IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-算出装置 図1
  • 特開-算出装置 図2
  • 特開-算出装置 図3
  • 特開-算出装置 図4
  • 特開-算出装置 図5
  • 特開-算出装置 図6
  • 特開-算出装置 図7
  • 特開-算出装置 図8
  • 特開-算出装置 図9
  • 特開-算出装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137500
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】算出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/389 20190101AFI20230922BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20230922BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230922BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G01R31/389
G01R31/392
H01M10/48 P
H02J7/00 Q
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043739
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 祐佳
(72)【発明者】
【氏名】菊池 淳
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216AB01
2G216BA23
2G216BA41
2G216BA53
2G216CC06
5G503AA07
5G503BA03
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503DA07
5G503DA08
5G503EA09
5G503FA06
5G503GD06
5H030AA09
5H030AS08
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】製造コストを抑制しつつ、電池のインピーダンスを算出する技術を提供する。
【解決手段】SBM7は、電池5の電圧値を測定し、電圧特徴量を検出し、電圧特徴量をBMU100に送信する。BMU100は、電池5の電流値を測定し、電流特徴量を検出し、送信部76から送信された電圧特徴量を取得し、電流特徴量と、該電流特徴量が取得されたときから所定期間内に受信した電圧特徴量と、に基づいて電池のインピーダンスを算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池のインピーダンスを算出する算出装置であって、
第1装置と、第2装置とを備え、
前記第1装置は、
前記電池の電流値および前記電池の電圧値のうちのいずれか一方である第1パラメータを測定し、
前記第1パラメータの特徴量である第1特徴量を検出し、
前記第1特徴量を前記第2装置に送信し、
前記第2装置は、
前記電流値および前記電圧値のうち他方である第2パラメータを測定し、
前記第2パラメータの特徴量である第2特徴量を検出し、
前記第1装置から送信された前記第1特徴量を取得し、
前記第2特徴量と、該第2特徴量が取得されたときから所定期間内に受信した前記第1特徴量と、に基づいて前記インピーダンスを算出する、算出装置。
【請求項2】
前記第1特徴量は、前記第1パラメータのピークを含み、
前記第2特徴量は、前記第2パラメータのピークを含む、請求項1に記載の算出装置。
【請求項3】
前記第1特徴量は、前記第1パラメータの変動量を含み、
前記第2特徴量は、前記第2パラメータの変動量を含む、請求項1または請求項2に記載の算出装置。
【請求項4】
前記第1パラメータの変動量は、第1所定量以上の変動量を含み、
前記第2パラメータの変動量は、第2所定量以上の変動量を含む、請求項3に記載の算出装置。
【請求項5】
前記第1パラメータは、前記電池の電圧値であり、
前記第2パラメータは、前記電池の電流値であり、
前記第1パラメータの変動量は、第1所定量以上の変動量を含み、
前記第2パラメータの変動量は、前記電池の電流値がゼロクロスしたときの該電流値の変動量を含む、請求項3に記載の算出装置。
【請求項6】
前記第1パラメータは、前記電池の電圧値であり、
前記第2パラメータは、前記電池の電流値であり、
前記第1特徴量は、前記電池の電圧値と、該電池のOCV(Open Circuit Voltage)との差分値がゼロクロスしたときの該差分値の変動量を含み、
前記第2特徴量は、前記電池の電流値がゼロクロスしたときの該電流値の変動量を含む、請求項2または請求項3に記載の算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2021-68611号公報(特許文献1)には、複数の電池モジュールの各々の状態を監視する監視システムが開示されている。この監視システムにおいては、該電池モジュールの電流値を検出する電流検出センサと、該電池モジュールの電圧値を検出する電圧検出センサとが、電池モジュール毎に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-68611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の監視システムにおいては、電流検出センサと電圧検出センサとが、電池モジュールの個数分設けられていることから、製造コストが増大するという問題があった。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、製造コストを抑制しつつ、電池のインピーダンスを算出する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示による算出装置は、電池のインピーダンスを算出する。算出装置は、第1装置と、第2装置とを備える。第1装置は、電池の電流値および電池の電圧値のうちのいずれか一方である第1パラメータを測定し、第1パラメータの特徴量である第1特徴量を検出し、第1特徴量を第2装置に送信する。第2装置は、電流値および電圧値のうち他方である第2パラメータを測定し、第2パラメータの特徴量である第2特徴量を検出し、第1装置から送信された第1特徴量を取得し、第2特徴量と、該第2特徴量が取得されたときから所定期間内に受信した第1特徴量と、に基づいてインピーダンスを算出する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、製造コストを抑制しつつ、電池のインピーダンスを算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態による算出装置を備えた車両の構成の一例を示す図である。
図2】比較例の算出装置の構成例である。
図3】本実施の形態の算出装置の構成例を示す図である。
図4】本実施の形態の電流特徴量および電圧特徴量を説明するための図である。
図5】電流特徴量の検出タイミングなどを説明するための図である。
図6】電流特徴量などの検出タイミングを説明するための図である。
図7】各SBMとBMUとの処理を示すフローチャートである。
図8】実施の形態2の電流特徴量および電圧特徴量を説明するための図である。
図9】実施の形態3の電流特徴量および電圧特徴量を説明するための図である。
図10】実施の形態4の算出装置150の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0010】
[実施の形態1]
図1は、本実施の形態による算出装置150を備えた車両1の構成の一例を模式的に示す図である。
【0011】
車両1は、駆動輪2と、駆動輪2に機械的に連結されたモータジェネレータ3と、電力制御装置(PCU:Power Control Unit)4と、電池5と、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)6と、算出装置150とを備える。算出装置150は、N個のSBM(Satellite Battery Monitor)と、BMU100とを含む。以下では、N個のSBMは、SBM71,...,SBM7Nと示される。Nは1以上の整数である。また、「算出装置」は、「算出システム」と称されてもよい。また、BMU100は、「マスタ」に対応し、SBM71,...,SBM7Nは、「スレーブ」に対応する。また、SBM71,...,SBM7Nは、SBM7nとも称される。ただし、n=1,...,Nとなる変数(任意の数)である。
【0012】
車両1は、モータジェネレータ3の動力を用いて走行する電動車両である。なお、車両1に、モータジェネレータ3以外の動力源(たとえばエンジン)が備えられていてもよい。
【0013】
モータジェネレータ3は、たとえば、三相交流回転電機である。モータジェネレータ3は、電池5からPCU4を経由して供給される電力によって駆動される。また、モータジェネレータ3は、駆動輪2から伝達される動力を用いて回生発電を行ない、発電した電力をPCU4を経由して電池5に供給することもできる。
【0014】
電池5は、たとえばリチウムイオン電池またはニッケル水素電池のような、二次電池(充放電可能な電池)を含んで構成される。本実施の形態においては、電池5はM個の単位電池(セル)が直列接続されることにより構成される。Mは1以上の整数であり、M≧Nとなる。単位電池は、「単位電池5m(m=1,...M)」とも称される。また、M個の単位電池は、後述の図3に示すように、N個の電池群に分けられる。電池群は、組電池とも称される。電池群は、1以上の単位電池により構成される。電池群は、たとえば、4~20個の単位電池により構成される。なお、各電池群において、構成される単位電池の数は同じであってもよく、異なっていてもよい。また、電池群は、電池群5nとも称される。上述のように、nは、n=1,...,Nとなる変数である。SBM7nは、電池群5nと対応づけて配置される。また、電池5は、負荷(たとえば、モータジェネレータ)に放電し、また、上述の回生発電により充電される。本実施の形態においては、後述の図3に示すように1個の電池群は、3個の単位電池により構成される。
【0015】
PCU4は、ECU6からの指示に応じて作動するインバータおよび昇降圧コンバータを含んで構成される。PCU4は、ECU6からの指示に応じて、電池5から供給される電力をモータジェネレータ3を駆動可能な電力に変換してモータジェネレータ3に供給したり、モータジェネレータ3が発電した電力を充電可能な電力に変換して電池5に供給したりする。
【0016】
さらに、図示していないが、車両1には、運転者によるアクセルペダル操作量、ブレーキペダル操作量、車速など、車両1を制御するために必要なさまざまな物理量を検出するための複数のセンサが設けられる。これらのセンサは、検出結果をECU6に送信する。
【0017】
BMU100は、電池5の電流を検出する。BMU100は、検出結果をECU6に出力する。また、後述するように、BMU100は、電池5の電流を検出する機能と、電池5のインピーダンスおよび電池5の抵抗劣化度を算出する機能とを有する。
【0018】
また、BMU100は、主たる構成要素として、CPU(Central Processing Unit)162と、メモリ164とを有する。メモリ164は、たとえば、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを有する。ROMには、CPU162が実行するプログラムを格納する。RAMは、CPU162におけるプログラムの実行により生成されるデータ(たとえば、後述の電圧特徴量)などを一時的に格納する。
【0019】
ECU6は、各センサおよびBMU100からの情報およびメモリに記憶された情報に基づいて所定の演算処理を実行し、演算結果に基づいてPCU4を制御する。
【0020】
上述のように、N個のSBM7nは、それぞれ、N個の電池群5nに対応して配置されている。後述するように、SBM7nは、該SBM7nと対応する電池群5nを構成する単位電池(つまり、3個の単位電池)の各々の電圧および該各々の電圧特徴量を検出する。後述するように、N個のSBM7nの各々は、検出した電圧特徴量をBMU100に対して送信する。本実施の形態においては、この送信は、たとえば、無線通信により実現される。なお、変形例として、この送信は、有線通信により実現されてもよい。BMU100は、M個の後述の電圧特徴量、および1つの電流特徴量に基づいて、M個の単位電池の各々のインピーダンスを算出する。
【0021】
このように、本実施の形態においては、電池5の電流値を測定する装置(BMU100)と、単位電池の電圧値を測定する装置(N個のSBM7)とが別個に設けられている。したがって、電池5の電流値を測定する装置と、単位電池の電圧値を測定する装置とを小型化でき、これらの装置の配置の自由度を高めることができる。
【0022】
図2は、比較例の算出装置150#の構成例である。図2に示すように比較例の算出装置150#においては、電池5#は、M個の単位電池(セル)が直列接続されることにより構成される。さらに、電池5#は、N個の電池群5n#に分けられる。該N個の電池群5n♯のそれぞれに対応してSBM7n#(つまり、N個のSBM)が設置されている。また、N個のSBM7n#の各々は、電流値を測定する電流測定部と3個の電圧値を測定する電圧測定部とを有している。N個のSBM7n♯の各々は、測定した電流値および電圧値を無線通信で算出装置に送信する。そして、算出装置は、該電圧値および電流値に基づいて単位電池のインピーダンスを算出する。
【0023】
このように、比較例の算出装置150#では、N個のSBM7n#の各々に電流測定部を設ける必要がある。したがって、算出装置150#の製造コストが増大してしまう。また、N個の電池群5n#は直列接続されている。そこで、該製造コストを抑制するために、電流測定部を1つにすることが考えられる。
【0024】
しかしながら、電流測定部を1つにすると、該1つの電流測定部による電流値の検出タイミングと、N個のSBM7#のそれぞれによる電圧値の検出タイミングとは異なる。つまり、該電流値と、該電圧値とは同期がとれていない状態となる。同期されていない電流および電圧では、一般的には、正確なインピーダンスは算出されない。つまり、算出装置150#では、正確なインピーダンスを算出することができない。
【0025】
そこで、本実施の形態においては、製造コストを抑制しつつ精度の高いインピーダンスを算出可能な算出装置150を提供する。
【0026】
図3は、本実施の形態の算出装置150の構成例を示す図である。図1でも説明したように、算出装置150は、N個のSBM71,...7Nと、BMU100とを有する。SBM71,...7Nは、それぞれ、電池群51,...5Nに対応付けられて配置されている。
【0027】
SBM7は、電圧測定部72と、電圧特徴検出部74と、送信部76と、アンテナ78とを有する。電圧測定部72は、該電圧測定部72を含むSBM7nに対応する電池群5nを構成する単位電池(つまり、3つの単位電池)の各々の電圧を測定する。該電圧測定部72が検出する電圧Vnは、電池群5nの3つの単位電池の各々の電圧(つまり、3つの電圧)を示す。電圧測定部72は、典型的には、電圧センサにより構成される。電圧測定部72は、測定した電圧Vnを電圧特徴検出部74に出力する。
【0028】
電圧特徴検出部74は、電圧測定部72から出力される電圧Vnを監視して、所定の割込期間毎に判断処理(後述のように該電圧特徴量Vfnの有無を判断する処理)を実行する。Vfnは、電池群5nの3つの単位電池の各々の電圧特徴量を示す。また、割込期間は、短時間であり、たとえば、0.1秒である。電圧特徴量については、後述する。電圧特徴検出部74が電圧特徴量Vfnを検出した場合には、送信部76に送信する。送信部76は、アンテナ78経由で無線通信によりBMU100に送信する。また、図3では、SBM71から電池群51の電圧特徴量Vf1がBMU100に送信されており、SBM7Nから電池群5Nの電圧特徴量VfNがBMU100に送信されていることが示されている。Vf1は、電池群51を構成する3つの単位電池の各々の電圧特徴量を示し、VfNは、電池群5Nを構成する3つの単位電池の各々の電圧特徴量を示す。
【0029】
BMU100は、アンテナ102と、受信部104と、電流測定部106と、電流特徴検出部108と、記憶部112と、算出部114とを有する。
【0030】
電流測定部106は、電池群51~5Nが直列接続されている電池5の電流を測定する。電流測定部106は、典型的には、電流センサにより構成される。電流測定部106は、測定した電流を電流特徴検出部108に出力する。
【0031】
電流特徴検出部108は、電流測定部106から出力される電流を監視することにより、割込期間毎に判断処理(後述のように該電流特徴量Ifの有無を判断する処理)を実行する。なお、この電流特徴検出部108の割込期間と、電圧特徴検出部74の割込期間とは同一であってもよく異なっていてもよい。また、電流特徴検出部108の割込期間と、電圧特徴検出部74の割込期間とは同期していてもよく同期していなくてもよい。
【0032】
電流特徴量Ifについては、後述する。電流特徴検出部108が電流特徴量Ifを検出した場合には、電流特徴検出部108は、該電流特徴量Ifを一旦、記憶部112に記憶させる。さらに、電流特徴検出部108は、該電流特徴量Ifを検出した時刻(または電流特徴量Ifを記憶部112に記憶した時刻)を示す時刻情報も、記憶部112に記憶させる。時刻情報は、たとえば、タイムスタンプである。
【0033】
記憶部112は、たとえば、上述のRAMにより構成される。また、電流特徴量Ifは、記憶部112に記憶されたときから所定期間(後述の図6(A)の所定期間T1)経過したときに消去される。
【0034】
受信部104は、N個のSBM7それぞれから送信された電圧特徴量Vfmを、アンテナ102経由で受信する。ここで、電圧特徴量Vfmは、単位電池5mの電圧特徴量を示す。受信部104は、受信した電圧特徴量Vfmを算出部114に出力する。
【0035】
算出部114は、電圧特徴量Vfmを取得する度に、該電圧特徴量Vfmと、記憶部112に記憶されている電流特徴量Ifとに基づいて、単位電池5mのインピーダンスを算出する。たとえば、算出部114は、以下の式(1)に示すように、電圧特徴量Vfmを電流特徴量Ifで除算することにより、単位電池5mのインピーダンスRmを算出する。
【0036】
Rm=Vfm/If (1)
このように、算出部114は、電流特徴量Ifと、該電流特徴量Ifが取得されたときから所定期間(後述の図6(A)の所定期間T1)内に受信した電圧特徴量Vfmと、に基づいて単位電池5mのインピーダンスRmを算出する。
【0037】
さらに、算出部114は、算出したインピーダンスRmと、基準インピーダンスとに基づいて、単位電池5mの劣化度(抵抗劣化度)を算出(推定)する。基準インピーダンスは、予め定められた数値であり、たとえば、所定の記憶領域(たとえば、メモリ164のROM)に格納されている。たとえば、算出部114は、インピーダンスRmを基準インピーダンスで除算した比率を、単位電池5mの抵抗劣化度として算出する。
【0038】
SBM7nは、本実施の形態の「第1装置」に対応する。BMU100は、本実施の形態の「第2装置」に対応する。第1パラメータは、本実施の形態の「電圧値」に対応する。第1特徴量は、本実施の形態の「電圧特徴量」に対応する。第2パラメータは、本実施の形態の「電流値」に対応する。第2特徴量は、本実施の形態の「電流特徴量」に対応する。
【0039】
図4は、本実施の形態の電流特徴量および電圧特徴量を説明するための図である。図4(A)~(F)の横軸および後述の図8(A)~(F)の横軸は時間を示す。また、図4(A)~(C)の縦軸および図8(A)~(C)の縦軸は、電流値を示し、図4(D)~(F)の縦軸および図8(D)~(F)の縦軸は、電圧値を示す。
【0040】
図4(A)は、電流測定部106が測定する電流値の推移の一例を示す図である。また、電流特徴検出部108は、電流測定部106から出力された電流信号の所定周波数帯域を通過させるバンドパスフィルタ(BPF:Band Pass Filter)を有する。電流特徴検出部108は、所定周波数帯域の信号(以下、「フィルタ後電流信号」)を取得する。図4(B)は、フィルタ後電流信号の一例である。なお、電流特徴検出部108は、電圧測定部72が検出した3つの電圧値をそれぞれ通過させる3つのバンドパスフィルタを有する。
【0041】
また、図4(C)に示されるように、該フィルタ後電流信号の電流値について上限値および下限値が予め定められている。電流特徴検出部108は、フィルタ後電流信号により示されるピークが上限値以上であるか否か、および下限値以下であるか否かを判断する。そして、電流特徴検出部108は、フィルタ後電流信号により示されるピークのうち上限値以上のピークPIを電流特徴量Ifとして抽出する。また、電流特徴検出部108は、フィルタ後電流信号により示されるピークのうち下限値以下のピーク(逆ピーク)PIを電流特徴量Ifとして抽出する。また、電流特徴検出部108は、フィルタ後電流信号により示されるピークのうち、下限値より大きく上限値未満のピークについては電流特徴量Ifとして検出しない。
【0042】
図4(D)は、電圧測定部72が測定する電圧値の推移の一例を示す図である。また、電圧特徴検出部74は、電圧測定部72から出力された電圧信号の所定周波数帯域を通過させるバンドパスフィルタを有する。電圧特徴検出部74は、所定周波数帯域の信号(以下、「フィルタ後電圧信号」)を取得する。図4(E)は、フィルタ後電圧信号の一例である。
【0043】
また、図4(F)に示されるように、該フィルタ後電圧信号の電圧値について上限値および下限値が予め定められている。電圧特徴検出部74は、フィルタ後電圧信号により示されるピークが上限値以上であるか否か、および下限値以下であるか否かを判断する。そして、電圧特徴検出部74は、フィルタ後電圧信号により示されるピークのうち上限値以上のピークPVを電圧特徴量Vfとして抽出する。また、電圧特徴検出部74は、フィルタ後電圧信号により示されるピークのうち下限値以下のピーク(逆ピーク)PVを電圧特徴量Vfとして抽出する。また、電圧特徴検出部74は、フィルタ後電圧信号により示されるピークのうち、下限値より大きく上限値未満のピークについては電圧特徴量Vfとして検出しない。
【0044】
電流特徴検出部108は、電流特徴量の有無を判断する判断処理を、割込期間(本実施の形態においては100ms)毎に実行する。電流特徴検出部108は、該判断処理により電流特徴量が有すると判断した場合には、該電流特徴量を検出する。
【0045】
図4に示すように、顕著な電流特徴量Ifおよび電圧特徴量Vfについては、電圧特徴検出部74が該電圧特徴量を検出するタイミングと、電流特徴検出部108が該電流特徴量を検出するタイミングとは同一タイミングまたは略同一タイミングである。
【0046】
図5は、電流特徴量であるピークおよび電圧特徴量であるピークの検出タイミングなどを説明するための図である。図5では、電流特徴量であるピークの検出タイミングが示されているが、電圧特徴量であるピークの検出タイミングも図5と同様である。
【0047】
図5においては、100msごとに、電流特徴検出部108はピーク判断処理を実行することが示されている。該ピーク判断処理は、ピークであるか否かを判断する処理である。また、図5では、タイミングt1で電流特徴検出部108は電流値I1を検出している。該タイミングt1の100ms後のタイミングt2で電流特徴検出部108は、電流値I2を検出している。該タイミングt2の100ms後のタイミングt3で電流特徴検出部108は、電流値I3を検出している。
【0048】
そして、電流特徴検出部108は、電流値I2>電流値I1、および電流値I2>電流値I3となる該電流値I2を電流値のピークとして検出する。そして、このピークが上限値(図4参照)以上である場合に該ピークを電流特徴量として検出する。なお、特に図示しないが、電流値I2<電流値I1、および電流値I2<電流値I3となる該電流値I2を電流値の逆ピークとして検出する。そして、この逆ピークが下限値(図4参照)以下である場合に該逆ピークを電流特徴量として検出する。なお、電圧特徴検出部74も同様の処理を実行する。
【0049】
図6は、電流特徴検出部108の処理を説明するための図である。図6(A)は、電流特徴検出部108が電流特徴量を検出したタイミングを示す。また、図6(B)は、受信部104が電圧特徴量を取得したタイミングを示す。
【0050】
タイミングts1において、電流特徴検出部108が電流特徴量を検出したとする。ここで、図4で説明したように、顕著な電流特徴量Ifおよび電圧特徴量Vfmについては、電圧特徴検出部74が該電圧特徴量を検出するタイミングと、電流特徴検出部108が該電流特徴量を検出するタイミングとは同一タイミングまたは略同一タイミングである。換言すると、電流特徴量Ifと、該電流特徴量Ifに対応する電圧特徴量Vfmとは同期している。また、図1などで説明したように、各SBM7は電圧特徴量Vfmを検出し、該電圧特徴量Vfmを無線通信でBMU100に送信する。したがって、電圧特徴検出部74が電圧特徴量を検出したタイミングと、電流特徴検出部108が該電圧特徴量を取得するタイミング(BMU100が該電圧特徴量を取得するタイミングまたは記憶部112に該電圧特徴量が記憶されるタイミング)とでは時間的なズレが生じる。この時間的なズレは、SBM7nからBMU100までの電圧特徴量の通信時間に基づくズレである。
【0051】
そこで、本実施の形態においては、電流特徴量Ifが検出されたタイミングts1から所定期間内にBMU100が取得した電圧特徴量Vfmは、該電流特徴量Ifと同期しているとみなす。そして、BMU100は、電流特徴量Ifと、該電流特徴量Ifと同期しているとみなされた電圧特徴量Vfmとに基づいて(該電流特徴量Ifと、該電圧特徴量Vfmとをペアとして)、該電圧特徴量Vfmに対応する単位電池5mのインピーダンスRmを算出する(上記の式(1)参照)。したがって、「互いに同期していない電流特徴量Ifおよび該電流特徴量Ifに基づいてインピーダンスを算出する算出装置」と比較して、本実施の形態の算出装置150は、精度良くインピーダンスを算出できる。また、比較例の算出装置のように、各SBM7nごとに電流検出部を設ける必要がないことから、製造コストを抑制できる。
【0052】
図6では、所定期間T1(タイミングts1~タイミングts2までの期間)において、全てのSBM71~7Nから全ての単位電池5mの電圧特徴量Vf1~VfMを受信部104が取得した場合が示されている。この場合には、BMU100は、全ての単位電池のインピーダンスを算出する。
【0053】
また、タイミングts3からの所定期間T1においては、受信部104は、単位電池53の電圧特徴量Vf3を取得しないものの、他の電圧特徴量を取得した場合が示されている。この場合には、BMU100は、単位電池53以外の単位電圧のインピーダンスを算出し、単位電池53のインピーダンスを算出しない。この場合に、BMU100が単位電池53のインピーダンスR3を算出する構成が考えられる。しかしながら、電流特徴量Ifと電圧特徴量Vf3とは同期していない可能性がある。したがって、この構成では、互いに同期していない電流特徴量Ifおよび電圧特徴量Vf3でインピーダンスR3を算出することになり、不正確である可能性の高いインピーダンスR3を算出してしまう。したがって、本実施の形態においては、所定期間外で取得された電圧特徴量に対応する単位電池のインピーダンスについては算出しない。
【0054】
また、本実施の形態においては、算出装置150は、電流値のピークおよび電圧値のピークに基づいて単位電池のインピーダンスを算出できる。したがって、算出装置150は、比較的簡単な演算処理で単位電池のインピーダンスを算出できる。
【0055】
また、所定期間T1は、固定値としてもよい。たとえば、所定期間T1は、0より大きく想定される最大の通信遅れ時間(つまり、上述の時間的なズレに対応)以下のいずれかの期間としてもよい。また、所定期間T1は、変動値としてもよい。たとえば、所定期間T1は、電流特徴量(本実施の形態では、ピークPI)が検出されたときから、次の電流特徴量(本実施の形態では、ピークPI)が検出されるときまでの期間としてもよい。
【0056】
図7は、各SBM7とBMU100との処理を示すフローチャートである。各BMU7の図7の処理、およびBMU100の図7の処理は、上述の割込期間毎に実行される。
【0057】
ステップS2において、各SBMは電圧特徴量Vfを検出したか否かを判断する(上述の判断処理を実行する)。電圧特徴量Vfが検出されなかった場合には(ステップS2でNO)、処理は終了する。一方、電圧特徴量Vfが検出された場合には(ステップS2でYES)、各SBM7は、ステップS4において、該検出した電圧特徴量VfをBMU100に送信する。
【0058】
また、ステップS12において、BMU100は電流特徴量Ifを検出したか否かを判断する(上述の判断処理を実行する)。電流特徴量Ifが検出されなかった場合には(ステップS12でNO)、処理はステップS16に進む。一方、電流特徴量Ifが検出された場合には(ステップS12でYES)、ステップS14において、BMU100は、記憶部112に電流特徴量Ifを記憶させる。次に、ステップS16において、BMU100は、現在の時刻が、該電流特徴量Ifを記憶させたときから所定期間T1以内であるか否かを判断する。このステップS16の判断は、上述のタイムスタンプと、現在の時刻とに基づいて実現される。BMU100は、タイマを有しており、BMU100は、該タイマに基づいて現在の時刻を認識できる。現在の時刻が、電流特徴量Ifを記憶させたときから所定期間T1以内でない場合(ステップS16でNO)、つまり、該電流特徴量Ifを記憶させたときから現在の時刻までの期間が所定期間T1に到達した場合には、BMU100は、記憶部112内の電流特徴量Ifを消去する。そして、処理は終了する。
【0059】
また、現在の時刻が、該電流特徴量Ifを記憶させたときから所定期間T1以内である場合には(ステップS16でYES)、ステップS18において、BMU100は、SBM7nから電圧特徴量を取得したか否かを判断する。電圧特徴量が取得されなかった場合には(ステップS18でNO)、処理は終了する。一方、電圧特徴量が取得された場合には(ステップS18でYES)、ステップS20において、BMU100は、インピーダンスRmを算出する(上記式(1)参照)。具体的には、BMU100は、ステップS14記憶された電流特徴量Ifと、ステップS18で取得されたと判断された電圧特徴量Vfmとに基づいて、インピーダンスRmを算出する。
【0060】
また、図7の例では、各SBMは、ステップS2の電圧特徴量の検出処理を自発的に実行する。
【0061】
[実施の形態2]
実施の形態2においては、電流特徴量は、電流値の変動量を含み、電圧特徴量は、電圧値の変動量を含む。該変動量は、増加量および減少量の少なくとも一方を含む。図8は、実施の形態2の電流特徴量および電圧特徴量を説明するための図である。図8の例では、電池5が充電されている場合が示された図である。また、図8の例では、電池5が充電されている場合には、電流値が低下する場合が示されている。
【0062】
図8(A)は、電流測定部106が測定する電流値の推移の一例を示す図である。また、実施の形態2では、電流特徴検出部108は、過去の特定期間(たとえば、1秒)の電流値の移動平均値(以下、「電流平均値」とも称される。)を算出する算出処理を実行する。この算出処理は、所定の割込期間(上述のように100ms)毎に実行される。
【0063】
電流特徴検出部108は、電流値の変動量が所定量MI以上であるか否かを判断する。そして、図8(B)に示すように、電流特徴検出部108は、電流値の変動量が所定量MI以上となった場合の変動量を電流特徴量Ifとして検出する。該所定量MIは、本開示の「第2所定量」に対応する。図8の例では、電流平均値XI1と、電流平均値XI2との差分量(変動量)が、所定量MI以上となっていることが示されている。また、図8(C)に示されるように、該電流特徴量の検出タイミング(つまり、図6(A)のタイミングts1)は、図8(B)のタイミングtとなる。タイミングtは、電流平均値の変動が終了したと判断されるタイミングである。
【0064】
平均値(電流平均値、後述の電圧平均値、および後述の差分平均値)の変動終了の判断手法については、たとえば、平均値の最大値および最小値の差分が所定範囲未満である状況(つまり、平均値の振幅が小さい状況)が任意の期間(たとえば、上述の特定期間)継続した場合に、平均値の変動が終了したと判断される。また、電流値の最大値および最小値の差分が所定範囲未満である状況(つまり、電流値の振幅が小さい状況)が任意の期間継続した場合に、電流平均値の変動が終了したと判断されるようにしてもよい。また、電圧値の最大値および最小値の差分が所定範囲未満である状況(つまり、電圧値の振幅が小さい状況)が任意の期間継続した場合に、電圧平均値の変動が終了したと判断されるようにしてもよい。
【0065】
図8(D)は、電圧測定部72が測定する電圧値の推移の一例を示す図である。また、実施の形態2では、電圧特徴検出部74は、過去の特定期間(たとえば、1秒)の電圧値の移動平均値(以下、「電圧平均値」とも称される。)を算出する算出処理を実行する。この算出処理は、所定の割込期間(上述のように100ms)毎に実行される。
【0066】
電圧特徴検出部74は、電圧値の変動量が所定量MV以上であるか否かを判断する。そして、図8(E)に示すように、電圧特徴検出部74は、電圧値の変動量が所定量MV以上となった場合の変動量を電圧特徴量IVとして検出する。該所定量MVは、本開示の「第1所定量」に対応する。図8(E)の例では、電圧平均値XV1と、電圧平均値XV2との差分量(変動量)が、所定量MV以上となっていることが示されている。また、図8(F)に示されるように、該電圧特徴量の検出タイミングは、図8(E)のタイミングtとなる。タイミングtは、電圧平均値の変動が終了したと判断されるタイミングである。
【0067】
このように、本実施の形態においては、電流特徴量は電流値の変動量を含み、電圧特徴量は電圧値の変動量を含む。したがって、算出装置150は、比較的簡単な演算処理で単位電池のインピーダンスを算出できる。特に、電池5の充電中においては電流、電圧の変動が階段状となり、精度の高い電流値の変動量(所定量MI以上の変動量)および精度の高い電圧値の変動量(所定量MVの変動量)を取得することができる。その結果として、算出装置150は、精度の高いインピーダンスを算出できる。
【0068】
[実施の形態3]
実施の形態3の電流特徴量は、電流値がゼロクロスしたときの変動量を含み、電圧特徴量は、差分値がゼロクロスしたときの変動量を含む。
【0069】
ここで、差分値を説明する。差分値は、電圧測定部72が検出した電圧値と、単位電池5mの開回路電圧(OCV:Open Circuit Voltage)との差分値である。本実施の形態においては、差分値は、電圧値から開回路電圧を差し引いた値である。
【0070】
実施の形態3においては、電圧特徴検出部74は、電圧測定部72からの電圧値に対して所定演算を実行することにより単位電圧のOCVを推定する。所定演算は、たとえば、ローパスフィルタに電圧測定部72からの電圧信号を通過させる演算である。そして、電圧特徴検出部74は、電圧値からOCVを差し引くことにより、差分値を算出する。
【0071】
また、本実施の形態においては、電池5が放電しているときには、電流測定部106が測定する電流値および電圧特徴検出部74が算出する差分値は増加し、ゼロクロスして正の値になる場合がある。また、電池5が充電されているときには、電流測定部106が測定する電流値および電圧特徴検出部74が算出する差分値は減少し、ゼロクロスして負の値になる場合がある。
【0072】
なお、変形例として、電池5が放電しているときには電流値および差分値は減少し、ゼロクロスして負の値になり、かつ電池5が充電されているときには電流値および差分値は増加し、ゼロクロスして正の値になるように電圧測定部72および電流測定部106が設置されてもよい。
【0073】
図9は、実施の形態3の電流特徴量および電圧特徴量を説明するための図である。図9(A)は、電流測定部106が測定する電流値の推移の一例を示す図である。また、電流特徴検出部108は、電流測定部106から出力された電流信号の所定周波数帯以下の信号を通過させるローパスフィルタ(LPF:Low Pass Filter)を有する。電流特徴検出部108は、LPFを通過したフィルタ後電流信号を取得する。図9(B)は、フィルタ後電流信号の一例である。また、実施の形態3では、電流特徴検出部108は、過去の特定期間(たとえば、1秒)の電流平均値を算出する算出処理を実行する。この算出処理は、所定の割込期間(上述のように100ms)毎に実行される。
【0074】
電流特徴検出部108は、電流値がゼロクロスしたか否かを判断する。そして、図9(B)に示すように、電流特徴検出部108は、電流値がゼロクロスしたときの該電流値の変動量を電流特徴量Ifとして検出する。図9の例では、電流平均値XI1と、電流平均値XI2とが示されている。電流平均値XI1は、ゼロクロスする前の電流平均値である。電流平均値XI2は、電流平均値XI1が算出された電流値がゼロクロスした後の電流平均値である。
【0075】
図9(B)の例では、電流特徴検出部108は、電流平均値XI1と、電流平均値XI2との差分値を電流特徴量Ifとして算出している。また、図9(C)では、電流特徴量Ifが検出されたタイミングt1が示されている。タイミングt1が、図6(A)のタイミングts1に対応する。また、タイミングt1は、電流平均値の変動が終了したと判断されるタイミングである。
【0076】
図9(D)は、電圧特徴検出部74が算出する差分値の推移の一例を示す図である。また、電圧特徴検出部74は、差分値の信号の所定周波数帯以下の信号を通過させるローパスフィルタを有する。電流特徴検出部108は、LPFを通過したフィルタ後差分値信号を取得する。また、実施の形態3では、電圧特徴検出部74は、フィルタ後差分値信号に基づいて、過去の特定期間(たとえば、1秒)の差分値の平均値(以下、「差分平均値」とも称される。)を算出する算出処理を実行する。この算出処理は、所定の割込期間(上述のように100ms)毎に実行される。
【0077】
電圧特徴検出部74は、差分値がゼロクロスしたか否かを判断する。そして、図9(E)に示すように、電圧特徴検出部74は、差分値がゼロクロスしたときの該差分値の変動量を電圧特徴量Vfとして検出する。図9の例では、差分平均値XV1と、差分平均値XV2とが示されている。差分平均値XV1は、ゼロクロスする前の差分平均値である。差分平均値XV2は、差分平均値XV1が算出された差分平均値がゼロクロスした後の差分平均値である。
【0078】
図9(E)の例では、電圧特徴検出部74は、差分平均値XV1と、差分平均値XV2との差分値を電圧特徴量Vfとして算出している。また、図9(F)では、電圧特徴量Vfが検出されたタイミングt1が示されている。また、タイミングt1は、差分平均値の変動が終了したと判断されるタイミングである。
【0079】
このように、本実施の形態においては、電圧特徴量Vfは、差分平均値がゼロクロスしたときの変動量を含み、電流特徴量Ifは、電流値がゼロクロスしたときの変動量を含む。特に、算出装置150は、電池5の充電および放電の切替タイミング(たとえば、車両1のアクセルオンおよびアクセルオフのタイミング)による変動量を電流特徴量および電圧特徴量として使用する。充電および放電の切替タイミングにおける電流値および差分値の変動量は大きい。したがって、電池5のインピーダンスの算出精度を向上させることができる。また、充電および放電の切替タイミングは頻繁に生じることから、電流特徴量および電圧特徴量の検出頻度を高頻度にできる。したがって、単位電池のインピーダンスの算出頻度を増加させることができる。
【0080】
また、電流特徴量VIは、電流値がゼロクロスしたときの該電流値の変動量を含み(図9(B)参照)、電圧特徴量Vfは、所定量MV(第1所定量)以上の電圧値の変動量を含むようにしてもよい(図8(E)参照)。このような構成が採用された算出装置150であっても、上記と同様の有利な効果を奏する。
【0081】
なお、上記の実施の形態の1~3で説明した電流特徴量および電圧特徴量の組合せについて、少なくとも2つの組合せが採用されてもよい。
【0082】
[実施の形態4]
上述の実施の形態1~3においては、複数(M個)の単位電池が直列接続されている構成が説明された。しかしながら、複数の単位電池は並列接続されていていもよい。以下では、N個(複数)の単位電池が並列接続されている例を説明する。この例においては、検出される電圧値の個数は1つであり、検出される電流値の個数はN個である。また、実施の形態4においては、第1パラメータは、「電流値」に対応し、第2パラメータは、「電圧値」に対応する。
【0083】
図10は、実施の形態4の算出装置150Aの構成例を示す図である。図10の例では、N個の単位電池151~5Nが並列接続されている例が示されている。算出装置150Aは、N個のSBM71A,...7NAと、BMU100Aとを有する。SBM71A,...7NAは、それぞれ、並列接続された単位電池151,...15Nに対応付けられて配置されている。N個のSBM71A,...7NAは、まとめて、「SBM7A」または「SBM7nA」とも称される。
【0084】
SBM7nAは、電流測定部106Aと、電流特徴検出部108Aと、送信部76と、アンテナ78とを有する。電流測定部106Aは、該電流測定部106Aを含むSBM7nAに対応する単位電池15nの電流値Inを測定する。電流特徴検出部108Aは、電流測定部106Aから出力される電流値Inを監視することにより、割込期間毎に該電流特徴量Ifnを検出する。電流特徴検出部108Aが電流特徴量Ifnを検出した場合には、送信部76に送信する。送信部76は、アンテナ78経由で無線通信によりBMU100に送信する。また、図3では、SBM71から電流特徴量If1がBMU100に送信されており、SBM7Nから電流特徴量IfNがBMU100に送信されていることが示されている。
【0085】
BMU100Aは、アンテナ102と、受信部104と、電圧測定部72Aと、電圧特徴検出部74Aと、記憶部112と、算出部114とを有する。
【0086】
電圧測定部72Aは、単位電池151~15Nが並列接続されている単位電池の電圧値Vを測定する。電圧測定部72Aは、測定した電圧値Vを電圧特徴検出部74Aに出力する。
【0087】
電圧特徴検出部74は、電圧測定部72から出力される電圧値Vを監視することにより、該電圧特徴量Vfを割込期間毎に検出する。電圧特徴検出部74が電圧特徴量Vfを検出した場合には、記憶部112に電圧特徴量Vfを記憶する。また、電圧特徴量Vfは、記憶部112に記憶されたときから所定期間(上述の所定期間T1)経過したときに消去される。
【0088】
また、受信部104は、N個のSBM7Aそれぞれから送信された電流特徴量Ifnを、アンテナ102経由で受信する。受信部104は、受信した電流特徴量Ifnを算出部114に出力する。
【0089】
算出部114は、電流特徴量Ifnを取得する度に、該電流特徴量Ifnと、記憶部112に記憶されている電圧特徴量Vfとに基づいて、単位電池15nのインピーダンスRnを以下の式(2)により算出する。
【0090】
Rn=Vf/Ifn (2)
このような構成によれば、単位電池が並列接続されている場合であっても、算出装置150Aは、製造コストを抑制しつつ、電池のインピーダンスを精度良く算出できる。
【0091】
[その他の実施の形態]
(1)上述の実施の形態おいては、1つのSBM7nが、電池群5nを構成する1以上の単位電池の各々の電圧特徴量Vfnを検出する構成を説明した。しかしながら、1つのSBM7nは、1つの単位電池に対応付けて配置されており、該1つのSBM7nが、該1つの単位電池の電圧特徴量を検出する構成としてもよい。また、1つのSBM7nが、電池群5nの電圧特徴量を検出する構成としてもよい。つまり、本開示の「電池のインピーダンス」とは、「1つのSBM7nに対応付けられている電池群を構成する1以上の単位電池の各々のインピーダンス」としてもよく、「1つのSBM7nに対応付けられている1つの単位電池のインピーダンス」としてもよく、「1つのSBM7nに対応付けられている電池群のインピーダンス」としてもよい。
【0092】
(2) BMU100は、上述のステップS16(図7参照)の判断をタイムスタンプを用いて実行する構成を説明した。しかしながら、たとえば、BMU100は、上述のステップS16の判断を、記憶フラグを用いて実行するようにしてもよい。ここで、記憶フラグは、電流特徴量Ifが記憶部112に記憶されていることを示すフラグである。BMU100は、ステップS14で電流特徴量Ifを記憶部112に記憶したときに所定領域に記憶フラグを記憶させる。また、BMU100は、ステップS24で電流特徴量Ifを消去させたときに該記憶フラグも消去する。
【0093】
そして、BMU100は、ステップS16では、記憶フラグが所定領域に記憶されていると判断したときに、該ステップS16ではYESと判断する。また、BMU100は、ステップS16では、記憶フラグが所定領域に記憶されていないと判断したときに、該ステップS16ではNOと判断する。また、ステップS16の判断処理は他の手法により実現されてもよい。
【0094】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0095】
1 車両、2 駆動輪、3 モータジェネレータ、5 電池、72,72A 電圧測定部、74,74A 電圧特徴検出部、76 送信部、78,102 アンテナ、104 受信部、106,106A 電流測定部、108,108A 電流特徴検出部、112 記憶部、114 算出部、150,150A 算出装置、164 メモリ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-03-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池のインピーダンスを算出する算出装置であって、
第1装置と、第2装置とを備え、
前記第1装置は、
前記電池の電流および前記電池の電圧のうちのいずれか一方である第1パラメータを測定し、
前記第1パラメータの特徴量である第1特徴量を検出し、
前記第1特徴量を前記第2装置に送信し、
前記第2装置は、
前記電流および前記電圧のうち他方である第2パラメータを測定し、
前記第2パラメータの特徴量である第2特徴量を検出し、
前記第1装置から送信された前記第1特徴量を取得し、
前記第2特徴量と、該第2特徴量が取得されたときから所定期間内に受信した前記第1特徴量と、に基づいて前記インピーダンスを算出する、算出装置。
【請求項2】
前記第1特徴量は、前記第1パラメータのピークを含み、
前記第2特徴量は、前記第2パラメータのピークを含む、請求項1に記載の算出装置。
【請求項3】
前記第1特徴量は、前記第1パラメータの変動量を含み、
前記第2特徴量は、前記第2パラメータの変動量を含む、請求項1または請求項2に記載の算出装置。
【請求項4】
前記第1パラメータの変動量は、第1所定量以上の変動量を含み、
前記第2パラメータの変動量は、第2所定量以上の変動量を含む、請求項3に記載の算出装置。
【請求項5】
前記第1パラメータは、前記電池の電圧であり、
前記第2パラメータは、前記電池の電流であり、
前記第1パラメータの変動量は、第1所定量以上の変動量を含み、
前記第2パラメータの変動量は、前記電池の電流がゼロクロスしたときの該電流の変動量を含む、請求項3に記載の算出装置。
【請求項6】
前記第1パラメータは、前記電池の電圧であり、
前記第2パラメータは、前記電池の電流であり、
前記第1特徴量は、前記電池の電圧と、該電池のOCV(Open Circuit Voltage)
との差分値がゼロクロスしたときの該差分値の変動量を含み、
前記第2特徴量は、前記電池の電流がゼロクロスしたときの該電流の変動量を含む、請求項2または請求項3に記載の算出装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本開示による算出装置は、電池のインピーダンスを算出する。算出装置は、第1装置と、第2装置とを備える。第1装置は、電池の電流および電池の電圧のうちのいずれか一方である第1パラメータを測定し、第1パラメータの特徴量である第1特徴量を検出し、第1特徴量を第2装置に送信する。第2装置は、電流および電圧のうち他方である第2パラメータを測定し、第2パラメータの特徴量である第2特徴量を検出し、第1装置から送信された第1特徴量を取得し、第2特徴量と、該第2特徴量が取得されたときから所定期間内に受信した第1特徴量と、に基づいてインピーダンスを算出する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
そこで、本実施の形態においては、電流特徴量Ifが検出されたタイミングts1から所定期間内にBMU100が取得した電圧特徴量Vfmは、該電流特徴量Ifと同期しているとみなす。そして、BMU100は、電流特徴量Ifと、該電流特徴量Ifと同期しているとみなされた電圧特徴量Vfmとに基づいて(該電流特徴量Ifと、該電圧特徴量Vfmとをペアとして)、該電圧特徴量Vfmに対応する単位電池5mのインピーダンスRmを算出する(上記の式(1)参照)。したがって、「互いに同期していない電流特徴量Ifおよび該電圧特徴量Vfmに基づいてインピーダンスを算出する算出装置」と比較して、本実施の形態の算出装置150は、精度良くインピーダンスを算出できる。また、比較例の算出装置のように、各SBM7nごとに電流検出部を設ける必要がないことから、製造コストを抑制できる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
また、タイミングts3からの所定期間T1においては、受信部104は、単位電池53の電圧特徴量Vf3を取得しないものの、他の電圧特徴量を取得した場合が示されている。この場合には、BMU100は、単位電池53以外の単位電池のインピーダンスを算出し、単位電池53のインピーダンスを算出しない。この場合に、BMU100が単位電池53のインピーダンスR3を算出する構成が考えられる。しかしながら、電流特徴量Ifと電圧特徴量Vf3とは同期していない可能性がある。したがって、この構成では、互いに同期していない電流特徴量Ifおよび電圧特徴量Vf3でインピーダンスR3を算出することになり、不正確である可能性の高いインピーダンスR3を算出してしまう。したがって、本実施の形態においては、所定期間外で取得された電圧特徴量に対応する単位電池のインピーダンスについては算出しない。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
図7は、各SBM7とBMU100との処理を示すフローチャートである。各SBM7の図7の処理、およびBMU100の図7の処理は、上述の割込期間毎に実行される。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
このように、本実施の形態においては、電流特徴量は電流値の変動量を含み、電圧特徴量は電圧値の変動量を含む。したがって、算出装置150は、比較的簡単な演算処理で単位電池のインピーダンスを算出できる。特に、電池5の充電中においては電流、電圧の変動が階段状となり、精度の高い電流値の変動量(所定量MI以上の変動量)および精度の高い電圧値の変動量(所定量MV以上の変動量)を取得することができる。その結果として、算出装置150は、精度の高いインピーダンスを算出できる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
実施の形態3においては、電圧特徴検出部74は、電圧測定部72からの電圧値に対して所定演算を実行することにより単位電池のOCVを推定する。所定演算は、たとえば、ローパスフィルタに電圧測定部72からの電圧信号を通過させる演算である。そして、電圧特徴検出部74は、電圧値からOCVを差し引くことにより、差分値を算出する。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
電圧特徴検出部74は、差分値がゼロクロスしたか否かを判断する。そして、図9(E)に示すように、電圧特徴検出部74は、差分値がゼロクロスしたときの該差分値の変動量を電圧特徴量Vfとして検出する。図9の例では、差分平均値XV1と、差分平均値XV2とが示されている。差分平均値XV1は、ゼロクロスする前の差分平均値である。差分平均値XV2は、差分平均値XV1が算出された差分値がゼロクロスした後の差分平均値である。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0083
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0083】
図10は、実施の形態4の算出装置150Aの構成例を示す図である。図10の例では、N個の単位電池151~15Nが並列接続されている例が示されている。算出装置150Aは、N個のSBM71A,...7NAと、BMU100Aとを有する。SBM71A,...7NAは、それぞれ、並列接続された単位電池151,...15Nに対応付けられて配置されている。N個のSBM71A,...7NAは、まとめて、「SBM7A」または「SBM7nA」とも称される。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0084
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0084】
SBM7nAは、電流測定部106Aと、電流特徴検出部108Aと、送信部76と、アンテナ78とを有する。電流測定部106Aは、該電流測定部106Aを含むSBM7nAに対応する単位電池15nの電流値Inを測定する。電流特徴検出部108Aは、電流測定部106Aから出力される電流値Inを監視することにより、割込期間毎に該電流特徴量Ifnを検出する。電流特徴検出部108Aが電流特徴量Ifnを検出した場合には、送信部76に送信する。送信部76は、アンテナ78経由で無線通信によりBMU100に送信する。また、図10では、SBM71から電流特徴量If1がBMU100に送信されており、SBM7Nから電流特徴量IfNがBMU100に送信されていることが示されている。