(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137457
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】車間時間制御システム、及び車間時間制御装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
G08G1/09 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043679
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】戸高 慶和
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA16
5H181AA27
5H181BB04
5H181BB15
5H181CC12
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】処理負荷の増大を抑制しつつ、車両間の車間時間を管理する。
【解決手段】車間時間制御システム1は、先行車両V1と後続車両V2との車間時間を制御する。車間時間制御システム1は、走行路Lに設置されたタグ2と、先行車両V1に搭載され、通過時刻をタグ2に書き込む書込部31と、後続車両V2に搭載され、タグ2から先行車両V1の通過時刻を読み込む読込部32と、後続車両V2に搭載され、読み込まれた通過時刻に基づいて、先行車両V1と後続車両V2との車間時間が予め定められた基準車間時間となるように後続車両V2の速度を制御する速度制御部34とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行車両と後続車両との車間時間を制御する車間時間制御システムであって、
走行路に設置され、情報を記憶可能な記憶部と、
前記先行車両に搭載され、当該先行車両が前記記憶部の設置地点を通過した通過時刻を前記記憶部に書き込む書込部と、
前記後続車両に搭載され、当該後続車両が前記記憶部の設置地点を通過したときに前記記憶部から前記先行車両の前記通過時刻を読み込む読込部と、
前記後続車両に搭載され、前記読込部によって読み込まれた前記通過時刻に基づいて、前記先行車両と前記後続車両との車間時間が予め定められた基準車間時間となるように前記後続車両の速度を制御する速度制御部と、
を備える、車間時間制御システム。
【請求項2】
前記先行車両の前記書込部は、前記通過時刻に当該先行車両の車両識別情報を対応付けて前記記憶部に書き込み、
前記後続車両の前記速度制御部は、前記読込部によって読み込まれた前記通過時刻のうち、予め定められた前記車両識別情報に対応付けられた前記通過時刻に基づいて前記後続車両の速度を制御する、請求項1に記載の車間時間制御システム。
【請求項3】
先行車両と自車両との車間時間を制御する車間時間制御装置であって、
走行路に設置された記憶部の設置地点を前記自車両が通過したときに、前記記憶部から前記先行車両の通過時刻を読み込む読込部と、
前記読込部によって読み込まれた前記通過時刻に基づいて、前記先行車両と前記自車両との車間時間が予め定められた基準車間時間となるように前記自車両の速度を制御する速度制御部と、
を備える、車間時間制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行車両と後続車両(自車両)との車間時間を制御する車間時間制御システム、及び車間時間制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、路線バス等、予め定められた経路を複数の車両が走行する場合がある。このような場合、これらの車両の運行を管理する管理センターにおいて各車両の位置情報を取得し、車両間隔等の運行を管理することが行われている。例えば特許文献1には、各車両から位置情報を取得し、取得した位置情報に基づいて各車両の運行を管理することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1に記載された装置のように、各車両の位置情報に基づいて車両の運行を管理する場合、管理センターにおいて各車両の識別情報及び位置情報等を管理する必要があり、管理センターにおける処理負荷が大きくなる。このため、本技術分野では、処理負荷の増大を抑制しつつ、車両間の車間時間を管理することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、先行車両と後続車両との車間時間を制御する車間時間制御システムであって、走行路に設置され、情報を記憶可能な記憶部と、先行車両に搭載され、先行車両が記憶部の設置地点を通過した通過時刻を記憶部に書き込む書込部と、後続車両に搭載され、後続車両が記憶部の設置地点を通過したときに記憶部から先行車両の通過時刻を読み込む読込部と、後続車両に搭載され、読込部によって読み込まれた通過時刻に基づいて、先行車両と後続車両との車間時間が予め定められた基準車間時間となるように後続車両の速度を制御する速度制御部と、を備える。
【0006】
この車間時間制御システムでは、先行車両によって記憶部に書き込まれた通過時刻に基づいて、後続車両において予め定められた基準車間時間となるように速度の制御が行われる。つまり、車間時間制御システムによれば、先行車両の位置情報を管理することなく、先行車両の通過時刻に基づいて、後続車両が車間時間を制御することができる。このように、車間時間制御システムは、処理負荷の増大を抑制しつつ、車両間の車間時間を管理することができる。
【0007】
上記の車間時間制御システムおいて、先行車両の書込部は、通過時刻に当該先行車両の車両識別情報を対応付けて記憶部に書き込み、後続車両の速度制御部は、読込部によって読み込まれた通過時刻のうち、予め定められた車両識別情報に対応付けられた通過時刻に基づいて後続車両の速度を制御してもよい。
【0008】
例えば、記憶部に対して複数の通過時刻が書き込まれているような場合がある。このような場合であっても、後続車両では、車間時間の制御が必要な先行車両の時刻情報を車両識別情報に基づいて特定し、先行車両との車間時間の制御を行うことができる。
【0009】
本発明の他の一態様は、先行車両と自車両との車間時間を制御する車間時間制御装置であって、走行路に設置された記憶部の設置地点を自車両が通過したときに、記憶部から先行車両の通過時刻を読み込む読込部と、読込部によって読み込まれた通過時刻に基づいて、先行車両と自車両との車間時間が予め定められた基準車間時間となるように自車両の速度を制御する速度制御部と、を備えている。
【0010】
この車間時間制御装置では、先行車両によって記憶部に書き込まれた通過時刻に基づいて、自車両において予め定められた基準車間時間となるように速度の制御が行われる。つまり、車間時間制御装置によれば、先行車両の位置情報を管理することなく、先行車両の通過時刻に基づいて車間時間を制御することができる。このように、車間時間制御装置は、処理負荷の増大を抑制しつつ、車両間の車間時間を管理することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の種々の態様によれば、処理負荷の増大を抑制しつつ、車両間の車間時間を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態に係る車間時間制御システムの全体構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、車間時間制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、後続車両が先行車両との車間時間を制御する様子を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一又は相当する要素同士には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1に示される車間時間制御システム1は、走行路Lを走行する複数の車両Vにおいて、先行車両(先行する車両V)と後続車両(後続の車両V)との車間時間を制御するためのシステムである。本実施形態において車両Vは、自動運転車両である。車両Vは、一例として、予め定められた経路を循環するように走行している。一例として、車両Vは循環バスであり、同一の経路を複数台の車両Vが循環するように走行している。車間時間制御システム1は、タグ(記憶部)2、及び各車両Vにそれぞれ搭載された複数の車間時間制御装置3を備えている。
【0015】
タグ2は、走行路Lに設置され、情報を記憶することができる。本実施形態においてタグ2は、走行路Lの路面上に設置又は路面に埋め込まれて設置されている。なお、タグ2は、後述の書込部31が情報を書き込み及び読込部32が情報を読み込み可能であれば、設置の形態及び情報の記憶の形態(タグ2の種類)は特に限定されない。走行路Lに設置されるタグ2の数は限定されない。また、隣接するタグ2同士の間隔は、一定であってもよく、互いに異なっていてもよい。本実施形態において、車間時間制御システム1は、タグ2の設置間隔を用いることなく(設置間隔を認識していなくても)、車両Vの車間時間を制御することができる。
【0016】
車間時間制御装置3は、当該車間時間制御装置3が搭載された車両V(自車両)と当該車両Vの先行車両との車間時間を制御する。以下、各車両Vに搭載された複数の車間時間制御装置3のうち、所定の車両Vに搭載された車間時間制御装置3を代表させて説明する。また、代表させて説明する車間時間制御装置3が搭載された所定の車両Vを、自車両Vと称することがある。なお、他の車両Vに搭載された車間時間制御装置3も、以下で説明する車間時間制御装置3と同じ構成となっている。
【0017】
図2に示されるように、車間時間制御装置3は、書込部31、読込部32、及び制御ECU(Electronic Control Unit)33を備えている。
【0018】
書込部31は、タグ2に対して、情報の書き込みを行う機器である。
図3に示されるように、書込部31は、一例として、自車両Vの後端部近傍の下面に設けられている。書込部31は、一例として、非接触で情報の書き込みを行う。書込部31における情報の書込方法(規格)については、特に限定されない。
【0019】
書込部31は、走行路Lに設置されたタグ2の設置地点(タグ2の上部)を自車両Vが通過したときに、自車両Vがタグ2の設置地点を通過した通過時刻をタグ2に書き込む。例えば、書込部31は、GPS受信機より得られる時刻情報に基づいて通過時刻を書き込みことができる。
【0020】
また、書込部31は、通過時刻をタグ2に書き込む際に、自車両Vの車両識別情報を通過時刻に対応付けてタグ2に書き込む。車両識別情報の形式は問わない。少なくとも、車両識別情報は、混合を防止したい車両V(又は車両V群)と識別可能な情報であればよい。
【0021】
読込部32は、タグ2から、情報の読み込みを行う機器である。
図3に示されるように、読込部32は、一例として、自車両Vの前端部近傍の下面に設けられている。読込部32は、一例として、非接触で情報の書き込みを行う。読込部32における情報の読込方法(規格)については、特に限定されない。
【0022】
読込部32は、走行路Lに設置されたタグ2の設置地点を自車両Vが通過したときに、タグ2から先行車両の通過時刻を車両識別情報とともに読み出す。ここでの先行車両とは、自車両Vよりも先にタグ2の設置地点を通過し、タグ2に通過時刻を書き込んだ車両Vである。
【0023】
制御ECU33は、物理的には、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等を有する電子制御ユニットである。制御ECU33では、例えば、ROM又はRAMに記録されているプログラムをCPUで実行することにより各種の機能が実現される。
【0024】
制御ECU33は、機能的には、速度制御部34を備えている。速度制御部34は、自車両Vの速度を制御する機能を有する。例えば、速度制御部34は、自車両Vの自動運転を行う自動運転制御装置に対して指示を行うことによって、自車両Vの速度を制御することができる。
【0025】
具体的には、速度制御部34は、読込部32によって読み出された先行車両の通過時刻に基づいて、先行車両と自車両Vとの車間時間が予め定められた基準車間時間となるように自車両Vの速度を制御する。なお、速度制御部34は、読込部32によって読み込まれた通過時刻のうち、予め定められた車両識別情報に対応付けられた通過時刻に基づいて車両Vの速度を制御する。速度制御部34が自車両Vの速度を制御することにより、自車両Vと当該自車両Vの先行車両との車間時間が調整される。
【0026】
ここで、予め定められた基準車間時間は、速度制御部34に対して予め設定されていてもよい。また、速度制御部34は、各車両Vの運行を管理する管理センター等から無線通信を介して基準車間時間の情報を取得し、取得した情報を予め定められた基準車間時間として用いてもよい。
【0027】
次に、
図3を用いて、先行車両におけるタグ2への通過時刻等の書き込み、及び後続車両における車間時間の制御の全体の流れについて説明する。
図3に示されるように、2台の車両Vのうち、車両V1を先行車両V1と称し、先行車両V1の後続の車両V2を後続車両V2と称する。先行車両V1及び後続車両V2は、
図3中において左から右に向って走行している。
【0028】
先行車両V1の書込部31は、タグ2の設置地点を先行車両V1が通過したときに、先行車両V1がタグ2の設置地点を通過した通過時刻をタグ2に書き込む。その後、後続車両V2がタグ2の設置地点に到達したときに、後続車両V2の読込部32は、タグ2から先行車両V1の通過時刻を先行車両V1の識別情報とともに読み出す。後続車両V2の速度制御部34は、読み出された通過時刻に基づいて、先行車両V1と後続車両V2との車間時間が予め定められた基準車間時間となるように、後続車両V2の速度を制御する。
【0029】
ここで、タグ2には、複数の通過時刻が車両識別情報とともに書き込まれていることがある。速度制御部34は、車両識別情報に基づいて、車間時間の制御対象となる車両Vを特定し、特定された車両(ここでは先行車両V1)の通過時刻に基づいて速度を制御する。
【0030】
なお、後続車両V2の書込部31は、タグ2の設置地点を後続車両V2が通過する際に、後続車両V2がタグ2の設置地点を通過した通過時刻をタグ2に書き込む。これにより、後続車両V2の後続の車両Vは、タグ2に書き込まれた後続車両V2の通過時刻を読み込むことにより、後続車両V2との車間時間の制御が可能となる。
【0031】
以上のように、車間時間制御システム1(車間時間制御装置3)では、先行車両V1によってタグ2に書き込まれた通過時刻に基づいて、後続車両V2(自車両V)において予め定められた基準車間時間となるように速度の制御が行われる。つまり、車間時間制御システム1(車間時間制御装置3)によれば、先行車両V1の位置情報を管理センター等において管理することなく、先行車両V1の通過時刻に基づいて後続車両V2(自車両V)側で車間時間を制御することができる。このように、車間時間制御システム1(車間時間制御装置3)は、処理負荷の増大を抑制しつつ、車両V間の車間時間を管理することができる。
【0032】
書込部31は、通過時刻に車両識別情報を対応付けてタグ2に書き込む。後続車両V2の速度制御部34は、読込部32によって読み込まれた通過時刻のうち、予め定められた車両識別情報に対応付けられた通過時刻に基づいて速度を制御する。例えば、タグ2に対して複数の通過時刻が書き込まれているような場合がある。一例として、タグ2の設置された地点を異なる路線系統の路線バス(車両V)が走行する場合が挙げられる。このような場合であっても、後続車両V2の速度制御部34は、車間時間の制御が必要な先行車両V1の時刻情報を車両識別情報に基づいて特定し、先行車両V1との車間時間の制御を行うことができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨に沿って種々の変更が加えられてもよい。
【0034】
例えば、タグ2は、複数の通過時刻を記憶することなく、通過時刻が書き込まれるごとに通過時刻が上書きされる構成であってもよい。この場合、後続車両V2は、直前の先行車両V1との車間時間を制御することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…車間時間制御システム、2…タグ(記憶部)、3…車間時間制御装置、31…書込部、32…読込部、34…速度制御部、L…走行路、V…車両、V1…先行車両、V2…後続車両(自車両V)。