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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013745
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】包装袋および包装袋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/00 20060101AFI20230119BHJP
   B65D 30/12 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
B65D33/00 C
B65D30/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118137
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】598083245
【氏名又は名称】三共ポリエチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓司
(72)【発明者】
【氏名】伊東 浩司
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AB03
3E064BA25
3E064BA30
3E064BA35
3E064BA36
3E064BA37
3E064BA55
3E064BA60
3E064BB03
3E064BC18
3E064EA30
3E064GA04
3E064HM01
3E064HN05
3E064HP05
(57)【要約】
【課題】立体的な形状の包装袋について、開封者が開封位置を任意に調整可能とする。
【解決手段】包装袋(1)であって、一対の主面部(10a、10b)とそこから連続する少なくとも1つの副面部(11a、11b)とから構成され、主面部(10a、10b)および副面部(11a、11b)は合成樹脂を含むシートにより構成され、シートの端部同士が接着した接着部(20)は、延伸方向と直交する方向に3箇所以上で切り裂き可能に形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の主面部と、
少なくとも一方の前記主面部から連続する、少なくとも1つの副面部と、から構成され、
前記主面部および前記副面部は、合成樹脂を含むシートにより構成されており、
前記シートの端部同士が接着した接着部を含み、
前記接着部は、当該接着部の延伸方向と直交する方向に、3箇所以上で切り裂き可能に形成されていることを特徴とする包装袋。
【請求項2】
前記シートは、前記接着部の延伸方向と直交する方向への直線カット性を有していることを特徴とする、請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
一対の前記主面部は対向しており、一方の前記主面部の2つの側端からそれぞれ他方の前記主面部の対となる側端まで連続する、対向する一対の前記副面部を備え、
両方の前記副面部に、内側に折り込まれたガゼット折部がそれぞれ形成されており、
前記主面部と前記副面部との境界部はそれぞれ、前記接着部または折り目のいずれかにより形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の包装袋。
【請求項4】
前記折り目により形成されている前記境界部のいずれかが、前記折り目により形成されている他の前記境界部よりも切り裂かれにくく形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の包装袋。
【請求項5】
対向する一対の主面部と、一方の前記主面部の2つの側端からそれぞれ他方の前記主面部の対となる側端まで連続する、対向する一対の副面部とにより構成され、前記主面部および前記副面部は、合成樹脂を含むシートにより構成されており、両方の前記副面部には、内側に折り込まれたガゼット折部がそれぞれ形成され、前記シートの端部同士が接着した接着部を含み、当該接着部は、延伸方向と直交する方向に3箇所以上で切り裂き可能に形成され、前記主面部と前記副面部との境界部はそれぞれ、前記接着部または折り目のいずれかにより形成されている包装袋の製造方法であって、
前記折り目により形成されている前記境界部のいずれかである対象境界部と、当該対象境界部を一側端に含む前記副面部の他側端に位置する前記境界部である他端境界部と、を熱的に分離する工程と、
前記対象境界部のみに熱をかけて前記対象境界部をヒートシールする工程と、を含むことを特徴とする、包装袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品または物品を収容する袋状の容器として、フィルムをヒートシールして形成した包装袋等が一般的に用いられている。例えば、特許文献1には、縦シール部を設けた筒状フィルムの左右両側部にガゼット折部を備え、当該縦シール部に設けられた易剥離性シール領域に、2箇所の切込部による開封カッティング開始用のタブが刻印された易開封ガゼット袋状容器が開示されている。また、特許文献2には、フィルムの両端をヒートシールした合掌貼り部に一つのノッチが設けられた包装袋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-104438号公報
【特許文献2】特開2009-179365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの従来技術に係る包装袋は、タブまたはノッチが設けられた位置以外からは開封できない。したがって、包装袋を開封する位置を、開封者が任意に調整することは困難である。
【0005】
平袋または三方袋等の平面的な形状の包装袋では、一端のいずれの位置からでも切り裂いて開封可能となっているものもあるが、これは、特許文献1に開示されているような立体的な形状の包装袋では一般的ではない。
【0006】
本発明の一態様は、立体的な形状の包装袋について、開封者が開封位置を任意に調整可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る包装袋は、一対の主面部と、少なくとも一方の前記主面部から連続する、少なくとも1つの副面部と、から構成され、前記主面部および前記副面部は、合成樹脂を含むシートにより構成されており、前記シートの端部同士が接着した接着部を含み、前記接着部は、当該接着部の延伸方向と直交する方向に、3箇所以上で切り裂き可能に形成されている。
【0008】
本発明の一態様に係る包装袋は、前記シートは、前記接着部の延伸方向と直交する方向への直線カット性を有していてもよい。
【0009】
本発明の一態様に係る包装袋は、一対の前記主面部は対向しており、一方の前記主面部の2つの側端からそれぞれ他方の前記主面部の対となる側端まで連続する、対向する一対の前記副面部を備え、両方の前記副面部に、内側に折り込まれたガゼット折部がそれぞれ形成されており、前記主面部と前記副面部との境界部はそれぞれ、前記接着部または折り目のいずれかにより形成されていてもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る包装袋は、前記折り目により形成されている前記境界部のいずれかが、前記折り目により形成されている他の前記境界部よりも切り裂かれにくく形成されていてもよい。
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る包装袋の製造方法は、対向する一対の主面部と、一方の前記主面部の2つの側端からそれぞれ他方の前記主面部の対となる側端まで連続する、対向する一対の副面部とにより構成され、前記主面部および前記副面部は、合成樹脂を含むシートにより構成されており、両方の前記副面部には、内側に折り込まれたガゼット折部がそれぞれ形成され、前記シートの端部同士が接着した接着部を含み、当該接着部は、延伸方向と直交する方向に3箇所以上で切り裂き可能に形成され、前記主面部と前記副面部との境界部はそれぞれ、前記接着部または折り目のいずれかにより形成されている包装袋の製造方法であって、前記折り目により形成されている前記境界部のいずれかである対象境界部と、当該対象境界部を一側端に含む前記副面部の他側端に位置する前記境界部である他端境界部と、を熱的に分離する工程と、前記対象境界部のみに熱をかけて前記対象境界部をヒートシールする工程と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、立体的な形状の包装袋について、開封者が開封位置を任意に調整可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る包装袋を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示す包装袋を成形した状態を模式的に示す斜視図である。
図3図2に示す包装袋を開封した状態の一例を模式的に示す斜視図である。
図4】包装袋について、従来技術または一実施形態に係る製造方法が含む工程の一例を模式的に示す図である。
図5】一実施形態に係る包装袋の製造方法が含む工程の変形例を模式的に示す図である。
図6】一実施形態の変形例に係る包装袋を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について、図1から図3を参照して以下に説明する。本実施形態に係る包装袋は、例えば、珍味、菓子、ふりかけおよび鰹節等の食品、ならびに、文具および事務用品等の物品等を被収容物として収容可能な容器として使用されてよい。なお、図示の簡素化のため、各図に示す包装袋を構成するシートを面により表現している。
【0015】
(包装袋1の構造)
図1に示すように、本実施形態に係る包装袋1は、正面部10aと、背面部10bと、左側面部11aと、右側面部11bと、により構成されている。正面部10aおよび背面部10bは、特許請求の範囲に記載の「一対の主面部」のそれぞれに対応する。また、左側面部11aおよび右側面部11bは、特許請求の範囲に記載の「副面部」に対応する。
【0016】
本実施形態では、包装袋1の方向について、図1の紙面向かって上側を上方、下側を下方、左側を左方、右側を右方、手前側を正面側、奥側を背面側として説明する。ただし、包装袋1の方向はこれに限られない。
【0017】
包装袋1は、正面部10aと背面部10bとが対向して一対となっている。また、左側面部11aと右側面部11bとについても、対向して一対となっている。ここで、「対向する」について正面部10aおよび背面部10bの位置関係を一例として説明すれば、正面部10aの内面と、背面部10bの内面とが互いに向き合う位置関係にあればよく、これらの内面が互いに平行な位置関係となることは要さない。また、「一対」とは、1組として認識され得る2つの部材を意図するに過ぎず、「一対」となる互いの部材の形状が同一であることは要さない。
【0018】
なお、包装袋1は、一対の主面部および少なくとも1つの副面部を備えていればよい。例えば、包装袋1が、左側面部11aは備えるが右側面部11bは備えず、正面部10aの右側端部と背面部10bの右側端部とが連続した形状であった場合でも、本発明の一実施形態の範囲内に含まれる。
【0019】
左側面部11aは、正面部10aの左側端部から、背面部10bの左側端部まで連続して形成されている。より具体的には、左側面部11aの正面側端部は正面部10aの左側端部と連続しており、左側面部11aの背面側端部は背面部10bの左側端部と連続している。右側面部11bについても、左側面部11aと同様に、正面部10aの右側端部から、背面部10bの右側端部まで連続して形成されている。言い換えれば、対向する一対の左側面部11aおよび右側面部11bは、一方の主面部(例えば、正面部10a)の2つの側端からそれぞれ他方の主面部(例えば、背面部10b)の対となる側端まで連続している。
【0020】
左側面部11aおよび右側面部11bには、内側に折り込まれたガゼット折部12がそれぞれ形成されている。ガゼット折部12は、左側面部11aおよび右側面部11bそれぞれについて、包装袋1の正面側から背面側に向かう奥行き方向のおよそ中央に、上下方向に延びて形成されている。
【0021】
包装袋1は、左側面部11aおよび右側面部11bがそれぞれ、ガゼット折部12に沿って外面同士が接触するように折りたたまれることで、奥行き方向の厚さが小さくなる。この状態は、被収容物が収容される前の包装袋1の保管または輸送等に適している。なお、左側面部11aおよび右側面部11bにおいて、ガゼット折部12が形成される位置および方向は、包装袋1の例に限定されない。
【0022】
包装袋1は、正面部10a等を形成しているシートの端部同士が接着した合掌シール部20を含む。当該シートの詳細については後述する。合掌シール部20は、特許請求の範囲に記載の「接着部」に対応する。
【0023】
合掌シール部20は、正面部10aの左側端部と左側面部11aの正面側端部とが、それぞれの内面同士で接着した部分である。合掌シール部20は、正面部10aと左側面部11aとの境界部である左前境界部13aを形成している。合掌シール部20は、包装袋1の上下方向に延びて形成されているが、これに限られず、例えば包装袋1の左右方向に延びて形成されていてもよい。合掌シール部20は、例えば、ヒートシールにより形成してもよく、接着剤または粘着剤等により形成してもよい。
【0024】
合掌シール部20には、上下方向に延伸する開封部30が形成されている。開封部30は、包装袋1を開封するために、いずれの位置からも切り裂き可能に形成された部分である。具体的には、開封部30は、正面部10aと左側面部11aとが重なって接着している合掌シール部20の少なくとも一部である。
【0025】
正面部10aおよび左側面部11aのそれぞれにおいて開封部30となる部分には、複数の微細な傷加工が施されている。このような傷加工が施された部分同士が接着しており、上下方向に延伸する開封部30は、上下方向の3箇所以上で切り裂き可能に形成されているといえる。したがって、開封部30のいずれかの位置に切り裂く力がかかると、合掌シール部20の延伸方向と直交する方向に容易に切り裂かれる。
【0026】
ここで「切り裂く力」とは、例えば、開封部30において切り裂く位置を基点として、当該基点の上部を右方向の背面側にひねると同時に、当該基点の下部を右方向の正面側にひねることで、開封部30の当該基点に作用する力である。
【0027】
開封部30は、合掌シール部20の延伸方向と直交する方向に切り裂き可能に形成されていればよい。ここで、「合掌シール部20の延伸方向と直交する方向」とは、合掌シール部20の左側端と正確に直交する方向に限られない。包装袋1では、開封部30において切り裂かれる位置から、正面部10aの右側端のいずれかの位置に向かう方向であれば、いずれも「合掌シール部20の延伸方向と直交する方向」としてよい。すなわち、「合掌シール部20の延伸方向」とは合掌シール部20の左側端と完全に平行な方向に限られず、およそ平行な方向も含む概念であり、「直交する」についてもおよそ直交する状態も含む概念である。本明細書では以降、「合掌シール部20の延伸方向と直交する方向」を「切り裂き方向」と称する場合がある。
【0028】
なお、包装袋1が備える合掌シール部20は、いずれの位置からも切り裂き可能に形成されている開封部30を備えるが、本発明の一実施形態に係る合掌シール部20は、3箇所以上で切り裂き可能に形成されていればよい。例えば、合掌シール部20には、開封部として3つ以上のノッチが形成されていてもよい。
【0029】
包装袋1は、正面部10aと右側面部11bとの境界部である右前境界部13bと、背面部10bと左側面部11aとの境界部である左奥境界部13cとが、折り目14により形成されている。また、背面部10bと右側面部11bとの境界部である右奥境界部13dは、折り目14により形成されていると共に、折り目14を含む追加シール部21が形成されていてもよい。
【0030】
本明細書では以降、単に「境界部」と称した場合、包装袋1の主面部(正面部10aまたは背面部10b)と副面部(左側面部11aまたは右側面部11b)との境界部を意図する。このように、包装袋1が備える境界部は、合掌シール部20または折り目14のいずれかにより形成されていてもよい。
【0031】
追加シール部21は、背面部10bの右側端部と右側面部11bの背面側端部とが、折り目14を境界としてそれぞれの内面同士で接着して形成されている。追加シール部21は、合掌シール部20のようにシートの端部同士を接着するためではなく、右奥境界部13dを、折り目14により形成される他の境界部よりも切り裂かれにくくすることを目的として形成される。追加シール部21の機能については後述する(図3参照)。
【0032】
また、包装袋1には、底シール部22が形成されていてもよい。底シール部22は、包装袋1の下部を密閉するために形成される。追加シール部21および底シール部22は、合掌シール部20と同様に、ヒートシールにより形成してもよく、接着剤または粘着剤等により形成してもよい。
【0033】
(包装袋1の材料)
正面部10aと、背面部10bと、左側面部11aと、右側面部11bとを構成するシートは、いずれも合成樹脂を含むシートである。合成樹脂を含むシートとは、合成樹脂からなるシートであってもよく、合成樹脂が材料の一部に含まれるシートであってもよい。また、このような合成樹脂を含むシートが少なくとも一部に積層された、ラミネートフィルムシートまたは多層シート等の積層シートについても、合成樹脂を含むシートの一例として挙げられる。積層シートとしては、例えば、ヒートシール用のシートと印刷用のシートとを貼り合わせたシートであってもよく、この場合も、貼り合わされるシートの少なくともいずれかが合成樹脂を含むシートであればよい。
【0034】
合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリアミドおよびポリスチレンが挙げられる。また、ポリ乳酸等のバイオマス由来の高分子材料についても、合成樹脂の一例として挙げられる。
【0035】
合成樹脂を含むシートとして、生分解性プラスチック材料を含むシート、または、紙材料の表面を合成樹脂によりラミネート加工したシート等を用いれば、環境負荷の低減に繋がるため好ましい。
【0036】
また、合成樹脂を含むシートは、開封部30からの切り裂き方向への直線カット性を有していることが好ましい。ここで、「直線カット性」とは、直線状に切り裂かれやすい性質を示すものであり、切り裂き跡が完全な直線となることは要さない概念である。
【0037】
合成樹脂を含むシートは、その製造工程により決定するMD(Machine Direction)方向とTD(Transverse Direction)方向とで、強度等の物理的な性質が異なることが、技術常識として知られている。一般的には、合成樹脂材料は分子レベルでMD方向に沿って揃いやすいことから、シートは、MD方向には切り裂かれやすくなる一方、TD方向には切り裂かれにくくなる。合成樹脂を含むシートを成形して製造する包装袋1は、製造性の点から、通常は上下方向がMD方向に対応する。そのため、包装袋1は、一般的な製造方法によれば、切り裂き方向がTD方向に対応するため、切り裂き方向には直線状に切り裂かれにくい。
【0038】
近年、TD方向に直線カット性を有する合成樹脂を含むシートが開発され、市販されている。このようなシートは、例えば、1軸延伸シートと2軸延伸シートとを積層することで、TD方向への直線カット性を実現している。包装袋1を構成するシートとして、例えばこのようなTD方向に直線カット性を有するシートを用いれば、包装袋1に対して切り裂き方向に直線カット性を持たせることができる。また、包装袋1を、上下方向がシートのTD方向となるように製造することでも、切り裂き方向に対してある程度の直線カット性を持たせることができる。
【0039】
なお、切り裂き方向への直線カット性を有するシートとして、例えば、TD方向に直線カット性を有するシートを複数種類積層して形成してもよい。これによれば、所望の直線カット性を有するシートを得ることが容易である。
【0040】
このような直線カット性を有するシートによれば、開封部30から包装袋1を切り裂くと、シートを切り裂き方向に直線状に切り裂くことが容易である。そのため、包装袋1の開封時に形成される切り裂き跡が意図するラインから外れてしまうことで、被収容物が一部あふれ出る、包装袋1の開封口が歪な形状となる等の不具合を容易に防止できる。
【0041】
(包装袋1の成形例)
図2および図3に示す包装袋1aは、包装袋1を立体的に成型した状態の一例である。包装袋1の説明において説明済みの部材については、ここでは説明を省略する。
【0042】
包装袋1aは、下部を折りたたみ成形することで、底面部11cが形成されている。底面部11cは、左側面部11aおよび右側面部11bと同様に、特許請求の範囲に記載の「副面部」に対応する。底面部11cは、正面部10aの下端から背面部10bの下端まで連続していると共に、左側面部11aの下端から右側面部11bの下端まで連続して形成されている。
【0043】
包装袋1aは、底面部11cが形成されるように折りたたみ成形されることで、被収容物を収容する部分がおよそ立方体状となり、内部の収容空間を広く確保できる。したがって、包装袋1aは、多くの被収容物を収容できる。
【0044】
包装袋1aは、被収容物を収容した状態で、上端部が上端シール部23により密閉されてもよい。上端シール部23は、包装袋1a上部においてガゼット折部12が折りたたまれた状態で、正面部10a、背面部10b、左側面部11aおよび右側面部11bそれぞれの上端部の内面同士が接着して形成されている。上端シール部23は、合掌シール部20と同様に、ヒートシールにより形成してもよく、接着剤または粘着剤等により形成してもよい。
【0045】
このように、包装袋1a上部においてガゼット折部12が折りたたまれた状態で上端シール部23が形成されることにより、包装袋1aの使用者は、上端シール部23をつまんで持ちやすくなる。
【0046】
図3は、包装袋1aを開封した状態の一例を示している。包装袋1aに設けられる開封部30のいずれかの位置から切り裂き方向に切り裂いていくとき、切り裂きは追加シール部21の位置で一度止まりやすい。追加シール部21が形成されている右奥境界部13dは、折り目14により形成されている他の境界部よりも切り裂かれにくく形成されているためである。
【0047】
このように、包装袋1aを開封部30から切り裂いて開封するとき、切り裂きが追加シール部21の位置で一度止まりやすい。したがって、追加シール部21を切り裂くためにより強い力がかからなければ、包装袋1aが完全に2つに分離することがない。
【0048】
ここで、包装袋1aを切り裂いて開封したときの、切り裂き跡よりも上側の部材を蓋部1a-1、下側の部材を収容部1a-2とする。包装袋1aの被収容物が収容部1a-2に収容されているとき、蓋部1a-1は、収容部1a-2の蓋体として用いることができる。このとき、追加シール部21により蓋部1a-1と収容部1a-2とは完全には分離せず繋がった状態が維持されるので、蓋部1a-1が紛失することがなく管理が容易である。
【0049】
また、蓋部1a-1と収容部1a-2とを完全に分離しなければ、使用後に包装袋1aを廃棄するとき、廃棄物が1つにまとまった状態となる。そのため、廃棄物が散らかることを防止できる。これは、例えば宇宙空間の無重力状態のような、廃棄物の飛散が大きな問題となる状況では、特に重要であるといえる。なお、蓋部1a-1によれば、被収容物の飛散についても防止できる。このように、包装袋1aは、宇宙空間での使用にも適している。
【0050】
また、包装袋1aの切り裂きが一度追加シール部21の位置で止まった後、さらに切り裂く力をかければ、蓋部1a-1を収容部1a-2から完全に分離することもできる。そして、収容部1a-2から完全に分離した蓋部1a-1についても、収容部1a-2の蓋体として用いることができる。
【0051】
蓋部1a-1を蓋体として用いる構成によれば、収容部1a-2に埃等が侵入することを容易に防止できる。また、蓋部1a-1により、飛沫等が収容部1a-2内に侵入することについても同様に防止できる。これは、収容部1a-2に収容される被収容物の衛生面の向上に繋がり、特に被収容物が食品である場合は、微生物またはウイルス等による感染予防に効果的である。また、被収容物が収容部1a-2からこぼれ出すことについても、蓋部1a-1を蓋体として用いることで防止できる。
【0052】
また、包装袋1aが備える開封部30は、3箇所以上の任意の位置から切り裂き可能に形成されている。したがって、包装袋1aを一度、開封部30から切り裂いて開封した後、さらに開封部30の別の位置から切り裂くことができる。例えば、収容部1a-2に収容される被収容物の残量が少なくなったら、収容部1a-2の上下方向の長さが当該残量に合わせて短くなるように、収容部1a-2の一部を開封部30から切り裂いて分離してもよい。これにより、収容部1a-2は、被収容物の残量に合わせて、自立しやすい適切な大きさを維持しやすいまた、収容部1a-2を、被収容物を置いておくための皿としても用いやすくなる。
【0053】
同様に、蓋部1a-1についても、上下方向の長さを調整可能である。例えば、収容部1a-2の大きさを調整したら、それに合わせて、蓋部1a-1についても、蓋部1a-1の一部を開封部30から切り裂いて分離することで、蓋部1a-1を蓋体として適切な大きさに調整できる。
【0054】
このように、包装袋1aは、3箇所以上から切り裂き可能に形成された開封部30を備えることで、蓋部1a-1および収容部1a-2の上下方向の長さを、被収容物の残量等に合わせて任意に調整できる。また、蓋部1a-1を有効利用する構成は、包装袋1aのように、一対の主面部に加えて副面部を備えた立体的な形状の包装袋であれば、収容部1a-2に蓋部1a-1を被せやすいため、特に有効である。
【0055】
また、開封部30によれば、包装袋1aを切り裂く位置を包装袋1aの使用者が特段意識しなくても、当該使用者は包装袋1aを開封可能である。例えば、眼鏡が手元に無い場合等でも、開封部30の少なくともいずれかの位置に切り裂く力をかければ、包装袋1aを容易に切り裂いて開封できる。さらに、開封部30によれば、開封補助テープ等の追加の部材を要さずに開封可能な包装袋1aを実現できる。したがって、世界的に問題となっているプラスチックごみの発生を効果的に低減できる。
【0056】
このように、包装袋1aは、開封部30によるユニバーサルデザインを実現しており、多くの人が不便なく使用できると共に、プラスチックごみの低減にも資する。これにより、包装袋1aは、持続可能な開発目標(SDGs)の目標10「人や国の不平等をなくそう」および目標12「つくる責任 つかう責任」等の達成に貢献できる。
【0057】
包装袋1aのように、追加シール部21は、合掌シール部20により形成された左前境界部13aの対角に位置する右奥境界部13dに形成されていることが好ましい。このような位置関係によれば、左前境界部13aから切り裂きを開始して右奥境界部13dまで切り裂くと、自然に追加シール部21以外の部分の切り裂きが完了する。なお、追加シール部21は、合掌シール部20の対角に形成されていなくてもよく、折り目14により形成されているいずれかの境界部に形成されていればよい。
【0058】
また、右奥境界部13dは、追加シール部21を備えず、折り目14により形成されている他の境界部よりも切り裂かれにくい材料、すなわち、包装袋1aを構成するシートよりも切り裂かれにくい材料により形成された部材が貼り付けられていてもよい。このような部材としては、例えば、背面部10b等を構成するシートよりも厚さが大きい合成樹脂を含むシート、合成樹脂を含む芯材、紙または不織布等であってもよい。
【0059】
(包装袋1の製造方法)
包装袋1は、追加シール部21を形成する工程を除いて、従来公知の製造方法により製造できる。当該製造方法は、例えば、シートにおける左右の側端部に複数の微細な傷加工を施す工程と、当該側端部同士を合掌して接着する工程と、折り目14およびガゼット折部12を形成する工程と、底シール部22を形成する工程と、を含んでいてよい。
【0060】
追加シール部21を形成する工程について、図4および図5を参照して以下に説明する。図4および図5に示す包装袋1は、図1に示す包装袋1のA-A線矢視断面図として示している。すなわち、図4および図5では、包装袋1の方向について、紙面向かって上側が正面側、下側が背面側、左側が左方、右側が右方、手前側が下方、奥側が上方に、それぞれ対応している。
【0061】
図4および図5において、シール部Sは、ヒートシーラ(不図示)の一部であって、ヒートシールのためシートに熱をかける部材である。図4の符号401は、従来技術を示している。図4の符号401に示すように、従来は、包装袋1において境界部を接着する場合は、例えば、右前境界部13bと右奥境界部13dとを、2つの対向するシール部Sに挟んで、まとめてヒートシールすることが一般的である。しかしながら、本実施形態に係る包装袋1の製造方法は、右前境界部13bはヒートシールせず、右奥境界部13dのみをヒートシールして追加シール部21を形成する。
【0062】
そのため、本実施形態に係る包装袋1の製造方法は、右前境界部13bと右奥境界部13dとを熱的に分離する工程と、右奥境界部13dのみに熱をかけて、右奥境界部13dをヒートシールする工程と、を含む。言い換えれば、包装袋1の製造方法は、折り目14により形成されている境界部のいずれかである対象境界部と、当該対象境界部を一側端に含む副面部(右側面部11b)の他側端に位置する境界部である他端境界部と、を熱的に分離する工程を含む。また、包装袋1の製造方法は、対象境界部のみに熱をかけて、対象境界部をヒートシールする工程を含む。ここで、「対象境界部」とはヒートシールの対象となる境界部であり、本実施形態では、対象境界部は右奥境界部13dに対応し、他端境界部は右前境界部13bに対応する。
【0063】
図4の符号402に示す例では、右前境界部13bの位置だけを包装袋1の正面側(紙面向かって上側)に移動させることで、2つのシール部Sが右奥境界部13dのみを挟むようにしている。右前境界部13bの位置を包装袋1の正面側に移動させる方法としては、例えば、右前境界部13bを摘んで包装袋1の正面側に引き上げ、右奥境界部13dのヒートシールが完了するまで右前境界部13bの位置を固定すればよい。
【0064】
また、図5に示す例では、右前境界部13bと右奥境界部13dとの間に、断熱材Iを挿入することで、右前境界部13bと右奥境界部13dとを熱的に分離している。これにより、断熱材Iを挿入した状態でシール部Sにより右奥境界部13dのみをヒートシールしてもよい。
【0065】
このような構成によれば、対象境界部のみに熱をかけてヒートシールできる。このように、対象境界部をヒートシールすれば、対象境界部を、折り目14により形成された他の境界部よりも切り裂かれにくく形成できる。
【0066】
また、対象境界部を切り裂かれにくく形成する方法としては、対象境界部をヒートシールする方法に限られるものではない。例えば、本実施形態に係る包装袋の製造方法は、対象境界部に、包装袋1を構成するシートよりも切り裂かれにくい材料により形成された部材を貼り付ける工程を有していてもよい。このような部材の例は説明済みのため、ここでは説明を省略する。貼り付けは、接着剤または粘着剤等を用いて行われてもよく、貼り付ける部材が合成樹脂を含む場合はヒートシールにより行われてもよい。
【0067】
(変形例)
本発明の一実施形態には、様々なバリエーションが想定される。図6を参照して、当該バリエーションの一例について説明する。本実施形態に係る包装袋1は、単一のシートを合掌シール部20により合掌して形成した、合掌ガゼット袋である。ここで、包装袋1では、合掌シール部20が左前境界部13aに形成されている。しかし、合掌シール部20の位置は、左前境界部13aに限られるものではなく、左前境界部13a以外のいずれかの境界部を形成していてもよく、いずれの境界部とも異なる位置に形成されていてもよい。
【0068】
例えば、図6の符号601に示す包装袋2は、合掌シール部20が、正面部10aにおける左右方向のおよそ中央に、上下方向に延びて形成されている。そして、包装袋2の4つの境界部は、いずれも折り目14により形成されている。このように、合掌シール部20は、正面部10a、背面部10b、左側面部11aまたは右側面部11bいずれかの、端部以外の部分に形成されていてもよい。
【0069】
合掌シール部20の位置は、合成樹脂を含むシートを合掌して接着し、合掌シール部20を形成した後、折り目14を形成する位置を調整することで、容易に変更できる。
【0070】
また、別の変形例として、図6の符号602に示す包装袋3は、包装袋1のような合掌ガゼット袋ではなく、自立型のスタンドパックである。包装袋3は、正面部10aと、背面部10bと、底面部11dから構成されている。包装袋3には、正面部10aと背面部10bとの、それぞれの右側端部同士および左側端部同士が各々接着した、2つの側端シール部20aが形成されている。2つの側端シール部20aには、それぞれ包装袋1と同様の開封部30が形成されている。
【0071】
底面部11dは、正面部10aの下端から背面部10bの下端まで連続して形成されている。すなわち、包装袋3では、底面部11dが、特許請求の範囲に記載の「副面部」に対応する。また、包装袋3には、底面部11dの正面側端部と正面部10aの下端部とを接着すると共に、底面部11dの背面側端部と背面部10bの下端部とを接着する、底シール部22aが形成されている。
【0072】
このように、本発明の一実施形態に係る包装袋は、一対の主面部に加えて少なくとも1つの副面部を備える立体的な形状であればよい。
【0073】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1、1a、2、3 包装袋
10a 正面部(主面部)
10b 背面部(主面部)
11a 左側面部(副面部)
11b 右側面部(副面部)
11c、11d 底面部(副面部)
12 ガゼット折部
13a 左前境界部
13b 右前境界部(他端境界部)
13c 左奥境界部
13d 右奥境界部(対象境界部)
14 折り目
20 合掌シール部(接着部)
20a 側端シール部(接着部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6