(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137525
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】硬化性組成物、被覆材組成物およびそれらの硬化物
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20230922BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20230922BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20230922BHJP
C09D 191/06 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C08F2/44 C
C08F290/06
C09D4/02
C09D191/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043773
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】513026399
【氏名又は名称】三菱ケミカルインフラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】小高 一義
【テーマコード(参考)】
4J011
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
4J011PA56
4J011PA69
4J011PC02
4J011PC08
4J038BA212
4J038FA111
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4J038NA04
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4J127AA03
4J127AA04
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4J127CC091
4J127CC161
4J127CC162
4J127CC163
4J127DA15
4J127DA42
4J127DA46
4J127EA07
4J127FA48
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、硬化性組成物の引火性が低く、硬化物の機械特性、耐候性および耐ガソリン性に優れ、被覆材、塗り床材、路面舗装材、壁材、補修用充填材のような土木建築用材料として有用なアクリル系硬化性組成物を提供することにある。
【解決手段】ヒドロキシ基、アルコシ基、カルボキシ基から選ばれる1種以上の官能基および(メタ)アクリロイル基を有するアクリル単量体と、炭素数2~6個のアルキル基および(メタ)アクリロイル基を有し、ヒドロキシ基、アルコシ基、カルボキシ基を有さないアクリル単量体と、共重合成分として炭素数2~18個のアルキル基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物由来の構成単位を10質量%以上有するアクリル重合体、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、およびポリエステル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上の化合物と、還元剤と、を特定の比率で含む硬化性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシ基、アルコシ基、カルボキシ基から選ばれる1種以上の官能基および(メタ)アクリロイル基を有するアクリル単量体である化合物Aと、炭素数2~6のアルキル基および(メタ)アクリロイル基を有し、ヒドロキシ基、アルコシ基およびカルボキシ基をいずれも有さないアクリル単量体である化合物Bと、共重合成分として炭素数2~18のアルキル基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物由来の構成単位を10質量%以上有するアクリル重合体、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、およびポリエステル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上の化合物Cと、還元剤Dと、を含み、
前記化合物A~C、前記化合物A~C以外のラジカル重合性化合物、および化合物C以外の重合体の合計100質量%に対し、前記化合物Aを5~60質量%、前記化合物Bを10~90質量%、前記化合物Cを5~60質量%含み、
前記化合物A~C、前記化合物A~C以外のラジカル重合性化合物、および化合物C以外の重合体の合計100質量部に対し、前記還元剤Dを0.01~20質量部含む、硬化性組成物。
【請求項2】
前記化合物A~C、前記化合物A~C以外のラジカル重合性化合物、および化合物C以外の重合体の合計100質量部に対し、ワックスEを0.01~5質量部含む請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
引火点が15℃以上である請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記化合物Aがヒドロキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記化合物Bが炭素数4の分岐アルキル基および(メタ)アクリロイル基を有する請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記化合物Bが(メタ)アクリル酸-i-ブチルを含む請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化性組成物を含む被覆材組成物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化性組成物、または請求項7に記載の被覆材組成物の硬化物であって、厚さが0.1~20cmである硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、被覆材組成物およびそれらの硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床面や壁面等を被覆するために、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の合成樹脂を使用する方法が知られている。しかし、不飽和ポリエステル系樹脂は、耐溶剤に優れるが、耐候性に劣り、低温施工性が悪い。エポキシ系樹脂は、下地との密着性に優れるが、耐候性に劣り、硬化時間が長く、低温での硬化性に劣る。ポリウレタン系樹脂は、弾力性、柔軟性に優れるが、硬化時間が長い。
【0003】
そこで、これらの樹脂に代えて、硬化時間が短く、低温硬化性に優れ、耐候性、耐薬品性に優れるアクリル系硬化性組成物が、一般に使用されている。しかしながら、アクリル系硬化性組成物は、一般に引火性の高いメタクリル酸メチルを主成分としており、引火による火災のおそれがある。
【0004】
一方、メタクリル酸メチルを含まないアクリル系硬化性組物が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、アルキルシクロヘキシル骨格を有する(メタ)アクリレート類を主成分とするアクリル系レジンコンクリート組成物が記載されている。しかし、特許文献1に記載の組成物は、硬化被膜の表面の硬化性が劣る傾向にある。
【0005】
特許文献2には、イソボルニルメタクリレートおよびヒドロキシプロピルメタクリレート等をモノマーとして含有する組成物が記載されている。特許文献3には、炭素数6~16のアルキル(メタ)アクリレートを含むポリマーコンクリート用合成樹脂組成物が記載されている。しかし、特許文献2、3に記載のいずれの組成物も臭気低減に対する効果は不十分であり、被膜表面の硬化性が劣る傾向にある。
【0006】
特許文献4には、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートを含有する硬化性樹脂組成物が記載されている。特許文献5には、ジシクロペンテニルオキシアルキル(メタ)アクリレートを含む樹脂組成物が記載されている。しかし、特許文献4、5に記載のいずれの組成物も、塗膜の表面の硬化性が不十分である。
【0007】
特許文献6には、メタクリル酸テトラヒドロフルフリルを含む樹脂組成物が記載されている。しかし、硬化物の靭性が乏しく硬化物の強度および伸度を両立できないこと、および硬化物の耐候性が不十分であるという問題点を有していた。
【0008】
特許文献7には、メタクリル酸-2-フェノキシエチルを含む樹脂組成物が記載されている。しかし、硬化物の耐候性が不十分であるという問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平1-141851号公報
【特許文献2】特開平5-186539号公報
【特許文献3】特開平6-329456号公報
【特許文献4】特開平10-87770号公報
【特許文献5】特開平10-158364号公報
【特許文献6】特開2015-78264号公報
【特許文献7】特開2004-203949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した各課題を解決すべくなされたものであり、硬化性組成物の引火性が低く、硬化物の機械特性、耐候性および耐ガソリン性に優れ、被覆材、塗り床材、路面舗装材、壁材、補修用充填材のような土木建築用材料として有用なアクリル系硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の[1]~[8]を要旨とする。
[1]ヒドロキシ基、アルコシ基、カルボキシ基から選ばれる1種以上の官能基および(メタ)アクリロイル基を有するアクリル単量体である化合物Aと、炭素数2~6のアルキル基および(メタ)アクリロイル基を有し、ヒドロキシ基、アルコシ基およびカルボキシ基をいずれも有さないアクリル単量体である化合物Bと、共重合成分として炭素数2~18のアルキル基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物由来の構成単位を10質量%以上有するアクリル重合体、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、およびポリエステル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上の化合物Cと、還元剤Dと、を含み、
前記化合物A~C、前記化合物A~C以外のラジカル重合性化合物、および化合物C以外の重合体の合計100質量%に対し、前記化合物Aを5~60質量%、前記化合物Bを10~90質量%、前記化合物Cを5~60質量%含み、
前記化合物A~C、前記化合物A~C以外のラジカル重合性化合物、および化合物C以外の重合体の合計100質量部に対し、前記還元剤Dを0.01~20質量部含む、硬化性組成物。
[2]前記化合物A~C、前記化合物A~C以外のラジカル重合性化合物、および化合物C以外の重合体の合計100質量部に対し、ワックスEを0.01~5質量部含む[1]に記載の硬化性組成物。
[3]引火点が15℃以上である[1]または[2]に記載の硬化性組成物。
[4]前記化合物Aがヒドロキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する[1]~[3]のいずれかに記載の硬化性組成物。
[5]前記化合物Bが炭素数4の分岐アルキル基および(メタ)アクリロイル基を有する[1]~[4]のいずれかに記載の硬化性組成物。
[6]前記化合物Bが(メタ)アクリル酸-i-ブチルを含む[1]~[5]のいずれかに記載の硬化性組成物。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の硬化性組成物を含む被覆材組成物。
[8][1]~[6]のいずれかに記載の硬化性組成物、または[7]に記載の被覆材組成物の硬化物であって、厚さが0.1~20cmである硬化物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、硬化性組成物の引火性が低く、硬化物の機械特性、耐候性および耐ガソリン性に優れ、被覆材、塗り床材、路面舗装材、壁材、補修用充填材のような土木建築用材料として有用なアクリル系硬化性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、本発明において「(メタ)アクリ」とは、「アクリおよびメタクリ」の総称である。
また、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0014】
本発明の硬化性組成物は、後述の化合物A~Cおよび還元剤Dを必須成分として含む。本発明の硬化性組成物は、任意成分として、化合物A~C以外のラジカル重合性化合物、化合物C以外の重合体を任意成分として含んでいてもよい。
【0015】
(化合物A)
本発明に用いられる化合物Aは、ヒドロキシ基、アルコシ基、カルボキシ基から選ばれる1種以上の官能基および(メタ)アクリロイル基を有するアクリル単量体である。中でも、耐ガソリン性の観点から、ヒドロキシ基を有するアクリル単量体が好ましい。
【0016】
化合物Aの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸フェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸フェノキシポリプロピレングリコール等のヒドロキシ基を有するアクリル単量体、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル等のアルコキシ基を有するアクリル単量体、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート等のカルボキシ基を有するアクリル単量体が挙げられる。化合物Aは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
本発明の硬化性組成物中の化合物Aの含有量は、化合物A~C、化合物A~C以外のラジカル重合性化合物、および化合物C以外の重合体の合計100質量%に対し、5~60質量%である。化合物Aの含有量が5質量%以上であれば、耐ガソリン性が良くなる。化合物Aの含有量が60質量%以下であれば、硬化物の機械特性(最大引張強度)が良くなる。化合物Aの含有量は、10~40質量%が好ましく、15~30質量%がより好ましい。なお、前記化合物Aの含有量の下限と上限は任意に組み合わせることができる。
【0018】
(化合物B)
本発明に用いられる化合物Bは、炭素数2~6のアルキル基および(メタ)アクリロイル基を有し、ヒドロキシ基、アルコシ基およびカルボキシ基をいずれも有さないアクリル単量体である。
【0019】
引火性の観点から、化合物Bのアルキル基の炭素数は、3以上が好ましい。一方、硬化物の機械特性(最大引張強度)の観点から、化合物Bのアルキル基の炭素数は、5以下が好ましい。また、これらの理由から、化合物Bのアルキル基の炭素数は、4が特に好ましい。
また、硬化物の強度の観点から、化合物Bとしては、(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましい。
【0020】
化合物Bの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸-n-ヘキシル等の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物;(メタ)アクリル酸-i-プロピル、(メタ)アクリル酸-i-ブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル等の分岐状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂肪族環状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物が挙げられる。
【0021】
これらの中でも、引火性と硬化物の機械特性(最大引張強度)の観点から、炭素数4のアルキル基および(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-i-ブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチルが好ましく、炭素数4の分岐状アルキル基および(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル酸-i-ブチルおよび(メタ)アクリル酸-t-ブチルがより好ましく、(メタ)アクリル酸-i-ブチルがさらに好ましく、メタクリル酸-i-ブチルが特に好ましい。
化合物Bは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明の硬化性組成物中の化合物Bの含有量は、化合物A~C、化合物A~C以外のラジカル重合性化合物、および化合物C以外の重合体の合計100質量%に対し、10~90質量%である。化合物Bの含有量が10質量%以上であれば、硬化性組成物の粘度が低くなり、塗装時の作業性が良好となる。化合物Bの含有量が90質量%以下であれば、硬化性組成物の硬化性および硬化物の強度が向上する。化合物Bの含有量は、20~75質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましい。なお、前記化合物Bの含有量の下限と上限は任意に組み合わせることができる。
【0023】
(化合物C)
本発明に用いられる化合物Cは、共重合成分として炭素数2~18のアルキル基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「化合物m」とも記す。)由来の構成単位を10質量%以上有するアクリル重合体(以下、「アクリル重合体P」とも記す。)、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、およびポリエステル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上の化合物である。
【0024】
硬化物の機械特性(最大引張強度)および耐候性の観点から、化合物Cとしては、アクリル重合体Pが好ましい。
前記アクリル重合体Pの全質量に対する化合物m由来の構成単位の質量割合は、10質量%以上であり、化合物Bへの溶解性の観点から、20質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましい。
また、硬化物の機械特性(最大引張強度)の観点から、化合物mのアルキル基の炭素数は、2~8が好ましく、4~6がより好ましい。
【0025】
アクリル重合体Pに用いられる化合物mの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸-i-プロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-i-ブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸-n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルが挙げられる。化合物mは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
アクリル重合体Pに用いられる化合物m以外の共重合成分は、共重合可能な化合物であれば特に限定されない。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニルが挙げられる。化合物m以外の共重合成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
これら共重合成分(モノマー)を、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の従来知られる各種の方法で重合することによって、アクリル重合体Pを得ることができる。
【0028】
硬化性組成物の塗装性の観点から、アクリル重合体Pの質量平均分子量は、5000~200000が好ましく、10000~180000がより好ましい。なお、前記アクリル重合体Pの質量平均分子量の下限と上限は任意に組み合わせることができる。
なお、本明細書における重合体の質量平均分子量は、重合体を溶剤(テトラヒドロフラン)に溶解し、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した分子量をポリスチレン換算した値を意味する。
【0029】
本発明に用いる化合物Cとして、アクリル重合体Pの他には、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートを使用できる。
【0030】
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオールと、ポリイソシアネートと、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとの反応により得ることができる。
ウレタン(メタ)アクリレートを合成するために用いるポリオールは、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する化合物である。前記ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等の2価フェノールと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとの付加反応生成物類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ブチレングリコール、メチルペンタンジオール等の多価アルコールと、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸等の多塩基酸およびその無水物との反応で得られるポリエステルポリオール類;アルキレングリコールとラクトンとから得られるポリラクトンジオール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、シクロヘキサンジメタノール等のジオールと、ホスゲン、ジメチルカーボネート等のカーボネート化剤との反応で得られるカーボネート結合を有するポリカーボネートジオール類が挙げられる。これらポリオールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
これらポリオールの中では、硬化性の観点から、ポリカーボネートジオール類が好ましく、ブタンジオール、ペンタンジオールまたはヘキサンジオールを用いて合成したポリカーボネートジオールがより好ましい。また、低温での硬化物の機械特性(破断点伸度)の観点から、ポリブチレングリコールが好ましい。
【0032】
ウレタン(メタ)アクリレートを合成するために用いるポリイソシアネートは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。前記ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロへキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが挙げられる。また、これら化合物と水やトリメチロールプロパン等とのアダクト化合物や三量体環化化合物等もポリイソシアネートとして使用できる。これらポリイソシアネートは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
ウレタン(メタ)アクリレートを合成するために用いるヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトンと2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加物が挙げられる。これらのヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
また、必要に応じて、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートの代わりにアリル基を有するアルコールを使用してもよい。前記アリル基を有するアルコールとしては、例えば、アリルアルコール、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルが挙げられる。
【0035】
エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応により得ることができる。前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0036】
ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば、多塩基酸またはその無水物と、多価アルコール化合物と、(メタ)アクリル酸またはグリシジル(メタ)アクリレートとを、公知の方法で反応させて得ることができる。多塩基酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸が挙げられる。多塩基酸無水物としては、例えば、前記多塩基酸の無水物が挙げられる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールが挙げられる。
【0037】
ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートの分子量については、特に制限は無いが、塗装時の作業性の観点から、その質量平均分子量は30000以下であることが好ましい。
【0038】
本発明の硬化性組成物中の化合物Cの含有量は、化合物A~C、化合物A~C以外のラジカル重合性化合物、および化合物C以外の重合体の合計100質量%に対し、5~60質量%である。硬化性組成物の機械特性(破断点伸度)の観点から、化合物Cの含有量は、前記合計100質量%に対し、10~50質量%が好ましく、15~40質量%がより好ましい。なお、前記化合物Cの含有量の下限と上限は任意に組み合わせることができる。
【0039】
(還元剤D)
本発明に用いられる還元剤Dは、硬化反応を促進させることができる。
還元剤Cとしては、具体的には、例えば、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ジ(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジン、トリ-n-ブチルアミン、N-エチル-N-ヒドロキシエチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン等のアミン類;ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、アセトアセチル酸コバルト等の多価金属触媒が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
還元剤Dの添加量は、化合物A~C、化合物A~C以外のラジカル重合性化合物、および化合物C以外の重合体の合計100質量部に対し、0.01~20質量部である。硬化性と、ポットライフや作業性とのバランス等の観点から、還元剤Dの添加量は、化合物A~C、任意成分である化合物A~C以外のラジカル重合性化合物および化合物C以外の重合体の合計100質量部に対し、0.1~5質量部が好ましく、0.2~2質量部がより好ましい。なお、前記還元剤Dの添加量の下限と上限は任意に組み合わせることができる。
【0041】
(化合物A~C以外のラジカル重合性化合物)
本発明の硬化性組成物は、任意成分として、前記化合物A~C以外のラジカル重合性化合物を含んでいてもよい。化合物A~C以外のラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性を有する化合物であれば特に限定されない。
具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸-i-オクチル、(メタ)アクリル酸-n-ノニル、(メタ)アクリル酸-i-ノニル、(メタ)アクリル酸-n-デシル、(メタ)アクリル酸-i-デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸-2-ジシクロペンテノキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニ、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニルフェニル、(メタ)アクリル酸フェニルフェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルベンジル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸(1-ナフチル)メチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、(メタ)アクリロイルモルフォリン、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4-ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸1,6-ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸1,9-ノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、ジ(メタ)アクリル酸ジメタノール、ジ(メタ)アクリル酸ポリカーボネートジオール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス((メタ)アクロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能の(メタ)アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能の(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能の(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能の(メタ)アクリレート等のA成分以外の(メタ)アクリル酸エステル化合物、スチレン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル等のビニル基を有する単量体等が挙げられる。化合物A~C以外のラジカル重合性化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
本発明の硬化性組成物中の化合物A~C以外のラジカル重合性化合物の含有量は、化合物A~C、化合物A~C以外のラジカル重合性化合物、および化合物C以外の重合体の合計100質量%に対し、0~30質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましく、2~10質量%がさらに好ましい。なお、前記化合物A~C以外のラジカル重合性化合物の含有量の下限と上限は任意に組み合わせることができる。
【0043】
(ワックスE)
本発明の硬化性組成物は、化合物A~C、化合物A~C以外のラジカル重合性化合物、化合物C以外の重合体、および還元剤Dに加えて、ワックスEを含むことができる。ワックスEは、空気遮断作用を有し、硬化性を高める働きがある。
ワックスEの具体例としては、例えば、パラフィン類、ポリエチレン類、ステアリン酸等の高級脂肪酸類が挙げられ、空気遮断作用の観点からパラフィンワックスが好ましい。これらのワックスは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
空気遮断作用および経済性の観点から、ワックスEの添加量は、化合物A~C、化合物A~C以外のラジカル重合性化合物、および化合物C以外の重合体の合計100質量部に対し、0.01~5質量部が好ましく、0.1~3質量部がより好ましい。なお、前記ワックスEの添加量の下限と上限は任意に組み合わせることができる。
【0045】
本発明の硬化性組成物には、さらに、種々の特性を改善する目的で、例えば、シランカップリング剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、潤滑剤、離型剤、染料、顔料、消泡剤、重合抑制剤、充填剤、化合物C以外の重合体等の各種添加剤を添加してもよい。
【0046】
本発明の硬化性組成物は、引火性の観点から、引火点が15℃以上であることが好ましい。なお、本発明において、硬化性組成物の引火点とは、硬化性組成物の総量中に5質量%以上含まれるラジカル重合性化合物(化合物A~C、および化合物A~C以外のラジカル重合性化合物)のうち、最も引火点の低い化合物の引火点(最低引火点)を意味する。
【0047】
本発明の硬化性組成物の製造方法としては、通常使用される撹拌機を使用して前記の各化合物を混合撹拌する方法を挙げることができる。
【0048】
本発明の硬化性組成物の硬化方法としては、従来知られるレドックス系触媒を用いて硬化する方法を挙げることができる。
硬化に用いる硬化剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;ジアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。低温硬化性と短時間硬化性等の観点から、硬化剤としては過酸化ベンゾイルが好ましい。前記過酸化ベンゾイルは、取り扱いの観点から、不活性の液体または固体として、濃度25~50質量%程度に希釈した溶液状、ペースト状または粉体状の状態で用いることが好ましい。
【0049】
前記硬化剤は、硬化性組成物を硬化させる直前に添加してもよい。
硬化剤の添加量は、硬化性と、ポットライフや作業性とのバランス等の観点から、硬化性組成物100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましい。
【0050】
本発明の硬化性組成物の用途は特に限定されないが、例えば、被覆材、塗り床材、路面舗装材、壁材、補修用充填材のような土木建築用材料に好適に使用することができる。例えば、本発明の硬化性組成物を被覆材組成物として用いて被覆材を製造すれば、前記被覆材は、低温硬化性、耐候性、耐薬品性に優れるというアクリル系被覆材組成物本来の特性に加えて、低引火性である。
【0051】
本発明の硬化物は、本発明の硬化性組成物の硬化物である。本発明の硬化物は、本発明の硬化性組成物の硬化物であること以外は、特に限定されない。
本発明の硬化物の厚みは、0.1~20cmが好ましい。硬化物の厚みが0.1cm以上であれば、硬化物表面にベタツキを生じにくくなる。また、硬化物の厚みが20cm以下であれば、硬化物表面にベタツキを生じにくくなる。
【実施例0052】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、「部」は「質量部」を意味する。
【0053】
<略語>
実施例で使用した材料の略語を以下に示す。
(化合物A)
2-HPMA:メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル(商品名:アクリエステルHP、三菱ケミカル(株)製、引火点:106℃(SDS記載値)、引用SDS改定日:2021年4月1日)
2-MTMA:メタクリル酸-2-メトキシエチル(商品名:アクリエステルMT、三菱ケミカル(株)製、引火点:66.5℃(SDS記載値)、引用SDS改定日:2021年4月1日)
【0054】
(化合物B)
i-BMA:メタクリル酸-i-ブチル(商品名:アクリエステルIB、三菱ケミカル(株)製、引火点:45℃(SDS記載値)、引用SDS改定日:2017年4月1日)
t-BMA:メタクリル酸-t-ブチル(商品名:アクリエステルTB、三菱ケミカル(株)製、引火点:29.5℃(SDS記載値)、引用SDS改定日:2017年4月1日)
n-BMA:メタクリル酸-n-ブチル(商品名:アクリエステルB、三菱ケミカル(株)製、引火点:51℃(SDS記載値)、引用SDS改定日:2017年4月1日)
EMA:メタクリル酸エチル(商品名:アクリエステルE、三菱ケミカル(株)製、引火点:20.5℃(SDS記載値)、引用SDS改定日:2017年4月1日)
CHMA:メタクリル酸シクロへキシル(商品名:アクリエステルCH、三菱ケミカル(株)製、引火点:78℃(SDS記載値)、引用SDS改定日:2021年4月1日)
【0055】
(化合物C)
重合体1:共重合比率(質量比)がメタクリル酸メチル/メタクリル酸n-ブチル=40/60のアクリル重合体(質量平均分子量65,000)
重合体2:共重合比率(質量比)がメタクリル酸メチル/メタクリル酸n-ブチル=60/40のアクリル重合体(質量平均分子量42,000)
重合体3:共重合比率(質量比)がメタクリル酸メチル/メタクリル酸n-ブチル=80/20のアクリル重合体(質量平均分子量82,000)
重合体4:共重合比率(質量比)がメタクリル酸メチル/メタクリル酸n-ブチル=20/80のアクリル重合体(質量平均分子量140,000)
SUA-017:ウレタンアクリレート(商品名:EXCELATE SUA-017、亜細亜工業(株)製、引火点:130℃(固化)(SDS記載値)、引用SDS改定日:2016年8月6日)
ETERCURE6240:エポキシアクリレート(商品名:ETERCURE6240、ETERNAL MATERIALS Co.,LTD製、引火点:110℃超(SDS記載値)、引用SDS改定日:2018年5月9日)
【0056】
(還元剤D)
PTEO:N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン(日本乳化剤(株)製、「商品名:PTEO」)
【0057】
(ワックスE)
ワックス1:融点55℃のパラフィンワックス(商品名:パラフィンワックス115、日本精蝋(株)製)
ワックス2:融点66℃のパラフィンワックス(商品名:パラフィンワックス130、日本精蝋(株)製)
ワックス3:融点75℃のパラフィンワックス(商品名:パラフィンワックス150、日本精蝋(株)製)
ワックス4:ワックス分散液(商品名:BYK-S780、ビックケミー・ジャパン(株)製)
【0058】
(化合物A~C以外のラジカル重合性化合物)
PDE150:ジメタクリル酸トリエチレングリコール(商品名:ブレンマーPDE-150、日油(株)製、引火点:176℃(SDS記載値)、引用SDS改定日:2016年3月23日)
PDP400N:ジメタクリル酸ポリプロピレングリコール(商品名:ブレンマーPDP-400N、日油(株)製、引火点:207℃(SDS記載値)、引用SDS改定日:2015年7月9日)
PHEMA:メタクリル酸-2-フェノキシエチル(商品名:ライトエステルPO、共栄社化学(株)製、引火点:100℃(SDS記載値)、引用SDS改定日:2015年10月21日)
FA-512M:メタクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル(商品名:ファンクリルFA-512M、日立化成工業(株)製、引火点:176℃(SDS記載値)、引用SDS改定日:2009年2月27日)
FA-513M:トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-イル=メタクリラート(商品名:ファンクリルFA-513M、日立化成工業(株)製、引火点:145℃(SDS記載値)、引用SDS改定日:2014年6月12日)
THFMA:メタクリル酸テトラヒドロフルフリル(商品名:アクリエステルTHF、三菱ケミカル(株)製、引火点:106℃(SDS記載値)、引用SDS改定日:2017年4月1日)
M-120:アクリル酸2-エチルヘキシルカルビトール(商品名:アロニックスM-120、東亜合成(株)製、引火点:140℃(SDS記載値)、引用SDS改定日:2008年11月17日)
SLMA:メタクリル酸ラウリルおよびメタクリル酸トリデシルの混合物(商品名:アクリエステルSL、三菱ケミカル(株)製、引火点:150℃(SDS記載値)、引用SDS改定日:2017年4月1日)
BPE-4:エチレンオキサイド変性ビスフェノールAのアクリル酸エステル(商品名:ニューフロンティアBPE-4、第一工業製薬(株)製、重合し引火点示さず(SDS記載値)、引用SDS改定日:2019年7月9日)
【0059】
(化合物C以外の重合体)
重合体5:組成がメタクリル酸メチル100質量%のアクリル重合体(質量平均分子量40,000)
【0060】
(その他の成分)
MEHQ:4-メトキシフェノール
BHT:2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール
カレンズMT-PE1:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)
FCS-42:有機アミド系化合物(商品名:リケンレジンFCS-42、三木理研工業(株)製)
BYK-1752:シリコーン樹脂(商品名:BYK-1752、ビックケミー・ジャパン(株)製)
【0061】
<シラップ組成物(S-1)の製造>
冷却器を備えた反応容器内に、化合物Aとして2-HPMAを19部、化合物Bとしてi-BMAを50部、還元剤DとしてPTEOを0.4部、ワックスEとして、ワックス1を0.5部、ワックス2を0.4部、ワックス3を0.3部添加した。さらに、化合物Aおよび化合物B以外のラジカル重合性化合物としてPDE150を5部、添加剤としてMEHQを0.01部加えた。反応容器内のこれらの化合物を撹拌しながら、化合物Cとして重合体1を26部加えた。
次いで、反応容器内の溶液を60℃に昇温し、温度を60℃に維持したまま2時間撹拌した。重合体1が完全に溶解したことを確認した後、反応容器内の溶液を23℃に降温し、シラップ組成物(S-1)を得た。
【0062】
<シラップ組成物(S-2)~(S-20)の製造>
各成分を表1~表3に記載の割合にした以外は、シラップ組成物(S-1)の製造と同様にしてシラップ組成物(S-2)~(S-20)を得た。
なお、表1~表3中の数字は、各成分の質量部を表す。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
[実施例1~12、比較例1~8]
(S-1)~(S-20)の各シラップ組成物100部に、硬化剤としてパーカドックスCH-50L(過酸化ベンゾイルおよびフタル酸ジシクロヘキシルの混合物、化薬アクゾ(株)製、商品名、過酸化ベンゾイルの含有率:50質量%)2部を加えた後、混合することで硬化性組成物を得た。
得られた硬化性組成物について、以下の評価方法に従い引火性を評価した。さらに、前記硬化性組成物を用いて、以下の評価方法に従い硬化物を作製し、得られた硬化物について、機械特性、耐候性および耐ガソリン性を評価した。
評価結果を表4および表5に示す。
【0067】
<評価方法>
実施例および比較例の各評価は、以下の評価方法に従って実施した。
(1)引火性
硬化性組成物の総量中に5質量%以上含まれるラジカル重合性化合物のうち、最も引火点の低いラジカル重合性化合物の引火点を最低引火点とし、以下の評価基準に従い引火性を評価した。なお、各ラジカル重合性化合物の引火点は、各メーカー発行のSDS記載値を採用した。
(評価基準)
◎:最低引火点が35℃以上
〇:最低引火点が25℃以上、35℃未満
△:最低引火点が15℃以上、25℃未満
×:最低引火点が15℃未満
【0068】
(2)機械特性
硬化性組成物を23℃の環境下でセルキャストに流し込み、硬化させた。厚み3mmで硬化させた樹脂硬化物を、JIS K 6251「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム」に規定する打ち抜き具にて、ダンベル状1号形に5本成形した。
成形した5本の試験片について引張試験機((株)エー・アンド・デイ製、商品名:「テンシロン万能引張試験機」)にて引張試験を実施し、最大引張強度(単位:N/mm2)を測定し、以下の評価基準に従い機械特性を評価した。ただし、JIS K 6251に記載の引張速度は500mm/minであるが、本発明では引張速度20mm/minで実施した。
(評価基準)
◎:最大引張強度が25N/mm2以上
〇:最大引張強度が20N/mm2以上25N/mm2未満
△:最大引張強度が15N/mm2以上20N/mm2未満
×:最大引張強度が15N/mm2未満
【0069】
(3)耐候性
23℃の環境下で、アプリケーターを用いて硬化性組成物をアクリル板(三菱ケミカル(株)製、商品名:「白色アクリライト」)に300μmの厚さで塗装し硬化させ、試験体を得た。試験体の塗装面に対し、JIS A 6909 7.18耐候性試験A法に準拠し、キセノンランプを300時間照射した。さらに試験体の塗装面を分光式色差計(コニカミノルタジャパン(株)製、商品名:「CM-5」)を用いて、旧JIS K 7105(JIS K 7373)に準拠して試験体のYI(黄色度)を測定し、以下の評価基準に従い耐候性を評価した。
(評価基準)
〇:YIが10未満
×:YIが10以上
【0070】
(4)耐ガソリン性
23℃の環境下で、アプリケーターを用いて硬化性組成物をアクリル板(三菱ケミカル(株)製、商品名:「白色アクリライト」)に300μmの厚さで塗装し硬化させ、試験体を得た。ポリテトラフルオロエチレン製円筒(外径22mm、内径18mm、高さ10mm)の下端にシリコーングリースを塗布し、試験体の塗膜上に貼り付けた後、円筒内にレギュラーガソリン(昭和シェル石油(株)製)1.5mLを注いだ。さらに円筒の上端にシリコーングリース(商品名:MOLYKOTE高真空用グリース、デュポン・東レ・スペシャリティマテリアル(株)製)を塗布し、ポリエチレンテレフタレート製フィルムを貼り付けて蓋をした。
上記のように試験体の塗膜とレギュラーガソリンを接触させた状態で23℃の環境下で1週間静置後、円筒を外し、スポイトを用いてレギュラーガソリンを吸い取った後、24時間自然乾燥させた。試験体のレギュラーガソリンと接触していた部分の塗膜状態を確認し、以下の評価基準に従い評価した。
(評価基準)
〇:塗膜が残存した
×:塗膜が溶解し消失した
【0071】
【0072】
【0073】
表4に示すように、実施例1~12で作製した硬化性組成物は引火性が低く、その硬化物は良好な機械強度、耐候性、および耐ガソリン性を示した。
一方で、表5に示すように、比較例1で作製した硬化性組成物は、化合物Aおよび化合物Cを含まず、化合物C以外の重合体を含むため、樹脂液が分離し、硬化物の機械特性および耐候性の評価を実施できなかった。
比較例2で作製した硬化性組成物は化合物Aおよび化合物Bを含まないため、その硬化物は耐候性が不良であった。なお、比較例2で作製した硬化性組成物は耐候性が不良だったため、耐ガソリン性を評価しなかった。
比較例3および比較例4で作製した硬化性組成物は化合物A~Cを含まないため、その硬化物は耐候性が不良であった。なお、比較例3および比較例4で作製した硬化性組成物は耐候性が不良だったため、耐ガソリン性を評価しなかった。
比較例5で作製した硬化性組成物は化合物Aおよび化合物Bを含まないため、その硬化物は機械特性および耐候性が不良であった。なお、比較例5で作製した硬化性組成物は耐候性が不良だったため、耐ガソリン性を評価しなかった。
比較例6および比較例7で作製した硬化性組成物は化合物Aおよび化合物Bを含まないため、その硬化物は機械特性が不良であった。なお、比較例6および比較例7で作製した硬化性組成物は機械特性が不良だったため、耐候性および耐ガソリン性を評価しなかった。
比較例8で作製した硬化性組成物は化合物Aを含まないため、その硬化物は耐ガソリン性が不良であった。
本発明の硬化性組成物は、硬化性組成物の引火性が低く、硬化物の機械特性、耐候性および耐ガソリン性に優れており、被覆材、塗り床材、路面舗装材、壁材、補修用充填材のような土木建築用材料に好適に使用することができるので、産業上、極めて重要である。