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特開2023-137475パイプルーフの施工方法、パイプルーフおよびパイプルーフを構成するエレメント
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137475
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】パイプルーフの施工方法、パイプルーフおよびパイプルーフを構成するエレメント
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/04 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
E21D9/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043707
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 英介
(72)【発明者】
【氏名】二井 俊次
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AB05
2D054AC20
2D054AD23
2D054AD33
2D054FA02
(57)【要約】
【課題】パイプループを構成するエレメントの先端面が閉塞されている場合においてもエレメントの先端部内にコンクリートを良好に充填することができる。
【解決手段】パイプルーフPRを構成する標準のエレメントEmの先端部に設けられた排気用の第1の排気孔VH1の開口面積の合計を、標準のエレメントEmの先端部以外の部分に設けられた第2の排気孔VH2の1か所当たりの開口面積より大きくした。これにより、パイプループPRを構成する複数本の標準のエレメントEの先端面が閉塞されている場合においても標準のエレメントEmの先端部内に生のコンクリートCCを良好に充填することができる。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに向き合う第1の鋼板および第2の鋼板と、前記第1の鋼板および前記第2の鋼板に交差した状態で互いに向き合う第3の鋼板および第4の鋼板とにより囲まれた中空空間を有し、前記中空空間の軸方向の第1の端面と該第1の端面に対して対極に位置する第2の端面とが開口された矩形管状の複数本のエレメントを用意するエレメント用意過程と、
前記エレメントの前記第1の端面を発進立坑の側面に向けた状態で、前記発進立坑の側面の計画地下構造物の外周に沿って前記エレメントの前方の土砂を掘削および排出しながら地中に圧入することにより、前記複数本のエレメントを互いの隣接間に連結空間を介して連結させた状態で並列に設置するエレメント圧入過程と、
前記エレメント圧入過程後、前記エレメントの前記第1の端面が閉塞された状態で前記エレメント内および前記連結空間にコンクリートを充填するコンクリート充填過程と、
を有し、
前記エレメント圧入過程においては、互いに隣接する前記エレメントの前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とが前記連結空間を介して互いに向き合うように前記複数本のエレメントを圧入し、
前記エレメント用意過程においては、前記第1の鋼板には前記中空空間と前記連結空間とを連通する連通孔が形成され、前記第2の鋼板には前記中空空間と前記連結空間とを連通するように形成され、前記エレメント内に前記コンクリートを流入したときに前記中空空間および前記連結空間の空気を逃がす排気孔が形成されており、前記排気孔は、前記第3の鋼板よりも前記第4の鋼板に近い位置に形成されているとともに、前記エレメントの前記第1の端面側に設けられた第1の排気孔と、前記エレメントの前記第1の端面側以外に設けられた第2の排気孔とを有しており、前記第1の排気孔の開口面積の合計は前記第2の排気孔の1か所当たりの開口面積より大きい、前記複数本のエレメントを用意する、
ことを特徴とするパイプルーフの施工方法。
【請求項2】
前記エレメント圧入過程において、前記複数本のエレメントが横方向に並んで配置される箇所においては、前記排気孔が上部に位置するように前記エレメントを圧入し、前記複数本のエレメントが縦方向に積層されて配置される箇所においては、前記連通孔が上を向くように前記エレメントを圧入することを特徴とする請求項1記載のパイプルーフの施工方法。
【請求項3】
前記第1の排気孔は前記エレメントの長手方向に沿って予め決められた第1の距離毎に配置された複数の貫通孔によって形成され、前記第2の排気孔は前記エレメントの長手方向に沿って前記第1の距離より長い第2の距離毎に配置された複数の貫通孔によって形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のパイプルーフの施工方法。
【請求項4】
前記第1の排気孔および前記第2の排気孔の径は前記コンクリートの粗骨材の径より小さいことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のパイプルーフの施工方法。
【請求項5】
前記第1の排気孔および前記第2の排気孔の寸法は互いに等しいことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載のパイプルーフの施工方法。
【請求項6】
前記コンクリート充填過程においては、
前記エレメント内に前記中空空間を仕切る仕切部材を設置することにより前記エレメント内にコンクリート充填空間を形成する仕切部材設置過程と、
前記コンクリート充填空間に前記コンクリートを流入する流入管の吐出部が前記コンクリート充填空間の長手方向中央部に位置するように前記エレメント内に前記流入管を設置する流入管設置過程と、
前記流入管を通じて前記コンクリート充填空間に前記コンクリートを流し込み、前記エレメントの前記第1の端面から前記第2の端面に向かって前記コンクリートを充填する過程と、
を有することを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載のパイプルーフの施工方法。
【請求項7】
前記仕切部材設置過程においては、
前記エレメント内の空気を逃がす第3の排気孔が開口面積を調整可能な状態で形成された仕切部材を用意する過程を有し、
前記コンクリート充填過程においては、
前記エレメントの前記第1の端面側に前記コンクリートが充填される前は、前記仕切部材の前記第3の排気孔を全て閉塞するか、または、前記第3の排気孔の開口面積を前記エレメントの前記排気孔の開口面積より小さくした状態で前記コンクリート充填空間に前記コンクリートを流入する過程と、
前記エレメントの前記第1の端面側に前記コンクリートが充填された後は、前記第3の排気孔を開放した状態で前記コンクリート充填空間に前記コンクリートを流入する過程と、を有する、
ことを特徴とする請求項6記載のパイプルーフの施工方法。
【請求項8】
前記エレメント充填空間に前記コンクリートを流し込む前に、前記コンクリート充填空間の奥部、または、奥部および中間部に前記コンクリートが充填されたことを検知する充填検知センサを設置する過程を有することを特徴とする請求項6または7記載のパイプルーフの施工方法。
【請求項9】
前記コンクリート充填空間に前記コンクリートを充填し終えた時に、前記流入管および前記仕切部材を前記コンクリート内に埋設したままとし、前記流入管の流入口まで前記コンクリートを満たした状態とすることを特徴とする請求項6~8の何れか一項に記載のパイプルーフの施工方法。
【請求項10】
前記エレメントの前記第1の鋼板は、予め決められた幅の鋼板を該エレメントの長手方向に対して前記第3の鋼板と前記第4の鋼板との間を接合した構造によって構成されていることを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載のパイプルーフの施工方法。
【請求項11】
発進立坑の側面に地中構造物の外周に沿って配置され、互いの隣接間に連結空間を介して連結された状態で並設された矩形管状の複数本のエレメントと、
前記エレメント内および前記連結空間に充填されたコンクリートと、
を備え、
前記エレメントは、互いに向き合う第1の鋼板および第2の鋼板と、前記第1の鋼板および前記第2の鋼板に交差した状態で互いに向き合う第3の鋼板および第4の鋼板とにより囲まれた中空空間を有し、前記中空空間の軸方向の第1の端面と該第1の端面に対して対極に位置する第2の端面とが開口されており、
前記複数本のエレメントは、互いに隣接する前記エレメントの前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とが前記連結空間を介して互いに向き合うように配置されており、
前記第1の鋼板には前記中空空間と前記連結空間とを連通する連通孔が形成され、
前記第2の鋼板には前記中空空間と前記連結空間とを連通するように形成され、前記エレメント内に前記コンクリートを流入したときに前記中空空間および前記連結空間の空気を逃がす排気孔が形成されており、
前記排気孔は、前記第3の鋼板よりも前記第4の鋼板に近い位置に形成されているとともに、前記エレメントの前記第1の端面側に設けられた第1の排気孔と、前記エレメントの前記第1の端面側以外に設けられた第2の排気孔とを有しており、
前記第1の排気孔の開口面積の合計は前記第2の排気孔の1か所当たりの開口面積より大きくなるように形成されていることを特徴とするパイプルーフ。
【請求項12】
前記複数本のエレメントが横方向に並んで配置される箇所においては、前記排気孔が上部に位置するように前記エレメントが設置され、
前記複数本のエレメントが縦方向に積層されて配置される箇所においては、前記連通孔が上を向くように前記エレメントが設置されていることを特徴とする請求項11記載のパイプルーフ。
【請求項13】
前記第1の排気孔は前記エレメントの長手方向に沿って予め決められた第1の距離毎に配置された複数の貫通孔によって形成され、
前記第2の排気孔は前記エレメントの長手方向に沿って前記第1の距離より長い第2の距離毎に配置された複数の貫通孔によって形成されていることを特徴とする請求項11または12記載のパイプルーフ。
【請求項14】
前記第1の排気孔および前記第2の排気孔の径は前記コンクリートの粗骨材の径より小さいことを特徴とする請求項11~13の何れか一項に記載のパイプルーフ。
【請求項15】
前記第1の排気孔および前記第2の排気孔の寸法は互いに等しいことを特徴とする請求項11~14の何れか一項に記載のパイプルーフ。
【請求項16】
前記エレメント内を仕切ることにより前記エレメント内にコンクリート充填空間を形成する仕切部材が前記コンクリートに埋設されていることを特徴とする請求項11~15の何れか一項に記載のパイプルーフ。
【請求項17】
前記仕切部材には前記コンクリート充填空間の空気を逃がす第3の排気孔が形成されていることを特徴とする請求項16記載のパイプルーフ。
【請求項18】
前記エレメント内に前記コンクリートを流入する流入管が、該流入管の吐出部を前記コンクリート充填空間の長手方向中央部に配置させた状態で前記コンクリートに埋設されているとともに、前記流入管の内部は、該流入管の流入口まで前記コンクリートによって満たされていることを特徴とする請求項16または17記載のパイプルーフ。
【請求項19】
前記コンクリート充填空間の奥部、または、奥部および中間部に前記コンクリートの充填を検知する充填検知センサが埋設されていることを特徴とする請求項16~18の何れか一項に記載のパイプルーフ。
【請求項20】
前記エレメントの前記第1の鋼板は、予め決められた幅の鋼板を該エレメントの長手方向に対して垂直に接合した構造によって構成されていることを特徴とする請求項11~19の何れか一項に記載のパイプルーフ。
【請求項21】
発進立坑の側面に地中構造物の外周に沿って配置され、互いの隣接間に連結空間を介して連結された状態で並設される矩形管状のエレメントであって、
前記エレメントは、互いに向き合う第1の鋼板および第2の鋼板と、前記第1の鋼板および前記第2の鋼板に交差した状態で互いに向き合う第3の鋼板および第4の鋼板とにより囲まれた中空空間を有し、前記中空空間の軸方向の第1の端面と該第1の端面に対して対極に位置する第2の端面とが開口されており、
互いに隣接する前記エレメントの前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とが前記連結空間を介して互いに向き合うように配置されるようになっており、
前記第1の鋼板には前記中空空間と前記連結空間と連通する連通孔が形成され、
前記第2の鋼板には前記中空空間と前記連結空間とを連通するように形成され、前記エレメント内に前記コンクリートを流入したときに前記中空空間および前記連結空間の空気を逃がす排気孔が形成されており、
前記排気孔は、前記第3の鋼板よりも前記第4の鋼板に近い位置に形成されているとともに、前記エレメントの前記第1の端面側に設けられた第1の排気孔と、前記エレメントの前記第1の端面側以外に設けられた第2の排気孔とを有しており、
前記第1の排気孔の開口面積の合計は前記第2の排気孔の1か所当たりの開口面積より大きいことを特徴とするパイプルーフを構成するエレメント。
【請求項22】
前記第1の排気孔は前記エレメントの長手方向に沿って予め決められた第1の距離毎に配置された複数の貫通孔によって形成され、
前記第2の排気孔は前記エレメントの長手方向に沿って前記第1の距離より長い第2の距離毎に配置された複数の貫通孔によって形成されていることを特徴とする請求項21記載のパイプルーフを構成するエレメント。
【請求項23】
前記第1の排気孔および前記第2の排気孔の径は前記コンクリートの粗骨材の径より小さいことを特徴とする請求項21または22記載のパイプルーフを構成するエレメント。
【請求項24】
前記第1の排気孔および前記第2の排気孔の寸法は互いに等しいことを特徴とする請求項21~23の何れか一項に記載のパイプルーフを構成するエレメント。
【請求項25】
前記第1の鋼板は、予め決められた幅の鋼板を該エレメントの長手方向に対して垂直に接合した構造によって構成されていることを特徴とする請求項21~24の何れか一項に記載のパイプルーフを構成するエレメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプルーフの施工方法、パイプルーフおよびパイプルーフを構成するエレメントに関し、例えば、パイプルーフを構成するエレメント内へのコンクリートの充填技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市部においては、地下に道路や線路等を形成するための地下構造物を構築する際、地上に幹線道路や住宅等が密集している関係上、地盤のずれや沈下等が生じないような工法が求められている。
【0003】
パイプルーフ工法は、地盤における地下構造物の構築予定箇所の周囲に複数本のパイプを並設し、これらを連結することによりパイプルーフ(防護屋根)を構築する工法であり、地盤のずれや沈下等を抑制または防止可能な技術として都市部での地下構造物の構築に適用されている。
【0004】
このようなパイプルーフ工法については、例えば、特許文献1に開示があり、エレメントの長尺空間をこれに交差する仕切部材によって複数のコンクリート打設空間に区画し、各コンクリート打設空間をそれぞれに設置されたコンクリート圧送管を通じて打設し、圧送管を埋め殺しとすることが記載されている。また、特許文献1には、コンクリート打設時にコンクリート打設空間の空気を仕切部材に形成された空気抜き孔を通じてエレメントの手前側(発進立坑側)端面の開口部から逃がすことが記載されている。
【0005】
また、例えば、特許文献2には、複数の長尺空間へのコンクリートの充填方法が開示されており、長尺空間の一端側にコンクリートの投入口を設けるとともに、長尺空間の他端側に空気抜き孔を設け、コンクリート充填時には、長尺空間の他端側に形成された空気抜け孔から長尺空間内の空気を逃がすことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-104403号公報
【特許文献2】特開平10-306584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、パイプルーフに所定の強度を持たせるためには、パイプルーフを構成する複数のエレメントの各々の内部に隙間なくコンクリートを充填させる必要があるが、本発明者が検討したパイプルーフの施工においては、複数本のエレメントによる打設全長が極端に長いとともに、エレメントの圧入方向に到達立坑が存在せずエレメントの先端面の開口部が土砂で塞がっていることにより、エレメントの先端部内にコンクリートを充填することが難しい、という課題がある。
【0008】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、パイプループを構成するエレメントの先端面が閉塞されている場合においてもエレメントの先端部内にコンクリートを良好に充填することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、互いに向き合う第1の鋼板および第2の鋼板と、前記第1の鋼板および前記第2の鋼板に交差した状態で互いに向き合う第3の鋼板および第4の鋼板とにより囲まれた中空空間を有し、前記中空空間の軸方向の第1の端面と該第1の端面に対して対極に位置する第2の端面とが開口された矩形管状の複数本のエレメントを用意するエレメント用意過程と、前記エレメントの前記第1の端面を発進立坑の側面に向けた状態で、前記発進立坑の側面の計画地下構造物の外周に沿って前記エレメントの前方の土砂を掘削および排出しながら地中に圧入することにより、前記複数本のエレメントを互いの隣接間に連結空間を介して連結させた状態で並列に設置するエレメント圧入過程と、前記エレメント圧入過程後、前記エレメントの前記第1の端面が閉塞された状態で前記エレメント内および前記連結空間にコンクリートを充填するコンクリート充填過程と、を有し、前記エレメント圧入過程においては、互いに隣接する前記エレメントの前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とが前記連結空間を介して互いに向き合うように前記複数本のエレメントを圧入し、前記エレメント用意過程においては、前記第1の鋼板には前記中空空間と前記連結空間とを連通する連通孔が形成され、前記第2の鋼板には前記中空空間と前記連結空間とを連通するように形成され、前記エレメント内に前記コンクリートを流入したときに前記中空空間および前記連結空間の空気を逃がす排気孔が形成されており、前記排気孔は、前記第3の鋼板よりも前記第4の鋼板に近い位置に形成されているとともに、前記エレメントの前記第1の端面側に設けられた第1の排気孔と、前記エレメントの前記第1の端面側以外に設けられた第2の排気孔とを有しており、前記第1の排気孔の開口面積の合計は前記第2の排気孔の1か所当たりの開口面積より大きい、前記複数本のエレメントを用意する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項1に記載の発明において、前記エレメント圧入過程において、前記複数本のエレメントが横方向に並んで配置される箇所においては、前記排気孔が上部に位置するように前記エレメントを圧入し、前記複数本のエレメントが縦方向に積層されて配置される箇所においては、前記連通孔が上を向くように前記エレメントを圧入することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項1または2に記載の発明において、前記第1の排気孔は前記エレメントの長手方向に沿って予め決められた第1の距離毎に配置された複数の貫通孔によって形成され、前記第2の排気孔は前記エレメントの長手方向に沿って前記第1の距離より長い第2の距離毎に配置された複数の貫通孔によって形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項1~3の何れか一項に記載の発明において、前記第1の排気孔および前記第2の排気孔の径は前記コンクリートの粗骨材の径より小さいことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項1~4の何れか一項に記載の発明において、前記第1の排気孔および前記第2の排気孔の寸法は互いに等しいことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項1~5の何れか一項に記載の発明において、前記コンクリート充填過程においては、前記エレメント内に前記中空空間を仕切る仕切部材を設置することにより前記エレメント内にコンクリート充填空間を形成する仕切部材設置過程と、前記コンクリート充填空間に前記コンクリートを流入する流入管の吐出部が前記コンクリート充填空間の長手方向中央部に位置するように前記エレメント内に前記流入管を設置する流入管設置過程と、前記流入管を通じて前記コンクリート充填空間に前記コンクリートを流し込み、前記エレメントの前記第1の端面から前記第2の端面に向かって前記コンクリートを充填する過程と、を有することを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項6に記載の発明において、前記仕切部材設置過程においては、前記エレメント内の空気を逃がす第3の排気孔が開口面積を調整可能な状態で形成された仕切部材を用意する過程を有し、前記コンクリート充填過程においては、前記エレメントの前記第1の端面側に前記コンクリートが充填される前は、前記仕切部材の前記第3の排気孔を全て閉塞するか、または、前記第3の排気孔の開口面積を前記エレメントの前記排気孔の開口面積より小さくした状態で前記コンクリート充填空間に前記コンクリートを流入する過程と、前記エレメントの前記第1の端面側に前記コンクリートが充填された後は、前記第3の排気孔を開放した状態で前記コンクリート充填空間に前記コンクリートを流入する過程と、を有することを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項6または7に記載の発明において、前記エレメント充填空間に前記コンクリートを流し込む前に、前記コンクリート充填空間の奥部、または、奥部および中間部に前記コンクリートが充填されたことを検知する充填検知センサを設置する過程を有することを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項6~8の何れか一項に記載の発明において、前記コンクリート充填空間に前記コンクリートを充填し終えた時に、前記流入管および前記仕切部材を前記コンクリート内に埋設したままとし、前記流入管の流入口まで前記コンクリートを満たした状態とすることを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項1~9の何れか一項に記載の発明において、前記エレメントの前記第1の鋼板は、予め決められた幅の鋼板を該エレメントの長手方向に対して前記第3の鋼板と前記第4の鋼板との間を接合した構造によって構成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項11に記載の本発明のパイプルーフは、発進立坑の側面に地中構造物の外周に沿って配置され、互いの隣接間に連結空間を介して連結された状態で並設された矩形管状の複数本のエレメントと、前記エレメント内および前記連結空間に充填されたコンクリートと、を備え、前記エレメントは、互いに向き合う第1の鋼板および第2の鋼板と、前記第1の鋼板および前記第2の鋼板に交差した状態で互いに向き合う第3の鋼板および第4の鋼板とにより囲まれた中空空間を有し、前記中空空間の軸方向の第1の端面と該第1の端面に対して対極に位置する第2の端面とが開口されており、前記複数本のエレメントは、互いに隣接する前記エレメントの前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とが前記連結空間を介して互いに向き合うように配置されており、前記第1の鋼板には前記中空空間と前記連結空間とを連通する連通孔が形成され、前記第2の鋼板には前記中空空間と前記連結空間とを連通するように形成され、前記エレメント内に前記コンクリートを流入したときに前記中空空間および前記連結空間の空気を逃がす排気孔が形成されており、前記排気孔は、前記第3の鋼板よりも前記第4の鋼板に近い位置に形成されているとともに、前記エレメントの前記第1の端面側に設けられた第1の排気孔と、前記エレメントの前記第1の端面側以外に設けられた第2の排気孔とを有しており、前記第1の排気孔の開口面積の合計は前記第2の排気孔の1か所当たりの開口面積より大きくなるように形成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項12に記載の本発明のパイプルーフは、上記請求項11に記載の発明において、前記複数本のエレメントが横方向に並んで配置される箇所においては、前記排気孔が上部に位置するように前記エレメントが設置され、前記複数本のエレメントが縦方向に積層されて配置される箇所においては、前記連通孔が上を向くように前記エレメントが設置されていることを特徴とする。
【0021】
請求項13に記載の本発明のパイプルーフは、上記請求項11または12に記載の発明において、前記第1の排気孔は前記エレメントの長手方向に沿って予め決められた第1の距離毎に配置された複数の貫通孔によって形成され、前記第2の排気孔は前記エレメントの長手方向に沿って前記第1の距離より長い第2の距離毎に配置された複数の貫通孔によって形成されていることを特徴とする。
【0022】
請求項14に記載の本発明のパイプルーフは、上記請求項11~13の何れか一項に記載の発明において、前記第1の排気孔および前記第2の排気孔の径は前記コンクリートの粗骨材の径より小さいことを特徴とする。
【0023】
請求項15に記載の本発明のパイプルーフは、上記請求項11~14の何れか一項に記載の発明において、前記第1の排気孔および前記第2の排気孔の寸法は互いに等しいことを特徴とする。
【0024】
請求項16に記載の本発明のパイプルーフは、上記請求項11~15の何れか一項に記載の発明において、前記エレメント内を仕切ることにより前記エレメント内にコンクリート充填空間を形成する仕切部材が前記コンクリートに埋設されていることを特徴とする。
【0025】
請求項17に記載の本発明のパイプルーフは、上記請求項16に記載の発明において、前記仕切部材には前記コンクリート充填空間の空気を逃がす第3の排気孔が形成されていることを特徴とする。
【0026】
請求項18に記載の本発明のパイプルーフは、上記請求項16または17に記載の発明において、前記エレメント内に前記コンクリートを流入する流入管が、該流入管の吐出部を前記コンクリート充填空間の長手方向中央部に配置させた状態で前記コンクリートに埋設されているとともに、前記流入管の内部は、該流入管の流入口まで前記コンクリートによって満たされていることを特徴とする。
【0027】
請求項19に記載の本発明のパイプルーフは、上記請求項16~18の何れか一項に記載の発明において、前記コンクリート充填空間の奥部、または、奥部および中間部に前記コンクリートの充填を検知する充填検知センサが埋設されていることを特徴とする。
【0028】
請求項20に記載の本発明のパイプルーフは、上記請求項11~19の何れか一項に記載の発明において、前記エレメントの前記第1の鋼板は、予め決められた幅の鋼板を該エレメントの長手方向に対して垂直に接合した構造によって構成されていることを特徴とする。
【0029】
請求項21に記載の本発明のエレメントは、発進立坑の側面に地中構造物の外周に沿って配置され、互いの隣接間に連結空間を介して連結された状態で並設される矩形管状のエレメントであって、前記エレメントは、互いに向き合う第1の鋼板および第2の鋼板と、前記第1の鋼板および前記第2の鋼板に交差した状態で互いに向き合う第3の鋼板および第4の鋼板とにより囲まれた中空空間を有し、前記中空空間の軸方向の第1の端面と該第1の端面に対して対極に位置する第2の端面とが開口されており、互いに隣接する前記エレメントの前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とが前記連結空間を介して互いに向き合うように配置されるようになっており、前記第1の鋼板には前記中空空間と前記連結空間と連通する連通孔が形成され、前記第2の鋼板には前記中空空間と前記連結空間とを連通するように形成され、前記エレメント内に前記コンクリートを流入したときに前記中空空間および前記連結空間の空気を逃がす排気孔が形成されており、前記排気孔は、前記第3の鋼板よりも前記第4の鋼板に近い位置に形成されているとともに、前記エレメントの前記第1の端面側に設けられた第1の排気孔と、前記エレメントの前記第1の端面側以外に設けられた第2の排気孔とを有しており、前記第1の排気孔の開口面積の合計は前記第2の排気孔の1か所当たりの開口面積より大きいことを特徴とする。
【0030】
請求項22に記載の本発明のエレメントは、上記請求項21に記載の発明において、前記第1の排気孔は前記エレメントの長手方向に沿って予め決められた第1の距離毎に配置された複数の貫通孔によって形成され、前記第2の排気孔は前記エレメントの長手方向に沿って前記第1の距離より長い第2の距離毎に配置された複数の貫通孔によって形成されていることを特徴とする。
【0031】
請求項23に記載の本発明のエレメントは、上記請求項21または22に記載の発明において、前記第1の排気孔および前記第2の排気孔の径は前記コンクリートの粗骨材の径より小さいことを特徴とする。
【0032】
請求項24に記載の本発明のエレメントは、上記請求項21~23の何れか一項に記載の発明において、前記第1の排気孔および前記第2の排気孔の寸法は互いに等しいことを特徴とする。
【0033】
請求項25に記載の本発明のエレメントは、上記請求項21~24の何れか一項に記載の発明において、前記第1の鋼板は、予め決められた幅の鋼板を該エレメントの長手方向に対して垂直に接合した構造によって構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、パイプループを構成するエレメントの先端面が閉塞されている場合においてもエレメントの先端部内にコンクリートを良好に充填することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の一実施の形態であるパイプルーフの施工地の要部断面である。
図2】エレメント内の土砂を排出した後の発進立坑の要部側面図である。
図3図2のパイプルーフ施工地の要部断面図である。
図4】エレメントを固定するワイヤを設置した後の発進立坑の要部側面図である。
図5】エレメント内にコンクリートを充填した後の発進立坑の要部側面図である。
図6図6のパイプルーフ施工地の要部断面図である。
図7】トンネル構築後の発進立坑の要部側面図である。
図8図7のパイプルーフ施工地の要部断面図である。
図9】本発明の一実施の形態であるパイプルーフを構成するエレメント群の正面図である。
図10】標準のエレメントの正面図である。
図11】(a)は先頭の標準のエレメントの第1の鋼板を図10の矢印A1の方向から見た平面図、(b)は先頭の標準のエレメントの第2の鋼板を図10の矢印A2の方向から見た平面図である。
図12】(a)は先頭の標準のエレメントの第3の鋼板を図10の矢印A3の方向から見た平面図、(b)は先頭の標準のエレメントの第4の鋼板を図10の矢印A4の方向から見た平面図である。
図13】(a)は後続の標準のエレメントの第1の鋼板を図10の矢印A1の方向から見た平面図、(b)は後続の標準のエレメントの第2の鋼板を図10の矢印A2の方向から見た平面図である。
図14】標準のエレメント同士の連結状態を示すエレメントの正面図である。
図15】プレストレス導入用のエレメントの正面図である。
図16】(a)はプレストレス導入用のエレメントの第5の鋼板を図15の矢印A1の方向から見た平面図、(b)はプレストレス導入用のエレメントの第7の鋼板P7bを図15の矢印A5の方向から見た平面図である。
図17】(a)はプレストレス導入用のエレメントの第8の鋼板を図15の矢印A3の方向から見た平面図、(b)はプレストレス導入用のエレメントの第6の鋼板を図15の矢印A6の方向から見た平面図である。
図18】プレストレス導入用のエレメントと変形タイプの標準のエレメントおよび標準のエレメントとの連結状態を示すエレメントの正面図である。
図19】エレメント打設空間の要部断面図である。
図20】(a)は仕切板の一例の平面図、(b)は図20(a)の仕切板を構成する開閉板を外した状態を示した仕切板の平面図、(c)は図20(a)の仕切板を構成する開閉板の平面図である。
図21】(a)は図20(b)のY-Y線の断面図、(b)は図20の仕切板を分解して示した平面図である。
図22】(a),(b)は仕切板の変形例の平面図、(c)は図22(a),(b)の開閉板の平面図である。
図23】打設時の先頭の標準のエレメントの先端部の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0037】
本実施の形態のパイプルーフの施工方法の一例について図1図8を参照して説明する。なお、ここでは、例えば、線路施設用のトンネル(地下構造物)を地下に構築する場合に本実施の形態のパイプルーフの施工方法を適用した場合について説明する。
【0038】
図1は本実施の形態のパイプルーフの施工地の要部断面である。
【0039】
まず、パイプルーフの施工地Gに発進立坑DHを構築する。発進立坑DHの深さは、例えば、40~50mである。続いて、発進立坑DH内に推進機RMおよび複数本のエレメントEを運び込む。エレメントEは、パイプルーフを構成するための矩形長尺状の鋼管により形成されている。なお、エレメントEについては後ほど説明する。
【0040】
その後、推進機RMにエレメントEを設置する。この時、エレメントEの姿勢が水平になるように設置するとともに、エレメントEの長手方向(軸方向)の先端面(第1の端面)が発進立坑DHの側面に対向するように設置する。その後、推進機RMによってエレメントEを発進立坑DHの側面からエレメントEの前方の土砂を掘削および排除しながら地中に向かって圧入する。
【0041】
図2はエレメント圧入過程後の発進立坑の要部側面図、図3図2のパイプルーフ施工地の要部断面図である。なお、図2は側面図であるが土砂にハッチングを付している。
【0042】
図2に示すように、発進立坑DHの側面には、例えば、複数のエレメントEがトンネル予定箇所(計画地下構造物)Tpの全域を取り囲むようにトンネル予定箇所Tpの外周に沿って並設されている。互いに隣接するエレメントE,Eは、それらの間に連結空間CSを介して連結されている。なお、エレメントEの連結状態については後ほど説明する。
【0043】
また、図3に示すように、各エレメント圧入箇所(エレメント列)には、複数本のエレメントEが直列に圧入されている。なお、図3においては図面を簡単化するため3本のエレメントEを図示しているが、実際には3本以上のエレメントEが圧入されている。
【0044】
各エレメント圧入箇所において直列に配置された複数本のエレメントEの全長(後述の打設全長)は、例えば、50000~100000mmである。
【0045】
また、図2および図3に示すように、各エレメントEおよび連結空間CSの土砂は掘削機(図示せず)および手作業によって排出されている。ただし、本実施の形態においては、土砂排出後においても各エレメント圧入箇所の先頭のエレメントEの先端面(第1の端面)は土砂によって閉塞されている。
【0046】
図4はエレメントを固定するワイヤを設置した後の発進立坑の要部側面図である。なお、図4は側面図であるが土砂にハッチングを付している。
【0047】
各エレメントEおよび連結空間CSの土砂を除去した後、縦横方向に配置された複数本のエレメントE同士を鋼製のワイヤW1,W2によって固定する。ワイヤW1は、縦方向に並ぶ複数本のエレメントEおよび連結空間CSを貫通して上下端に位置する角部のエレメントE内において張力を付与された状態で固定されている。また、ワイヤW2は、横方向に並ぶ複数本のエレメントEおよび連結空間CSを貫通して左右端に位置する角部のエレメントE内において張力を付与された状態で固定されている。ワイヤW1,W2は、エレメントEの長手方向(図4の紙面に直交する方向)に沿って予め決められた距離毎に設けられている。
【0048】
図5はエレメント内にコンクリートを充填した後の発進立坑の要部側面図、図6図5のパイプルーフ施工地の要部断面図である。なお、図5は側面図であるが図面を見易くするため土砂およびコンクリートCにハッチングを付している。
【0049】
図5および図6に示すように、複数本のエレメントE同士をワイヤW1,W2(図4参照)にプレストレスをかけることによって接合した後、エレメントEおよび連結空間CSに生のコンクリートCCを充填する。この打設作業は、エレメント圧入箇所(エレメント列)毎に実施する。全てのエレメント圧入箇所のエレメントE内に生のコンクリートCCを充填した後、養生期間を経て生のコンクリートCCを硬化させる。これにより、パイプルーフ施工地にトンネル予定箇所Tpの全周を取り囲む全周配置型のパイプルーフPRを構築する。なお、この打設過程については後ほど説明する。
【0050】
図7はトンネル構築後の発進立坑の要部側面図、図8図7のパイプルーフ施工地の要部断面図である。なお、図7は側面図であるが図面を見易くするため土砂およびコンクリートCCにハッチングを付している。
【0051】
図7および図8に示すように、パイプルーフPRを構築した後、トンネル予定箇所Tp(図5等参照)の土砂を掘削機(図示せず)によって掘削した後、各種舗装を施すことによりトンネルTを構築する。
【0052】
次に、上記したパイプルーフPRおよびパイプルーフPRを構成するエレメントEの構成例について図9図18を参照して説明する。
【0053】
図9は本実施の形態のパイプルーフを構成するエレメント群の正面図である。
【0054】
エレメント群EGは、例えば、全周配置型構造とされており、底部ブロックBbと、天井部ブロックBcと、2つの側部ブロックBsとの4つの打設ブロックを有している。なお、ここでは土砂を排出した後のエレメントEを示している。
【0055】
また、エレメント群EGのエレメントEは、標準のエレメントEmと、変形タイプの標準のエレメントEmcと、プレストレス導入用のエレメントEbとを有している。
【0056】
標準のエレメントEmは、エレメント群EGに最も多く配置されている主要なエレメントであり、上記4つの打設ブロックの全てに配置されている。
【0057】
変形タイプの標準のエレメントEmcは、プレストレス導入用のエレメントEbとその隣りのエレメントEとの間の連結空間CSにコンクリートを充填する上で、プレストレス導入用のエレメントEbとの整合性をとるために標準のエレメントEmの一部を変形したエレメントであり、プレストレス導入用のエレメントEbに隣接して配置されている。
【0058】
プレストレス導入用のエレメントEbは、主に、上記したワイヤW1,W2(図4参照)にプレストレスをかけるために使用されるエレメントであり、エレメント群EGの4つの角部に配置されている。このプレストレス導入用のエレメントEbによって上記した打設ブロックが決まる。
【0059】
図10は標準のエレメントの正面図である。
【0060】
標準のエレメントEmは、第1~第4の鋼板P1m~P4mによって囲まれた中空空間HSを有する矩形状の鋼管により形成されている。第1の鋼板P1mと第2の鋼板P2mとは、互いに向き合うように配置され、第3の鋼板P3mと第4の鋼板P4mとは第1、第2の鋼板P1m,P2mに交差(直交)した状態で互いに向き合うように配置されている。
【0061】
標準のエレメントEmの第1の鋼板P1mの外側面においてエレメントEmの角部近傍には、継手部J1,J1が接合されている。継手部J1,J1は、例えば、長尺平板状の鋼板からなり、その幅方向(短方向)の一端面(一方の長辺側の端面)を第1の鋼板P1mに接合させた状態で、第1の鋼板P1mの外側面から突き出すように設けられている。
【0062】
また、標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mの外側面においてエレメントEmの角部近傍には、継手部J2,J2が接合されている。継手部J2,J2は、例えば、長尺平板状の鋼板からなり、その幅方向(短方向)の一端面(一方の長辺側の端面)を第2の鋼板P2mに接合させた状態で、第2の鋼板P2mの外側面から突き出すように設けられている。
【0063】
さらに、継手部J1,J1と継手部J2,J2とは、エレメントEmの高さ方向(図10の縦方向)の位置が継手部J1,J2の厚さ分だけずれており、後述するように、エレメントEm,Emを互いに隣接させた状態で並べて配置したときに、継手部J1,J1の内側に継手部J2,J2が配置され、互いに接した状態で重なるように設けられている。
【0064】
エレメントEmの中空空間HSの長手方向(軸方向)の先端面(第1の端面)およびその対極の後端面(第2の端面)は開口されている。特に限定されるものではないが、エレメントEmの長手方向の両端面の幅(図10の横方向の寸法)は、例えば、1000mm、高さ(図10の縦方向の寸法)は、例えば、800mmである。
【0065】
なお、各エレメント圧入箇所には、先頭のエレメントEと、先頭のエレメントEに後続する後続のエレメントEとがある。先頭のエレメントEは、発進立坑の側面に最初に圧入するエレメントEの他、各エレメント圧入箇所に直列に配置された複数本のエレメントEの全長の途中位置であっても打設が実施されるときに最も奥(先頭位置)に配置されるエレメントEのことである。また、後続のエレメントEは、先頭のエレメントEの後ろに直列に配置されるエレメントEのことである。先頭のエレメントEと後続のエレメントEとは正面図は同じであるが、側面図が若干異なるので、以下、エレメントEの側面図の説明においては、先頭のエレメントEと後続のエレメントEとで分けて説明する。
【0066】
図11(a)は先頭の標準のエレメントの第1の鋼板を図10の矢印A1の方向から見た平面図、図11(b)は先頭の標準のエレメントの第2の鋼板を図10の矢印A2の方向から見た平面図である。
【0067】
図11(a)に示すように、先頭の標準のエレメントEmの第1の鋼板P1mは、予め決められた幅の鋼板部PsをエレメントEmの長さ方向に対して垂直に接合した構造によって構成されている。すなわち、第1の鋼板P1mには、第1の鋼板P1mの鋼板部Psと開口部(連通孔)THとがエレメントEmの長手方向に沿って交互に並んで設けられている。この鋼板部Psの面積と開口部THの開口面積とは、例えば、ほぼ同じ(すなわち、開口率50%程度)である。後述するように打設時にエレメントEm内に流れてきた生のコンクリートおよびエレメントEm内の空気は開口部THを通じて隣接する連結空間CSに流れるようになっている。
【0068】
このように第1の鋼板P1mを鋼板による壁柱(縦縞構造)とすることにより、エレメントEmの構造的な安定性を向上させることができ、エレメントEmの強度を確保したまま、エレメントEmを軽量化することができる。また、エレメントEm内に流れてきた生のコンクリートを滞りなく良好に連結空間CSに流すことができる。
【0069】
図11(b)に示すように、先頭の標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mは、平板状の鋼板によって形成されている。この第2の鋼板P2mには、標準のエレメントEmの中空空間HSとそれに隣接する連結空間CSとを連通するように形成され、上記した打設過程時に標準のエレメントEmの中空空間HSおよび連結空間CSの空気を逃がすための排気孔VHが穿孔されている。
【0070】
この排気孔VHは、標準のエレメントEmの先端面(第1の端面)側に設けられた第1の排気孔VH1と、標準のエレメントEmの先端面側以外に設けられた第2の排気孔VH2とを有している。第1の排気孔VH1と第2の排気孔VH2とは、第2の鋼板P2mの表裏面を貫通する貫通孔により形成されており、第3の鋼板P3mよりも第4の鋼板P4mに近い位置に標準のエレメントEmの長手方向に沿って並んで形成されている。
【0071】
第1の排気孔VH1および第2の排気孔VH2の直径は互いに等しく、例えば、30mm程度である。この第1の排気孔VH1および第2の排気孔VH2の直径は、コンクリートに含まれる粗骨材によって塞がれる程度の大きさに設定されている。すなわち、第1の排気孔VH1および第2の排気孔VH2の直径は、コンクリートに含まれる粗骨材の直径より小さい。これにより、コンクリートに含まれる粗骨材によって第1の排気孔VH1および第2の排気孔VH2が自然に塞がるので、連結空間CSに流れてきたコンクリートが排気孔VH(VH1,VH2)を通じて隣りのエレメントE内に流れ込まないようになっている。なお、粗骨材の直径が複数ある場合は、第1の排気孔VH1および第2の排気孔VH2の直径を、粗骨材の複数の直径の平均値より小さくしても良いし、最も多く含まれている粗骨材の直径より小さくしても良いし、粗骨材の最大直径より小さくしても良い。
【0072】
ただし、本実施の形態においては、第1の排気孔VH1の開口面積の合計が、第2の排気孔VH2の1か所当たりの開口面積より大きくなるように設定されている。すなわち、第1の排気孔VH1は、標準のエレメントEmの先端面側に、例えば、6個密集して穿孔されている。これに対して、第2の排気孔VH2は、標準のエレメントEmの先端面側以外の箇所に、1個だけ穿孔されている。
【0073】
この第2の排気孔VH2は、設計上、第1の排気孔VH1の隣接距離より長い距離L1毎に配置されるが、第2の排気孔V2と最も後方の第1の排気孔VH1との距離は、距離L1の2倍の距離L2に設定されている。これは、標準のエレメントEmの先端部での排気が良好に行われ、その先端部にコンクリートが良好に充填されるようにするためである。なお、この例においては、標準のエレメントEmの全長が短く、第2の排気孔VH2からエレメントEmの後端部までの長さは距離L1もないので、第2の排気孔VH2は1個しか配置されていない。なお、距離L1は、例えば、1mである。
【0074】
また、先頭の標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mにおいて第3の鋼板P3mに近い位置には、複数の貫通孔WHが穿孔されている。この貫通孔WHは、上記したワイヤW1,W2を通すための孔であり、エレメントEmの長手方向に沿って予め決められた距離毎に穿孔されている。
【0075】
なお、図11においては、先頭の標準のエレメントEmの中でも発進立坑の側面に最初に圧入するエレメントEmを例示している。この先頭のエレメントEmの場合、発進立坑の側面に圧入し易くするために、第1の鋼板P1mおよび第2の鋼板P2mの先端部がエレメントEmの長手方向に対して傾斜している。ただし、直列に配置された複数本のエレメントEmの全長の途中位置に配置された先頭の標準のエレメントEmにおいては、第1の鋼板P1mおよび第2の鋼板P2mの先端部がエレメントEmの長手方向に対して傾斜しておらず直交している。
【0076】
図12(a)は先頭の標準のエレメントの第3の鋼板を図10の矢印A3の方向から見た平面図、図12(b)は先頭の標準のエレメントの第4の鋼板を図10の矢印A4の方向から見た平面図である。
【0077】
図12(a),(b)に示すように、第3の鋼板P3mおよび第4の鋼板P4mは、例えば、長尺平板状の鋼板により形成されている。上記した継手部J1,J2は、第3の鋼板P3mおよび第4の鋼板P4mの両長辺から外方に突出した状態で設けられているとともに、第3の鋼板P3mおよび第4の鋼板P4mの長手方向に沿って延在した状態で設けられている。
【0078】
図13(a)は後続の標準のエレメントの第1の鋼板を図10の矢印A1の方向から見た平面図、図13(b)は後続の標準のエレメントの第2の鋼板を図10の矢印A2の方向から見た平面図である。
【0079】
図13(a)に示すように、後続の標準のエレメントEmの第1の鋼板P1mは、先頭の標準のエレメントEの第1の鋼板P1mと同様に、鋼板による壁柱構造(縦縞構造)とされている。また、図13(b)に示すように、後続の標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mは、先頭の標準のエレメントEの第2の鋼板P2mと同様に、平板状の鋼板により形成されている。
【0080】
後続の標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mにおいて第4の鋼板P4mに近い位置には、上記した第2の排気孔VH2がエレメントEmの長手方向に沿って上記距離L1毎に穿孔されている。ただし、後続の標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mには上記した第1の排気孔VH1(図11(b)参照)は穿孔されていない。
【0081】
また、後続の標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mにおいて第3の鋼板P3に近い位置には、上記したワイヤW1,W2(図4参照)を通すための貫通孔WHがエレメントEmの長手方向に沿って予め決められた距離毎に穿孔されている。なお、後続の標準のエレメントEmの第3の鋼板P3mおよび第4の鋼板P4mの構成は図10に示した第3の鋼板P3mおよび第4の鋼板P4mと同じなので説明を省略する。
【0082】
図14は標準のエレメント同士の連結状態を示すエレメントの正面図である。
【0083】
図14に示すように、互いに隣接する標準のエレメントEm,Em同士は、一方の標準のエレメントEmの継手部J1と、他方の標準のエレメントEmの継手部J2とによって、互いの隣接間に連結空間CSを介した状態で連結されている。継手部J1,J1は外側に配置され、継手部J2,J2は継手部J1,J1の内側に配置されている。継手部J1,J1と継手部J2,J2とは、互いに接触した状態で重なり合っている。また、上記したワイヤW1,W2(図4参照)にプレストレスをかけることにより、継手部J1の先端面は対向する第2の鋼板P2mに当接され、継手部J2の先端面は対向する第1の鋼板P1mに当接されている。
【0084】
また、図14に示すように、図9に示したエレメント群EGの底部ブロックBbおよび天井部ブロックBc(エレメントEmが横方向に並設されている箇所)においては、互いに隣接する標準のエレメントEm,Emのうち、一方の標準のエレメントEmの第1の鋼板P1mが、連結空間CSを介して、他方の標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mに対向するように配置されているとともに、第4の鋼板P4mが天井側になり第2の鋼板P2mに穿孔された排気孔VH(第1の排気孔VH1および第2の排気孔VH2)が上部に位置するように配置されている。
【0085】
なお、第2の鋼板P2mは、エレメントEmの前方の土砂を掘削および排除しながら地中に圧入する際に、地山が崩れてエレメントEm内に流入しないようにする土留めの役割をする。このため、先に圧入が完了したエレメントEmは第2の鋼板P2mの側が外部に向けて配置されており、次に圧入するエレメントEmは、この面に第1の鋼板P1mを対向させると共に、第2の鋼板P2mの側が外側に向くように配置して圧入される。
【0086】
また、図9に示したエレメント群EGの2つの側部ブロックBs(エレメントEmが縦方向に積層されている箇所)においては、上記と同様に、互いに隣接する標準のエレメントEm,Emのうち、一方の標準のエレメントEmの第1の鋼板P1mが、連結空間CSを介して、他方の標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mに対向するように配置されているとともに、図16を左に90度回転させた場合と同様に、第1の鋼板P1mが天井側になり第1の鋼板P1mに形成された開口部THが上を向くように配置されている。また、第2の鋼板P2mは下を向くように配置され、エレメントEm内で掘削作業等を行う際の作業床となる。
【0087】
図15はプレストレス導入用のエレメントの正面図である。
【0088】
プレストレス導入用のエレメントEbは、第5~第8の鋼板P5b~P8bによって囲まれた中空空間HSを有する矩形状の鋼管により形成されている。第5の鋼板P5bと第6の鋼板P6bとは互いに向き合うように配置され、第7の鋼板P7bと第8の鋼板P8bとは第5、第6の鋼板P5b,P6bに交差(直交)した状態で互いに向き合うように配置されている。プレストレス導入用のエレメントトEbの中空空間HSの長手方向(軸方向)の先端面(第1の端面)およびその対極の後端面(第2の端面)も標準のエレメントEmと同様に開口されている。
【0089】
第5の鋼板P5bの外側面おいてエレメントEbの角部近傍には、継手部J2,J2が接合されている。また、第7の鋼板P7bの外側面においてエレメントEbの角部近傍には、継手部J2,J2が接合されている。
【0090】
図16(a)はプレストレス導入用のエレメントの第5の鋼板を図15の矢印A1の方向から見た平面図、図16(b)はプレストレス導入用のエレメントの第7の鋼板P7bを図15の矢印A5の方向から見た平面図である。
【0091】
図16(a),(b)に示すように、第5の鋼板P5bおよび第7の鋼板P7bは、平板状の鋼板によって構成されている。この第5の鋼板P5bおよび第7の鋼板P7bには、上記したワイヤ挿通用の貫通孔WHが第5の鋼板P5bおよび第7の鋼板P7bの長手方向に沿って予め決められた距離毎に穿孔されているが、上記した排気孔VHは穿孔されていない。これは、プレストレス導入用のエレメントEbは、標準用のエレメントEmにコンクリートが打設された後に打設されるため、プレストレス導入用のエレメントEb内の空気が抜ける先が無いためである。このため、プレストレス導入用のエレメントEm内には、予め決められた間隔で開口を設けた、空気抜き用の管が設置される。空気抜き用の管はプレストレス導入用のエレメントEbの長手方向に対して、所定間隔で開孔を設けてもよく、複数の管を先端開口の位置が異なるように配置してもよい。
【0092】
図17(a)はプレストレス導入用のエレメントの第8の鋼板を図15の矢印A3の方向から見た平面図、図17(b)はプレストレス導入用のエレメントの第6の鋼板を図15の矢印A6の方向から見た平面図である。
【0093】
図17(a),(b)に示すように、第6の鋼板P6bおよび第8の鋼板P8bは、平板状の鋼板によって構成されている。この第6の鋼板P6bおよび第8の鋼板P8bには、上記した貫通孔WHや排気孔VHは形成されていない。
【0094】
図18はプレストレス導入用のエレメントと変形タイプの標準のエレメントおよび標準のエレメントとの連結状態を示すエレメントの正面図である。
【0095】
変形タイプの標準のエレメントEmcにおいては、通常の標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mが設けられておらず、標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mの部分が第1の鋼板P1mにより構成されている。すなわち、変形タイプの標準のエレメントEmcにおいては、一対の第1の鋼板P1m,P1mが互いに向き合うように配置されている。
【0096】
これは、仮に、プレストレス導入用のエレメントEbの隣りに通常の標準のエレメントEmを配置すると、プレストレス導入用のエレメントEbに対向する面に第2の鋼板P2mが配置されてしまう結果、その通常の標準のエレメントEm内に生のコンクリートを流入したときに、その通常の標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mに阻害され、プレストレス導入用のエレメントEbとその隣りの通常の標準のエレメントEmとの間の連結空間CSに生のコンクリートが流れず、その連結空間CSが空間のまま残されてしまうことになるからである。
【0097】
これに対して、プレストレス導入用のエレメントEbの隣りに変形タイプの標準のエレメントEmcを配置した場合は、変形タイプの標準のエレメントEmc内に生のコンクリートを流入したときに、プレストレス導入用のエレメントEbとその隣りの通常の標準のエレメントEmとの間の連結空間CSに、変形タイプの標準のエレメントEmの第1の鋼板P1mの開口部THを通じて、生のコンクリートが流入されるので、その連結空間CS内にコンクリートを充填することができる。
【0098】
図9に示したエレメント群EGの角部近傍において、互いに隣接するプレストレス導入用のエレメントEbと変形タイプの標準用のエレメントEmcとは、変形タイプの標準用のエレメントEmcの第1の鋼板P1mが、連結空間CSを介して、プレストレス導入用のエレメントEbの第5の鋼板P5bに対向するように配置されている。
【0099】
また、図9に示したエレメント群EGの上側の角部近傍において、互いに隣接するプレストレス導入用のエレメントEbと標準のエレメントEmとは、標準のエレメントEmの第1の鋼板P1mが、連結空間CSを介して、プレストレス導入用のエレメントEbの第7の鋼板P7bに対向するように配置されている。
【0100】
なお、互いに隣接するプレストレス導入用のエレメントEbと、変形タイプの標準用のエレメントEmcおよび標準のエレメントEmとの継手部J1,J2での連結状態は、図14等で説明したのと同じなので説明を省略する。
【0101】
次に、エレメント内に生コンクリートを充填する過程について図9および図19図23を参照して説明する。
【0102】
まず、エレメントE内および連結空間CSに生コンクリートを充填する打設作業の順序について図9を参照して説明する。打設は、エレメント群EGの圧入箇所毎に実施する。1箇所の打設時間は、例えば、1時間程度であり、1日に5~6箇所の打設を実施する。
【0103】
エレメント群EGの底部ブロックBbおよび天井部ブロックBcにおいては両角部のプレストレス導入用のエレメントEbから他方のプレストレス導入用のエレメントEbに向かって順に打設を実施する。また、エレメント群EGの両側部ブロックBsにおいては、最下部の閉合用のエレメントEcから最上部の標準のエレメントEmに向かって順に打設を実施する。そして、最後にプレストレス導入用のエレメントEbの打設を実施する。
【0104】
次に、図19はエレメント打設空間の要部断面図である。
【0105】
上記したように複数本のエレメントEによって構成される打設空間の先端面は土砂によって塞がれている。ここで、本実施の形態においては、上記したように打設全長が、例えば、50000~100000mmあるが、これを1回の打設で打ち終えるのは長すぎるので、例えば、全長の1/2(25000~50000mm)または1/3(16000~33000mm)の位置に打設空間を区切るように仕切板(仕切部材)PPを設置することにより、1回の打設空間(コンクリート充填空間)L3を形成する。なお、ここでは打設空間L3の長さが、例えば、25000~50000mmの場合とする。
【0106】
仕切板PPは、エレメントEの開口部を塞ぐように設置される。ここでは、上記したように仕切板PPが打設全長の中央に設置されるので、打設全長は、直列に配置された2つの打設空間に分けられる。この2つの打設空間のうちの前方に位置する打設空間を打設した後、後方に位置する打設空間を打設する際には、その後方の打設空間の先端面は仕切板PPによって閉塞されているので、その後方の打設空間の先端部にも上記した排気孔VH1を有する先頭のエレメントEが配置されている。なお、仕切板PPの構成については後ほど説明する。
【0107】
打設空間L3の最奥部(すなわち、エレメントEの先端部)および中間部には、充填検知センサFDが設置されている。充填検知センサFDは、打設空間L3のセンサ設置箇所においてコンクリートが充填されたか否かを検知するセンサであり、配線(図示せず)を通じて外部の検出機器と電気的に接続されている。
【0108】
また、打設空間L3には、生のコンクリートを打設空間L3に流入するための圧送管(流入管)STが設置されている。ここで、圧送管STの吐出口を打設空間L3の最奥部に設置すれば、その奥部に生のコンクリートを確実に充填することができる。しかし、生のコンクリートを最奥部まで圧送し、かつ、手前側(流入口側)まで押し出させるようにすると、圧送用のポンプ車の能力が大きくなり過ぎてしまう。そこで、本実施の形態においては、圧送管STの吐出口を打設空間L3のほぼ中央位置に配置した。これにより、圧送用のポンプ車の負担を軽減できるので、能力の大きなポンプ車を用いる必要も無くなる。なお、距離L4は、打設空間L3の長さの半分の長さである。
【0109】
次に、図20(a)は仕切板の一例の平面図、図20(b)は図20(a)の仕切板を構成する開閉板を外した状態を示した仕切板の平面図、図20(c)は図20(a)の仕切板を構成する開閉板の平面図、図21(a)は図20(b)のY-Y線の断面図、図21(b)は図20の仕切板を分解して示した平面図である。
【0110】
図20および図21に示すように、仕切板PPは、例えば、平面視で四角形状の2枚の鋼板PP1,PP2を高さ方向に突き合せた状態で接合することにより形成されている。この仕切板PPには、圧送管STを通すための貫通孔Hstが穿孔されている。
【0111】
また、仕切板PPにおいて、貫通孔Hstの直上には、人通孔Hhが穿孔されている。この人通孔Hhは、作業者が打設空間L3に出入りするための通路用の孔であり、例えば、平面視で四角形状に穿孔されている。人通孔Hhは、開閉板BPの着脱によって開閉自在の状態になっている。
【0112】
開閉板BPは、ボルトBtにより着脱自在の状態で仕切板PPに取り付けられている。打設前は、仕切板PPから開閉板BPが取り外され人通孔Hhを通じて打設空間L3への出入りができるが、打設時は、仕切板PPに開閉板BPが取り付けられ人通孔Hhが塞がれる。
【0113】
さらに、本実施の形態においては、仕切板PPおよび開閉板BPの上層部にエキスパンドメタル構成部EXが設けられている。このエキスパンドメタル構成部EXには、複数の貫通孔(第3の排気孔)Heが規則的に並んで穿孔されている。エキスパンドメタル構造部EXは、複数の貫通孔Heを通じて、打設空間L3の状態を監視したり、打設空間L3の空気を外部に逃がしたりするための構造部である。エキスパンドメタル構造部EXの複数の貫通孔Heの開口面積(総面積)は、エキスパンドメタル構造部EXに鋼板(図示せず)を被せることによって調整可能とされている。なお、個々の貫通孔Heの直径は、例えば、12mmである。
【0114】
このような仕切板PP1は、例えば、以下のようにして設置する。すなわち、図21(b)に示すように、まず、下部の鋼板PP1の上辺の半円状の凹部Hst1を上に向けた状態で下部の鋼板PP1を設置する。続いて、下部の鋼板PP1の半円状の凹部Hst1に圧送管STを設置した後、上部の鋼板PP2の下辺の半円状の凹部Hst2を圧送管STに合わせた状態で上部の鋼板PP2を下部の鋼板PP1に突き合せる。その後、上部の鋼板PP1と下部の鋼板PP2とを突き合わせた状態でその突き合せ部分を溶接することにより仕切板PPを設置する。
【0115】
図22(a),(b)は仕切板の変形例の平面図、図22(c)は図22(a),(b)の開閉板の平面図である。
【0116】
仕切板PPの構成は上記したものに限定されるものではなく種々変更可能である。例えば、図22(a)に示すように、仕切板PPの下部に人通孔が穿孔され、その人通孔Hhの斜め上方に圧送管用の貫通孔Hstが穿孔される場合もある。また、図22(b)に示すように、仕切板PPの下部に圧送管用の貫通孔Hstも人通孔Hhも穿孔される場合もある。この場合、人通孔Hhの高さ方向の途中位置に上下の鋼板PP1,PP2の境が位置している。これらの場合は、図22(c)に示すように、開閉板BPに貫通孔Heは穿孔されていない。
【0117】
次に、上記した打設空間にコンクリートを充填する方法について図19および図23を参照して説明する。
【0118】
図19に示すように、打設に際しては、圧送管STの吐出口から生コンクリートを吐出し、打設空間L3の奥部から充填する。この時、仕切板BPの全ての貫通孔Heを鋼板(図示せず)等により塞ぐ。または、仕切板BPの複数の貫通孔の総開口面積をエレメントEの排気孔VHの総開口面積より小さくする。すなわち、打設時には、打設空間L3の空気が仕切板BPの複数の貫通孔Heから排気されるのを制限し、エレメントEの排気孔VH(特に第1の排気孔VH1)から排気されるように促す。これにより、打設空間L3の奥側に生のコンクリートが優先的に充填されるようにする。
【0119】
続いて、打設空間L3の奥側に生のコンクリートが充填されたら仕切板BPの全ての貫通孔Heを開放する。これにより、打設空間L3の空気をエレメントEの第2の排気孔VH2および仕切板BPの貫通孔Heを通じて排気しながら、打設空間L3の手前側に生のコンクリートを充填する。
【0120】
以上のようにして、打設空間L3に生のコンクリートを充填し終える。この場合、圧入管STおよび仕切板PPは、コンクリート内に埋設したままとする。また、圧入管STの流入口までコンクリートを満たした状態とする。この後、さらに手前側の半分の打設空間にコンクリートを打設する場合は、圧入管STを別に配置する。
【0121】
図23は打設時の先頭の標準のエレメントの先端部の横断面図である。図23においては、3個の標準のエレメントEmが横方向に並んで配置されている箇所が例示されている。また、ここでは最も左の標準のエレメントE内に生のコンクリートCCが既に充填されており、中央の標準のエレメントEmに生のコンクリートCCを流入している様子が例示されている。なお、複数の標準のエレメントEmが縦方向に積層されている箇所については図23を左に90度回転させた状態と同じになり、下側から順に打設される。
【0122】
まず、中央の標準のエレメントEmの中空空間HSに生のコンクリートCCを流入する。すると、中央の標準のエレメントEmの中空空間HSに流れてきた生のコンクリートCCと中央の標準のエレメントEmの中空空間HSの空気とが、中央の標準のエレメントEmの第1の鋼板P1mの開口部THを通じて、中央の標準のエレメントEmの右側に隣接する連結空間CSに流れる。
【0123】
さらに、中央の標準のエレメントEmの右側に隣接する連結空間CSに流れてきた空気は、最も右の標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mに穿孔された排気孔VH(第1の排気孔VH1および第2の排気孔VH2)を通じて、最も右の標準のエレメントEmの中空空間HSに抜ける。
【0124】
このとき、本実施の形態においては、上記したように標準のエレメントEmの先端部に穿孔された第1の排気孔VH1を、エレメントEmの先端部以外に穿孔された第2の排気孔VH2より密集させた状態で設けたことにより、標準のエレメントEmの先端部において空気を効率的に逃がすことができる。これにより、標準のエレメントEmの中空空間HSの最奥部への生のコンクリートCCの充填を早めることができ、標準のエレメントEmの先端面が閉塞されている場合においても標準のエレメントEmの中空空間HSの最奥部に隙間や空気溜りが生じないように生のコンクリートCCを良好に充填することができる。したがって、図7に示したパイプルーフPRの強度を向上させることができる。
【0125】
また、標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mに穿孔された排気孔VH(第1の排気孔VH1および第2の排気孔VH2)は、上記したように、生のコンクリートCCに含まれる粗骨材によって自然に塞がれるので、連結空間CSに流れてきた生のコンクリートCCが排気孔VH(第1の排気孔VH1および第2の排気孔VH2)を通じて、打設対象の標準のエレメントEmの右側に隣接する標準のエレメントEmの中空空間HSに流れ込んでしまうこともない。
【0126】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0127】
前記実施の形態においては、エレメントによって地下構造物の全周を取り囲む全周配置型のパイプルーフを構築する場合について説明したが、これに限定されるものではなく種々適用可能であり、例えば、扇形配置型、半円形配置型、門形配置型または一文字形配置型のパイプルーフを構築する場合に適用することもできる。
【0128】
また、前記実施の形態においては、エレメントの第1の鋼板を鋼板による壁柱構造(縦縞構造)とした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、第1の鋼板を平板によって構成し、その一部に開口部を設けた構造としても良い。この場合、開口部は第1の鋼板の上部に形成する。また、第1の鋼板P1mの鋼板部PsはエレメントEmの長さ方向に対して垂直ではなく、斜めに配置してもよく、例えばトラス状に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上の説明では、本発明を線路施設用のトンネルの構築に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、地下街等、他の地下構造物の構築にも適用できる。
【符号の説明】
【0130】
PR パイプルーフ
EG エレメント群
Bb 底部ブロック
Bc 天井部ブロック
Bs 側部ブロック
E エレメント
Em 標準のエレメント
Emc 変形タイプの標準のエレメント
Eb プレストレス導入用のエレメント
P1m 第1の鋼板
Ps 鋼板部
P2m 第2の鋼板
P3m 第3の鋼板
P4m 第4の鋼板
P5b 第5の鋼板
P6b 第6の鋼板
P7b 第7の鋼板
P8b 第8の鋼板
HS 中空空間
CS 連結空間
J1,J2 継手部
TH 開口部
VH 排気孔
VH1 第1の排気孔
VH2 第2の排気孔
WH 貫通孔
CC コンクリート
W1,W2 ワイヤ
PP 仕切板
PP1.PP2 鋼板
EX エキスパンドメタル構造部
He 貫通孔
Hst 貫通孔
Hh 人通孔
BP 開閉板
L3 打設空間
FD 充填検知センサ
ST 圧送管
G 施工地
DH 発進立坑
RM 推進機
Tp トンネル予定箇所
T トンネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23