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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137391
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20230922BHJP
   H01L 23/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H05K1/02 R
H01L23/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043585
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【弁理士】
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】林 貴広
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA05
5E338AA18
5E338BB71
5E338BB75
5E338DD01
5E338DD40
5E338EE32
5E338EE60
(57)【要約】
【課題】配線基板の方向を容易に判別できると共に、半導体素子組付け後、及び半導体素子組付け後の電子部品をベース基板等に搭載後における不具合の発生を抑制することが可能な配線基板を提供する。
【解決手段】配線基板は、ベース基板と、ベース基板の第1面上に配置された金具と、を備え、金具は、第1面の中心を通ると共に第1面に直交する平面を基準として面対称の形状を有しており、1つの外側面には、少なくとも一部が窪んだ凹部が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板であって、
ベース基板と、
前記ベース基板の第1面上に配置された金具と、
を備え、
前記金具は、
前記第1面の中心を通ると共に前記第1面に直交する平面を基準として面対称の形状を有しており、
1つの外側面には、少なくとも一部が窪んだ凹部が形成されていることを特徴とする、配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板であって、
前記第1面は矩形状の面であり、
前記ベース基板と前記金具とは、前記平面であってさらに前記第1面を形成する一辺と平行な平面を基準として面対称の形状を有しており、
前記凹部は、前記金具の外側面のうち、前記平面を挟んで対向する一対の外側面のいずれか一方に形成されていることを特徴とする、配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子が搭載される配線基板が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、ベース基板に形成されたキャビティ状の凹部に、電子部品としての振動素子が配置され、蓋体により振動素子が配置された密閉空間が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-231001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配線基板は、半導体素子を搭載するための加工の際に方向を判別する必要がありながら、デザイン的な理由などにより、例えば左右対称形状などの方向を判別できない形状を有する場合がある。このような場合、半導体素子の搭載時の加工に手間と時間を要すると共に、配線基板に対して半導体素子が誤った方向で組付けられる虞があった。この点、特許文献1に記載の技術では、配線基板の方向を判別することについて何ら考慮されていない。また、配線基板の方向を判別するために、配線基板の金具に対して、インクを用いてマーク(目印)を付ける場合がある。しかし、高温環境下に晒されるという電子部品(半導体素子組付け後の配線基板)の性質を考慮すると、高温によってガス化するインクの使用は、電子部品の不具合発生を引き起こす虞があり、好ましくない。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、配線基板の方向を容易に判別できると共に、半導体素子組付け後、及び半導体素子組付け後の電子部品をベース基板等に搭載後における不具合の発生を抑制することが可能な配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、配線基板が提供される。この配線基板は、ベース基板と、前記ベース基板の第1面上に配置された金具と、を備え、前記金具は、前記第1面の中心を通ると共に前記第1面に直交する平面を基準として面対称の形状を有しており、1つの外側面には、少なくとも一部が窪んだ凹部が形成されている。
【0008】
この構成によれば、金具の外側面には一部が窪んだ凹部が形成されているため、金具が面対称の形状を有していても、凹部をマーク(目印)として配線基板の方向を容易に判別できる。本構成では、マークとして機能する凹部が、金具の外側面に塗布されたインクではなく、金具の外側面の形状変化として形成される。そのため、インクを用いてマークを形成する場合と比べて、電子部品(半導体素子組付け後の配線基板)が高温環境下に曝された場合であっても、凹部は変化することなく正常にマークを読み取ることができる。また、凹部はインクのようにガス化することがないため、ガスによるベース基板の配線の腐食によって、電気的な不良や封止性の低下が起こることを抑制できる。すなわち、本構成の配線基板では、電子部品(半導体素子組付け後の配線基板)の不具合の発生を抑制できる。さらに、凹部は、金具がベース基板に配置される前に形成されればよいため、配線基板完成後のインク塗布の工程が不要となり、インク塗布の際にキズや汚れが生じるリスクを解消できる。
【0009】
(2)上記形態の配線基板において、前記第1面は矩形状の面であり、前記ベース基板と前記金具とは、前記平面であってさらに前記第1面を形成する一辺と平行な平面を基準として面対称の形状を有しており、前記凹部は、前記金具の外側面のうち、前記平面を挟んで対向する一対の外側面のいずれか一方に形成されていてもよい。
この構成によれば、ベース基板と金具とが矩形の面対称の形状を有している。すなわち、ベース基板と金具とが共に面対称な形状を有して方向を判別しづらくても、凹部がマークとして機能することで、配線基板全体の方向を判別できる。
【0010】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、配線基板、半導体装置、電子部品、およびこれらを備えるシステム等の形態で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の配線基板の概略斜視図である。
図2】本発明の実施形態の配線基板の概略上面図である。
図3】凹部の説明図である。
図4】本実施形態の配線基板の製造方法のフローチャートである。
図5】比較例の配線基板の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
図1は、本発明の実施形態の配線基板100の概略斜視図である。本実施形態の配線基板100は、ベース基板10上に半導体素子が搭載されることにより電子部品として機能する。本実施形態では、ベース基板10上に配置されたリング金具(金具)20の外側面に凹部21が形成されて、凹部21がマークとして機能することにより、配線基板100の方向を判別できる。
【0013】
図1に示されるように、本実施形態の配線基板100は、矩形の平板状のベース基板10と、ベース基板10上に配置されたリング金具20と、を備えている。ベース基板10は、窒化アルミニウム(AlN)などで形成されたセラミック基板1と、セラミック基板1に積層された金属製のヒートシンク2とを備えている。なお、図1には、それぞれが直交するX軸と、Y軸と、Z軸とで構成されるように定義された直交座標系CSが示されている。X軸とY軸とのそれぞれは、矩形状のベース基板10の各辺に平行になるように定義されている。直交座標系CSは、図2以降で示される直交座標系CSと対応している。
【0014】
本実施形態のリング金具20は、銅(Cu)により形成され、ニッケル(Ni)および金(Au)により表面がメッキされている。リング金具20は、ベース基板10において、積層されたセラミック基板1とヒートシンク2との内のセラミック基板1側に配置されている。リング金具20は、直方体から、断面形状が長方形で中心部分がZ軸方向に貫通する形状を有している。換言すると、リング金具20は、ZX平面に平行な2組の平板と、YX平面に平行な2組の平板とが組み合わされて、中央部にキャビティ状の空間SPを形成している。リング金具20のZ軸負方向側は、ベース基板10のセラミック基板1のZ軸正方向側の面にろう付けされている。
【0015】
リング金具20は、X軸正方向側に位置して、YZ平面に平行な外側面20sを有している。外側面20sには、X軸負方向側に窪んだ凹部21が形成されている。凹部21は、外側面20sのYZ平面において、円形状を有する。凹部21は、切削加工(デント加工)により外側面20sに形成されている。図1に破線により示される平面PLは、凹部21が形成されていない状態のリング金具20の重心を通るYZ平面に平行な平面である。凹部21が形成されていないリング金具20は、平面PLを基準として面対称の形状を有している。また、凹部21はリング金具20の形成時にプレス加工を用いて形成することも可能である。
【0016】
図2は、配線基板100の概略上面図である。図2には、リング金具20により形成される空間SP内におけるベース基板10のZ軸正方向側の面である第1面SF1の概略が示されている。第1面SF1上に半導体素子が配置されることにより、配線基板100は、電子部品として機能する。
【0017】
図2に示されるように、セラミック基板1には、平板状の形状に対して、厚さ方向(Z軸方向)に貫通する5つの矩形状の貫通孔HLが形成されている。ヒートシンク2は、平板状の形状に対して、5つの貫通孔HLに対応する位置に、Z軸正方向側に矩形状に突出している。なお、ベース基板10として、突出したヒートシンク2のZ軸正方向側の位置と、セラミック基板1のZ軸正方向側の位置とが同じになるように、ヒートシンク2の突出量が形成されている。
【0018】
本実施形態では、リング金具20の中心と、ベース基板10の中心とは、中心Oである。なお、中心Oは、リング金具20の重心およびベース基板10の重心を通る平行なZ軸上の第1面SF1の点である。図2に示されるように、第1面SF1は、長方形の形状である。ベース基板10と、凹部21が形成されていないリング金具20とは、中心Oを通ると共に第1面SF1に直交してY軸に平行な中心軸OL1を含む平面PLを基準として、面対称の形状を有している。そのため、凹部21は、面対称の基準となる中心軸OL1を挟んで対向する一対の外側面のうち、X軸正方向側に位置する外側面20sに形成されていると換言できる。図2に示されるように、外側面20sに凹部21は、中心軸OL2よりもY軸正方向側に形成されている。なお、ベース基板10と、凹部21が形成されていないリング金具20とは、中心Oを通ると共に第1面SF1に直交してX軸に平行な中心軸OL2を含む平面を基準として、面対称の形状を有している。
【0019】
図3は、凹部21の説明図である。図3には、図1におけるA-A断面が拡大された概略断面図が示されている。図3に示されるように、凹部21は、外側面20sに対して、X軸に平行な中心軸OL3に沿って窪んだ形状を有する。凹部21におけるX軸負方向側の底面21bはデント加工により形成されている。本実施形態では、底面21bの面粗度は、外側面20sの面粗度よりも小さくなるように加工されている。
【0020】
図4は、本実施形態の配線基板100の製造方法のフローチャートである。図4に示される配線基板100の製造フローでは、初めに、リング金具20が所定の形状に形成される(ステップS1)。形成されたリング金具20の所定の場所に、デント加工によって凹部21が形成される。リング金具20が、予めセラミック基板1とヒートシンク2とが接合されたベース基板10にろう付けされる(ステップS3)。リング金具20にNiメッキが施される(ステップS4)。リング金具20に施されたNiメッキの表面に対して、さらに金(Au)によるメッキが施され(ステップS5)、配線基板100の製造フローが終了する。このとき、ステップS4及びステップS5において、リング金具20と同時にベース基板10の端子やヒートシンクにも各金属メッキが施されていてもよい。製造された配線基板100には、半導体素子等が搭載される工程が行われ、搭載後の電子部品が最終製品として使用される。
【0021】
図5は、比較例の配線基板100zの説明図である。比較例の配線基板100zでは、上記実施形態の配線基板100における凹部21の代わりに、外側面20sに凹部21が形成された位置にインクが塗布された円形のインクマークMKが形成されている。図5には、図3に示される配線基板100と同一箇所の比較例の配線基板100zが示されている。比較例の配線基板100zの製造フローは、図4に示される配線基板100の製造フローに対して、凹部21が形成される処理(ステップS2)を備えていない。その代わりに、比較例の製造フローは、Auメッキ(ステップS5)の後に、インクマークMK形成のためのインクが塗布される処理を備えている。
【0022】
以上説明したように、本実施形態の配線基板100では、ベース基板10の第1面SF1にリング金具20がろう付けされる。リング金具20は、図2に示されるように、中心Oを通ると共に第1面SF1に直交してY軸に平行な中心軸OL1を含む平面PLを基準として、面対称の形状を有している。リング金具20の外側面20sには、窪んだ凹部21が形成されている。そのため、本実施形態では、リング金具20の外側面20sには一部が窪んだ凹部21が形成されているため、リング金具20が面対称の形状を有していても、凹部21をマークとして配線基板100の方向を容易に判別できる。本実施形態では、マークとして機能する凹部21が、リング金具20の外側面20sに塗布された比較例のようなインクではなく、リング金具20の外側面20sの形状変化として形成される。そのため、比較例のようにインクを用いてマークを形成する場合と比べて、電子部品(半導体素子組付け後の配線基板100)が高温環境下に曝された場合であっても、凹部21は変化することなく正常にマークを読み取ることができる。また、凹部21はインクのようにガス化することがないため、ガスによるベース基板10の配線の腐食によって、電気的な不良や封止性の低下が起こることを抑制できる。すなわち、本実施形態の配線基板100では、電子部品の不具合の発生を抑制できる。さらに、凹部21は、リング金具20がベース基板10に配置される前に形成されればよいため、配線基板100の完成後のインク塗布の工程が不要となり、インク塗布の際にキズや汚れが生じるリスクを解消できる。
【0023】
また、本実施形態の配線基板100では、図2に示されるように、第1面SF1は、長方形の形状である。凹部21は、面対称の基準となる中心軸OL1を含む平面PLを挟んで対向するX軸正方向側に位置する外側面20sに形成されている。本実施形態では、ベース基板10とリング金具20とが共に面対称な形状を有して方向を判別しづらくても、凹部21がマークとして機能することで、配線基板100全体の方向を判別できる。
【0024】
また、本実施形態の凹部21がデント加工により形成されているため、底面21bの面粗度は、外側面20sの面粗度よりも小さい。そのため、本実施形態の配線基板100では、外側面20sに光が入射したときに、底面21bの反射率と、外側面20sの反射率とが異なるため、見え方の違いによって凹部21の位置を判別しやすい。例えば、画像処理によって凹部21を判別する場合に、2値化によって、外側面20sにおける凹部21と、その他の部分とが明確に判別される。また、外側面20sをY軸回りにθ(例えば30°)回転させて見た場合に、反射率の相違によって凹部21を判別しやすい。
【0025】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0026】
上記実施形態の配線基板100は一例であって、配線基板100が備える構成等については、リング金具20の外側面20sに凹部21が形成される範囲で変形可能である。例えば、ベース基板10は、セラミック基板1のみで構成されていてもよいし、セラミック基板1とヒートシンク2とに加えて、他の構成が含まれていてもよい。上記実施形態のベース基板10は、1つのセラミック基板1と、1つのヒートシンク2とが積層された基板であったが、複数のセラミック基板1が積層されていてもよい。セラミック基板1の材質は、AlN以外であってもよく、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア等の酸化物系セラミック、窒化珪素、窒化チタン等の窒化物系セラミックなどを用いることができる。ヒートシンク2およびリング金具20の材質は、Cu以外であってもよく、Au、銀(Ag)、白金(Pt)、およびこれらの合金などであってもよい。
【0027】
上記実施形態において凹部21が形成される位置については、一例であり、X軸正方向側の外側面20sを含むその他の外側面の範囲内であれば形成可能である。例えば、凹部21は、リング金具20におけるY軸負方向側のZX平面に平行な外側面に形成されてもよい。凹部21は、図2に示される中心軸OL1を含むYX平面に平行な平面PL、または中心軸OL2を通るZX平面に交差する位置に形成されてもよい。凹部21は、外側面における高さ方向(Z軸方向)において、上側5%と、ベース基板10側である下側5%とを除く中央側90%の範囲内に形成されることが好ましい。凹部21の形状については、円形以外でもよく、方向判別のためのマークとして機能する範囲で変形できる。外側面20sに対して窪んでいる深さも変形可能である。さらに、底面21bの面粗度は、外側面20sの面粗度よりも大きくてもよい。
【0028】
上記実施形態の配線基板100の製造フローにおいて、図4ではステップS1からステップS2と段階的であるが、プレス加工を用いてステップS1とステップS2とを同時に形成してもよい。他にも、ステップS2にて凹部21を形成後、リング金具20単体にNiメッキを行い、その後にステップS3を実施し、追加でさらにリング金具20に再度Niメッキを実施してもよい。
【0029】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0030】
1…セラミック基板
2…ヒートシンク
10…ベース基板
20…リング金具(金具)
20s…外側面
21…凹部
21b…底面
100…配線基板
100z…比較例の配線基板
CS…直交座標系
HL…貫通孔
MK…インクマーク
O…中心
OL1,OL2,OL3…中心軸
PL…平面
SF1…第1面
SP…空間
図1
図2
図3
図4
図5