴の内周面はネジ溝が形成されておらず、
前記本体部は、
前記管板の前記穴及び前記伝熱チューブの内側に入って、前記着座部との間で前記内側シール部を挟み込む前記シール保持部としての突出部と、
前記突出部よりも径方向外側の位置において前記外表面の前記穴の周りを全周に亘って囲むように設けられ、前記外表面との間で前記外側シール部を挟み込む外側部とを有する、
熱交換器の伝熱チューブ用封止器具。
【請求項2】
前記棒状部は、棒状本体と、前記棒状本体の端部に接続された、前記閉塞部が取り付けられる、前記雄ネジ部を有する取付部とを備え、
タンタル、タンタル合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、ニオブ、ニオブ合金、チタン、チタン合金、モリブデン、モリブデン合金、タングステン、又はタングステン合金を高融点活性材料として、
前記流体は酸洗液であり、
前記棒状本体、前記取付部、前記本体部、及び前記雌ネジ部は、前記高融点活性材料で形成される請求項1に記載の熱交換器の伝熱チューブ用封止器具。
【請求項3】
前記取付部、前記本体部、及び前記雌ネジ部は、前記棒状本体よりも耐酸性の高い材料で形成される請求項2に記載の熱交換器の伝熱チューブ用封止器具。
【請求項4】
前記棒状本体、前記取付部、前記本体部、及び前記雌ネジ部は同一材料で形成される請求項2に記載の熱交換器の伝熱チューブ用封止器具。
【請求項5】
前記棒状本体は管状であり、
前記棒状本体と前記取付部とは溶接される請求項2~4のいずれか1項に記載の熱交換器の伝熱チューブ用封止器具。
【請求項6】
前記棒状本体の長さは、前記伝熱チューブ内に前記棒状本体が挿入されたときに、前記棒状本体の端部が前記管板内に位置するように定められる請求項2~5のいずれか1項に記載の熱交換器の伝熱チューブ用封止器具。
【請求項7】
前記本体部の、前記貫通穴の中心軸線の方向における前記突出部が設けられる側の端部は、前記本体部の径方向における前記突出部と前記外側部の間に凹部を有し、
前記凹部は、前記中心軸線周りの全周に亘って連続して形成される請求項1~6のいずれか1項に記載の熱交換器の伝熱チューブ用封止器具。
【請求項8】
前記外側シール部及び前記内側シール部はパーフロロエラストマーで形成される請求項1~7のいずれか1項に記載の熱交換器の伝熱チューブ用封止器具。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度調整対象の流体を流して、前記流体へ伝熱させるための複数の伝熱チューブと、
各々の前記伝熱チューブの端部が挿入される前記伝熱チューブごとの穴が形成された外表面を有する管板とを備える熱交換器に適用され、
前記伝熱チューブ内に挿入される棒状部と、
前記棒状部の両端のそれぞれに設けられて、前記外表面の外側から前記伝熱チューブの出入口を塞ぐ閉塞部と、
前記閉塞部との間で前記伝熱チューブを封止するシール部とを備え、
少なくとも一方の前記閉塞部は前記棒状部に着脱可能であり、
前記棒状部の端部は、前記伝熱チューブに挿入されたときに前記外表面の前記穴から外側に突出するとともに、外周にネジ山が形成された雄ネジ部であり、
前記閉塞部は、
前記雄ネジ部が挿入される貫通穴が形成されて、前記シール部の位置を保持するシール保持部を有した本体部と、
前記本体部の前記貫通穴から突出した前記雄ネジ部に締結する雌ネジ部とを備え、
前記シール部は、
前記閉塞部と前記外表面との間に設けられる外側シール部と、
前記閉塞部と前記棒状部との間で前記伝熱チューブの内周面に接触するように設けられる内側シール部とを含み、
前記棒状部は、前記内側シール部を着座させる着座部を有し、
前記貫通穴の内周面はネジ溝が形成されておらず、
前記本体部は、
前記管板の前記穴及び前記伝熱チューブの内側に入って、前記着座部との間で前記内側シール部を挟み込む前記シール保持部としての突出部と、
前記突出部と一体に形成され、前記突出部よりも径方向外側の位置において前記外表面の前記穴の周りを全周に亘って囲むように設けられ、前記外表面との間で前記外側シール部を挟み込む外側部とを有し、
前記棒状部は、棒状本体と、前記棒状本体の端部に接続された、前記閉塞部が取り付けられる、前記雄ネジ部を有する取付部とを備え、
タンタル、タンタル合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、ニオブ、ニオブ合金、チタン、チタン合金、モリブデン、モリブデン合金、タングステン、又はタングステン合金を高融点活性材料として、
前記流体は酸洗液であり、
前記棒状本体は、前記高融点活性材料で形成され、
前記取付部、前記本体部、及び前記雌ネジ部は、前記高融点活性材料のうちのタンタル、タンタル合金、ニオブ又はニオブ合金で形成され、
前記外側シール部はパーフロロエラストマーで形成され、
前記内側シール部は、パーフロロエラストマーで形成されたOリングである、
熱交換器の伝熱チューブ用封止器具。
【請求項2】
前記取付部、前記本体部、及び前記雌ネジ部は、前記棒状本体よりも耐酸性の高い材料で形成される請求項1に記載の熱交換器の伝熱チューブ用封止器具。
【請求項3】
前記棒状本体、前記取付部、前記本体部、及び前記雌ネジ部は同一材料で形成される請求項1に記載の熱交換器の伝熱チューブ用封止器具。
【請求項4】
前記棒状本体は管状であり、
前記棒状本体と前記取付部とは溶接される請求項1~3のいずれか1項に記載の熱交換器の伝熱チューブ用封止器具。
【請求項5】
前記棒状本体の長さは、前記伝熱チューブ内に前記棒状本体が挿入されたときに、前記棒状本体の、前記取付部との溶接部が前記管板内に位置するように定められる請求項4に記載の熱交換器の伝熱チューブ用封止器具。
【請求項6】
前記本体部の、前記貫通穴の中心軸線の方向における前記突出部が設けられる側の端部は、前記本体部の径方向における前記突出部と前記外側部の間に凹部を有し、
前記凹部は、前記中心軸線周りの全周に亘って連続して形成される請求項1~5のいずれか1項に記載の熱交換器の伝熱チューブ用封止器具。