(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137518
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】基準操舵角決定方法及び車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20230922BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043763
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100211052
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佃 駿甫
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D232CC28
3D232CC30
3D232DA03
3D232DA04
3D232DA22
3D232DA23
3D232DA24
3D232DA27
3D232DA90
3D232DC09
3D232DC10
3D232DC22
3D232DC34
3D232DD02
3D232EA01
3D232EB04
3D232EC23
3D232GG01
3D232GG02
3D333CB03
3D333CE47
(57)【要約】
【課題】長距離に亘って走行をすることなく基準操舵角を決定することができる基準操舵角決定方法及び車両制御装置を提供する。
【解決手段】
一態様に係る基準操舵角決定方法は、車両のステアリングを第1操舵角に固定した状態で車両を始点から終点まで一定距離だけ走行させたときの車両の横方向の移動量を計測するステップであり、横方向は、始点における車両の幅方向に平行な方向である、該ステップと、車両のステアリングを第2操舵角に設定した状態で車両を一定距離だけ走行させたときの車両の理論上の横方向の移動量を計算するステップであり、第2操舵角は、ステアリングの中点に対するずれ量が予め設定された許容範囲内に収まる操舵角である、該ステップと、計測された横方向の移動量が、理論上の横方向の移動量以下であるときに第1操舵角を車両の操舵角の基準となる基準操舵角として決定するステップと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のステアリングを第1操舵角に固定した状態で前記車両を始点から終点まで一定距離だけ走行させたときの前記車両の横方向の移動量を計測するステップであり、前記横方向は、前記始点における前記車両の幅方向に平行な方向である、該ステップと、
前記車両のステアリングを第2操舵角に設定した状態で前記車両を前記一定距離だけ走行させたときの前記車両の理論上の横方向の移動量を計算するステップであり、前記第2操舵角は、前記ステアリングの中点に対するずれ量が予め設定された許容範囲内に収まる操舵角である、該ステップと、
計測された前記横方向の移動量が、前記理論上の前記横方向の移動量以下であるときに前記第1操舵角を前記車両の操舵角の基準となる基準操舵角として決定するステップと、
を含む、基準操舵角決定方法。
【請求項2】
前記第2操舵角と、前記車両のホイールベースと、前記一定距離とに基づいて前記理論上の前記横方向の移動量を算出する、請求項1に記載の基準操舵角決定方法。
【請求項3】
車両のステアリングを第1操舵角に固定した状態で前記車両を始点から終点まで一定距離だけ走行させたときの前記車両の横方向の移動量の計測値を取得する計測値取得部であり、前記横方向は、前記始点における前記車両の幅方向に平行な方向である、該計測値取得部と、
前記車両のステアリングを第2操舵角に設定した状態で前記車両を前記一定距離だけ走行させたときの前記車両の横方向の移動量の理論値を計算する理論値算出部であり、前記第2操舵角は、前記ステアリングの中点に対するずれ量が予め設定された許容範囲内に収まる操舵角である、該理論値算出部と、
前記横方向の移動量の計測値が、前記横方向の移動量の理論値以下であるときに前記第1操舵角を前記車両の操舵角の基準となる基準操舵角として決定する決定部と、
を備える、車両制御装置。
【請求項4】
前記決定部によって決定された前記基準操舵角を用いて前記車両の操舵アクチュエータを制御する操舵角制御部を更に備える、請求項3に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基準操舵角を決定する基準操舵角決定方法及び車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の操舵角が目標操舵角になるようにステアリングを制御する技術が用いられている。ステアリングを制御するには、操舵角の基準となる基準操舵角を設定し、当該基準操舵角を基準としてステアリングの操舵角を制御することが必要となる。基準操舵角を決定する手法として、下記特許文献1及び2に記載の方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、車両のヨーレートの絶対値と、ヨーレートの時間変化とに基づいて車両が直進状態となったか否かを判定し、車両が直進状態となったときの操舵角をステアリングホイールの中点として設定することが記載されている。特許文献2には、車両のヨーレートと前輪ヨーレートとの差、又は、車両のヨーレートと後輪ヨーレートとの差が所定の閾値以下となったときに、舵角センサの検出舵角とヨーレートから推定された推定舵角との差を舵角の中点として設定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-14226号公報
【特許文献2】特許2017-197073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の装置では、車両が直進状態となったときの操舵角をステアリングの基準操舵角として設定しているので、基準操舵角を決定するためには、直線区間を含む長距離の区間を走行する必要がある。基準操舵角を決定するために、車両を長距離に亘って走行させることができない環境の場合には、ローラテスタ上で車両を定置走行させ、直線区間を擬似的に再現することで基準操舵角を決定することが考えられる。しかしながら、この場合には、ローラテスタを含む大規模な設備が必要となる。
【0006】
そこで、本開示は、長距離に亘って走行をすることなく基準操舵角を決定することができる基準操舵角決定方法及び車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係る基準操舵角決定方法は、車両のステアリングを第1操舵角に固定した状態で車両を始点から終点まで一定距離だけ走行させたときの車両の横方向の移動量を計測するステップであり、横方向は、始点における車両の幅方向に平行な方向である、該ステップと、車両のステアリングを第2操舵角に設定した状態で車両を一定距離だけ走行させたときの車両の理論上の横方向の移動量を計算するステップであり、第2操舵角は、ステアリングの中点に対するずれ量が予め設定された許容範囲内に収まる操舵角である、該ステップと、計測された横方向の移動量が、理論上の横方向の移動量以下であるときに第1操舵角を車両の操舵角の基準となる基準操舵角として決定するステップと、を含む。
【0008】
第2操舵角は、ステアリングの中点に対するずれ量が許容範囲内に収まる操舵角であるので、ステアリングを第1操舵角に固定したときに計測された横方向の移動量が、ステアリングを第2操舵角に設定したときの理論上の横方向の移動量以下である場合には、第1操舵角は中点に対するずれ量が許容範囲内に収まる操舵角であるといえる。したがって、このような場合に第1操舵角を車両の基準操舵角として決定することで、適切に基準操舵角を設定することができる。本態様の基準操舵角決定方法では、車両が直進しているときの操舵角ではなく、車両の横方向の移動量を用いて基準操舵角を決定しているので、車両を長距離に亘って走行させることなく基準操舵角を決定することができる。
【0009】
一実施形態の基準操舵角決定方法は、第2操舵角と、車両のホイールベースと、一定距離とに基づいて理論上の横方向の移動量を算出してもよい。第2操舵角と、車両のホイールベースと、一定距離とを用いることで、理論上の横方向の移動量を適切に算出することができる。
【0010】
一態様に係る車両制御装置は、車両のステアリングを第1操舵角に固定した状態で車両を始点から終点まで一定距離だけ走行させたときの車両の横方向の移動量の計測値を取得する計測値取得部であり、横方向は、始点における車両の幅方向に平行な方向である、該計測値取得部と、車両のステアリングを第2操舵角に設定した状態で車両を一定距離だけ走行させたときの車両の横方向の移動量の理論値を計算する理論値算出部であり、第2操舵角は、ステアリングの中点に対するずれ量が予め設定された許容範囲内に収まる操舵角である、該理論値算出部と、横方向の移動量の計測値が、横方向の移動量の理論値以下であるときに第1操舵角を車両の操舵角の基準となる基準操舵角として決定する決定部と、を備える。
【0011】
本態様の車両制御装置では、車両が直進しているときの操舵角ではなく、車両の横方向の移動量を用いて基準操舵角を決定しているので、車両を長距離に亘って走行させることなく基準操舵角を決定することができる。
【0012】
一実施形態の車両制御装置は、決定部によって決定された基準操舵角を用いて車両の操舵アクチュエータを制御する操舵角制御部を更に備えてもよい。決定部によって決定された基準操舵角は、中点に対するずれ量の小さい操舵角であるので、当該基準操舵角を用いて操舵アクチュエータを制御することにより、車両を意図した方向に走行させることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様及び種々の実施形態によれば、長距離に亘って走行をすることなく基準操舵角を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る基準操舵角決定方法を示すフローチャートである。
【
図2】一実施形態に係る車両制御装置を搭載する車両の機能的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して種々の実施形態に係る基準操舵角決定方法及び車両制御装置について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととし、同一又は相当の部分に対する重複した説明は省略する。
【0016】
図1は、一実施形態に係る基準操舵角決定方法を示すフローチャートである。この基準操舵角決定方法は、基準操舵角を決定する方法である。
【0017】
基準操舵角は、車両1を直進させる操舵角であり、車両の操舵角の基準となる。本明細書では、車両1が完全な直進状態となる理想的な操舵角をステアリングの中点という。基準操舵角の中点に対するずれ量は、予め設定された許容範囲内に収めることが要求される。
【0018】
まず、基準操舵角決定方法に用いられる車両制御装置について説明する。
図2は、基準操舵角決定方法を実行する一実施形態に係る車両制御装置10を搭載する車両1の機能的構成を示すブロック図である。車両1は、例えばトラック、トレーラー又はバス等の大型車である。なお車両1は、小型車であってもよい。
図2に示すように、車両1は、操舵角センサ2、車速センサ3、エンジンアクチュエータ4、ブレーキアクチュエータ5、操舵アクチュエータ6、及び、車両制御装置10を備えている。
【0019】
操舵角センサ2は、車両1の操舵角(操舵軸の回転量)を計測する。操舵角センサ2はは、計測された車両1の操舵角を示す情報を車両制御装置10に出力する。車速センサ3は、車両1の速度を検出する。車速センサ3としては、例えば、車両1のドライブシャフトに設けられ、車輪の回転速度を検出する車輪速センサが用いられる。車速センサ3は、計測された車両1の速度を示す情報を車両制御装置10に出力する。
【0020】
エンジンアクチュエータ4は、車両制御装置10の制御信号に応じてエンジンに対する空気の供給量を変更(例えばスロットル開度を変更)して、車両1の駆動力を制御する。なお、車両1がハイブリッド車又は電気自動車である場合には、エンジンアクチュエータ4は、動力源であるモータの駆動力を制御する。
【0021】
ブレーキアクチュエータ5は、車両制御装置10からの制御信号に応じてブレーキシステムを制御して、車両1の制動力を制御する。ブレーキシステムとしては、例えば液圧ブレーキシステムが用いられる。なお、車両1が回生ブレーキシステムを備えている場合、ブレーキアクチュエータ5は、液圧ブレーキシステム及び回生ブレーキシステムの両方を制御してもよい。
【0022】
操舵アクチュエータ6は、車両制御装置10からの制御信号に応じて電動パワーステアリングシステムの駆動を制御する。電動パワーステアリングシステムの駆動が制御されることにより、車両1のステアリングの操舵角が制御される。
【0023】
車両制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CAN(Controller Area Network)通信回路などを有する電子制御ユニットである。車両制御装置10は、例えばCAN通信回路を用いて通信するネットワークに接続され、車両1の各構成要素と通信可能に接続される。車両制御装置10は、例えば、CPUが出力する信号に基づいて、CAN通信回路を動作させてデータを入出力し、データをRAMに記憶し、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムを実行することで、後述する各種機能を実現する。車両制御装置10には、入出力装置を用いて各種情報が入力可能であってもよい。なお、車両制御装置10は、複数の電子制御ユニットから構成されてもよい。
【0024】
車両制御装置10は、機能的構成として、操舵角制御部11、走行制御部12、計測値取得部13、理論値算出部14、決定部15及び記憶部16を備えている。操舵角制御部11は、目標操舵角を決定し、当該目標操舵角になるように操舵アクチュエータ6を制御する。より詳細には、操舵角制御部11は、ステアリングの基準操舵角を取得し、取得した基準操舵角を基準として車両1の操舵角が目標操舵角になるように操舵アクチュエータ6を制御する。このとき、基準操舵角が正確でない場合には、目標操舵角と実際の操舵角との間に不整合が生じ、車両が意図した方向に走行させることができない恐れがある。
【0025】
走行制御部12は、エンジンアクチュエータ4及びブレーキアクチュエータ5に制御信号を出力し、車両1の走行を制御する。
【0026】
計測値取得部13は、車両1のステアリングを第1操舵角に固定した状態で、車両1を一定距離だけ走行させたときの車両1の横方向の移動量の計測値を取得する。例えば、計測値取得部13は、オペレータが入出力装置を用いて入力したデータを計測値として取得する。理論値算出部14は、車両1のステアリングを第2操舵角に設定した状態で車両1を一定距離だけ走行させたときの車両1の横方向の移動量の理論値を計算する。決定部15は、横方向の移動量の計測値と横方向の移動量の理論値とに基づいて、基準操舵角を決定する。記憶部16は、各種情報を記憶するデータベースである。計測値取得部13、理論値算出部14、決定部15及び記憶部16の機能の詳細については後述する。
【0027】
以下、
図1を参照して、車両制御装置10によって実行される基準操舵角決定方法について説明する。
図1に示すように、この方法では、まず操舵角制御部11が、操舵アクチュエータ6を制御して、車両1のステアリングを第1操舵角に設定する(ステップST1)。第1操舵角は、例えばオペレータが中点であると推定した操舵角である。
【0028】
次に、ステアリングを第1操舵角に固定した状態で、走行制御部12がエンジンアクチュエータ4及びブレーキアクチュエータ5を制御し、或いは、オペレータの操作によって車両1を一定の走行距離Lだけ走行させる(ステップST2)。これにより、
図3に示すように、車両1は、旋回中心Cを中心とする円弧状の軌跡に沿って始点P1から終点P2まで一定の走行距離Lだけ走行する。以下の説明では、始点P1と旋回中心Cとを結ぶ方向(すなわち、始点P1における車幅方向に平行な方向)を横方向という。
図3に示すように、車両1は、始点P1から終点P2まで走行するときに横方向に移動する。この横方向の移動量Emは、第1操舵角及び走行距離Lに応じて定まる。
【0029】
次に、車両1の横方向の移動量Emを計測する(ステップST3)。横方向の移動量Emは、例えばオペレータがスケール又はメジャーを用いて始点P1と終点P2との横方向の距離を計測することによって求められる。横方向の移動量Emが計測されると、オペレータは、例えば入出力装置を用いて横方向の移動量Emの計測値を車両制御装置10に入力する。計測値取得部13は、入力された横方向の移動量Emの計測値を取得し、記憶部16に保存する。
【0030】
次に、理論値算出部14が、車両1のステアリングを第2操舵角に設定した状態で車両1を一定距離だけ走行させたときの車両1の理論上の横方向の移動量Ecを計算する(ステップST4)。第2操舵角は、ステアリングの中点に対するずれ量が許容範囲内に収まる操舵角である。すなわち、中点と第2操舵角との差は、所定の閾値以下である。例えば、第2操舵角は、ステアリングの中点に対するずれ量の許容範囲の上限値又は下限値となる操舵角である。
【0031】
理論上の横方向の移動量Ecを算出するための理論値算出部14の処理について説明する。
図3に示すように、車両1を第2操舵角で走行させたときの旋回角度をθとし、旋回半径をRとすると、車両1の走行距離Lは、式(1)のように表される。
【0032】
【0033】
また、
図3の関係から横方向の移動量Ecは、式(2)のように表現される。式(2)を変形すると、式(3)のように表される。
【数2】
【0034】
【0035】
ここで、旋回角度θが十分小さいと仮定した場合、sinθ=θ、cosθ=1とみなすことができるので、式(3)は、下記式(4)のように変形される。
【0036】
【0037】
旋回半径Rは曲率Kの逆数であるので、式(1)の関係を用いて式(4)を書き換えると、横方向の移動量Ecは、式(5)のように表現される。
【0038】
【0039】
ここで、第2操舵角δと曲率Kとの関係との関係は、下記式(6)のように表される。なお、式(6)において、lは車両1のホイールベースを表しており、Aはスタビリティファクタを表しており、Vは車両1の速度を表している。ホイールベースl及びスタビリティファクタAは、車両の特性に応じて定められる設計値である。
【0040】
【0041】
式(5)に式(6)を代入すると、横方向の移動量Ecは、下記式(7)のように表現される。
【数7】
【0042】
理論値算出部14は、式(7)に従って、車両1のステアリングを第2操舵角δに設定して一定の走行距離Lだけ走行したときの車両1の理論上の横方向の移動量Ecを算出する。すなわち、理論値算出部14は、第2操舵角δと、車両1のホイールベースlと、走行距離Lとに基づいて理論上の横方向の移動量Ecを算出する。理論値算出部14によって算出された理論上の横方向の移動量Ecは、記憶部16に記憶される。
【0043】
次に、決定部15が、計測された横方向の移動量Emが、理論値算出部14によって算出された理論上の横方向の移動量Ec以下であるか否かを判定する(ステップST5)。計測された横方向の移動量Emが理論上の横方向の移動量Ec以下である場合には、第1操舵角の中点に対するずれ量は、許容範囲に収まっているといえる。そこで、決定部15は、第1操舵角を基準操舵角として決定する(ステップST6)。そして、決定部15は、決定した基準操舵角を記憶部16に保存する。
【0044】
操舵角制御部11は、記憶部16に記憶された基準操舵角を基準として車両1の操舵角を制御する。第1操舵角は、車両1を直進させる高い精度の基準操舵角であるので、この基準操舵角を基準としてステアリングを制御することにより、実際の操舵角と目標操舵角とのずれが小さくなり、車両を意図した方向に走行させることが可能となる。
【0045】
一方、測定された横方向の移動量Emが理論上の横方向の移動量Ecよりも大きい場合には、第1操舵角の中点に対するずれ量が許容範囲内にないと考えられるので、第1操舵角を基準操舵角に設定しない。その場合には、第1操舵角を変更してステップST1~ST6の処理が再び行ってもよい。
【0046】
以上説明したように、一実施形態の基準操舵角決定方法では、車両を始点P1から終点P2まで所定の走行距離Lだけ走行させたときに計測された横方向の移動量Emが、理論上の横方向の移動量Ec以下であるときに、第1操舵角を基準操舵角として決定する。上述した基準操舵角決定方法では、車両1が直進しているときの操舵角ではなく、横方向の移動量の計測値及び理論値を比較して基準操舵角を決定しているので、車両1を長距離に亘って走行させることなく基準操舵角を決定することができる。
【0047】
以上、種々の実施形態に係る車両制御装置10について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形態様を構成可能である。上述した種々の実施形態は、矛盾が生じない範囲で組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…車両、6…操舵アクチュエータ、10…車両制御装置、11…操舵角制御部、13…計測値取得部、14…理論値算出部、15…決定部、C…旋回中心、Ec,Em…横方向の移動量、l…ホイールベース、P1…始点、P2…終点。