(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137473
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】TDMA測定装置、及びTDMA測定方法
(51)【国際特許分類】
H04B 17/17 20150101AFI20230922BHJP
H04B 17/29 20150101ALI20230922BHJP
H04W 88/02 20090101ALI20230922BHJP
【FI】
H04B17/17
H04B17/29 200
H04W88/02 151
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043705
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 剛秀
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA44
5K067EE02
5K067LL08
5K067LL11
(57)【要約】
【課題】TDMA端末のOTA環境下での送受信特性の測定結果の確からしさを測定対象周波数帯の帯域内の電波状況に照らして正しく判断できるとともに、期待通りの測定結果が得られないときの原因究明にも迅速に対応可能なTDMA測定装置、及びTDMA測定方法を提供する。
【解決手段】TDMA端末測定装置1において、試験制御部28は、TDMA端末であるDUTの送信特性を測定する送信性能試験、及び受信特性を測定する受信性能試験を実行する試験実行制御部28aと、送信性能試験、または受信性能試験の実行中、測定対象周波数帯の帯域内の周波数帯を対象に干渉信号を検出する干渉信号検出部24と、干渉信号が検出された場合、DUT100の送信特性の測定結果、または受信特性の測定結果に関連付けて干渉信号が検出された旨の警告を行う干渉警告部28bと、を備えている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時分割多元接続(TDMA)方式により近距離無線通信を行うTDMA端末を被測定対象物(100)として電磁波シールドボックス(50)内に収容し、無線環境下で前記被測定対象物の送信特性、及び受信特性を測定するTDMA測定装置であって、
測定対象周波数帯を含む試験条件を設定する設定手段(40)と、
前記被測定対象物との間で所定の試験手順にしたがった近距離無線通信を行わせることにより前記送信特性を測定する送信性能試験、及び前記受信特性を測定する受信性能試験を実行する試験実行制御手段(28a)と、
前記送信性能試験、または前記受信性能試験の実行中、前記設定手段により設定された前記測定対象周波数帯の帯域内の周波数帯を対象に所定の閾値出力レベルを超える干渉信号を検出する干渉信号検出手段(24)と、
前記干渉信号検出手段により前記干渉信号が検出された場合、前記被測定対象物の前記送信特性の測定結果、または前記受信特性の測定結果に関連付けて前記干渉信号が検出された旨の警告を行う干渉警告手段(28b)と、
を具備することを特徴とするTDMA測定装置。
【請求項2】
前記試験実行制御手段は、前記被測定対象物に所望の送信信号の送信指令を送信し、前記送信指令に対して前記被測定対象物が応答送信する前記送信信号の測定結果に基づき前記送信特性を測定する前記送信性能試験、及び前記被測定対象物に受信指令と受信試験用信号を送信し、前記受信試験用信号を受信した前記被測定対象物が送信する受信状況通知に基づき前記受信特性を測定する前記受信性能試験を実行することを特徴とする請求項1に記載のTDMA測定装置。
【請求項3】
前記干渉信号検出手段は、
前記送信性能試験での前記被測定対象物からの前記送信信号の受信処理、または、前記受信性能試験での前記被測定対象物への前記受信試験用信号の送信時に周辺から受信される信号の受信処理によって生成される復調信号(S1)を入力し、前記復調信号に基づき、前記復調信号の理想信号(Si)を生成する理想信号生成部(24a)と、
前記復調信号から前記理想信号を減算して得られる信号(Sitf)を前記干渉信号として捕捉する干渉信号捕捉部(24c)と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載のTDMA測定装置。
【請求項4】
前記干渉信号検出手段は、
前記送信性能試験での前記被測定対象物からの前記送信信号の受信処理、または、前記受信性能試験での前記被測定対象物への前記受信試験用信号の送信時に周辺から受信される信号の受信処理によって生成される復調信号(S1)を入力し、参照信号(S11)として保持する参照信号保持部(24e)と、
前記復調信号と前記参照信号の互いに異なるオン区間同士、またはオフ区間同士の差分の信号(Sitf)を前記干渉信号として捕捉する干渉信号捕捉部(24g)と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載のTDMA測定装置。
【請求項5】
前記電磁波シールドボックスは、前記TDMA端末として、Bluetooth通信規格での通信を行うBluetooth端末を収容しており、
前記試験実行制御手段は、前記Bluetooth端末を前記被測定対象物とし、前記被測定対象物との間で前記試験手順にしたがったBluetooth通信規格での通信を行わせることで前記送信性能試験、及び前記受信性能試験を実行することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のTDMA測定装置。
【請求項6】
前記設定手段は、Bluetooth通信規格で規定された2.4GHz帯に割り付けられたホッピング対象の複数の周波数チャンネルに各々対応する周波数帯を前記測定対象周波数帯として設定し、
前記干渉信号検出手段は、複数の周波数チャンネルのうちから前記設定手段により設定された1つの前記周波数チャンネルに対応する周波数帯の周波数範囲を前記帯域内の周波数帯として前記干渉信号の測定を行うことを特徴とする請求項5に記載のTDMA測定装置。
【請求項7】
前記干渉警告手段は、前記警告として、前記干渉信号が検出されており、前記送信特性、または前記受信特性の測定結果の確かさが低下している旨を示す干渉警告メッセージ(32)を、前記送信特性、または前記受信特性の測定結果に付加して表示することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載のTDMA測定装置。
【請求項8】
前記干渉信号検出手段による前記干渉信号の検出結果を解析し、該解析結果に基づき前記干渉信号の分布を周波数及び信号の強さと時間の関係で表すスペクトログラム(35a)を生成するスペクトログラム生成手段(28c)と、
所定の切り替え指令に応じて、前記干渉警告メッセージに切り替えて前記スペクトログラムを表示する表示制御手段(28d)と、
をさらに有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のTDMA測定装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のTDMA測定装置を用い、時分割多元接続(TDMA)方式により近距離無線通信を行うTDMA端末を被測定対象物(100)として電磁波シールドボックス(50)内に収容し、無線環境下で前記被測定対象物の送信特性、及び受信特性を測定するTDMA測定方法であって、
測定対象周波数帯を含む試験条件を設定する設定ステップ(S2)と、
前記被測定対象物との間で所定の試験手順にしたがった近距離無線通信を行わせることにより前記送信特性を測定する送信性能試験、及び前記受信特性を測定する受信性能試験を実行する試験実行制御ステップ(S4~S6、S20~S22)と、
前記送信性能試験、または前記受信性能試験の実行中、前記設定ステップにより設定された前記測定対象周波数帯の帯域内の周波数帯を対象に所定の閾値出力レベルを超える干渉信号を検出する干渉信号検出ステップ(S7、S23)と、
前記干渉信号検出ステップにより前記干渉信号が検出された場合、前記被測定対象物の前記送信特性の測定結果、または前記受信特性の測定結果に関連付けて前記干渉信号が検出された旨の警告を行う干渉警告ステップ(S10、S26)と、
を含むことを特徴とするTDMA測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OTA(Over The Air)環境下で時分割多元接続(Time Division Multiple Access:TDMA)端末の送受信特性に関する測定を行うTDMA測定装置及びTDMA測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消費電力が少なく、比較的小さいデータ量を扱う近距離無線通信の通信規格(無線規格)の一つとしてBluetooth(登録商標)が知られている。Bluetoothは、低消費電力、データの遅延が起こり難いなどのメリットを有するため、長時間使用できること、データ遅延が小さいことが要求される、例えば、スマートフォンやPC、あるいはその周辺機器(キーボード、マウス、無線式イヤホン)等、多くのディジタル機器の無線通信部として採用されている。Bluetoothが有する上述したメリットを背景に、Bluetooth通信規格にて近距離無線通信を行う無線通信部を搭載した各種のディジタル機器(以下においては、Bluetooth端末と称する)が、近年、盛んに生産されるようになっている。
【0003】
Bluetooth端末の製造工場においては、Bluetooth端末が備えている無線通信部(近距離無線通信部)に対して、通信規格ごとに定められた送信電波の出力レベルや信号品質を測定し、所定の基準を満たすか否かを判定する性能試験が行われる。
【0004】
上記性能試験においては、被試験対象(Device Under Test:DUT)としてのBluetooth端末を、そのBluetooth端末が備える近距離無線通信部と無線信号の送受を行うための試験用アンテナとが空間的に結合された状態で電磁波シールドボックス内に収容し、無線(OTA)環境下でDUTの送受信特性を測定する方法が知られている。
【0005】
一方で、Bluetooth端末の送受信特性に関する測定については、全チャンネルにおける信号のパワーを測定し、表示する技術が従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、Bluetooth通信規格での通信においては、特定の帯域にエネルギーを集中させず、他の通信からの干渉も受け難くする拡散方式として、送信側と受信側が取り決めたホッピングパターンにしたがって、高速に周波数を切り替えながら通信するホッピング方式を採用している。また、Bluetooth端末は、多重化方式として、1つの周波数帯域を時間で区切ってチャンネルを配置するTDMA方式を採用しており、TDMA端末ともいえるものである。
【0008】
Bluetooth端末等のTDMA端末の送受信特性をOTA環境下で測定する際、例えば、電磁波シールドボックスのシールド性能、あるいは電磁波シールドボックスの蓋部の締め具合等によっては、測定中、周囲から電磁波シールドボックス内に侵入する電磁波が干渉信号となり、測定結果に影響を及ぼすことも起こり得る。製造ラインにおける従来のTDMA端末の測定方法にあっては、上記のような干渉信号による干渉状態を確認するための表示技術は確立されていなかった。
【0009】
この種の従来の表示技術の一例を挙げると、例えば、特許文献1に記載の従来の通信状態測定方法では、Bluetooth通信規格の全てのチャンネルの送信電力を測定し、各チャンネルの送信電力をそれぞれ棒グラフで表示する技術が採用されている。Bluetooth端末の量産ラインでこの従来の通信状態測定方法に係る表示技術を採用したとしても、量産ラインでの測定者(ユーザ)は、Bluetooth端末の送受信特性に関する測定結果として、チャンネルごとに送信電力が規格値を超えている(測定結果=OK)か、規格値に達していない(測定結果=NG)か、を認識し得るに留まることになった。
【0010】
このように、TDMA端末の送受信特性のOTA環境下での測定方法に関し、従来は、OK/NGのどちらの測定結果であっても、その背景にある確からしさを把握できる手段は存在しておらず、測定結果の確からしさが低下していた。
【0011】
測定結果の確からしさは、例えば、OTA環境下での測定に対する電波の干渉状況を把握できることによって向上することが見込める。例えば、Bluetooth端末では、使用する周波数帯が2.4GHz帯と決まっており、そのため、例えば、測定対象周波数帯域の、例えば、帯域内の周波数を有する電波による電波干渉状況だけでも把握できれば測定結果の確からしさの判断が容易となる。
【0012】
しかしながら、Bluetooth端末等のTDMA端末を対象とする従来の測定方法では、測定対象周波数帯の帯域内、帯域外のいずれについても干渉信号の存在を把握する手段を有していなかった。このため、従来のTDMA端末の測定方法では、上述したように測定結果の確からしさが低下することを免れず、加えて、測定結果がNGのとき、例えば、シールドボックスの閉め方が悪いのか、DUT自体が悪いのかの原因究明の切り分けに時間がかかってしまうことが多いという問題があった。
【0013】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、TDMA端末のOTA環境下での送受信特性の測定結果の確からしさを測定対象周波数帯の帯域内の電波状況に照らして正しく判断できるとともに、期待通りの測定結果が得られないときの原因究明にも迅速に対応可能なTDMA測定装置、及びTDMA測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係るTDMA測定装置は、時分割多元接続(TDMA)方式により近距離無線通信を行うTDMA端末を被測定対象物(100)として電磁波シールドボックス(50)内に収容し、無線環境下で前記被測定対象物の送信特性、及び受信特性を測定するTDMA測定装置であって、測定対象周波数帯を含む測定条件を設定する設定手段(40)と、前記被測定対象物との間で所定の試験手順にしたがった近距離無線通信を行わせることにより前記送信特性を測定する送信性能試験、及び前記受信特性を測定する受信性能試験を実行する試験実行制御手段(28a)と、前記送信性能試験、または前記受信性能試験の実行中、前記設定手段により設定された前記測定対象周波数帯の帯域内の周波数帯を対象に所定の閾値出力レベルを超える干渉信号を検出する干渉信号検出手段(24)と、前記干渉信号検出手段により前記干渉信号が検出された場合、前記被測定対象物の前記送信特性の測定結果、または前記受信特性の測定結果に関連付けて前記干渉信号が検出された旨の警告を行う干渉警告手段(28b)と、を具備することを特徴とする。
【0015】
この構成により、本発明の請求項1に係るTDMA測定装置は、被測定対象物としてのTDMA端末の無線(OTA)環境下での送受信特性(送信特性、及び受信特性)の測定に際し、例えば、測定周波数帯域の帯域内での干渉信号が測定された場合には、警告によってその旨を認識することができる。警告に関連付けられた送受信特性の測定結果が帯域内の干渉信号の影響を受けている可能性もあることを測定者(ユーザ)に示唆することができ、これによりユーザは、その測定結果の確からしさを測定対象周波数帯の帯域内の電波状況に照らして判断できるようになり、当該測定結果の確からしさの向上を見込むことができる。また、期待した測定結果が得られない(確からしからぬ測定結果が得られた)ときにも、干渉信号の影響の可能性を踏まえて原因究明に迅速に対応可能となる。
【0016】
また、本発明の請求項2に係るTDMA測定装置において、前記試験実行制御手段は、前記被測定対象物に所望の送信信号の送信指令を送信し、前記送信指令に対して前記被測定対象物が応答送信する前記送信信号の測定結果に基づき前記送信特性を測定する前記送信性能試験、及び前記被測定対象物に受信指令と受確試験用信号を送信し、前記受信試験用信号を受信した前記被測定対象物が送信する受信状況通知に基づき前記受信特性を測定する前記受信性能試験を実行する構成であってもよい。
【0017】
この構成により、本発明の請求項2に係るTDMA測定装置は、TDMA端末の電波の送信レベルや信号品質、または受信感度を測定し、該測定に際して測定対象周波数帯の帯域内で干渉信号が検出されたときには、それらの測定結果に関連付けて干渉信号が検出された旨を警告することで、測定された電波の送信レベル、または受信感度が干渉信号の影響を受けている可能性があることをユーザに示唆することができ、測定結果の確からしさの向上を見込むことができるとともに、確からしからぬ測定結果が得られたときの原因究明にも迅速に対応できる。
【0018】
また、本発明の請求項3に係るTDMA測定装置において、前記干渉信号検出手段は、前記送信性能試験での前記被測定対象物からの前記送信信号の受信処理、または、前記受信性能試験での前記被測定対象物への前記受信試験用信号の送信時に周辺から受信される信号の受信処理によって生成される復調信号(S1)を入力し、前記復調信号に基づき、前記復調信号の理想信号(Si)を生成する理想信号生成部(24a)と、前記復調信号から前記理想信号を減算して得られる信号(Sitf)を前記干渉信号として捕捉する干渉信号捕捉部(24c)と、を有する構成であってもよい。
【0019】
この構成により、本発明の請求項3に係るTDMA測定装置1は、理想信号生成部と、干渉信号捕捉部と、を有する簡易な構成により、測定対象周波数帯の帯域内での干渉信号を確実に検出することができる。
【0020】
また、本発明の請求項4に係るTDMA測定装置において、前記干渉信号検出手段は、前記送信性能試験での前記被測定対象物からの前記送信信号の受信処理、または、前記受信性能試験での前記被測定対象物への前記受信試験用信号の送信時に周辺から受信される信号の受信処理によって生成される復調信号(S1)を入力し、参照信号(S11)として保持する参照信号保持部(24e)と、前記復調信号と前記参照信号の互いに異なるオン区間同士、またはオフ区間同士の差分の信号(Sitf)を前記干渉信号として捕捉する干渉信号捕捉部(24g)と、を有する構成としてもよい。
【0021】
この構成により、本発明の請求項4に係るTDMA測定装置は、入力する復調信号の各区間(オン区間、あるいはオフ区間)と、参照信号の上記各区間とは別の区間の差分から干渉信号をより容易かつ確実に検出することが可能となる。
【0022】
また、本発明の請求項5に係るTDMA測定装置において、前記電磁波シールドボックスは、前記TDMA端末として、Bluetooth通信規格での通信を行うBluetooth端末を収容しており、前記試験実行制御手段は、前記Bluetooth端末を前記被測定対象物とし、前記被測定対象物との間で前記試験手順にしたがったBluetooth通信規格での通信を行わせることで前記送信性能試験、及び前記受信性能試験を実行する構成としてもよい。
【0023】
この構成により、本発明の請求項5に係るTDMA測定装置は、Bluetooth通信規格での通信を行うBluetooth端末のOTA環境下での送信特性、受信特性の測定に適用することができる。測定対象周波数帯の帯域内で干渉信号が測定されたときにはその旨の警告が行われるため、一緒に表示されているBluetooth端末の送信特性、受信特性に関する測定結果が確からしいかどうかを容易に判断できる。また、干渉信号が検出された旨の警告がなされている場合、確からしからぬ測定結果が得られている状況下においても、Bluetooth端末の異常よりも、むしろ干渉信号によるものであるとの原因の切り分けが容易になる。
【0024】
また、本発明の請求項6に係るTDMA測定装置において、前記設定手段は、Bluetooth通信規格で規定された2.4GHz帯に割り付けられたホッピング対象の複数の周波数チャンネルに各々対応する周波数帯を前記測定対象周波数帯として設定し、前記干渉信号検出手段は、複数の周波数チャンネルのうちから前記設定手段により設定された1つの前記周波数チャンネルに対応する周波数帯の上下所定の周波数範囲を前記帯域内の周波数帯として前記干渉信号の測定を行う構成であってもよい。
【0025】
この構成により、本発明の請求項6に係るTDMA測定装置は、Bluetooth端末によるホッピング方式の通信で逐次切り替えられる複数の周波数チャンネルのうちの所望の周波数チャンネルによる送信特性、受信特性の測定結果の確からしさを容易にチェックできるようになり、確からしからぬ測定結果が得られた場合であっても原因の切り分けが容易になる。
【0026】
また、本発明の請求項7に係るTDMA測定装置において、前記干渉警告手段は、前記警告として、前記干渉信号が検出されており、前記送信特性、または前記受信特性の測定結果の確かさが低下している旨を示す干渉警告メッセージ(32)を、前記送信特性、または前記受信特性の測定結果に付加して表示する構成であってもよい。
【0027】
この構成により、本発明の請求項7に係るTDMA測定装置は、干渉信号が測定された旨の警告が、測定結果に付加された干渉警告メッセージの表示によって行われるため、干渉信号の影響を受けている可能性がある測定結果であることをユーザにより強く意識させることができ、干渉を踏まえた測定結果の確からしさの判断を確実に行えるようになる。
【0028】
また、本発明の請求項8に係るTDMA測定装置は、前記干渉信号検出手段による前記干渉信号の検出結果を解析し、該解析結果に基づき前記干渉信号の分布を周波数及び信号の強さと時間の関係で表すスペクトログラム(35a)を生成するスペクトログラム生成手段(28c)と、所定の切り替え指令に応じて、前記干渉警告メッセージに切り替えて前記スペクトログラムを表示する表示制御手段(28d)と、をさらに有する構成としてもよい。
【0029】
この構成により、本発明の請求項8に係るTDMA測定装置は、表示されたスペクトログラムにおける測定対象周波数帯の帯域内での干渉信号の分布に照らして、測定結果の確からしさをより容易に把握できるようになる。また、スペクトログラムにおける干渉信号の分布を見ながら、確からしからぬ測定結果が得られたときの原因究明にも対応し易くなる。
【0030】
上記課題を解決するために、本発明の請求項9に係るTDMA測定方法は、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のTDMA測定装置を用い、時分割多元接続(TDMA)方式により近距離無線通信を行うTDMA端末を被測定対象物(100)として電磁波シールドボックス(50)内に収容し、無線環境下で前記被測定対象物の送信特性、及び受信特性を測定するTDMA測定方法であって、測定対象周波数帯を含む測定条件を設定する設定ステップ(S2)と、前記被測定対象物との間で所定の試験手順にしたがった近距離無線通信を行わせることにより前記送信特性を測定する送信性能試験、及び前記受信特性を測定する受信性能試験を実行する試験実行制御ステップ(S4~S6、S20~S22)と、前記送信性能試験、または前記受信性能試験の実行中、前記設定ステップにより設定された前記測定対象周波数帯の帯域内の周波数帯を対象に所定の閾値出力レベルを超える干渉信号を検出する干渉信号検出ステップ(S7、S23)と、前記干渉信号検出ステップにより前記干渉信号が検出された場合、前記被測定対象物の前記送信特性の測定結果、または前記受信特性の測定結果に関連付けて前記干渉信号が検出された旨の警告を行う干渉警告ステップ(S10、S26)と、を含むことを特徴とする。
【0031】
この構成により、本発明の請求項9に係るTDMA測定方法は、請求項1ない8のいずれかに記載されたTDMA測定装置を用い、被測定対象物としてのTDMA端末の無線(OTA)環境下での送受信特性(送信特性、及び受信特性)の測定に際し、例えば、測定周波数帯域の帯域内での干渉信号が測定された場合には、警告によってその旨を認識することができる。警告に関連付けられた送受信特性の測定結果が帯域内の干渉信号の影響を受けている可能性もあることをユーザに示唆することができ、これによりユーザは、その測定結果の確からしさを測定対象周波数帯の帯域内の電波状況に照らして判断できるようになり、当該測定結果の確からしさの向上を見込むことができる。また、期待した測定結果が得られない(確からしからぬ測定結果が得られた)ときにも、干渉信号の影響の可能性を踏まえて原因究明に迅速に対応可能となる。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、TDMA端末のOTA環境下での送受信特性の測定結果の確からしさを測定対象周波数帯の帯域内の電波状況に照らして正しく判断できるとともに、期待通りの測定結果が得られないときの原因究明にも迅速に対応可能なTDMA測定装置、及びTDMA測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置の全体構成図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置の測定器に搭載される干渉信号検出部の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置の干渉警告制御に係る機能構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置でのBluetooth端末の送信特性測定時における干渉警告制御動作を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置でのBluetooth端末の受信特性測定時における干渉警告制御動作を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置の干渉信号検出部での干渉信号測定処理を示すフローチャートである。
【
図8】
図7に示した干渉信号測定処理に係る信号のタイミングチャートである。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置でのBluetooth端末の送信特性測定結果の表示画面での干渉警告メッセージの表示例を示す図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置でのBluetooth端末の測定時におけるスペクトログラムの一表示形態を示す図である。
【
図11】
図10に示すスペクトログラムのうちの測定対象周波数範囲内での干渉信号検出結果に基づくスペクトログラム画像の一例を示すイメージ図である。
【
図12】本発明の第2の実施形態に係るTDMA端末測定装置の測定器に搭載される干渉信号検出部の機能構成を示すブロック図である。
【
図13】本発明の第2の実施形態に係るTDMA端末測定装置の干渉信号検出部での干渉信号測定処理を示すフローチャートである。
【
図14】
図13に示した干渉信号測定処理に係る信号のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係るTDMA測定装置、及びTDMA測定方法の実施形態について図面を用いて説明する。本発明の実施形態においては、TDMA方式で近距離無線通信を行うTDMA端末をDUT100としてOTA環境下に置き、当該DUT100の送信特性、及び受信特性を測定するTDMA端末測定装置1を例に挙げて説明する。DUT100となるTDMA端末としては、Bluetooth通信規格での近距離無線通信(Bluetooth通信)を行うBluetooth端末を想定している。特に、本発明の実施形態において、TDMA端末測定装置1は、DUTたるTDMA端末のOTA環境下での送受信特性の測定結果の確からしさを正しく判断可能にすべく、測定対象周波数帯の帯域内の電波状況、より詳しくは、上記帯域内で送受信特性の測定結果に影響を与え得る干渉信号が検出された場合にその旨を警告する干渉警告制御機能を有するものである。
【0035】
(第1の実施形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置1は、測定器10と、電磁波シールドボックス50と、を備えている。電磁波シールドボックス50は、例えば、一面が開口する直方体形状を有し、内部空間を有する筐体本体部51と、筐体本体部51にヒンジ部(図示せず)を介して支持され、開口を開閉可能な蓋部52と、を有している。筐体本体部51、及び蓋部52は、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮やこれらの合金などの導電性の金属から構成されている。筐体本体部51の内部には、DUT100を保持するDUT保持部53、試験用アンテナ54が設けられ、内部空間の全面に電波吸収体が貼り付けられている。筐体本体部51の所要位置にはボックス55が設けられている。ボックス55は、測定器10と電磁波シールドボックス50とを、例えば、同軸ケーブル25aにより接続するとともに、同軸ケーブル25aと電磁波シールドボックス50内に収容されたDUT100に対し、試験実行制御部28による送信指令、受信指令等を、それらに対応する試験用信号および試験用アンテナ54を介して行うようにしてもよい。また、他の例として、ボックス55は、同軸ケーブル25aとは別に、試験実行制御部28による送信指令、受信指令等を、制御線によって行う接続ができるよう、例えば、USBケーブル25bによりUSB接続するようにしてもよい。
【0036】
図1に示すように、電磁波シールドボックス50は、ボックス内部(内部空間)に、近距離無線通信部110を有するDUT100と、試験用アンテナ54を内部空間に対する外部からの電磁波の侵入を遮断(シールド)した状態で収容し、DUT100の近距離無線通信部110と、ボックス55を介して同軸ケーブル25aと接続する試験用アンテナ54との空間的結合によるOTA試験環境を提供する。電磁波シールドボックス50の内部空間において、DUT100はDUT保持部53により保持されている。
【0037】
このように、TDMA端末測定装置1は、DUT100を電磁波シールドボックス50の空間(内部空間)内に収容し、OTA環境下で、測定器10からDUT100に各種試験のための信号を入力し、その信号の受信に応じてDUT100から出力される信号を測定器10で受信し、該受信した信号に対してDUT100の送受信特性(送信特性、及び受信特性)などの測定を行うものである。
【0038】
DUT100は、例えばスマートフォンやPCなどのディジタル機器であり、近距離無線通信部110として、例えば、Bluetooth通信(Bluetooth通信規格による通信)を行うBluetooth通信部を搭載したBluetooth搭載機、すなわち、Bluetooth端末と称されるものである。DUT100は、他のBluetooth搭載機とBluetooth通信部同士間でのBluetooth通信を行うことができるようになっている。
【0039】
本実施形態に係るTDMA端末測定装置1において、測定器10は、電磁波シールドボックス50内に収容されたDUT100と他のBluetooth搭載機を模擬した通信動作を行うことによってDUT100の送受信特性の測定を実現する。
【0040】
図2に示すように、測定器10は、測定部20、表示部30、操作部40を具備して構成されている。測定部20は、Bluetooth信号送信部21、受信部22、解析処理部25、ディバイダ(Divider)26、記憶部27、試験制御部28を備えており、DUT100を対象にしてBluetooth通信規格に沿った送信電波の出力レベルや受信感度などに関する測定を行うようになっている。
【0041】
Bluetooth信号送信部21は、電磁波シールドボックス50内に収容されたDUT100に対し、例えば、ディバイダ26、同軸ケーブル25a、試験用アンテナ54を介して試験用の信号(Bluetooth信号)を出力するようになっている。
【0042】
受信部22は、Bluetooth信号測定部23、及び干渉信号検出部24を有している。Bluetooth信号測定部23は、後述する試験実行制御部28aの制御下でのDUT100の送信性能試験、または受信性能試験の実行中、試験用アンテナ54によって受信され、ディバイダ26を介して入力されるBluetooth信号を測定する機能部である。
【0043】
干渉信号検出部24は、試験実行制御部28aによるDUT100の送信性能試験、または受信性能試験の実行中、試験用アンテナ54によって受信され、ディバイダ26を介して入力される信号のうち、予め設定された測定対象周波数帯の帯域内の周波数帯(帯域内周波数帯)を対象に所定の閾値出力レベルを超える干渉信号を検出する機能部である。
【0044】
具体的に、干渉信号検出部24は、DUT100の送信性能試験でのDUT100からの送信信号の受信処理、または、DUT100の受信性能試験でのDUT100への受信試験用信号の送信時に周辺から受信される信号の受信処理によりそれぞれ生成されるベースバンド信号(復調信号)を対象に上記干渉信号を検出するものである。
【0045】
本実施形態における干渉信号検出部24の一例を
図3に示している。
図3に示すように、干渉信号検出部24は、理想信号生成部24a、減算器24b、干渉信号捕捉部24cを有している。干渉信号検出部24の入力端子Tinには、検出対象の信号として、例えば、DUT100の送信性能試験中、DUT100から送信される送信信号を試験用アンテナ54で受信し、その受信信号をディバイダ26経由で信号処理して得られる復調信号(
図8(b)、
図14(b)参照)、または、DUT100の受信性能試験中、DUT100へ受信試験用信号を送信するタイミングに周辺から受信される信号(不要信号)を試験用アンテナ54で受信し、その受信信号をディバイダ26経由で信号処理して得られる復調信号が入力される。入力端子Tinから入力する上述した復調信号は2つの経路に分岐され、それぞれ、理想信号生成部24aと減算器24bとに入力される。
【0046】
理想信号生成部24aは、分岐された一方の復調信号に基づき、干渉を受けていないときの当該復調信号に相当する理想信号を生成する。
【0047】
減算器24bは、理想信号生成部24aを経由せずに入力端子Tinから直接入力する復調信号から理想信号生成部24aで生成された理想信号を減算し、その減算結果に相当する信号を出力する。
【0048】
干渉信号捕捉部24cは、減算器24bから出力される信号、すなわち、理想信号生成部24aを経由せずに入力する復調信号と理想信号生成部24aにより生成された理想信号の減算結果の信号(所定の閾値を超える出力レベルを有する信号)を干渉信号として捕捉する処理を行う。
【0049】
干渉信号検出部24では、干渉信号捕捉部24cによって干渉信号が捕捉された場合に、干渉信号を検出した旨の検出結果を出力するようになっている。干渉信号検出部24は、測定対象周波数帯の帯域外についても干渉信号を検出する(要は、測定対象周波数帯の帯域内も含んで検出できればよい)機能構成であってもよい。また、干渉信号検出部24は、上述したBluetooth信号測定部23と一体化して構成されたものであってもよい。干渉信号検出部24、または干渉信号検出部24及びBluetooth信号測定部23を一体化した構成は、本発明の干渉信号検出手段を構成する。
【0050】
解析処理部25は、Bluetooth信号測定部23により測定されたBluetooth信号を解析する機能部である。解析処理部25が行う解析処理の具体例としては、送信パワーレベル、周波数オフセット、周波数ドリフト、Modulation Characteristicsの測定などが挙げられる。これら各項目の測定結果(特に、送信パワーレベル(送信電波の出力レベル)、受信感度(規定信号レベルに対する誤り率)等は、DUT100の送信特性、及び受信特性の測定結果として例えば記憶部27に格納され、操作部40でユーザが行う表示指令操作に応じて表示部30に表示することが可能となっている。
【0051】
ディバイダ26は、Bluetooth信号送信部21から出力される信号の出力周波数を通過させる広帯域の方向性結合器である。ディバイダ26は、
図2に示すように、電磁波シールドボックス50に設けられているボックス55と同軸ケーブル25aで接続されるとともに、試験用アンテナ54に接続される。ディバイダ26は、例えば、Bluetooth信号送信部21から出力されたBluetooth信号を、例えば、試験用アンテナ54を介してDUT100の近距離無線通信部110に入力するとともに、該Bluetooth信号の受信に応じて近距離無線通信部110から送信され、試験用アンテナ54によって受信されたBluetooth信号をBluetooth信号測定部23に入力することが可能となっている。ディバイダ26は、複数入力を混合したものを分配する機能を有するものであり、コンバイナ、ディバイダ両方の役目を持つデバイスであってもよい。
【0052】
試験制御部28は、例えばCPU、記憶部27を構成するROM、RAM、HDDなどを含むマイクロコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等で構成され、測定部20を構成する上記各部の動作を制御する。
【0053】
なお、Bluetooth信号送信部21、受信部22、解析処理部25については、FPGAやASICなどのディジタル回路で構成することや、予め記憶部27に記憶された所定のプログラムが試験制御部28により実行されることによりソフトウェア的に構成することが可能である。あるいは、Bluetooth信号送信部21、受信部22、及び解析処理部25は、ディジタル回路によるハードウェア処理と所定のプログラムによるソフトウェア処理とを適宜組み合わせて構成することも可能である。なお、試験制御部28は、新たなプログラム、あるいはバージョンを変更したプログラムを外部から受けて、記憶部27への追加又は更新を行うこともできる。
【0054】
試験制御部28において、DUT100の送受信特性測定中における干渉警告制御に係る機能部は、例えば、
図4に示すように、試験実行制御部28a、干渉警告部28b、スペクトログラム生成部28c、表示制御部28dを備えて構成される。
【0055】
試験実行制御部28aは、以下に示すように、DUT100の送信特性を測定するための送信性能試験、及び受信特性を測定するための受信性能試験を実行させるものである。具体的に、試験実行制御部28aは、Bluetooth端末をDUT100とし、DUT100との間で所定の試験手順(性能試験シナリオ)にしたがったBluetooth通信規格での通信(近距離無線通信)を行わせることで送信性能試験、及び受信性能試験を実行する。試験実行制御部28aは、本発明の試験実行制御手段を構成する。
(DUT100の送信性能試験)
測定器10からDUT100に対して所望の信号パターン(送信信号)の送信指令を送信し、この送信指令を受信したDUT100が応答送信する信号パターンを測定器10で受信してDUT100の送信特性を測定する試験。送信性能試験の一例として、DUT100が応答送信する送信信号の出力レベルを測定する試験が挙げられる。
(DUT100の受信性能試験)
測定器10からDUT100に対して受信指令を送信し、受信指令に基づきDUT100が測定器10から出力される受信試験用信号の受信状況を示す通知内容に基づいてDUT100の受信特性を測定する試験。受信性能試験の一例として、測定器10から出力される受信試験用信号に対するDUT100の誤り率を測定する試験が挙げられる。
【0056】
干渉警告部28bは、上述したDUT100の送信性能試験、または受信性能試験中、
図4に示すように、ディバイダ26経由で入力する試験用アンテナ54での受信信号を対象とする干渉信号検出部24での干渉信号の測定結果を監視し、該干渉信号検出部24により予め設定された測定対象周波数帯の帯域内周波数帯で所定の閾値出力レベルを超える干渉信号が検出された場合、干渉信号が検出された旨の警告を行う機能部である。具体的に、干渉警告部28bは、上記警告として、干渉信号が検出されており、測定結果の確かさが低下している旨を示す干渉警告メッセージ32(
図9参照)を、Bluetooth信号測定部23によるBluetooth信号の測定結果を解析処理部25で解析して得られるDUT100の送信測定、及び受信特性の測定結果に付加して表示するようになっている。干渉警告部28bは、本発明の干渉警告手段を構成する。
【0057】
スペクトログラム生成部28cは、Bluetooth信号測定部23によるBluetooth信号の測定結果、及び干渉信号検出部24による干渉信号の検出結果をそれぞれ解析し(
図4参照)、それらの解析結果に基づき、Bluetooth信号及び干渉信号の分布を周波数及び信号の強さと時間の関係で表すスペクトログラム35a(
図10参照)を表示するためのスペクトログラム画像データを生成する機能部である。DUT100の送信特性の測定結果、及び干渉信号の検出結果は、解析処理部25で解析する構成としてもよい。スペクトログラム生成部28cが生成するスペクトログラム画像データは、例えば、
図10に示すように、横軸を周波数、縦軸を時間として、信号の強さを色や濃淡で表したグラフを表示するための画像データである。ここでBluetooth信号測定部23によるBluetooth信号の測定結果、及び干渉信号検出部24による干渉信号の検出結果を、例えば、記憶部27の所定の記憶領域に記憶(格納)しておき、スペクトログラム生成部28cが、Bluetooth信号の測定結果、干渉情報の検出結果を読み出して解析し、その解析結果に基づいてスペクトログラム画像データを生成するようにしてもよい。スペクトログラム生成部28cは、本発明のスペクトログラム生成手段を構成する。
【0058】
表示制御部28dは、DUT100の送信特性、及び受信特性の測定、並びに干渉警告制御に係る各情報を表示部30に表示する機能部である。一例として、表示制御部28dは、DUT100の送信特性、及び受信特性の測定結果を、例えば、測定結果画面31(
図9参照)を用いて表示する。
図9の測定結果画面31は、特に、DUT100の送信特性(送信電波の出力レベル)の測定結果の表示形態を例示したものである。また、表示制御部28dは、干渉警告制御に係る情報としては、例えば、干渉警告部28bにより干渉信号が測定されたことが認識され、干渉警告が必要であると判断された場合には、干渉警告部28bの制御により、干渉警告メッセージ32を生成し、当該干渉警告メッセージ32を測定結果画面31上に測定結果を付加して表示させるようになっている。さらに、表示制御部28dは、測定結果画面31に干渉警告メッセージ32が測定結果とともに表示されているときに、例えば、操作部40での所定の干渉警告切り替え表示指令の入力を受け付けることにより干渉警告メッセージ32が付加されている測定結果画面31に切り替えて、スペクトログラム生成部28cにより生成されたスペクトログラム画像データに基づくスペクトログラム35a(
図10参照)を表示させる制御を行う。表示制御部28dは、本発明の表示制御手段を構成する。
【0059】
図2に示す測定器10の構成において、表示部30は、例えばLCDやCRTなどの表示機器で構成され、試験制御部28からの制御信号に基づいて、測定結果の表示や、測定条件などを設定するためのソフトキー、プルダウンメニュー、テキストボックスなどの操作対象の表示を行うようになっている。
【0060】
操作部40は、ユーザによる操作入力を行うためのものであり、例えば表示部30の表示画面の表面に設けられたタッチパネルで構成される。あるいは、操作部40は、キーボード又はマウスのような入力デバイスを含んで構成されてもよい。また、操作部40は、リモートコマンドなどによる遠隔制御を行う外部制御装置で構成されてもよい。操作部40による入力操作は、試験制御部28により検知されるようになっている。
【0061】
ユーザは、操作部40を用いて、複数の通信規格の中からDUT100が対応しているBluetooth通信規格を選択できるようになっている。これに合わせて、ユーザは、操作部40を用いて、測定対象周波数帯を設定することができる。その際、ユーザは、Bluetooth通信規格で規定された2.4GHz帯に割り付けられたホッピング対象の複数の周波数チャンネルに各々対応する周波数帯を測定対象周波数帯として設定できるようになっている。これにより、上述した干渉信号検出部24は、上記複数の周波数チャンネルのうちから設定された1つの周波数チャンネルに対応する周波数帯の帯域内での干渉信号の測定を行うこととなる。
【0062】
また、ユーザは、操作部40を用いて、送信性能試験、または受信性能試験の試験種別を設定することができ、さらに干渉警告メッセージ32が付加された測定結果画面31と、スペクトログラム表示画面35(
図10参照)との切り替え指令を入力することもできる。このように、操作部40は本発明の設定手段を構成する。
【0063】
次に、本実施形態に係るTDMA端末測定装置1のDUT100の測定時における干渉警告制御動作について
図5、及び
図6のフローチャートを参照して説明する。
図5は、DUT100の送信特性(例えば、送信電波の出力レベル)測定時の干渉警告制御動作を示し、
図6は、DUT100の受信特性(例えば、受信感度)測定時の干渉警告制御動作を示している。
【0064】
送信特性、受信特性の測定対象であるDUT100は、上述したように近距離無線通信部110としてBluetooth通信部を有するBluetooth端末である。Bluetooth端末が使用する通信規格(無線規格)としては、Bluetooth Basic Rate/Enhanced Data Rate(BR/EDR)とBluetooth Low Energy(LE)が挙げられる。これらBluetooth通信規格のうち、Bluetooth BR/EDRは、2.4GHz帯を79の周波数チャンネルに分け(LEでは40)、利用する周波数をランダムに変える周波数ホッピング(1秒間に最大1600回変更)を行いながら、近距離(例えば、半径10-100m程度)内のBluetooth搭載機器と、最大3Mbpsで無線通信を行うようになっている。
【0065】
DUT100の送信特性、及び受信特性の測定に際しては、まず、電磁波シールドボックス50内に試験用アンテナ54、及びDUT100をセットする(ステップS1)。その際、試験用アンテナ54は適宜なアンテナ取付台(図示せず)を使って取り付け、DUT100は、DUT保持部53の上面に、DUT100を近距離無線通信部110の形成面が取り付け済みの試験用アンテナ54と対向するように載置する(
図1参照)。
【0066】
さらに、DUT100をボックス55から延びるUSBケーブル25bとUSB接続し、そのうえで、筐体本体部51に対して蓋部52を閉じる。これにより、電磁波シールドボックス50では、DUT100と、試験用アンテナ54とが、筐体本体部51の内部空間に対する外部からの電磁波の侵入を遮断可能に封入され、DUT100の試験準備が整う。なお、測定器10と電磁波シールドボックス50とは、ボックス55を介し、同軸ケーブル25aによって事前に接続されている。なお、測定器10と電磁波シールドボックス50とは、ボックス55を介して事前に接続されている。この場合に、ボックス55は、測定器10と電磁波シールドボックス50とを、例えば、同軸ケーブル25aにより接続するとともに、同軸ケーブル25aと電磁波シールドボックス50内のDUT100とを、試験実行制御部28による送信指令、受信指令等を、それらに対応する試験用信号および試験用アンテナ54を介して行うことができるように接続される。また、他の例として、ボックス55は、測定器10と電磁波シールドボックス50とを、例えば、同軸ケーブル25aにより接続するとともに、電磁波シールドボックス50内のDUT100に対し、試験実行制御部28による送信指令、受信指令等を同軸ケーブル25aとは別に制御線にて実施できるように、例えば、USBケーブル25bによりUSB接続するようになっていてもよい。
【0067】
試験準備が整った後、ユーザによる試験条件の設定を受け付ける(ステップS2)。ここで試験実行制御部28aは、例えば、操作部40でのユーザ操作により、DUT100の通信規格、測定周波数数帯域、試験種別などの設定を受け付ける。その際に受け付ける通信規格は、例えば、Bluetooth BR/ED、またはBluetooth LEのいずれかであり、同じく測定周波数数帯域は、それぞれの通信規格で規定されている70チャンネル、あるいは40チャンネルのうちの所望の周波数チャンネルに対応する周波数帯である。また、試験種別としては、例えば、送信性能試験、又は受信性能試験、若しくはその両者の設定を受け付ける。なお、ステップS2の処理は、上述したステップS1の処理と逆の順番とすることも可能である。
【0068】
次に、試験実行制御部28aは、ステップS2で設定された試験種別が送信性能試験か受信性能試験かを判定する(ステップS3)。ここで、設定された試験種別が送信性能試験である場合(ステップS3で「送信性能試験」)には、ステップS4に進んでDUT100の送信性能試験を実施する。
【0069】
図5において、DUT100の送信性能試験は、ステップS4からステップS6によって実施される。DUT100の送信性能試験において、試験実行制御部28aは、DUT100に対して上記ステップS2で設定された測定対象周波数帯の所望の信号パターンの送信指令を送信し(ステップS4)、この送信指令を受信したDUT100が応答送信する上記測定対象周波数帯の信号パターン(Bluetooth信号)の試験用アンテナ54での受信信号をディバイダ26により分岐させてBluetooth信号測定部23に入力し、Bluetooth信号測定部23において当該受信信号の測定を行う(ステップS5)。さらに解析処理部25ではBluetooth信号測定部23により測定されたBluetooth信号を解析し、その解析結果をDUT100の送信特性の測定結果として格納する。DUT100の送信特性の測定結果のデータは、例えば、記憶部27における所定の送信特性測定結果格納領域に格納される。
【0070】
上記ステップS4からステップS6でのDUT100の送信性能試験に合わせて、試験実行制御部28aは、干渉信号検出部24に対して干渉信号の検出指令を送信する。この検出指令に基づき、干渉信号検出部24は、上記ステップS2で設定された測定対象周波数帯の帯域内の周波数帯(帯域内周波数帯)を対象に干渉信号の検出処理を行う(ステップS7)。ここで検出対象とされる主たる干渉信号は、上記ステップS4からステップS6でのDUT100の送信性能試験の試験結果(送信特性の測定結果)に対して干渉を与え得る外部からの到来信号である。干渉信号としては、DUT100が送信性能試験に際して出力する、例えば、測定対象周波数帯近傍のスプリアス信号を含めるようにしてもよい。ステップS7における干渉信号の検出結果のデータは、例えば、記憶部27における所定の干渉信号検出結果格納領域に格納される。
【0071】
ステップS7における測定対象周波数帯の帯域内を対象とする干渉信号の検出処理動作について
図7、及び
図8を参照して説明する。干渉信号の検出処理において、干渉信号検出部24は、
図7のフローチャートに示されるように、上述したDUT100の送信性能試験で試験用アンテナ54により受信され、信号処理された受信信号が検出対象の信号(以下、実信号)S1として入力端子Tinより入力する(ステップS30)。実信号S1は、例えば、
図8(b)に示すようなオン区間とオフ区間とを有する復調信号である。この例の実信号S1は、図中、先頭のオン区間に干渉信号Sitf(
図8(c)参照)が重畳されたもの(点線の楕円内参照)となっている。
【0072】
干渉信号検出部24において、入力端子Tinより入力した実信号S1は2つの経路に分岐され、その一方は減算器24bに入力され、他方は理想信号生成部24aに入力される。理想信号生成部24aは、入力される実信号S1に基づき干渉を受けていないときの理想波形を有する復調信号、すなわち、理想信号を生成し(ステップS31)、該理想信号を減算器24bに出力する。理想信号Siは、例えば、
図8(a)に示すように、干渉信号Sitf(
図8(c)参照)が重畳されていない完全な矩形波である。
【0073】
次いで、減算器24bは、理想信号生成部24aを経由せずに送られてくる実信号S1と、理想信号生成部24aにより生成された理想信号を入力し、実信号S1から理想信号を減算(キャンセル)する信号処理を実施する(ステップS32)。実信号S1から理想信号Si成分がキャンセルされた信号Sitfは、干渉信号捕捉部24cに出力する。
【0074】
干渉信号捕捉部24cは、減算器24bから入力する上記信号Sitfを捕捉し、該信号Sitfに基づき干渉信号を検出する(ステップS33)ようになっている。ここで、信号Sitfは、
図8(c)に示すように、実信号S1の先頭のオン区間に重畳されていた干渉信号に相当する。
【0075】
なお、
図8においては実信号S1のオン区間での干渉信号を検出する場合について述べたが、干渉信号検出部24Dは、実信号S1のオフ区間での干渉信号の検出に対しても同様に対処可能である。
【0076】
再び
図5に戻って干渉警告処理動作について説明する。上記ステップS4からステップS6でのDUT100の送信性能試験、及び上記ステップS7での干渉信号の検出処理が完了すると、次いで、干渉警告部28bは、ステップS7で検出された干渉信号のうちで予め設定した閾値を超えている出力レベルを有する干渉信号が存在するか否かをチェックする(ステップS8)。ここで閾値を超えている出力レベルを有する干渉信号が存在しないと判定された場合(ステップS8でNO)、表示制御部28dは、記憶部27の送信特性測定結果格納領域からDUT100の送信特性の測定結果のデータを読み出し、該データに基づき、DUT100の送信特性の測定結果を表示部30に表示させる(ステップS9)。ここで表示される送信特性の測定結果は、例えば、
図9に示す測定結果画面31から干渉警告メッセージ32を削除した表示内容を有するものである。
【0077】
これに対し、上記閾値を超えている出力レベルを有する干渉信号が存在すると判定された場合(ステップS8でYES)、干渉警告部28bは、表示制御部28dに干渉警告用の画面を表示することを指示し、この指示により、表示制御部28dは、例えば、ステップS9で表示したDUT100の送信特性の測定結果と、DUT100の送信性能試験(ステップS4からステップS6参照)時に干渉信号が検出されたことを警告する干渉警告メッセージ32とを含む干渉警告用の測定結果画面31(
図9参照)を表示部30に表示する(ステップS10)。ここで測定結果画面31のメイン領域31aに表示される測定結果は、DUT100の送信特性の測定結果である。
【0078】
干渉警告用の測定結果画面31の表示中、例えば、操作部40でのユーザ操作により上述した切替え指令が入力されると、干渉警告部28bは、表示制御部28dにスペクトログラムの表示を指示し、この指示により、表示制御部28dは、スペクトログラム35a(
図10参照)を有するスペクトログラム表示画面35の画像データを所定の格納領域から読み出し(あるいは生成し)、該画像データに基づき当該スペクトログラム表示画面35をそれまで表示していた測定結果画面31に切り替えて表示部30に表示する(ステップS11)。
【0079】
スペクトログラム表示画面35上に表示するスペクトログラム35aの画像データ(スペクトグラム画像データ)は、スペクトログラム生成部28cにより、記憶部27の送信特性測定結果格納領域に格納されるDUT100の送信特性の測定結果のデータ、及び干渉信号検出結果格納領域に格納された干渉信号の検出結果のデータに基づいて事前に生成され、例えば、記憶部27の所定の格納領域に格納されている。ステップS11において、表示制御部28dは、記憶部27からスペクトグラム画像データを読み出し、該スペクトグラム画像データに基づきスペクトログラム表示画面35を用いてスペクトログラム35aを表示する。スペクトログラム生成部28cがスペクトラム画像データを生成するタイミングは特に限定されるものではなく、例えば、ステップS8で閾値を超えている出力レベルを有する干渉信号が存在すると判定されたとき、または、ステップS11で上記切替え指令の入力を受け付けたときのいずれであってもよい。
【0080】
但し、
図10に示すスペクトログラム35aは、測定対象周波数帯の帯域外の周波数帯を対象とする干渉信号検出結果に対応する内容のものである。すなわち、
図10においては、スペクトログラム35aの表示形態を便宜的に例示したものに過ぎず、ステップS11での切替表示に際しては、
図10に示すスペクトログラム35aのうち、予め設定された測定対象周波数範囲(着目点Pa近傍の周波数帯)での干渉信号検出結果に基づくスペクトログラム画像が表示されることとなる。このスペクトグラム画像の一例を
図11にイメージで示している。
【0081】
図5に示すDUT100の送信特性の測定に関する一連の干渉警告制御動作は、ステップS9で表示された送信性能試験の測定結果を示す画面、またはステップS10で表示された干渉警告メッセージ32を含む測定結果画面31(
図9参照)、またはステップS11で表示されたスペクトログラム表示画面35を閉じるユーザ操作によって終了させることができるようになっている。
【0082】
一方で、上記ステップS3にて試験種別が受信性能試験であると判定された場合(ステップS3で「受信性能試験」)、試験実行制御部28aは、
図6のステップS20へ進んでDUT100の受信性能試験を実施する。
【0083】
図6において、DUT100の受信性能試験は、ステップS20からステップS22によって実施される。DUT100の受信性能試験において、試験実行制御部28aは、例えば、DUT100に対して上記ステップS2で設定された測定対象周波数帯の所望の信号パターンの受信試験用信号を試験用アンテナ54から、その受信指令を例えばリモートでそれぞれ送信する(ステップS20)。引き続き、試験実行制御部28aは、上記受信指令に応じてDUT100が近距離無線通信部110にて上記受信試験用信号の受信状況を測定器10に対して送信する通知(受信状況通知)を受信する(ステップS21)。ここでDUT100は、上記受信状況として、受信パケット数、誤りパケット数等を送出(通知)するようになっている。
【0084】
この受信状況通知より(ステップS21)、誤り率の結果(誤り率が規定値を下回っているかどうか出判定される)を取得し、DUT100の受信特性の測定結果としてその測定結果のデータを、例えば、記憶部27における所定の受信特性測定結果格納領域に格納する(ステップS22)。
【0085】
上記ステップS20からステップS22でのDUT100の受信性能試験に合わせて、試験実行制御部28aは、干渉信号検出部24に対して干渉信号の検出指令を送信する。この検出指令に基づき、干渉信号検出部24は、上記ステップS2で設定された測定対象周波数帯の帯域内周波数帯の周波数範囲を対象に干渉信号の検出処理を行う(ステップS23)。ここで検出対象とされる主たる干渉信号は、上記ステップS20からステップS22でのDUT100の受信性能試験の試験結果(受信特定の測定結果)に対して干渉を与え得る外部からの到来信号である。干渉信号としては、DUT100が受信性能験に際して出力する、例えば、測定対象周波数帯近傍のスプリアス信号を含めるようにしてもよい。ステップS23における干渉信号の測定結果のデータは、例えば、記憶部27における所定の干渉信号検出結果格納領域に格納される。
【0086】
ステップS23における測定対象周波数帯の帯域内を対象とする干渉信号の検出処理についても、基本的には、
図7に示すフローチャートに沿って実施される。但し、ステップS23における干渉信号の検出処理においては、上述したDUT100の受信性能試験でDUT100に対する受信試験用信号の送信中に、周囲から試験用アンテナ54で受信され、信号処理された復調信号が実信号S1として入力端子Tinより入力する。以後、干渉信号検出部24では、ステップS7と同様、実信号S1から理想信号Siをキャンセルする処理を実施し、理想信号Siのキャンセル後の信号を干渉信号として捕捉(検出)処理を実施する。
【0087】
上記ステップS20からステップS22でのDUT100の受信性能試験、及び上記ステップS23での干渉信号の検出処理が完了すると、次いで、干渉警告部28bは、ステップS23で検出された干渉信号のうちで予め設定した閾値を超えている信号レベルを有する干渉信号が存在するか否かをチェックする(ステップS24)。ここで閾値を超えている信号レベルを有する干渉信号が存在しないと判定された場合(ステップS24でNO)、表示制御部28dは、記憶部27の受信特性測定結果格納領域からDUT100の受信特性の測定結果のデータを読み出し、該データに基づき、DUT100の受信特性の測定結果を表示部30に表示させる(ステップS25)。ここで表示される受信特性の測定結果は、例えば、
図9に示す測定結果画面31に表示されている干渉警告メッセージ32がないものである。
【0088】
これに対し、上記閾値を超えている信号レベルを有する干渉信号が存在すると判定された場合(ステップS24でYES)、干渉警告部28bは、表示制御部28dに干渉警告用の画面を表示することを指示し、この指示により、表示制御部28dは、例えば、ステップS25で表示したDUT100の受信特性の測定結果と、DUT100の受信性能試験(ステップS20からステップS23参照)時に干渉信号が発生したことを警告する干渉警告メッセージ32(
図9参照)とを含む干渉警告用の測定結果画面31を表示部30に表示する(ステップS26)。但し、ここで測定結果画面31のメイン領域31aに表示される測定結果は、
図9に示す測定結果画面31のメイン領域31aに表示される送信特性測定結果ではなく、上述したDUT100の受信特性の測定結果に差し替えられた内容となっている。
【0089】
干渉警告用の測定結果画面31の表示中、例えば、操作部40でのユーザ操作により上述した切替え指令が入力されると、干渉警告部28bは、表示制御部28dにスペクトログラムの表示を指示し、この指示により、表示制御部28dは、スペクトログラム35a(
図10参照)を有するスペクトログラム表示画面35の画像データを所定の格納領域から読み出し(あるいは生成し)、該画像データに基づき当該スペクトログラム表示画面35をそれまで表示していた測定結果画面31に切り替えて表示部30に表示する(ステップS27)。
【0090】
スペクトログラム表示画面35上に表示するスペクトログラム35aの画像データ(スペクトグラム画像データ)は、スペクトログラム生成部28cにより、記憶部27の受信特性測定結果格納領域に格納されるDUT100の受信特性の測定結果のデータ、及び干渉信号検出結果格納領域に格納された干渉信号の検出結果のデータに基づいて事前に生成され、例えば、記憶部27の所定の格納領域に格納されている。ステップS27において、表示制御部28dは、記憶部27からスペクトグラム画像データを読み出し、該スペクトグラム画像データに基づきスペクトログラム表示画面35を用いてスペクトログラム35aを表示する。スペクトログラム生成部28cがスペクトラム画像データを生成するタイミングは特に限定されるものではなく、例えば、ステップS24で閾値を超えている出力レベルを有する干渉信号が存在すると判定されたとき、または、ステップS27で上記切替え指令の入力を受け付けたときのいずれであってもよい。
【0091】
図6に示すDUT100の受信特性の測定に関する一連の干渉警告制御動作は、ステップS25で表示された受信特性の測定結果を示す画面、またはステップS26で表示された干渉警告メッセージ32を含む受信特性の測定結果画面31、またはステップS27で表示されたスペクトログラム表示画面35を閉じるユーザ操作によって終了させることができるようになっている。
【0092】
図5、及び
図6に示すDUT100の送信特性、及び受信特性の測定動作中に
図5のステップS10、及び
図6のステップS26で表示される干渉警告用の測定結果画面31の表示形態について詳しく説明する。DUT100の送信性能試験、受信性能試験で干渉信号が検出されたときの干渉警告用の測定結果画面31における干渉警告メッセージ32の表示例を
図9に示している。
図9に示す測定結果画面31は、DUT100の送信性能試験で干渉信号が検出されたときの表示例を示しており、メイン領域31aにはDUT100の送信特性の測定結果が表示されている。特に、
図9では、DUT100の送信電波の出力レベルの測定結果を示す各項目が縦方向に複数列配列して表示されている。
【0093】
図9に示す干渉警告用の測定結果画面31において(図示しない、干渉警告用の受信特性の測定結果画面31においても同じ)、上記各項目の測定結果を表示する領域の例えば上方の領域に干渉警告報知領域が設けられ、該干渉警告報知領域には、「干渉信号が検出されました。」という内容の干渉警告メッセージ32が表示されている。
【0094】
DUT100の送信特性の測定結果(または、DUT100の受信特性の測定結果)、及び「干渉信号が検出されました。」という内容の干渉警告メッセージ32とで構成される当該測定結果画面31によれば、ユーザは、表示されている測定結果が、周囲からの干渉を受けている可能性があることを認識することができる。これにより、周囲からの干渉の可能性を一切知ることができなかった従来の表示形態と比べて、表示されている測定結果の確からしさを疑う機会が得易くなり、測定結果の確からしさが向上することとなる。
【0095】
なお、干渉警告メッセージ32は、周囲からの干渉を受けている可能性があることをユーザに示唆し得る内容であればよく、「干渉信号が検出されました。」に限らず、種々のメッセージ内容とし得ることはいうまでもない。
【0096】
例えば、干渉信号の検出処理の結果、Bluetoothのホッピングパターンや、無線LAN(Wi-Fi)のスペクトルのパターン、電子レンジ等の機器が発する信号などによる干渉が発生していると認識し得る場合(
図10参照)には、その識別内容を要因として推定したメッセージを干渉警告メッセージ32として表示するようにしてもよい。この場合には、電磁波シールドボックス50の周囲の上記各要因による影響であることを推認でき、適切な対処をすることが可能となる。
【0097】
また、
図9においては、干渉警告メッセージ32を白抜きの領域に黒文字で表示する形態を例示しているが、表示形態もこれに限られるものではなく、例えば、干渉警告メッセージ32を各種の色で表示したり、点灯、若しくは点滅させたり等、種々の表示形態が選択可能である。
【0098】
次に、
図5、及び
図6に示すDUT100の送信特性、及び受信特性の測定中に、
図5のステップS11、及び
図6のステップS27で表示されるスペクトログラム表示画面35の表示形態について詳しく説明する。DUT100の受信性能試験での干渉信号の測定結果に基づいて生成されたスペクトログラム35aの一表示形態(但し、測定対象周波数帯の帯域外の周波数帯を対象とする干渉信号検出結果に対応する内容である。)を
図10に示している。スペクトログラム生成部28cでは、DUT100の送信性能試験での干渉信号の測定結果に基づいてスペクトログラム35aを生成することができるようになっている。
【0099】
図10に示すように、スペクトログラム表示画面35により表示されるスペクトログラム35aは、横軸を周波数、縦軸を時間とし、例えば、
図5のステップS23における干渉信号の測定結果(但し、測定対象周波数帯の帯域外の周波数帯を対象にした場合の干渉信号の測定結果)を解析して得られる干渉信号の分布を周波数及び信号の強さと時間の関係をグラフで表したものである。具体的に、この例のスペクトログラム35aは、2.4GHzから2.5GHzの周波数範囲を測定対象とするBluetooth信号の0から5.79秒の時間間隔における干渉信号の分布を周波数及び信号の強さと時間の関係をグラフ化したものである。
【0100】
このスペクトログラム35aによれば、周波数方向(横方向)を幅、時間方向(縦方向)を高さとしてみるとき、個々の干渉信号が、高さが一定、かつ、それぞれの周波数幅に対応する幅を有する矩形形状で表され、その矩形形状の色の濃淡によって当該干渉信号の強さが表わされるようになっている。
【0101】
これにより、ユーザは、
図10に示すスペクトログラム35aにおいて、例えば、着目点Pa近傍の周波数帯で時間方向に連続して延びているように見える小さい幅の画像36から、当該周波数帯のBluetooth信号の測定が一定時間間隔で実施されていることを認識することができる。ここで上記画像の幅は、例えば、Bluetooth通信規格における1周波数チャンネル分の周波数帯幅に相当するものといえる。このことから、上記画像の幅と同等の幅を有する他の位置にある画像は、測定対象周波数帯以外の他のBluetooth信号であるものとみることができる。
【0102】
これに対して、上記画像の幅より大きな幅を有する測定対象周波数帯の帯域外の各位置の画像は、Bluetooth信号以外の干渉信号であるものと推定される。これら測定対象周波数帯の帯域外の各位置の画像については、その幅の大きさから、例えば、所定の幅を有する画像37が無線LAN(Wi-Fi)の信号であり、それよりも大きい幅を有する画像38が、他の近距離無線通信規格の信号であるといった推測が行える。さらには、例えば、幅の大きく時間方向に複数重なって混在している画像群39については、例えば、電子レンジ等を発生元とする干渉信号であるという推測も行える。
【0103】
図11には、
図10に示すスペクトログラム35aのうちの予め設定された測定対象周波数範囲内での干渉信号検出結果に基づくスペクトログラム35aの一例をイメージで示している。
図11においては、
図10の着目点Pa近傍の周波数帯が「測定周波数範囲」として示され、
図10の着目点Pa近傍で時間方向に連続して延びる画像36が「測定対象」として示されている。
図10のイメージ図からは、DUT100としてのBluetooth端末を対象に、「測定周波数範囲」内で周波数チャンネルをランダムに変える周波数ホッピングを行いながら通信を実施させながらのDUT100の測定(送信特性、あるいは受信特性の測定)に際し、「測定対象」たる各周波数チャンネル(Bluetooth BR/EDRでは79、LEでは40)が所定のホッピング周期で測定されるとともに、上記「測定周波数範囲」の帯域内周波数帯につき干渉信号Is1、Is2が合わせ検出されている状態であることが認識できる。
【0104】
ここで、干渉信号Is1は他のBluetooth端末から送信される「測定周波数範囲」内の周波数帯のBluetooth信号であり、干渉信号Is2は上述した他のBluetooth端末、若しくは、さらに別のBluetooth端末から送信される「測定周波数範囲」内の周波数帯のBluetooth信号であることが見て取れる。ここで、干渉信号Is1は、例えば、
図8(b)に示す実信号S1のオフ区間における干渉信号であり、干渉信号Is2は、同じく実信号S1のオン区間における干渉信号であるものと推測できる。
【0105】
上述したように、本実施形態に係るTDMA端末測定装置1では、例えば、
図9に示すように、干渉警告メッセージ32が付加された干渉警告用の測定結果画面31が表示された後、
図11に示すスペクトログラム35aを有するスペクトログラム表示画面35に切り替えることで、ユーザは、当該スペクトログラム35aから、現在、どのBluetooth通信規格のどの周波数チャンネルの信号の測定が実施されていて、当該測定対象周波数帯の帯域内周波数帯の干渉信号がどういう分布をしているのかを一目で確認できる。これにより、ユーザは、切替前の測定結果画面31(
図9参照)に表示される測定結果について、
図11に示す分布を示す干渉信号による影響を受けている可能性を踏まえたうえでその測定結果を認識できるようになる。要するに、本実施形態に係るTDMA端末測定装置1を用いてDUT100(Bluetooth端末)の性能試験を行うユーザは、Bluetooth端末のOTA環境下での送受信特性の測定結果の確からしさを測定対象周波数帯の帯域内の電波状況に照らして正しく判断できるようになる。さらには、期待通りの測定結果が得られないときの原因究明にも迅速に対応可能となる。
【0106】
以上説明したように、第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置1は、TDMA端末をDUT100として電磁波シールドボックス50内に収容し、OTA環境下でDUT100の送信特性、及び受信特性を測定するものであって、測定対象周波数帯を含む測定条件を設定する操作部40と、DUT100との間で所定の試験手順にしたがった近距離無線通信を行わせることによりDUT100の送信特性を測定する送信性能試験、及びDUT100の受信特性を測定する受信性能試験を実行する試験実行制御部28aと、送信性能試験、または受信性能試験の実行中、操作部40により設定された測定対象周波数帯の帯域内の周波数帯を対象に所定の閾値出力レベルを超える干渉信号を検出する干渉信号検出部24と、干渉信号検出部24により干渉信号が検出された場合、DUT100の送信特性の測定結果、または受信特性の測定結果に関連付けて干渉信号が検出された旨の警告を行う干渉警告部28bと、を具備して構成されている。
【0107】
この構成により、第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置1は、DUT100としてのTDMA端末のOTA環境下での送受信特性(送信特性、及び受信特性)の測定に際し、例えば、測定周波数帯域の帯域内での干渉信号が測定された場合には、警告によってその旨を認識することができる。警告に関連付けられた送受信特性の測定結果が帯域内の干渉信号の影響を受けている可能性もあることをユーザに示唆することができ、これによりユーザは、その測定結果の確からしさを測定対象周波数帯の帯域内の電波状況に照らして判断できるようになり、測定結果の確からしさの向上を見込むことができる。また、期待した測定結果が得られない(確からしからぬ測定結果が得られた)ときにも、干渉信号の影響の可能性を踏まえて原因究明に迅速に対応可能となる。
【0108】
また、第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置1において、試験実行制御部28aは、DUT100に所望の送信信号の送信指令を送信し、送信指令に対してDUT100が応答送信する送信信号の測定結果に基づきDUT100の送信特性を測定する送信性能試験、及びDUT100に受信指令と受信試験用信号を送信し、受信試験用信号を受信したDUT100が送信する受信状況の通知に基づきDUT100の受信特性を測定する受信性能試験を実行する構成を有している。
【0109】
この構成により、第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置1は、TDMA端末の電波の送信レベルや信号品質、または受信感度を測定し、該測定に際して測定対象周波数帯の帯域内で干渉信号が検出されたときには、それらの測定結果に関連付けて干渉信号が検出された旨を警告することで、測定された電波の送信レベル、または受信感度が干渉信号の影響を受けている可能性があることをユーザに示唆することができ、測定結果の確からしさの向上を見込むことができるとともに、確からしからぬ測定結果が得られたときの原因究明にも迅速に対応できる。
【0110】
また、第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置1において、干渉信号検出部24は、DUT100の送信性能試験でのDUT100からの送信信号の受信処理、または、DUT100の受信性能試験でのDUT100への受信試験用信号の送信時に周辺から受信される信号の受信処理によって生成される復調信号S1を入力し、復調信号S1に基づき、復調信号S1の理想信号Siを生成する理想信号生成部24aと、復調信号S1から理想信号Siを減算して得られる信号Sitfを干渉信号として捕捉する干渉信号捕捉部24cと、を有する構成である。
【0111】
この構成により、第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置1は、理想信号生成部24aと、干渉信号捕捉部24cと、を有する簡易な構成により、測定対象周波数帯の帯域内での干渉信号を確実に検出することができる。
【0112】
また、第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置1において、電磁波シールドボックス50は、TDMA端末として、Bluetooth通信規格での通信を行うBluetooth端末を収容しており、試験実行制御部28aは、Bluetooth端末をDUT100とし、DUT100との間で試験手順にしたがったBluetooth通信規格での通信を行わせることで当該DUT100の送信性能試験、及び受信性能試験を実行するようになっている。
【0113】
この構成により、第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置1は、Bluetooth通信規格での通信を行うBluetooth端末のOTA環境下での送信特性、受信特性の測定に適用することができる。測定対象周波数帯の帯域内で干渉信号が測定されたときにはその旨の警告が行われるため、一緒に表示されているBluetooth端末の送信特性、受信特性に関する測定結果が確からしいかどうかを容易に判断できる。また、干渉信号が検出された旨の警告がなされている場合、確からしからぬ測定結果が得られている状況下においても、Bluetooth端末の異常よりも、むしろ干渉信号によるものであるとの原因の切り分けが容易になる。
【0114】
また、第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置1において、操作部40は、Bluetooth通信規格で規定された2.4GHz帯に割り付けられたホッピング対象の複数の周波数チャンネルに各々対応する周波数帯を測定対象周波数帯として設定し、干渉信号検出部24は、複数の周波数チャンネルのうちから操作部40により設定された1つの周波数チャンネルに対応する周波数帯の帯域内の周波数帯として干渉信号の測定を行う構成である。
【0115】
この構成により、第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置1は、Bluetooth端末によるホッピング方式の通信で逐次切り替えられる複数の周波数チャンネルのうちの所望の周波数チャンネルによる送信特性、受信特性の測定結果の確からしさを容易にチェックできるようになり、確からしからぬ測定結果が得られた場合であっても原因の切り分けが容易になる。
【0116】
また、第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置1では、干渉警告部28bは、上記警告として、干渉信号が検出されており、DUT100の送信特性、または受信特性の測定結果の確かさが低下している旨を示す干渉警告メッセージ32を、上記送信特性、または受信特性の測定結果に付加して表示する構成を有している。
【0117】
この構成により、第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置1は、干渉信号が測定された旨の警告が、測定結果に付加された干渉警告メッセージ32の表示によって行われるため、干渉信号の影響を受けている可能性がある測定結果であることをユーザにより強く意識させることができ、干渉を踏まえた測定結果の確からしさの判断を確実に行えるようになる。
【0118】
また、第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置1は、干渉信号検出部24による干渉信号の検出結果を解析し、該解析結果に基づき干渉信号の分布を周波数及び信号の強さと時間の関係で表すスペクトログラム35aを生成するスペクトログラム生成部28cと、所定の切り替え指令に応じて、干渉警告メッセージ32を表示した画面に切り替えてスペクトログラムを表示する表示制御部28dと、をさらに有する構成である。
【0119】
この構成により、第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置1は、表示されたスペクトログラム35aにおける測定対象周波数帯の帯域内での干渉信号の分布に照らして、測定結果の確からしさをより容易に把握できるようになる。また、スペクトログラム35aにおける干渉信号の分布を見ながら、確からしからぬ測定結果が得られたときの原因究明にも対応し易くなる。
【0120】
また、第1の実施形態に係るTDMA測定方法は、上述したいずれかの構成を有するTDMA端末測定装置1を用い、TDMA端末をDUT100として電磁波シールドボックス50内に収容し、OTA環境下でDUT100の送信特性、及び受信特性を測定するTDMA測定方法であって、測定対象周波数帯を含む測定条件を設定する設定ステップ(S2)と、DUT100との間で所定の試験手順にしたがった近距離無線通信を行わせることにより送信特性を測定するDUT100の送信性能試験、及び受信特性を測定する受信性能試験を実行する試験実行制御ステップ(S4~S6、S20~S22)と、DUT100の送信性能試験、または受信性能試験の実行中、上記設定ステップにより設定された測定対象周波数帯の帯域内の周波数帯を対象に所定の閾値出力レベルを超える干渉信号を検出する干渉信号検出ステップ(S7、S23)と、干渉信号検出ステップにより干渉信号が検出された場合、DUT100の送信特性の測定結果、または受信特性の測定結果に関連付けて干渉信号が検出された旨の警告を行う干渉警告ステップ(S10、S26)と、を含む構成を有している。
【0121】
この構成により、第1の実施形態に係るTDMA端末測定方法は、上述したいずれかの構成を有するTDMA端末測定装置1を用い、DUT100としてのTDMA端末のOTA環境下での送受信特性の測定に際し、例えば、測定周波数帯域の帯域内での干渉信号が測定された場合には、警告によってその旨を認識することができる。警告に関連付けられたDUT100の送受信特性の測定結果が帯域内の干渉信号の影響を受けている可能性もあることをユーザに示唆することができ、これによりユーザは、その測定結果の確からしさを測定対象周波数帯の帯域内の電波状況に照らして判断できるようになり、測定結果の確からしさの向上を見込むことができる。また、期待した測定結果が得られない(確からしからぬ測定結果が得られた)ときにも、干渉信号の影響の可能性を踏まえて原因究明に迅速に対応可能となる。
【0122】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るTDMA端末測定装置(以下、便宜的に符号1Aを付して識別する。)は、第1の実施形態に係る干渉信号検出部24(
図3参照)に替えて、例えば、
図12に示す機能構成を有する干渉信号検出部24Dが搭載された測定器10Aを備えて構成される。第2の実施形態に係るTDMA端末測定装置1Aにおいて、測定器10Aに搭載される干渉信号検出部24D以外の構成は第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置1と同様である。以下においては、干渉信号検出部24と異なる点を主体に説明し、干渉信号検出部24と共通する点についての詳細な説明は割愛する。
【0123】
測定器10Aに搭載される第2の実施形態に係る干渉信号検出部24Dは、第1の実施形態に係る干渉信号検出部24と同様、DUT100の送信性能試験でのDUT100からの送信信号の受信処理、または、DUT100の受信性能試験でのDUT100への受信試験用信号の送信時に周辺から受信される信号の受信処理によりそれぞれ生成されるベースバンド信号(復調信号)を対象に干渉信号を検出するものである。但し、干渉信号検出部24Dは、その機能構成が干渉信号検出部24とは異なり、例えば、
図12に示すように、参照信号保持部24e、比較部24f、干渉信号捕捉部24gにより構成される。
【0124】
干渉信号検出部24Dにおいて、入力端子Tinより入力する前述した復調信号(実信号S1:第1の実施形態参照)は2つの経路に分岐され、それぞれ、参照信号保持部24eと比較部24fに入力される。
【0125】
参照信号保持部24eは、分岐された一方の復調信号を、参照信号S11として、所定の時間長で順次保持するものである。保持された所定の時間長の参照信号S11は比較部24fから逐次参照できるようになっている。
【0126】
比較部24fは、入力端子Tinから直接入力する復調信号(実信号S1)と参照信号保持部24eに保持されている参照信号S11の両信号を予め決められたタイミング区間を対象に比較し、当該タイミング区間の両信号の差分に相当する信号を出力する。比較部24fが比較対象とするのは、例えば、実信号S1のオン区間と、参照信号S11における実信号S1のオン区間以外のオン区間、または、実信号S1のオフ区間と、参照信号S11における実信号S11のオフ区間とは別のオフ区間とされている。
【0127】
干渉信号捕捉部24gは、比較部24fから出力される信号、すなわち、実信号S1と参照信号S11の互いに異なるオン区間、またはオフ区間同士の差分に相当する信号Sitf(所定の閾値を超える出力レベルを有する信号)を干渉信号として捕捉する処理を行う。
【0128】
干渉信号検出部24Dでは、干渉信号捕捉部24gによって干渉信号(信号Sitf)が捕捉された場合に、干渉信号を検出した旨の検出結果を出力するようになっている。干渉信号検出部24Dは、本発明の干渉信号検出手段を構成する。
【0129】
上述した構成の干渉信号検出部24Dを搭載した測定器10Aを有する第2の実施形態に係るTDMA端末測定装置1Aにおいても、
図5、及び
図6のフローチャートにしたがった干渉警告制御動作が実施される。
【0130】
第2の実施形態に係るTDMA端末測定装置1Aの干渉信号検出部24Dによる測定対象周波数帯の帯域内を対象とする干渉信号の検出処理動作(
図5のステップS7、
図6のステップS23参照)について
図13、及び
図14を参照して説明する。干渉信号の検出処理において、干渉信号検出部24Dは、
図13のフローチャートに示されるように、検出対象の信号(以下、実信号)S1を入力端子Tinより入力する(ステップS40)。実信号S1は、例えば、
図14(b)に示すようなオン区間とオフ区間とを有する復調信号である。この例の実信号S1は、2番目のオフ区間に干渉信号Sitf(
図14(c)参照)が重畳されたもの(点線の楕円内参照)となっている。
【0131】
干渉信号検出部24Dにおいて、入力端子Tinより入力した実信号S1は2つの経路に分岐され、その一方は比較部24fに入力され、他方は参照信号保持部24eに入力される。参照信号保持部24eは、入力される実信号S1を参照信号S11として適宜参照可能に保持する(ステップS41)。
図14(a)においては、実信号S1に対して時間がずれたタイミングでの参照信号S11の保持形態を示しており、いずれのオン区間、オフ区間も干渉信号Sitf(
図14(c)参照)が重畳されていないものである。
【0132】
引き続き、比較部24fは、入力端子Tinより入力された実信号S1と、参照信号保持部24eにより保持されている参照信号S11の互いに異なるオン区同士、またはオフ区間同士を比較し、その差分に相当する信号Sitfを干渉信号捕捉部24gに対して出力する(ステップS42)。
【0133】
干渉信号捕捉部24gは、比較部24fから出力された上記信号Sitfを捕捉し、該信号Sitfに基づき干渉信号を検出する(ステップS43)ようになっている。ここで、信号Sitfは、
図14(c)に示すように、実信号S1の2番目のオフ区間に重畳されていた干渉信号に相当する。
【0134】
なお、
図14においては実信号S1のオフ区間での干渉信号を検出する場合について述べたが、干渉信号検出部24Dは、実信号S1のオン区間での干渉信号についても同様にして検出することが可能である。
【0135】
このように、第2の実施形態に係るTDMA端末測定装置1Aによれば、DUT100の送信性能試験でのDUT100からの送信信号の受信処理、または、DUT100の受信性能試験でのDUT100への受信試験用信号の送信時に周辺から受信される信号の受信処理によって生成される復調信号S1を入力し、参照信号S11として保持する参照信号保持部24eと、復調信号S1と参照信号S11の互いに異なるオン区間同士、またはオフ区間同士の差分の信号Sitfを干渉信号として捕捉する干渉信号捕捉部24gと、を有する干渉信号検出部24Dを備えている。
【0136】
この構成によれば、入力する復調信号S1の各区間(オン区間、あるいはオフ区間)と、参照信号S11の上記各区間とは別の区間(干渉信号が重畳されていない区間)との差分から干渉信号をより容易かつ確実に検出することが可能となる。また、上記干渉信号検出部24Dを備える構成によれば、干渉信号検出部24を搭載した測定器10を備える第1の実施形態に係るTDMA端末測定装置1と同様、Bluetooth端末のOTA環境下での送受信特性の測定結果の確からしさを測定対象周波数帯の帯域内の電波状況に照らして正しく判断できるとともに、期待通りの測定結果が得られないときの原因究明にも迅速に対応可能であるという作用効果を奏する。
【0137】
なお、上記実施形態(第1の実施形態、及び第2の実施形態)によれば、操作部40により実現される設定手段について、測定対象周波数帯として、Bluetooth通信規格で規定されたホッピング対象の複数の周波数チャンネルに各々対応する周波数帯を設定する構成を例示しているが、設定手段は、これに限らず、例えば、任意の周波数範囲(上述した帯域内に相当する周波数帯)を直接設定する構成としてもよい。
【0138】
また、上記実施形態においては、電磁波シールドボックス50内にDUT100として収容されたBluetooth端末と測定器10との間における性能試験(送信性能試験、及び受信性能試験)時の通信については、一部を有線により実施する例を挙げているが、全てを無線通信により行うようにしてもよい。
【0139】
また、本発明は上記実施形態に限らず実施し得るものであり、特に、干渉警告制御機能についての種々の変形、あるいは応用が適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0140】
以上のように、本発明に係るTDMA測定装置、及びTDMA測定方法は、TDMA端末のOTA環境下での送受信特性の測定結果の確からしさを測定対象周波数帯の帯域内の電波状況に照らして正しく判断できるとともに、期待通りの測定結果が得られないときの原因究明にも迅速に対応可能であるという効果を奏し、Bluetooth端末等のTDMA端末の送受信特性を測定するTDMA測定装置、及びTDMA測定方法全般に有用である。
【符号の説明】
【0141】
1、1A TDMA端末測定装置
24、24D 干渉信号検出部(干渉信号検出手段)
24a 理想信号生成部
24c、24g 干渉信号捕捉部
24e 参照信号保持部 28a 試験実行制御部(試験実行制御手段)
28b 干渉警告部(干渉警告手段)
28c スペクトログラム生成部(スペクトログラム生成手段)
28d 表示制御部(表示制御手段)
30 表示部
32 干渉警告メッセージ
35a スペクトログラム
40 操作部(設定手段)
50 電磁波シールドボックス
100 DUT(TDMA端末)
S1 復調信号
Si 理想信号
S11 参照信号
Sitf 信号(干渉信号)