IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

2023-137420積層フィルムの製造方法および積層フィルム並びに包装容器
<>
  • -積層フィルムの製造方法および積層フィルム並びに包装容器 図1
  • -積層フィルムの製造方法および積層フィルム並びに包装容器 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137420
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】積層フィルムの製造方法および積層フィルム並びに包装容器
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/28 20060101AFI20230922BHJP
   B32B 37/12 20060101ALI20230922BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230922BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20230922BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230922BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230922BHJP
   B29C 63/02 20060101ALI20230922BHJP
   B29C 65/48 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B05D1/28
B32B37/12
B32B27/00 D
C09J167/00
C09J11/06
B65D65/40 D
B29C63/02
B29C65/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043627
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】後藤 修
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 真由美
(72)【発明者】
【氏名】原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕介
【テーマコード(参考)】
3E086
4D075
4F100
4F211
4J040
【Fターム(参考)】
3E086AB02
3E086AD01
3E086AD24
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA33
3E086BB01
3E086BB52
3E086BB62
3E086CA01
3E086DA08
4D075AC23
4D075AC29
4D075AC35
4D075AC72
4D075AC84
4D075AC92
4D075AC94
4D075AC96
4D075AC97
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB48
4D075DB53
4D075DC36
4D075DC41
4D075EA35
4D075EB35
4D075EB38
4F100AK07E
4F100AK41B
4F100AK41D
4F100AK42A
4F100AK48C
4F100AK51B
4F100AK51D
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10E
4F100CA02B
4F100CA02D
4F100CB10B
4F100CB10D
4F100EH46B
4F100EH46D
4F100EJ38A
4F100EJ38C
4F100GB16
4F100GB23
4F100JA06B
4F100JA06D
4F100YY00B
4F100YY00D
4F211AA04
4F211AA24
4F211AA25
4F211AA29
4F211AD08
4F211AD20
4F211AH54
4F211AR06
4F211AR09
4F211AR17
4F211SA07
4F211SC06
4F211SD01
4F211SN06
4F211SN19
4F211SP04
4F211TA03
4F211TC01
4F211TC05
4F211TC17
4F211TD11
4F211TN42
4F211TN60
4F211TQ03
4F211TW06
4J040ED001
4J040KA16
4J040MA10
4J040NA06
(57)【要約】
【課題】環境負荷の低減化を図ることができ、しかも、接着剤層に気泡が生じることを抑制することができる積層フィルムの製造方法および積層フィルム並びに包装容器の提供。
【解決手段】積層フィルムの製造方法は、無溶剤型接着剤の粘度が50℃において700~2000mPa・sであり、塗工装置が、一対のロールと、無溶剤型接着剤を順次に転写して供給する複数の転写ロールと、複数の転写ロールのうち無溶剤型接着剤の供給開始側端に位置するドクターロールに微小なクリアランスを介して対向配置されるアプリケーションロールとを有するコーティングユニットをさらに備え、ドクターロールの周速が、1.0~10.0m/minであることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対のロールを備える塗工装置において、前記ロール間を通過する一方のフィルムに無溶剤型接着剤を塗工し、他方のフィルムを前記無溶剤型接着剤よりなる接着剤塗布層を介して重ね合わせながらラミネートする工程を含む積層フィルムの製造方法であって、
前記無溶剤型接着剤は、ポリエステル系樹脂よりなる主剤と、脂肪族イソシアネートよりなる硬化剤とを含有してなり、
前記無溶剤型接着剤の粘度が、50℃において700~2000mPa・sであり、
前記塗工装置は、前記一対のロールと、前記一対のロールの一方に無溶剤型接着剤を順次に転写して供給する複数の転写ロールと、前記複数の転写ロールのうち無溶剤型接着剤の供給開始側端に位置するドクターロールに微小なクリアランスを介して対向配置されるアプリケーションロールとを有するコーティングユニットをさらに備え、
前記ドクターロールの周速が、1.0~10.0m/minであることを特徴とする積層フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記クリアランスの大きさが40~100μmであることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記アプリケーションロールの周速が、0~0.1m/minであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記無溶剤型接着剤の主剤の粘度が、50℃において600~1800mPa・sであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記接着剤塗布層において、前記無溶剤型接着剤の塗布量が0.5~3.0g/m2 であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の製造方法によって製造されることを特徴とする積層フィルム。
【請求項7】
請求項6に記載の積層フィルムによって形成されていることを特徴とする包装容器。
【請求項8】
内部に食品を収容して密封した状態で加熱処理を経る食品用の包装容器であることを特徴とする請求項7に記載の包装容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無溶剤型接着剤を用いて原料フィルムを貼り合わせて積層フィルムを得る積層フィルムの製造方法およびこれにより得られた積層フィルム、並びに、この積層フィルムによって形成された包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品包装に用いられるパウチ包装容器や、カップ蓋に使用される軟包装用容器は、従来、樹脂フィルムなどの複数枚の原料フィルムが積層された積層フィルムにより構成されている。
このような包装容器において、例えばナイロンフィルムとポリエチレンフィルムとの組み合わせのように、特性の異なる種類の樹脂フィルムがラミネートされる場合には、両者の密着性が乏しいため、一般にラミネート用の接着剤によって貼り付けられる。
【0003】
このような接着剤としては、地球環境負荷の低減化の観点から、有機溶剤を含有せず、接着剤を加温して粘度を下げることにより塗工可能な無溶剤型接着剤を使用することが望まれている。例えば、従来の無溶剤型接着剤を使用した積層フィルムとしては、ポリエステルポリオールよりなる主剤と、脂肪族ジイソシアネート化合物および脂環族ジイソシアネートよりなる硬化剤とにより構成され、70℃における粘度が300~900mPa・sである無溶剤型接着剤よりなる接着剤層を有する積層フィルムが知られている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5397584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、無溶剤型接着剤を使用した積層フィルムにおいては、接着剤層に大きな気泡が生じやすく、そのため、積層フィルムにいわゆるゆず肌と呼称される多数の斑点状の微小な凹凸模様が生じる外観不良を引き起こすという問題がある。特に、積層フィルムに加熱処理を施した場合にゆず肌が顕著に発生してしまう。
一方、積層フィルムを用いた食品の分野で使用される包装容器は、食品の保存上、殺菌等の必要から加熱処理がなされる場合が多い。その結果、加熱処理を経た食品用の包装容器においてゆず肌が発生してしまうという外観上の問題があり、さらに、上述のようにゆず肌の原因が接着剤層に生じた気泡であるということは、接着剤層に隙間が生じているということが考えられるので、内部に収容された食品の保存性に疑義が生じる、という問題もある。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、環境負荷の低減化を図ることができ、しかも、接着剤層に気泡が生じることを抑制することができる積層フィルムの製造方法および積層フィルム並びに包装容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の積層フィルムの製造方法は、互いに対向する一対のロールを備える塗工装置において、前記ロール間を通過する一方のフィルムに無溶剤型接着剤を塗工し、他方のフィルムを前記無溶剤型接着剤よりなる接着剤塗布層を介して重ね合わせながらラミネートする工程を含む積層フィルムの製造方法であって、
前記無溶剤型接着剤は、ポリエステル系樹脂よりなる主剤と、脂肪族イソシアネートよりなる硬化剤とを含有してなり、
前記無溶剤型接着剤の粘度が、50℃において700~2000mPa・sであり、
前記塗工装置は、前記一対のロールと、前記一対のロールの一方に無溶剤型接着剤を順次に転写して供給する複数の転写ロールと、前記複数の転写ロールのうち無溶剤型接着剤の供給開始側端に位置するドクターロールに微小なクリアランスを介して対向配置されるアプリケーションロールとを有するコーティングユニットをさらに備え、
前記ドクターロールの周速が、1.0~10.0m/minであることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の積層フィルムは、上記の製造方法によって製造されることを特徴とする。
さらに、本発明の包装容器は、上記の積層フィルムによって形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層フィルムの製造方法によれば、特定のコーティングユニットを有する塗工装置に対して特定の成分および粘度を有する無溶剤型接着剤を組み合わせて用いて接着剤層を形成することにより、コーティングユニットのドクターロールとアプリケーションロールとの間にクリアランスを有し、かつ、ドクターロールが低速であるため、これらのロール間に貯留された無溶剤型接着剤の過剰なミキシングが行われないので、無溶剤型接着剤中に空気同伴による空気の巻き込みを極めて抑制することができ、従って、これが転写されてフィルム上に形成される接着剤塗布層においても気泡が生じることを抑制することができる。その結果、得られる積層フィルムや包装容器にゆず肌などの外観不良が発生することを防止することができるとともに、包装容器に安定した内容物の保存性を得ることができる。また、無溶剤型接着剤が有機溶剤を使用しないものであることから、環境負荷の低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の積層フィルムを製造するためのラミネータの一例における構成を示す説明図である。
図2】本発明の積層フィルムの一例における構成を示す説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
〔積層フィルムの製造方法〕
本発明の積層フィルムの製造方法は、図1に示されるように、ラミネータ10を用いて一対の長尺なフィルムW1,W2を高速搬送しながら無溶剤型接着剤で貼り合わせることによって積層フィルムを製造する方法であって、一方のフィルムW1に2つの液状成分(主剤および硬化剤)が事前に混合された無溶剤型接着剤を塗工装置20によって塗工した後、他方のフィルムW2を無溶剤型接着剤よりなる接着剤塗布層を介して重ね合わせながらラミネートする工程を含む。
【0012】
ラミネータ10は、一方のフィルムW1に無溶剤型接着剤を塗布する塗工装置20と、塗工装置20に無溶剤型接着剤を塗布予定の一方のフィルムW1を供給する巻き出しロール11と、一対の加圧ロール12a,12bを有し、塗工装置20から送出された接着剤塗布層が形成されたフィルムW1に他方のフィルムW2をラミネートするラミネート部12と、他方のフィルムW2を供給する巻き出しロール13と、フィルムW1,W2の積層体を巻き取る巻き取りロール14を備える。
塗工装置20は、一方のフィルムW1に、混合された無溶剤型接着剤を複数のロールで順次に転写し、薄く延ばしながら塗布するコーティングユニット21と、コーティングユニット21に無溶剤型接着剤を供給する供給ユニット25とを備える。
【0013】
コーティングユニット21は、回転可能に支持されて互いに軸並行に直列的に設けられた複数(図示の例では5つ)のロール21a~21eを有する。具体的には、コーティングユニット21は、互いに対向し、その間にフィルムW1を通過させる一対のロールであるバックアップロール21aおよびコーティングロール21bと、この一対のロールの一方(コーティングロール21b)に無溶剤型接着剤を順次に転写しながら供給する転写ロールであるメタリングロール21cおよびドクターロール21dと、転写ロールのうち無溶剤型接着剤の供給開始側端に位置するドクターロール21dに微小なクリアランス(隙間)を介して水平方向に沿って隣接して対向配置されるアプリケーションロール21eとを有する。
バックアップロール21a、コーティングロール21b、メタリングロール21cおよびドクターロール21dは、互いの外周面を接した状態でこの順に直列的に並んで配置されており、無溶剤型接着剤の供給終了側端に位置するコーティングロール21bと、これを押圧するバックアップロール21aとにより、無溶剤型接着剤を塗布するフィルムW1が挟持される。また、無溶剤型接着剤の供給開始側端に位置するドクターロール21dとアプリケーションロール21eとの間には、両ロール21d,21e間のクリアランスの上側の部分に、混合された主剤および硬化剤を一時的に貯留させる貯留部22が形成されている。貯留部22は、クリアランスによる断面略V状の空間がロール21d,21eの長手方向に離間して設けられた一対の堰板(図示せず)によって区画されることにより、形成されている。
【0014】
コーティングロール21bおよびドクターロール21d並びにアプリケーションロール21eは少なくとも外周面が金属よりなる金属ロールからなり、バックアップロール21aおよびメタリングロール21cは外周面がゴム等の弾性素材の弾性ロールからなる。すなわち、コーティングユニット21においては、順に並んだバックアップロール21aからドクターロール21dまでは弾性ロールおよび金属ロールが交互に配置されることとなり、これにより、隣接する2つの弾性ロールおよび金属ロールを互いに圧接させることができる。
順に並んだバックアップロール21aからドクターロール21dは、隣接する2つのロールが互いに圧接された状態で、圧接部位において各々の外周面が同方向に進行するよう、すなわち互いに異方向に回転するようにそれぞれ回転制御される。ドクターロール21dは、貯留部22を形成する外周面が下方に進行するよう回転制御される。
【0015】
アプリケーションロール21eおよびドクターロール21dには、貯留部22に貯留されている無溶剤型接着剤を一定の温度に保つための温調装置(図示せず)が設けられている。また、コーティングロール21bにも、これらが一定温度に保たれるための温調装置(図示せず)が設けられている。
【0016】
そして、本発明においては、ドクターロール21dの周速は、例えば1.0~10.0m/minとされ、また、アプリケーションロール21eは回転されていないか、たとえ回転されていてもその周速は例えば0.1m/min以下とされる。
また、ドクターロール21dおよびアプリケーションロール21e間のクリアランスの大きさは、無溶剤型接着剤の温度すなわち貯留部22に貯留される無溶剤型接着剤の粘度によっても異なるが、40~100μmの範囲で設定されることが好ましく、より好ましくは60~80μmである。
ドクターロール21dおよびアプリケーションロール21e間のクリアランスが過度に小さい場合は、ロール幅方向の無溶剤型接着剤の塗布量のバラツキが大きくなり、安定して均一な接着剤塗布層を形成することができないおそれがあり、クリアランスが過度に大きい場合は、貯留部22からの無溶剤型接着剤の液だれが生じてしまうおそれがある。
ドクターロール21dおよびアプリケーションロール21e間のクリアランスの大きさが上記の範囲にあり、かつ、ドクターロール21dが上記のような周速で回転されるとともにアプリケーションロール21eが回転停止されていることにより、貯留部22において無溶剤型接着剤の過剰なミキシングが行われることが抑止されるので、無溶剤型接着剤中の空気同伴による空気の巻き込みを極めて抑制することができ、コーティングユニット21によって転写されてフィルムW1上に形成される接着剤塗布層に気泡が生じることを抑制することができる。
【0017】
また、バックアップロール21aおよびコーティングロール21bの周速(圧接部位の速度)はフィルムW1の供給速度と同じとされ、メタリングロール21cの周速は、隣接するロール間の周速が大きく異なると外観不良が生じることから隣接するコーティングロール21bの周速とドクターロール21dの周速との間の値とされる。
【0018】
アプリケーションロール21eおよびドクターロール21dの寸法の一例を挙げると、例えば外径が100mm~300mm、貯留部22を構成する塗工面の横幅が600mm~1800mm程度とすることができる。アプリケーションロール21eおよびドクターロール21dは、その外径が互いに異なるものであってもよい。
【0019】
供給ユニット25は、主剤が収容された主剤タンク26と、硬化剤が収容された硬化剤タンク27と、主剤および硬化剤を供給する接着剤供給部28とを有し、さらに、貯留部22に貯留された無溶剤型接着剤を撹拌するミキサー(図示せず)を有していてもよい。
【0020】
このラミネータ10においては、一方のフィルムW1が巻き出しロール11から所定の速度で塗工装置20の一対のロール21a,21b間(バックアップロール21aとコーティングロール21bとの間)に搬送される。一方、供給ユニット25においては、主剤タンク26および硬化剤タンク27において、主剤および硬化剤が所定の温度に加熱される。加熱された主剤および硬化剤は、接着剤供給部28からそれぞれ所定の量がスタティックミキサー29での混合を経てドクターロール21dおよびアプリケーションロール21e間の貯留部22に供給される。ここで、無溶剤型接着剤は、貯留部22の液位が一定に保たれるように、供給ユニット25から貯留部22に連続的に供給される。そして、コーティングユニット21における無溶剤型接着剤の供給開始側端に位置するドクターロール21dからメタリングロール21cを介して供給終了側端に位置するコーティングロール21bに順に無溶剤型接着剤が転写されて、コーティングロール21bから一対のロール21a,21b間を通過する一方のフィルムW1の表面に塗布されることにより、接着剤塗布層が形成される。
次いで、接着剤塗布層が形成されたフィルムW1はラミネート部12に送られる。一方、巻き出しロール13から、他方のフィルムW2がラミネート部12に供給され、このラミネート部12において、一方のフィルムW1と他方のフィルムW2とが、一方のフィルムW1の表面上の接着剤塗布層に他方のフィルムW2が接するように重ね合わせられながら一対の加圧ロール12a,12bによって圧着されて貼り合わせられ、これにより、一対のフィルムW1,W2が積層された中間積層フィルムが得られる。この中間積層フィルムは、巻き取りロール14に巻き取られる。巻き取りロール14によって巻き取られた中間積層フィルムは、そのまま、常温または加温下において静置されるエージング処理を行うことによって接着剤塗布層が硬化されて接着剤層が形成され、これにより、一対のフィルムW1,W2が接着剤層によって接着された積層フィルムが得られる。
積層フィルムが例えば3枚以上のフィルムが接着剤層を介して積層されてなるものである場合は、上記のラミネート工程を行って2枚のフィルムを貼着した後、同様のラミネート工程を繰り返すことにより、3枚以上のフィルムが無溶剤型接着剤による接着剤層を介して貼着された積層フィルムを得ることができる。
【0021】
以上において、主剤および硬化剤の加熱温度や貯留部22における無溶剤型接着剤の温度は、例えば40~80℃の範囲であることが好ましく、40~50℃の範囲であることが特に好ましい。また、一方のフィルムW1に対する無溶剤型接着剤の塗工温度は、例えば40~80℃の範囲であることが好ましく、60~80℃の範囲であることが特に好ましい。これらの各温度は、コーティングユニット21の各ロール21a~21eの温度設定や、主剤タンク26および硬化剤タンク27の温度設定により、制御することができる。塗工温度が上記の範囲であれば、無溶剤型接着剤の粘度を実用上十分に低くしながら一方のフィルムW1への熱によるダメージを最小限にとどめることができる。
また、ラミネート部12における加圧ロール12a,12bの温度は、例えば30~80℃である。
また、各フィルムW1,W2の供給速度、すなわち無溶剤型接着剤の塗布速度は、100~200m/minであることが好ましい。
無溶剤型接着剤の塗布量は、0.5~3.0g/m2 であることが好ましく、より好ましくは1.2~2.6g/m2 である。無溶剤型接着剤の塗布量が過少である場合には接着性が十分に得られず、一方、無溶剤型接着剤の塗布量が過多である場合は積層フィルムの巻きズレが発生するおそれや、積層フィルムの端部から無溶剤型接着剤が漏出し、品質不良を生じるおそれがある。
巻き取りロール14によって巻き取られた中間積層フィルムのエージング処理の温度は、例えば30~70℃であり、処理時間は、例えば48~96時間である。
ラミネータ10において、その他の塗工条件は適宜に設定することができる。
【0022】
〔積層フィルム〕
本発明の積層フィルムは、上記の製造方法によって得られたものであり、例えば、図2に示されるように、外層樹脂フィルム31、内層樹脂フィルム32、および内層樹脂フィルム32と外層樹脂フィルム31との間に設けられた中間層樹脂フィルム33を有する。外層樹脂フィルム31における内面(中間層樹脂フィルム33側の表面)には、蒸着層35およびインキ層34がこの順に形成されている。インキ層34と中間層樹脂フィルム33との間には、上述のラミネータ10によって無溶剤型接着剤により形成された接着剤層36が形成され、内層樹脂フィルム32と中間層樹脂フィルム33との間には、上述のラミネータ10によって無溶剤型接着剤により形成された接着剤層37が形成されている。すなわち、この積層フィルム30は、蒸着層35およびインキ層34が形成された外層樹脂フィルム31と、中間層樹脂フィルム33と、内層樹脂フィルム32とを3枚の原料フィルムとして、上記の製造方法を2回繰り返すことによって得られたものである。
【0023】
外層樹脂フィルム31は、熱的な寸法安定性に優れたフィルムであることが好ましい。このような外層樹脂フィルム31を用いることにより、外層樹脂フィルム31に例えばグラビア印刷を施した後に、80℃程度の温度で焼付処理を行うことができるため、インキ層の形成が容易である。また、外層樹脂フィルム31としては、高い引張強度が得られる点で、二軸延伸フィルムを用いることが好ましい。
【0024】
外層樹脂フィルム31を構成する材料としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂を用いることが好ましい。
ポリアミド系樹脂としては、例えばナイロン6、ナイロン8、ナイロン6,6、ナイロン6/6,6共重合体、ナイロン6,10、メタキシリレンアジパミド(MXD6)、ナイロン11、ナイロン12などを用いることができる。
ポリエステル系樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を用いることができる。また、これらの樹脂の性質を損なわない範囲で、他のポリエステル単位を含むコポリエステルを用いることもできる。このようなコポリエステルを形成するための共重合成分のうち、ジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、p-β-オキシエトキシ安息香酸、ナフタレン2,6-ジカルボン酸、ジフエノキシエタン-4,4′-ジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸またはこれらのアルキルエステル誘導体などを用いることができる。また、グリコール成分としては、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフエノールAのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどを用いることができる。これらの化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて共重合成分として用いることができる。
【0025】
外層樹脂フィルム31の厚みは、当該外層樹脂フィルム31を構成する樹脂の種類や積層フィルムの用途等により適宜選択されるものであるが、例えばナイロンによって外層樹脂フィルム31を構成する場合には、10~30μmであることが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)によって外層樹脂フィルム31を構成する場合には、6~28μmであることが好ましい。
【0026】
また、外層樹脂フィルム31における隣接する層と接する面には、当該隣接する層との密着性を向上するため、コロナ処理などの表面改質処理が施されていることが好ましい。
【0027】
内層樹脂フィルム32を構成する材料としては、パウチ包装袋やヒートシール蓋を形成するために、ヒートシール性に優れた樹脂を用いることが好ましい。このような樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0028】
内層樹脂フィルム32の厚みは、特に制限はないが、例えばポリエチレンによって内層樹脂フィルム32を構成する場合には、50~200μmであることが好ましく、ポリプロピレンによって内層樹脂フィルム32を構成する場合には、30~150μmであることが好ましい。
また、内層樹脂フィルム32としては、無延伸フィルムを用いることが好ましい。
【0029】
中間層樹脂フィルム33を構成する材料としては、ガスバリア性を有する樹脂を用いることができ、その具体例としては、ナイロン6、ナイロン8、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン10,6、ナイロン6/6,6共重合体等の脂肪族ナイロン、ポリメタキシリレンアジパミド等の部分芳香族ナイロンなどのナイロン樹脂、ポリグリコール酸樹脂などが挙げられる。
また、中間層樹脂フィルム33を構成する材料としては、オレフィン系樹脂、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、直鎖状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)等のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン-1、エチレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)或いはこれらの混合物等を使用することもできる。
中間層樹脂フィルム33の厚みは、特に制限はないが、5~100μmであることが好ましい。
【0030】
インキ層34は、外層樹脂フィルム31上に形成された蒸着層35上に例えばグラビア印刷が施されることによって形成されている。
このようなインキ層34の厚みは、1~8μmであることが好ましい。
【0031】
蒸着層35を構成する材料としては、アルミニウム等の金属材料、シリカ等の非金属無機材料などを用いることができる。
【0032】
接着剤層36,37は、下記に詳述する特定の無溶剤型接着剤により形成されている。この無溶剤型接着剤は、主剤および硬化剤からなる二液型の反応硬化型接着剤である。
接着剤層36,37の厚みは、0.5~3μmであることが好ましい。
【0033】
〔無溶剤型接着剤〕
無溶剤型接着剤を構成する主剤としては、内層樹脂フィルム32、中間層樹脂フィルム33およびインキ層34との密着性が良好で、且つラミネート強度および耐衝撃性に優れたポリエステル系樹脂を用いることが好ましく、特にポリエステルポリオール樹脂が好ましい。
【0034】
ポリエステルポリオール樹脂は、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の多塩基酸と、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3,3-ビス(ヒドロキシメチル)ヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコールとのエステル化反応によって製造されるものであればよい。
【0035】
ポリエステルポリオール樹脂の具体例としては、(1)ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ジエチレンアジペート)、ポリ(プロピレンアジペート)、ポリ(テトラメチレンアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(ネオペンチレンアジペート)等のアジペート系ポリエステルグリコール、(2)ポリ‐ε‐カプロラクトン等のポリカプロラクトン系ポリエステルグリコール、(3)ポリ(ヘキサメチレンセバケート)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)等のその他のポリエステルポリオール樹脂などが挙げられる。
【0036】
また、主剤としては、ポリエステル系樹脂の他に例えばポリウレタン系化合物が含有されていてもよい。このような主剤を用いることにより、インキ層34には通常ウレタン成分が含まれているため、インキ層34に対する密着性を確保することができる。
【0037】
主剤を構成する樹脂の数平均分子量は、400~1500であることが好ましく、より好ましくは500~1000である。主剤を構成する樹脂の数平均分子量が400未満である場合には、無溶剤型接着剤の粘度が低下するため、積層フィルムを製造する際に連続ラミネート適性が悪くなることがある。また、末端反応基数が増加するため、硬化剤の量を多くすることが必要であり、その結果、得られる接着剤層36,37においては、架橋量が多くて硬度が上昇し、接着剤層36,37の耐衝撃性が低下することがある、という問題がある。一方、主剤を構成する樹脂の数平均分子量が1500を超える場合には、得られる接着剤層36,37の耐衝撃性は向上するが、無溶剤型接着剤の粘度が上昇するため、無溶剤型接着剤の塗工時に濡れ不良が生じ、得られる積層フィルム30の外観不良やラミネート強度の低下が起こることがある。
【0038】
主剤の粘度は、50℃において600~1800mPa・sであることが好ましく、より好ましくは1000~1400mPa・sである。主剤の粘度が600mPa・s未満である場合には、ロールの転写ムラが発生し接着剤層36,37の膜形成が不安定となり、得られる積層フィルム30の外観不良やラミネート強度の極度な低下が起こることがある。一方、主剤の粘度が1800mPa・sを超える場合には、無溶剤型接着剤の塗工時に濡れ不良が発生しやすく、得られる積層フィルム30の外観不良やラミネート強度の低下が起こることがある。
【0039】
無溶剤型接着剤を構成する硬化剤としては、イソシアネート化合物、特に、脂肪族イソシアネートおよび芳香脂肪族ジイソシアネートの混合物を用いることが好ましい。
硬化剤を構成する脂肪族イソシアネートとしては、ブタン-1,4-ジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が好ましい。
硬化剤を構成する芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、1,3-キシリレンジイソシアネートまたは1,4-キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(XDI)、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネートまたは1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TMXDI)、ω,ω′-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンなどが挙げられる。
【0040】
硬化剤を構成する樹脂の数平均分子量は、400~1500であることが好ましく、より好ましくは500~1000である。硬化剤を構成する樹脂の数平均分子量が400未満である場合には、無溶剤型接着剤の粘度が低下するため、積層フィルムを製造する際に連続ラミネート適性が悪くなることがある。また、末端反応基数が増加するため、主剤の量を多くすることが必要であり、その結果、得られる接着剤層36,37においては、架橋量が多くて硬度が上昇し、接着剤層36,37の耐衝撃性が低下することがある、という問題がある。一方、硬化剤を構成する樹脂の数平均分子量が1500を超える場合には、得られる接着剤層36,37の耐衝撃性は向上するが、無溶剤型接着剤の粘度が上昇するため、無溶剤型接着剤の塗工時に濡れ不良が生じ、得られる積層フィルム30の外観不良やラミネート強度の低下が起こることがある。
【0041】
無溶剤型接着剤を構成する硬化剤の粘度は、50℃において150~1300mPa・sであることが好ましく、より好ましくは450~850mPa・sである。硬化剤の粘度が150mPa・s未満である場合には、得られる接着剤層36,37が軟質となる結果、ラミネート強度が低くなることがある。一方、硬化剤の粘度が1300mPa・sを超える場合には、得られる接着剤層36,37が硬質となる結果、耐衝撃性が悪くなることがある。
【0042】
無溶剤型接着剤においては、主剤100質量部に対して、硬化剤30~200質量部、特に30~70質量部の範囲で含有されていることが好ましい。硬化剤の割合が過少である場合には、得られる接着剤層36,37は架橋不足となるため、得られる積層フィルム30のラミネート強度が低下するおそれがある。一方、硬化剤の割合が過多である場合には、主剤と硬化剤とが十分に混合されず、得られる接着剤層36,37には架橋不足部分や架橋過多部分が混在するため、得られる積層フィルム30のラミネート強度や耐衝撃性が低下するおそれがある。
【0043】
本発明において、無溶剤型接着剤の粘度は、50℃において700~2000mPa・sPa・sであり、より好ましくは1000~1600mPa・sである。無溶剤型接着剤の粘度が700mPa・s未満である場合には、貯留部22からの無溶剤型接着剤の液だれが生じることや、無溶剤型接着剤の塗工時にロール間の転写不良が生じて「転写ムラ」が発生することがある。また、無溶剤型接着剤が均一に塗工されず部分的に少なくなることから、ラミネート強度や耐衝撃性の低下が起こることがある。一方、無溶剤型接着剤の粘度が2000mPa・sを超える場合には、無溶剤型接着剤の塗工時に「濡れ不良」が発生し、得られる接着剤層36,37が部分的に薄くなることがある。接着剤層36,37に薄い部分が存在すると、ラミネート強度および耐衝撃性の低下が起こることがある。
【0044】
無溶剤型接着剤には、上記の主剤および硬化剤以外にも、ポリウレタン系化合物が含有されていてもよい。ポリウレタン系化合物が含有されることにより、インキ層34には通常ウレタン成分が含まれているため、インキ層34に対する密着性を確保することができる。
また、無溶剤型接着剤には、種々の添加剤、例えば充填剤、軟化剤、酸化防止剤、安定剤、接着促進剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、無機フィラー、粘着付与性樹脂、繊維類、顔料等の着色剤、可使時間延長剤等が含有されていてもよい。
【0045】
更に、無溶剤型接着剤には、接着促進剤が含有されていてもよい。接着促進剤としてはシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系等のカップリング剤、エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0046】
シランカップリング剤の具体例としては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン;ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン;ヘキサメチルジシラザン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0047】
チタネート系カップリング剤の具体例としては、テトライソプロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、ブチルチタネートダイマー、テトラステアリルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンラクテート、テトラオクチレングリコールチタネート、チタンラクテート、テトラステアロキシチタン等が挙げられる。
【0048】
アルミニウム系カップリング剤の具体例としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0049】
エポキシ樹脂の具体例としては、一般的に市販されているエピービス型、ノボラック型、βーメチルエピクロ型、環状オキシラン型、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、ポリグリコールエーテル型、グリコールエーテル型、エポキシ化脂肪酸エステル型、多価カルボン酸エステル型、アミノグリシジル型、レゾルシン型等の各種エポキシ樹脂が挙げられる。
【0050】
〔包装容器〕
本発明の包装容器は、上記の積層フィルムによって形成されており、特に、内部に食品を収容して密封した状態で加熱処理を経る、レトルトパウチ等の食品用の包装容器として好適に用いることができる。
食品用の包装容器に対する加熱処理は、例えば100℃以上に加熱される処理であり、通常の食品用の包装容器に対して行われる加熱を伴う殺菌処理などが挙げられ、例えば常温流通を可能とするレトルト殺菌処理や、チルド流通を可能とする120℃、4分未満の加熱処理等が挙げられるが、これらに限定されず、公知の種々の食品に係る加熱処理をいう。レトルト殺菌処理とは、加圧加熱処理をいい、例えば耐熱性容器に充填した製品を品温上昇に伴う製品の内圧で容器が破損しないように加圧しながら110℃~130℃程度の蒸気又は熱水で数十分間程度加熱し、少なくとも120℃4分間相当以上であるF0 値=3.1分以上となるように処理することをいう。また、チルド流通可能な加熱殺菌は、例えば、一般的に多く用いられる90℃10分間相当以上の加熱処理することをいう。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。
例えば積層フィルムの層構成は、図1に示す構成に限定されず、外層樹脂フィルムおよび内層樹脂フィルムの2つの樹脂フィルムよりなるものであっても、複数の中間層樹脂フィルムを有するものであってもよい。また、インキ層および蒸着層は、必要に応じて設けられるものであって、本発明において必須のものではない。
【実施例0052】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
<実施例1>
[無溶剤型接着剤]
表1に実施例1で使用した無溶剤型接着剤の組成を示す。表1において、主剤、硬化剤および無溶剤型接着剤の粘度は、TOKIMEC社製B8L型粘度計を使用し、JIS K7117-2に準拠した方法によって測定した。
【0054】
[樹脂フィルム]
外層樹脂フィルムとして、一面にアルミナ蒸着膜が形成された、厚みが12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。
中間層樹脂フィルムとして、厚みが15μmの二軸延伸ナイロンフィルムを用いた。
内層フィルムとして、厚みが70μmの無延伸のポリプロピレン(CPP)フィルムを用いた。
【0055】
[積層フィルムの製造]
図1に示す構成のラミネータを用い、以下のようにして積層フィルムを製造した。
下記表1に示す主剤および硬化剤を、それぞれ主剤タンクおよび硬化剤タンクに入れて50℃に加熱し、接着剤供給部により、主剤および硬化剤を、下記表1に示す質量配合比となるように接着剤塗布部に供給して混合することにより、無溶剤型接着剤を調製した。そして、接着剤塗布部において、巻き出しロールから供給された外層樹脂フィルムの一面に、無溶剤型接着剤を80℃で塗布することにより、接着剤塗布層を形成した。無溶剤型接着剤の塗布量は1.7g/m2 で、塗布速度は150m/minであった。その後、接着剤塗布層が形成された外層樹脂フィルムをラミネート部に搬送し、このラミネート部において、外層樹脂フィルムと、巻き出しロールから供給された、蒸着層が形成された中間層樹脂フィルムとを、50℃で加圧してラミネートすることにより、第1の中間積層フィルムを作製した。ラミネート速度は150m/minであった。
得られた第1の中間積層フィルムをロールに巻き取り、上記と同様の条件により、第1の中間積層フィルムにおける中間層樹脂フィルムの他面に接着剤塗布層を形成し、この中間層樹脂フィルムと内層樹脂フィルムとをラミネートすることにより、中間積層フィルムを製造した。得られた中間積層フィルムを40℃で3日間保持することにより、エージング処理を行い、これにより、積層フィルムを製造した。
【0056】
[包装容器(パウチ)の作製]
得られた積層フィルムから、幅130mm、高さ175mmになるように2枚を切り出し、内面層を合わせた2枚の積層フィルムを200℃でヒートシールして底部および両サイド部の3辺をシールして、幅130mm、高さ175mm、容量200mlの包装容器(パウチ)を作製した。
このパウチに水を充填(内容総量180g)し、ヒートシールによって密封後、熱水加圧殺菌シャワー冷却(殺菌温度127℃、殺菌時間30分間、殺菌圧力0.3MPa)を行った。
【0057】
[外観不良の評価]
包装容器の熱水加圧殺菌シャワー冷却(加熱殺菌処理)前後の外観について、幅1mおよび長さ1mの範囲について目視で観察し、斑点状の微小な凹凸模様(ゆず肌)の有無を調べ、斑点状の微小な凹凸模様が認められない場合を〇、認められた場合を×として評価した。
以上、結果を下記表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1の結果から明らかなように、実施例1に係る包装容器によれば、加熱殺菌処理前後のいずれにおいても接着剤層に気泡が生じることがなくて良好な外観を有し、従って、食品用の包装容器として有用であることが確認された。
【符号の説明】
【0060】
10 ラミネータ
11 巻き出しロール
12 ラミネート部
12a,12b 加圧ロール
13 巻き出しロール
14 巻き取りロール
20 塗工装置
21 コーティングユニット
21a バックアップロール
21b コーティングロール
21c メタリングロール
21d ドクターロール
21e アプリケーションロール
22 貯留部
25 供給ユニット
26 主剤タンク
27 硬化剤タンク
28 接着剤供給部
29 スタティックミキサー
30 積層フィルム
31 外層樹脂フィルム
32 内層樹脂フィルム
33 中間層樹脂フィルム
34 インキ層
35 蒸着層
36,37 接着剤層
W1,W2 フィルム
図1
図2