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特開2023-137498熱成形樹脂シートおよび熱成形樹脂品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137498
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】熱成形樹脂シートおよび熱成形樹脂品
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20230922BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20230922BHJP
   B65D 1/28 20060101ALN20230922BHJP
【FI】
B32B27/36
B65D65/02 E BRQ
B65D1/28 BRD
B65D1/28 BSF
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043737
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】396000422
【氏名又は名称】リスパック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐介
(72)【発明者】
【氏名】中川 満弘
【テーマコード(参考)】
3E033
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E033AA10
3E033BA17
3E033BB08
3E033CA18
3E033FA01
3E086AB01
3E086AD05
3E086BA15
3E086BA29
3E086BB23
3E086BB35
3E086BB55
3E086BB58
3E086BB75
3E086BB77
3E086CA01
3E086CA11
3E086DA08
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK41C
4F100AK42A
4F100AK42C
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100EH20
4F100JC00A
4F100JC00C
4F100JL16B
4F100JN28
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】黄色味を抑えることが可能な熱成形樹脂シートを提供する。
【解決手段】熱成形樹脂シート10は、再生ポリエステル層11と、バイオポリエステル層12とを備えている。再生ポリエステル層11は、使用済みポリエステルからなるメカニカルリサイクルポリエステルを含んでいる。バイオポリエステル層12は、再生ポリエステル層11の片側または両側に積層され、バイオマス由来のポリエステルを含んでいる。再生ポリエステル層11とバイオポリエステル層12とを含む全体層15におけるL色空間のb値が2.0以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みポリエステルからなるメカニカルリサイクルポリエステルを含む再生ポリエステル層と、
前記再生ポリエステル層の片側または両側に積層され、バイオマス由来のポリエステルを含むバイオポリエステル層と、
を備え、
前記再生ポリエステル層と前記バイオポリエステル層とを含む全体層におけるL色空間のb値が2.0以下である、熱成形樹脂シート。
【請求項2】
前記全体層の厚みに対する前記再生ポリエステル層の厚みの割合は、60%以上かつ90%以下である、請求項1に記載された熱成形樹脂シート。
【請求項3】
前記再生ポリエステル層には、50重量%以上の前記メカニカルリサイクルポリエステルが含まれている、請求項1または2に記載された熱成形樹脂シート。
【請求項4】
前記バイオマス由来のポリエステルは、バイオマス由来のポリエチレンテレフタレートである、請求項1から3までの何れか1つに記載された熱成形樹脂シート。
【請求項5】
前記メカニカルリサイクルポリエステルと、前記バイオマス由来のポリエステルの合計重量は、前記全体層における全重量の50重量%以上である、請求項1から4までの何れか1つに記載された熱成形樹脂シート。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか1つに記載された熱成形樹脂シートによって形成された、熱成形樹脂品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱成形樹脂シートおよび熱成形樹脂品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化対策として、二酸化炭素の排出量の削減、および、循環型社会の観点から、使用済みプラスチック製品の再利用が注目されている。使用済みプラスチック製品の中でもペットボトルに代表されるポリエステル品の回収は、積極的に行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、使用済みのポリエステル品を再利用することで得られたポリエステル製容器が開示されている。このポリエステル製容器は、ポリエステル層と再生ポリエステル層が積層された積層ポリエステルによって形成されている。ポリエステル層は、未利用の(言い換えると、再利用されていない)ポリエステルによって形成された層である。再生ポリエステル層は、使用済みのポリエステル品を再利用することで得られる層である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-278739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、再生ポリエステル層が例えば回収済みのペットボトルを再利用して作製された場合、再生ポリエステル層は、ポリエステル層に比べて黄色味が強いと考えられている。ポリエステル製容器は、例えば飲食用の容器として使用されることがあり得る。飲食用の容器として使用する場合には、容器に収容された食品の視認性の観点から、ポリエステル製容器の全体の黄色味を抑えることが好ましい。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、黄色味を抑えることが可能な熱成形樹脂シートおよび熱成形樹脂品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る熱成形樹脂シートは、再生ポリエステル層と、バイオポリエステル層とを備えている。前記再生ポリエステル層は、使用済みポリエステルからなるメカニカルリサイクルポリエステルを含んでいる。前記バイオポリエステル層は、前記再生ポリエステル層の片側または両側に積層され、バイオマス由来のポリエステルを含んでいる。前記再生ポリエステル層と前記バイオポリエステル層とを含む全体層におけるL色空間のb値が2.0以下である。
【0008】
前記熱成形樹脂シートによれば、例えば再生ポリエステル層に黄色味がある場合であっても、再生ポリエステル層には、バイオポリエステル層が積層されている。バイオポリエステル層は、黄色味が抑えられた層であるため、バイオポリエステル層を介して再生ポリエステル層の黄色味を抑えることができる。その結果、再生ポリエステル層とバイオポリエステル層とを含む全体層におけるL色空間のb値を2.0以下とすることができ、熱成形樹脂シートの全体の黄色味を抑えることができる。
【0009】
本発明の好ましい一態様によれば、前記全体層の厚みに対する前記再生ポリエステル層の厚みの割合は、60%以上かつ90%以下である。
【0010】
上記態様によれば、再生ポリエステル層の厚みの割合を、全体層の厚みに対して60%以上かつ90%以下にすることで、例えば熱成形樹脂シートによって形成された熱成形樹脂品を落下させた場合であっても、より割れ難くすることができるため、熱成形樹脂シートの強度を確保することができる。
【0011】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記再生ポリエステル層には、50重量%以上の前記メカニカルリサイクルポリエステルが含まれている。
【0012】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記バイオマス由来のポリエステルは、バイオマス由来のポリエチレンテレフタレートである。
【0013】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記メカニカルリサイクルポリエステルと、前記バイオマス由来のポリエステルの合計重量は、前記全体層における全重量の50重量%以上である。
【0014】
本発明に係る熱成形樹脂品は、上述の何れかに記載された熱成形樹脂シートによって形成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、黄色味を抑えることが可能な熱成形樹脂シートおよび熱成形樹脂品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る熱成形樹脂シートの断面図である。
図2】実施形態に係る熱成形樹脂品の斜視図である。
図3図2のIII-III断面における熱成形樹脂品の断面図である。
図4】押出成形で使用される押出装置を模式的に示した図である。
図5】熱成形で使用される金型およびプラグを模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る熱成形樹脂シート、および、熱成形樹脂シートによって形成された熱成形樹脂品について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る熱成形樹脂シート10の断面図である。本実施形態では、熱成形樹脂シート10は、いわゆるポリエステルシートである。ここで、ポリエステルシートとは、ポリエステルによって形成されたシートである。例えば熱成形樹脂シート10は、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETともいう。)によって形成されている。ただし、熱成形樹脂シート10は、PETに限定されるものではない。
【0019】
図1に示すように、熱成形樹脂シート10は、再生ポリエステル層11と、バイオポリエステル層12とを備えている。熱成形樹脂シート10は、再生ポリエステル層11と、バイオポリエステル層12とが積層されたシートである。
【0020】
再生ポリエステル層11は、使用済みポリエステルによって形成された層のことである。ここで、使用済みポリエステルとは、ポリエステルによって形成された使用済みのポリエステル品である。使用済みのポリエステル品とは、例えば市場から回収した使用済みのポリエステル品のことである。ポリエステル品とは、例えばPETボトルやPETトレイなどのことをいう。使用済みのポリエステル品から回収されたポリエステルは、再利用されたポリエステルである。ここでは、再利用されたポリエステルのことをリサイクルポリエステルという。
【0021】
ここでは、PETボトルなどのポリエステル品のリサイクル法として、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、および、メカニカルリサイクルなどが挙げられる。マテリアルリサイクルとは、回収したポリエステル品を粉砕した後にアルカリ洗浄をして繊維などに再利用するものである。ケミカルリサイクルとは、回収されたポリエステル品を化学分解して、原料レベルに差し戻して、PETを再合成するものである。メカニカルリサイクルは、回収されたポリエステル品に対して、上述のマテリアルリサイクルにおけるアルカリ洗浄をより厳密に行うこと、または、高温で真空乾燥することなどでポリエステル品の汚れを確実に取り除いて再利用するものである。ここで、メカニカルリサイクルによって再利用されたポリエステルのことをメカニカルリサイクルポリエステルという。
【0022】
本実施形態では、再生ポリエステル層11は、使用済みPETボトルからなるメカニカルリサイクルポリエステルを含む層である。以下、使用済みPETボトルからなるメカニカルリサイクルポリエステルのことを、単にリサイクルPETという。
【0023】
再生ポリエステル層11には、リサイクルPET以外のポリエステル(例えばPET)が含まれていてもよい。ここで、リサイクルPET以外のポリエステルとして、例えば後述のバイオマス由来のポリエステル(例えばバイオPET)が挙げられる。本実施形態では、50重量%以上のリサイクルPETを含む層のことを再生ポリエステル層11という。すなわち、再生ポリエステル層11には、50重量%以下のリサイクルPET以外のポリエステルが含まれていてもよい。
【0024】
なお、再生ポリエステル層11には、成形性を著しく損なわない範囲において、熱成形樹脂シート10や、後述の熱成形樹脂品100(図2参照)を作製する際に発生する耳ロス、スケルトンなどの製造工程内ロスを含んでいてもよい。
【0025】
バイオポリエステル層12は、バイオマス由来のポリエステルを含む層である。本実施形態では、バイオマス由来のポリエステルとして、バイオマス由来のポリエチレンテレフタレート(以下、バイオPETという。)が挙げられる。ここで、バイオマス由来のポリエステルとは、トウモロコシ、芋、サトウキビ、ビートなどの植物由来の原料を使用して作製されたポリエステルのことをいう。バイオPETとは、上記の植物由来の原料を使用して作製されたPETのことをいう。バイオPETは、結晶性ポリエステルである。ここでは、バイオポリエステル層12は、未利用の(言い換えると再利用されていない)ポリエステルで形成されたバージンポリエステル層と言い換えることもできる。
【0026】
本実施形態では、バイオポリエステル層12には、バイオマス由来のポリエステル以外のポリエステルが含まれてもよい。ここで、バイオマス由来のポリエステル以外のポリエステルとして、例えば石油由来のポリエステルが挙げられる。石油由来のポリエステルには、石油由来のポリエチレンテレフタレート(以下、石化PETという。)が含まれる。ここで、石油由来のポリエステルとは、石油を原料としたポリエステルのことをいう。本実施形態では、50重量%以上のバイオマス由来のポリエステル(例えばバイオPET)を含む層のことをバイオポリエステル層12という。すなわち、バイオポリエステル層12には、50重量%以下のバイオマス由来のポリエステル以外のポリエステル(例えば石化PET)が含まれていてもよい。
【0027】
バイオポリエステル層12は、透明性を有している。なお、バイオポリエステル層12には、透明性や機能性を著しく損なわない範囲において、必要に応じてポリエステル(例えばPET)以外の他の成分が含まれていてもよい。当該他の成分の一例として、公知の樹脂シートに使用されている添加剤(例えば難燃材、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、防雲剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改質剤、可塑剤、分散剤、および抗菌剤など)が挙げられる。
【0028】
本実施形態では、図1に示すように、バイオポリエステル層12は、再生ポリエステル層11の両側に積層されている。すなわち、バイオポリエステル層12は、再生ポリエステル層11の幅広な面の両面(図1では、上面および下面)に設けられている。バイオポリエステル層12の数は2つである。ここでは、2つのバイオポリエステル層12によって再生ポリエステル層11が挟まれている。
【0029】
なお、再生ポリエステル層11は、単層であってもよいし、複数の層が積層されて形成されてもよい。バイオポリエステル層12も同様に、単層であってもよいし、複数の層が積層されて形成されてもよい。
【0030】
以下、再生ポリエステル層11とバイオポリエステル層12を含めた層を全体層15という。全体層15とは、熱成形樹脂シート10の全体のことであり、本実施形態では、1つの再生ポリエステル層11と、2つのバイオポリエステル層12とから構成されている。
【0031】
本実施形態では、再生ポリエステル層11に含まれるメカニカルリサイクルポリエステル(例えばリサイクルPET)と、全体層15に含まれるバイオマス由来のポリエステル(例えばバイオPET)の合計重量は、全体層15における全重量の50重量%以上である。ここで、全体層15における全重量とは、再生ポリエステル層11に含まれるリサイクルPET以外のポリエステルや、バイオポリエステル層12に含まれるバイオPET以外のポリエステルを含めた、熱成形樹脂シート10の全体の重量のことをいう。
【0032】
本実施形態では、全体層15の厚みは、0.1mm~1.3mm、好ましくは0.2mm~1.0mm、より好ましくは0.3mm~0.6mm、例えば0.4mmである。全体層15の厚みとは、熱成形樹脂シート10の厚みでもある。ここでは、熱成形樹脂シート10の再生ポリエステル層11とバイオポリエステル層12のうち、再生ポリエステル層11の方が、厚みが大きい。例えば全体層15の厚みに対する再生ポリエステル層11の厚みの割合は、90%以下であり、好ましくは85%以下であり、より好ましくは80%以下である。また、全体層15の厚みに対する再生ポリエステル層11の厚みの割合は、60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上である。例えば再生ポリエステル層11とバイオポリエステル層12の厚みの比率は、再生ポリエステル層:バイオポリエステル層=80:20である。2つのバイオポリエステル層12の厚みは、同じであるが、異なっていてもよい。
【0033】
本実施形態では、熱成形樹脂シート10、すなわち全体層15の色味を、L色空間におけるb値で表現することができる。ここで、b値の値が大きくなる程、黄色味が強くなる。一方、b値の値が小さくなる程、言い換えるとマイナス方向に値が大きくなる程、青色味が強くなる。本実施形態では、全体層15におけるL色空間のb値は、2.0以下であり、好ましくは1.8以下である。このことによって、熱成形樹脂シート10の全体の色味において、黄色味を抑えることができる。
【0034】
本実施形態では、バイオポリエステル層12の原材料、ここではバイオポリエステル層12に含まれるバイオPETおよび石化PETのL色空間におけるb値は、0以下であり、好ましくは-0.5以下であり、特に好ましくは-1.0以下である。例えばバイオポリエステル層12に含まれるバイオPETのL色空間におけるb値は、-1.02である。例えばバイオポリエステル層12に含まれる石化PETのL色空間におけるb値は、-1.01である。上記のような範囲となるb値を有する原材料を使用することによって、バイオポリエステル層12の青色味を強くすることができる。よって、例えば再生ポリエステル層11に黄色味がある場合であっても、バイオポリエステル層12の青色味を強くすることができるため、熱成形樹脂シート10の全体の黄色味を抑えることができる。
【0035】
図2は、本実施形態に係る熱成形樹脂シート10によって形成された熱成形樹脂品100の斜視図である。図3は、図2のIII-III断面における熱成形樹脂品100の断面図である。本実施形態では、図2に示すように、熱成形樹脂シート10を形成することで、熱成形樹脂品100が作製される。ここでは、熱成形樹脂品100は、例えば食品が収容される容器である。ただし、熱成形樹脂品100は、食品が収容される容器に限定されない。熱成形樹脂品100は、熱成形樹脂シート10によって形成されたものであれば、容器に限定されない。言い換えると、熱成形樹脂品100は、熱成形樹脂シート10によって形成されたものであれば、その種類、用途および形状などは、特に限定されるものではない。
【0036】
図2に示すように、熱成形樹脂品100は、底壁21と、底壁21から立ち上った周壁22とを備えている。周壁22は、例えば底壁21の端から上方に向かって延びている。周壁22は、平面視において底壁21を囲むようにして配置されている。なお、周壁22は、底壁21に対して垂直に立ち上がってもよいし、図3に示すように、底壁21に対して斜め上方に延びるものであってもよい。周壁22は、底壁21から上方に離れるにしたがって、底壁21の外方に向かうように傾斜していてもよい。底壁21および周壁22は、平らな面を有していてもよいし、強度を確保するための凸部(図示せず)が設けられていてもよい。ここでは、底壁21と周壁22とに囲まれた空間に、食品などが収容される。
【0037】
本実施形態では、底壁21は、四角形状である。ただし、底壁21の形状は特に限定されず、例えば、円形などであってもよい。熱成形樹脂品100の形状も特に限定されるものではない。ここでは、図2に示すように、熱成形樹脂品100は、底壁21と周壁22によって容器状に形成されている。周壁22の上縁によって、周壁22に囲まれた開口23が形成されている。開口23は、上方に向かって開口している。なお、熱成形樹脂品100は、開口23を開閉自在な蓋(図示せず)を備えていてもよい。蓋は、周壁22の上端に装着されることによって、開口23を閉鎖する。本実施形態に係る熱成形樹脂品100は、上下反転させて、蓋として使用することが可能である。
【0038】
本実施形態では、図3に示すように、熱成形樹脂品100は、内層31と、外層32と、中間層33とを有している。底壁21および周壁22は、内層31と外層32と中間層33とから形成されている。内層31は、最も内側に配置される層であり、熱成形樹脂品100の内周面を構成する層である。内層31は、熱成形樹脂品100に食品を収容した状態において、食品が直接触れる層である。外層32は、最も外側に配置される層であり、熱成形樹脂品100の外周面を構成する層である。外層32は、例えば利用者が熱成形樹脂品100を手で持ったときに、手が直接触れる層である。
【0039】
中間層33は、内層31と外層32との間に配置された層である。図3に示すように、中間層33は、内層31と外層32とによって挟まれているため、食品や利用者が直接触れない層である。なお、内層31、外層32、中間層33は、それぞれ単層であってもよいし、複数の層が積層されて形成されてもよい。
【0040】
本実施形態では、図3に示すように、熱成形樹脂品100の底壁21および周壁22は、熱成形樹脂シート10によって形成されている。内層31および外層32は、バイオポリエステル層12によって形成されている。中間層33は、再生ポリエステル層11によって形成されている。
【0041】
次に、本実施形態に係る熱成形樹脂シート10および熱成形樹脂品100を作製する手順について説明する。本実施形態では、押出成形をすることによって熱成形樹脂シート10を作製することができる。熱成形樹脂シート10に対して熱成形することで、熱成形樹脂品100を作製することができる。
【0042】
本実施形態では、上記の押出成形の前において、ペレットを用意する。ペレットとして、リサイクルPETを含むPETで形成されたリサイクルペレットと、バイオPETを含むPETで形成されたバイオペレットとを用意する。リサイクルペレットは、例えば市場から回収した使用済みのポリエステル系樹脂成型品(例えば使用済みPETトレイやPETボトルなどの使用済みPET容器)から作製される。ここでは、回収した使用済みのポリエステル系樹脂成型品を粉砕し、異物を除去し、洗浄し、乾燥させることで、リサイクルペレットが作製される。
【0043】
ここでは、バイオペレットと、リサイクルペレットを押出成形することで、熱成形樹脂シート10を作製する。図4は、押出成形で使用される押出装置50を模式的に示した図である。本実施形態では、押出成形として、図4に示す押出装置50を使用する。図4に示すように、押出装置50は、第1ホッパー51Aと、第1スクリュー52Aと、第2ホッパー51Bと、第2スクリュー52Bと、フィードブロック58と、合流ダイ53と、冷却ローラ54と、巻取機55とを有している。
【0044】
本実施形態では、第1ホッパー51Aと、第1スクリュー52Aは、バイオペレット用(以下、バイオ用という。)である。第2ホッパー51Bと、第2スクリュー52Bは、リサイクルペレット用(以下、リサイクル用という。)である。第1ホッパー51Aは、第1スクリュー52Aに接続されており、第1スクリュー52Aの周囲には第1ヒータ57Aが設けられている。第2ホッパー51Bは、第2スクリュー52Bに接続されており、第2スクリュー52Bの周囲には第2ヒータ57Bが設けられている。また、第1スクリュー52Aおよび第2スクリュー52Bは、フィードブロック58に接続され、フィードブロック58は合流ダイ53に接続されている。
【0045】
押出成形では、まずバイオ用ペレット40Aを第1ホッパー51Aに入れる。第1ホッパー51Aに入れられたバイオ用ペレット40Aは、第1スクリュー52Aに流され、第1ヒータ57Aによって加熱されながら、第1スクリュー52Aで混ぜ合わされる。第1スクリュー52Aで混ぜ合わされたバイオ用ペレット40Aは、幅の狭いフィードブロック58に向かって流される。同様に、リサイクル用ペレット40Bを第2ホッパー51Bに入れる。第2ホッパー51Bに入れられたリサイクル用ペレット40Bは、第2スクリュー52Bに流され、第2ヒータ57Bによって加熱されながら、第2スクリュー52Bで混ぜ合わされる。第2スクリュー52Bで混ぜ合わされたリサイクル用ペレット40Bは、フィードブロック58に向かって流される。
【0046】
フィードブロック58では、バイオ用ペレット40Aと、リサイクル用ペレット40Bとが合流し、合流ダイ53に流される。合流ダイ53では、バイオ用ペレット40Aの層と、リサイクル用ペレット40Bの層となって、フィードブロック58によって押し出されて(共押出されて)排出される。ここで、フィードブロック58を通じて合流ダイ53から押し出されたバイオ用ペレット40Aの層が、バイオポリエステル層12になる。フィードブロック58を通じて合流ダイ53から押し出されたリサイクル用ペレット40Bの層が、再生ポリエステル層11になる。
【0047】
本実施形態では、詳しい図示は省略するが、加熱された状態で、バイオポリエステル層12、再生ポリエステル層11、および、バイオポリエステル層12の順に重ねられてシート状になって排出される。このとき、バイオポリエステル層12と再生ポリエステル層11が接着し、熱成形樹脂シート10になる。
【0048】
ここでの熱成形樹脂シート10は、加熱された状態であるため、冷却ローラ54を通過することで冷却される。熱成形樹脂シート10は、冷却ローラ54によって巻取機55に向かって搬送され、巻取機55によってロール状に巻き取られる。以上の手順で、熱成形樹脂シート10が作製される。
【0049】
次に熱成形樹脂シート10を熱成形することで、熱成形樹脂品100を作製する。ここで、熱成形は、真空成形または圧空成形とも言い換えられる。図5は、熱成形で使用される金型60およびプラグ65を模式的に示した図である。熱成形では、図5に示すような金型60と、プラグ65が使用される。金型60には、凹部61が形成されている。プラグ65には、凹部61に挿入される凸部66が形成されている。ここでは、熱成形のとき、凹部61と凸部66が向かい合うように、金型60とプラグ65を離間させた状態で配置する。その後、加熱された熱成形樹脂シート10を、金型60とプラグ65との間に配置する。このとき、熱成形樹脂シート10の2つのバイオポリエステル層12のうちの一方が内層31(図3参照)となり、プラグ65側に位置し、2つのバイオポリエステル層12のうちの他方が外層32(図3参照)となり、金型60側に位置するように、熱成形樹脂シート10を配置する。
【0050】
その後、図5の矢印のように、金型60またはプラグ65を移動させ、金型60の凹部61に、プラグ65の凸部66を挿入する。このことで、熱成形樹脂シート10は、凹部61と凸部66との間で、凹部61と凸部66の形状に沿って成形される。熱成形された熱成形樹脂シート10を適宜カットすることで、熱成形樹脂品100が作製される。
【0051】
次に、本実施形態に係る熱成形樹脂シート10によって形成された熱成形樹脂品100に対する落下試験を行った。ここでは、落下試験を行うにあたり、以下のサンプル1~11の熱成形樹脂品としての容器を用意した。サンプル1~11において、熱成形樹脂シートの厚み、すなわち全体層の厚みは、0.4mmである。また、サンプル1~11における熱成形樹脂品は、外形寸法(長辺×短辺×高さ)が190mm×148mm×40mmである容器状のものである。
【0052】
<サンプル1~4>
サンプル1~4は、本実施形態に係る熱成形樹脂シート10によって形成された熱成形樹脂品100である。サンプル1~4では、中間層33は、再生ポリエステル層11であり、内層31および外層32は、バイオポリエステル層12である。サンプル1~4では、熱成形樹脂品100における各層31、32、33の厚みの比率(以下、層比という。)は、内層:中間層:外層=10:80:10である。
【0053】
サンプル1における再生ポリエステル層11は、リサイクルPETのみで構成されており、100重量%のリサイクルPETを含んでいる。サンプル1におけるバイオポリエステル層12は、バイオPETのみで構成されており、100重量%のバイオPETを含んでいる。サンプル2では、再生ポリエステル層11は、100重量%のリサイクルPETを含んでいる。サンプル2におけるバイオポリエステル層12は、バイオPETと石化PETによって構成されており、50重量%のバイオPETと、50重量%の石化PETを含んでいる。
【0054】
サンプル3では、再生ポリエステル層11は、リサイクルPETとバイオPETとによって構成されており、50重量%のリサイクルPETと、50重量%のバイオPETを含んでいる。また、サンプル3では、バイオポリエステル層12は、バイオPETのみから構成されており、100重量%のバイオPETを含んでいる。サンプル4における再生ポリエステル層11は、リサイクルPETとバイオPETとによって構成されており、50重量%のリサイクルPETと、50重量%のバイオPETを含んでいる。また、サンプル4におけるバイオポリエステル層12は、バイオPETと石化PETによって構成されており、50重量%のバイオPETと、50重量%の石化PETを含んでいる。
【0055】
<サンプル5~8>
サンプル5、6、7、8における再生ポリエステル層11、および、バイオポリエステル層12は、それぞれサンプル1、2、3、4と同じ構成である。サンプル5~8は、サンプル1~4と熱成形樹脂品の層比が異なる。サンプル5~8における熱成形樹脂品の層比は、内層:中間層:外層=4:92:4である。
【0056】
<サンプル9~11>
サンプル9では、熱成形樹脂品は、中間層のみから構成されており、内層および外層は省略されているため、単層である。サンプル9の中間層は、再生ポリエステル層である。サンプル9における再生ポリエステル層は、リサイクルPETのみから構成されており、100重量%のリサイクルPETを含んでいる。すなわち、サンプル9の熱成形樹脂品は、リサイクルPETによって形成された容器である。
【0057】
サンプル10、11では、熱成形樹脂品は、中間層は省略されており、内層(または外層)のみから構成された単層である。サンプル10の単層は、バイオPETのみから構成されており、100重量%のバイオPETを含んでいる。サンプル10の熱成形樹脂品は、バイオPETによって形成された容器である。サンプル11の単層は、石化PETのみから構成されており、100重量%の石化PETを含んでいる。サンプル11の熱成形樹脂品は、石化PETによって形成された容器である。
【0058】
ここでは、サンプル1~11において使用されているリサイクルPETとして、市場から回収したPETボトルからなるメカニカルリサイクルポリエステル材を採用し、バイオPETとして、ロッテケミカル株式会社製のBCB80を採用し、石化PETとして、LEALEA ENTERPRISE CO., LTD.製のS104を採用している。サンプル1~11では、図5に示すような押出装置50を使用して、押出成形をして熱成形樹脂シートを作製した。また、サンプル1~11では、株式会社浅野研究所製の真空圧空成形装置を使用して、熱成形樹脂シートから熱成形樹脂品を作製した。サンプル1~11における各層のPETの種類の割合、および、層比について、下記表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
ここでは、サンプル1~11において使用されたリサイクルPET、バイオPETおよび石化PETにおけるL色空間のb値を測定した。b値を測定するにあたって、日本電色工業株式会社製のSA5500を用いて、JIS Z8722に準拠して、リサイクルPET、バイオPETおよび石化PETにおけるb値を測定した。その結果、リサイクルPETのb値は、2.04であった。バイオPETのb値は、-1.02であった。石化PETのb値は、-1.01であった。また、上記の測定方法を使用して、サンプル1~11における熱成形樹脂シート、および、熱成形樹脂品のb値を測定した。その結果は、下記の表2の通りである。
【0061】
【表2】
【0062】
次に、サンプル1~11において、熱成形樹脂シートのIV値を測定した。ここでは、各サンプルにおける熱成形樹脂シートに対して切り出した切り出し片を、溶媒として、フェノール/1、1、2、2-テトラクロロエタン(重量比3/1)の混合溶媒を用いて、JIS K 7367-5に準拠して測定した。サンプル1~11におけるIV値は、上記の表2の通りである。同様に、サンプル1~11において使用されたリサイクルPET、バイオPETおよび石化PETについて、IV値を上記の測定方法で測定した。その結果、リサイクルPETのIV値は、0.73dl/gであった。バイオPETのIV値は、0.80dl/gであった。石化PETのIV値は、0.76dl/gであった。
【0063】
以上のように作製したサンプル1~11の熱成形樹脂品に対して、落下試験を行った。落下試験では、サンプル1~11における熱成形樹脂品の中に、500gの錘を入れた。ここでは、錘としてPET樹脂を用いている。当該錘を入れた状態のサンプル1~11における熱成形樹脂品を複数用意した。そして、錘が入ったサンプル1~11の熱成形樹脂品を、-30度の環境下で、1.0m、1.5m、および2.0mのそれぞれの高さから鉄板に向けて水平に自由落下させた。ここでは、各サンプル1~11の各高さにおいて、10回の落下試験を行った。各高さから自由落下させたときに、サンプル1~11の熱成形樹脂品に割れが発生したか否かを調べ、各サンプル1~11に対して割れが発生した個数を調査した。その結果を下記の表3に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
上記表3に示すように、サンプル5~8に比べて、サンプル1~4では、熱成形樹脂品を自由落下させたときの割れ個数が少なかった。特に、サンプル1~4における高さ1.5m、および、2.0mにおける落下試験、および、サンプル2~4における高さ1.0mにおける落下試験では、割れが発生しなかった。サンプル1~4と、サンプル5~8との違いは、熱成形樹脂品の層比である。すなわち、層比を、内層:中間層:外層=4:92:4とするよりも、内層:中間層:外層=10:80:10とする方が、強度を確保することができる。このことを言い換えると、中間層33の厚みを薄く、例えば内層31、中間層33および外層32を含めた全体の厚みに対する中間層33の厚みの割合を60%以上かつ90%以下にすることで、熱成形樹脂品100に対する強度を確保することができるといえる。これらのことを、熱成形樹脂シート10で表現すると、中間層33を形成する再生ポリエステル層11を薄くすることで、熱成形樹脂シート10の強度を確保することができるということである。ここでは、熱成形樹脂シート10において、全体層15の厚みに対する再生ポリエステル層11の厚みの割合を60%以上かつ90%以下にすることで、熱成形樹脂シート10の強度を確保することができる。
【0066】
表3に示すように、サンプル9のリサイクルPETのみで構成された単層の場合、落下試験における割れ個数が、どの高さの場合であっても、3層で構成されたサンプル1~8の場合に比べて多かった。よって、熱成形樹脂品の層数を多くすることで、強度を確保することができる。
【0067】
以上、本実施形態では、図1に示すように、熱成形樹脂シート10は、使用済みポリエステルからなるメカニカルリサイクルポリエステルを含む再生ポリエステル層11と、再生ポリエステル層11の両側に積層され、バイオマス由来のポリエステルを含むバイオポリエステル層12と、を備えている。再生ポリエステル層11とバイオポリエステル層12とを含む全体層15におけるL色空間のb値が2.0以下である。このことによって、例えば再生ポリエステル層11に黄色味がある場合であっても、再生ポリエステル層11には、バイオポリエステル層12が積層されている。バイオポリエステル層12は、黄色味が抑えられた層であるため、バイオポリエステル層12を介して再生ポリエステル層11の黄色味を抑えることができる。その結果、再生ポリエステル層11とバイオポリエステル層12とを含む全体層におけるL色空間のb値を2.0以下とすることができ、熱成形樹脂シート10の全体の黄色味を抑えることができる。
【0068】
また、上記サンプル1~4では、図2に示すように、熱成形樹脂シート10のL色空間のb値が1.4~1.8であり、熱成形樹脂品100のb値が1.3~1.7であった。一方、サンプル5~8では、熱成形樹脂シートのb値が2.0~2.4であり、熱成形樹脂品のb値が2.0~2.3であった。このように、熱成形樹脂シートおよび熱成形樹脂品の両方において、サンプル5~8よりもサンプル1~4の方がb値を小さくすることができる。よって、サンプル1~4のように、中間層33の厚みを薄く、例えば内層31、中間層33および外層32を含めた全体の厚みに対する中間層33の厚みの割合を90%以下にすることで、熱成形樹脂品100のb値を小さくすることができ、黄色味を抑えることができる。これらのことを、熱成形樹脂シート10で表現すると、中間層33を形成する再生ポリエステル層11を薄くすることで、熱成形樹脂シート10のb値を小さくすることができるということである。ここでは、熱成形樹脂シート10において、全体層15の厚みに対する再生ポリエステル層11の厚みの割合を90%以下にすることで、熱成形樹脂シート10のb値を小さく、例えば2.0以下にすることができ、黄色味を抑えることができる。
【0069】
本実施形態では、バイオポリエステル層12の原材料のL色空間におけるb値は、0以下であり、好ましくは-0.5以下であり、特に好ましくは-1.0以下である。上記表3に示すように、サンプル10のバイオPETのみから構成された熱成形樹脂シートのL色空間におけるb値は、-0.4であり、サンプル11の石化PETのみから構成された熱成形樹脂シートのL色空間におけるb値も、-0.4である。また、例えばバイオポリエステル層12に含まれる原材料のバイオPETのL色空間におけるb値は、-1.02である。例えばバイオポリエステル層12に含まれる原材料の石化PETのL色空間におけるb値は、-1.01である。このことによって、b値が-1.0程度のバイオPETまたは石化PETを用いてバイオポリエステル層12を形成することで、バイオポリエステル層12におけるb値を、0以下、例えば-0.4程度にすることができると考えられる。よって、バイオポリエステル層12の青色味を強くすることができる。よって、例えば再生ポリエステル層11に黄色味がある場合であっても、青色味が強いバイオポリエステル層12で再生ポリエステル層11を覆うことで、熱成形樹脂シート10の全体の黄色味を抑えることができる。
【0070】
本実施形態では、熱成形樹脂シート10は、図4に示すような押出装置50を用いて、押出成形することによって作製される。押出成形をすることによって、再生ポリエステル層11およびバイオポリエステル層12の原材料は、熱履歴を受けることになる。この熱履歴を受けることで、L色空間におけるb値は、大きくなり、すなわちプラスの方向に変化し、黄色味が強くなる。再生ポリエステル層11およびバイオポリエステル層12の原材料のうち、メカニカルリサイクルポリエステル(例えばリサイクルPET)は、熱履歴を比較的に多く受けるため、b値が大きくなる。
【0071】
例えばメカニカルリサイクルポリエステル(例えばリサイクルPET)からなるフレークおよびペレット(例えばリサイクル用ペレット40B(図4参照))には、僅かな微量不純物が残存することがあり得る。リサイクル用ペレット40Bなどに微量不純物が残存していると、溶融混錬時の熱によって、リサイクル用ペレット40Bが黄変する。ここで、溶融混錬時において、押出装置50の第2スクリュー52B(図4参照)の出口付近における樹脂温度(例えばリサイクル用ペレット40Bの温度)は、好ましくは320度以下であり、より好ましくは310度以下であり、更に好ましくは300度以下である。また、当該樹脂温度は、通常255度以上、好ましくは260度以上である。この樹脂温度が高すぎると、ポリエステル樹脂組成物が変色したり、ヤケ異物が増えたりする虞がある。また、芳香族ポリエステル樹脂は、長時間加熱されることで炭化して変色し易くなる。このように、リサイクル用ペレット40Bは黄変するため、リサイクル用ペレット40Bを押出成形することで作製されたメカニカルリサイクルポリエステルを含む再生ポリエステル層11は、b値が大きくなり、黄色味が強くなり易い。しかしながら、本実施形態では、黄色味が抑えられたバイオポリエステル層12で再生ポリエステル層11を覆うため、熱成形樹脂シート10の全体の黄色味を抑えることができる。
【0072】
本実施形態では、図2に示すように、熱成形樹脂品100は、熱成形樹脂シート10によって形成されている。ここでは、熱成形樹脂シート10は、上述のように、全体の黄色味を抑えられている。熱成形樹脂品100は、例えば食品が収容される容器である。よって、黄色味が抑えられた熱成形樹脂品100に、食品が収容されているため、食品の見栄えをよくすることができる。
【0073】
本実施形態では、再生ポリエステル層11には、50重量%以上のメカニカルリサイクルポリエステル(ここでは、リサイクルPET)が含まれている。このことによって、リサイクルPETを多く使用することができるため、環境負荷の低減に貢献することができる。
【0074】
本実施形態では、バイオポリエステル層12に含まれるバイオマス由来のポリエステルは、バイオマス由来のポリエチレンテレフタレート(バイオPET)である。このように、バイオマス由来のポリエチレンテレフタレートでバイオポリエステル層12を形成することで、環境負荷の低減に貢献することができる。
【0075】
本実施形態では、再生ポリエステル層11に含まれるメカニカルリサイクルポリエステル(ここでは、リサイクルPET)と、バイオポリエステル層12に含まれるバイオマス由来のポリエステル(ここでは、バイオPET)の合計重量は、全体層15における全重量の50重量%以上である。このことによって、リサイクルPETとバイオPETの割合を大きくすることができるため、環境負荷の低減に貢献することができる。
【0076】
上記実施形態では、図1に示すように、バイオポリエステル層12は、再生ポリエステル層11の両側に積層されていた。言い換えると、バイオポリエステル層12は、再生ポリエステル層11の幅広な面の両面に配置されており、バイオポリエステル層12の数は2つであった。しかしながら、バイオポリエステル層12は、再生ポリエステル層11の片側に積層されていてもよい。すなわち、バイオポリエステル層12は、再生ポリエステル層11の幅広な面のうちの一方の面にのみ配置されており、バイオポリエステル層12の数は1つであってもよい。
【符号の説明】
【0077】
10 熱成形樹脂シート
11 再生ポリエステル層
12 バイオポリエステル層
15 全体層
21 底壁
22 周壁
31 内層
32 外層
33 中間層
100 熱成形樹脂品
図1
図2
図3
図4
図5