(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137456
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】パワーコンディショナ
(51)【国際特許分類】
H02H 7/122 20060101AFI20230922BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20230922BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H02H7/122
H02M7/48 R
H02M7/48 M
H02J3/38 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043678
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮
(72)【発明者】
【氏名】西尾 隆平
【テーマコード(参考)】
5G053
5G066
5H770
【Fターム(参考)】
5G053AA16
5G053BA04
5G053CA01
5G053DA01
5G053EB01
5G053EB09
5G053FA01
5G066HA13
5G066HB06
5G066HB09
5H770AA17
5H770BA11
5H770CA05
5H770CA06
5H770HA03Y
5H770HA03Z
5H770JA17Y
5H770LB09
(57)【要約】
【課題】電力系統との接続を切り替える開閉器の異常を検出できるパワーコンディショナを提供する。
【解決手段】パワーコンディショナS1は、直流電源B1からの直流電力を交流電力に変換するインバータ回路1と、電力系統Kとインバータ回路1との間に接続され、導通状態と遮断状態とが切り替わる開閉器2と、開閉信号を開閉器2に出力し、開閉信号によって開閉器2の導通状態と遮断状態との切り替えを制御する開閉制御部3と、インバータ回路1と開閉器2とを繋ぐ第1線路91の第1電圧を検出する第1電圧検出部41と、開閉器2を導通状態にする開閉信号が開閉制御部3から出力されているときに、インバータ回路1の出力電流を目標電流に制御する定電流制御を行うインバータ制御部5と、定電流制御時の第1電圧の大きさを用いて開閉器2の異常を検出する異常検出部6と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源からの直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、
電力系統と前記インバータ回路との間に接続され、導通状態と遮断状態とが切り替わる開閉器と、
開閉信号を前記開閉器に出力し、前記開閉信号によって前記開閉器の導通状態と遮断状態との切り替えを制御する開閉制御部と、
前記インバータ回路と前記開閉器とを繋ぐ第1線路の第1電圧を検出する第1電圧検出部と、
前記開閉器を導通状態にする開閉信号が前記開閉制御部から出力されているときに、前記インバータ回路の出力電流を目標電流に制御する定電流制御を行うインバータ制御部と、
前記定電流制御時の前記第1電圧の大きさを用いて前記開閉器の異常を検出する異常検出部と、を備えるパワーコンディショナ。
【請求項2】
前記電力系統と前記開閉器とを繋ぐ第2線路の第2電圧を検出する第2電圧検出部をさらに備え、
前記異常検出部は、前記第1電圧の大きさと前記第2電圧の大きさとの電圧差が閾値以上である時に、前記開閉器に異常が発生していると判断する、請求項1に記載のパワーコンディショナ。
【請求項3】
前記異常検出部は、前記第1電圧の大きさが前記電力系統の系統電圧に応じた規定値以上である時に、前記開閉器に異常が発生していると判断する、請求項1に記載のパワーコンディショナ。
【請求項4】
前記開閉器は、前記インバータ回路および前記電力系統の各々が接続される接点と、前記開閉信号が入力される制御端子と、を含むリレーであり、
前記接点は、前記制御端子に入力される前記開閉信号に応じて、閉路と開路とが切り替わる、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のパワーコンディショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パワーコンディショナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電池または太陽電池のような分散電源を電力系統に連系させる分散電源システムが知られている。分散電源システムは、分散電源からの直流電力をパワーコンディショナによって交流電力に変換する。そして、当該交流電力を電力系統に供給する。例えば、特許文献1には、パワーコンディショナとしての電力変換装置が開示されている。特許文献1に記載の電力変換装置は、インバータ回路と系統連系リレーとを備える。系統連系リレーは、インバータ回路と電力系統との間に接続される。この電力変換装置では、系統連系リレーのオン/オフによって電力系統との接続を切り替え、系統連系リレーがオンの時、電力系統に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
系統連系リレーの初期不良または経年劣化により、電力系統との接続が正常に切り替わらないことがある。仮に、系統連系リレーに異常が発生していると、例えば、系統連系リレーをオンとなるように制御しても、系統連系リレーがオフとなったままとなることがある。このように系統連系リレーがオフであるにも関わらず、系統連系運転のためにインバータ回路が動作し続けると、インバータ回路が故障する虞がある。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、電力系統との接続を切り替える開閉器の異常を検出できるパワーコンディショナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のパワーコンディショナは、直流電源からの直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、電力系統と前記インバータ回路との間に接続され、導通状態と遮断状態とが切り替わる開閉器と、開閉信号を前記開閉器に出力し、前記開閉信号によって前記開閉器の導通状態と遮断状態との切り替えを制御する開閉制御部と、前記インバータ回路と前記開閉器とを繋ぐ第1線路の第1電圧を検出する第1電圧検出部と、前記開閉器を導通状態にする開閉信号が前記開閉制御部から出力されているときに、前記インバータ回路の出力電流を目標電流に制御する定電流制御を行うインバータ制御部と、前記定電流制御時の前記第1電圧の大きさを用いて前記開閉器の異常を検出する異常検出部と、を備える。
【0007】
前記パワーコンディショナの好ましい実施の形態において、前記電力系統と前記開閉器とを繋ぐ第2線路の第2電圧を検出する第2電圧検出部をさらに備え、前記異常検出部は、前記第1電圧の大きさと前記第2電圧の大きさとの電圧差が閾値以上である時に、前記開閉器に異常が発生していると判断する。
【0008】
前記パワーコンディショナの好ましい実施の形態において、前記異常検出部は、前記第1電圧の大きさが前記電力系統の電気特性値に応じた規定値以上である時に、前記開閉器に異常が発生していると判断する。
【0009】
前記パワーコンディショナの好ましい実施の形態において、前記開閉器は、前記インバータ回路および前記電力系統の各々が接続される接点と、前記開閉信号が入力される制御端子と、を含むリレーであり、前記接点は、前記制御端子に入力される前記開閉信号に応じて、閉路と開路とが切り替わる。
【発明の効果】
【0010】
本開示のパワーコンディショナでは、インバータ制御部は、開閉器を導通状態にする開閉信号が開閉制御部から出力されているときに、インバータ回路の出力電流を目標電流に制御する定電流制御を行い、異常検出部は、定電流制御時の第1電圧の大きさを用いて開閉器の異常を検出する。例えば、開閉器の異常により、開閉器を導通状態にする開閉信号が開閉制御部から出力されているにも関わらず、開閉器が導通状態にならないこと(遮断状態になる)がある。このとき、インバータ制御部がインバータ回路を定電流制御すると、インバータ回路の出力電圧が、基準値(電力系統の系統電圧)よりも上昇する。このように開閉器に異常が発生するとインバータ回路の出力電圧が上昇するので、異常検出部は、定電流制御時の第1電圧(インバータ回路の出力電圧)の大きさを用いて、開閉器に異常が発生していると判断することが可能となる。つまり、本開示のパワーコンディショナは、電力系統との接続を切り替える開閉器の異常を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係るパワーコンディショナの全体構成例を示す図である。
【
図2】
図1に示すパワーコンディショナの連系処理を示すフローチャートである。
【
図3】
図1に示すパワーコンディショナにおける各波形のタイミングチャートであって、(a)は開閉器が正常である場合を、(b)は開閉器に異常が発生している場合をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示のパワーコンディショナの好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。
【0013】
図1は、本開示の一実施形態に係るパワーコンディショナS1の全体構成例を示す。パワーコンディショナS1は、電力系統Kに接続可能である。パワーコンディショナS1は、電力系統Kに接続された状態において、系統連系運転を行う。パワーコンディショナS1には、直流電源B1が接続される。パワーコンディショナS1は、直流電源B1から直流電力を入力される。そして、入力された直流電力を交流電力に変換し、電力系統Kに出力する。直流電源B1は、何ら限定されないが、例えば、再生可能エネルギーを用いた発電システム(例えば太陽光発電システム)、あるいは、蓄電池の充放電を行う蓄電システムなどである。当該蓄電池は、電気自動車に備えられるものであってもよい。
【0014】
図1に示すように、パワーコンディショナS1は、インバータ回路1、開閉器2、開閉制御部3、第1電圧検出部41、第2電圧検出部42、インバータ制御部5、異常検出部6、第1線路91、第2線路92および第3線路93を備える。
【0015】
第1線路91は、インバータ回路1と開閉器2とを電気的に接続する。第2線路92は、開閉器2と電力系統Kと電気的に接続する。第3線路93は、直流電源B1とインバータ回路1とを電気的に接続する。
【0016】
インバータ回路1は、直流電源B1と開閉器2との間に電気的に接続され、直流電力と交流電力との変換を行う。インバータ回路1は、たとえば複数のスイッチング素子を含み、当該複数のスイッチング素子のスイッチング動作によって、直流電力と交流電力との変換を行う。インバータ回路1は、直流電源B1から直流電力を入力され、交流電力を電力系統K側(第1線路91)に出力する。インバータ回路1は、インバータ制御部5によって制御される。インバータ回路1の各スイッチング素子は、インバータ制御部5から入力される駆動信号に応じて、スイッチング動作する。
【0017】
開閉器2は、電力系統Kとインバータ回路1との間に接続される。開閉器2は、開閉制御部3から入力される開閉信号に応じて、導通状態と遮断状態とが切り替わる。開閉器2が導通状態のとき、パワーコンディショナS1は、電力系統Kに連系する。一方、開閉器2が遮断状態のとき、パワーコンディショナS1は、電力系統Kから解列する。
【0018】
開閉器2は、例えばリレーであり、接点21および制御端子22を含む。制御端子22は、開閉制御部3に接続される。制御端子22には、開閉制御部3から開閉信号が入力される。開閉器2の内部において、制御端子22には、コイルが接続されている。接点21は、制御端子22に開閉信号が入力されることにより、当該開閉信号に応じて、閉路と開路とが切り替わる。接点21が閉路であるとき開閉器2は導通状態となり、接点21が開路であるとき開閉器2は遮断状態となる。接点21の一方の端子には、第1線路91が接続され、接点21の他方の端子には、第2線路92が接続される。接点21は、例えばa接点(メーク接点)であり、先述のコイルに電流が流れることで、閉路となる。なお、
図1においては、接点21が開路である状態を実線で示し、接点21が閉路である状態を想像線(二点鎖線)で示している。接点21は、a接点ではなくb接点(ブレイク接点)であってもよい。開閉器2は、リレーに限定されず、主接点と補助接点と制御端子とを含む電磁接触器であってもよい。当該電磁接触器において、主接点は、接点21に対応するものである。補助接点は、主接点の動作状態(閉路と開路と)に対応して動作する。補助接点は、例えば主接点の動作状態をフィードバックする際などに用いられる。制御端子は、制御端子22に対応するものである。本開示において、リレーとは、補助接点を含まないものであり、電磁接触器とは、補助接点を含むものである。
【0019】
開閉制御部3は、開閉器2の導通状態と遮断状態との切り替えを制御する。開閉制御部3は、開閉信号を生成して、当該開閉信号を開閉器2(制御端子22)に出力する。開閉信号は、例えば電圧信号であって、開閉器2を導通状態にする第1レベルの信号(以下「投入信号」という)と、開閉器2を遮断状態にする第2レベルの信号(以下「開放信号」という)とを含む。接点21がa接点である例において、第2レベルは、0Vであり、第1レベルは0Vよりも大きい値(接点21を閉路にする電圧値)である。なお、第2レベルが0Vの場合、開閉制御部3から開閉器2に何ら信号が出力されていない状態であるが、説明の便宜上、開放信号が出力されているものとする。本実施形態では、開閉制御部3が開閉器2に投入信号を出力しているとき、制御端子22に電圧が印加され、接点21が閉路となる(つまり開閉器2が導通状態となる)。一方、開閉制御部3が開閉器2に開放信号を出力しているとき、制御端子22に電圧が印加されず、接点21が開路となる(つまり開閉器2が遮断状態となる)。開閉制御部3は、生成した開閉信号(投入信号または開放信号)を、開閉制御部3の他、インバータ制御部5および異常検出部6にも出力する。
【0020】
第1電圧検出部41は、第1線路91に印加される電圧(以下「第1電圧」という)を検出する。第1線路91にはインバータ回路1の出力電圧が印加されることから、第1電圧は、インバータ回路1の出力電圧に相当する。パワーコンディショナS1では、第1電圧は交流電圧であり、第1電圧検出部41が検出する第1電圧は、例えば瞬時値である。第1電圧検出部41は、第1電圧の検出値(瞬時値)をインバータ制御部5および異常検出部6に出力する。
【0021】
第2電圧検出部42は、第2線路92に印加される電圧(以下「第2電圧」という)を検出する。第2線路92には電力系統Kの系統電圧が印加されることから、第2電圧は、電力系統Kの系統電圧に相当する。パワーコンディショナS1では、第2電圧は交流電圧であり、第2電圧検出部42が検出する第2電圧は、例えば瞬時値である。第2電圧検出部42は、第2電圧の検出値(瞬時値)をインバータ制御部5および異常検出部6に出力する。
【0022】
インバータ制御部5は、インバータ回路1の出力制御を行う。インバータ制御部5は、系統連系運転を行う前には、その準備としてインバータ回路1を電圧制御し、系統連系運転中には、インバータ回路1を定電流制御する。インバータ制御部5は、電圧制御により、インバータ回路1の出力電圧を電力系統Kの系統電圧に合わせるように、インバータ回路1を制御する。具体的には、インバータ制御部5は、電圧制御において、インバータ回路1の出力電圧(瞬時値)が、第2電圧検出部42から入力される第2電圧の検出値(瞬時値)となるように、先述の駆動信号を生成する。そして、生成した駆動信号をインバータ回路1の各スイッチング素子に出力することで、インバータ回路1の出力電圧の瞬時値を、電力系統Kの系統電圧の瞬時値に合わせる。これにより、インバータ回路1の出力電圧の波形と電力系統Kの系統電圧の波形とが同じ(略同じ状態を含む)になる。つまり、出力電圧の周波数、位相および大きさ(最大値、ピークピーク値、平均値および実効値)などが、系統電圧の周波数、位相および大きさ(最大値、ピークピーク値、平均値および実効値)などとそれぞれ同じ(略同じ状態を含む)になる。また、インバータ制御部5は、定電流制御により、インバータ回路1の出力電流(実効値)が目標電流となるように、インバータ回路1を制御する。インバータ制御部5は、開閉制御部3から入力される開閉信号が投入信号である時、インバータ回路1を定電流制御する。
【0023】
異常検出部6は、開閉器2の異常を検出する。異常検出部6は、開閉制御部3から開閉信号を入力される。また、異常検出部6は、第1電圧検出部41から第1電圧の検出値(瞬時値)を入力され、当該第1電圧の検出値(瞬時値)から第1電圧の大きさ(実効値)を算出する。異常検出部6は、第2電圧検出部42から第2電圧の検出値(瞬時値)を入力され、当該第2電圧の検出値(瞬時値)から第2電圧の大きさ(実効値)を算出する。異常検出部6は、開閉制御部3から入力される開閉信号が投入信号である時(つまりインバータ制御部5がインバータ回路1を定電流制御している時)、第1電圧の大きさ(実効値)と第2電圧の大きさ(実効値)との電圧差ΔVを算出する。そして、異常検出部6は、当該電圧差ΔVが閾値以上であるか否かを判断する。閾値は、例えばインバータ回路1の各スイッチング素子の素子耐圧などを基に設定される。当該閾値の一例としては、電力系統Kの系統電圧が100V~200Vである場合において、この系統電圧の20%である。異常検出部6は、上記電圧差ΔVが閾値以上である場合、開閉器2に異常が発生していると判断する。異常検出部6は、開閉器2の異常を検出すると、図示しない報知手段によって、開閉器2の異常を報知する。また、異常検出部6が開閉器2の異常を検出すると、インバータ制御部5は、インバータ回路1を停止する。
【0024】
図2は、パワーコンディショナS1における電力系統Kへの連系処理を示すフローチャートである。
図2に示す連系処理は、パワーコンディショナS1を解列状態から連系状態に切り替える際の動作例である。開始時点では、パワーコンディショナS1は、開閉器2が遮断状態であり、電力系統Kから解列されている。このとき、開閉制御部3から開閉器2には、開放信号が出力されている。また、インバータ回路1は、停止されている。
【0025】
パワーコンディショナS1は、電力系統Kから解列された状態から電力系統Kに連系する際、まず、系統連系運転の準備(開閉器2を導通状態にする前の準備)を行う(S11)。具体的には、まず、開閉制御部3が開閉器2に開放信号を出力したまま(開閉器2が遮断状態のまま)、インバータ制御部5は、インバータ回路1の電圧制御を開始し、当該電圧制御によって、インバータ回路1の出力電圧を、電力系統Kの系統電圧に合わせる(S111)。このとき、インバータ制御部5は、第2電圧検出部42から入力される第2電圧の検出値(瞬時値)に基づいて、インバータ回路1の電圧制御を行う。これにより、第1線路91の第1電圧と第2線路92の第2電圧とは、同じ波形(略同じ状態を含む)となり、電力系統Kに電力を供給できる状態となる。第1電圧と第2電圧とが同じ波形(略同じ状態を含む)になると、系統連系運転の準備が完了する。なお、本実施形態では、インバータ制御部5は、第2電圧の検出値に基づいて、インバータ回路1の電圧制御を行う。このとき、第1電圧検出部41からインバータ制御部5に第1電圧の検出値が入力されるようにしておき、インバータ制御部5が、さらに第1電圧の検出値を用いて、インバータ回路1の出力電圧(第1電圧)をフィードバック制御してもよい。つまり、インバータ制御部5は、インバータ回路1の出力電圧をフィードバックしつつ、インバータ回路1の電圧制御を行ってもよい。この構成であれば、ステップS111において、インバータ回路1の出力電圧を、系統電圧により確実に合わせることが可能となる。
【0026】
次いで、系統連系運転の準備が完了し、電力系統Kに電力を供給できる状態となると、系統連系運転を開始する(S12)。具体的には、まず、開閉制御部3は、開閉器2の制御端子22に投入信号を出力する(S121)。つまり、開閉制御部3は、開閉信号を開放信号から投入信号に切り替え、制御端子22に電圧を印加する。そして、開閉制御部3が開閉器2に投入信号を出力する(制御端子22に電圧を印加する)と、インバータ制御部5は、電圧制御から定電流制御に切り替え、インバータ回路1の出力電流(実効値)を目標電流にする(S122)。
【0027】
次いで、異常検出部6は、第1電圧の実効値と第2電圧の実効値との電圧差ΔVを算出し、この電圧差ΔVが閾値以上であるか否かを判断する(S13)。つまり、インバータ回路1の出力電圧(実効値)と電力系統Kの系統電圧(実効値)との電圧差が閾値以上であるか否かを判断する。電圧差ΔVは、例えば第1電圧から第2電圧を減算することで算出される。ステップS13において、電圧差ΔVが閾値以上であると(S13:YES)、異常検出部6は、開閉器2に異常が発生していると判断する。つまり、異常検出部6は、開閉器2の異常を検出する(S14)。異常検出部6は、開閉器2の異常を検出すると、必要に応じて開閉器2の異常を報知する。一方、ステップS13において、電圧差ΔVが閾値未満であれば(S13:NO)、パワーコンディショナS1は、系統連系運転の終了条件を満たしたか否かを判断する(S15)。系統連系運転の終了条件としては、例えば利用者の終了操作が操作されたこと、または、電力系統Kの異常が発生したことなどが挙げられる。ステップS15において、系統連系運転の終了条件を満たしていなければ(S15:NO)、ステップS13の処理に戻る。よって、系統連系運転の終了条件が満たされる(S15:YES)か、第1電圧と第2電圧との電圧差ΔVが閾値以上になる(S13:YES)まで、ステップS13,S15の処理を繰り返し行う。
【0028】
開閉器2の異常が検出されるか(S14)、あるいは、系統連系運転の終了条件が満たされると(S15:YES)、パワーコンディショナS1は、系統連系運転を終了する(S16)。具体的には、まず、開閉制御部3は、開閉器2の制御端子22に開放信号を出力する(S161)。つまり、開閉制御部3は、開閉信号を投入信号から開放信号に切り替える。そして、インバータ制御部5は、インバータ回路1を停止させる(S162)。
【0029】
図3は、上記連系処理において、開閉器2が正常である場合と、開閉器2に異常が発生している場合との各信号波形を示すタイミングチャートである。
図3のタイミングチャートは、模式的なものである。
図3(a)は、開閉器2が正常であるときを示し、
図3(b)は、開閉器2に異常が発生しているときを示している。なお、
図3(b)では、パワーコンディショナS1が系統連系運転を開始する前に、すでに開閉器2に異常が発生している場合を示している。また、
図3(a),(b)のそれぞれにおいて、上段は開閉信号を、中段は第1電圧の実効値(インバータ回路1の出力電圧の実効値)と第2電圧の実効値(電力系統Kの系統電圧の実効値)との電圧差ΔVを、下段はインバータ回路1の出力電流(実効値)をそれぞれ示している。
【0030】
まず、開閉器2が正常である場合について、説明する。
図3(a)に示すように、時刻t11において、上記ステップS11の処理が行われ、インバータ回路1の電圧制御が開始される。つまり、インバータ制御部5によってインバータ回路1の出力電圧が系統電圧となるように制御される。これにより、インバータ回路1の出力電圧が上昇し、時刻t12において、インバータ回路1の出力電圧が系統電圧に一致する。つまり、
図3(a)中段に示すように、電圧差ΔVが0となる。その後、時刻t13において上記ステップS121の処理が行われ、開閉信号が投入信号に切り替わる。このとき、開閉器2が正常であるので、開閉器2は開閉信号(投入信号)に従って導通状態となる。つまり、インバータ回路1と電力系統Kとが導通し、パワーコンディショナS1が電力系統Kに接続される(系統連系する)。続いて、時刻t14において、上記ステップS122の処理が行われ、電圧制御から定電流制御に切り替わると、インバータ制御部5によってインバータ回路1の出力電流が目標電流に制御される。これにより、
図3(a)下段に示すように、インバータ回路1の出力電流が上昇し、時刻t15において、インバータ回路1の出力電流が目標電流となる。その後は、系統連系運転が停止するまで、この状態が継続される。
【0031】
次いで、開閉器2に異常が発生している場合について、説明する。
図3(b)に示すように、時刻t21において、上記ステップS11の処理が行われ、インバータ回路1の電圧制御が開始される。これにより、上記
図3(a)と同様に、時刻t22において、インバータ回路1の出力電圧が系統電圧に一致する。つまり、
図3(b)中段に示すように、電圧差ΔVが0となる。その後、時刻t23において、上記ステップS121の処理が行われ、開閉信号が投入信号に切り替わる。ただし、
図3(b)に示す例では、開閉器2に異常が発生しているため、開閉器2が導通状態にならない。例えば、接点21の異常により接点21が閉路に切り替わらないとき、開閉器2内の接点21までの配線が断線しているとき、あるいは、制御端子22からコイルまでの配線が断線しているときなどにおいて、開閉制御部3から投入信号が開閉器2に出力されているにも関わらず、開閉器2が遮断状態のままとなる。つまり、パワーコンディショナS1は、電力系統Kに解列したままである。続いて、上記
図3(a)と同様に、時刻t24において、上記ステップS122の処理が行われ、電圧制御から定電流制御に切り替わる。しかしながら、開閉器2が遮断状態のままであるので、第1線路91に電流が流れず、インバータ回路1の出力電流は一向に上昇しない。このとき、第1線路91に電流が流れないのに、インバータ制御部5が定電流制御によってインバータ回路1の出力電流を制御することで、
図3(b)中段に示すように、時刻t24からインバータ回路1の出力電圧が徐々に上昇する。このインバータ回路1の出力電圧の上昇により、時刻t25において、インバータ回路1の出力電圧が系統電圧よりも上記閾値以上大きくなる。つまり、時刻t25において、電圧差ΔVが閾値以上となる。これにより、電圧差ΔVが閾値以上となったので、異常検出部6は、開閉器2に異常が発生していると判断する(開閉器2の異常を検出する)。異常検出部6により、開閉器2の異常が検出されると、図示しない報知手段が開閉器2の異常を報知したり、インバータ制御部5がインバータ回路1を停止させたりする。以上のように、パワーコンディショナS1は、第1電圧の大きさと第2電圧の大きさとの電圧差ΔV(=第1電圧の大きさ-第2電圧の大きさ)が閾値以上である場合に、開閉器2の異常を検出する。
【0032】
上記
図3(b)に示すタイミングチャートでは、パワーコンディショナS1が系統連系運転を開始する前に、すでに開閉器2に異常が発生していた場合を想定した。しかしながら、開閉器2の異常は、系統連系運転を開始する前に発生するだけでなく、系統連系運転中に発生することもある。つまり、パワーコンディショナS1が系統連系運転を開始するときには、開閉器2が正常に導通状態となり、適正にパワーコンディショナS1が電力系統Kに接続されたが、その後、開閉器2の故障などにより、開閉器2に異常が発生し、開閉器2が遮断状態となることがある。このように、系統連系運転中に開閉器2の異常が発生した場合であっても、電圧差ΔVが閾値以上となるので、
図2のステップS13で、電圧差ΔVが閾値以上であると判断される。そのため、
図2のステップS14で、開閉器2の異常が検出される。つまり、パワーコンディショナS1は、正常に系統連系運転を行っている時に、急に開閉器2の異常が発生した場合であっても、開閉器2の異常を検出することができる。
【0033】
本開示のパワーコンディショナS1の作用および効果は、次の通りである。
【0034】
パワーコンディショナS1は、第1線路91の第1電圧の大きさ(実効値)と、第2線路92の第2電圧の大きさ(実効値)との電圧差ΔVが閾値以上である時に、開閉器2に異常が発生していると判断する。第1線路91は、インバータ回路1に接続されているので、第1電圧は、インバータ回路1の出力電圧に相当する。第2線路92は、電力系統Kに接続されているので、第2電圧は、系統電圧に相当する。開閉器2が正常である場合、パワーコンディショナS1が適正に電力系統Kに接続されるので、インバータ制御部5がインバータ回路1を定電流制御していても、第1線路91に印加される電圧と第2線路92に印加される電圧とは同じ(略同じ状態を含む)である。一方で、開閉器2に異常が生じている場合、開閉制御部3から開閉器2に投入信号(導通状態にする開閉信号)が出力しているにも関わらず、開閉器2は遮断状態である。この場合、インバータ制御部5がインバータ回路1を定電流制御すると、第1電圧が徐々に上昇して、第1線路91に印加される電圧と第2線路92に印加される電圧との電圧差が大きくなる。このため、パワーコンディショナS1は、電圧差ΔVが閾値以上である場合に、開閉器2に異常が発生していると判断することができる。つまり、パワーコンディショナS1は、開閉器2の異常を検出できる。
【0035】
パワーコンディショナS1では、開閉器2は、補助接点のないリレーである。この構成と異なり、開閉器2が電磁接触器であり、補助接点がある場合、主接点の状態(閉路または開路)に連動して補助接点も閉路または開路となる。つまり、開閉器2が電磁開閉器である場合、補助接点の状態(閉路または開路)に基づいて、開閉器2の異常の有無を検出することが可能である。しかしながら、補助接点のないリレーでは、このような手法によって、開閉器2の異常を検出することができない。これに対して、パワーコンディショナS1は、先述の通り、上記電圧差ΔVによって開閉器2の異常を検出できる。つまり、パワーコンディショナS1は、開閉器2が補助接点のないリレーであっても、開閉器2の異常を検出できる。なお、パワーコンディショナS1は、開閉器2が補助接点のある電磁接触器であっても、上記電圧差ΔVによって開閉器2の異常を検出することで、当該補助接点を開閉器2の異常の検出とは別の用途に使うことが可能となる。
【0036】
上記実施形態では、異常検出部6は、上記電圧差ΔVが閾値以上である場合に、開閉器2の異常を検出する例を示した。この構成とは異なり、異常検出部6は、第1電圧が、電力系統Kの系統電圧に応じた規定値以上である場合に、開閉器2の異常を検出してもよい。当該規定値は、先述の閾値と同様に、例えばインバータ回路1の各スイッチング素子の素子耐圧などを基に設定される。当該規定値の一例としては、電力系統Kの系統電圧が100V~200Vである場合において、この系統電圧の120%である。先述の通り、開閉器2に異常が生じており、開閉制御部3から開閉器2に投入信号(導通状態にする開閉信号)が出力しているにも関わらず、開閉器2が遮断状態である場合、インバータ制御部5がインバータ回路1を定電流制御すると、第1線路91に印加される電圧(第1電圧)が上昇する。このため、当該変形例に係る異常検出部6は、第1電圧の大きさ(実効値)が電力系統Kの系統電圧に応じた規定値以上である場合に、開閉器2に異常が発生していると判断することができる。つまり、当該変形例に係るパワーコンディショナは、パワーコンディショナS1と同様に、開閉器2の異常を検出できる。
【0037】
本開示に係るパワーコンディショナは、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示のパワーコンディショナの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0038】
S1:パワーコンディショナ、1:インバータ回路、2:開閉器、21:接点、22:制御端子、3:開閉制御部、41:第1電圧検出部、42:第2電圧検出部、5:インバータ制御部、6:異常検出部、91:第1線路、92:第2線路、B1:直流電源、K:電力系統