(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137476
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】パイプルーフの施工方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20230922BHJP
E21D 9/04 20060101ALI20230922BHJP
E21D 11/14 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
E21D9/06 311
E21D9/04 F
E21D11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043708
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】二井 俊次
(72)【発明者】
【氏名】生田 光輝
(72)【発明者】
【氏名】田中 寛大
(72)【発明者】
【氏名】森本 紀和子
【テーマコード(参考)】
2D054
2D155
【Fターム(参考)】
2D054AB05
2D054AC18
2D054AD05
2D054AD28
2D054AD33
2D054AD35
2D155CA01
2D155CA10
2D155KA00
2D155KC01
2D155KC06
(57)【要約】
【課題】パイプループを構成するエレメント列内にコンクリートが充填されたことを確認するための監視作業を容易にすることができる。
【解決手段】打設対象のエレメントEm1の隣りの監視用のエレメントEm2内に、集音マイクSSおよび小型カメラGSを設置し、それらに電気的に接続された配線LS1,LS2を保護管PTに内包させた状態で開口部THおよび排気孔VH1を通じて複数本のエレメントEmを横断させて、待機用のエレメントEm5内に引き込み、その配線LS1,LS2に電気的に接続された音出力装置ADおよび画僧出力装置LDを待機用のエレメントEm5内に設置した。
【選択図】
図26
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに向き合う第1の鋼板および第2の鋼板と、前記第1の鋼板および前記第2の鋼板に交差した状態で互いに向き合う第3の鋼板および第4の鋼板とにより囲まれた中空空間を有し、前記中空空間の軸方向の第1の端面と該第1の端面に対して対極に位置する第2の端面とが開口された矩形管状の複数本のエレメントを用意するエレメント用意過程と、
前記エレメントの前記第1の端面を発進立坑の側面に向けた状態で前記エレメントの前方の土砂を掘削および排出しながら前記エレメントを地中に圧入することにより、前記発進立坑の側面の計画地下構造物の周方向に沿って複数本のエレメントを並設するエレメント圧入過程と、
前記エレメント圧入過程後、前記エレメントの前記第1の端面が閉塞された状態で前記エレメントの前記中空空間にコンクリートを充填するコンクリート充填過程と、
を有し、
前記エレメント用意過程においては、前記第1の鋼板に第1の孔が穿孔され、前記第2の鋼板に第2の孔が穿孔されている前記エレメントを用意する過程を有し、
前記エレメント圧入過程においては、互いに隣接する前記エレメントの前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とが、前記第1の孔と前記第2の孔との位置を合わせた状態で対向するように、前記エレメントを設置する過程を有し、
前記コンクリート充填過程においては、
(a)前記複数本のエレメントのうちの打設対象のエレメントに対して前記周方向に隣接する監視用のエレメント内に音検出手段を設置するとともに、前記音検出手段に電気的に接続された第1の配線を第1の保護部材により内包した状態で前記第1の孔および前記第2の孔を通じて前記監視用のエレメントから前記周方向に並ぶ複数本のエレメントを横断して待機用のエレメント内に引き込み、前記待機用のエレメント内に前記第1の配線を通じて前記音検出手段に電気的に接続された音出力手段を設置する過程と、
(b)前記音検出手段を監視用のエレメント内に設置した後、前記打設対象のエレメント内にコンクリートを流入する過程と、
(c)前記(b)過程後、前記打設対象のエレメントと前記監視用のエレメントとを連通する前記第1の孔および前記第2の孔から前記監視用のエレメント内に排気される空気の排出音を前記音検出手段によって検出する過程と、
(d)前記待機用のエレメント内において、前記音検出手段によって検出された情報を前記音出力手段により監視し、前記排出音が消失したことを確認したときに前記打設対象のエレメント内にコンクリートが充填されたと判断する過程と、
(e)前記(d)過程の後、前記音検出手段および前記第1の配線を前記第1の保護部材ごと前記監視用のエレメント内から前記監視用のエレメントに対して前記周方向に隣接するエレメント内に前記第1の孔および前記第2の孔を通じて移動して設置する過程と、
を有し、
前記打設対象のエレメントと前記監視用のエレメントとを前記待機用のエレメントに向かって1列ずつずらしながら前記(b)~(e)の過程を繰り返すことを特徴とするパイプルーフの施工方法。
【請求項2】
前記第1の保護部材が可撓性を有する樹脂管またはゴム管によって構成されていることを特徴とする請求項1記載のパイプルーフの施工方法。
【請求項3】
前記コンクリート充填過程において、
前記(b)過程の前に、前記監視用のエレメント内に画像検出手段を設置するとともに、前記画像検出手段に電気的に接続された第2の配線を第2の保護部材によって内包した状態で前記第1の孔および前記第2の孔を通じて、前記監視用のエレメントから前記周方向に沿って並んで配置されている複数本のエレメントを横断して前記待機用のエレメント内に配置し、前記待機用のエレメント内に前記第2の配線を通じて前記画像検出手段に電気的に接続された画像出力手段を設置する過程と、
前記(b)過程時に、前記監視用のエレメント内に画像検出手段を設置した後、前記打設対象のエレメント内にコンクリートを流入する過程と、
前記(c)過程時に、前記打設対象のエレメントと前記監視用のエレメントとを連通する前記第2の孔を前記画像検出手段によって撮影する過程と、
前記(d)過程時に、前記待機用のエレメント内において、前記排出音の消失後、前記画像出力手段を通じて前記第2の孔から前記コンクリートが漏れていることを確認したときに前記打設対象のエレメント内にコンクリートが充填されたと再確認する過程と、
前記(e)過程時に、前記画像検出手段および前記第2の配線を前記第2の保護部材ごと前記監視用のエレメント内から前記監視用のエレメントに対して前記周方向に隣接するエレメント内に前記第1の孔および前記第2の孔を通じて移動して設置する過程と、
を有することを特徴とする請求項1または2記載のパイプルーフの施工方法。
【請求項4】
前記第2の保護部材が可撓性を有する樹脂管またはゴム管によって構成されていることを特徴とする請求項3記載のパイプルーフの施工方法。
【請求項5】
前記第1の保護部材が前記第2の保護部材を兼ねることを特徴とする請求項3または4記載のパイプルーフの施工方法。
【請求項6】
前記エレメントの圧入過程においては、前記複数本のエレメントを互いの隣接間に連結空間を介して連結させた状態で並列に設置するとともに、互いに隣接する前記エレメントの前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とを前記連結空間を介して互いに対向させた状態で設置し、
前記エレメント用意過程においては、前記第1の鋼板には、前記第1の孔を構成する孔であって、前記中空空間と前記連結空間とを連通するように形成され、前記エレメント内に前記コンクリートを流入したときに前記中空空間の前記コンクリートおよび空気を前記連結空間に流す貫通孔が形成され、前記第2の鋼板には、前記第2の孔を構成する孔であって、前記中空空間と前記連結空間とを連通するように形成され、前記エレメント内に前記コンクリートを流入したときに前記中空空間および前記連結空間の空気を逃がす排気孔が形成されており、前記排気孔は、前記第3の鋼板よりも前記第4の鋼板に近い位置に形成されているとともに、前記エレメントの前記第1の端面側に設けられた複数の第1の排気孔と、前記エレメントの前記第1の端面側以外に設けられた第2の排気孔とを有しており、前記第1の排気孔の開口面積の合計は前記第2の排気孔の1か所当たりの開口面積より大きい、前記複数本のエレメントを用意し、
前記第1の保護部材および前記第2の保護部材は、前記第1の排気孔に挿通されることを特徴とする請求項3~5のいずれか一項に記載のパイプルーフの施工方法。
【請求項7】
前記第1の排気孔は前記エレメントの長手方向に沿って予め決められた第1の距離毎に配置され、前記第2の排気孔は前記エレメントの長手方向に沿って前記第1の距離より長い第2の距離毎に配置されていることを特徴とする請求項6記載のパイプルーフの施工方法。
【請求項8】
前記第1の排気孔および前記第2の排気孔の径は前記コンクリートの粗骨材の径より小さいことを特徴とする請求項6または7記載のパイプルーフの施工方法。
【請求項9】
前記第1の排気孔および前記第2の排気孔の寸法は互いに等しいことを特徴とする請求項6~8のいずれか一項に記載のパイプルーフの施工方法。
【請求項10】
前記コンクリート充填過程においては、
前記(b)過程のコンクリートの流入過程の前に、開口面積を調整可能な第3の排気孔を有する仕切部材を用意し、前記中空空間を仕切るように前記エレメント内に前記仕切部材を設置することにより、前記エレメント内にコンクリート充填空間を形成する仕切部材設置過程と、
前記(b)過程のコンクリートの流入過程の前に、前記コンクリート充填空間にコンクリートを流入する流入管を設置する流入管設置過程と、
を有し、
前記前記コンクリート充填空間に前記流入管を通じて前記コンクリートを流入する際に、前記(d)過程において、前記エレメントの前記第1の端面側に前記コンクリートが充填されたと判断される前は、前記仕切部材の前記第3の排気孔を全て閉塞するか、または、前記第3の排気孔の開口面積を前記エレメントの前記排気孔の開口面積より小さくした状態で前記コンクリート充填空間に前記コンクリートを流入する過程と、前記(d)過程において、前記エレメントの前記第1の端面側に前記コンクリートが充填されたと判断されたら、前記第3の排気孔を開放した状態で前記コンクリート充填空間に前記コンクリートを流入する過程と、を有することを特徴とする請求項6~9のいずれか一項に記載のパイプルーフの施工方法。
【請求項11】
前記エレメントの前記第1の鋼板は、予め決められた幅の鋼板を該エレメントの長手方向に対して前記第3の鋼板と前記第4の鋼板の間を接合した縦縞構造によって構成されており、前記縦縞構造に形成された開口部は前記第1の孔を兼ねていることを特徴とする請求項6~10のいずれか一項に記載のパイプルーフの施工方法。
【請求項12】
前記エレメントの圧入過程においては、前記複数本のエレメントを並列に設置するとともに、互いに隣接する前記エレメントの前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とが互いに接触するように設置し、
前記エレメント用意過程においては、前記第1の鋼板には、前記第1の孔を構成する孔であって、前記中空空間と外部とを連通するように形成され、前記エレメント内に前記コンクリートを流入したときに前記中空空間の空気を逃がす排気孔が形成されており、前記排気孔は、前記第3の鋼板よりも前記第4の鋼板に近い位置に形成されているとともに、前記エレメントの前記第1の端面側に設けられた複数の第1の排気孔と、前記エレメントの前記第1の端面側以外に設けられた第2の排気孔とを有しており、前記第1の排気孔の開口面積の合計は前記第2の排気孔の1か所当たりの開口面積より大きい、前記複数本のエレメントを用意し、
前記第1の保護部材および前記第2の保護部材は、前記第1の排気孔に挿通されることを特徴とする請求項3~5のいずれか一項に記載のパイプルーフの施工方法。
【請求項13】
前記エレメント用意過程においては、前記第2の鋼板に、前記第2の孔として前記第1の鋼板の前記排気孔と同じ排気孔が穿孔されている、前記複数本のエレメントを用意することを特徴とする請求項12記載のパイプルーフの施工方法。
【請求項14】
前記第1の排気孔は前記エレメントの長手方向に沿って予め決められた第1の距離毎に配置され、前記第2の排気孔は前記エレメントの長手方向に沿って前記第1の距離より長い第2の距離毎に配置されていることを特徴とする請求項12または13記載のパイプルーフの施工方法。
【請求項15】
前記第1の排気孔および前記第2の排気孔の径は前記コンクリートの粗骨材の径より小さいことを特徴とする請求項12~14のいずれか一項に記載のパイプルーフの施工方法。
【請求項16】
前記第1の排気孔および前記第2の排気孔の寸法は互いに等しいことを特徴とする請求項12~15のいずれか一項に記載のパイプルーフの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプルーフの施工方法に関し、例えば、パイプルーフを構成するエレメント内へのコンクリートの充填技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市部においては、地下に道路や線路等を形成するための地下構造物を構築する際、地上に幹線道路や住宅等が密集している関係上、地盤のずれや沈下等が生じないような工法が求められている。
【0003】
パイプルーフ工法は、地盤における地下構造物の構築予定箇所の周囲に複数本のパイプを並設し、これらを連結することによりパイプルーフ(防護屋根)を構築する工法であり、地盤のずれや沈下等を抑制または防止可能な技術として都市部での地下構造物の構築に適用されている。
【0004】
このようなパイプルーフ工法については、例えば、特許文献1に開示があり、エレメントの長尺空間をこれに交差する仕切部材によって複数のコンクリート打設空間に区画し、各コンクリート打設空間をそれぞれに設置されたコンクリート圧送管を通じて打設し、圧送管を埋め殺しとすることが記載されている。また、特許文献1には、コンクリート打設時にコンクリート打設空間の空気を仕切部材に形成された空気抜き孔を通じてエレメントの手前側(発進立坑側)端面の開口部から逃がすことが記載されている。
【0005】
また、例えば、特許文献2には、1つのシース管内にグラウトを充填したときの充填状況を確認する方法であって、シース管に沿って平行に設けられた探査道にシース管に通じる検査孔を所定ピッチ毎に配置し、探査道内を移動するカメラによって検査孔を通じてシース管内のグラウトの充填状況を確認する方法が開示されている。
【0006】
また、例えば、特許文献3には、コンクリート部材内に埋設された1つのシース管内にグラウトを充填したときの充填状況を確認する方法であって、シース管の内部を観察することが可能な開口をシース管に設け、その開口を透明な閉鎖部材によって塞ぐとともに、その閉鎖部材からコンクリート部材の表面に至る観察孔を設け、その観察孔内にカメラを挿入することによりシース管内のグラウトの充填状況を確認する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-104403号公報
【特許文献2】特開2001-336251平号公報
【特許文献3】特開2004-076292平号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図31はパイプルーフを構成するエレメント内にコンクリートを充填する打設作業に際してエレメント内にコンクリートが充填されたことを確認する監視作業を示した複数本のエレメントの横断面図である。ここでは、複数本のエレメント50(50a~50c)が横方向に並んで設置されている場合が例示されている。
【0009】
互いに隣接するエレメント50,50の間の鋼板51(すなわち、エレメント50の側面の鋼板)には、互いに隣接するエレメント50,50間を連通する空気抜き孔52が穿孔されている。
【0010】
ここで、打設対象のエレメント50b内にコンクリート53が充填されたことを確認するには、打設対象のエレメント50bの隣りのエレメント50c内に監視作業者が入り、そのエレメント50cの長手方向の最奥、中央および手前の3箇所において、打設対象のエレメント50b内に流入されたコンクリート53が空気抜き孔52を通じて監視作業者が待機しているエレメント50c内に漏れてくるのを監視することにより実施している。
【0011】
この場合、監視作業者は、エレメント50内の全ての監視位置においてコンクリート53が漏れてくるまで監視しながら待機し、これを確認したら、そのエレメント50から出て、その隣りのエレメント50内に入り、同様に監視し確認するという一連の監視作業を打設範囲の複数本のエレメントに対して繰り返す。ここで、発明者が検討した施工においては、1本のエレメント50内にコンクリート53を充填するのに、例えば、1時間程度かかるので、監視作業者は1日に、例えば、5~7本のエレメント50内に出入りを繰り返している。
【0012】
しかし、エレメント50内は大人が体を屈めて入れる程度の狭い空間である上、エレメント50内にはコンクリート53を圧送するための圧送管が複数本設置されているとともに、圧送管を設置するためのアングルやエレメント50同士を固定するための複数本のワイヤ等が設置されている関係上、エレメント50内において監視作業者は体を屈めた状態で障害物を避けるように体をよじらせながら移動しなければならず非常に移動し難い。しかも、発明者が検討したエレメント50は、その全長が長い上、上記したように1日に5~7本のエレメント50内に出入りするので、エレメント50内にコンクリート53が充填されたことを確認するための監視作業は時間と労力とがかかる面倒な作業となっている、という課題がある。
【0013】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、パイプループを構成するエレメント列内にコンクリートが充填されたことを確認するための監視作業を容易にすることを目的とする。
【0014】
また、本発明は、パイプループを構成するエレメント列内にコンクリートが充填されたことを確認するための監視作業の時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、互いに向き合う第1の鋼板および第2の鋼板と、前記第1の鋼板および前記第2の鋼板に交差した状態で互いに向き合う第3の鋼板および第4の鋼板とにより囲まれた中空空間を有し、前記中空空間の軸方向の第1の端面と該第1の端面に対して対極に位置する第2の端面とが開口された矩形管状の複数本のエレメントを用意するエレメント用意過程と、前記エレメントの前記第1の端面を発進立坑の側面に向けた状態で前記エレメントの前方の土砂を掘削および排出しながら前記エレメントを地中に圧入することにより、前記発進立坑の側面の計画地下構造物の周方向に沿って複数本のエレメントを並設するエレメント圧入過程と、前記エレメント圧入過程後、前記エレメントの前記第1の端面が閉塞された状態で前記エレメントの前記中空空間にコンクリートを充填するコンクリート充填過程と、を有し、前記エレメント用意過程においては、前記第1の鋼板に第1の孔が穿孔され、前記第2の鋼板に第2の孔が穿孔されている前記エレメントを用意する過程を有し、前記エレメント圧入過程においては、互いに隣接する前記エレメントの前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とが、前記第1の孔と前記第2の孔との位置を合わせした状態で対向するように、前記エレメントを設置する過程を有し、前記コンクリート充填過程においては、(a)前記複数本のエレメントのうちの打設対象のエレメントに対して前記周方向に隣接する監視用のエレメント内に音検出手段を設置するとともに、前記音検出手段に電気的に接続された第1の配線を第1の保護部材により内包した状態で前記第1の孔および前記第2の孔を通じて前記監視用のエレメントから前記周方向に並ぶ複数本のエレメントを横断して待機用のエレメント内に引き込み、前記待機用のエレメント内に前記第1の配線を通じて前記音検出手段に電気的に接続された音出力手段を設置する過程と、(b)前記音検出手段を監視用のエレメント内に設置した後、前記打設対象のエレメント内にコンクリートを流入する過程と、(c)前記(b)過程後、前記打設対象のエレメントと前記監視用のエレメントとを連通する前記第1の孔および前記第2の孔から前記監視用のエレメント内に排気される空気の排出音を前記音検出手段によって検出する過程と、(d)前記待機用のエレメント内において、前記音検出手段によって検出された情報を前記音出力手段により監視し、前記排出音が消失したことを確認したときに前記打設対象のエレメント内にコンクリートが充填されたと判断する過程と、(e)前記(d)過程の後、前記音検出手段および前記第1の配線を前記第1の保護部材ごと前記監視用のエレメント内から前記監視用のエレメントに対して前記周方向に隣接するエレメント内に前記第1の孔および前記第2の孔を通じて移動して設置する過程と、を有し、前記打設対象のエレメントと前記監視用のエレメントとを前記待機用のエレメントに向かって1列ずつずらしながら前記(b)~(e)の過程を繰り返すことを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項1に記載の発明において、前記第1の保護部材が可撓性を有する樹脂管またはゴム管によって構成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項1または2に記載の発明において、前記コンクリート充填過程において、前記(b)過程の前に、前記監視用のエレメント内に画像検出手段を設置するとともに、前記画像検出手段に電気的に接続された第2の配線を第2の保護部材によって内包した状態で前記第1の孔および前記第2の孔を通じて、前記監視用のエレメントから前記周方向に沿って並んで配置されている複数本のエレメントを横断して前記待機用のエレメント内に配置し、前記待機用のエレメント内に前記第2の配線を通じて前記画像検出手段に電気的に接続された画像出力手段を設置する過程と、前記(b)過程時に、前記監視用のエレメント内に画像検出手段を設置した後、前記打設対象のエレメント内にコンクリートを流入する過程と、前記(c)過程時に、前記打設対象のエレメントと前記監視用のエレメントとを連通する前記第2の孔を前記画像検出手段によって撮影する過程と、前記(d)過程時に、前記待機用のエレメント内において、前記排出音の消失後、前記画像出力手段を通じて前記第2の孔から前記コンクリートが漏れていることを確認したときに前記打設対象のエレメント内にコンクリートが充填されたと再確認する過程と、前記(e)過程時に、前記画像検出手段および前記第2の配線を前記第2の保護部材ごと前記監視用のエレメント内から前記監視用のエレメントに対して前記周方向に隣接するエレメント内に前記第1の孔および前記第2の孔を通じて移動して設置する過程と、を有することを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項3に記載の発明において、前記第2の保護部材が可撓性を有する樹脂管またはゴム管によって構成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項3または4に記載の発明において、前記第1の保護部材が前記第2の保護部材を兼ねることを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項3~5のいずれか一項に記載の発明において、前記エレメントの圧入過程においては、前記複数本のエレメントを互いの隣接間に連結空間を介して連結させた状態で並列に設置するとともに、互いに隣接する前記エレメントの前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とを前記連結空間を介して互いに対向させた状態で設置し、前記エレメント用意過程においては、前記第1の鋼板には、前記第1の孔を構成する孔であって、前記中空空間と前記連結空間とを連通するように形成され、前記エレメント内に前記コンクリートを流入したときに前記中空空間の前記コンクリートおよび空気を前記連結空間に流す貫通孔が形成され、前記第2の鋼板には、前記第2の孔を構成する孔であって、前記中空空間と前記連結空間とを連通するように形成され、前記エレメント内に前記コンクリートを流入したときに前記中空空間および前記連結空間の空気を逃がす排気孔が形成されており、前記排気孔は、前記第3の鋼板よりも前記第4の鋼板に近い位置に形成されているとともに、前記エレメントの前記第1の端面側に設けられた複数の第1の排気孔と、前記エレメントの前記第1の端面側以外に設けられた第2の排気孔とを有しており、前記第1の排気孔の開口面積の合計は前記第2の排気孔の1か所当たりの開口面積より大きい、前記複数本のエレメントを用意し、前記第1の保護部材および前記第2の保護部材は、前記第1の排気孔に挿通されることを特徴とする。
【0021】
請求項7に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項6に記載の発明において、前記第1の排気孔は前記エレメントの長手方向に沿って予め決められた第1の距離毎に配置され、前記第2の排気孔は前記エレメントの長手方向に沿って前記第1の距離より長い第2の距離毎に配置されていることを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項6または7に記載の発明において、前記第1の排気孔および前記第2の排気孔の径は前記コンクリートの粗骨材の径より小さいことを特徴とする。
【0023】
請求項9に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項6~8のいずれか一項に記載の発明において、前記第1の排気孔および前記第2の排気孔の寸法は互いに等しいことを特徴とする。
【0024】
請求項10に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項6~9のいずれか一項に記載の発明において、前記コンクリート充填過程においては、前記(b)過程のコンクリートの流入過程の前に、開口面積を調整可能な第3の排気孔を有する仕切部材を用意し、前記中空空間を仕切るように前記エレメント内に前記仕切部材を設置することにより、前記エレメント内にコンクリート充填空間を形成する仕切部材設置過程と、前記(b)過程のコンクリートの流入過程の前に、前記コンクリート充填空間にコンクリートを流入する流入管を設置する流入管設置過程と、を有し、前記前記コンクリート充填空間に前記流入管を通じて前記コンクリートを流入する際に、前記(d)過程において、前記エレメントの前記第1の端面側に前記コンクリートが充填されたと判断される前は、前記仕切部材の前記第3の排気孔を全て閉塞するか、または、前記第3の排気孔の開口面積を前記エレメントの前記排気孔の開口面積より小さくした状態で前記コンクリート充填空間に前記コンクリートを流入する過程と、前記(d)過程において、前記エレメントの前記第1の端面側に前記コンクリートが充填されたと判断されたら、前記第3の排気孔を開放した状態で前記コンクリート充填空間に前記コンクリートを流入する過程と、を有することを特徴とする。
【0025】
請求項11に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項6~10のいずれか一項に記載の発明において、前記エレメントの前記第1の鋼板は、予め決められた幅の鋼板を該エレメントの長手方向に対して前記第3の鋼板と前記第4の鋼板の間を垂直に接合した縦縞構造によって構成されており、前記縦縞構造に形成された開口部は前記第1の孔を兼ねていることを特徴とする。
【0026】
請求項12に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項3~5のいずれか一項に記載の発明において、前記エレメントの圧入過程においては、前記複数本のエレメントを並列に設置するとともに、互いに隣接する前記エレメントの前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とが互いに接触するように設置し、前記エレメント用意過程においては、前記第1の鋼板には、前記第1の孔を構成する孔であって、前記中空空間と外部とを連通するように形成され、前記エレメント内に前記コンクリートを流入したときに前記中空空間の空気を逃がす排気孔が形成されており、前記排気孔は、前記第3の鋼板よりも前記第4の鋼板に近い位置に形成されているとともに、前記エレメントの前記第1の端面側に設けられた複数の第1の排気孔と、前記エレメントの前記第1の端面側以外に設けられた第2の排気孔とを有しており、前記第1の排気孔の開口面積の合計は前記第2の排気孔の1か所当たりの開口面積より大きい、前記複数本のエレメントを用意し、前記第1の保護部材および前記第2の保護部材は、前記第1の排気孔に挿通されることを特徴とする。
【0027】
請求項13に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項12に記載の発明において、前記エレメント用意過程においては、前記第2の鋼板に、前記第2の孔として前記第1の鋼板の前記排気孔と同じ排気孔が穿孔されている、前記複数本のエレメントを用意することを特徴とする。
【0028】
請求項14に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項12または13に記載の発明において、前記第1の排気孔は前記エレメントの長手方向に沿って予め決められた第1の距離毎に配置され、前記第2の排気孔は前記エレメントの長手方向に沿って前記第1の距離より長い第2の距離毎に配置されていることを特徴とする。
【0029】
請求項15に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項12~14のいずれか一項に記載の発明において、前記第1の排気孔および前記第2の排気孔の径は前記コンクリートの粗骨材の径より小さいことを特徴とする。
【0030】
請求項16に記載の本発明のパイプルーフの施工方法は、上記請求項12~15のいずれか一項に記載の発明において、前記第1の排気孔および前記第2の排気孔の寸法は互いに等しいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、パイプループを構成するエレメント列内にコンクリートが充填されたことを確認するための監視作業を容易にすることが可能となる。
【0032】
また、本発明によれば、パイプループを構成するエレメント列内にコンクリートが充填されたことを確認するための監視作業の時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施の形態であるパイプルーフの施工地の要部断面である。
【
図2】エレメント内の土砂を排出した後の発進立坑の要部側面図である。
【
図3】
図2のパイプルーフ施工地の要部断面図である。
【
図4】エレメントを固定するワイヤを設置した後の発進立坑の要部側面図である。
【
図5】エレメント内にコンクリートを充填した後の発進立坑の要部側面図である。
【
図6】
図6のパイプルーフ施工地の要部断面図である。
【
図7】トンネル構築後の発進立坑の要部側面図である。
【
図8】
図7のパイプルーフ施工地の要部断面図である。
【
図9】本発明の一実施の形態であるパイプルーフを構成するエレメント群の正面図である。
【
図11】(a)は先頭の標準のエレメントの第1の鋼板を
図10の矢印A1の方向から見た平面図、(b)は先頭の標準のエレメントの第2の鋼板を
図10の矢印A2の方向から見た平面図である。
【
図12】(a)は先頭の標準のエレメントの第3の鋼板を
図10の矢印A3の方向から見た平面図、(b)は先頭の標準のエレメントの第4の鋼板を
図10の矢印A4の方向から見た平面図である。
【
図13】(a)は後続の標準のエレメントの第1の鋼板を
図10の矢印A1の方向から見た平面図、(b)は後続の標準のエレメントの第2の鋼板を
図10の矢印A2の方向から見た平面図である。
【
図14】標準のエレメント同士の連結状態を示すエレメントの正面図である。
【
図15】プレストレス導入用のエレメントの正面図である。
【
図16】(a)はプレストレス導入用のエレメントの第5の鋼板を
図15の矢印A1の方向から見た平面図、(b)はプレストレス導入用のエレメントの第7の鋼板P7bを
図15の矢印A5の方向から見た平面図である。
【
図17】(a)はプレストレス導入用のエレメントの第8の鋼板を
図15の矢印A3の方向から見た平面図、(b)はプレストレス導入用のエレメントの第6の鋼板を
図15の矢印A6の方向から見た平面図である。
【
図18】プレストレス導入用のエレメントと変形タイプの標準のエレメントおよび標準のエレメントとの連結状態を示すエレメントの正面図である。
【
図20】(a)は仕切板の一例の平面図、(b)は
図20(a)の仕切板を構成する開閉板を外した状態を示した仕切板の平面図、(c)は
図20(a)の仕切板を構成する開閉板の平面図である。
【
図21】(a)は
図20(b)のY-Y線の断面図、(b)は
図20の仕切板を分解して示した平面図である。
【
図22】(a),(b)は仕切板の変形例の平面図、(c)は
図22(a),(b)の開閉板の平面図である。
【
図23】打設時の先頭の標準のエレメントの先端部の横断面図である。
【
図24】(a)は監視用のエレメント内において生じる排気音を監視する音監視装置の平面図、(b)は監視用のエレメント内において空気が排出される排気孔の状態を監視する画像監視装置の平面図である。
【
図25】
図9の天井部ブロックにおける一部の複数本のエレメントの横断面図である。
【
図26】
図24に示した音監視装置および画像監視装置を設置した後の
図25に示した複数本のエレメントの横断面図である。
【
図27】打設時における
図25に示した複数本のエレメントの横断面図である。
【
図28】(a)は打設後の
図25に示した複数本のエレメントの要部拡大横断面図、(b)は集音マイクおよび小型カメラの移動後の
図25の複数本のエレメントの要部拡大横断面図である。
【
図30】(a)は第2の実施の形態において
図24に示した音監視装置および画像監視装置を設置した後の複数本のエレメントの横断面図、(b)は
図30(a)のエレメントを構成する第1の鋼板および第2の鋼板の変形例における先端部の要部拡大平面図、(c)は
図30(a)のエレメントを構成する第1の鋼板および第2の鋼板の変形例における中央部の要部拡大平面図である。
【
図31】パイプルーフを構成するエレメント内にコンクリートを充填する打設作業に際してエレメント内にコンクリートが充填されたことを確認する監視作業を示した複数本のエレメントの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0035】
(第1の実施の形態)
【0036】
本実施の形態のパイプルーフの施工方法の一例について
図1~
図8を参照して説明する。なお、ここでは、例えば、線路施設用のトンネル(地下構造物)を地下に構築する場合に本実施の形態のパイプルーフの施工方法を適用した場合について説明する。
【0037】
図1は本実施の形態のパイプルーフの施工地の要部断面である。
【0038】
まず、パイプルーフの施工地Gに発進立坑DHを構築する。発進立坑DHの深さは、例えば、40~50mである。続いて、発進立坑DH内に推進機RMおよび複数本のエレメントEを運び込む。エレメントEは、パイプルーフを構成するための矩形長尺状の鋼管により形成されている。なお、エレメントEについては後ほど説明する。
【0039】
その後、推進機RMにエレメントEを設置する。この時、エレメントEの姿勢が水平になるように設置するとともに、エレメントEの長手方向(軸方向)の先端面(第1の端面)が発進立坑DHの側面に対向するように設置する。その後、推進機RMによってエレメントEを発進立坑DHの側面からエレメントEの前方の土砂を掘削および排除しながら地中に向かって圧入する。
【0040】
図2はエレメント圧入過程後の発進立坑の要部側面図、
図3は
図2のパイプルーフ施工地の要部断面図である。なお、
図2は側面図であるが土砂にハッチングを付している。
【0041】
図2に示すように、発進立坑DHの側面には、例えば、複数のエレメントEがトンネル予定箇所(計画地下構造物)Tpの全域を取り囲むようにトンネル予定箇所Tpの外周に沿って並設されている。互いに隣接するエレメントE,Eは、それらの間に連結空間CSを介して連結されている。なお、エレメントEの連結状態については後ほど説明する。
【0042】
また、
図3に示すように、各エレメント圧入箇所(エレメント列)には、複数本のエレメントEが直列に圧入されている。なお、
図3においては図面を簡単化するため3本のエレメントEを図示しているが、実際には3本以上のエレメントEが圧入されている。
【0043】
各エレメント圧入箇所において直列に配置された複数本のエレメントEの全長(後述の打設全長)は、例えば、50000~100000mmである。
【0044】
また、
図2および
図3に示すように、各エレメントEおよび連結空間CSの土砂は掘削機(図示せず)および手作業によって排出されている。ただし、本実施の形態においては、土砂排出後においても各エレメント圧入箇所の先頭のエレメントEの先端面(第1の端面)は土砂によって閉塞されている。
【0045】
図4はエレメントを固定するワイヤを設置した後の発進立坑の要部側面図である。なお、
図4は側面図であるが土砂にハッチングを付している。
【0046】
各エレメントEおよび連結空間CSの土砂を除去した後、縦横方向に配置された複数本のエレメントE同士を鋼製のワイヤW1,W2によって固定する。ワイヤW1は、縦方向に並ぶ複数本のエレメントEおよび連結空間CSを貫通して上下端に位置する角部のエレメントE内において張力を付与された状態で固定されている。また、ワイヤW2は、横方向に並ぶ複数本のエレメントEおよび連結空間CSを貫通して左右端に位置する角部のエレメントE内において張力を付与された状態で固定されている。ワイヤW1,W2は、エレメントEの長手方向(
図4の紙面に直交する方向)に沿って予め決められた距離毎に設けられている。
【0047】
図5はエレメント内にコンクリートを充填した後の発進立坑の要部側面図、
図6は
図5のパイプルーフ施工地の要部断面図である。なお、
図5は側面図であるが図面を見易くするため土砂およびコンクリートCにハッチングを付している。
【0048】
図5および
図6に示すように、複数本のエレメントE同士をワイヤW1,W2(
図4参照)にプレストレスをかけることによって接合した後、エレメントEおよび連結空間CSに生のコンクリートCCを充填する。この打設作業は、エレメント圧入箇所(エレメント列)毎に実施する。全てのエレメント圧入箇所のエレメントE内に生のコンクリートCCを充填した後、養生期間を経て生のコンクリートCCを硬化させる。これにより、パイプルーフ施工地にトンネル予定箇所Tpの全周を取り囲む全周配置型のパイプルーフPRを構築する。なお、この打設過程については後ほど説明する。
【0049】
図7はトンネル構築後の発進立坑の要部側面図、
図8は
図7のパイプルーフ施工地の要部断面図である。なお、
図7は側面図であるが図面を見易くするため土砂およびコンクリートCCにハッチングを付している。
【0050】
図7および
図8に示すように、パイプルーフPRを構築した後、トンネル予定箇所Tp(
図5等参照)の土砂を掘削機(図示せず)によって掘削した後、各種舗装を施すことによりトンネルTを構築する。
【0051】
次に、上記したパイプルーフPRおよびパイプルーフPRを構成するエレメントEの構成例について
図9~
図18を参照して説明する。
【0052】
図9は本実施の形態のパイプルーフを構成するエレメント群の正面図である。
【0053】
エレメント群EGは、例えば、全周配置型構造とされており、底部ブロックBbと、天井部ブロックBcと、2つの側部ブロックBsとの4つの打設ブロックを有している。なお、ここでは土砂を排出した後のエレメントEを示している。
【0054】
また、エレメント群EGのエレメントEは、標準のエレメントEmと、変形タイプの標準のエレメントEmcと、プレストレス導入用のエレメントEbとを有している。
【0055】
標準のエレメントEmは、エレメント群EGに最も多く配置されている主要なエレメントであり、上記4つの打設ブロックの全てに配置されている。
【0056】
変形タイプの標準のエレメントEmcは、プレストレス導入用のエレメントEbとその隣りのエレメントEとの間の連結空間CSにコンクリートを充填する上で、プレストレス導入用のエレメントEbとの整合性をとるために標準のエレメントEmの一部を変形したエレメントであり、プレストレス導入用のエレメントEbに隣接して配置されている。
【0057】
プレストレス導入用のエレメントEbは、主に、上記したワイヤW1,W2(
図4参照)にプレストレスをかけるために使用されるエレメントであり、エレメント群EGの4つの角部に配置されている。このプレストレス導入用のエレメントEbによって上記した打設ブロックが決まる。
【0058】
【0059】
標準のエレメントEmは、第1~第4の鋼板P1m~P4mによって囲まれた中空空間HSを有する矩形状の鋼管により形成されている。第1の鋼板P1mと第2の鋼板P2mとは、互いに向き合うように配置され、第3の鋼板P3mと第4の鋼板P4mとは第1、第2の鋼板P1m,P2mに交差(直交)した状態で互いに向き合うように配置されている。
【0060】
標準のエレメントEmの第1の鋼板P1mの外側面においてエレメントEmの角部近傍には、継手部J1,J1が接合されている。継手部J1,J1は、例えば、長尺平板状の鋼板からなり、その幅方向(短方向)の一端面(一方の長辺側の端面)を第1の鋼板P1mに接合させた状態で、第1の鋼板P1mの外側面から突き出すように設けられている。
【0061】
また、標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mの外側面においてエレメントEmの角部近傍には、継手部J2,J2が接合されている。継手部J2,J2は、例えば、長尺平板状の鋼板からなり、その幅方向(短方向)の一端面(一方の長辺側の端面)を第2の鋼板P2mに接合させた状態で、第2の鋼板P2mの外側面から突き出すように設けられている。
【0062】
さらに、継手部J1,J1と継手部J2,J2とは、エレメントEmの高さ方向(
図10の縦方向)の位置が継手部J1,J2の厚さ分だけずれており、後述するように、エレメントEm,Emを互いに隣接させた状態で並べて配置したときに、継手部J1,J1の内側に継手部J2,J2が配置され、互いに接した状態で重なるように設けられている。
【0063】
エレメントEmの中空空間HSの長手方向(軸方向)の先端面(第1の端面)およびその対極の後端面(第2の端面)は開口されている。特に限定されるものではないが、エレメントEmの長手方向の両端面の幅(
図10の横方向の寸法)は、例えば、1000mm、高さ(
図10の縦方向の寸法)は、例えば、800mmである。
【0064】
なお、各エレメント圧入箇所には、先頭のエレメントEと、先頭のエレメントEに後続する後続のエレメントEとがある。先頭のエレメントEは、発進立坑の側面に最初に圧入するエレメントEの他、各エレメント圧入箇所に直列に配置された複数本のエレメントEの全長の途中位置であっても打設が実施されるときに最も奥(先頭位置)に配置されるエレメントEのことである。また、後続のエレメントEは、先頭のエレメントEの後ろに直列に配置されるエレメントEのことである。先頭のエレメントEと後続のエレメントEとは正面図は同じであるが、側面図が若干異なるので、以下、エレメントEの側面図の説明においては、先頭のエレメントEと後続のエレメントEとで分けて説明する。
【0065】
図11(a)は先頭の標準のエレメントの第1の鋼板を
図10の矢印A1の方向から見た平面図、
図11(b)は先頭の標準のエレメントの第2の鋼板を
図10の矢印A2の方向から見た平面図である。
【0066】
図11(a)に示すように、先頭の標準のエレメントEmの第1の鋼板P1mは、予め決められた幅の鋼板部PsをエレメントEmの長さ方向に対して垂直に接合した構造によって構成されている。すなわち、第1の鋼板P1mには、第1の鋼板P1mの鋼板部Psと開口部(連通孔)THとがエレメントEmの長手方向に沿って交互に並んで設けられている。この鋼板部Psの面積と開口部THの開口面積とは、例えば、ほぼ同じ(すなわち、開口率50%程度)である。後述するように打設時にエレメントEm内に流れてきた生のコンクリートおよびエレメントEm内の空気は開口部THを通じて隣接する連結空間CSに流れるようになっている。
【0067】
このように第1の鋼板P1mを鋼板による壁柱構造(縦縞構造)とすることにより、エレメントEmの構造的な安定性を向上させることができ、エレメントEmの強度を確保したまま、エレメントEmを軽量化することができる。また、エレメントEm内に流れてきた生のコンクリートを滞りなく良好に連結空間CSに流すことができる。
【0068】
図11(b)に示すように、先頭の標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mは、平板状の鋼板によって形成されている。この第2の鋼板P2mには、標準のエレメントEmの中空空間HSとそれに隣接する連結空間CSとを連通するように形成され、上記した打設過程時に標準のエレメントEmの中空空間HSおよび連結空間CSの空気を逃がすための排気孔VHが穿孔されている。
【0069】
この排気孔VHは、標準のエレメントEmの先端面(第1の端面)側に設けられた第1の排気孔VH1と、標準のエレメントEmの先端面側以外に設けられた第2の排気孔VH2とを有している。第1の排気孔VH1と第2の排気孔VH2とは、第2の鋼板P2mの表裏面を貫通する貫通孔により形成されており、第3の鋼板P3mよりも第4の鋼板P4mに近い位置に標準のエレメントEmの長手方向に沿って並んで形成されている。
【0070】
第1の排気孔VH1および第2の排気孔VH2の直径は互いに等しく、例えば、30mm程度である。この第1の排気孔VH1および第2の排気孔VH2の直径は、コンクリートに含まれる粗骨材によって塞がれる程度の大きさに設定されている。すなわち、第1の排気孔VH1および第2の排気孔VH2の直径は、コンクリートに含まれる粗骨材の直径より小さい。これにより、コンクリートに含まれる粗骨材によって第1の排気孔VH1および第2の排気孔VH2が自然に塞がるので、連結空間CSに流れてきたコンクリートが排気孔VH(VH1,VH2)を通じて隣りのエレメントE内に流れ込まないようになっている。なお、ここで言う粗骨材の直径とは粒径のことであり、第1の排気孔VH1および第2の排気孔VH2の直径を、粗骨材の粒度分布の平均値より小さくしてもよいし、最も多く含まれている粗骨材の粒径より小さくしてもよいし、粗骨材の最大粒径より小さくしてもよい。
【0071】
ただし、本実施の形態においては、第1の排気孔VH1の開口面積の合計が、第2の排気孔VH2の1か所当たりの開口面積より大きくなるように設定されている。すなわち、第1の排気孔VH1は、標準のエレメントEmの先端面側に、例えば、6個密集して穿孔されている。これに対して、第2の排気孔VH2は、標準のエレメントEmの先端面側以外の箇所に、1個だけ穿孔されている。
【0072】
この第2の排気孔VH2は、設計上、第1の排気孔VH1の隣接距離より長い距離L1毎に配置されるが、第2の排気孔V2と最も後方の第1の排気孔VH1との距離は、距離L1の2倍の距離L2に設定されている。これは、標準のエレメントEmの先端部での排気が良好に行われ、その先端部にコンクリートが良好に充填されるようにするためである。なお、この例においては、標準のエレメントEmの全長が短く、第2の排気孔VH2からエレメントEmの後端部までの長さは距離L1もないので、第2の排気孔VH2は1個しか配置されていない。なお、距離L1は、例えば、1mである。
【0073】
また、先頭の標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mにおいて第3の鋼板P3mに近い位置には、複数の貫通孔WHが穿孔されている。この貫通孔WHは、上記したワイヤW1,W2を通すための孔であり、エレメントEmの長手方向に沿って予め決められた距離毎に穿孔されている。
【0074】
なお、
図11においては、先頭の標準のエレメントEmの中でも発進立坑の側面に最初に圧入するエレメントEmを例示している。この先頭のエレメントEmの場合、発進立坑の側面に圧入し易くするために、第1の鋼板P1mおよび第2の鋼板P2mの先端部がエレメントEmの長手方向に対して傾斜している。ただし、直列に配置された複数本のエレメントEmの全長の途中位置に配置された先頭の標準のエレメントEmにおいては、第1の鋼板P1mおよび第2の鋼板P2mの先端部がエレメントEmの長手方向に対して傾斜しておらず直交している。
【0075】
図12(a)は先頭の標準のエレメントの第3の鋼板を
図10の矢印A3の方向から見た平面図、
図12(b)は先頭の標準のエレメントの第4の鋼板を
図10の矢印A4の方向から見た平面図である。
【0076】
図12(a),(b)に示すように、第3の鋼板P3mおよび第4の鋼板P4mは、例えば、長尺平板状の鋼板により形成されている。上記した継手部J1,J2は、第3の鋼板P3mおよび第4の鋼板P4mの両長辺から外方に突出した状態で設けられているとともに、第3の鋼板P3mおよび第4の鋼板P4mの長手方向に沿って延在した状態で設けられている。
【0077】
図13(a)は後続の標準のエレメントの第1の鋼板を
図10の矢印A1の方向から見た平面図、
図13(b)は後続の標準のエレメントの第2の鋼板を
図10の矢印A2の方向から見た平面図である。
【0078】
図13(a)に示すように、後続の標準のエレメントEmの第1の鋼板P1mは、先頭の標準のエレメントEの第1の鋼板P1mと同様に、鋼板による壁柱構造(縦縞構造)とされている。また、
図13(b)に示すように、後続の標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mは、先頭の標準のエレメントEの第2の鋼板P2mと同様に、平板状の鋼板により形成されている。
【0079】
後続の標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mにおいて第4の鋼板P4mに近い位置には、上記した第2の排気孔VH2がエレメントEmの長手方向に沿って上記距離L1毎に穿孔されている。ただし、後続の標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mには上記した第1の排気孔VH1(
図11(b)参照)は穿孔されていない。
【0080】
また、後続の標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mにおいて第3の鋼板P3に近い位置には、上記したワイヤW1,W2(
図4参照)を通すための貫通孔WHがエレメントEmの長手方向に沿って予め決められた距離毎に穿孔されている。なお、後続の標準のエレメントEmの第3の鋼板P3mおよび第4の鋼板P4mの構成は
図10に示した第3の鋼板P3mおよび第4の鋼板P4mと同じなので説明を省略する。
【0081】
図14は標準のエレメント同士の連結状態を示すエレメントの正面図である。
【0082】
図14に示すように、互いに隣接する標準のエレメントEm,Em同士は、一方の標準のエレメントEmの継手部J1と、他方の標準のエレメントEmの継手部J2とによって、互いの隣接間に連結空間CSを介した状態で連結されている。継手部J1,J1は外側に配置され、継手部J2,J2は継手部J1,J1の内側に配置されている。継手部J1,J1と継手部J2,J2とは、互いに接触した状態で重なり合っている。また、上記したワイヤW1,W2(
図4参照)にプレストレスをかけることにより、継手部J1の先端面は対向する第2の鋼板P2mに当接され、継手部J2の先端面は対向する第1の鋼板P1mに当接されている。
【0083】
また、
図14に示すように、
図9に示したエレメント群EGの底部ブロックBbおよび天井部ブロックBc(エレメントEmが横方向に並設されている箇所)においては、互いに隣接する標準のエレメントEm,Emのうち、一方の標準のエレメントEmの第1の鋼板P1mが、連結空間CSを介して、他方の標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mに対向するように配置されているとともに、第4の鋼板P4mが天井側になり第2の鋼板P2mに穿孔された排気孔VH(第1の排気孔VH1および第2の排気孔VH2)が上部に位置するように配置されている。
【0084】
また、
図9に示したエレメント群EGの2つの側部ブロックBs(エレメントEmが縦方向に積層されている箇所)においては、上記と同様に、互いに隣接する標準のエレメントEm,Emのうち、一方の標準のエレメントEmの第1の鋼板P1mが、連結空間CSを介して、他方の標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mに対向するように配置されているとともに、
図16を左に90度回転させた場合と同様に、第1の鋼板P1mが天井側になり第1の鋼板P1mに形成された開口部THが上を向くように配置されている。また、第2の鋼板P2mは下を向くように配置され、エレメントEm内で掘削作業等を行う際の作業床となる。
【0085】
図15はプレストレス導入用のエレメントの正面図である。
【0086】
プレストレス導入用のエレメントEbは、第5~第8の鋼板P5b~P8bによって囲まれた中空空間HSを有する矩形状の鋼管により形成されている。第5の鋼板P5bと第6の鋼板P6bとは互いに向き合うように配置され、第7の鋼板P7bと第8の鋼板P8bとは第5、第6の鋼板P5b,P6bに交差(直交)した状態で互いに向き合うように配置されている。プレストレス導入用のエレメントトEbの中空空間HSの長手方向(軸方向)の先端面(第1の端面)およびその対極の後端面(第2の端面)も標準のエレメントEmと同様に開口されている。
【0087】
第5の鋼板P5bの外側面おいてエレメントEbの角部近傍には、継手部J2,J2が接合されている。また、第7の鋼板P7bの外側面においてエレメントEbの角部近傍には、継手部J2,J2が接合されている。
【0088】
図16(a)はプレストレス導入用のエレメントの第5の鋼板を
図15の矢印A1の方向から見た平面図、
図16(b)はプレストレス導入用のエレメントの第7の鋼板P7bを
図15の矢印A5の方向から見た平面図である。
【0089】
図16(a),(b)に示すように、第5の鋼板P5bおよび第7の鋼板P7bは、平板状の鋼板によって構成されている。この第5の鋼板P5bおよび第7の鋼板P7bには、上記したワイヤ挿通用の貫通孔WHが第5の鋼板P5bおよび第7の鋼板P7bの長手方向に沿って予め決められた距離毎に穿孔されているが、上記した排気孔VHは穿孔されていない。これは、プレストレス導入用のエレメントEbは、標準用のエレメントEmにコンクリートが打設された後に打設されるため、プレストレス導入用のエレメントEb内の空気が抜ける先が無いためである。このため、プレストレス導入用のエレメントEm内には、予め決められた間隔で開口を設けた、空気抜き用の管が設置される。空気抜き用の管はプレストレス導入用のエレメントEbの長手方向に対して、所定間隔で開孔を設けてもよく、複数の管を先端開口の位置が異なるように配置してもよい。
【0090】
図17(a)はプレストレス導入用のエレメントの第8の鋼板を
図15の矢印A3の方向から見た平面図、
図17(b)はプレストレス導入用のエレメントの第6の鋼板を
図15の矢印A6の方向から見た平面図である。
【0091】
図17(a),(b)に示すように、第6の鋼板P6bおよび第8の鋼板P8bは、平板状の鋼板によって構成されている。この第6の鋼板P6bおよび第8の鋼板P8bには、上記した貫通孔WHや排気孔VHは形成されていない。
【0092】
図18はプレストレス導入用のエレメントと変形タイプの標準のエレメントおよび標準のエレメントとの連結状態を示すエレメントの正面図である。
【0093】
変形タイプの標準のエレメントEmcにおいては、通常の標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mが設けられておらず、標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mの部分が第1の鋼板P1mにより構成されている。すなわち、変形タイプの標準のエレメントEmcにおいては、一対の第1の鋼板P1m,P1mが互いに向き合うように配置されている。
【0094】
これは、仮に、プレストレス導入用のエレメントEbの隣りに通常の標準のエレメントEmを配置すると、プレストレス導入用のエレメントEbに対向する面に第2の鋼板P2mが配置されてしまう結果、その通常の標準のエレメントEm内に生のコンクリートを流入したときに、その通常の標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mに阻害され、プレストレス導入用のエレメントEbとその隣りの通常の標準のエレメントEmとの間の連結空間CSに生のコンクリートが流れず、その連結空間CSが空間のまま残されてしまうことになるからである。
【0095】
これに対して、プレストレス導入用のエレメントEbの隣りに変形タイプの標準のエレメントEmcを配置した場合は、変形タイプの標準のエレメントEmc内に生のコンクリートを流入したときに、プレストレス導入用のエレメントEbとその隣りの通常の標準のエレメントEmとの間の連結空間CSに、変形タイプの標準のエレメントEmの第1の鋼板P1mの開口部THを通じて、生のコンクリートが流入されるので、その連結空間CS内にコンクリートを充填することができる。
【0096】
図9に示したエレメント群EGの角部近傍において、互いに隣接するプレストレス導入用のエレメントEbと変形タイプの標準用のエレメントEmcとは、変形タイプの標準用のエレメントEmcの第1の鋼板P1mが、連結空間CSを介して、プレストレス導入用のエレメントEbの第5の鋼板P5bに対向するように配置されている。
【0097】
また、
図9に示したエレメント群EGの上側の角部近傍において、互いに隣接するプレストレス導入用のエレメントEbと標準のエレメントEmとは、標準のエレメントEmの第1の鋼板P1mが、連結空間CSを介して、プレストレス導入用のエレメントEbの第7の鋼板P7bに対向するように配置されている。
【0098】
なお、互いに隣接するプレストレス導入用のエレメントEbと、変形タイプの標準用のエレメントEmcおよび標準のエレメントEmとの継手部J1,J2での連結状態は、
図14等で説明したのと同じなので説明を省略する。
【0099】
次に、エレメント内に生コンクリートを充填する過程について
図9および
図19~
図23を参照して説明する。
【0100】
まず、エレメントE内および連結空間CSに生コンクリートを充填する打設作業の順序について
図9を参照して説明する。打設は、エレメント群EGの圧入箇所毎に実施する。1箇所の打設時間は、例えば、1時間程度であり、1日に5~6箇所の打設を実施する。
【0101】
エレメント群EGの底部ブロックBbおよび天井部ブロックBcにおいては両角部のプレストレス導入用のエレメントEbから他方のプレストレス導入用のエレメントEbに向かって順に打設を実施する。また、エレメント群EGの両側部ブロックBsにおいては、最下部の閉合用のエレメントEcから最上部の標準のエレメントEmに向かって順に打設を実施する。そして、最後にプレストレス導入用のエレメントEbの打設を実施する。
【0102】
次に、
図19はエレメント打設空間の要部断面図である。
【0103】
上記したように複数本のエレメントEによって構成される打設空間の先端面は土砂によって塞がれている。ここで、本実施の形態においては、上記したように打設全長が、例えば、50000~100000mmあるが、これを1回の打設で打ち終えるのは長すぎるので、例えば、全長の1/2(25000~50000mm)または1/3(16000~33000mm)の位置に打設空間を区切るように仕切板(仕切部材)PPを設置することにより、1回の打設空間(コンクリート充填空間)L3を形成する。なお、ここでは打設空間L3の長さが、例えば、25000~50000mmの場合とする。
【0104】
仕切板PPは、エレメントEの開口部を塞ぐように設置される。ここでは、上記したように仕切板PPが打設全長の中央に設置されるので、打設全長は、直列に配置された2つの打設空間に分けられる。この2つの打設空間のうちの前方に位置する打設空間を打設した後、後方に位置する打設空間を打設する際には、その後方の打設空間の先端面は仕切板PPによって閉塞されているので、その後方の打設空間の先端部にも上記した排気孔VH1を有する先頭のエレメントEが配置されている。なお、仕切板PPの構成については後ほど説明する。
【0105】
打設空間L3の最奥部(すなわち、エレメントEの先端部)および中間部には、充填検知センサFDが設置されている。充填検知センサFDは、打設空間L3のセンサ設置箇所においてコンクリートが充填されたか否かを検知するセンサであり、配線(図示せず)を通じて外部の検出機器と電気的に接続されている。
【0106】
また、打設空間L3には、生のコンクリートを打設空間L3に流入するための圧送管(流入管)STが設置されている。ここで、圧送管STの吐出口を打設空間L3の最奥部に設置すれば、その奥部に生のコンクリートを確実に充填することができる。しかし、生のコンクリートを最奥部まで圧送し、かつ、手前側(流入口側)まで押し出させるようにすると、圧送用のポンプ車の能力が大きくなり過ぎてしまう。そこで、本実施の形態においては、圧送管STの吐出口を打設空間L3のほぼ中央位置に配置した。これにより、圧送用のポンプ車の負担を軽減できるので、能力の大きなポンプ車を用いる必要も無くなる。なお、距離L4は、打設空間L3の長さの半分の長さである。
【0107】
次に、
図20(a)は仕切板の一例の平面図、
図20(b)は
図20(a)の仕切板を構成する開閉板を外した状態を示した仕切板の平面図、
図20(c)は
図20(a)の仕切板を構成する開閉板の平面図、
図21(a)は
図20(b)のY-Y線の断面図、
図21(b)は
図20の仕切板を分解して示した平面図である。
【0108】
図20および
図21に示すように、仕切板PPは、例えば、平面視で四角形状の2枚の鋼板PP1,PP2を高さ方向に突き合せた状態で接合することにより形成されている。この仕切板PPには、圧送管STを通すための貫通孔Hstが穿孔されている。
【0109】
また、仕切板PPにおいて、貫通孔Hstの直上には、人通孔Hhが穿孔されている。この人通孔Hhは、作業者が打設空間L3に出入りするための通路用の孔であり、例えば、平面視で四角形状に穿孔されている。人通孔Hhは、開閉板BPの着脱によって開閉自在の状態になっている。
【0110】
開閉板BPは、ボルトBtにより着脱自在の状態で仕切板PPに取り付けられている。打設前は、仕切板PPから開閉板BPが取り外され人通孔Hhを通じて打設空間L3への出入りができるが、打設時は、仕切板PPに開閉板BPが取り付けられ人通孔Hhが塞がれる。
【0111】
さらに、本実施の形態においては、仕切板PPおよび開閉板BPの上層部にエキスパンドメタル構成部EXが設けられている。このエキスパンドメタル構成部EXには、複数の貫通孔(第3の排気孔)Heが規則的に並んで穿孔されている。エキスパンドメタル構造部EXは、複数の貫通孔Heを通じて、打設空間L3の状態を監視したり、打設空間L3の空気を外部に逃がしたりするための構造部である。エキスパンドメタル構造部EXの複数の貫通孔Heの開口面積(総面積)は、エキスパンドメタル構造部EXに鋼板(図示せず)を被せることによって調整可能とされている。なお、個々の貫通孔Heの直径は、例えば、12mmである。
【0112】
このような仕切板PP1は、例えば、以下のようにして設置する。すなわち、
図21(b)に示すように、まず、下部の鋼板PP1の上辺の半円状の凹部Hst1を上に向けた状態で下部の鋼板PP1を設置する。続いて、下部の鋼板PP1の半円状の凹部Hst1に圧送管STを設置した後、上部の鋼板PP2の下辺の半円状の凹部Hst2を圧送管STに合わせた状態で上部の鋼板PP2を下部の鋼板PP1に突き合せる。その後、上部の鋼板PP1と下部の鋼板PP2とを突き合わせた状態でその突き合せ部分を溶接することにより仕切板PPを設置する。
【0113】
図22(a),(b)は仕切板の変形例の平面図、
図22(c)は
図22(a),(b)の開閉板の平面図である。
【0114】
仕切板PPの構成は上記したものに限定されるものではなく種々変更可能である。例えば、
図22(a)に示すように、仕切板PPの下部に人通孔が穿孔され、その人通孔Hhの斜め上方に圧送管用の貫通孔Hstが穿孔される場合もある。また、
図22(b)に示すように、仕切板PPの下部に圧送管用の貫通孔Hstも人通孔Hhも穿孔される場合もある。この場合、人通孔Hhの高さ方向の途中位置に上下の鋼板PP1,PP2の境が位置している。これらの場合は、
図22(c)に示すように、開閉板BPに貫通孔Heは穿孔されていない。
【0115】
次に、上記した打設空間にコンクリートを充填する方法について
図19および
図23を参照して説明する。
【0116】
図19に示すように、打設に際しては、圧送管STの吐出口から生コンクリートを吐出し、打設空間L3の奥部から充填する。この時、仕切板BPの全ての貫通孔Heを鋼板(図示せず)等により塞ぐ。または、仕切板BPの複数の貫通孔の総開口面積をエレメントEの排気孔VHの総開口面積より小さくする。すなわち、打設時には、打設空間L3の空気が仕切板BPの複数の貫通孔Heから排気されるのを制限し、エレメントEの排気孔VH(特に第1の排気孔VH1)から排気されるように促す。これにより、打設空間L3の奥側に生のコンクリートが優先的に充填されるようにする。
【0117】
続いて、打設空間L3の奥側に生のコンクリートが充填されたら仕切板BPの全ての貫通孔Heを開放する。これにより、打設空間L3の空気をエレメントEの第2の排気孔VH2および仕切板BPの貫通孔Heを通じて排気しながら、打設空間L3の手前側に生のコンクリートを充填する。
【0118】
以上のようにして、打設空間L3に生のコンクリートを充填し終える。この場合、圧入管STおよび仕切板PPは、コンクリート内に埋設したままとする。また、圧入管STの流入口までコンクリートを満たした状態とする。この後、さらに手前側の半分の打設空間にコンクリートを打設する場合は、圧入管STを別に配置する。
【0119】
図23は打設時の先頭の標準のエレメントの先端部の横断面図である。
図23においては、3個の標準のエレメントEmが横方向に並んで配置されている箇所が例示されている。また、ここでは最も左の標準のエレメントE内に生のコンクリートCCが既に充填されており、中央の標準のエレメントEmに生のコンクリートCCを流入している様子が例示されている。なお、複数の標準のエレメントEmが縦方向に積層されている箇所については
図23を左に90度回転させた状態と同じになり、下側から順に打設される。
【0120】
まず、中央の標準のエレメントEmの中空空間HSに生のコンクリートCCを流入する。すると、中央の標準のエレメントEmの中空空間HSに流れてきた生のコンクリートCCと中央の標準のエレメントEmの中空空間HSの空気とが、中央の標準のエレメントEmの第1の鋼板P1mの開口部THを通じて、中央の標準のエレメントEmの右側に隣接する連結空間CSに流れる。
【0121】
さらに、中央の標準のエレメントEmの右側に隣接する連結空間CSに流れてきた空気は、最も右の標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mに穿孔された排気孔VH(第1の排気孔VH1および第2の排気孔VH2)を通じて、最も右の標準のエレメントEmの中空空間HSに抜ける。
【0122】
このとき、本実施の形態においては、上記したように標準のエレメントEmの先端部に穿孔された第1の排気孔VH1を、エレメントEmの先端部以外に穿孔された第2の排気孔VH2より密集させた状態で設けたことにより、標準のエレメントEmの先端部において空気を効率的に逃がすことができる。これにより、標準のエレメントEmの中空空間HSの最奥部への生のコンクリートCCの充填を早めることができ、標準のエレメントEmの先端面が閉塞されている場合においても標準のエレメントEmの中空空間HSの最奥部に隙間や空気溜りが生じないように生のコンクリートCCを良好に充填することができる。したがって、
図7に示したパイプルーフPRの強度を向上させることができる。
【0123】
また、標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mに穿孔された排気孔VH(第1の排気孔VH1および第2の排気孔VH2)は、上記したように、生のコンクリートCCに含まれる粗骨材によって自然に塞がれるので、連結空間CSに流れてきた生のコンクリートCCが排気孔VH(第1の排気孔VH1および第2の排気孔VH2)を通じて、打設対象の標準のエレメントEmの右側に隣接する標準のエレメントEmの中空空間HSに流れ込んでしまうこともない。
【0124】
次に、上記した打設空間の奥部に生コンクリートが充填されたことを判断する方法の一例について
図24~
図29を参照して説明する。
【0125】
本実施の形態においては、打設対象のエレメント内に生のコンクリートを流入したときに打設対象のエレメント内の空気が排気孔を通じて、打設対象のエレメントの隣りの監視用のエレメント内に漏れることで生じる排気音を監視し、その排気音が消失したときに、打設対象のエレメント内の奥部に生のコンクリートが充填されたと判断している。
図24(a)は監視用のエレメント内において生じる排気音を監視する音監視装置の平面図である。
【0126】
音監視装置SDは、監視用のエレメント内において生じる排気音を監視する装置であり、排気音を検出する集音マイク(音検出手段)SSと、集音マイクSSにより検出された音検出信号を作業者が認識できる状態にして出力する音出力装置ADと、これらを電気的に接続する配線LS1とを備えている。このように、簡易な構成の音監視装置SDを用いることにより、施工コストを低減することができる。
【0127】
音出力装置ADは、例えば、集音マイクSSにより検出された検出信号を可聴範囲の音波として音量調節自在の状態で出力する音響装置である。ただし、音出力装置ADは可聴範囲の音波を出力するものに限定されるものではなく、例えば、排気音の音圧レベルをLED(Light Emitting Diode)等を用いた発光色の違いで表示する構成にしてもよい。例えば、排気音が通常の音圧レベルのときは青色、排気音が予め決められた音圧レベルに減衰したら黄色、さらに排気音の音圧レベルが消失レベルに達したら赤色に発光させる。これにより、排気音の消失をより明確に認識することができるので、コンクリートが充填されたことを高い再現性で判断することができる。
【0128】
なお、音出力装置ADは、可聴範囲の音波を出力する構成と発光色を表示する構成とを併用した構成としてもよいし、発光色を表示する構成のみとしてもよい。また、音出力装置ADに液晶画面を設けることにより発光色に代えて文字等により排気音の状況を表現してもよい。
【0129】
また、本実施の形態においては、上記した音監視装置SDによる判断に加えて、打設対象のエレメント内に生のコンクリートを流入した時に上記した監視用のエレメント内の排気孔の画像を監視し、その排気孔を通じて打設対象のエレメント内の生のコンクリートが監視用のエレメント内に漏れてきたときに、打設対象のエレメント内にコンクリートが充填されたと判断している。
図24(b)は監視用のエレメント内において空気が排出される排気孔の状態を監視する画像監視装置の平面図である。
【0130】
画像監視装置GDは、監視用のエレメント内において打設対象のエレメント内から空気が漏れてくる排気孔の状態を監視する装置であり、その排気孔を撮影する小型カメラ(画像検出手段)GSと、小型カメラGSにより撮影された画像を液晶画面等に表示する画像出力装置LDと、これらを電気的に接続する配線LS2とを備えている。このように、高価な下水調整ロボットや工業用のボアホールカメラを用いることなく簡易な構成の画像監視装置GDを用いることにより、施工コストを低減することができる。
【0131】
ここでは、音出力装置ADと画像出力装置LDとを別体とした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、音出力装置ADと画像出力装置LDとを一体としてもよい。これにより、監視装置を小型軽量化することができる。
【0132】
次に、
図25は
図11の天井部ブロックにおける一部の複数本のエレメントの横断面図である。
【0133】
エレメントEm1~Em4は、打設範囲内のエレメントである。このうち、最も左のエレメントEm1は、最初に生のコンクリートが充填される打設対象のエレメントである。この打設対象のエレメントEm1の右隣りのエレメントEm2は、打設対象のエレメントEm1に生コンクリートを充填しているときに充填状況を監視する監視用のエレメントである。また、この監視用のエレメントEm2から複数本のエレメントEm3,Em4を介して離れた打設範囲外に配置されているエレメントEm5は、監視作業者が待機する待機用のエレメントである。監視作業者は、充填状況を監視し確認する作業者であり、待機用のエレメントEm5内に、例えば、1人だけ待機している。
【0134】
次に、
図26は
図24に示した音監視装置および画像監視装置を設置した後の
図25に示した複数本のエレメントの横断面図である。
【0135】
まず、長尺円筒状の可撓性を有する2本の保護管(第1の保護部材、第2の保護部材)PT,PTを用意する。保護管PTは、例えば、ポリエチレン等のような樹脂により構成されている。保護管PTの構成材料をポリエチレンとすることにより、保護管PTを軽量化することができるので監視作業者の負担を軽減することができる。また、耐腐食性や耐摩耗性の高いポリエチレンを用いることにより、保護管PTの寿命を向上させることができる。さらに、金属によって構成する場合に比べてコストを低減することができる。ただし、保護管PTの構成材料は樹脂に限定されるものではなく、例えば、ゴムにより構成してもよい。この場合も樹脂を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
【0136】
続いて、1本の保護管PT内に音監視装置SDの配線LS1を挿通させた状態で、その保護管PTの一端面側に集音マイクSSを配置するとともに、その保護管PTの長手方向の他端面側に音出力装置ADを配置する。また、もう1本の保護管PT内に画像監視装置GDの配線LS2を挿通させた状態で、その保護管PTの長手方向の一端面側に小型カメラGSを配置するとともに、その保護管PTの長手方向の他端面側に画像出力装置LDを配置する。
【0137】
次いで、待機用のエレメントEm5内において、集音マイクSSおよび小型マイクGSを頭にしてそれぞれの保護管PT,PTを待機用のエレメントEm5の排気孔VH1に挿入する。このとき、エレメントEm5の複数個の排気孔VH1のうち、エレメントEm5の最も先端側にある2つの排気孔VH1,VH1に2本の保護管PT,PTを挿入する。
【0138】
続いて、2本の保護管PT,PTを複数本のエレメントEm3,Em4の排気孔VH1および開口部THを通じて監視用のエレメントEm2内まで入れ込むことにより、監視用のエレメントEm2内に集音マイクSSおよび小型カメラGSを設置する。このときも、エレメントEm2~Em4の複数個の排気孔VH1のうち、エレメントEm2~Em4の最も先端側にある2つの排気孔VH1,VH1に2本の保護管PT,PTを挿入する。
【0139】
このようにして、
図24(a)に示した音監視装置SDの集音マイクSSを監視用のエレメントEm2内に設置するとともに、集音マイクSSに電気的に接続された配線LS1を保護管PT内に内包させた状態で排気孔VH1および開口部THを通じて複数本のエレメントEm3,Em4を横断させて、その配線LS1の他端に電気的に接続された音出力装置ADを待機用のエレメントEm5内に設置する。
【0140】
また、
図24(b)に示した画像監視装置GDの小型カメラGSを監視用のエレメントEm2内に設置するとともに、小型カメラGSに電気的に接続された配線LS2を保護管PT内に内包させた状態で排気孔VH1および開口部THを通じて複数本のエレメントEm3,Em4を横断させて、その配線LS2の他端に電気的に接続された画像出力装置LDを待機用のエレメントEm5内に設置する。
【0141】
次に、
図27は打設時における
図25に示した複数本のエレメントの横断面図である。
【0142】
まず、音監視装置SDおよび画像監視装置GDの電源をオンすることにより、集音マイクSSおよび小型カメラGSの動作を開始する。続いて、打設対象のエレメントEm1内に生のコンクリートCCを流入して打設を開始すると、打設対象のエレメントEm1内の空気が、排気孔VHを通じて隣りの監視用のエレメントEm2内に漏れるときに排気音が生じる。
【0143】
このとき、待機用のエレメントEm5内の監視作業者は、主に監視用のエレメントEm2内の集音マイクSSにより集音され音出力装置ADから出力される排気音を監視するとともに、補助的に監視用のエレメントEm2内の小型カメラGSにより撮影され画像出力装置LDから出力される排気孔VH1の様子を監視する。すなわち、監視作業者は、監視用のエレメントEm2から離れた待機用のエレメントEm5内において、打設対象のエレメントEm1内の奥部での生のコンクリートCCの充填状況を音監視装置SDおよび画像監視装置GDにより監視する。そして、排気音が消失したら打設対象のエレメントEm1の奥部に生のコンクリートCCが充填されたと判断する。また、排気音が消失したら画像出力装置LDを通じて映し出された排気孔VH1の画像を確認する。このとき、その排気孔VH1から生のコンクリートCCが漏れていたら打設対象のエレメントEm1内の奥部に生のコンクリートCCが充填されたことを再度確認する。
【0144】
集音マイクSSからの検出情報のみによってコンクリートの充填完了を確認することもできるが、集音マイクSSと小型カメラGSとの両方で得られた情報に基づいて打設対象のエレメントEm1内の奥部に生のコンクリートCCが充填されたことを判断することにより、充填完了の判断をより確実なものにすることができる。このため、その充填完了の判断の信頼性を向上させることができる。
【0145】
また、上記した充填検知センサFD(
図19参照)からの情報を参照することにより、打設対象のエレメントEm1内の奥部に生のコンクリートCCが充填されたことを再度確認してもよい。これにより、充填完了の判断の信頼性をさらに向上させることができる。
【0146】
ただし、充填検知センサFDは高価である上、エレメント列の手前側から奥までの長い距離の配線を引くので配線断線のリスクがあり、また、充填検知センサFDがコンクリートの流れに押されて決められた位置から移動してしまう場合があり、検出結果の信頼性が低くなる場合がある。これに対して、本実施の形態においては、音監視装置ADも画像監視装置GDも低価格である上、配線LS1,LS2が保護管PTによって内包され保護されているので配線断線のリスクないし、また、集音マイクSSや小型カメラGSの設置位置が決められた位置からずれてしまうこともなく、検出結果の信頼性を向上させることができるので、必ずしも充填検知センサFDを使用しないでもよい。その場合は、施工コストを低減することができる。
【0147】
次に、
図28(a)は打設後の
図25に示した複数本のエレメントの要部拡大横断面図、
図28(b)は集音マイクおよび小型カメラの移動後の
図25の複数本のエレメントの要部拡大横断面図である。
【0148】
図28(a)に示すように、上記したように打設対象のエレメントEm1内の奥部に生のコンクリートCCが充填されたと判断したら、待機用のエレメントEm5(
図27等参照)内において監視用のエレメントEm2内の集音マイクSSおよび小型カメラGSを保護管PTごと引っ張り、
図28(b)に示すように、監視用のエレメントEm2の右隣りのエレメントEm3内に集音マイクSSおよび小型カメラGSを移動させて予め決められた位置に設置する。
【0149】
この集音マイクSSおよび小型カメラGSの移動に際しては、配線LS1,LS2を保護管PTによって保護することができるので配線LS1,LS2の断線不良を防止することができる。また、集音マイクSSおよび小型カメラGSを保護管PTによってスムーズに移動させることができる。さらに、保護管PTの表面に引き抜き距離(1回の移動距離)毎に印しを記しておくことにより、集音マイクSSおよび小型カメラGSの移動位置を容易に設定することができる。
【0150】
なお、待機用のエレメントEm5(
図27等参照)内においては、引き出した保護管PTを丸めて束ねた状態で収容する。これにより、待機用のエレメントEm5内に保護管PTを良好に収容することができるとともに、音出力装置ADおよび画像出力装置LDを定位置に設定しておくことができる。また、引き出した保護管PTを巻取リール等によって巻き取るようにしてもよい。これにより保護管PTの引き抜き作業を容易にすることができる。
【0151】
次に、
図29は
図28に続く打設時の
図25に示した複数本のエレメントの要部拡大横断面図である。
【0152】
続く打設過程においては、エレメントEm2を打設対象のエレメントとし、その右隣りのエレメントEm3を監視用のエレメントとする。そして、上記と同様に、打設対象のエレメントEm2に生のコンクリートCCを流入し、その充填状況を監視用のエレメントEm3内に設置された集音マイクSSおよび小型カメラGSで検出し、その検出情報を待機用のエレメントEm5(
図25等参照)内において監視する。そして、上記と同様に、打設対象のエレメントEm2内の奥部に生のコンクリートCCが充填されたと判断したら、集音マイクSSおよび小型カメラGSを監視用のエレメントEm3内から右隣りのエレメントEm4内に移動させて予め決められた位置に設置する。
【0153】
このように打設対象のエレメントEmと監視用のエレメントEmとを待機用のエレメントEm5(
図25等参照)に向かって1列ずつずらしながら生のコンクリートの流入、監視および検出部(集音マイクSSおよび小型カメラGS)の移動・設置の過程を繰り返すことにより、全てのエレメントEm内に生のコンクリートCCを充填してパイプルーフPR(
図7等参照)を完成させる。
【0154】
図31に示したように、従来は発明者が検討した監視作業において、打設対象のエレメント50b内にコンクリート53が充填されたことを確認するには、打設対象のエレメント50bの隣りのエレメント50c内に監視作業者が入り、そのエレメント50cの長手方向の最奥、中央および手前の3箇所において、打設対象のエレメント50b内に流入されたコンクリート53が空気抜き孔52を通じて監視作業者が待機しているエレメント50c内に漏れてくるのを監視することにより実施している。
【0155】
この場合、監視作業者は、エレメント50内の全ての監視位置においてコンクリート53が漏れてくるまで監視しながら待機し、これを確認したら、そのエレメント50内から出て、その隣りのエレメント50内に入り、同様に監視し確認するという一連の監視作業を打設範囲の複数本のエレメントに対して繰り返す。ここで、発明者が検討した施工においては、1本のエレメント50内にコンクリート53を充填するのに、例えば、1時間程度かかるので、監視作業者は1日に、例えば、5~7本のエレメント50内に出入りを繰り返している。
【0156】
しかし、エレメント50内は大人が体を屈めて入れる程度の狭い空間である上、エレメント50内にはコンクリート53を圧送するための圧送管が複数本設置されているとともに、圧送管を設置するためのアングルやエレメント50同士を固定するための複数本のワイヤ等が設置されている関係上、エレメント50内において監視作業者は体を屈めた状態で障害物を避けて体をよじらせながら移動しなければならず非常に移動し難い。しかも、発明者が検討したエレメント50は、その全長が極めて長い上、上記したように1日に5~7本のエレメント50内に出入りするので、エレメント50内にコンクリート53が充填されたことを確認するための監視作業は時間と労力とがかかる面倒な作業となっている。
【0157】
これに対して本実施の形態においては、監視作業者は待機用のエレメントEm5(
図25等参照)内において、複数本のエレメントEm内でのコンクリートの充填状況を監視し、充填完了を判断することができる。すなわち、監視作業のために、障害物が多く狭い複数本のエレメントE内に出入りし、長い距離を移動する必要が無くなる。このため、エレメントEm内にコンクリートが充填されたことを確認するための監視作業を容易にすることができる。また、エレメントEm内にコンクリートが充填されたことを確認するための監視作業の時間を短縮することができる。なお、打設範囲内において集音マイクSSや小型カメラGSを複数本のエレメントEmを横断して設置するため、打設作業前に作業者が全てのエレメント内に入ることになるが、打設準備のための他の作業の一環として行うので、監視作業者の負担は大幅に軽くなる。
【0158】
(第2の実施の形態)
【0159】
図30(a)は第2の実施の形態において
図24に示した音監視装置および画像監視装置を設置した後の複数本のエレメントの横断面図、
図30(b)は
図30(a)のエレメントを構成する第1の鋼板および第2の鋼板の変形例における先端部の要部拡大平面図、
図30(c)は
図30(a)のエレメントを構成する第1の鋼板および第2の鋼板の変形例における中央部の要部拡大平面図である。
【0160】
本実施の形態においては、互いに隣接するエレメントE,Eの間に連結空間を介さずにエレメントE,E同士が直接接触した状態で並列に設置されている。エレメントEは、互いに向き合うように配置された第1の鋼板P1および第2の鋼板P2と、第1の鋼板P1および第2の鋼板P2に交差した状態で互いに向き合うように配置された第3の鋼板P3および第4の鋼板P4とで囲まれた中空空間HSを有する矩形長尺状の鋼管により形成されている。
【0161】
第1の鋼板P1には、
図11(b)に示した標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mと同様に排気孔(第1の孔)VH(第1の排気孔VH1および第2の排気孔VH2)が形成されている。また、第2の鋼板P2にも、
図11(b)に示した標準のエレメントEmの第2の鋼板P2mと同様に排気孔(第2の孔)VH(第1の排気孔VH1および第2の排気孔VH2)が形成されている。互いに隣接するエレメントE,Eの第1の鋼板P1と第2の鋼板P2とは、それぞれの排気孔VHが位置合わせされ対向した状態で接している。
【0162】
この場合も、音監視装置SDおよび画像監視装置GDの配置の仕方や監視の仕方は前記第1の実施の形態で説明したものと同じである。すなわち、打設対象のエレメントE1の隣りの監視用のエレメントE2内に、集音マイクSSおよび小型マイクGSを設置し、集音マイクSSおよび小型カメラGSで検出された情報によって監視用のエレメントE2から離れた待機用のエレメントE5内において充填状況を監視し、充填完了を判断する。さらに、充填完了と判断したら、前記第1の実施の形態と同様に、集音マイクSSおよび小型カメラGSを保護管PTごと隣りのエレメントE3内に移動させて予め決められた位置に設置する。
【0163】
このように打設対象のエレメントEと監視用のエレメントEとを待機用のエレメントEに向かって1列ずつずらしながら生のコンクリートの流入、監視および検出部(集音マイクSSおよび小型カメラGS)の移動・設置の過程を繰り返すことにより、全てのエレメントE内に生のコンクリートを充填してパイプルーフPR(
図7等参照)を完成させる。本実施の形態においても前記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0164】
ただし、本実施の形態のエレメントEを構成する第2の鋼板P2の排気孔の形状や大きさは、上記したものに限定されるものではなく種々変更可能である。例えば、
図30(b),(c)に示すようにしてもよい。すなわち、
図30(b)においては、第2の鋼板P2に形成された排気孔VH3が、第1の鋼板P1に形成された複数個の排気孔VH1を内包するように形成されている。また、
図30(c)においては、第2の鋼板P2に形成された排気孔VH4が、第1の鋼板P1に形成された排気孔VH2より大径に形成されている。
【0165】
これにより、互いに隣接するエレメントE,Eにおいて第1の鋼板P1の排気孔VH1,VH2と第2の鋼板P2の排気孔VH3,VH4との位置合わせ精度を緩和することができる。なお、第2の鋼板P2の排気孔VH3,VH4の大きさを大きくしたとしても、第1の鋼板P1の排気孔VH(VH1,VH2)は、上記したのと同様にコンクリートに含まれる粗骨材によって塞がれるので、打設対象のエレメントE内に流入された生のコンクリートが排気孔VH(VH1,VH2)を通じて隣りのエレメントE内に流れ込んでしまうことはない。
【0166】
また、第1の鋼板P1に排気孔VH3,VH4を形成し、第2の鋼板P2に第1の排気孔VH1および第2の排気孔VH2を形成することもできる。この場合も排気孔同士の位置合わせ精度を緩和することができる。しかし、コンクリートが打設されるエレメントE側の第1の鋼板P1の排気孔を排気孔VH3,VH4のように大きくしてしまうと、コンクリートを打設するエレメントEとそれに隣接するエレメントEとの間に隙間などがあった場合に、その隙間に排気孔VH3,VH4を通じてコンクリートが流出してしまう場合がある。
【0167】
これに対して、上記したようにコンクリートを打設するエレメントEの第1の鋼板P1の側に排気孔VH(VH1,VH2)を形成することにより、その排気孔VH(VH1,VH2)が粗骨材によって塞がれるので、互いに隣接するエレメントE,E間に隙間などがあったとしても、コンクリートを打設するエレメントEからエレメントE,E間の隙間にコンクリートが流出してしまうこともない。
【0168】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0169】
前記実施の形態においては、エレメントによって地下構造物の全周を取り囲む全周配置型のパイプルーフを構築する場合について説明したが、これに限定されるものではなく種々適用可能であり、例えば、扇形配置型、半円形配置型、門形配置型または一文字形配置型のパイプルーフを構築する場合に適用することもできる。
【0170】
また、前記実施の形態においては、エレメントの第1の鋼板を鋼板による壁柱構造(縦縞構造)とした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、第1の鋼板を平板によって構成し、その一部に開口部を設けた構造としてもよい。この場合、開口部は第1の鋼板の上部に形成する。また、第1の鋼板P1mの鋼板部PsはエレメントEmの長さ方向に対して垂直ではなく、斜めに配置してもよく、例えばトラス状に設けてもよい。
【0171】
また、前記実施の形態においては、音監視装置と画像監視装置の各々の配線を別々の保護管に収容した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、音監視装置と画像監視装置の各々の配線を1本の保護管内に収容してもよい。すなわち、一方の保護管(第1の保護部材)PTが他方の保護管(第2の保護部材)PTを兼ねるようにしてもよい。これにより、集音マイクおよび小型カメラの移動を容易にすることができるとともに、移動時に使用する第1の排気孔を1個だけにすることができる。
【0172】
また、この音監視装置と画像監視装置とはエレメント先端面側の第1の排気孔VH1だけでなく、エレメント先端面以外に設けられた排気孔である第2の排気孔VH2のいずれかに配置して、コンクリートの打設状況を確認してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0173】
以上の説明では、本発明を線路施設用のトンネルの構築に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、地下街等、他の地下構造物の構築にも適用できる。
【符号の説明】
【0174】
PR パイプルーフ
EG エレメント群
Bb 底部ブロック
Bc 天井部ブロック
Bs 側部ブロック
E,E1~E5 エレメント
Em 標準のエレメント
Emc 変形タイプの標準のエレメント
Eb プレストレス導入用のエレメント
P1m,P1 第1の鋼板
Ps 鋼板部
P2m,P2 第2の鋼板
P3m,P3 第3の鋼板
P4m,P4 第4の鋼板
P5b 第5の鋼板
P6b 第6の鋼板
P7b 第7の鋼板
P8b 第8の鋼板
HS 中空空間
CS 連結空間
J1,J2 継手部
TH 開口部
VH 排気孔
VH1 第1の排気孔
VH2 第2の排気孔
VH3,VH4 排気孔
WH 貫通孔
CC コンクリート
W1,W2 ワイヤ
PP 仕切板
PP1.PP2 鋼板
EX エキスパンドメタル構造部
He 貫通孔
Hst 貫通孔
Hh 人通孔
BP 開閉板
L3 打設空間
FD 充填検知センサ
ST 圧送管
G 施工地
DH 発進立坑
RM 推進機
Tp トンネル予定箇所
T トンネル
SD 音監視装置
SS 集音マイク
AD 音出力装置
GD 画像監視装置
GS 小型カメラ
LD 画像出力装置
LS1,LS2 配線
PT 保護管