(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137367
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】アンテナの取付け方法、アンテナの取付け構造及びアンテナ取付け用アダプタ
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/12 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
H01Q1/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043550
(22)【出願日】2022-03-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り [展示日] 令和3年10月27日~令和3年10月29日 [展示会名] 第5回通信・放送Week5G/IoT通信展 [開催場所] 幕張メッセ(〒261-0023 千葉県千葉市美浜区中瀬2-1)
(71)【出願人】
【識別番号】593184396
【氏名又は名称】小峰無線電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【弁理士】
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】午來 隆男
【テーマコード(参考)】
5J047
【Fターム(参考)】
5J047AA09
5J047AA10
5J047BC00
(57)【要約】
【課題】支柱に対するアンテナの取付け負担を極力少なくすることができるアンテナの取付け方法、アンテナの取付け構造及びアンテナ取付け用アダプタを提供する。
【解決手段】アンテナ3とアダプタ4とを螺合要素7a,12aを利用して一体化し、次に、支柱2先端部に、アンテナ3が一体化されたアダプタ4を被せて、アダプタ4における有蓋筒状の筒状本体部8内に支柱2先端部を挿入し、次に、その筒状本体部8の蓋部8aを支柱2先端により支えつつ、筒状本体部8を支柱2に対して相対回動させることにより、アンテナ3の窪み部6の指向方向を所定方向に調整し、その後、筒状本体部8の孔10に留め具14を進入させて、筒状本体部8と支柱2とを一体化する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基面に対して起立した状態で固定される支柱にアダプタを介してアンテナを取付けるアンテナの取付け方法であって、
前記アンテナとして、その取付け部において、雌ねじ孔又は雄ねじ部のうちのいずれか一方の螺合要素を有するものを用意し、
前記アダプタとして、有蓋筒状形状とされてその内部にその開口側から前記支柱の先端部が挿入可能とされる筒状本体部と、該筒状本体部の蓋部に設けられて前記一方の螺合要素に対して螺合可能とされる前記雌ねじ孔又は雄ねじ部のうちの他方の螺合要素と、前記筒状本体部の周壁部に設けられる孔と、を備えるものを用意し、その上で、
先ず、前記アンテナと前記アダプタとを、前記一方の螺合要素と前記他方の螺合要素との螺合により一体化し、
次に、前記支柱の先端部に、前記アンテナが一体化された前記アダプタの筒状本体部を被せて、該筒状本体部内に該支柱の先端部を挿入し、
次に、前記筒状本体部の蓋部を前記支柱の先端により支えつつ、該筒状本体部を該支柱の軸線を中心として該支柱に対して相対回動させることにより、該アンテナの所定部分の指向方向を所定方向に調整し、
その後、前記筒状本体部の孔に留め具を進入させて、該筒状本体部を前記支柱に固定する、
ことを特徴とするアンテナの取付け方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記アンテナとして、前記一方の螺合要素が雌ねじ孔であるものを用い、
前記アダプタとして、前記他方の螺合要素が雄ねじ部であるものであって、該雄ねじ部を、前記筒状本体部の蓋部に貫通孔を形成した上で該貫通孔にボルトのねじ部を該筒状本体部内側から外方へ通すと共に該貫通孔周縁部に保持する構成とするものを用い、
前記アンテナと前記アダプタとを、前記雌ねじ孔と前記ボルトのねじ部との螺合により一体化した後であって、該アダプタの筒状本体部内に前記支柱先端部を挿入するに際して、該支柱としてパイプを用い、該パイプの先端部内に前記ボルトの頭部を収納する、
ことを特徴とするアンテナの取付け方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記アンテナとして、前記一方の螺合要素が雄ねじ部であるものを用い、
前記アダプタとして、前記他方の螺合要素が雌ねじ孔であるものであって、該雌ねじ孔を、前記筒状本体部の蓋部を貫通して該蓋部外面から外方に開口する構成とするものを用い、
前記アンテナと前記アダプタとを、前記雄ねじ部と前記雌ねじ孔との螺合により一体化した後であって、該アダプタの筒状本体部内に前記支柱先端部を挿入するに際して、該支柱としてパイプを用い、該パイプの先端開口内に前記雌ねじ孔を臨ませる、
ことを特徴とするアンテナの取付け方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記アダプタとして、前記筒状本体部の孔内に留め具が予め収納保持されたものを用いる、
ことを特徴とするアンテナの取付け方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項において、
前記アダプタの筒状本体部として、一枚の板材により製作されて開口が正方形状とされた箱状の本体部を用い、
前記アンテナと前記アダプタとを、前記一方の螺合要素雄と前記他方の螺合要素との螺合により一体化した後であって、該アダプタの筒状本体部内に前記支柱先端部を挿入するに際して、該支柱の外周面を該箱状本体部の内面に略内接させる、
ことを特徴とするアンテナの取付け方法。
【請求項6】
基面に対して起立した状態で固定される支柱にアダプタを介してアンテナが取付けられるアンテナの取付け構造であって、
前記アンテナに、その取付け部において、雌ねじ孔又は雄ねじ部のうちのいずれか一方の螺合要素が備えられ、
前記アダプタに、有蓋筒状形状とされてその内部にその開口側から前記支柱の先端部が挿入可能とされる筒状本体部と、該筒状本体部の蓋部に設けられて前記一方の螺合要素に対して螺合可能とされる前記雌ねじ孔又は雄ねじ部のうちの他方の螺合要素と、前記筒状本体部の周壁部に設けられる孔と、が備えられ、
前記アンテナと前記アダプタとが、前記一方の螺合要素雄と前記他方の螺合要素との螺合により一体化され、
前記アンテナを一体化した前記アダプタの筒状本体部が前記支柱の先端部に被せられて、該筒状本体内に該支柱の先端部が挿入され、
前記筒状本体部の孔から該筒状本体部内に留め具が進入されることにより、前記アダプタが前記支柱に固定され、
前記アンテナは、その所定部分が、該アンテナを一体化する前記アダプタが前記支柱に固定されている状態において、前記支柱の周回り方向所定位置に向けられている、
ことを特徴とするアンテナの取付け構造。
【請求項7】
請求項6において、
前記支柱が、単管パイプであって、工事現場において構築される構築物の構成要素の一つとして基面に対して起立されているものであり、
前記アンテナが、GNSSアンテナである、
ことを特徴とするアンテナの取付け構造。
【請求項8】
取付け部に雌ねじ孔又は雄ねじ部のうちのいずれか一方の螺合要素を有するアンテナを、基面に対して起立した状態で固定された支柱に取付けるために用いるアンテナ取付け用アダプタであって、
有蓋筒状形状とされ、その内部にその開口側から前記支柱の先端部が挿入可能とされる筒状本体部と、
前記筒状本体部の蓋部に設けられて前記一方の螺合要素に対して螺合可能とされる前記雌ねじ孔又は雄ねじ部のうちの他方の螺合要素と、
前記筒状本体部の周壁部に設けられて、該筒状本体部内に留め具を進入させるために用いられる孔と、
が備えられている、
ことを特徴とするアンテナ取付け用アダプタ。
【請求項9】
請求項8において、
前記筒状本体部が、前記支柱としてパイプが挿入されるものであり、
前記他方の螺合要素が雄ねじ部であり、
前記雄ねじ部が、前記筒状本体部の蓋部に貫通孔を形成した上で該貫通孔にボルトのねじ部を該筒状本体部内側から外方へ通して該貫通孔周縁部に保持することにより形成されている、
ことを特徴とするアンテナ取付け用アダプタ。
【請求項10】
請求項8において、
前記筒状本体部が、前記支柱としてパイプが挿入されるものであり、
前記雌ねじ孔が、前記筒状本体部の蓋部を貫通して該蓋部外面から外方に開口されている、
ことを特徴とするアンテナ取付け用アダプタ。
【請求項11】
請求項8において、
前記筒状本体部の孔内に、該筒状本体部と前記支柱とを一体化するための留め具が予め収納保持されている、
ことを特徴とするアンテナ取付け用アダプタ。
【請求項12】
請求項11において、
前記筒状本体部の内面に、破断容易な薄膜材が前記孔を覆うようにして設けられている、
ことを特徴とするアンテナ取付け用アダプタ。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか1項において、
前記筒状本体部が、一枚の板材により製作されて開口が正方形状とされた箱状本体部とされ、
前記箱状本体部の内面が、前記支柱が該箱状本体部内に挿入された際に、該支柱の外周面が略内接するように設定されている、
ことを特徴とするアンテナ取付け用アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナの取付け方法、アンテナの取付け構造及びアンテナ取付け用アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナは、一般に、基面に対して起立した支柱に取付けられることが多い。具体的には、アンテナを支柱に取付けるに際して、特許文献1に示すように、アンテナを支柱の周回り方向所定位置に配置することによりアンテナの指向方向を決めた上で、そのアンテナに対して取付けバンドを、支柱を間に挟んで配置し、その状態の下で、締結具を取付けバンド及びアンテナに対してねじ込む。これにより、支柱をアンテナと取付けバンドとで挟持できることになり、アンテナは支柱に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記アンテナの取付け方法においては、取付け作業者は、アンテナの指向方向を決めるために、アンテナの荷重を支えつつ支柱の周回り方向所定位置に配置しなければならないばかりか、そのアンテナに対して支柱を挟んで取付けバンドを対向させた状態とし、その状態を維持しつつ、締結具を取付けバンド及びアンテナの取付け部にねじ込まなければならない。このような取付け作業は、取付け作業者一人が容易に行えるものではなく、その作業負担は重い。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、支柱に対するアンテナの取付け負担を極力少なくすることができるアンテナの取付け方法を提供することにある。第2の目的は、支柱に対するアンテナの取付け負担を極力少なくすることができるアンテナの取付け構造を提供することにある。第3の目的は、上記アンテナの取付け方法及び上記アンテナの取付け構造において用いられる好適なアンテナ取付け用アダプタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記第1の目的を達成するために本発明にあっては、下記(1)~(5)とした構成とされている。
【0007】
(1)基面に対して起立した状態で固定される支柱にアダプタを介してアンテナを取付けるアンテナの取付け方法であって、
前記アンテナとして、その取付け部において、雌ねじ孔又は雄ねじ部のうちのいずれか一方の螺合要素を有するものを用意し、
前記アダプタとして、有蓋筒状形状とされてその内部にその開口側から前記支柱の先端部が挿入可能とされる筒状本体部と、該筒状本体部の蓋部に設けられて前記一方の螺合要素に対して螺合可能とされる前記雌ねじ孔又は雄ねじ部のうちの他方の螺合要素と、前記筒状本体部の周壁部に設けられる孔と、を備えるものを用意し、その上で、
先ず、前記アンテナと前記アダプタとを、前記一方の螺合要素と前記他方の螺合要素との螺合により一体化し、
次に、前記支柱の先端部に、前記アンテナが一体化された前記アダプタの筒状本体部を被せて、該筒状本体部内に該支柱の先端部を挿入し、
次に、前記筒状本体部の蓋部を前記支柱の先端により支えつつ、該筒状本体部を該支柱の軸線を中心として該支柱に対して相対回動させることにより、該アンテナの所定部分の指向方向を所定方向に調整し、
その後、前記筒状本体部の孔に留め具を進入させて、該筒状本体部を前記支柱に固定する構成とされている。
【0008】
この構成によれば、アンテナの取付け部にアダプタを一体化し、そのアダプタの筒状本体部を支柱先端部に被せ、そのアダプタの筒状本体部内に支柱の先端部を挿入させれば、その挿入関係の下で、支柱の先端により、アンテナが一体化されたアダプタの蓋部(筒状本体部の蓋部)を支えることができ、アンテナが取付けられたアダプタを支柱の軸線を中心として該支柱に対して相対回動させることができる。これにより、取付け作業者は、アンテナが一体化されたアダプタを支えることなく、単に、そのアンテナが一体化されたアダプタを支柱に対して相対回動させるだけで、アンテナの所定部分の指向方向を所定方向に向ける調整を行うことができる。また、この調整を終えても、アダプタ内に支柱先端部が挿入された状態の下で、その支柱先端が、アンテナ及びアダプタの荷重を受けつつ、アダプタの蓋部を支えることになり、その調整後の状態は、取付け作業者がアンテナ等を手で支えなくても維持されることになる。このため、その状態はそのまま支柱に対するアダプタの固定作業においても引き継がれることになり、取付け作業者は、アンテナ等を手で支えることなく、そのアンテナが一体化されたアダプタを、留め具を利用して支柱に固定できる。このことから、アンテナの指向方向の調整作業及び支柱に対するアンテナの固定作業のいずれにおいても、取付け作業者がアンテナ等の荷重を支える必要がなくなり、支柱に対するアンテナの取付け負担を極力少なくすることができる。
【0009】
(2)前記(1)の構成の下で、
前記アンテナとして、前記一方の螺合要素が雌ねじ孔であるものを用い、
前記アダプタとして、前記他方の螺合要素が雄ねじ部であるものであって、該雄ねじ部を、前記筒状本体部の蓋部に貫通孔を形成した上で該貫通孔にボルトのねじ部を該筒状本体部内側から外方へ通すと共に該貫通孔周縁部に保持する構成とするものを用い、
前記アンテナと前記アダプタとを、前記雌ねじ孔と前記ボルトのねじ部との螺合により一体化した後であって、該アダプタの筒状本体部内に前記支柱先端部を挿入するに際して、該支柱としてパイプを用い、該パイプの先端部内に前記ボルトの頭部を収納する構成とされている。
【0010】
この構成によれば、既存のボルトを利用して、アダプタにおける筒状本体部の蓋部外面に雄ねじ部を突出した状態で有するものを形成することができ、アンテナの雌ねじ孔に対して螺合(一体化)できるアダプタとして、突出部を設けてその突出部にねじ切り加工を施すものに比べて簡単に製作できるもの(製作コストの低減を図れるもの)を用いることができる。この場合、ボルトの頭部が筒状本体部内に配置されることになるが、支柱としてパイプが用いられ、そのパイプが筒状本体部内に挿入される際、そのパイプ先端部内にボルトの頭部が収納されることから、パイプ先端により筒状本体部の蓋部を支障なく支えることができる。このため、アンテナが雌ねじ孔を有し、アダプタが、アンテナの雌ねじ孔に螺合する雄ねじ部を有する場合において、簡単に製作できて製作コストの低減を図ることができるアダプタが用いられるとしても、支柱(パイプ)に対するアンテナの取付け負担を的確に少なくすることができる。
【0011】
(3)前記(1)の構成の下で、
前記アンテナとして、前記一方の螺合要素が雄ねじ部であるものを用い、
前記アダプタとして、前記他方の螺合要素が雌ねじ孔であるものであって、該雌ねじ孔を、前記筒状本体部の蓋部を貫通して該蓋部外面から外方に開口する構成とするものを用い、
前記アンテナと前記アダプタとを、前記雄ねじ部と前記雌ねじ孔との螺合により一体化した後であって、該アダプタの筒状本体部内に前記支柱先端部を挿入するに際して、該支柱としてパイプを用い、該パイプの先端開口内に前記雌ねじ孔を臨ませる構成とされている。
【0012】
この構成によれば、アダプタとして、その筒状本体部の蓋部に雌ねじ孔を有するものを用いるだけで、そのアダプタに対して、雄ねじ部を有するアンテナを一体化することができる。この場合、アンテナとアダプタとの一体化に伴い、仮にアンテナの雄ねじ部が雌ねじ孔を通ってアダプタ内に入り込んでも、支柱としてパイプが用いられ、そのパイプが筒状本体部内に挿入される際、そのパイプ先端部内にアンテナの雄ねじ部が収納されることになり、パイプ先端により筒状本体部の蓋部を支障なく支えることができる。このため、アンテナが雄ねじ部を有し、アダプタが、アンテナの雄ねじ部が螺合される雌ねじ孔を有する場合においても、支柱(パイプ)に対するアンテナの取付け負担を的確に少なくすることができる。
【0013】
また、筒状本体部における蓋部の雌ねじ孔に既存のボルトのねじ部を該筒状本体部内側から螺合して、その蓋部外面から突出するねじ部を、該蓋部外面から突出する雄ねじ部とすることができ、当該アダプタを、雌ねじ孔だけでなく雄ねじ部を有するアンテナをも一体化することができる。勿論この場合、支柱としてパイプが用いられることから、そのパイプが筒状本体部内に挿入される際、そのパイプ先端部内にボルトの頭部が収納されることになり、パイプ先端により筒状本体部の蓋部を支障なく支えることができる。これにより、簡単に制作できて製作コストの低減を図ることができるアダプタが用いられるとしても、支柱としてのパイプに対するアンテナの取付け負担を的確に少なくすることができる。
【0014】
(4)前記(1)の構成の下で、
前記アダプタとして、前記筒状本体部の孔内に留め具が予め収納保持されたものを用いる構成とされている。
【0015】
この構成によれば、支柱とアダプタとを留め具により一体化する際、作業者は、筒状本体部の孔内に収納保持された留め具をそのまま支柱に向けてねじ込むことができ、小さな留め具を摘まみながら行うねじ込む作業をなくすことができる。また、筒状本体部の孔内に留め具が収納保持されていることによって、留め具がアダプタの外面に極力突出することを抑えることができ、アンテナとアダプタとを一体化するに際して、留め具の出っ張りによりその際の螺合作業が低下することを抑制することができる。これにより、支柱に対するアンテナの取付け作業性を向上させることができる。
【0016】
(5)前記(1)~(4)のいずれかの構成の下で、
前記アダプタの筒状本体部として、一枚の板材により製作されて開口が正方形状とされた箱状の本体部を用い、
前記アンテナと前記アダプタとを、前記一方の螺合要素雄と前記他方の螺合要素との螺合により一体化した後であって、該アダプタの筒状本体部内に前記支柱先端部を挿入するに際して、該支柱の外周面を該箱状本体部の内面に略内接させる構成とされている。
【0017】
この構成によれば、アダプタの筒状本体部として、一枚の板材により製作されて開口が正方形状とされた箱状の本体部を用いることから、アダプタとして、極めて簡単かつ迅速に作り上げることができるもの(量産に好適なもの)を用いることができる。また、アンテナの取付けに当たり、支柱を箱状本体部内に挿入させる際に、その支柱の外周面が箱状本体部の内面に略内接することから、その箱状本体部を支柱の軸線を中心として支柱に対して相対回動させることができ、筒状本体部が箱状本体部であっても、アンテナの所定部分の指向方向を的確に調整することができる。しかも、アダプタの筒状本体部が箱状本体部であることから、作業者は、その箱状本体部の周面に手を掛け易くなり(回動力を伝達し易くなり)、アンテナの指向方向調整を簡単に行うことができる。
【0018】
前記第2の目的を達成するために、(6)~(7)の構成とされている。
【0019】
(6)基面に対して起立した状態で固定される支柱にアダプタを介してアンテナが取付けられるアンテナの取付け構造であって、
前記アンテナに、その取付け部において、雌ねじ孔又は雄ねじ部のうちのいずれか一方の螺合要素が備えられ、
前記アダプタに、有蓋筒状形状とされてその内部にその開口側から前記支柱の先端部が挿入可能とされる筒状本体部と、該筒状本体部の蓋部に設けられて前記一方の螺合要素に対して螺合可能とされる前記雌ねじ孔又は雄ねじ部のうちの他方の螺合要素と、前記筒状本体部の周壁部に設けられる孔と、が備えられ、
前記アンテナと前記アダプタとが、前記一方の螺合要素雄と前記他方の螺合要素との螺合により一体化され、
前記アンテナを一体化した前記アダプタの筒状本体部が前記支柱の先端部に被せられて、該筒状本体内に該支柱の先端部が挿入され、
前記筒状本体部の孔から該筒状本体部内に留め具が進入されることにより、前記アダプタが前記支柱に固定され、
前記アンテナは、その所定部分が、該アンテナを一体化する前記アダプタが前記支柱に固定されている状態において、前記支柱の周回り方向所定位置に向けられている構成とされている。
【0020】
この構成によれば、当該構造を前記(1)の取付け方法によって得ることができ、当該構造とすることにより、支柱に対するアンテナの取付け負担を極力少なくすることができる。また、前記(1)の取付け方法だけでなく、支柱にアダプタを取付けた後、その支柱に取付けられたアダプタの蓋部外面に対してアンテナを取付ける方法を用いても当該構造を得ることができ、対応性、柔軟性が高いアンテナの取付け構造を提供できる。
【0021】
(7)前記(6)の構成の下で、
前記支柱が、単管パイプであって、工事現場において構築される構築物の構成要素の一つとして基面に対して起立されているものであり、
前記アンテナが、GNSSアンテナである構成とされている。
【0022】
この構成によれば、工事現場でGNSSアンテナに基づく測位情報が必要となる一方で、工事現場で構築される足場等の構築物の構成要素である単管パイプを支柱として利用できることになり、GNSSアンテナを迅速に設置することができる。
【0023】
前記第3の目的を達成するために、(8)~(13)の構成とされている。
【0024】
(8)取付け部に雌ねじ孔又は雄ねじ部のうちのいずれか一方の螺合要素を有するアンテナを、基面に対して起立した状態で固定された支柱に取付けるために用いるアンテナ取付け用アダプタであって、
有蓋筒状形状とされ、その内部にその開口側から前記支柱の先端部が挿入可能とされる筒状本体部と、
前記筒状本体部の蓋部に設けられて前記一方の螺合要素に対して螺合可能とされる前記雌ねじ孔又は雄ねじ部のうちの他方の螺合要素と、
前記筒状本体部の周壁部に設けられて、該筒状本体部内に留め具を進入させるために用いられる孔と、
が備えられている構成とされている。
【0025】
この構成によれば、前記(1)の取付け方法及び前記(6)の取付け構造に用いることができる好適なアンテナ取付け用アダプタを提供できる。
【0026】
(9)前記(8)の構成の下で、
前記筒状本体部が、前記支柱としてパイプが挿入されるものであり、
前記他方の螺合要素が雄ねじ部であり、
前記雄ねじ部が、前記筒状本体部の蓋部に貫通孔を形成した上で該貫通孔にボルトのねじ部を該筒状本体部内側から外方へ通して該貫通孔周縁部に保持することにより形成されている構成とされている。
【0027】
この構成によれば、前記(2)の取付け方法に用いることができる好適なアンテナ取付け用アダプタを提供できる。
【0028】
(10)前記(8)の構成の下で、
前記筒状本体部が、前記支柱としてパイプが挿入されるものであり、
前記雌ねじ孔が、前記筒状本体部の蓋部を貫通して該蓋部外面から外方に開口されている構成とされている。
【0029】
この構成によれば、前記(3)の取付け方法に用いることができる好適なアンテナ取付け用アダプタを提供できる。
【0030】
(11)前記(8)の構成の下で、
前記筒状本体部の孔内に、該筒状本体部と前記支柱とを一体化するための留め具が予め収納保持されている構成とされている。
【0031】
この構成によれば、前記(4)の取付け方法に用いることができる好適なアンテナ取付け用アダプタを提供できる。
【0032】
(12)前記(11)の構成の下で、
前記筒状本体部の内面に、破断容易な薄膜材が前記孔を覆うようにして設けられている構成とされている。
【0033】
この構成によれば、筒状本体部内への支柱先端部の挿入に際して、その挿入が留め具の突出によって阻害されることが確実に防止できる。その一方で、筒状本体部を支柱先端部に留め具によって固定するときには、留め具を通常通り孔を経て筒状本体部内に進入させれば、その留め具は薄膜材を破断して進むことになり、その留め具により筒状本体部は支柱先端部に固定される。
【0034】
(13)前記(8)~(12)のいずれかの構成の下で、
前記筒状本体部が、一枚の板材により製作されて開口が正方形状とされた箱状本体部とされ、
前記箱状本体部の内面が、前記支柱が該箱状本体部内に挿入された際に、該支柱の外周面が略内接するように設定されている構成とされている。
【0035】
この構成によれば、前記(5)の取付け方法に用いることができる好適なアンテナ取付け用アダプタを提供できる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、支柱に対するアンテナの取付け負担を極力少なくできるアンテナの取付け方法、アンテナの取付け構造及びアンテナ取付け用アダプタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】第1実施形態に係るアンテナ取付け構造を示す斜視図。
【
図3】第1実施形態に係るアダプタを示す縦断面図。
【
図5】第1実施形態に係るアダプタにおける箱状本体部の製作を説明する説明図。
【
図6】アンテナと第1実施形態に係るアダプタとの一体化を説明する説明図。
【
図7】アンテナを一体化している第1実施形態に係るアダプタをパイプ先端部に被せることを示す説明図。
【
図9】第1実施形態に係る箱状本体部の雌ねじ孔に収納保持されるイモネジ(留め具)により箱状本体部(アダプタ)がパイプに固定されることを説明する説明図。
【
図11】第3実施形態に係るアンテナ取付け方法を説明する説明図。
【
図12】第3実施形態に係るアンテナ取付け構造を説明する説明図。
【
図13】第4実施形態に係るアンテナ取付け方法を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。説明するに当たり、アンテナの取付け方法の説明に先立ち、その方法が使用されるアンテナ取付け構造及びそこで使用されるアダプタについて説明する。
【0039】
図1において、符号1は、第1実施形態に係るアンテナ取付け構造を示す。このアンテナ取付け構造1においては、支柱2に対してアンテナ3がアダプタ4を介して取付けられている。
【0040】
前記支柱2としては、本実施形態においてはパイプ、特に工事現場で汎用的に使用される単管パイプ2Aが用いられている。単管パイプ2Aは、直径48.6mm 肉厚2.4mm又は1.8mmの鋼管である。この単管パイプ2Aをアンテナ取付け構造1で用いるのは、単に単管パイプ2Aの入手が容易であることだけでなく、工事現場等において測量が必要となる一方で、単管パイプ2Aの多くが工事現場等で足場等の構築物の組み立てに用いられるに伴い、基面としての地面又は床面に対して起立した配置状態となる単管パイプ2Aが多く存在することに着目したからである。このため、本実施形態においては、工事現場で基面に対して起立した状態で固定されている単管パイプ2Aの先端部をアンテナ3の取付け端部として利用することとしている。以下、基面に対して起立した状態で固定されている単管パイプ2Aを「パイプ2A」と称する。
【0041】
前記アンテナ3としては、本実施形態においては、GNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナ3が用いられている。GNSSアンテナ3は、衛星信号を受信するものであり、その衛星信号は、コネクタ部5から図示を略すGNSS受信機に出力される。GNSS受信機は、受け入れた衛星信号を処理し、基本的に、そのアンテナ3の設置位置を測位する。この情報は、測量等において利用される。
【0042】
上記アンテナ3は、
図1,
図2に示すように、円盤状に形成されている。このアンテナ3は、その厚み方向一方側面が上面3aとされ、その厚み方向他方側面が下面3bとされていて、その上面3aは、使用時において、その下面3bよりも上側に配置される。このアンテナ3は、その下面3bが略平坦に形成されている一方、その上面3aはその径方向中央に向うに従ってやや外方に向けて膨らむように湾曲されている。このアンテナ上面3aにおける周縁部の所定位置には、窪み部6が形成されており、その窪み部6を目印として、アンテナ3の所定位置が、規格に従い所定方向としての北方向に向けられることになる。アンテナ3の下面3bには、取付け部7とコネクタ部5とが設けられている。取付け部7は、アンテナ下面3bの径方向中央部において該アンテナ下面3bから突出した状態で設けられ、その先端面は平坦面とされている。この取付け部7には、本実施形態においては、その先端面から外部に臨むようにして雌ねじ孔7aが開口されている。この雌ねじ孔7aの開口は、アンテナ3の軸線上に位置されており、その雌ねじ孔7aの内周面には、雌ねじとして5/8インチ雌ねじが形成されている。コネクタ部5は、アンテナ3が受信した衛星信号をGNSS受信機に送る出力部分として、取付け部7よりもアンテナ3の径方向外側に配置され、このコネクタ部5とGNSS受信機とはケーブル(図示略)を介して接続される。
【0043】
前記アダプタ4は、前記アンテナ3と前記パイプ2Aの先端部とを接続すべく、
図1~
図4に示すように、筒状本体部としての箱状本体部8と、その箱状本体部8の蓋部8a外面から突出する雄ねじ部9と、その箱状本体部8の各側壁部8bにそれぞれ形成される孔10と、を備えている。
【0044】
前記箱状本体部8は、正方形の蓋部8aの各辺部から起立する各側壁部8bが、その蓋部8aと同様の正方形の開口を区画するように形成されている。この箱状本体部8は、一枚の金属製板材から作製されており、その作製に当っては、例えば、
図5に示すように、一枚の金属製板材から、プレス加工等により、正方形の蓋相当部8aa(箱状本体部組立前の蓋部8a)と、その蓋相当部8aaを中心としてその各辺部から外方に張り出す側壁相当部8bb(箱状本体部組立前の側壁部8b)とを有するものを抜き出し、その各側壁相当部8bbを蓋相当部8aaに対して起立させ、その起立した各側壁相当部8bbの隣合うもの同士を溶接等により固定することが行われる。この際、プレス加工により同時に、前記複数の孔10と後述の貫通孔13とが形成される。この箱状本体部8は、その内部に前記パイプ2Aの先端部が挿入できる大きさになっており、本実施形態においては、前記パイプ2Aの先端部が箱状本体部8内に挿入されたとき、その箱状本体部8における各側壁部8bの内面にパイプ2Aの外周面が略内接するように設定されている(
図3,
図4参照)。
【0045】
前記雄ねじ部9は、本実施形態においては、製作の容易化、製作コストの低減の観点から、既存のボルト12のねじ部12aを利用して構成されている。箱状本体部8の蓋部8aには、その中央部において貫通孔13が形成され、その貫通孔13にはボルト12のねじ部12aが箱状本体部8内側から外方に向けて通されている。このボルト12のねじ部12aは、そのボルト12の頭部12bが箱状本体部8の蓋部8a内面(貫通孔13周縁部)に当接するまで雄ねじ部9として箱状本体部8の蓋部8a外面から突出されており、その状態は、ボルト12の頭部12bが箱状本体部8の蓋部8a内面に溶接により固着されることにより保持されている。この溶接部分については、符号12cをもって示す。このボルト12のねじ部12aは、前記アンテナ3の雌ねじ孔7aに螺合可能となっており(5/8インチ雄ねじ)、そのアンテナ3の雌ねじ孔7aに対するボルト12のねじ部12aのねじ込みは、アンテナ3の取付け部7先端面が箱状本体部8の蓋部8a外面に当接するまで可能となっている。
【0046】
前記各孔10は、本実施形態においては、前記箱状本体部8の作製に伴って形成された後、その内周面に雌ねじを形成することにより、雌ねじ孔10Aとして形成されている。この各雌ねじ孔10Aには留め具14が螺合した状態でそれぞれ収納されている。この留め具14には、いわゆるイモネジ14aが用いられ、その各イモネジ14aは、使用前において、その進入端面が箱状本体部8内に突出しない状態とされている一方、イモネジ14aの外側端面(六角穴を有する工具係合面)は箱状本体部8の各側壁部8b外面から出っ張ることが極力抑制されている(
図3参照)。
【0047】
このようなアダプタ4には、
図1、
図2に示すように、その箱状本体部8の蓋部8a外面においてアンテナ3の取付け部7先端面が固定され、その箱状本体部8内にはパイプ2Aの先端部が挿入されている。アンテナ3の軸線とパイプ2Aの軸線とを合致させた状態の下で、アンテナ3をパイプ2A先端上方に配置するためである。この場合、箱状本体部8の蓋部8a外面とアンテナ3の取付け部7先端面との固定には、箱状本体部8のねじ部12aとアンテナ3の雌ねじ孔10との螺合が利用されており、これにより、アンテナ3とアダプタ4との一体化が図られると共に、そのアンテナ3とアダプタ4とはその両者3,4の軸線が合致する共通の軸線上に配置されることになる。また、箱状本体部8内にパイプ2Aの先端部が挿入されることにより、パイプ2Aの外周面が箱状本体部5における各側壁部8b内面に略内接すると共に、パイプ2A先端部の内部に箱状本体部8内におけるボルト頭部12bが収納されることになる。このため、箱状本体部8の軸線とパイプ2Aの軸線とを合致させた状態の下で、箱状本体部8の蓋部8aがパイプ2Aの先端面により的確に支えられ、その支持状態は安定した状態で維持されることになる。
【0048】
またこのとき、箱状本体部8は、その蓋部8aがパイプ2A先端面により的確に支えられている状態の下で、パイプ2A先端部に対して相対回動可能となっている。このため、そのことを利用して、アンテナ3は、その規格に従い、その上面周縁部における目印としての窪み部(所定部分)6が所定方向としての北方向に向けられている(
図1参照)。
【0049】
上記アンテナ3が固定された箱状本体部8と、その箱状本体部8内に挿入されているパイプ2A先端部とは、
図1、
図2に示すように、アダプタ4の各雌ねじ孔10Aに収納保持される各イモネジ14aにより固定されている。各イモネジ14aは、各雌ねじ孔10Aにねじ込むことにより、その各進入端面がパイプ2A先端部の肉厚内部に食い込むことになっており、これにより、アンテナ3が固定されたアダプタ4は、パイプ2A先端部に対して上下方向の変位動も、相対回動も不能となり、アンテナ3は、その指向方向調整を終えた状態でパイプ2Aに固定されている。
【0050】
このようなアンテナ取付け構造1は、次の取付け方法を用いて構築される。尚、パイプ2Aについては、予め、基面に対して起立した状態で固定されているものとする。
【0051】
先ず、
図6に示すように、アンテナ3にアダプタ4を一体化する。アンテナ3をパイプ2Aに仮支持するべく、アダプタ4(箱状本体部8)の有蓋筒状構造を利用するためである。このアンテナ3とアダプタ4との一体化は、アンテナ3の取付け部7先端面とアダプタ4における箱状本体部8の蓋部8a外面とが当接するまで、アンテナ3の雌ねじ孔7aに箱状本体部8のねじ部12aをねじ込むことにより行われる。このとき、箱状本体部8の各側壁部8bからイモネジ14aが外方に出っ張ることが抑制されて、アダプタ4の取り扱い性(把持等の容易性)が高められ、しかもこのとき、アンテナ3の取付け部7(下面3b)を視認しながらアダプタ4をその取付け部7に取付けることができ、それらのことがアンテナ3に対するアダプタ4の取付け作業を容易にする。
【0052】
次に、
図7に示すように、アンテナ3が一体化されたアダプタ4(箱状本体部8)をパイプ2Aの先端部に被せて、そのアダプタ4の箱状本体部8内にパイプ2Aの先端部を挿入する。アダプタ4(箱状本体部8)とパイプ2A先端部の内部空間とを利用することにより、パイプ2A先端部に対してアンテナ3を仮支持できるようにし、作業者が手でアンテナ3等を支えなくてもよくするためである。すなわち、アダプタ4の箱状本体部8内へのパイプ2A先端部の挿入に伴い、パイプ2Aの先端部外周面を箱状本体部8における各側壁部8b内面に略内接させると共に、パイプ2Aの先端部の内部に箱状本体部8内のボルト頭部12bを収納させ、パイプ2Aの先端面をボルト頭部12bにより支障を受けることなく箱状本体部8における蓋部8a内面に当接させるためである。これにより、箱状本体部8の雄ねじ部9として既存のボルト12のねじ部12aが利用されているものの、箱状本体部8は、パイプ2Aの挿入の下で、その蓋部8aがパイプ2A先端面により的確に支えられることになり、アンテナ3はパイプ2Aに対して仮支持される。
【0053】
次に、
図8に示すように、上記アダプタ4における箱状本体部8内にパイプ2A先端部を挿入した状態で、アンテナ3の指向方向を調整する。受信精度等を規格通りにするためである。本実施形態においては、前述した如く、箱状本体部8内にパイプ2A先端部を挿入した際、箱状本体部8の蓋部8aがパイプ2A先端面により支えられ、しかも、その各側壁部8b内面にパイプ2Aの先端部外周面が略内接して、箱状本体部8がパイプ2Aに対して相対回動可能となる。これにより、作業者は、コンパスを見ながら、アンテナ3が一体化されたアダプタ4をパイプ2Aに対して相対回動させ、アンテナ3の指向方向を所定方向としての北方向に向けるべく、アンテナ3の周縁部上面の目印としての窪み部(所定部分)6を北方向に向けることができることになる。このため、作業者は、コンパスを見ながら、アンテナ3が固定されたアダプタ4をパイプ2A先端部に対して相対回動させるだけでアンテナ3の指向方向を調整できることになり、作業者は、アンテナ3を手で支えつつその指向方向調整作業を行う必要がなくなる。この場合、作業者は、アンテナ3の周縁部を把持しながらアンテナ3に回動力を与えれば、アンテナ3の比較的大きな径を利用して、加えるべき回動力を低減できることになり、アンテナ3の指向方向調整を容易にすることができる。
【0054】
アンテナ3の指向方向調整を終えると、
図9に示すように、上記アダプタ4をパイプ2A先端部にイモネジ14aを用いて固定する。アンテナ3を、その方向が風等により変化しないようにするためである。この場合、アンテナ3が一体化されたアダプタ4(箱状本体部8)の蓋部8aがパイプ2A先端面に支えられた状態(アンテナ3及びアダプタ4の荷重が作用している状態)で、その箱状本体部8内に対してパイプ2A先端部が挿入されていることから、作業者がアンテナ3を支えなくても、そのアンテナ3の指向方向調整を終えた状態が維持されることになり、作業者は、両手を使って各イモネジ14aによる固定作業を行うことができる。またこのとき、イモネジ14aが箱状本体部8(周壁部)における雌ねじ孔10A内に螺合された状態で収納保持されていることから、そのまま留め具14をねじ込むことができ、イモネジ14aを手で把持しながらそのねじ込み作業を行う必要がなくなる。
【0055】
図10は第2実施形態、
図11、
図12は第3実施形態、
図13は第4実施形態を示す。この各実施形態において前記第1実施形態と同一構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0056】
図10に示す第2実施形態は、前記第1実施形態に係るアダプタ4(箱状保体部8)内面に、その使用前において、破断容易な紙テープ等の薄膜材17を貼り付け、その薄膜材17により孔10を覆ったものを示している。これにより、箱状本体部8内へのパイプ2A先端部の挿入に際して(
図10中の矢印は、箱状本体部8をパイプ2A先端部に向けて移動させることを示す。)、その挿入がイモネジ14aの突出によって阻害されることを確実に防止することができる。その一方で、箱状本体部8をパイプ2A先端部にイモネジ14aによって固定するときには、イモネジ14aを通常通り雌ねじ孔10Aにねじ込めば、そのイモネジ14aは薄膜材17を破断して進むことになり、そのイモネジ14aにより箱状本体部8はパイプ2A先端部に固定される。
【0057】
図11、
図12に示す第3実施形態は、前記第1実施形態に係るアダプタ4の変形例を示す。この第3実施形態においては、アダプタ4における筒状本体部が有蓋円筒形状の円筒状本体部18とされている一方、その蓋部18a外面から突出する突出部にねじ切り加工を施すことにより雄ねじ部9が形成されている。この場合、ねじ切り加工は、アンテナ3の雌ねじ孔7aに対応すべく、5/8インチのねじ切り加工とされている。このため、この第3実施形態に係るアダプタ4における円筒状本体部18内には、ボルト12の頭部12bが存在しないようにすることができるため、円筒状本体部18内に挿入する支柱2として、パイプ2Aに限らず、中実の支柱を用いることができる。
【0058】
また、このアダプタ4における円筒状本体部18の周壁部18b外周面には、2組の一対の平坦面部分19が設けられている。この各組の一対の平坦面部分19は、対向した配置をもって円筒状本体部18の軸線方向全長に亘って形成されており、その各平坦面部分19は、円筒本体部18の周方向に等間隔毎に配置されている。この各平坦面部分19には、円筒状本体部18の開口側寄りにおいて、前記孔10がそれぞれ形成されており、その円筒状本体部18をその円筒状本体部18内に挿入される支柱2に対して固定するに際しては、留め具14としてのドリルネジ14bがその各孔10を通じて支柱2にそれぞれねじ込まれる。この各ドリルネジ14bは、既知の如く、頭部を有する一方、その頭部から比較的長く伸びるねじ部を有し、その先端部にリーマ部分が設けられている。このため、ドリルネジ14bは支柱2内部にねじ込み易くなっており、支柱2がパイプ2Aである場合には、ドリルネジ14bは、そのパイプ2Aの肉厚部分を貫通することになる。これにより、各ドリルネジ14bによって、アダプタ4(円筒状本体部18)は、支柱2の軸線方向及び周回り方向に変位動不能となり、アンテナ3は、支柱2に対して一体的に取付けられることになる。この場合、各平坦面部分19が各ドリルネジ14bの頭部を的確に受止めることになり、各ドリルネジ14bの頭部と支柱2とにより円筒状本体部18の周壁部が強固に締結(挟持)される。また、この各平坦面部分19は、作業者によるアダプタ4の把持を的確なものとし、アダプタ4に対するアンテナ3の取付け作業(螺合作業)を容易にする。
【0059】
図13に示す第4実施形態も、前記第1実施形態に係るアダプタ4の変形例を示す。この第4実施形態においては、アンテナ3の下面3bに雄ねじ部20が設けられている場合に対応して、アダプタ4における箱状本体部8の蓋部8aに、外部に向けて開口する雌ねじ孔21が形成されている。この雌ねじ孔21は、本実施形態においては、アンテナ3の雄ねじ部20が螺合する雌ねじの長さを確保することを考慮し、箱状本体部8の蓋部8aに貫通孔13を形成し、その蓋部8aの内面にその貫通孔13周縁部においてナット22を固着することにより構成されている。符号22cは溶接による固着部分を示す。
【0060】
これにより、アンテナ3がその下面3bにおいて雄ねじ部20を有しているものであっても、その雄ねじ部20をアダプタ4における箱状本体部8の貫通孔13を介してナット22に螺合させることができ、そのアンテナ3をアダプタ4に一体的に取付けることができる。この場合、アダプタ4における箱状本体部8内にはナット22が存在することになるが、その箱状本体部8を支柱2先端部に取付けるに当たり、その箱状本体部8内に支柱2としてパイプ2Aを挿入することにより、そのナット22はパイプ2A先端部内に収納される。これにより、アンテナ3が固定されたアダプタ4(箱状本体部8)は、ナット22による支障を受けることなくパイプ2A先端面により支えられ、その状態の下でのアンテナ3の指向方向調整を経て、アンテナ3は、パイプ2Aに対するアダプタ4の固定により、パイプ2Aに取付けられる。
【0061】
尚、
図13においては、図示上、パイプ2Aにアダプタ4が固定されている状態の下で、アンテナ3の雄ねじ部20をアダプタ4の雌ねじ孔21に螺合させる作業が示されているが、これは、特に、アンテナ3が雄ねじ部20を有すること、アダプタ4が雌ねじ孔21を形成するためのナット22を有すること、アンテナ3の雄ねじ部20とアダプタ4のナット22とが螺合させる関係にあることを明確にするために図示されたものであり、この第4実施形態においても、アンテナ3とアダプタ4とを一体化した後、そのアダプタ4内へのパイプ2Aの挿入、アンテナ3の指向方向調整を経て、アダプタ4がパイプ2Aに固定される。
【0062】
以上実施形態について説明したが本発明にあっては次の態様を包含する。
(1)アダプタ4における箱状本体部8又は円筒状本体部18の孔10内に、留め具14をその使用前において完全に収納するために、側壁部8b又は周壁部18bの肉厚を、少なくとも孔10周辺部分において肉盛りを含め厚くすること。これにより、留め具14の側壁部8b又は周壁部18bの各外周面からの出っ張りを完全になくし、取り扱い性を高めることができる。
(2)アダプタ4の蓋部8aに、該蓋部8aを貫通する雌ねじ孔21を直接的に形成すること。
(3)アンテナ3の指向方向調整に当たり、アンテナ3の所定部分(目印)として、窪み部6に限らず、アンテナ3に印刷された表示目印、衛星信号をGNSS受信機に出力するコネクタ部を利用し、それらを所定方向としての北方向に向けること。
(4)各実施形態において、支柱2に対するアンテナ3の取付けに当たり、先ず、アダプタ4を支柱2に取付け、その後、雄ねじ部9と雌ねじ孔7aとの螺合関係を利用することにより、支柱2に取付けられたアダプタ4に対してアンテナ3を取付けると共に、そのアンテナ3の指向方向を調整すること。この場合、アンテナ3の指向方向を調整した後、雄ねじ部9と雌ねじ孔7aとの螺合関係を留め具等により固定することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、支柱2に対するアンテナ3の取付け負担を極力少なくすることに利用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 アンテナ取付け構造
2 支柱
2A 単管パイプ
3 GNSSアンテナ
4 アダプタ
6 窪み部(所定部分)
7 アンテナの取付け部
7a 雌ねじ孔(一方又は他方の螺合要素)
8 箱状本体部(筒状本体部)
8a 蓋部
8b 側壁部(周壁部)
9 雄ねじ部(他方又は一方の螺合要素)
10 孔
10A 雌ねじ孔
12 ボルト
12a ねじ部(雄ねじ部)
13 貫通孔
14 留め具
14a イモネジ(留め具)
14b ドリルネジ(留め具)
17 薄膜材
18 円筒状本体部(筒状本体部)
18a 蓋部
20 雄ねじ部(一方又は他方の螺合要素)
21 雌ねじ孔(他方又は一方の螺合要素)
22 ナット