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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137493
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】増し締め報知装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/00 20060101AFI20230922BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G08B21/00 U
G08B25/04 C
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043732
(22)【出願日】2022-03-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】目黒 貴之
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
5C086AA18
5C086AA34
5C086AA52
5C086BA22
5C086CA01
5C086CA06
5C086CA15
5C086FA17
5C087AA02
5C087AA10
5C087AA19
5C087BB20
5C087DD03
5C087DD14
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF23
5C087GG59
5C087GG70
5C087GG83
(57)【要約】
【課題】締結部品の緩みによるホイールの脱落を抑制する。
【解決手段】増し締め報知装置2は、車輪12のホイール12aが車両1に、ナットやボルトなどの締結部品を締めて装着されてから現在までに車両1が走行した装着後走行距離を取得する走行距離取得部231と、取得された装着後走行距離が、締結部品の使用状態に応じて定まる増し締め距離以上になったら、締結部品の増し締めを促す報知を行う報知制御部232と、を有する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールが車両に締結部品を締めて装着されてから現在までに前記車両が走行した装着後走行距離を取得する走行距離取得部と、
前記装着後走行距離が、前記締結部品の使用状態に応じて定まる増し締め距離以上になったら、前記締結部品の増し締めを促す報知を行う報知制御部と、
を有する増し締め報知装置。
【請求項2】
前記走行距離取得部は、前記ホイールが装着されたときに入力された前記車両の第1積算走行距離と、前記ホイールに設けられて前記ホイールが前記車両に装着されたか否かを前記車両の走行中に検出するセンサが前記車両に前記ホイールが装着されたことを検出したときの前記車両の第2積算走行距離との少なくともいずれかを、前記ホイールが装着されたときの前記車両の積算走行距離として取得する、
請求項1に記載の増し締め報知装置。
【請求項3】
前記走行距離取得部は、前記第1積算走行距離及び前記第2積算走行距離の両方が取得された場合、前記第1積算走行距離と、前記第2積算走行距離とのうちの短い方を前記ホイールが装着されたときの前記車両の積算走行距離として取得する、
請求項2に記載の増し締め報知装置。
【請求項4】
前記報知制御部は、
前記締結部品が過去に使用されていない未使用状態であるか、前記締結部品が過去に使用された使用済状態であるかを示す状態情報を取得し、
前記状態情報が前記未使用状態を示す場合の増し締め距離を、前記状態情報が前記使用済状態を示す場合の増し締め距離よりも長くする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の増し締め報知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールを締結する締結部品の増し締めを報知する増し締め報知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールを車両に装着するためには、ボルトやナットなどの締結部品を適切なトルクで締め付ける必要がある。特許文献1には、トルクが所定の値に達するとトグル機構が動作することによりトルクが一定になることでトルクの過不足が生じなくなるトルクレンチが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-31926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、締結部品は適切なトルクで締め付けられても走行しているうちに緩んでくるので、締結部品の軸力は低下する。締結部品の軸力が低下した状態で走行するとホイールが脱落してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、締結部品の緩みによるホイールの脱落を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様においては、ホイールが車両に締結部品を締めて装着されてから現在までに前記車両が走行した装着後走行距離を取得する走行距離取得部と、前記装着後走行距離が、前記締結部品の使用状態に応じて定まる増し締め距離以上になったら、前記締結部品の増し締めを促す報知を行う報知制御部と、を有する増し締め報知装置を提供する。
【0007】
前記走行距離取得部は、前記ホイールが装着されたときに入力された前記車両の第1積算走行距離と、前記ホイールに設けられて前記ホイールが前記車両に装着されたか否かを前記車両の走行中に検出するセンサが前記車両に前記ホイールが装着されたことを検出したときの前記車両の第2積算走行距離との少なくともいずれかを、前記ホイールが装着されたときの前記車両の積算走行距離として取得してもよい。
【0008】
前記走行距離取得部は、前記第1積算走行距離及び前記第2積算走行距離の両方が取得された場合、前記第1積算走行距離と、前記第2積算走行距離とのうちの短い方を前記ホイールが装着されたときの前記車両の積算走行距離として取得してもよい。
【0009】
前記報知制御部は、前記締結部品が過去に使用されていない未使用状態であるか、前記締結部品が過去に使用された使用済状態であるかを示す状態情報を取得し、前記状態情報が前記未使用状態を示す場合の増し締め距離を、前記状態情報が前記使用済状態を示す場合の増し締め距離よりも長くしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、締結部品の緩みによるホイールの脱落を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】増し締め報知システムの概要を説明するための図である。
図2】増し締め報知装置の構成を説明するための図である。
図3】締結部品121の使用状況に応じた軸力の変化を説明するための図である。
図4】増し締め報知装置が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[増し締め報知システムSの概要]
図1は、増し締め報知システムSの概要を説明するための図である。増し締め報知システムSは、車両1に装着された車輪12のホイール12aを締め付けるボルトやナットなどの締結部品121の増し締めを促す報知を行うシステムである。増し締め報知システムSは、車両1と、増し締め報知装置2と、端末3を含む。
【0013】
車両1は、トラックやトレーラーなどの車両である。車両1には、ECU(Electric Control Unit)11が搭載されている。ECU11は、車両1の積算走行距離を増し締め報知装置2に無線通信を介して送信する。例えば、ECU11は、車両1の積算走行距離が更新される毎に最新の積算走行距離を増し締め報知装置2に送信したり、所定間隔毎に積算走行距離を増し締め報知装置2に送信したりする。所定間隔は、所定距離又は所定時間である。所定距離は、例えば1kmであり、所定時間は、例えば1分である。
【0014】
車両1の車輪12は、ホイール12aと、当該ホイール12aに装着されたタイヤにより構成されている。ホイール12aは、6個の締結部品121を締めて車両1に装着されているが、締結部品121の数はこれに限らない。各ホイール12aには、センサ122が設けられている。センサ122は、例えばタイヤの空気圧を検出するセンサである。センサ122は、検出した空気圧と共に自身を識別するためのセンサ識別情報を、車両1に搭載されたECU11に無線通信を介して送信する。
【0015】
ECU11は、センサ122が無線通信を介して送信したセンサ識別情報と共に、当該無線通信の電波強度を取得する。ECU11は、車両1の走行中に送信された複数のセンサ識別情報及び当該無線通信の電波強度に基づいてホイール12aの取り付け位置を特定する。また、ECU11は、装着されていたホイール12aが外されて新たなホイール12aが装着されたらセンサ識別情報及び電波強度が変化することを利用して、ホイール12aが車両1に装着されたことを検出する。
【0016】
ECU11は、ホイール12aが車両1に装着されたことを検出したときの積算走行距離を、ホイール12aが車両1に装着されたときの積算走行距離として増し締め報知装置2に送信する。一例として、ECU11は、ホイール12aが車両1に装着されたときの積算走行距離を示す情報に、ホイール12aが車両1に装着されたことを検出したことを示す情報を関連付けて増し締め報知装置2に送信する。
【0017】
ところで、締結部品121は、適切なトルクで締め付けても車両1が走行しているうちに緩んで軸力が低下する。例えば、締結部品121の頭部座面や被締結物同士が接している面の凹凸が摩耗して隙間ができたり、締結部品121と被締結物の間の引張力及び圧縮力が釣り合っていない不安定な状態から、引張力及び圧縮力が釣り合う安定な状態に移行したりする初期緩みにより、締結部品121の軸力が低下する。初期緩みにより緩んで軸力が低下した状態で走行するとホイール12aが脱落してしまうおそれがある。
【0018】
そこで、増し締め報知装置2は、積算走行距離に基づく、ホイール12aが車両1に締結部品121を締めて装着されてから現在までの装着後走行距離が、増し締めが必要な距離以上になったら、締結部品121の増し締めを促す報知を行う。例えば、増し締め報知装置2は、締結部品121の増し締めを促すメッセージを端末3に送信することにより、締結部品121の増し締めを促す報知を行う。
【0019】
端末3は、車両1の運行を管理する管理者や車両1を運転する運転者が使用する端末である。端末は、例えばスマートフォン、タブレット、パソコンであるが、これに限定するものではない。報知されたメッセージを確認した管理者や運転者などの車両1のユーザは、締結部品121の締結部品の増し締めが必要であることを把握できるので、締結部品が緩んでホイール12aが脱落してしまう前に増し締めを行える。その結果、車両1のユーザは、締結部品121の緩みによるホイール12aの脱落を抑制できる。
以下、増し締め報知装置2の構成を具体的に説明する。
【0020】
[増し締め報知装置2の構成]
図2は、増し締め報知装置2の構成を説明するための図である。増し締め報知装置2は、通信部21、記憶部22及び制御部23を有する。通信部21は、車両1及び端末3と情報を送受信するための通信モジュールである。例えば、通信部21は、インターネットを介して車両1及び端末3と情報を送受信する。
【0021】
記憶部22は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等を含む記憶媒体である。記憶部22は、制御部23が実行するプログラムを記憶する。
【0022】
制御部23は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む計算リソースである。制御部23は、記憶部22に記憶されたプログラムを実行することにより、走行距離取得部231及び報知制御部232としての機能を実現する。
【0023】
走行距離取得部231は、ECU11が送信した積算走行距離を取得する。具体的には、走行距離取得部231は、ECU11が走行中に送信した積算走行距離を、車両1の現在の積算走行距離として取得する。
【0024】
また、走行距離取得部231は、ホイール12aが車両1に装着されたときの当該車両1の積算走行距離を取得する。例えば、走行距離取得部231は、ホイール12aが装着されたときに入力された車両1の第1積算走行距離をホイール12aが車両1に装着されたときの積算走行距離として取得する。具体的には、走行距離取得部231は、車両1の運転者又は管理者が端末3に、ホイール12aが車両1に装着されたことを示す情報とともに入力した車両1の積算走行距離を第1積算走行距離として取得する。
【0025】
走行距離取得部231は、車両1にホイール12aが装着されたことが検出されたときの車両1の第2積算走行距離をホイール12aが車両1に装着されたときの積算走行距離として取得してもよい。具体的には、走行距離取得部231は、ホイール12aが車両1に装着されたことを検出したECU11が、ホイール12aが車両1に装着されたことを示す情報に関連付けて送信した積算走行距離を第2積算走行距離として取得する。
【0026】
走行距離取得部231は、第1積算走行距離と第2積算走行距離のうちの少なくともいずれか一方を、ホイール12aが車両1に装着されたときの当該車両1の積算走行距離として取得する。
【0027】
なお、センサ122は、車両1が走行を開始した後にセンサ識別情報を送信するので、ECU11は、車両1が走行を開始した後にホイール12aが車両1に装着されたことを検出する。言い換えると、ホイール12aが車両1に装着されたことをECU11が検出するタイミングは、ホイール12aが車両1に実際に装着されたタイミングよりも遅い。そのため、ホイール12aが車両1に装着されたことをECU11が検出したときの第2積算走行距離は、ホイール12aが車両1に実際に装着された時点の第1積算走行距離よりも大きくなる。そこで、走行距離取得部231は、第1積算走行距離及び第2積算走行距離の両方が取得された場合、第1積算走行距離及び第2積算走行距離のうちの短い方をホイール12aが装着されたときの車両1の積算走行距離として取得する。これにより、走行距離取得部231は、実際にホイール12aが車両1に装着された時点の積算走行距離により近い方を、ホイール12aが装着されたときの車両1の積算走行距離として取得できる。
【0028】
走行距離取得部231は、車両1の現在の積算走行距離と、ホイール12aが装着されたときの車両1の積算走行距離との差を、ホイール12aが車両1に締結部品121を締めて装着されてから現在までに車両1が走行した装着後走行距離として取得する。具体的には、報知制御部232は、第1積算走行距離及び第2積算走行距離のうちの短い方と、車両1の現在の積算走行距離との差を装着後走行距離として取得する。
【0029】
報知制御部232は、装着後走行距離が、締結部品121の使用状態に応じて定まる増し締め距離以上になったら、締結部品121の増し締めを促す報知を行う。増し締め距離は、軸力が低下してホイール12aが脱落してしまうおそれが生じる距離であり、具体的な値は例えば50kmである。報知制御部232は、締結部品121の増し締めを促すメッセージを表示させるための情報を端末3に送信することにより、締結部品121の増し締めを促す報知を行う。メッセージは、例えば「ホイール12aを車両1に装着してから、増し締め距離以上走行しました。ホイール12aの締結部品121の増し締めが必要です。」という文章であるが、これに限定するものではない。メッセージを表示させるための情報を受信した端末3は、端末3の表示部にメッセージを表示させる。これにより、車両1のユーザは、締結部品121の増し締めが必要であることを把握できる。
【0030】
報知制御部232は、端末3に限らず、締結部品121の増し締めを促すメッセージを表示させるための情報を車両1のECU11に送信してもよい。この場合、ECU11は、締結部品121の増し締めを促すメッセージを車両1の運転席に搭載された表示装置に表示させる。これにより、車両1の運転者は、車両1の運転時に、締結部品121の増し締めが必要であることを確認できる。
【0031】
報知制御部232は、車両1の複数のホイール12aのうちのいずれかの締結部品121の増し締めが必要になったら、締結部品121の増し締めを促す報知を行う。例えば、報知制御部232は、締結部品121の増し締めが必要なホイール12aを特定する情報と共に、増し締めを促す報知を行う。具体的には、報知制御部232は、「右前輪を装着してから50km以上走行しました。右前輪の増し締めが必要です。」というメッセージを送信することにより、右前輪の増し締めを促す報知を行う。これにより、車両1のユーザは、車両1の複数のホイール12aのうち、締結部品121の増し締めが必要なホイール12aを把握できるようになる。
【0032】
ところで、締結部品121は、使用状況に応じて軸力の変化具合が異なる。図3は、締結部品121の使用状況に応じた軸力の変化を説明するための図である。横軸は装着後走行距離Rを示す。縦軸は締結部品121の軸力を示す。軸力が、軸力LF未満になるとホイール12aが脱落するおそれが生じる。
【0033】
グラフ71は、締結部品121が未使用状態の軸力の変化を示すグラフである。グラフ72は、締結部品121が使用済状態の軸力の変化を示すグラフである。未使用状態の締結部品121は、使用済状態の締結部品121よりも軸力が低下しにくい。具体的には、未使用状態の締結部品121は、装着後走行距離Rが100kmを超えると、軸力が軸力LF未満になる。一方、使用済状態の締結部品121は、装着後走行距離Rが50kmを超えると、軸力が軸力LF未満になる。
【0034】
そこで、報知制御部232は、締結部品121の使用状況に応じて増し締め距離を変更する。この場合、報知制御部232は、締結部品121が過去に使用されていない未使用状態であるか、締結部品121が過去に使用された使用済状態であるかを示す状態情報を取得する。具体的には、報知制御部232は、端末3を介して入力された状態情報を端末3から取得する。
【0035】
報知制御部232は、状態情報が未使用状態を示す場合の増し締め距離を、状態情報が使用済状態を示す場合の増し締め距離よりも長くする。具体的には、報知制御部232は、締結部品121が未使用状態である場合の増し締め距離を100kmに設定し、締結部品121が使用済状態である場合の増し締め距離を50kmに設定する。これにより、締結部品121の使用状況に応じた増し締めを促す報知を行うことができる。
【0036】
報知制御部232は、増し締めを促す報知を行っても、締結部品121の増し締めが行われない場合、車両1の走行を制限してもよい。例えば、報知制御部232は、増し締めを促す報知を行ってから増し締めしたことを示す実行情報を取得するまで、車両1の走行を制限する。具体的には、報知制御部232は、増し締めを促す報知を行ってから待機時間が経過しても端末3を介して入力された実行情報を取得していない場合、車両1の走行を制限する。待機時間は、ホイール12aが車両1から脱落するおそれが増加する距離を走行するのにかかる時間である。報知制御部232は、車両1の速度が大きいほど待機時間を短くする。待機時間の具体的な値は、車両1の速度が時速60キロメートルの場合、10分である。
【0037】
報知制御部232は、車両1の走行を制限しているときに実行情報を取得したら制限を解除する。また、報知制御部232は、増し締めを促す報知を行ってから待機時間が経過するまでに実行情報を取得した場合車両1の走行を制限しない。
【0038】
報知制御部232は、車両1の動力部の出力及び車両1の上限速度の少なくとも一方を制限することにより車両1の走行を制限する。報知制御部232は、速度の上限を制限した場合に車両1の速度が上限速度を超えていたら、車両1の制動装置を作動させて車両1を減速させる。また、報知制御部232は、車両1の動力部が始動していない場合、車両1の動力部を始動させないことにより車両1の走行を禁止してもよい。これにより、報知制御部232は、車両1の走行中に締結部品121の緩みによるホイール12aの脱落を抑制できる。
【0039】
[増し締め報知装置2が実行する処理]
図4は、増し締め報知装置2が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。図4のフローチャートは、車両1が所定距離走行する毎に実行される。所定距離は、適宜定めればよいが、例えば1kmである。なお、図4のフローチャートを実行する前に、ホイール12aが車両1に装着されたときの車両1の積算走行距離が取得されているものとする。
【0040】
走行距離取得部231は、装着後走行距離Rを取得する(ステップS1)。具体的には、走行距離取得部231は、車両1から取得した現在の積算走行距離と、ホイール12aが車両1に装着されたときの車両1の積算走行距離の差を、装着後走行距離Rとして取得する。
【0041】
報知制御部232は、装着後走行距離Rが増し締め距離以上か否かを判定する(ステップS2)。報知制御部232は、装着後走行距離Rが増し締め距離未満であれば(ステップS2でNo)、ステップS1に戻る。
【0042】
報知制御部232は、装着後走行距離Rが増し締め距離以上であれば(ステップS2でYes)、増し締めを促す報知を行う(ステップS3)。具体的には、報知制御部232は、「ホイール12aを車両1に装着してから、増し締め距離以上走行しました。ホイール12aの締結部品121の増し締めが必要です。」というメッセージを端末3に送信する。
【0043】
報知制御部232は、増し締めしたことを示す実行情報を取得したか否かを判定する(ステップS4)。具体的には、報知制御部232は、端末3に入力された実行情報を取得できたか否かを判定する。
【0044】
報知制御部232は、実行情報を取得できている場合(ステップS4でYes)、ステップS1に戻る。報知制御部232は、実行情報を取得できていない場合(ステップS4でNo)、増し締めを報知してから現在までの報知継続時間が待機時間を超えたか否かを判定する(ステップS5)。
【0045】
報知制御部232は、報知継続時間が待機時間を超えていない場合(ステップS5でNo)、ステップS3に戻り、実行情報を取得する又は報知継続時間が待機時間を超えるまでステップS3からステップS5を繰り返す。報知制御部232は、報知継続時間が待機時間を超えたら(ステップS5でYes)、車両1の走行を制限する(ステップS6)。具体的には、報知制御部232は、車両1の動力部の出力を低下させる。また、報知制御部232は、車両1の制動装置を作動させて車両1を停車させてもよい。これにより、報知制御部232は、車両1の振動を抑制できるので、ホイール12aが車両1から脱落することを抑制できる。
【0046】
(変形例)
走行距離取得部231は、ホイール12aが装着されたときの車両1の積算走行距離と、車両1の現在の積算走行距離との差を装着後走行距離として取得するだけでなく、他の方法で装着後走行距離を取得してもよい。例えば、車両1のECU11が、ホイール12aが車両1に装着されてから現在までの走行距離を装着後走行距離として増し締め報知装置2に送信し、走行距離取得部231は、車両1から装着後走行距離を取得する。
【0047】
[増し締め報知装置2の効果]
以上説明したとおり、増し締め報知装置2は、ホイール12aが車両1に締結部品を締めて装着されてから現在までに車両1が走行した装着後走行距離が、締結部品121の使用状態に応じて定まる増し締め距離以上になったら、締結部品121の増し締めを促す報知を行う。これにより、増し締めを促す報知を確認した車両1の管理者や運転手は、締結部品121を増し締める必要があることを把握できる。その結果、管理者や運転手が締結部品121の増し締めを行えるようになるので、締結部品121の緩みによるホイール12aの脱落を抑制できる。
【0048】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0049】
S 報知システム
1 車両
11 ECU
12 車輪
121 締結部品
122 センサ
2 増し締め報知装置
21 通信部
22 記憶部
23 制御部
231 走行距離取得部
232 報知制御部
3 端末
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-06-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールが車両に締結部品を締めて装着されてから現在までに前記車両が走行した装着後走行距離を取得する走行距離取得部と、
前記装着後走行距離が、前記締結部品の使用状態に応じて定まる増し締め距離以上になったら、前記締結部品の増し締めを促す報知を行う報知制御部と、
を有し、
前記報知制御部は、
前記締結部品が過去に使用されていない未使用状態であるか、前記締結部品が過去に使用された使用済状態であるかを示す状態情報を取得し、
前記状態情報が前記未使用状態を示す場合の増し締め距離を、前記状態情報が前記使用済状態を示す場合の増し締め距離よりも長くする増し締め報知装置。
【請求項2】
前記走行距離取得部は、前記ホイールが装着されたときに入力された前記車両の第1積算走行距離と、前記ホイールに設けられて前記ホイールが前記車両に装着されたか否かを前記車両の走行中に検出するセンサが前記車両に前記ホイールが装着されたことを検出したときの前記車両の第2積算走行距離との少なくともいずれかを、前記ホイールが装着されたときの前記車両の積算走行距離として取得する、
請求項1に記載の増し締め報知装置。
【請求項3】
前記走行距離取得部は、前記第1積算走行距離及び前記第2積算走行距離の両方が取得された場合、前記第1積算走行距離と、前記第2積算走行距離とのうちの短い方を前記ホイールが装着されたときの前記車両の積算走行距離として取得する、
請求項2に記載の増し締め報知装置。