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特開2023-137512検査装置及び当該検査装置を備えた包装機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137512
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】検査装置及び当該検査装置を備えた包装機
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/61 20060101AFI20230922BHJP
   B65B 31/04 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G01N21/61
B65B31/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043756
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000108281
【氏名又は名称】ゼネラルパッカー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】大島 雅志
(72)【発明者】
【氏名】宮部 祐樹
【テーマコード(参考)】
2G059
3E053
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059CC01
2G059CC04
2G059CC07
2G059DD12
2G059EE01
2G059FF04
2G059GG01
2G059GG02
2G059KK01
2G059LL04
2G059MM01
2G059MM05
2G059MM12
2G059NN01
2G059PP02
3E053AA06
3E053DA02
3E053DA03
3E053DA04
3E053FA01
3E053JA03
(57)【要約】
【課題】酸素センサーの測定誤差を極めて小さくすると共に、当該酸素センサーの製品寿命を長期化してメンテナンスフリーにした検査装置と、当該検査装置を備えた包装機を提供する。
【解決手段】包装機10は、包装機本体11と、当該包装機本体11近傍にピロー型包装袋の包装空間B内を不活性ガスで置換したときの残留ガスを検査する検査装置100とから構成されている。検査装置は、不活性ガスと残留ガスからなる検査対象ガスGで満たされるガスセル101と、ガスセル内の残留ガス濃度を測定する測定装置102と、ガスセルへ検査対象ガスを送り込むガス流通路103とからなる。測定装置は、ガスセル内へ所定波長のレーザー光を出射し、当該レーザー光がガスセルを透過して残留ガスで吸収されたときの吸光度に基づいて、ガスセル内の残留ガスの濃度を計測するレーザー式ガス濃度計120aを有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装袋又は包装容器或いはこれらに類する包装体類が備える所定の包装空間内をガス置換する所定の不活性ガス、及びガス置換した際に前記包装空間内に残留する空気とからなる検査対象ガスを検査する検査部と、
当該検査部へ前記検査対象ガスを導入するガス流通路とから構成される検査装置であって、
前記検査部は、所定長さの筒体状のガスセルと、当該ガスセル内の前記検査対象ガスに混入している所定の残留ガスの濃度を測定する測定装置とを有し、
当該測定装置を、所定波長のレーザー光を形成するレーザー光源と、前記ガスセルの一端に接続され、当該ガスセル内へ前記レーザー光を出射する出射部と、前記ガスセルの他端に接続され、当該ガスセルを透過した前記レーザー光を受光する受光部と、前記ガスセル内の前記残留ガスの濃度を計測するガス濃度計とから構成し、
当該ガス濃度計が、前記出射部から出射された前記レーザー光の前記波長と、前記ガスセル内の前記残留ガスに吸収された前記レーザー光の前記波長を比較し、その吸収された前記波長に係る吸収スペクトルの吸光度に基づいて前記残留ガスの濃度を計測して、
前記ガスセル内の前記残留ガスの濃度に係る測定結果に基づいて、前記包装空間内の前記検査対象ガスに含まれている前記残留ガスの濃度を検査するようにしたことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記ガス流通路が、少なくとも前記包装空間内から前記検査対象ガスを吸引する吸引ノズルと、
少なくとも前記包装空間内から前記検査対処ガスを連続して吸引するポンプと、
吸引されている前記検査対象ガスの流量を測定するガス流量計と、
前記吸引ノズル、前記ポンプ、及び前記ガス流量計をそれぞれ接続するパイプラインとからなることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
所定の包装空間を備えた包装袋又は包装容器或いはこれらに類する包装体類を所定の搬送路上で搬送する搬送装置と、
前記包装空間へ被包装物を充填する充填工程を行う充填装置と、
前記包装空間内を所定の不活性ガスで満たして、前記包装空間内を前記不活性ガスで置換するガス置換工程を行うガス置換装置とを有し、
前記搬送路上で前記包装体類が備える前記包装空間内へ前記被包装物を充填すると共に、当該包装空間内を前記不活性ガスでガス置換して所定の包装製品を製造する包装機において、
前記包装空間内をガス置換する前記不活性ガス、及びガス置換した際に前記包装空間内に残留する空気とからなる検査対象ガスを検査する検査部と、
当該検査部へ前記検査対象ガスを導入するガス流通路とから構成される検査装置であって、
前記検査部は、所定長さの筒体状のガスセルと、当該ガスセル内の前記検査対象ガスに混入している所定の残留ガスの濃度を測定する測定装置とを有し、
当該測定装置を、所定波長のレーザー光を形成するレーザー光源と、前記ガスセルの一端に接続され、当該ガスセル内へ前記レーザー光を出射する出射部と、前記ガスセルの他端に接続され、当該ガスセルを透過した前記レーザー光を受光する受光部と、前記ガスセル内の前記残留ガスの濃度を計測するガス濃度計とから構成し、
当該ガス濃度計が、前記出射部から出射された前記レーザー光の前記波長と、前記ガスセル内の前記残留ガスに吸収された前記レーザー光の前記波長を比較し、その吸収された前記波長に係る吸収スペクトルの吸光度に基づいて前記残留ガスの濃度を計測して、
前記ガスセル内の前記残留ガスの濃度に係る測定結果に基づいて、前記包装空間内の前記検査対象ガスに含まれている前記残留ガスの濃度を検査するようにしたことを特徴とする包装機。
【請求項4】
前記ガス流通路が、少なくとも前記包装空間内から前記検査対象ガスを吸引する吸引ノズルと、
少なくとも前記包装空間内から前記検査対処ガスを連続して吸引するポンプと、
吸引されている前記検査対象ガスの流量を測定するガス流量計と、
前記吸引ノズル、前記ポンプ、及び前記ガス流量計をそれぞれ接続するパイプラインとからなることを特徴とする請求項3に記載の包装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋内をガス置換した際の残留ガスを検査する検査装置と、当該検査装置を備えた包装機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、包装袋の袋口を開口し、当該包装袋内へ被包装物を充填し、袋口を封止して袋製品を形成する包装工程において、被包装物の酸化、劣化を防止するため、当該包装袋内を不活性ガス、たとえば、窒素ガス、二酸化炭素ガスで置換するガスパージと呼ばれる手法が知られている。当該ガスパージ後、包装袋内に酸素ガスが所定濃度以上残留していた場合、被包装物が酸化するおそれが非常に高くなるため、包装体内の残留ガス濃度を測定することが重要である。
【0003】
そして、従来、包装袋内の残留ガス濃度の測定には、ジルコニア式の酸素分析計が広く用いられている。当該ジルコニア式酸素分析計は、高温に加熱したジルコニア隔壁の両側に酸素分圧があると、その分圧差に応じた起電力が発生する酸素濃淡電池と、当該高温ジルコニア隔壁に電流を流すと電流の向きと逆方向へ酸素分子を通す酸素ポンプと呼ばれる原理・現象を利用して、酸素濃度を検知可能にした酸素センサーを有している。
このような酸素センサーは、ジルコニア式の他にもガルバニ式或いはポーラロ式と呼ばれるものが知られている。しかし、ガルバニ式又はポーラロ式の酸素センサーは電解液を満たした容器と当該容器を覆蓋するガス透過性の隔膜を要する構造であることから、隔膜の破損又は汚損、電解液の蒸発、電解質の消耗等の原因によって短寿命であり、電解液、電解質の反応を経てから検知電流が流れるため応答速度が遅れる傾向がある。そのため、ガルバニ式及びポーラロ式の酸素センサーよりも長寿命であり、応答速度が速いジルコニア式が多く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】引用なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のジルコニア式酸素センサーは、不活性ガス及び残留ガスである酸素ガスに加えてアルコール等の可燃性ガスが混入している場合に、高温ジルコニア隔壁との間で燃焼反応が生じて計測値に誤差が発生するおそれがある。このような計測値の誤差は、包装袋へ収納する被包装物がアルコール等の可燃性ガスを発生させやすいものである場合に起こりやすい。
また、高温ジルコニア隔壁と水又は水蒸気が反応した場合、水素が生成される。生成された水素はジルコニアと反応して当該ジルコニアを脆化させる。水素の他にも高温ジルコニアと反応し、当該ジルコニアを脆化、腐食する水素等の腐食性ガスが不活性ガスに混入するおそれがある。さらに、上記の酸素濃淡電池或いは酸素ポンプ現象は、触媒反応の一種であるので、当該触媒反応を阻害する被毒性物質が被包装物に含まれ、或いは不活性ガスに混入している場合には、センサーの働きが阻害され劣化するおそれがある。このように、包装袋へ収納する被包装物の種類、又は不活性ガスに混入する水蒸気、腐食性ガスによって、酸素センサーが劣化した場合は、頻繁に交換する必要が生じる。
さらに、センサーの構造上、ジルコニア隔壁を高温に加熱しなければならないため、酸素分析計を起動してから暖機運転をしなければならず、包装機と連動させていた場合、酸素分析計が安定して稼働するまでに誤差が生じるおそれがある。
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、酸素センサーの測定誤差を極めて小さくすると共に、当該酸素センサーの製品寿命を長期化してメンテナンスフリーにした検査装置と、当該検査装置を備えた包装機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の検査装置は、包装袋又は包装容器或いはこれらに類する包装体類が備える所定の包装空間内をガス置換する所定の不活性ガス、及びガス置換した際に前記包装空間内に残留する空気とからなる検査対象ガスを検査する検査部と、
当該検査部へ前記検査対象ガスを導入するガス流通路とから構成される検査装置であって、
前記検査部は、所定長さの筒体状のガスセルと、当該ガスセル内の前記検査対象ガスに混入している所定の残留ガスの濃度を測定する測定装置とを有し、
当該測定装置を、所定波長のレーザー光を形成するレーザー光源と、前記ガスセルの一端に接続され、当該ガスセル内へ前記レーザー光を出射する出射部と、前記ガスセルの他端に接続され、当該ガスセルを透過した前記レーザー光を受光する受光部と、前記ガスセル内の前記残留ガスの濃度を計測するガス濃度計とから構成し、
当該ガス濃度計が、前記出射部から出射された前記レーザー光の前記波長と、前記ガスセル内の前記残留ガスに吸収された前記レーザー光の前記波長を比較し、その吸収された前記波長に係る吸収スペクトルの吸光度に基づいて前記残留ガスの濃度を計測して、
前記ガスセル内の前記残留ガスの濃度に係る測定結果に基づいて、前記包装空間内の前記検査対象ガスに含まれている前記残留ガスの濃度を検査するようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の検査装置は、請求項1に記載の発明において、前記ガス流通路が、少なくとも前記包装空間内から前記検査対象ガスを吸引する吸引ノズルと、
少なくとも前記包装空間内から前記検査対処ガスを連続して吸引するポンプと、
吸引されている前記検査対象ガスの流量を測定するガス流量計と、
前記吸引ノズル、前記ポンプ、及び前記ガス流量計をそれぞれ接続するパイプラインとからなることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の包装機は、所定の包装空間を備えた包装袋又は包装容器或いはこれらに類する包装体類を所定の搬送路上で搬送する搬送装置と、
前記包装空間へ被包装物を充填する充填工程を行う充填装置と、
前記包装空間内を所定の不活性ガスで満たして、前記包装空間内を前記不活性ガスで置換するガス置換工程を行うガス置換装置とを有し、
前記搬送路上で前記包装体類が備える前記包装空間内へ前記被包装物を充填すると共に、当該包装空間内を前記不活性ガスでガス置換して所定の包装製品を製造する包装機において、
前記包装空間内をガス置換する前記不活性ガス、及びガス置換した際に前記包装空間内に残留する空気とからなる検査対象ガスを検査する検査部と、
当該検査部へ前記検査対象ガスを導入するガス流通路とから構成される検査装置であって、
前記検査部は、所定長さの筒体状のガスセルと、当該ガスセル内の前記検査対象ガスに混入している所定の残留ガスの濃度を測定する測定装置とを有し、
当該測定装置を、所定波長のレーザー光を形成するレーザー光源と、前記ガスセルの一端に接続され、当該ガスセル内へ前記レーザー光を出射する出射部と、前記ガスセルの他端に接続され、当該ガスセルを透過した前記レーザー光を受光する受光部と、前記ガスセル内の前記残留ガスの濃度を計測するガス濃度計とから構成し、
当該ガス濃度計が、前記出射部から出射された前記レーザー光の前記波長と、前記ガスセル内の前記残留ガスに吸収された前記レーザー光の前記波長を比較し、その吸収された前記波長に係る吸収スペクトルの吸光度に基づいて前記残留ガスの濃度を計測して、
前記ガスセル内の前記残留ガスの濃度に係る測定結果に基づいて、前記包装空間内の前記検査対象ガスに含まれている前記残留ガスの濃度を検査するようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の包装機は、請求項3に記載の発明において、前記ガス流通路が、少なくとも前記包装空間内から前記検査対象ガスを吸引する吸引ノズルと、
少なくとも前記包装空間内から前記検査対処ガスを連続して吸引するポンプと、
吸引されている前記検査対象ガスの流量を測定するガス流量計と、
前記吸引ノズル、前記ポンプ、及び前記ガス流量計をそれぞれ接続するパイプラインとからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る検査装置によれば、包装体類が備える包装空間内をガス置換する不活性ガス、及びガス置換した際に包装空間内に残留する空気とからなる検査対象ガスを検査する検査部を設け、当該検査部は、所定長さの筒体状のガスセルと、当該ガスセル内の検査対象ガスに混入している所定の残留ガスの濃度を測定する測定装置とを有している。
そして、当該測定装置は、所定波長のレーザー光を形成するレーザー光源と、前記ガスセルの一端に接続され、当該ガスセル内へ前記レーザー光を出射する出射部と、前記ガスセルの他端に接続され、当該ガスセルを透過した前記レーザー光を受光する受光部と、前記ガスセル内の前記残留ガスの濃度を計測するガス濃度計とから構成されたレーザー式ガス濃度測定装置である。
当該レーザー式ガス濃度測定装置は、ガスセル内に隔離された検査対象ガスにレーザー光を透過させる構成であるから、ジルコニア式酸素センサーのようにセンサー部が劣化しないので、製品寿命を長期化させることができる。また、検査対象ガスがガスセル内に隔離されているので、検査対象ガスにアルコール等の可燃性ガスが含まれている場合であっても測定誤差を極めて小さくすることができる。
【0012】
また、本発明に係る包装機によれば、当該包装機は上記検査装置とガス流通路で接続され、当該ガス流通路は、包装体類が備える包装空間内をガス置換する不活性ガス、及びガス置換した際に包装空間内に残留する空気とからなる検査対象ガスを検査部へ送り込むように構成されている。
これによって、ガス置換工程を備えた様々な包装機と上記検査装置を接続して、包装空間内の残留ガス濃度を測定する検査装置を備えた包装機を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施例に係る検査装置と包装機の構成の概略を示す説明図である。
図2】第1実施例に係る検査装置の構成の概略を示す左側面図である。
図3】第1実施例に係る検査装置の構成の概略を示す正面図である。
図4】第1実施例に係る他の検査装置の構成の概略を示す左側面図である。
図5】第1実施例に係る他の検査装置の構成の概略を示す背面図である。
図6】第1実施例に係る検査装置が有する測定装置の構成の概略を示す説明図である。
【実施例0014】
本発明に係る検査装置と、当該検査装置を備えた包装機に係る実施例を添付した図面にしたがって説明する。
図1は、本実施例に係る検査装置と包装機の構成の概略を示した説明図である。
【0015】
本実施例に係る包装機は、縦ピロー型包装機を例に示す。縦ピロー型包装機は、図1に示すように、長尺フィルムFを筒状に丸めて所定間隔でシールし、当該シールで区画された包装空間に被包装物を充填したピロー型包装袋を連続形成する包装機本体11を有し、当該包装機本体11の近傍に設置され、少なくともピロー型包装袋の包装空間内の気体を検査する検査装置100を有している。
このように、本実施例に係る検査装置100を説明するうえで、当該検査装置100を組み合わせやすい包装機本体11を備えた縦ピロー型包装機10が最適であるので採用した。
したがって、本実施例に係る検査装置100は、本実施例に例示した縦ピロー型包装機10に限定されず、ピロー型包装袋が横方向に連なって製造される横ピロー型包装機、又は箱、トレー等の包装容器に被包装物を充填する包装機、或いは所定の包装袋又は包装容器或いはこれらに類する包装体類が備える包装空間へ被包装物を充填する包装機であって、当該包装空間内を所定の不活性ガスで満たしてガス置換するガス置換工程を備えた包装機と組み合わせることができる。
【0016】
包装機本体11は、図1に示すように、フィルム供給装置12と、製筒装置13と、製袋装置14と、搬出装置15とを有し、他に図示を省略した搬送装置、充填装置、及びガス置換装置を有している。
フィルム供給装置12は、長尺フィルムFを巻回したフィルムロール12aと、長尺フィルムFに所定の張力をかけてしわを伸ばす複数本のローラーを備えたテンションローラー12bを有している。これによって、フィルム供給装置12は長尺フィルムFをフィルムロール12aから引き出し、テンションローラー12bでしわを伸ばした長尺フィルムFを製筒装置13へ供給するように構成されている。
搬送装置(図示略)は、所定の搬送経路(矢印T)に沿って長尺フィルムFを所定の搬送速度で搬送するガイドローラー(図示略)を有している。搬送経路Tは、図1に示すように、包装機本体10のフィルム供給装置12のテンションローラー12b端近傍の上方から、下方のカッター に向かって形成されている。フィルム供給装置12から供給された長尺フィルムFは、搬送経路Tに沿って、ガイドローラーによって送られ、製筒装置13、製袋装置14を経て袋状に形成され、充填装置を経て袋製品へ形成され、搬出装置15で包装機本体10外へ搬出される。
【0017】
製筒装置13は、図1に示すように、フィルムガイド13aとセンターシーラー13bを備えている。フィルムガイド13aは、長尺フィルムFの幅方向両端が所定の幅で重なり合うように、当該長尺フィルムFを幅方向に丸めるように構成されている。センターシーラー13bは、フィルムガイド13aで重ね合わされた長尺フィルムFの幅方向両端を熱または超音波で溶着してシールし、センターシール部Csを形成するように構成されている。
これによって、製筒装置13は、長尺フィルムFから筒体状の包材Rを形成することができる。
【0018】
製袋装置14は、図1に示すように、エンドシーラーを備えている。エンドシーラーは、相対する棒体状のヒータ対14a,14aを並置してなるヒートシーラーからなる。ヒータ対14a,14aは、所定の周期で開閉可能に構成されている。ヒータ対14a,14aが開放されているときは、包材Rはガイドローラーによって搬送経路Tに沿って送られ、ヒータ対14a,14aが閉鎖しているときは、包材Rはシールされてエンドシール部Esが形成される。当該エンドシール部Esが包材Rを所定の間隔で区画して、被包装物を充填可能な包装空間Bをエンドシール部Es間に形成する。
なお、エンドシーラーは、ヒータ対14a,14aを備えたヒートシーラーに限定されるものではなく、ホーンとアンビルを備えた超音波溶着装置を用いても良い。
また、ヒータ対14a,14aが閉鎖しているとき、図1に示すように、ヒータ対14a,14aが搬送経路Tに沿って移動してシール時間を確保するように構成しても良い。
【0019】
充填装置は、搬送経路Tの上方、筒状の包材Rの上部開口端近傍から包材Rへ挿入されたジョウゴと、当該ジョウゴの上方に設置され、被包装物が収容されたストッカーを有している。ストッカーは所定周期で開閉するシャッターを備えた排出口を有している。これによって、シャッターが開放しているとき、排出口から所定量の被包装物がジョウゴに注がれ、当該ジョウゴから、包材R内へ落下した被包装物は、包装空間B内へ充填収納される。
【0020】
ガス置換装置は、搬送経路Tの上方、筒状の包材Rの上部開口端近傍から包材Rへ挿入されたガスノズルを有している。ガスノズルは、タンク又はボンベに貯留された不活性ガス、たとえば、窒素ガス(N)又は二酸化炭素ガス(CO)、アルゴンガス(Ar)等を包材R内及び包装空間B内へ所定時間連続して供給可能に構成されている。
ガス置換装置は、特に包装空間B内へ連続して不活性ガスを送り込むことによって、当該不活性ガスのガス圧で包装空間B内の空気を脱気すると共に、当該包装空間B内をガス置換するように構成されている。これによって、脱気された空気は包装空間B上方の包材R上部開口端から外気へ排出される。
このように、ガス置換装置は、包装空間B内を不活性ガスで置換するように動作しているが、当該不活性ガスを送り込む際のガスノズルから放出される気流の状態によっては、包装空間Bの空気と不活性ガスが混じる場合があり、当該空気に含まれている酸素が包装空間B内に残留するおそれがある。この残留酸素ガスの濃度を検査するため、本実施例に係る縦ピロー型包装機10は包装機本体11に並設された検査装置100を有している。当該検査装置100は、少なくとも包装空間B内へ連続して吹き込まれる不活性ガスと、当該包装空間B内に残存している空気からなる検査対象ガスGを検査するように構成されている。当該検査装置100に係る説明は後述する。
【0021】
搬出装置15は、図1に示すように、製袋装置14のヒータ対14a,14a下方に配置されたカッター15aと、袋製品を搬出するコンベア15bを備えている。カッター15aは、1又は複数枚の刃を有している。当該刃は、エンドシーラーが包装空間を封止して形成したエンドシール部Esの幅方向に沿って切断し、ピロー型包装袋を一つずつ切り離す直刃と、また好ましくは、二つ以上のピロー型包装袋を連ねてなる包装袋連包を形成する場合に、互いに隣接して連接するピロー型包装袋間のエンドシール部Esの幅方向に沿ってミシン目を形成するミシン刃を備えている。これによって、搬出装置15は、ピロー型包装袋を一つずつ又は複数個連ねてなる包装袋連包を包装機本体11からコンベア15bで搬出することができる。
【0022】
検査装置100は、図1に示すように、包装機本体11から検査対象ガスが導入されるガスセル101と、当該ガスセル101内に満たされた検査対象ガスGを測定する測定装置102とから構成されている。検査装置100は、包装機本体11近傍に設置され、図1に示すように、ガス流通路103で接続されている。
本実施例に係る検査装置100は、図2及び図3に示すように、包装機本体11近傍に設置するように構成された据え置き型検査装置100Aと、図4及び図5に示すように、一の包装機本体11と他の包装機本体11との間で持ち運び可能に構成された可搬型検査装置100Bを例にとって以下説明する。
なお、検査対象ガスGは、少なくともガス置換装置が供給する不活性ガスと包装空間及び当該包装空間に連接する包材の内部に残存している空気とから構成され、さらに、被包装物の種類また当該被包装物が包装空間へ充填される状態によっては、揮発したアルコール、水素ガス等の可燃性ガス、水蒸気又は霧状の水分が含まれる可能性があり、また微量ながら食品添加物に含まれる硫化水素、亜硫酸、亜硝酸、塩素、アンモニア等から発生する腐食性ガスが含まれる場合がある。
【0023】
ガス流通路103は、吸引ノズル104と、ポンプ105と、ガス流量計106と、パイプラインとから構成されている。
吸引ノズル104は、搬送経路Tの上方、筒状包材Rの上部開口端近傍から当該包材R内へ挿入され、好ましくはノズル先端部を包装空間B近傍に配置して、包装空間B内の検査対象ガスGを吸引するように構成されている。
ポンプ105は、包装空間B内から吸引した検査対象ガスGをガス流量計106側へ送り出すように構成されている。上記のガス置換装置が包装空間B内へ不活性ガスを送り込む際の所定の圧送力と、ポンプ105が包装空間B内から検査対象ガスGを吸い出す際の圧送力を平衡させることによって、包材R内及び包装空間B内を一定の圧力に保ち、ガス置換することができる。
ガス流量計106は、ポンプ105によって吸引されている検査対象ガスGの流量を測定するように構成されている。これによって、包装空間Bから連続的に吸引されている検査対象ガスGの流量を、少なくとも目視確認することができる。
パイプラインは、複数のパイプをつなぎ合わせて構成され、検査対象ガスGの影響を受けにくい合成樹脂製、ゴム製、金属製のチューブ又はパイプが好ましい。第1パイプ107は、吸引ノズル104と検査装置100に設けたガスコネクタ108を接続するように構成されている。そして、図2又は図6に示すように、パイプラインは、ガスコネクタ108とポンプ105を接続する第2パイプ109と、ポンプ105とガス流量計106を接続する第3パイプ110と、ガス流量計106とガスセル101を接続する第4パイプ111とから構成されている。これによって、パイプラインを通じて検査対象ガスGを、包装空間B及び当該包装空間に連接する包材R内からガスセル101へ送り込むことができる。なお、図3図5においては、パイプラインの図示を省略する。
【0024】
据え置き型検査装置100Aは、図2及び図3に示すように、長方体状に組まれたフレーム115上に制御盤120が設置されている。フレーム115内には、ガスセル101とレーザー発生部125と受光部130、並びにポンプ105とガス流量計106が所定の位置に配置されている。
制御盤120内にはガス濃度計120aが設けられている。また、当該ガス濃度計120a、及びレーザー発生部125並びに受光部130は、検査対象ガスGに含まれている残留酸素ガスの濃度を測定する測定装置102を構成する。
ポンプ105は、10.6kPaの圧送力を備え、4L/minの定格出力を備えた電磁式エアーポンプからなり、ガスコネクタ108と接続された第2パイプ109が吸気口に嵌合され、ガス流量計106と接続された第3パイプ110が排気口に接続されている。電磁式エアーポンプは、永久磁石からなるロッドと、当該ロッドを囲橈保持する電磁石と、ロッド先端に固着されたダイヤフラムと、ダイヤフラムに一端が封止され、他端に吸気口と連通する吸気弁と排気口と連通する排気弁が配置された筒体状のエアチャンバーとから構成されている(いずれも図示略)。電磁石で振動するロッドがダイヤフラムを変形させることによって、エアチャンバーの容積が変化し、当該容積変化に伴って、エアチャンバー内に吸気された空気を圧縮して排気することができる。
ガス流量計106は、筒体の中にフロートを封入したフロート式流量計からなり、ポンプ105と第3パイプ110で接続され、ガスセル101と第4パイプ111で接続されている。フロート式ガス流量計は、筒体に刻まれた目盛りをフロートに設けられた指針が指し示すことでガス流量を目視計測することができる。
電源入力端子140は、所定の外部電源を接続可能に構成されている。これによって、制御盤120及び測定装置102に対して電源を供給し、制御盤120からレーザー発生部125、受光部130、ポンプ105へ電源を供給することができる。
包装機連動端子141は、包装機本体11と接続可能に構成されている。これによって、包装機本体と検査装置間で同期信号を送受信し、当該同期信号を介して包装機本体の各装置、特に製袋装置と充填装置、ガス置換装置と連動させることができる。
【0025】
可搬型検査装置100Bは、図4及び図5に示すように、略立方体状に組まれたフレーム105内の所定位置に制御盤120、ガスセル101、レーザー発生部125、受光部130、ポンプ105、ガス流量計106が配置されている。
制御盤120内にはガス濃度計120aが設けられている。また、当該ガス濃度計120a、及びレーザー発生部125並びに受光部130は、検査対象ガスGに含まれている残留酸素ガスの濃度を測定する測定装置102を構成する。
ガスセル101は、縦方向のフレーム105に沿って配置するのではなく、図4に示すように、縦方向のフレーム105と制御盤120との間で対角に沿って斜めに配置されている。これによって、立設配置するよりも光路長を長く確保すると共に、検査装置100Bをコンパクトに構成することができる。
ポンプ105は、据え置き型検査装置100Aと同様に構成された電磁式エアーポンプからなる。
ガス流量計106は、連続してガス流通路103のガス流量を検知可能な流量センサーを備え、当該ガス流量をデジタル表示可能なモニタを有している。流量センサーで検知されたガス流量は、電気的に数値変換されてガスフロー信号へエンコードされる。当該ガスフロー信号は制御盤120内の所定の記憶装置へ収集されてガスフローデータが形成される。ここで、ガス流量に対して所定の閾値を設けた場合、たとえば、ガス流量が当該閾値を下回ったことについてガスフロー信号から明らかになったとき、ランプの点滅又は警報音、警報メロディ等で警報を発することができる。そして、本検査装置100Bは包装機連動端子141を介して包装機本体11と接続されているので、ガス流量の低下、すなわちガス圧の低下を包装機本体11へフィードバックして、後述する包装工程を停止させることができ、これによって、不良品の発生を防ぐことができる。
また、ガスフローデータに基づいて不活性ガスの流量を調整、把握し、たとえば、ボンベ等の不活性ガスの供給源に係る交換時期を予測することができる。
ガスコネクタ108からポンプ105、ガス流量計106、ガスセル101を接続する各パイプからなるパイプラインは、図示を省略するが据え置き型検査装置100Aと同様に構成されている。
また、電源入力端子140、包装機連動端子141についても据え置き型検査装置100Aと同様に構成されている。
可搬型検査装置100Bによれば、据え置き型検査装置100Aよりもガスセル101、ガス流量計106等の大きさや配置を見直して省スペース化を図り、コンパクトに構成した。これによって、たとえば、既設の縦ピロー型包装機10に後から追加する際に据え置き型検査装置100Aよりも設置場所の自由度を向上させることができる。
また、据え置き型検査装置100Aよりも持ち運びしやすい可搬型検査装置100Bは、一の縦ピロー型包装機10において検査した後、場所を移して他の縦ピロー型包装機10で容易に検査することができる。
したがって、縦ピロー型包装機10で製造する袋製品に対して、当該袋製品の残留酸素ガス濃度を恒常的に全量検査したい場合には据え置き型検査装置100Aを組み合わせ、複数台の縦ピロー型包装機10間で、たとえば一の縦ピロー型包装機10において不活性ガスのガスボンベを交換するとき、包材R内へ吹き込まれる不活性ガスが吹き出し始めから安定するまでの検査を行ったり、製造途中に検査対象ガスGを抜き取ってサンプリング検査をしたりする場合には、可搬型検査装置100Bを組み合わせるといったように用途目的に合わせて検査装置100を選択することができる。
【0026】
ここで、上記の据え置き型検査装置100Aあるいは可搬型検査装置100Bについて、構成の概略を示す説明図を図6に示し、ガスセル101及び測定装置102を構成する各部について説明する。
ガスセル101は、筒体からなり、図6に示すように、ガスセル101の一端に形成されたガス導入口101aと、他端に形成された排気口101bを有している。ガス導入口101aは、図6に示すように、ガス流量計106と第3パイプ111で接続されている。ガスセル101を構成する筒体の開口端は、測定装置102によって覆蓋されている。ガスセル101に対して検査対象ガスGは、ガス導入口101aからガスセル101内へ注入され、当該ガスセル101内を満たしたのち、排気口101bから排気されるように構成されている。ガスセル101は、後述するようにレーザー光が筒内に照射され、レーザー光の吸光度を測定するので、ガスセル外からの光の影響を排除できる遮光性を備えた筒体であることが好ましい。
【0027】
測定装置102は、図6に示すように、ガスセル101の一端を覆蓋するように配置されたレーザー発生部125と、ガスセル101の他端を覆蓋するように配置された受光部130と、制御盤120内に収納されたガス濃度計120aとからなり、検査対象ガスGに含まれている残留酸素ガスの濃度を測定するように構成されている。
【0028】
レーザー発生部125は、図3図5及び図6に示すように、レーザー光源126と、レーザー光源126で形成されたレーザー光を出射する出射部127とを有している。
レーザー光源126は、波長が可変可能なダイオードからなる半導体レーザー素子を備え、近赤外領域のレーザー光を射出可能に形成されている。本実施例に係る半導体レーザー素子は、たとえば、DFB(Distributed Feed Back:分布帰還形)レーザーと呼ばれる高出力の半導体レーザー素子である。
出射部127は、図3及び図5に示すように、レーザー光源126で生成したレーザー光をガスセル101の筒内部で、当該ガスセル101の一端から他端に向かって出射するように構成されている。また、このとき出射部127は、出射するレーザー光の出射光強度を電気的に変換し、所定の倍率で増幅した出射光信号を、ガス濃度計120aへ出力するように構成されている。
【0029】
受光部130は、図3図5及び図6に示すように、レーザー光を受光する受光センサー131と、受光アンプ132を有している。
受光センサー131は、ガスセル101を透過して検査対象ガスGによって減衰したレーザー光の透過光強度を電気的な受光信号に変換する光電素子、たとえば、フォトダイオード等の受光素子を備えている。
受光アンプ132は、受光センサー131で形成された受光信号を所定の倍率で増幅し、透過光強度に基づく受光信号を、ガス濃度計120aへ出力するように構成されている。
これによって、ガス濃度計120aは、出射部127から入力された出射光信号と、受光部130から入力された受光信号に基づいてガスセル101内の残留酸素ガス濃度を測定することができる。
【0030】
ガス濃度計120aは、図6に示すように、出射するレーザー光の波長と出射光強度を制御する制御部150と、出射光信号と受光信号とを比較して残留ガス濃度を計測する計測部151を有している。
制御部150は、レーザー発生部125におけるレーザー光の調整制御と増幅制御を行うように構成されている。調整制御は、レーザー光源126の半導体レーザー素子から射出されるレーザー光の波長を、計測対象ガスに含まれる残留ガス固有の特定波長に調整する制御である。増幅制御は、レーザー光源126のレーザー光を出射部127から所定の出射光強度で射出するように増幅する制御である。これによって、レーザー発生部125は、残留酸素ガス固有の特定波長であるレーザー光を所定の出射光強度で出射部127から出射することができる。
ここで、本実施例に係る測定装置102が測定する残留ガスは、上記したように酸素ガス(O)である。当該酸素ガス固有の吸収波長帯は760nm帯であり、当該吸収波長帯に含まれる複数の吸収スペクトルのうち、一の吸収スペクトルに係る特定波長がレーザー光の出力波長として選択される。本実施例では、酸化により被包装物を劣化させるおそれがある酸素ガスを検出するように構成したが、これに限定されるものでは無く、制御部150の調整機能は、検出対象のガスを特定する吸収波長帯に係る吸収スペクトルを任意に調整、設定することができるように構成されている。
【0031】
計測部151は、出射光信号と受光信号に基づいて、所定の計測方法によって残留ガスの濃度を0.1秒~2.0秒間隔で周期的に計測するように構成されている。ガスセル101内を透過するレーザー光は、検査対象ガスG内の残留酸素ガスで吸収されて減衰するので、その減衰率を求めることによって、検査対象ガスGに含まれている残留酸素ガス濃度を求めることができる。すなわち、本実施例における計測方法は、出射光信号に係る出射光強度に対し、受光信号に係る透過光強度を比較して、所定光路長におけるレーザー光の減衰率、言い換えればレーザー光の透過率を計算し、当該透過率に基づいてガスセル101内で残留酸素ガスによって吸収されたレーザー光の吸光度を求め、当該吸光度に基づいてガスセル内の残留酸素ガスのガス濃度を計測する方法である。
【0032】
ここで、当該ガス濃度の計測方法をより詳しく説明すると、当該計測方法は、波長可変半導体レーザー吸収分光法に基づくものである。
波長可変半導体レーザー吸収分光法(Tunable Diode Laser Absorption Spectroscopy:TDLAS)とは、図6に示すように、検査対象ガスGが封ぜられ、所定の光路長Lを備えたガスセル内で、出射部127から出射されたレーザー光に係る所定の出射光強度Iと、検査対象ガスに含まれる残留酸素ガスに吸収された透過後のレーザー光を受光部で受光したときの透過光強度Iとから透過率Tを求めて、透過率Tに基づくレーザー光の吸光度Aからガス濃度Cを測定する方法である。
【0033】
酸素ガス、窒素ガス等の気体は、それぞれ固有の吸収波長帯を有し、当該吸収波長帯にはより強く光を吸収する波長に係る吸収線が複数本含まれていることが知られている。それらの吸収線のうち、任意に選択された一本の吸収線に係る特定波長に合わせて、出射するレーザー光の近赤外領域の波長を変調、増幅して、測定対象ガスでより顕著に吸収させるように構成した方法がTDLASである。そして、ガスセル101の透過前後で変化する特定波長の吸収スペクトルに基づいてレーザー光の吸光度を求めてガス濃度を測定している。
本実施例において検査対象ガスに含まれる測定対象ガスは、吸収波長帯が760nm帯の酸素ガス(O)である。制御部150は、当該吸収波長帯に含まれる複数の吸収線のうち、一の吸収線に係る特定波長を出射するレーザー光の波長として選択するように構成されている。
【0034】
波長可変半導体レーザー吸収分光法(TDLAS)は、ランバート・ベールの法則に基づいてガス濃度を測定するものである。ランバート・ベールの法則とは、図6に示すように、出射光強度をI、ガスセル内の検査対象ガスを透過した透過光強度をI、出射光に対する透過光の透過率をTとして、光路長をL、ガス濃度をCとすると、特定波長の吸収スペクトルで射出されたレーザー光の吸光度Aとの間に、次の数式1が成立する関係である。ここでεは測定対象となっている所定のガスがレーザー光を吸収する固有の吸収係数である。
【0035】
【数1】
【0036】
出射部127と受光部130は筒体状のガスセル101両端に固定されているので、光路長Lは一定である。すなわち、出射光強度と透過光強度から得られる透過光の透過率T、またはガスセル内で検査対象ガスに含まれている酸素ガスに吸収されたレーザー光の特定波長に係る吸収スペクトルの吸光度Aを得ることによって、ガスセル内の酸素ガスに係るガス濃度Cを求めることができる。
ここで、吸光度Aと光路長Lとの関係は比例しているので、ガスセルの長さを十分に確保するとガス濃度Cの検知感度を向上させることができる。したがって、測定装置102において、図6に示したように出射部127と受光部130間でレーザー光を一直線に透過させる構成に限定されるものではなく、たとえば、ガスセル101の両端部に互いに対向する反射鏡を設けて、出射部127と受光部130間でレーザー光を複数回反射させて、検査対象ガスGを透過するレーザー光の光路長Lを伸ばすように構成しても良い。
このように検知感度を向上させることによって、たとえば数ppmレベルのガス濃度まで検知できるように検知可能範囲を広げた場合、数%レベルのガス濃度の測定は容易に行うことができ、その測定精度を大きく向上させることができる。
【0037】
本実施例に係るガス濃度計120aによれば、残留酸素ガス濃度に係る測定可能な検知範囲を広く取ることができるので、当該検知範囲に合わせて残留酸素ガスの許容範囲に係る閾値の設定範囲を広く取ることができる。当該閾値について、検出した残留酸素ガスの濃度が所定の閾値以上であった場合、たとえば、制御盤120に設けたランプ又はブザーを用いて警報信号を報知し、或いはモニタ画面上に表示することができる。
また、本実施例に係るガス濃度計120aによれば、当該ガス濃度計120aを備えた検査装置100は、包装機連動端子141を介して包装機本体11と連動するように接続されているので、所定の閾値以上にガスセル101内のガス濃度が濃くなったとき、包装機本体11を緊急停止させることができる。これによって、不良品の発生を防ぐことができる。
さらに、本実施例に係るガス濃度計120aによれば、検査対象ガスGを連続的に供給するガスセル101内へ連続してレーザー光を照射する構成としたことから、検査対象ガスGの計測履歴を管理し、包装機連動端子141を介して接続された縦ピロー型包装機10で連続的に製造された袋製品の製造履歴と計測履歴と照合することができ、あわせてピロー型包装袋の包装空間B内の残留酸素ガス濃度を追跡可能にすることができる。
【0038】
上記の構成を有する縦ピロー型包装機10では、ピロー型包装袋に被包装物を充填して袋製品を形成する包装工程と、当該ピロー型包装袋の包装空間内の残留ガス濃度を検査する検査工程とを有している。
【0039】
包装工程は、フィルム供給工程、製筒工程、製袋工程、充填工程、ガス置換工程と、搬出工程からなる。当該包装工程は、以下に説明するように、フィルムロール12aから引き出した長尺フィルムFを搬送経路T上へ供給し、所定の搬送速度で搬送して包材Rに形成し、当該包材Rからピロー型包装袋の袋底部が形成されると共に包装空間Bが形成され、当該包装空間Bへ被包装物が充填され、包装空間B内をガス置換して袋口部を封止し、ピロー型包装袋に係る袋製品が製造される。これによって、縦ピロー型包装機10は、連続的に供給される長尺フィルムFから袋製品を連続的に製造搬出することができる。
【0040】
フィルム供給工程は、フィルム供給装置12がフィルムロール12aから引き出した長尺フィルムを搬送経路Tへ供給する処理を行う工程である。
【0041】
製筒工程は、製筒装置13が、長尺フィルムFの幅方向両端が重なり合うように丸めて筒体状の包材Rを形成する処理を行う工程である。当該製筒工程では、フィルムガイド13aが長尺フィルムFの幅方向両端を重ね合わせて、当該長尺フィルムFを筒体状に丸め、センターシーラー13bが重ね合わされた長尺フィルムFの幅方向両端を連続的にシールしてセンターシール部Csを形成する。これによって、搬送経路T上の長尺フィルムFから筒体状の包材Rを形成することができる。
【0042】
製袋工程は、包材Rから互いに連接するピロー型包装袋を連続的に形成する処理を行う工程である。製袋工程は、筒体状の包材Rの幅方向に亘ってヒータ対14a,14aを備えたエンドシーラーによってシールしてエンドシール部Esを形成する第1シール工程と第2シール工程とを有している。
第1シール工程は、ピロー型包装袋の袋底部側のエンドシール部Esを形成し、包装空間Bを形成する処理を行う工程である。当該第1シール工程が行われた後、搬送装置が搬送経路Tに沿って包材Rを搬送し、包装空間Bの上方で第2シール工程が行われる。この第1シール工程と第2シール工程の間に、充填工程とガス置換工程が行われる。
第2シール工程は、包装空間B内に被包装物が充填されたピロー型包装袋の袋口部を封止して、当該袋口部側のエンドシール部Esを形成する工程である。
第2シール工程において、先のピロー型包装袋の袋口部を封止したとき、同時に、第1シール工程で後のピロー型包装袋の包装空間Bを形成することができる。このようにして、エンドシール部Esで区画された包装空間Bが連なるピロー型包装袋の包装袋連包が連続形成される。
【0043】
第1シール工程の後、充填工程、及びガス置換工程並びに脱気工程が行われる。
充填工程は、第1シール工程で形成されたエンドシール部Esによって区画された包装空間Bに対し、充填装置がストッカーに貯留された被包装物を、ジョウゴを介して所定量充填する処理を行う工程である。
ガス置換工程と脱気工程は、筒体状の包材Rと当該包材Rに連接して形成される包装空間B内へ不活性ガスをガスノズルで吹き込む処理を行う工程である。これによって、不活性ガスが包材R及び包装空間B内の空気を押し出して脱気すると共に、それらの空間内を不活性ガスで満たすことができる。
充填工程はガス置換工程と同時に行っても良いし、充填工程、ガス置換工程と順に行うようにしても良い。本実施例に係るガス置換工程で使用される不活性ガスは、窒素ガスであるが、これに限定されず任意の不活性ガスを使用することができる。
また好ましくは、充填工程、ガス置換工程、脱気工程と並行して、振動工程を設けても良い。振動工程は、被包装物の種類によっては少なくとも包装空間Bに振動を与えて、被包装物間の隙間を潰して余分な空気を追い出す処理を行う工程である。これによって、より一層包装空間B内を脱気すると共にガス置換することができ、被包装物を下方へまとめて、たとえば、積載収納時に省スペース化を図ることができる。
上記の充填工程等に係る処理が終了したとき、第2シール工程によってピロー型包装袋の袋口部をシールして、包装空間Bを封止する処理が行われてピロー型包装袋が形成されると共に、次のピロー型包装袋に係る包装空間Bを形成する第1シール工程が行われる。
こうして被包装物が充填された包装空間Bをエンドシール部Esで区画したピロー型包装袋が連続形成される。
このように、縦ピロー型包装機10は、長尺フィルムFから筒状の包材Rを形成し、各工程を経て被包装物を充填したピロー型包装袋を、図1に示すように、縦方向に連ねた包装袋連包を形成している。
【0044】
搬出工程は、上記の各工程を経て形成された包装袋連包を、搬出装置15で縦ピロー型包装機10から搬出する処理を行う工程である。搬出装置15は、包装袋を切離可能な直刃又はミシン目を形成可能なミシン刃を備えたカッター15aと、袋製品を縦ピロー型包装機10外へ搬出可能なコンベア15bを有している。カッター15aは、包装袋連包のエンドシール部Esの幅方向に沿って切り離し、又はミシン目を入れて、包装袋連包を一個ずつ又は複数の所定個数ごとに切り離すように構成されている。これによって、上記の各工程を経て連なって形成されるピロー型包装袋の包装袋連包から、ピロー型包装袋を一つずつ切り離したり、または所定の個数ごとに連ねて切り離したりした袋製品をコンベア15bで縦ピロー型包装機10外へ搬出することができる。
【0045】
上記の包装工程と並行する検査工程は、少なくとも袋口部が開放されている包装空間Bと、また好ましくは、当該包装空間Bの上方に連接している筒体状の包材R内の空間に満たされる不活性ガスに混じっている残留酸素ガスの濃度を検査する処理を行う工程である。そのため、検査工程と並行する包装工程は、袋口部が封止される第2シール工程前の充填工程、及びガス置換工程並びに脱気工程である。
検査工程は、ガス抜き取り工程と、ガス濃度測定工程を有している。
【0046】
ガス抜き取り工程は、ガス流通路103を通じて包装空間B及び包材R内から検査対象ガスGを抜き取る処理を行う工程である。
包装空間Bと当該包装空間Bに連接する包材R内部には、吸引ノズル104が挿入されている。検査対象ガスGは、吸引ノズル104からポンプ105で吸引され、ガス流量計106を通じてガスセル101へ導入される。当該ガスセル101内に満たされた検査対象ガスGに対してレーザー光を照射してガス濃度測定工程が行われる。
このように、包装空間B内及び包材R内の検査対象ガスGを吸引して検査するように構成することによって、ピロー型包装袋を一つずつ各個検査するよりも高速で検査工程を行うことができる。また、フィルムロール12aの長尺フィルムFが尽きるまで形成される包材Rに合わせて、当該包材Rが形成される限りは連続して包材R内を満たす不活性ガスに残留している残留酸素ガス濃度を計測することができる。これによって包装空間B内又は包材R内の残留酸素ガス濃度の経時的な変化を容易に把握することができる。
【0047】
ガス濃度測定工程は、ガスセル101内に対してレーザー光を射出し、当該ガスセル101内で減衰したレーザー光を受光部130で受光してガスセル101内に満たされている検査対象ガスGに含まれている残留酸素ガスのガス濃度をレーザー式ガス濃度計120aで測定する処理を行う工程である。検査対象ガスGは不活性ガスに残留空気が混じったガスであり、微量ながら被包装物から発生したガス等から構成されたガスであって、測定対象の残留ガスは主として空気に含まれている酸素ガス(O)である。
ガス濃度測定工程では、十分な光路長Lを備えたガスセル101と、当該ガスセル101へ連続して供給される検査対象ガスGを長時間に亘ってガス濃度計120aで計測するように構成されている。ガス濃度計120aによる検査対象ガスGの測定方法については上記したので説明を省略する。
本実施例に係る測定装置102を用いたガス濃度測定工程によれば、ガスセル101の両端に配したレーザー発生部125と受光部130間で、光路長Lを一定に保持することができる。そして、光路長Lを一定に保持して、長時間に亘って連続して測定することができるので、測定装置102では残留酸素ガス濃度の測定精度を向上させることができる。
【0048】
本実施例に係る縦ピロー型包装機10によれば、包材Rに囲橈された空間内及び包装空間B内に対して、不活性ガスを吹き込んで脱気すると共にガス置換するようにして、当該空間内の残留酸素ガスの濃度を連続的に検査可能に構成した。
これによって、縦ピロー型包装機10で製造されるピロー包装袋の包装空間B内の残留酸素ガス濃度が規定以下に抑えられているか否か、容易に全数検査することができる。
また、吹き込んでいる不活性ガスを吸引ノズル104で吸い出して検査していることから、たとえば、不活性ガスの供給が減少して残留酸素ガス濃度が高くなった場合には、残留酸素ガス濃度に係る所定の閾値を超えたとき、制御盤120に設けた警報装置と連動して、光の点滅又はブザー又はメロディの警報音によって報知することができる。
【0049】
また、本実施例に係る検査装置100は、上記したように、本実施例に例示した縦ピロー型包装機10以外に、ピロー型包装袋が横方向に連なって製造される横ピロー型包装機、箱又はトレー等の包装容器に被包装物を充填する包装機、或いは所定の包装袋又は包装容器或いはこれらに類する包装体類が備える包装空間へ被包装物を充填する包装機であって、当該包装空間内を所定の不活性ガスで満たしてガス置換するガス置換工程を備えた包装機と組み合わせるようにしても良い。
そして、本実施例に係る検査装置100によれば、それらの様々な包装機と組み合わせて、ガス置換された包装製品を全数検査することに限定されるものではなく、複数個の包装製品からなる所定の製造ロットごとに、所定数のサンプルを抜き取って検査するサンプル検査を行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0050】
10…縦ピロー型包装機、
11…包装機本体、12…フィルム供給装置、13…製筒装置、14…製袋装置、15…搬出装置、
T…搬送経路、F…長尺フィルム、R…包材、B…包装空間、Cs…センターシール、Es…エンドシール、
100…検査装置、
101…ガスセル、102…測定装置、103…ガス流通路、
104…吸引ノズル、105…ポンプ、106…ガス流量計、
107…第1パイプ、108…ガスコネクタ、109…第2パイプ、110…第3パイプ、111…第4パイプ、
120…制御盤、120a…ガス濃度計、
125…レーザー発生部、126…レーザー光源、127…出射部、
130…受光部、131…受光センサー、132…受光アンプ、
140…電源入力端子、141…包装機連動端子、
150…制御部、151…計測部、
G…検査対象ガス
C…ガス濃度、L…光路長、I…出射光強度、I…透過光強度、T…透過率、A…吸光度、ε…吸光係数。
図1
図2
図3
図4
図5
図6