(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137513
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】体臭抑制剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20230922BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20230922BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A61K8/44
A61Q15/00
A61K8/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043757
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(71)【出願人】
【識別番号】390015853
【氏名又は名称】理研香料ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】鍋井 春奈
(72)【発明者】
【氏名】原 武史
(72)【発明者】
【氏名】山田 朋諒
(72)【発明者】
【氏名】平井 啓介
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC581
4C083AC582
4C083CC17
4C083DD08
4C083EE18
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】体臭を効果的に抑制することが可能な体臭抑制剤組成物の提供を目的とする。
【解決手段】
ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウムを含有する体臭抑制剤組成物を提供する。また、上記体臭抑制剤組成物を含有する皮膚外用剤を提供する。また、上記体臭抑制剤組成物を含有するスプレー型消臭剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウムを含有する体臭抑制剤組成物。
【請求項2】
請求項1記載の体臭抑制剤組成物を含有する皮膚外用剤。
【請求項3】
請求項1記載の体臭抑制剤組成物を含有するスプレー型消臭剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウムを含有する体臭抑制剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人に起因する臭い(体臭)に対する意識が高まっている。この様な臭いとして、30~50才の男性に特有の脂っぽい汗の臭い(ミドル脂臭)が知られており、その原因成分がジアセチルと短鎖及び中鎖脂肪酸であることが明らかとなっている。その中でも、短鎖及び中鎖脂肪酸は、皮脂臭(皮脂に由来する臭いであり、皮膚表面や体毛表面、衣類や靴内部(インソール等)に付着した皮脂が、常在菌による代謝や過酸化脂質や酸素、紫外線等によって酸化されて発生するもの)に深く関係することが知られている。また、皮脂臭及びミドル脂臭以外の体臭としては、イソ吉草酸を原因物質とする足臭、2-ノネナールを原因物質とする加齢臭等が知られている。
【0003】
従来の体臭抑制剤では、制汗成分や殺菌成分等を配合する試みや、発生した体臭を抑制するために、香料によるマスキングや物理的吸着を利用した臭気物質の除去という試みがなされている。さらに、化学的観点から体臭を消臭するための消臭剤が開発されている。例えば、アルデヒドやイソ吉草酸に由来する臭気成分を中和して消臭するという、化学的観点から消臭効果を発揮するポリヒドロキシアミン化合物を含有する体臭抑制剤が知られている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-320711号公報
【特許文献2】特開2007-300963号公報
【特許文献3】特開2015-224244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、皮脂臭及びミドル脂臭は特に強い臭いを有するものであり、上記の体臭抑制剤であっても、十分な効果を発揮することは困難であるため、より強い効果を有する体臭抑制剤の開発が求められている。
【0006】
よって、本発明では、体臭を効果的に抑制することが可能な体臭抑制剤組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の様な事情に鑑み、課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明者らは、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウムを含有する体臭抑制剤組成物が効果的に体臭を抑制することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明では、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウムを含有する体臭抑制剤組成物を提供する。
【0009】
また、本発明では、前記の体臭抑制剤組成物を含有する皮膚外用剤を提供する。
【0010】
また、本発明では、前記の体臭抑制剤組成物を含有するスプレー型消臭剤を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の体臭抑制剤組成物はラウリルジアミノエチルグリシンナトリウムを含有するため、効果的に体臭を抑制することが可能である。より具体的には、本発明の体臭抑制剤組成物は、体臭の中でも特に強い臭いを発する皮脂臭及びミドル脂臭を抑制することが可能であるだけでなく、イソ吉草酸を原因物質とする足臭や2-ノネナールを原因物質とする加齢臭に対しても有効な抑制作用を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1及び2、比較例1及び2に関連する、皮脂臭及びミドル脂臭の吸着率についての図である。
【
図2】実施例3及び比較例3に関連する、イソ吉草酸の吸着率(a)及び2-ノネナールの吸着率(b)についての図である。
【
図3】実施例4に係る使用済みインソールに対する消臭効果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[体臭抑制剤組成物]
本実施形態に係る体臭抑制剤組成物は、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウムを含有することを特徴とする。ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウムは両性界面活性剤として知られており、口腔内組成物等に抗菌・殺菌成分として配合されている。しかしながら、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウムが体臭抑制効果を備えることについては一切知られていなかった。
【0014】
本実施形態に係る体臭抑制剤組成物が、効果的に体臭(特に皮脂臭及びミドル脂臭)を抑制することが可能である理由は定かではないが、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウムと皮脂臭及びミドル脂臭の原因物質である短鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸との化学的相互作用に深く関与していると考えられる。例えば、短鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸と、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウムとがそれぞれ化学的な相互作用(例えば、化学的反応や中和等)を生じ、該脂肪酸が皮脂臭とは関係の無い別物質に変化することが考えられる。また、ジアセチルを原因物質とするミドル脂臭、イソ吉草酸を原因物質とする足臭、2-ノネナールを原因物質とする加齢臭においても上記と同様の理由が考えられる。
【0015】
短鎖及び中鎖脂肪酸は皮脂臭及びミドル脂臭の原因物質であるが、特に中鎖脂肪酸が皮脂臭及びミドル脂臭に大きく影響していることが知られており、消臭のターゲットとして着目されているところ、本実施形態に係る体臭抑制剤組成物は、中鎖脂肪酸に対する消臭効果を顕著に有する点で特に有効である。ここで、短鎖及び中鎖脂肪酸は一様に定義することは難しいが、例えば、プロピオン酸、ヘキサン酸等の炭素数が6以下の脂肪酸は短鎖脂肪酸と定義することができ、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸等の炭素数が7以上の脂肪酸は中鎖脂肪酸と定義することができる。
【0016】
体臭抑制剤組成物中のラウリルジアミノエチルグリシンナトリウムの含有量は特に限定されないが、0.001~0.5質量%が好ましく、0.01~0.05質量%がより好ましい。含有量が0.001質量%以上であることにより、体臭の消臭効果が一層向上する傾向がある。また、0.5質量%以下であることは、製剤化及び安定性の観点から好ましい。
【0017】
本実施形態に係る体臭抑制剤組成物は、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム以外の成分として、水や非水系溶媒を含んでいてもよい。
【0018】
水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水や超純水が挙げられる。
【0019】
非水系溶媒としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等の炭素数2~4の一価のアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の炭素数2~12の多価アルコール;エチレングリコールやプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ジエチレングリコールやジプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル等のエステル類;ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、フェノール性化合物のエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物、p-トルエンスルホン酸塩、m-キシレンスルホン酸塩等の芳香族スルホン酸塩類等の芳香族化合物等が挙げられる。非水系溶媒は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
体臭抑制剤組成物中の非水系溶媒の含有量は、特に制限されず、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム及び後述のその他の成分を除いた残部を、その含有量とすることができる。体臭抑制剤組成物中の非水系溶媒の含有量は、例えば、10.0質量%以上が好ましく、より好ましく30.0質量%以上、さらに好ましくは50.0質量%以上である。また、使用感の向上の観点からは、99.9質量%以下が好ましく、99.0質量%以下がより好ましい。
【0021】
本実施形態に係る体臭抑制剤組成物は、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、水、及び非水系溶媒以外の成分(以下、「その他の成分」と称する)をさらに含有していてもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、殺菌剤、制汗剤、界面活性剤、増粘剤、保湿剤、消臭剤、オイル成分、金属イオン封鎖剤、防腐剤、清涼剤、抗炎症剤、植物エキス、及び香料等が挙げられる。
【0022】
殺菌剤としては、特に限定されないが、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、フェノール、トリクロロカルバニリド、グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、トリクロカルバン、ピロクトンオラミン、ジンクピリチオン、サリチル酸、ソルビン酸等が挙げられ、塩化ベンザルコニウム、イソプロピルメチルフェノールが好ましい。殺菌剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
制汗剤としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム塩、パラフェノールスルホン酸亜鉛等が挙げられる。アルミニウム塩としては、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(カリミョウバン)、硫酸アルミニウムアンモニウム(アンモニウムミョウバン)、酢酸アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム、及びアラントインクロルヒドロキシアルミニウム等が挙げられる。なかでも、クロルヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛及び硫酸アルミニウムカリウムが好ましい。制汗剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
ノニオン界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸石鹸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸エステル、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシルメチルタウリン塩、N-アシル-N-メチル-β-アラニン塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルグルタミン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルカルボン酸塩、アルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸及びその塩、N-アシルサルコシン及びその塩、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸塩等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有3級アミン塩等のアミン塩、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、トリアルキル型4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩等のアルキル4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩等の環式4級アンモニウム塩、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、アルキルグリシン塩、カルボキシメチルグリシン塩、N-アシルアミノエチル-N-2-ヒドロキシエチルグリシン塩等のグリシン型両性界面活性剤、アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルイミノジプロピオン酸塩等のアミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤、アルキルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0026】
増粘剤としては、グアーガム、デキストリン、デンプン及びペクチン等の植物由来多糖系化合物;キトサン及びヒアルロン酸等の動物由来多糖系化合物;キサンタンガム、シクロデキストリン、プルラン及びヒアルロン酸等の微生物由来多糖系化合物;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等の非イオン性セルロース;カルボキシメチルセルロース等の陰イオン性セルロース;塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース等のカチオン化セルロース;塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]グアーガム等のカチオン化グアーガム等;カルボキシビニルポリマー;アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体が挙げられる。増粘剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
保湿剤としては、ソルビトール、グリセリン等が挙げられる。オイル成分としては、炭化水素類、エステル油、シリコーン等が挙げられる。清涼剤としては、l-メントール等のメントール、メントール誘導体、及びカンファー等が挙げられる。保湿剤や清涼剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
[皮膚外用剤]
本実施形態に係る皮膚外用剤は、前記の体臭抑制剤組成物を含有することを特徴とする。
【0029】
皮膚外用剤は特に限定されないが、例えば、清涼化粧料等の塗布した肌に清涼感を与える皮膚外用剤;保湿化粧料等の塗布した肌に保湿感を与える皮膚外用剤;制汗用皮膚外用剤;賦香用皮膚外用剤;殺菌用皮膚外用剤;洗浄用皮膚外用剤等が挙げられる。また、皮膚外用剤は、例えば、化粧品、医薬部外品、医薬品、雑貨のいずれであってもよい。
【0030】
皮膚外用剤は、ローション、エアゾール、ノンエアゾールスプレー、スティック、ロールオン、クリーム、ジェル、乳液、シート化粧料等の種々の形態に用いることができ、製剤化については、一般に知られている方法により製造することができる。例えば、上記各成分を混合し、ディスパーミキサー、パドルミキサー等の公知の撹拌装置を用いて撹拌する方法等で、各成分を均一化する方法が挙げられる。
【0031】
皮膚外用剤をシート基材に含浸させることにより、シート化粧料が得られる。これにより、肌を拭く使用形態での使用性に優れ、携帯性にも優れる。シートの平面形状は、特に限定されないが、例えば、四角形(例えば、正方形、長方形等)、三角形等の多角形;円形、楕円形、半円形;三日月形;樽形;鼓形;キャラクターの形状等が挙げられ、生産性、使用性や梱包性の観点からは四角形が好ましい。また、シート化粧料には、切れ込み部、くり抜き部、凹凸部等の成型が施されていてもよい。シート化粧料のシートの片面の表面積は、特に限定されないが、使用性、携帯性、包装性等の観点から100~500cm2が好ましい。
【0032】
シート化粧料は、シート基材に本実施形態に係る皮膚外用剤を含浸させることにより製造することができる。シート基材に皮膚外用剤を含浸させる方法は、特に限定されず、例えば、折りたたまれた状態のシート基材に皮膚外用剤を注入し含浸させる方法、シート基材に皮膚外用剤をスプレーする方法、印刷法を用いてシート基材に皮膚外用剤を含浸させる方法、皮膚外用剤中にシート基材を浸す方法等が挙げられる。
【0033】
シート基材の材料は、前記の皮膚外用剤を含浸可能であれば特に限定されず、通常化粧品として用いられるシート基材を適宜使用可能である。シート基材の材料としては、例えば、天然繊維、合成繊維または半天然繊維からなる織布または不織布等が挙げられる。含浸性及び使用感をより一層良好にする観点からは、シート基材は、不織布が好ましい。
【0034】
天然繊維としては、綿、パルプ、シルク、セルロース、麻、リンター、及びカボック等が挙げられる。合成繊維としては、ナイロン、ポリエステル繊維、ポリアクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、及びポリエチレンテレフタレート繊維等が挙げられる。半天然繊維としては、レーヨン、及びアセテート等が挙げられる。上記の繊維は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
シート基材の表面は、エンボス加工されていてもよい。また、シート基材には、フィルム基材が含まれる。
【0036】
シート化粧料における、シート基材に対して含浸された本実施形態に係る皮膚外用剤の質量割合は、特に限定されないが、使用感の観点から、シート基材100質量部に対して、100質量部以上が好ましく、250質量部以上がより好ましい。また、使用感の観点から、600質量部以下が好ましく、500質量部以下がより好ましい。
【0037】
シート化粧料は、乾燥防止、外出時の携帯性、使用時の取り扱い性等の観点から、包装容器に収納されることが好ましい。シート化粧料は、1枚ごとに個別包装されていてもよいし、生産コスト、生産効率等の観点から、複数枚のシート化粧料が同一包装容器内に収納されていてもよい。1つの包装容器に収納されるシート化粧料の枚数は、特に限定されないが、2~50枚(/1包装容器)が好ましい。特に、シート化粧料は複数枚積層し保存した後に使用する際に上下間で使用感の差異が小さいため、10枚(/1包装容器)以上であってもよい。シート化粧料は、二つ折り、三つ折り、四つ折り、十字四つ折り等に折り畳んで包装容器に収納されていることが好ましい。
【0038】
包装容器としては、例えば、袋体(包装袋)、箱状容器等が挙げられる。包装容器は、本実施形態に係る皮膚外用剤の揮発を抑制できるものが好ましい。包装容器の材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂;アルミニウム等の金属等が挙げられる。包装容器としては、軽量であり優れた揮発防止効果を有する観点から、表面に金属層が積層または蒸着された樹脂製の包装容器(特に、包装袋)が好ましく、表面にアルミニウム蒸着された樹脂製の包装袋がより好ましい。
【0039】
本実施形態に係る皮膚外用剤は、例えば、皮膚に塗布して用いられる。皮膚外用剤の適用部位としては、特に限定されないが、例えば、顔面(例えば、額、頬、口元等)、胸、背中、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、脇等の体や頭(頭皮)が挙げられる。また、本実施形態に係るシート化粧料についても、皮膚外用剤と同様の適用部位が挙げられる。
【0040】
[スプレー型消臭剤]
本実施形態に係るスプレー型消臭剤は、前記の体臭抑制剤組成物を含有するスプレー型消臭剤である。スプレーの剤型としては特に限定されないが、例えば、ミストスプレー等のノンエアゾール型スプレー、エアゾール型スプレー等が挙げられる。本実施形態に係るスプレー型消臭剤は、スプレー容器及びスプレーノズルを備えており、スプレー容器内に、前記の体臭抑制剤組成物が充填されている。また、スプレー容器内に、前記の体臭抑制剤組成物に加えて、さらに噴射剤が充填されているエアゾール型スプレー型消臭剤であってもよい。さらに、スプレーノズルがポンプ式のスプレーノズルであるノンエアゾール型スプレー型消臭剤であってもよい。スプレー型消臭剤は、前記の体臭抑制剤組成物が霧状に噴霧されるスプレー型消臭剤であることが好ましい。
【0041】
噴射剤としては、プロパン、プロピレン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン等の液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、フッ化炭化水素、液化ガス、並びに窒素、炭酸ガス、及び空気等の圧縮ガス等が挙げられる。噴射剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。目詰まりを防止する観点から、噴射剤は、液化石油ガス及びジメチルエーテルの内の少なくとも1種を含むことが好ましく、液化石油ガスを含むことがより好ましい。
【0042】
体臭抑制剤組成物と噴射剤との合計100質量%中、体臭抑制剤組成物の含有量は好ましくは10.0質量%以上、より好ましくは20.0質量%以上、好ましくは95.0質量%以下、より好ましくは70.0質量%以下、更に好ましくは50.0質量%以下である。体臭抑制剤組成物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、吐出性がより一層良好になる。
【0043】
体臭抑制剤組成物と噴射剤との合計100質量%中、噴射剤の含有量は好ましくは30.0質量%以上、より好ましくは40.0質量%以上、更に好ましくは50.0質量%以上、好ましくは90.0質量%以下、より好ましくは80.0質量%以下である。上記噴射剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、吐出性がより一層良好になる。
【0044】
本実施形態に係るスプレー型消臭剤の適用部位は特に限定されないが、例えば、皮膚、頭髪、衣類、及び履物が挙げられる。皮膚としては、例えば、顔面(例えば、額、頬、口元等)、胸、背中、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、脇等の体の皮膚や頭(頭皮)が挙げられる。衣類としては、例えば、ジャケット、ワイシャツ、コート、Tシャツ、トレーナー、セーター、ジャージ、ズボン、スラックス、ジーンズ、スカート、ワンピース、ドレス、下着、パジャマ、浴衣、帽子、スカーフ、バンダナ、マフラー、ネクタイ、帯、ベルト、靴下、レッグウォーマー、タイツが挙げられ、これらの袖口、襟元、下着や靴下の内部等の、皮膚と直接触れる頻度が高く、皮脂臭、ミドル脂臭、足臭及び加齢臭の影響を受けやすい部位に適用することが好ましい。また、履物としては、例えば、靴、スニーカー、ハイヒール、パンプス、ミュール、ブーツ、及びインソールが挙げられ、これらのインソール等の皮脂臭及び足臭の影響を受けやすい部位に適用することが好ましい。
【実施例0045】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0046】
[実施例1]
ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム(LDE、商品名:ニッサンアノンLG-R、日油株式会社製)を終濃度が0.03質量%となるように水に溶解し、クエン酸を用いてpHを6.0に調整することでLDE水溶液を作製した。
300μlの上記LDE水溶液と20μlのモデル皮脂臭(プロピオン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、及びノナン酸を含む混合物)を混合し、得られた混合液を1.5cm辺のコットンパッドに染み込ませた。このコットンパッドを40mLのバイアル瓶に入れて蓋を閉め、37℃で30分間静置した。静置後のバイアル瓶内のヘッドスペースガスを固相マイクロ抽出(SPME)法用のファイバーにて採取し、以下の条件でGC-MS分析を行い、各脂肪酸の含有量を測定した。
[分析条件]
使用カラム:アジレント テクノロジー(Agilent Technology)社製、商品名:DB-FFAP(60m×0.25mm×0.5μm)
使用ガス:ヘリウム
温度条件:40℃(3分間維持)、40℃から140℃までの昇温(昇温速度7℃/分)、140℃から250℃までの昇温(昇温速度15℃/分)(13分間維持)、イオン化法:電子イオン化法(EI)、60eV
【0047】
体臭抑制剤組成物を使用しないこと以外は同様の操作を行い、モデル皮脂臭に含まれる各脂肪酸の含有量を測定した。これをブランクとして、体臭抑制剤組成物を使用した際の吸着率を下記の方法により算出した。
吸着率[%]=(ブランクにおける各脂肪酸の含有量-体臭抑制剤組成物を使用した場合の各脂肪酸の含有量)/ブランクにおける各脂肪酸の含有量×100
【0048】
[実施例2]
モデル皮脂臭の代わりに20μlのジアセチルを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ジアセチルの吸着率を算出した。
【0049】
[比較例1及び2]
ココアンホプロピオン酸ナトリウム(CAP、商品名:ソフタゾリンNS、川研ケミカルファイン株式会社製)の終濃度が0.03質量%となるように水に溶解し、クエン酸を用いてpHを6.0に調整することでCAP水溶液を作製した。また、ココアンホ酢酸ナトリウム(CAA、商品名:ソフタゾリンCL、川研ケミカルファイン株式会社製)の終濃度が0.03質量%となるように水に溶解し、クエン酸を用いてpHを6.0に調整することでCAA水溶液を作製した。
LDE水溶液の代わりにCAP水溶液又はCAA水溶液を用いたこと以外は実施例1及び2と同様にして、モデル皮脂臭に由来する各脂肪酸及びジアセチルの吸着率を算出した。
【0050】
実施例1及び2、比較例1及び2の結果を
図1に示す。
図1から理解できる通り、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウムを含む体臭抑制剤組成物(LDE水溶液)は、CAP水溶液やCAA水溶液と比較してモデル皮脂臭に由来する各脂肪酸及びジアセチルの吸着率が高く、消臭効果が発揮されているといえる。
【0051】
[実施例3]
モデル皮脂臭の代わりに、(1)終濃度が0.5質量%となるようにイソ吉草酸をプロピレングリコールに混合して得た溶液、及び(2)終濃度が0.005質量%となるように2-ノネナールをプロピレングリコールに混合して得た溶液を用いたこと以外は実施例1及び2と同様にして、イソ吉草酸及び2-ノネナールの吸着率を算出した。
【0052】
[比較例3]
LDE水溶液の代わりにCAP水溶液を用いたこと以外は実施例3と同様にして、イソ吉草酸及び2-ノネナールの吸着率を算出した。
【0053】
実施例3及び比較例3の結果を
図2に示す。
図2から理解できる通り、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウムを含む体臭抑制剤組成物は、CAP水溶液と比較してイソ吉草酸及び2-ノネナールの吸着率が高く、消臭効果が発揮されているといえる。
【0054】
[実施例4]
ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウムを終濃度が1質量%となるように水に溶解し、スプレー容器に入れることで、LDE水溶液スプレーを作製した。
被験者に新品で且つ滅菌後の靴の中敷(インソール)を4週間連続的に使用させ、使用後のインソールについて、(1)LDE水溶液スプレーの噴霧前、(2)LDE水溶液スプレーを13回噴霧した3分後、(3)LDE水溶液スプレーを13回噴霧した30分後、の臭い強度の評価を行った。なお、インソールは5つ用意した。
【0055】
臭い強度の評価(臭気強度)は、25℃の室内で評価者2人が各インソールの臭いをかぐことによる官能評価により行った。評価は下記の基準に基づいて行い、2人の平均点を算出した。以上の結果を
図3に示す。
(臭気強度)
5.0点:かなり強くにおう
4.5点:4.0点と5.0点の中間
4.0点:やや強くにおう
3.5点:3.0点と4.0点の中間
3.0点:はっきりにおう
2.5点:2.0点と3.0点の中間
2.0点:弱くにおう
1.5点:1.0点と2.0点の中間
1.0点:かすかににおう
0.5点:0点と1.0点の中間
0点:におわない
【0056】
図3より、「噴霧3分後」と「噴霧30分後」の双方において、LDE水溶液が消臭効果を有することが明らかとなった。
【0057】
ここで、本官能評価において、臭気強度(の点数)の低下は顕著な消臭効果があることを示すものであり、特に3.0点の「はっきりとにおう」を超えるか否かは消臭効果の有無を説明するにあたって重要な因子である。「噴霧30分後」の結果に基づいて説明すると、「はっきりとにおう」よりも臭気強度が低く、「弱くにおう」に近づいている。つまり、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウムを含む体臭抑制剤組成物は、インソールの臭いをはっきりとは感知できない程度にまで消臭しているという顕著な効果を奏するといえる。