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特開2023-137487成膜装置、成膜方法及び被覆物品の製造方法
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  • 特開-成膜装置、成膜方法及び被覆物品の製造方法 図1
  • 特開-成膜装置、成膜方法及び被覆物品の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137487
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】成膜装置、成膜方法及び被覆物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/50 20060101AFI20230922BHJP
   C23C 16/46 20060101ALI20230922BHJP
   C23C 14/54 20060101ALI20230922BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20230922BHJP
   H01L 21/205 20060101ALN20230922BHJP
【FI】
C23C14/50 E
C23C16/46
C23C14/54 D
H01L21/68 N
H01L21/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043723
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】吉谷 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】川村 祐介
【テーマコード(参考)】
4K029
4K030
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
4K029CA01
4K029CA05
4K029DA08
4K029EA08
4K029JA01
4K029KA01
4K029KA05
4K030FA10
4K030GA02
4K030GA12
4K030JA10
4K030KA10
4K030KA11
4K030KA39
4K030KA41
5F045AA03
5F045AF07
5F045EB02
5F045EJ03
5F045EK07
5F045EK10
5F045EM02
5F131BA03
5F131BA04
5F131CA02
5F131CA03
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA03
5F131EB81
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】処理対象物の温度を調節でき、且つ処理対象物の交換が容易な成膜装置を提供すること。
【解決手段】本発の一態様に係る成膜装置1は、処理対象物Wを出し入れする搬入開口11を有するチャンバ本体10と、前記搬入開口11を封止するドア20と、温度調節構造31を有し、前記搬入開口11を通して前記チャンバ本体10に出し入れ可能に配設され、処理対象物Wを保持可能な保持部材30と、前記チャンバ本体10を貫通し、前記保持部材30の位置にかかわらずに前記保持部材30との接続を維持する可撓性を有し、前記温度調節構造31にエネルギを供給するエネルギライン40と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物を出し入れする搬入開口を有するチャンバ本体と、
前記搬入開口を封止するドアと、
温度調節構造を有し、前記搬入開口を通して前記チャンバ本体に出し入れ可能に配設され、処理対象物を保持可能な保持部材と、
前記チャンバ本体を貫通し、前記保持部材の位置にかかわらずに前記保持部材との接続を維持する可撓性を有し、前記温度調節構造にエネルギを供給するエネルギラインと、
を備える成膜装置。
【請求項2】
前記温度調節構造は、熱媒流体が挿通される熱媒流路であり、
前記エネルギラインは、フレキシブル配管材から形成され、前記熱媒流路に熱媒流体を供給する供給ライン及び前記熱媒流路から熱媒流体を回収する回収ラインを含む、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記保持部材は、前記ドアの開放に伴って前記チャンバ本体の外部に引き出されるよう前記ドアの内面側に固定される、請求項1又は2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記搬入開口は、水平方向に開口し、
前記ドアは、前記搬入開口の開口方向に平行移動するよう配設される、請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記エネルギラインは、前記保持部材の前記チャンバ本体の奥側に配置される端部に接続される、請求項1から4のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項6】
前記保持部材は、水平な載置面を有するテーブル状に形成される、請求項1から5のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項7】
処理対象物を出し入れする搬入開口を有するチャンバ本体と、前記搬入開口を封止するドアと、を備える成膜装置を用いる成膜方法であって、
前記チャンバ本体の外側で、温度調節構造を有する保持部材に処理対象物を保持させる工程と、
前記処理対象物を保持する前記保持部材を、前記搬入開口を通して前記チャンバ本体の内部に搬入する工程と、
前記チャンバ本体を貫通する可撓性を有するエネルギラインを通して温度調節構造にエネルギを供給しつつ、前記処理対象物に成膜を行う工程と、
を備える、成膜方法。
【請求項8】
処理対象物を出し入れする搬入開口を有するチャンバ本体と、前記搬入開口を封止するドアと、を備える成膜装置を用い、処理対象物に成膜を行うことにより被覆物品を製造する製造方法であって、
前記チャンバ本体の外側で、温度調節構造を有する保持部材に処理対象物を保持させる工程と、
前記処理対象物を保持する前記保持部材を、前記搬入開口を通して前記チャンバ本体の内部に搬入する工程と、
前記チャンバ本体を貫通する可撓性を有するエネルギラインを通して温度調節構造にエネルギを供給しつつ、前記処理対象物に成膜を行う工程と、
を備える、被覆物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置、成膜方法及び被覆物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内部の空気を排気して所望の真空環境又は雰囲気ガス環境を形成できるチャンバ内で真空蒸着、スパッタリング、CVD等の成膜を行う装置が広く利用されている。このような成膜装置においては、成膜過程において成膜される処理対象物の温度が上昇し得る。しかしながら、処理対象物の種類等によっては、処理対象物の温度上昇が問題となる場合があり得る。
【0003】
そこで、チャンバ内で処理対象物(基板)を載置するステージを、チャンバの外側に配設された冷却機構によりチャンバを貫通する熱伝導部材を介した熱伝導により冷却する成膜装置も提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-65031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
成膜装置では、チャンバへの処理対象物の出し入れが処理のサイクルタイムに大きく影響し得る。冷却機構に接続されたステージは、その位置を変えることができないため、処理対象物の交換作業が煩雑となるおそれがある。そこで、本発明は、処理対象物の温度を調節でき、且つ処理対象物の交換が容易な成膜装置、成膜方法及び被覆物品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発の一態様に係る成膜装置は、処理対象物を出し入れする搬入開口を有するチャンバ本体と、前記搬入開口を封止するドアと、温度調節構造を有し、前記搬入開口を通して前記チャンバ本体に出し入れ可能に配設され、処理対象物を保持可能な保持部材と、前記チャンバ本体を貫通し、前記保持部材の位置にかかわらずに前記保持部材との接続を維持する可撓性を有し、前記温度調節構造にエネルギを供給するエネルギラインと、を備える。
【0007】
上述の成膜装置において、前記温度調節構造は、熱媒流体が挿通される熱媒流路を含み、前記エネルギラインは、フレキシブル配管材から形成され、前記熱媒流路に熱媒流体を供給する供給ライン及び前記熱媒流路から熱媒流体を回収する回収ラインを含んでもよい。
【0008】
上述の成膜装置において、前記保持部材は、前記ドアの開放に伴って前記チャンバ本体の外部に引き出されるよう前記ドアの内面側に固定されてもよい。
【0009】
上述の成膜装置において、前記搬入開口は、水平方向に開口し、前記ドアは、前記搬入開口の開口方向に平行移動するよう配設されてもよい。
【0010】
上述の成膜装置において、前記供給ライン及び前記回収ラインは、前記保持部材の前記チャンバ本体の奥側に配置される端部に接続されてもよい。
【0011】
上述の成膜装置において、前記保持部材は、水平な載置面を有するテーブル状に形成されてもよい。
【0012】
本発の別の態様に係る成膜方法は、処理対象物を出し入れする搬入開口を有するチャンバ本体と、前記搬入開口を封止するドアと、を備える成膜装置を用いる成膜方法であって、前記チャンバ本体の外側で、温度調節構造を有する保持部材に処理対象物を保持させる工程と、前記処理対象物を保持する前記保持部材を、前記搬入開口を通して前記チャンバ本体の内部に搬入する工程と、前記チャンバ本体を貫通する可撓性を有するエネルギラインを通して温度調節構造にエネルギを供給しつつ、前記処理対象物に成膜を行う工程と、を備える。
【0013】
本発の別の態様に係る対象物の製造方法は、処理対象物を出し入れする搬入開口を有するチャンバ本体と、前記搬入開口を封止するドアと、を備える成膜装置を用い、処理対象物に成膜を行うことにより被覆物品を製造する製造方法であって、前記チャンバ本体の外側で、温度調節構造を有する保持部材に処理対象物を保持させる工程と、前記処理対象物を保持する前記保持部材を、前記搬入開口を通して前記チャンバ本体の内部に搬入する工程と、前記チャンバ本体を貫通する可撓性を有するエネルギラインを通して温度調節構造にエネルギを供給しつつ、前記処理対象物に成膜を行う工程と、を備える。
【0014】
上述の対象物の製造方法において、前記温度調節構造は、熱媒流体が挿通される熱媒流路であり、前記エネルギラインは、フレキシブル配管材から形成され、前記熱媒流路に熱媒流体を供給する供給ライン及び前記熱媒流路から熱媒流体を回収する回収ラインを含んでもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、処理対象物の温度を調節でき、且つ処理対象物の交換が容易な成膜装置及び成膜方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る成膜装置の処理対象物交換時の状態を示す模式図である。
図2図1の成膜装置の成膜時の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1及び2は、本発明の一実施形態に係る成膜装置1を示す模式図である。成膜装置1は、処理対象物Wの表面に、例えば真空蒸着、スパッタリング、CVD等の周知の技術によって成膜を行うことにより、表面の少なくとも一部に被膜を有する被覆物品を製造する装置である。
【0018】
成膜装置1は、チャンバ本体10と、チャンバ本体10を封止するドア20と、チャンバ本体10に出し入れ可能に配設され、処理対象物Wを保持可能な保持部材30と、チャンバ本体10を貫通して保持部材30に接続されるエネルギライン40と、を備える。
【0019】
チャンバ本体10は、成膜時の処理対象物の雰囲気を調整するために内部を真空引きできるよう、つまり気密性及び強度を有するよう構成される。また、チャンバ本体10は、処理対象物Wの出し入れを行うために、ドア20によって封止される搬入開口11を有する。搬入開口11は、水平方向に開口し、水平方向に処理対象物Wを出し入れすることを可能にすることが好ましい。なお、搬入開口11の開口方向は、搬入開口11の投影面積が最大となる方向を意味する。
【0020】
ドア20は、搬入開口11を気密に封止する。ドア20の開閉動作に連動して保持部材30が移動してチャンバ本体10から出し入れされるよう構成されることが好ましい。構成を簡素化するために、ドア20に保持部材30が固定され、ドア20と保持部材30が一体に移動することが好ましい。また、ドア20は、搬入開口11の開口方向に平行移動するよう配設されることが好ましい。さらに、保持部材30をチャンバ本体10の外側に完全に引き出すために、ドア20の移動可能距離は、保持部材30の長さ以上であることが好ましい。
【0021】
保持部材30は、チャンバ本体10の外側で処理対象物Wを保持し、処理対象物Wを保持する状態でチャンバ本体10の中に移動させられる。つまり、保持部材30への処理対象物Wの配置は、チャンバ本体10の外側で行われる。
【0022】
保持部材30は、上述のように、ドア20の開放に伴ってチャンバ本体10の外部に引き出されることが好ましく、ドア20の内面側に固定されることがより好ましい。つまり、ドア20と保持部材30とを一体化することによって、ドア20の開閉と保持部材30のチャンバ本体10への搬入及び搬出とが容易且つ確実に同期される。
【0023】
保持部材30は、自身の温度ひいては保持する処理対象物Wの温度を調節可能な温度調節構造として、成膜装置1の外部から温度調節のためのエネルギとして供給され得る熱媒流体が挿通される熱媒流路31を有する。熱媒流路31は、保持部材30に保持される処理対象物Wを効率よく加熱又は冷却できるよう、周知技術に基づいて設計され得る。熱媒流路31としては、処理対象物Wの耐熱温度が低い場合に処理対象物Wを冷却するための冷却水等の冷媒、処理対象物Wを高温にしなければ安定した成膜ができない場合に処理対象物Wを加熱するためのシリコーンオイル等の温媒などが用いられ得る。
【0024】
保持部材30は、水平な載置面32を有するテーブル状に形成されることが好ましい。これにより、多様な処理対象物Wを容易に保持させることができる。また、保持部材30は、処理対象物Wに応じて交換され、例えば処理対象物Wを位置決めして保持する凹部等の保持構造を有するものとされてもよい。また、保持部材30は、熱伝導性に優れ、保持部材30の保持構造を有し得る交換可能なアタッチメントを有してもよい。
【0025】
エネルギライン40は、チャンバ本体10を貫通し、保持部材30の位置にかかわらずに保持部材30との接続を維持する可撓性を有し、温度調節構造31にエネルギを供給する。エネルギライン40は、保持部材30に熱媒流体を供給する供給ライン41及び保持部材30から熱媒流体を回収する回収ライン42を含む。
【0026】
供給ライン41及び回収ライン42は、例えばゴムホース、フレキシブルパイプ等のフレキシブル配管材から形成される。供給ライン41及び回収ライン42は、保持部材30の位置にかかわらずに保持部材30に熱媒流体を供給及び保持部材30から熱媒流体を回収できるような十分な長さを有する。
【0027】
供給ライン41及び回収ライン42は、保持部材30のチャンバ本体10の奥側に配置される側の端部に接続されてもよい。これにより、保持部材30が搬入開口11を通過する際に供給ライン41及び回収ライン42がチャンバ本体10に干渉しにくくなるので、相対的に搬入開口11を小さくすることによりチャンバ本体10及びドア20の設計が容易となる。
【0028】
供給ライン41及び回収ライン42は、チャンバ本体10の搬入開口11と反対側の壁を貫通してもよい。これにより、保持部材30をチャンバ本体10から引き出した状態で、供給ライン41及び回収ライン42が直線的に伸長するよう構成できるので、供給ライン41及び回収ライン42の負荷を低減して信頼性を向上できる。
【0029】
供給ライン41及び回収ライン42は、チャンバ本体10内で複数個所が支持されてもよい。例として、供給ライン41及び回収ライン42は、電動ホイストにおいてケーブルが保持されるのと同様に、レール又はワイヤに沿って移動可能な複数のハンガーに一定の長さ毎に保持され得る。供給ライン41及び回収ライン42を複数個所で指示することにより、供給ライン41及び回収ライン42の損傷をより確実に防止できる。
【0030】
このような構成を備える成膜装置1では、処理対象物Wを保持する保持部材30に熱媒流体が挿通されることにより処理対象物Wの温度を調節することができる。例えば処理対象物Wが生分解性プラスチックなどの耐熱性が低い材料から形成される場合、保持部材30に冷媒を挿通して処理対象物Wの温度が高くなり過ぎることを防止できる。また、処理対象物Wの表面に例えば高温での成膜が望ましい非晶質材料を成膜する場合、保持部材30に温媒を挿通して処理対象物Wの温度を高めることにより成膜品質を向上できる。
【0031】
また、成膜装置1では、且つフレキシブル配管材から形成される供給ライン41及び回収ライン42を介して保持部材30に熱媒流体を挿通させることにより保持部材30をチャンバ本体の外側に引き出すことができるので、チャンバ本体10の外側において処理対象物Wを容易に交換できる。
【0032】
以上の説明から明らかであるが、成膜装置1を用いて実施され得る本発明の一実施形態に係る成膜方法及び本発明の一実施形態に係る被覆物品の製造方法は、図1に示すように、チャンバ本体10の外側で、温度調節構造31を有する保持部材30に処理対象物Wを保持させる工程(S1:保持工程)と、処理対象物Wを保持する保持部材30を、搬入開口を通してチャンバ本体10の内部に搬入する工程(S2:搬入工程)と、チャンバ本体10を貫通する可撓性を有するエネルギライン40を通して温度調節構造31にエネルギを供給しつつ、処理対象物Wに成膜を行う工程(S3:成膜工程)と、を備える。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更及び変形が可能である。例として、本発明に係る成膜装置では、ドアと保持部材と分離して設けてもよく、ドアがチャンバ本体にヒンジ接続されてもよく、保持部材に車輪等を配設してもよく、保持部材を案内するガイド機構を設けてもよい。
【0034】
また、本発明に係る成膜装置において、温度調節構造は、例えば抵抗発熱体、ペルチェ素子等を用いて電気エネルギにより保持部材の温度を調節するよう構成されてもよい。この場合、エネルギラインは、電気ケーブルによって構成することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 成膜装置
10 チャンバ本体
11 搬入開口
20 ドア
30 保持部材
31 熱媒流路(温度調節構造)
32 載置面
40 エネルギライン
41 供給ライン
42 回収ライン
W 処理対象物
図1
図2