(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013741
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】撮像用レンズ
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20230119BHJP
【FI】
G02B7/02 D
G02B7/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118131
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 康孝
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AB12
2H044AB28
2H044AD01
(57)【要約】
【課題】レンズ内部での不要反射の発生を防止するとともに、レンズユニットの組み立てを容易に行うことができる撮像用レンズを提供する。
【解決手段】鏡筒内に設置されるレンズの有効径の外側に、当該レンズを取り囲むように形成されるコバ部のうち、少なくともレンズの入射面側のコバ面を拡散面で形成する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡筒内に設置されるレンズの有効径の外側に、当該レンズを取り囲むように形成されるコバ部のうち、少なくとも前記レンズの入射面側のコバ面が拡散面で形成される、
撮像用レンズ。
【請求項2】
前記コバ部のうち、更に前記レンズの出射面側のコバ面が拡散面で形成される、
請求項1に記載の撮像用レンズ。
【請求項3】
前記コバ部のうち、更に前記レンズの外周面が拡散面で形成される、
請求項1又は請求項2に記載の撮像用レンズ。
【請求項4】
前記コバ面は、前記レンズの外部から当該コバ面に到達した光線を、前記鏡筒の内壁に向かう方向に、より強く拡散反射させる向きに形成される、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の撮像用レンズ。
【請求項5】
前記拡散面は砂刷り面である、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の撮像用レンズ。
【請求項6】
前記レンズは、当該レンズのコバ部に対応する金型面が粗面で形成された金型を用いて製造される、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の撮像用レンズ。
【請求項7】
前記レンズのコバ部に形成された拡散面には、反射率を低減する塗装が施される、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の撮像用レンズ。
【請求項8】
前記塗装は黒色塗装である、
請求項7に記載の撮像用レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像用レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラを用いた各種の運転支援システムが車両に搭載されている。これらの運転支援システムは、例えば、カメラが撮像した車両周囲の画像を、インナーミラーやドアミラーの代替として運転者に提示する。また、カメラが撮像した画像を用いて、車両周囲の道路線形や車両周囲の障害物情報を検出することにより、車両の自動運転を行うための周囲情報の取得を行う。カメラが撮像した画像は、人間の視覚を代替する目的で使用されるため、コントラストが高い良好な画質であることが求められる。例えば、画質の低下の要因となるフレアやゴーストが生じにくいことが求められる。フレアやゴーストは、レンズに強い逆光が入射した際にレンズ内部で生じる不要反射が、迷光となって撮像素子に到達することで発生する。
【0003】
例えば、特許文献1では、レンズユニットを内包する鏡筒内に遮光版を設置することによって、レンズ内での不要反射の発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、レンズと遮光板とは別部材になっているため、レンズを組み立てる際に、遮光板をレンズの光軸に対して直交する方向に正確に設置するのに手間がかかるという課題があった。
【0006】
本開示は、レンズ内部での不要反射の発生を防止するとともに、レンズユニットの組み立てを容易に行うことができる撮像用レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る撮像用レンズは、鏡筒内に設置されるレンズの有効径の外側に、当該レンズを取り囲むように形成されるコバ部のうち、少なくとも前記レンズの入射面側のコバ面が拡散面で形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る撮像用レンズによれば、レンズ内部での不要反射の発生を防止するとともに、レンズユニットの組み立てを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る撮像用レンズの構成の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、レンズのコバ部について説明する図である。
【
図3】
図3は、実施形態の撮像用レンズの反射防止構造を説明する図である。
【
図4】
図4は、
図3のレンズに入射した逆光によって生じる不要反射の挙動を説明する図である。
【
図5】
図5は、実施形態の変形例の撮像用レンズの反射防止構造を説明する図である。
【
図6】
図6は、
図5のレンズに入射した逆光によって生じる不要反射の挙動を説明する図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の変形例に示した撮像用レンズを製造する際に利用する金型の概略構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る撮像用レンズの実施の形態について説明する。
【0011】
(撮像用レンズの全体構成)
まず、
図1を用いて、撮像用レンズ10の全体構成を説明する。
図1は、実施形態に係る撮像用レンズの構成の一例を示す断面図である。
【0012】
撮像用レンズ10は、例えば車両に設置されて、車両の周囲の画像を、CMOSやCCD等の撮像素子に結像する。結像された画像は、撮像素子によって撮像されて、例えば、後写鏡(バックミラー)に表示される。後写鏡に表示された画像は、車両を後退させる際に、運転者に対して車両後方の状態を伝える。また、撮像された画像は、車両を自動運転させる際に、車両の進行方向の道路領域や障害物の有無等を検出するために用いられる。
【0013】
撮像用レンズ10は、鏡筒14の内壁に、後述する複数のレンズを積層した状態で保持する。そして、撮像用レンズ10は、撮像素子12の位置に、光学像を結像させる。撮像用レンズ10は、鏡筒14の底部に形成されたマウント面15が、撮像素子12から所定の距離(フランジバック)に位置するように、撮像素子12を収容した非図示の筐体に設置される。
【0014】
鏡筒14は、例えば樹脂で成形されて、レンズ20を保持する円筒状の部材である。鏡筒14の内側は、例えば、つや消し黒の材質で形成、又はつや消し黒に塗装されて、光の反射を防止する。鏡筒14の底面には、当該鏡筒14に保持されたレンズの光軸Aに垂直なマウント面15が形成される。
【0015】
レンズ20は、画角、焦点距離等の光学仕様を満足する形状、枚数で設計されて、樹脂またはガラスで成形される。成形されたレンズ20は、所定の間隔で鏡筒14の内壁に配置される。
図1の例では、レンズ20は、入射面側(前面側)から順に、第1レンズ20a,第2レンズ20b,第3レンズ20c,第4レンズ20d,第5レンズ20eの5枚のレンズで構成されている。各レンズの表面および裏面は、球面または非球面で形成されている。
【0016】
複数のレンズの中間部には、絞り板16が設置される。絞り板16は、黒色塗装された板状の部材であり、中央部に、光が通過する丸穴が設けられている。絞り板16は、レンズ20を通過する光束の範囲を制限する。
【0017】
また、第1レンズ20aと鏡筒14との接触部位にはOリング17が設置される。Oリング17は、撮像用レンズ10の内部に、水分や埃等が侵入するのを防止する。
【0018】
なお、撮像用レンズは、複数のレンズの中間部に、不要光を遮断する遮光板を備えてもよい。
【0019】
(レンズのコバ部について)
図2を用いて、レンズのコバ部について説明する。
図2は、レンズのコバ部について説明する図である。なお、
図2に示すレンズは、
図1に記載した第4レンズ20dである。
【0020】
図2に示すように、第4レンズ20dの中央部には、外部から入射した光線が通過する有効径Dの円形領域が形成される。有効径Dは、第4レンズ20dを含む複数のレンズを組み合わせて、
図1に示すレンズ20を形成した際に、当該レンズ20に入射可能な、光軸Aに平行な光束の直径である。
【0021】
第4レンズ20dの有効径Dの外側(外周側)には、第4レンズ20dを取り囲むコバ部30aが形成される。コバ部30aは、第4レンズ20dを鏡筒14の内壁に安定して保持するため、および隣接するレンズを積層した際に、レンズ同士を安定して保持するために形成された部位である。
【0022】
コバ部30aは、第1コバ面32aと、第2コバ面32bと、第3コバ面32cと、第1外周面34aと、第2外周面34bとを有する。
【0023】
第1コバ面32aは、第4レンズ20dのコバ部30aの入射面側に形成された面である。第4レンズ20dを光軸A方向から見たとき、第1コバ面32aは、円環状の面を形成する。より具体的には、第1コバ面32aは、第4レンズ20dの有効径Dの外側に形成された斜面31aと、光軸Aに略直交する水平面31bとを含む。
【0024】
第2コバ面32bは、第4レンズ20dのコバ部30aの出射面側の最外周部に形成された、光軸Aに略直交する面である。第4レンズ20dを光軸A方向から見たとき、第2コバ面32bは、円環状の面を形成する。
【0025】
第3コバ面32cは、第4レンズ20dのコバ部30aの第2コバ面32bの内周側に形成された、光軸Aに略直交する面である。第4レンズ20dを光軸A方向から見たとき、第3コバ面32cは、円環状の面を形成する。
【0026】
第1外周面34aは、第4レンズ20dの外縁の側端部に、第1コバ面32aと第2コバ面32bとを繋ぐように形成された面である。第1外周面34aは、光軸Aと略平行な円筒面を形成する。
【0027】
第2外周面34bは、第2コバ面32bと第3コバ面32cとを繋ぐように形成された面である。第2外周面34bは、光軸Aと略平行な円筒面を形成する。なお、第4レンズ20dは、第2コバ面32bと第3コバ面32cとの間に第2外周面34bを備えているが、この第2外周面34bは、後述するように、第4レンズ20dと第5レンズ20eとを安定して保持するために形成された面である。したがって、撮像用レンズ10のレンズ構成によっては、第4レンズ20dに、第2外周面34bが形成されない場合もある。
【0028】
なお、ここでは、第4レンズ20dについてのみ説明したが、
図1に示すその他のレンズも、有効径Dの外側に、同様のコバ部を備える。
【0029】
(撮像用レンズの反射防止構造)
図3を用いて、撮像用レンズ10の反射防止構造について説明する。
図3は、実施形態の撮像用レンズの反射防止構造を説明する図である。特に、
図3は、撮像用レンズ10が備える複数のレンズのうち、第4レンズ20dと第5レンズ20eのみを示す。
【0030】
第4レンズ20dは、
図3で示したコバ部30aを備える。
【0031】
第5レンズ20eは、レンズの有効径Dの外側に、コバ部30bを備える。コバ部30bは、第5レンズ20eの入射面側に、第1コバ面32dと第2コバ面32eとを備える。また、コバ部30bは、第5レンズ20eの出射面側に、第3コバ面32fを備える。更に、コバ部30bは、第1外周面34cと第2外周面34dを備える。
【0032】
第4レンズ20dと第5レンズ20eとを鏡筒14に取り付けた際に、第4レンズ20dの第2コバ面32bと第5レンズ20eの第1コバ面32dとは面接触する。また、第4レンズ20dの第3コバ面32cと第5レンズ20eの第2コバ面32eとは面接触する。更に、第4レンズ20dの第2外周面34bと第5レンズ20eの第2外周面34dとは面接触する。そして、第4レンズ20dの第1外周面34aと第5レンズ20eの第1外周面34cとは、鏡筒14の内壁に支持される。このような構成とすることによって、第4レンズ20dと第5レンズ20eとは、鏡筒14に強固に支持される。
【0033】
そして、第4レンズ20dのコバ部30aを形成する各面、および第5レンズ20eのコバ部30bを形成する各面は、拡散面とされている。具体的には、第4レンズ20dのコバ部30aを形成する、入射面側の第1コバ面32aと、出射面側の第2コバ面32bと第3コバ面32cと、外周側面側の第1外周面34aと、第2外周面34bと、は砂刷り面とされて、更に、墨塗りによって黒色塗装されている。砂刷り面とは、不規則な砂目状のテクスチャを有する面である。砂刷り面は、例えば、Rz=10μm程度の表面粗さを有する拡散反射面をなす。また、砂刷り面とすることによって、墨塗りを行った際の墨とレンズとの密着力が向上する。そのため、例えば、撮像用レンズ10を高温高湿の環境に放置した場合であっても、墨の剥がれが防止される。更に、砂刷り面は黒色塗装されることによって、可視光の反射率が低減される。これにより、第4レンズ20dのコバ部30aを形成する各面に入射した光線は拡散反射する。
【0034】
第5レンズ20eのコバ部30bを形成する各面も、同様に、黒色塗装された砂刷り面とされている。第4レンズ20dのコバ部30aおよび第5レンズ20eのコバ部30bを形成する各面をこのような状態とすることによって、結像に関係しない光が第4レンズ20dのコバ部30aおよび第5レンズ20eのコバ部30bに入射した場合に、コバ部30a,30bにおける不要反射を低減することができる。詳しくは後述する(
図4参照)。
【0035】
なお、ここでは、撮像用レンズ10が備える第4レンズ20dおよび第5レンズ20eのみについて説明したが、その他のレンズも同様の反射防止構造を備える。但し、事前のシミュレーション等によって効果が確認された場合は、必要最小限のレンズに対してのみ、前記した反射防止構造を施してもよい。
【0036】
(反射防止構造の作用)
図4を用いて、撮像用レンズ10の反射防止構造の作用を説明する。
図4は、
図3のレンズに入射した逆光によって生じる不要反射の挙動を説明する図である。なお、説明を簡単にするために、ここでは、第4レンズ20dの入射面についてのみ説明する。
【0037】
撮像用レンズ10の有効径Dの範囲内に入射した光線は、撮像用レンズ10が備える複数のレンズで屈折を繰り返しながら進行して、撮像素子12に結像する。これに対して、撮像用レンズ10の有効径Dの外部を進行する光線は、レンズのコバ部に到達する。
【0038】
図4に示す光線R1は、撮像用レンズ10の有効径Dの外部を進行する光線の一例である。光線R1は、点P1において、第4レンズ20dの入射面側の第1コバ面32aに到達する。第1コバ面32aは、前記したように黒色塗装された拡散面になっているため、光線R1は、点P1において第4レンズ20dの内部に進入することができない。そして、第1コバ面32aには黒色塗装が施されているため、反射率が低減されることにより、光線R1の反射光の強度は低減される。更に、第1コバ面32aは拡散面になっているため、光線R1は点P1において、反射強度分布DR1の拡散反射をする。反射強度分布DR1は、第1コバ面32aの入射面側の全方向に亘って略等しい強度で拡散反射することを示す。即ち、第1コバ面32aに到達した光線R1の強度は、黒色塗装された第1コバ面32aにおいて減衰する。そして、光線R1のうち、第1コバ面32aにおいて拡散反射した光線は、略全方向に均等に拡散される。したがって、光線R1の第4レンズ20dの内部への入射が抑制される。
【0039】
このような反射防止構造を備えることによって、撮像用レンズ10のコバ部30aに強い逆光が入射した場合であっても、当該逆光によるレンズ内部の不要反射の発生が抑制されるため、迷光の発生が抑制される。これによって、ゴーストやフレアの発生が抑制される。
【0040】
なお、前記した反射防止の施策は、少なくとも第4レンズ20dの入射面側の第1コバ面32aに対して施せばよい。しかし、第4レンズ20dの内部に進入した結像に関係しない光線による不要反射を低減するために、第4レンズ20dの出射面側の第2コバ面32bと第3コバ面32c、および第1外周面34aと第2外周面34bに対して、同様の反射防止の施策を施してもよい。
【0041】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態の撮像用レンズ10は、鏡筒14内に設置される第4レンズ20dの有効径Dの外側に、当該第4レンズ20dを取り囲むように形成されるコバ部30aのうち、少なくとも第4レンズ20dの入射面側の第1コバ面32aが拡散面で形成される。したがって、レンズ内部での不要反射の発生を防止するとともに、レンズユニットの組み立てを容易に行うことができる。
【0042】
また、本実施形態の撮像用レンズ10において、第4レンズ20dのコバ部30aのうち、更に第4レンズ20dの出射面側の第2コバ面32bおよび第3コバ面32cが拡散面で形成される。したがって、レンズ内部での不要反射の発生をより一層防止することができる。
【0043】
また、本実施形態の撮像用レンズ10において、第4レンズ20dのコバ部30aのうち、更に第4レンズ20dの第1外周面34aおよび第2外周面34bが拡散面で形成される。したがって、レンズ内部での不要反射の発生をより一層防止することができる。
【0044】
また、本実施形態の撮像用レンズ10において、第4レンズ20dのコバ部30aに形成される拡散面は、砂刷り面である。したがって第4レンズ20dのコバ部30aに到達した光線が、第4レンズ20dの内部に進行するのを阻止することができる。これによって、第4レンズ20dの内部における不要反射を防止することができる。
【0045】
また、本実施形態の撮像用レンズ10において、第4レンズ20dのコバ部30aに形成された拡散面には、反射率を低減する塗装が施される。したがって、第4レンズ20dのコバ部30aにおける反射率を低減することができる。
【0046】
また、本実施形態の撮像用レンズ10において、第4レンズ20dのコバ部30aになされる塗装は黒色塗装である。したがって、第4レンズ20dのコバ部30aにおける反射率を、より確実に低減することができる。
【0047】
(実施形態の変形例)
次に、実施形態の変形例を説明する。本変形例に示す撮像用レンズ10は、前述した反射防止構造に加えて、更なる反射防止構造を備える。
【0048】
(撮像用レンズの反射防止構造)
図5を用いて、撮像用レンズ10の別の反射防止構造について説明する。
図5は、実施形態の変形例の撮像用レンズの反射防止構造を説明する図である。特に、
図5は、撮像用レンズ10が備える複数のレンズのうち、第4レンズ21dと第5レンズ21eのみを示す。
【0049】
第4レンズ21dは、レンズの有効径Dの外側に、コバ部30cを備える。
【0050】
コバ部30cは、第4レンズ21dの入射面側に、第1コバ面32gを備える。また、コバ部30cは、第4レンズ21dの出射面側に、第2コバ面32hと第3コバ面32iを備える。更に、コバ部30cは、第1外周面34eと第2外周面34fを備える。
【0051】
第4レンズ21dを入射面側から見たときに、第1コバ面32gは、光軸A側の端部が、外周側の端部よりも近く(手前)に位置する。即ち、第1コバ面32gの法線は、光軸Aに平行ではなく、第4レンズ21dの入射面側において、鏡筒14の内壁に突き当たる方向を向く。即ち、第1コバ面32gは、
図5に示す角度θ1だけ傾斜して形成される。角度θ1の値は、迷光の低減レベルに応じて設定されて、例えば1~8°程度とされる。
【0052】
また、第2コバ面32hの法線と第3コバ面32iの法線も、光軸Aに平行ではなく、第4レンズ21dの入射面側において、鏡筒14の内壁に突き当たる方向を向く。即ち、第2コバ面32hは、
図5に示す角度θ2だけ傾斜して形成される。また、第3コバ面32iは、
図5に示す角度θ3だけ傾斜して形成される。角度θ2,θ3の値は、迷光の低減レベルに応じて設定されて、例えば1~8°程度とされる。
【0053】
なお、第4レンズ21dが備える第1外周面34eと第2外周面34fとは、光軸Aと略平行な円筒面を形成する。
【0054】
第5レンズ21eは、レンズの有効径Dの外側に、コバ部30dを備える。
【0055】
コバ部30dは、第5レンズ21eの入射面側に、第1コバ面32jと第2コバ面32kを備える。また、コバ部30dは、第5レンズ21eの出射面側に、第3コバ面32lを備える。更に、コバ部30dは、第1外周面34gと第2外周面34hを備える。
【0056】
第5レンズ21eを入射面側から見たときに、第1コバ面32jおよび第2コバ面32kは、光軸A側の端部が、外周側の端部よりも近く(手前)に位置する。即ち、第1コバ面32jおよび第2コバ面32kの法線は、光軸Aに平行ではなく、第5レンズ21eの入射面側において、鏡筒14の内壁に突き当たる方向を向く。即ち、第1コバ面32jは、
図5に示す角度θ2だけ傾斜して形成される。また、第2コバ面32kは、
図5に示す角度θ3だけ傾斜して形成される。角度θ2,θ3の値は、迷光の低減レベルに応じて設定されて、例えば1~8°程度とされる。
【0057】
また、第3コバ面32lの法線も、光軸Aに平行ではなく、第5レンズ21eの入射面側において、鏡筒14の内壁に突き当たる方向を向く。即ち、第3コバ面32lは、
図5に示す角度θ4だけ傾斜して形成される。角度θ4の値は、迷光の低減レベルに応じて設定されて、例えば1~8°程度とされる。
【0058】
なお、第5レンズ21eが備える第1外周面34gと第2外周面34hとは、光軸Aと略平行な円筒面を形成する。
【0059】
(反射防止構造の作用)
図6を用いて、反射防止構造の作用を説明する。
図6は、
図5の撮像用レンズに入射した逆光によって生じる不要反射の挙動を説明する図である。なお、説明を簡単にするために、ここでは、第4レンズ21dの入射面についてのみ説明する。
【0060】
撮像用レンズ10の有効径Dの範囲内に入射した光線は、撮像用レンズ10が備える複数のレンズで屈折を繰り返しながら進行して、撮像素子12に結像する。これに対して、撮像用レンズ10の有効径Dの外部を進行する光線は、レンズのコバ部に到達する。
【0061】
図6に示す光線R1は、撮像用レンズ10の有効径Dの外部を進行する光線の一例である。光線R1は、点P1において、第4レンズ21dの入射面側の第1コバ面32gに到達する。第1コバ面32gは、前記したように黒色塗装された拡散面になっているため、光線R1は、点P1において第4レンズ21dの内部に進入することができない。そして、第1コバ面32gには黒色塗装が施されているため、反射率が低減されることにより、光線R1の反射光の強度は低減される。更に、第1コバ面32gは拡散面になっているため、光線R1は点P1において、反射強度分布DR2の拡散反射をする。このとき、第1コバ面32gの法線方向は、第4レンズ21dの入射面側において鏡筒14の内壁に突き当たる方向を向いているため、反射強度分布DR2は、鏡筒14の内壁に向かう方向に強い反射強度を有する。即ち、第1コバ面32gに到達した光線R1の強度は、黒色塗装された第1コバ面32gにおいて減衰する。そして、光線R1のうち、第1コバ面32gにおいて拡散反射した成分の多くは、鏡筒14の内壁の方向に向かう。したがって、光線R1の第4レンズ21dの内部への入射が抑制される。
【0062】
このような反射防止構造を備えることによって、撮像用レンズ10のコバ部30cに強い逆光が入射した場合であっても、当該逆光によるレンズ内部の不要反射の発生が抑制されるため、迷光の発生が抑制される。これによって、ゴーストやフレアの発生が抑制される。
【0063】
(レンズの製造方法)
図7を用いて、本実施形態の変形例で説明した撮像用レンズ10を構成するレンズの製造方法を説明する。
図7は、本実施形態の変形例に示した撮像用レンズを製造する際に利用する金型の概略構造を説明する図である。
【0064】
撮像用レンズ10を構成するレンズは、樹脂レンズの場合、金型40に樹脂を流し込んで、金型40をプレスすることによって製造される。また、ガラスモールドレンズの場合は、金型40にガラス材料を入れて、加熱して軟化させた後で、金型40をプレスすることによって製造される。
【0065】
金型40は、上型42と、下型44と、胴型46とを備える。
【0066】
上型42は、レンズの入射面を形成する。上型42の金型面には、コバ面42aとレンズ入射面42bにそれぞれ対応する金型面が形成される。コバ面42aに対応する金型面は粗面で形成される。そして、レンズ入射面42bに対応する金型面は、所定の曲率を有する球面または非球面をなす鏡面で形成される。
【0067】
下型44は、レンズの出射面を形成する。下型44の金型面には、コバ面44aとレンズ出射面44bにそれぞれ対応する金型面が形成される。コバ面44aに対応する金型面は粗面で形成される。そして、レンズ出射面44bに対応する金型面は、所定の曲率を有する球面または非球面をなす鏡面で形成される。
【0068】
胴型46は、上型42と下型44とをプレスした際の位置ずれを防止するとともに、レンズの外周面を形成する。胴型46の金型面には、外周面46aに対応する金型面が、粗面で形成される。
【0069】
上型42と、下型44と、胴型46とを組み合わせた際に、各金型の金型面によって囲まれた空間50が形成される。樹脂レンズの材料となる樹脂、またはガラスモールドレンズの材料となるガラス材料は、当該空間50において、上型42と、下型44と、胴型46とでプレスされることによって、レンズが製造される。そして、コバ面42aとコバ面44aと外周面46aには、それぞれ、上型42と下型44と胴型46の粗面で形成された金型面が転写される。一方、レンズ入射面42bとレンズ出射面44bには、それぞれ、上型42と下型44の、レンズ面に対応する金型面が転写される。
【0070】
なお、図示はしないが、本実施形態の実施形態で説明した撮像用レンズ10を構成するレンズ(例えば、
図2に示した第4レンズ20d)も、
図7と同様の構造を有する金型によって製造される。その場合、コバ面42aとコバ面44aとは、傾きのない水平面とされる。
【0071】
(実施形態の変形例の作用効果)
以上説明したように、本実施形態の変形例の撮像用レンズ10において、第4レンズ21dの第1コバ面32gは、第4レンズ21dの外部から第1コバ面32gに到達した光線を、鏡筒14の内壁に向かう方向に、より強く拡散反射させる向きに形成される。したがって、レンズ内部での不要反射の発生を防止することができる。
【0072】
また、本実施形態の変形例の撮像用レンズ10において、例えば第4レンズ21dは、当該第4レンズ21dのコバ部30cに対応する金型面が粗面で形成された金型を用いて製造される。したがって、コバ面および外周面が拡散面で形成されたレンズを、安定して容易に製造することができる。
【0073】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述した実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
10 撮像用レンズ
12 撮像素子
14 鏡筒
15 マウント面
16 絞り板
20 レンズ
20a 第1レンズ
20b 第2レンズ
20c 第3レンズ
20d,21d 第4レンズ
20e,21e 第5レンズ
30a,30b,30c,30d コバ部
32a,32d,32g,32j 第1コバ面
32b,32e,32h,32k 第2コバ面
32c,32f,32i,32l 第3コバ面
34a,34c,34e,34g 第1外周面
34b,34d,34f,34h 第2外周面
40 金型
42 上型
42a,44a コバ面
42b レンズ入射面
44 下型
44b レンズ出射面
46 胴型
46a 外周面
50 空間
A 光軸
D 有効径
P1 点
R1 光線
DR1,DR2 反射強度分布
θ1,θ2,θ3 角度