IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ウエノフードテクノの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137434
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】粉末組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20230922BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230922BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230922BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230922BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230922BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20230922BHJP
   A23D 9/007 20060101ALI20230922BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20230922BHJP
【FI】
A23L5/00 L
A61K8/34
A61K47/26
A61K47/14
A61K9/14
A23L29/00
A23D9/007
A23L27/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043648
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】516089979
【氏名又は名称】株式会社ウエノフードテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】西村 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】古川 陽二郎
【テーマコード(参考)】
4B026
4B035
4B047
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG04
4B026DL03
4B026DP01
4B026DX08
4B035LC16
4B035LE01
4B035LG09
4B035LG12
4B035LG19
4B035LG32
4B035LP21
4B047LB02
4B047LB09
4B047LE06
4B047LG08
4B047LG11
4B047LG12
4B047LG25
4B047LG38
4B047LP02
4C076AA29
4C076DD38A
4C076DD46F
4C076FF70
4C083AC102
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC421
4C083BB01
4C083BB11
4C083BB41
4C083CC50
4C083DD50
4C083EE50
4C083KK03
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、油性成分の担持量が多く、流動性に優れ、製品等への油性成分の分散性が改善された粉末組成物を提供することにある。
【解決手段】粉末化基材に担持された油性成分を含む粉末組成物であって、油性成分が、水に対する溶解度が1g/100mL以下、且つ常温において液体状の物質であり、粉末化基材が、BET式一点法による比表面積が5.0m/g以上、且つ水銀圧入法による細孔容積が0.45mL/g以上のソルビトールを含み、油性成分の粉末化基材に対する含浸率が1~50重量%である、粉末組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末化基材に担持された油性成分を含む粉末組成物であって、
油性成分が、水に対する溶解度が1g/100mL以下、且つ常温において液体状の物質であり、
粉末化基材が、BET式一点法による比表面積が5.0m/g以上、且つ水銀圧入法による細孔容積が0.45mL/g以上のソルビトールを含み、
油性成分の粉末化基材に対する含浸率が1~50重量%である、粉末組成物。
【請求項2】
安息角が30~60°である、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項3】
油性成分が食用油脂、香料、乳化剤からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1または2に記載の粉末組成物。
【請求項4】
油性成分が菜種油である、請求項3に記載の粉末組成物。
【請求項5】
油性成分がオレンジ香料である、請求項3に記載の粉末組成物。
【請求項6】
油性成分HLB値8以下の乳化剤である、請求項3に記載の粉末組成物。
【請求項7】
乳化剤がポリグリセリン脂肪酸エステルである、請求項6に記載の粉末組成物。
【請求項8】
粉末組成物を水中に分散させた際の油性成分油滴のモード径が0.1~5μmである、請求項1~7のいずれかに記載の粉末組成物。
【請求項9】
水に対し油性成分が0.025重量%となるように粉末組成物を水中に分散させた際の分散濁度が0.1~1である、請求項1~8のいずれかに記載の粉末組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末化基材に担持された油性成分を含む粉末組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
油脂、脂溶性ビタミン、脂溶性薬剤などの油性成分は、飲食品、化粧品、芳香剤、医薬品、医薬部外品、日用品など、様々な製品に目的に応じて利用されている。
【0003】
このような油性成分は、常温では液状や半固体状であるものが多く、取り扱いが不便であるため、粉末化した油性成分の利用が増加している。油性成分の粉末化方法としては、粉末化基材に油性成分を担持させることにより粉末化したものや、油性成分を粉末化基材の溶液に懸濁した後に乾燥させることによって粉末化したものが知られている。しかしながら、粉末化基材に担持させる粉末化方法では、流動性や分散性が悪く、油性成分の保持量も少ないため、粉末として利便性が不十分であった。また、乾燥工程を伴う粉末化方法では、高分子性の粉末化基材が用いられ、得られた粉末の水への分散性が低いため、油性成分が分離し易いという課題があった。さらに油性成分の種類によっては、乾燥処理時の加熱により、油性成分の揮発や酸化反応による変質が発生するため、改善が求められていた。
【0004】
特許文献1には澱粉分解物の水溶液に、可溶性澱粉やポリオールを添加し、ドラムドライヤーで乾燥した粉末化基材を用いて、油性成分であるα-ピネンやサラダ油を担持することにより得られた粉末組成物が記載されている。しかしながら、油性成分を担持した粉末は流動性が悪く、その担持量も十分とは言い難いものであった。
【0005】
特許文献2には高分岐環状デキストリンの水溶液に油性成分を懸濁し、ドラムドライヤーまたは凍結乾燥機にて乾燥させて得られた粉末組成物が提案されている。しかしながら、粉末化基材の水溶性が低いため、最終製品等における分散性が不十分であった。また、製造に特別な装置を要するものであった。
【0006】
特許文献3には、油溶性成分と、乳化剤、マルトトリオース及び水を乳化装置により乳化した後、噴霧乾燥装置を用いて乾燥した粉末組成物が提案されている。しかしながら、水に対する溶解性や分散性は改善されたものの、乾燥工程において加熱操作が行われるため、油性成分の揮発や酸化による変質の問題は解決されていなかった。また、作業工程が煩雑であるなどの問題も有するものであった。
【0007】
したがって、油性成分を粉末化した組成物において、油性成分の揮発や酸化による変質が抑制され、粉末の流動性に優れ、かつ水への分散性に優れた粉末組成物が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8-143603号公報
【特許文献2】特開2007-238824号公報
【特許文献3】特開2006-000087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、油性成分の担持量が多く、流動性に優れ、製品等への油性成分の分散性が改善された粉末組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の油性成分を、BET(ブルナウアー・エメット・テラー)式一点法による比表面積が5.0m/g以上、且つ水銀圧入法による細孔容積が0.45mL/g以上のソルビトールを含む粉末化基材に担持させることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち本発明は、粉末化基材に担持された油性成分を含む粉末組成物であって、油性成分が、水に対する溶解度が1g/100mL以下、且つ常温において液体状の物質であり、粉末化基材が、BET式一点法による比表面積が5.0m/g以上、且つ水銀圧入法による細孔容積が0.45mL/g以上のソルビトールを含み、油性成分の粉末化基材に対する含浸率が1~50重量%である、粉末組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の粉末組成物に採用可能な油性成分は、水に対する溶解度が1g/100mL以下である。油性成分の水に対する溶解度は0.8g/100mL以下が好ましく、0.5g/100mL以下がより好ましい。
【0013】
また、本発明の粉末組成物に採用可能な油性成分は、上記の溶解度の条件の他、常温で液体状である必要がある。常温で固体状の物質は、粉末化基材に担持させることが困難であるため、採用できない。尚、本発明において常温とは、約25℃である。
【0014】
油性成分は、単一の化学物質からなってもよく、混合物であってもよい。油性成分としては、食用油脂、香料、乳化剤等が挙げられる。複数の油性成分を併用してもよい。
【0015】
食用油脂としては、常温で液体状の菜種油、サラダ油、大豆油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、コメ油等などの食用植物油、または魚油、肝油、鯨油、海獣油等の食用動物油が挙げられる。これら食用油脂の中でも、菜種油、サラダ油、大豆油、魚油が好ましい食用油脂として例示され、菜種油が特に好ましい食用油脂として例示される。
【0016】
香料としては、オレンジ、ミカン、レモン、グレープフルーツ、ライムなどの柑橘類精油、花精油、ミント油、ヒノキ油、スパイス油などの植物精油、ナッツエキストラクト、コーヒーエキストラクト、バニラエキストラクト、ココアエキストラクト、紅茶エキストラクト等の油性エキストラクト、合成香料化合物、油性調合香料組成物及びこれらの任意の混合物の油性香料が例示され、これら香料の中でも柑橘類精油が好ましく、オレンジ香料が特に好ましい香料として例示される。
【0017】
乳化剤としては、HLB値が8以下の乳化剤が好ましく、HLB値が0.1~7.9の乳化剤がより好ましく、HLB値が0.5~7.5の乳化剤がさらに好ましい。本発明において、HLB値は、Griffin法によって測定された値を意味する。
【0018】
乳化剤の具体例としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、サポニン等の常温で液体状の乳化剤が例示される。より具体的には、ソルビタンラウレート、プロピレングリコールモノオレート、ヘキサグリセリン縮合リシノレートが好ましい乳化剤として例示され、ヘキサグリセリン縮合リシノレートが特に好ましい乳化剤として例示される。
【0019】
油性成分としては、上記の食用油脂、香料および乳化剤以外に、メトラクロール等の農薬成分、イブプロフェンピコノールまたはテプレノン等の医薬品成分、パルミチン酸レチノール、トコフェロール、フィロキノン等の脂溶性ビタミンまたはその誘導体、ユビキノンQ10等の補酵素などを採用し得る。
【0020】
本発明の粉末化基材は、BET式一点法による比表面積が5.0m/g以上、且つ水銀圧入法による細孔容積が0.45mL/g以上のソルビトール(本明細書において多孔質ソルビトールと称する)を含む。ある実施態様では、粉末化基材は多孔質ソルビトールからなる。
【0021】
多孔質ソルビトールは、例えば、溶融したソルビトールとエタノールを混練し、次いで減圧乾燥することにより製造することができる。一つの好ましい態様において、本発明の多孔質ソルビトールの製造方法は、以下の工程:
a)溶融ソルビトールとエタノールを混練装置内に供給する工程、
b)混練装置内の溶融ソルビトールとエタノールとを50~78℃に保持しながら混練する工程、および
c)b)で得られた混練物を25~90℃、100~30000Paで減圧乾燥することによりエタノールを除去する工程
を含む。
【0022】
さらに、上記の製造方法をより具体的に説明する。まず、工程a)において、10~70重量部の溶融ソルビトールと30~90重量部のエタノールを混練装置内に供給する。混練装置内への供給量は、好ましくは15~68重量部の溶融ソルビトールと32~85重量部のエタノールであり、より好ましくは20~65重量部の溶融ソルビトールと35~80重量部のエタノールである。
【0023】
工程a)において使用するエタノールに含まれる水分量は、例えば10重量%以下である。エタノールに含まれる水分量は、好ましくは8重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下、特に好ましくは0重量%(エタノールのみ)である。エタノールに含まれる水分量が少ない程、製造される多孔質ソルビトールの比表面積が向上する傾向がある。
【0024】
次いで、工程b)において、混練装置内の溶融ソルビトールとエタノールとを50~78℃に保持しながら混練する。混練装置内の温度を50~78℃に保持することにより、混練装置内の溶融ソルビトールが急速に固化することなく、かつエタノールの揮発を抑制しながら溶融ソルビトールとエタノールとを混練できる。混練装置内の温度は、好ましくは55~78℃であり、より好ましくは60~75℃である。
【0025】
工程c)において、工程b)で得られた混練物を25~90℃、100~30000Paで減圧乾燥することによりエタノールを除去し、多孔質ソルビトールを得る。減圧乾燥は、例えばエバポレーターなどの減圧乾燥機を用いて行う。工程c)において得られる多孔質ソルビトールを、ブレンダー等により粉砕または整粒し、粉末にすることができる。
【0026】
上述した多孔質ソルビトールの製造に用いる混練装置としては、竪型ニーダー、横型バッチニーダー、KRCニーダー等の混練機が採用される。
【0027】
横型バッチニーダーは、上述した多孔質ソルビトールの製造工程b)において、溶融ソルビトールとエタノールを混練した際に、溶融混練物を短時間で結晶化でき、工程c)を経て得られた多孔質ソルビトールが高い比表面積および細孔容積を示すため、製造効率および品質の点から好ましい。
【0028】
KRCニーダーは、上述した多孔質ソルビトールの製造工程b)において、溶融ソルビトールとエタノールを混練した際に、溶融混練物を非常に短時間で結晶化できるため、生産性および経済性の点から好ましい。
【0029】
本発明に用い得る粉末化基材の比表面積は、5.0m/g以上であり、好ましくは6.0~50.0m/gであり、より好ましくは7.0~30.0m/gである。
【0030】
本発明でいう比表面積は、例えばMONOSORB(ユアサアイオニクス株式会社製)またはこれと同等の比表面積測定装置において、BET式一点法で測定される値を意味する。例えば、比表面積は以下の測定条件で測定し得る。
[測定条件]
方法:BET式一点法
キャリアガス:窒素・ヘリウム混合ガス(N:He=30:70)
測定ガス流量:15cc/分
脱気条件:120℃、20分間
【0031】
本発明に用い得る粉末化基材の細孔容積は0.45mL/g以上であり、好ましくは0.50~3.00mL/gであり、より好ましくは0.55~2.50mL/gである。
【0032】
本発明でいう細孔容積は、例えばPascal 240(Thermo Fisher Scientific社製)またはこれと同等の細孔容積測定装置において、水銀圧入法で測定される値を意味する。
【0033】
粉末化基材と油性成分を混合することにより、油性成分を粉末化基材に担持させることができる。例えば、所望の含浸率を達成する重量比で、粉末化基材に油性成分を少量ずつ添加しながら混合することにより、油性成分を粉末化基材に担持させる。
【0034】
本発明の粉末組成物は、油性成分の粉末化基材に対する含浸率が1~50重量%であり、含浸率が5~48重量%であるものが好ましく、含浸率が10~45重量%であるものがより好ましく、含浸率が15~40重量%であるものがさらに好ましい。含浸率が1重量%未満の場合、粉末組成物中の粉末化基材であるソルビトールが相対的に多くなるため、添加対象物における味質や物性が変化する傾向があり、50重量%を超える場合、油性成分が粉末組成物の表面に露出し、流動性が悪化する傾向がある。本発明でいう含浸率は、油性成分と粉末化基材の全重量に対する油性成分の重量の割合を意味する。
【0035】
本発明の粉末組成物の安息角は30~60°であるのが好ましく、35~58°であるのがより好ましく、40~55°であるのがさらに好ましい。安息角が30°未満の場合、飛散性が高くなる傾向があり、安息角が60°を超える場合、流動性が悪くなる傾向がある。
【0036】
本発明でいう安息角は、例えば円筒回転法安息角測定器(筒井理化学器械株式会社)またはこれと同等の測定器において、円筒回転法で測定される値を意味する。
【0037】
本発明の粉末組成物を水中へ分散させた際の油性成分の油滴のモード径は0.1~5μmであるのが好ましく、0.2~4.8μmであるのがより好ましく、0.3~4.5μmであるのがさらに好ましい。モード径が0.1μm未満の場合、油滴の安定性が低下し、油滴が早期に凝集する傾向があり、5μmを超える場合、分散が不十分となる傾向がある。
【0038】
本発明でいうモード径は、例えば動的光散乱粒径分布測定装置(LB-500、株式会社堀場製作所製)またはこれと同等の装置において、動的光散乱法で測定した値である。また、本発明におけるモード径は、特に断りがない場合、動的光散乱法で測定した粒度分布の最頻値に対応する粒子径を指すものとする。
【0039】
本発明の粉末組成物は、水に対する分散濁度が0.1~1であるものが好ましく、0.2~0.8であるものがより好ましく、0.25~0.7であるものがさらに好ましい。水に対する分散濁度が0.1未満の場合、油性成分が水に均一に分散されていない傾向があり、1を超える場合、粉末組成物が凝集する傾向がある。
【0040】
尚、本発明において分散濁度は、水に対し油性成分が0.025重量%となるように本発明の粉末組成物を添加し、5分間撹拌して調製した分散液を用い、分光光度計により測定されるセル長1cmにおける波長660nmの吸光度を意味する。
【0041】
本発明の粉末組成物は、油性成分の目的に応じて、飲食品、化粧品、芳香剤、医薬品、医薬部外品、日用品等の様々な分野で利用することができる。
【0042】
本発明の粉末組成物を用いた一つの好ましい態様としては、食用油脂を含む粉末組成物を飲食品などに添加し、飲食品の白色調を向上させる白度付与剤が例示される。
【0043】
本発明の粉末組成物を用いた他の好ましい態様としては、乳化剤を含む粉末組成物を液体に添加し、飲食品、化粧品、日用品などの乳化安定性を向上させる乳化安定剤が例示される。
【0044】
本発明の粉末組成物を用いた別の好ましい態様としては、香料を含む粉末組成物を粉末香料製剤として用いること等が例示される。
【実施例0045】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0046】
試験例1(粉末化基材の調製)
下記に示す材料を表1に示す割合(重量%)および条件で溶融混練し、結晶化した混練物を表1に示す条件でローターリーエバポレーターにより減圧乾燥して粉末化基材1および6~9を得た。得られた粉末化基材は、下記に示すブレンダーで15,700rpm、30秒間粉砕した。粉砕後の粉末化基材1および6~9について、以下の条件で比表面積および細孔容積を測定した。尚、粉末化基材2~5は、溶融混練の際に混練物が結晶化せず、比表面積および細孔容積を測定することなく評価を終了した。
【0047】
<材料>
・ソルビトール1:粉末ソルビトール「ウエノ」20M(株式会社ウエノフードテクノ製、ソルビトール純度92%)
・ソルビトール2:パーテック(登録商標)SI 150(メルク社製、ソルビトール純度98.4%)
・マルチトール:粉末マルチトール「ウエノ」60M(株式会社ウエノフードテクノ製)
・キシリトール:1級キシリトール(試薬、富士フイルム和光純薬株式会社製)
・マルトース:サンマルト(登録商標)ミドリ(株式会社林原製)
・デキストリン:マックス1000EX-C(松谷化学工業株式会社)
・エタノール:発酵エタノール(95度、第一アルコール株式会社製、エタノール92.3重量%)
・イオン交換水
<混練装置>
・横型:横型ニーダー(準KC-6型、サタケ株式会社製)
・KRC:KRCニーダー(S2型、株式会社栗本鐵工所製)
<ブレンダー>
・ブレンダー(16Speed Blender、Oster製)
【0048】
比表面積の測定
粉末化基材を測定セル(容積:1.7cm)に1/2容量程度となるように入れ、BET型比表面積計(MONOSORB、ユアサアイオニクス株式会社製)により以下の条件で測定した。
[測定条件]
方法:BET式一点法
キャリアガス:窒素・ヘリウム混合ガス(N:He=30:70)
測定ガス流量:15cc/分
脱気条件:120℃、20分間
【0049】
細孔容積の測定
細孔容積は水銀ポロシメーター(Pascal 240、Thermo Fisher Scientific社製)を用いて測定した。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例1~6および比較例1~24
樹脂袋に上記試験例で製造した粉末化基材60gを入れ、下記の油性成分20gを少量ずつ添加しながら振り混ぜ、含浸率25重量%の粉末組成物を調製した(実施例1~3および比較例1~12)。また、油性成分を40gに変更した以外は同様にして、含浸率40重量%の粉末組成物を調製した(実施例4~6および比較例13~24)。
【0052】
<油性成分>
・食用油脂(菜種油):キャノーラ油(日清オイリオグループ株式会社製)
・香料:オレンジ香料(小川香料株式会社製)
・乳化剤(ヘキサグリセリン縮合リシノレート):ポエムPR-300(理研ビタミン株式会社製)
【0053】
安息角の測定
粉末組成物150mLをガラス円筒容器に入れ、円筒回転法安息角測定機(筒井理化学器械株式会社)にて安息角を測定した。結果を表2および表3に示す。
【0054】
油滴のモード径の測定
粉末組成物0.1gをイオン交換水100gに1000rpmで撹拌しながら投入し、投入後、5分間撹拌して分散液を調製した。分散液の油滴のモード径を動的光散乱粒径分布測定装置(LB-500、株式会社堀場製作所製)で測定した。結果を表2および表3に示す。
【0055】
分散濁度の測定
含浸率25重量%の粉末組成物0.1g(油性成分として0.025g)にイオン交換水を加え100gにし、1000rpmで5分間撹拌して分散液を調製した。分散液を分光光度計UH5300(株式会社日立ハイテクサイエンス製)により、セル長1cmにおける波長660nmの吸光度を測定した。また、含浸率40重量%の粉末組成物0.1g(油性成分として0.040g)にイオン交換水を加え160gにした以外は、上記と同様にして吸光度を測定した。結果を表2および表3に示す。
【0056】
本発明の実施例1~6の粉末組成物は、比較例1~24の粉末組成物に比べて安息角が低いことから、優れた流動性を有することが確認された。また、油滴のモード径が小さく、分散濁度が高いことから、水に粉末組成物を分散させた際に、速やかに基材が溶解し、粒子径の小さい油滴が均一に分散していることが確認された。
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】