(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137526
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】識別装置、識別情報登録装置、識別システム及び識別方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20230922BHJP
G01N 25/72 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G06T7/00 300F
G01N25/72 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043774
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100221556
【弁理士】
【氏名又は名称】金田 隆章
(72)【発明者】
【氏名】入江 庸介
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 大志
【テーマコード(参考)】
2G040
5L096
【Fターム(参考)】
2G040AA05
2G040CA02
2G040CA17
2G040CA23
2G040DA06
2G040DA12
2G040EA06
2G040HA07
2G040HA14
2G040HA18
2G040ZA08
5L096BA03
5L096CA02
5L096CA17
5L096DA02
5L096FA23
5L096FA66
5L096JA03
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】精度良く物体の同一性を識別する識別装置を提供する。
【解決手段】識別装置は、参照物体の内部構造を測定することにより得られた第1の内部構造情報を記憶する記憶装置と、プロセッサと、を備える。プロセッサは、測定装置が対象物の内部構造を測定することにより得た第2の内部構造情報を、測定装置から取得し、第1の内部構造情報と第2の内部構造情報とに基づいて、参照物体と対象物とが同一の物体であるか否かを識別する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照物体の内部構造を測定することにより得られた第1の内部構造情報を記憶する記憶装置と、プロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
測定装置が対象物の内部構造を測定することにより得た第2の内部構造情報を、前記測定装置から取得し、
前記第1の内部構造情報と前記第2の内部構造情報とに基づいて、前記参照物体と前記対象物とが同一の物体であるか否かを識別する、
識別装置。
【請求項2】
前記第1の内部構造情報は、所定の測定条件に従って前記参照物体の内部構造を測定することにより得られた情報であり、
前記記憶装置は、前記参照物体を特定するための第1の識別子を、前記所定の測定条件を示す測定条件情報に紐付けて記憶し、
前記プロセッサは、
前記対象物に対応づけられた第2の識別子を取得し、
前記第2の識別子が前記第1の識別子と一致した場合、前記測定装置を、前記第1の識別子に紐付けられた前記所定の測定条件に従って前記対象物の内部構造を測定するように制御し、前記測定装置から、前記第2の内部構造情報としての測定結果を取得する、
請求項1に記載の識別装置。
【請求項3】
前記第1の識別子は、前記参照物体に固有のシリアルナンバーである、請求項2に記載の識別装置。
【請求項4】
前記第1の識別子は、前記参照物体の製造場所、製造時期、又は型番のうちの少なくとも1つに関する情報を含む、請求項2に記載の識別装置。
【請求項5】
前記測定装置は、前記対象物に対して励起エネルギーを発する励起源と、赤外線を用いて前記対象物の温度を示す温度画像を撮像する赤外線カメラと、を備えるサーモグラフィ装置であり、
前記第1の内部構造情報は、前記サーモグラフィ装置と同一の又は他のサーモグラフィ装置により得られた情報であり、
前記プロセッサは、前記励起源を制御して、前記対象物に前記励起源により励起エネルギーを与え、かつ、撮像された前記温度画像を前記赤外線カメラから取得することにより、前記第2の内部構造情報を取得する、
請求項1~4のいずれかに記載の識別装置。
【請求項6】
前記温度画像は、時系列で撮像された複数の温度画像である、請求項5に記載の識別装置。
【請求項7】
前記第1の内部構造情報は、前記参照物体の温度変化に基づく情報であり、
前記第2の内部構造情報は、前記励起源により与えられた励起エネルギーによって発生する前記対象物の温度変化に基づく情報である、
請求項5又は6に記載の識別装置。
【請求項8】
前記第1の内部構造情報は、前記参照物体の深さ情報を含み、
前記第2の内部構造情報は、前記対象物の深さ情報を含む、
請求項1~7のいずれかに記載の識別装置。
【請求項9】
前記第1の内部構造情報は、前記参照物体の温度変化の位相に基づく情報であり、
前記第2の内部構造情報は、前記対象物の温度変化の位相に基づく情報である、
請求項8に記載の識別装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、赤外線カメラによって時系列で撮像された前記対象物の温度を示す温度画像が示す温度画像データを直交変換することにより、前記対象物内の一部分の温度変化の位相と、前記対象物内の他の部分の温度変化の位相と、を算出する、請求項9に記載の識別装置。
【請求項11】
前記第1の内部構造情報及び前記第2の内部構造情報は、正規化及び/又は2値化された情報である、請求項1~10のいずれかに記載の識別装置。
【請求項12】
情報をユーザに報知する報知装置を更に備え、
前記プロセッサは、前記報知装置により識別結果を示す情報を前記ユーザに報知する、
請求項1~11のいずれかに記載の識別装置。
【請求項13】
前記記憶装置は、前記第1の内部構造情報の取得時に測定した前記参照物体の測定箇所に関する情報を更に記録する、請求項1~12のいずれかに記載の識別装置。
【請求項14】
対象物の外観を撮像する撮像装置を更に備え、
前記記憶装置は、前記参照物体の外観を撮像することにより得られた第1の外観情報を更に記憶し、
前記プロセッサは、
前記撮像装置から、前記対象物の外観を撮像することにより得られた第2の外観情報を取得し、
前記第1の内部構造情報と前記第2の内部構造情報との比較、及び、前記第1の外観情報と前記第2の外観情報との比較に基づいて、前記参照物体と前記対象物とが同一の物体であるか否かを識別する、
請求項1~13のいずれかに記載の識別装置。
【請求項15】
参照物体の内部構造を測定して第1の内部構造情報を生成する測定装置から前記第1の内部構造情報を取得するプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記参照物体を特定するための第1の識別子と、前記測定装置による測定の条件を示す測定条件情報と、前記第1の内部構造情報と、を取得し、
前記第1の識別子と、前記測定条件情報と、前記第1の内部構造情報と、を紐付けて、内部又は外部の記憶装置に登録する、
識別情報登録装置。
【請求項16】
前記測定装置は、前記参照物体に対して励起エネルギーを発する励起源と、赤外線を用いて前記参照物体の温度を示す温度画像を撮像する赤外線カメラと、を備えるサーモグラフィ装置であり、
前記プロセッサは、前記励起源を制御して、前記参照物体に前記励起源により励起エネルギーを与え、かつ、撮像された前記温度画像を前記赤外線カメラから取得することにより、前記第1の内部構造情報を取得する、
請求項15に記載の識別情報登録装置。
【請求項17】
識別情報登録装置と、識別装置とを備える識別システムであって、
前記識別情報登録装置は、
参照物体の内部構造を測定して第1の内部構造情報を生成する第1の測定装置から前記第1の内部構造情報を取得する第1のプロセッサを備え、
前記第1のプロセッサは、
前記参照物体を特定するための第1の識別子と、前記第1の測定装置による測定の条件を示す測定条件情報と、前記第1の内部構造情報と、を取得し、
前記第1の識別子と、前記測定条件情報と、前記第1の内部構造情報と、を紐付けて、内部又は外部の記憶装置に登録し、
前記識別装置は、
対象物の内部構造を測定して第2の内部構造情報を生成する第2の測定装置から前記第2の内部構造情報を取得する第2のプロセッサを備え、
前記第2のプロセッサは、
前記記憶装置から、紐づけられた前記第1の識別子と、前記測定条件情報と、前記第1の内部構造情報と、を取得し、
前記対象物に付された第2の識別子を取得し、
前記第2の識別子が前記第1の識別子と一致した場合、前記第2の測定装置を、前記第1の識別子に紐付けられた前記測定条件情報が示す測定条件に従って前記対象物の内部構造を測定するように制御し、前記第2の測定装置から、測定結果である前記第2の内部構造情報を取得し、
前記第1の内部構造情報と前記第2の内部構造情報とに基づいて、前記参照物体と前記対象物とが同一の物体であるか否かを識別する、
識別システム。
【請求項18】
プロセッサが、対象物の内部構造を測定する測定装置から、前記測定装置が前記対象物の内部構造を測定することにより得た第2の内部構造情報を取得するステップと、
プロセッサが、参照物体の内部構造を測定することにより得られた第1の内部構造情報と、前記第2の内部構造情報と、に基づいて、前記参照物体と前記対象物とが同一の物体であるか否かを識別するステップと、
を含む、識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、識別装置、識別情報登録装置、識別システム及び識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生産品、部品等の物体の出所の識別、流通の管理のために、流通の上流における物品と下流における物品との同一性を識別することが求められる。この観点から、例えば、特許文献1は、梨地模様の画像の画像特徴と、画像特徴記憶手段に記憶されている画像特徴とを照合し、部品、生産物又は部品を構成要素とする生産物を識別する技術を開示する。特許文献1に開示された従来技術は、部品、生産物又は部品を構成要素とする生産物に関する情報を表示する、文字と図形の少なくとも一方で表された情報表示体と、部品又は生産物に形成された梨地模様とを少なくとも含む撮影画像に基づいて、部品又は生産物に関する情報を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、情報表示体、梨地模様等の情報は、これらの情報が付された後に、例えば流通の過程で、損傷、改竄等により変更されるおそれがある。これらの情報が変更されると、同一でない物体を同一と判断するなど、同一性を正しく識別することができない。
【0005】
本開示は、精度良く物体の同一性を識別する識別装置、識別情報登録装置、識別システム及び識別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、
参照物体の内部構造を測定することにより得られた第1の内部構造情報を記憶する記憶装置と、プロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
測定装置が対象物の内部構造を測定することにより得た第2の内部構造情報を、前記測定装置から取得し、
前記第1の内部構造情報と前記第2の内部構造情報とに基づいて、前記参照物体と前記対象物とが同一の物体であるか否かを識別する、
識別装置を提供する。
【0007】
本開示の一態様は、
参照物体の内部構造を測定して第1の内部構造情報を生成する測定装置から前記第1の内部構造情報を取得するプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記参照物体を特定するための第1の識別子と、前記測定装置による測定の条件を示す測定条件情報と、前記第1の内部構造情報と、を取得し、
前記第1の識別子と、前記測定条件情報と、前記第1の内部構造情報と、を紐付けて、内部又は外部の記憶装置に登録する,
識別情報登録装置を提供する。
【0008】
本開示の一態様は、
識別情報登録装置と、識別装置とを備える識別システムであって、
前記識別情報登録装置は、
参照物体の内部構造を測定して第1の内部構造情報を生成する第1の測定装置から前記第1の内部構造情報を取得する第1のプロセッサを備え、
前記第1のプロセッサは、
前記参照物体を特定するための第1の識別子と、前記第1の測定装置による測定の条件を示す測定条件情報と、前記第1の内部構造情報と、を取得し、
前記第1の識別子と、前記測定条件情報と、前記第1の内部構造情報と、を紐付けて、内部又は外部の記憶装置に登録し、
前記識別装置は、
対象物の内部構造を測定して第2の内部構造情報を生成する第2の測定装置から前記第2の内部構造情報を取得する第2のプロセッサを備え、
前記第2のプロセッサは、
前記記憶装置から、紐づけられた前記第1の識別子と、前記測定条件情報と、前記第1の内部構造情報と、を取得し、
前記対象物に付された第2の識別子を取得し、
前記第2の識別子が前記第1の識別子と一致した場合、前記第2の測定装置を、前記第1の識別子に紐付けられた前記測定条件情報が示す測定条件に従って前記対象物の内部構造を測定するように制御し、前記第2の測定装置から、測定結果である前記第2の内部構造情報を取得し、
前記第1の内部構造情報と前記第2の内部構造情報とに基づいて、前記参照物体と前記対象物とが同一の物体であるか否かを識別する、
識別システムを提供する。
【0009】
本開示の一態様は、
プロセッサが、対象物の内部構造を測定する測定装置から、前記測定装置が前記対象物の内部構造を測定することにより得た第2の内部構造情報を取得するステップと、
プロセッサが、参照物体の内部構造を測定することにより得られた第1の内部構造情報と、前記第2の内部構造情報と、に基づいて、前記参照物体と前記対象物とが同一の物体であるか否かを識別するステップと、
を含む、識別方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る識別装置、識別情報登録装置、識別システム及び識別方法によれば、精度良く物体の同一性を識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る識別システムの構成例を示すブロック図
【
図2】第1実施形態に係る参照データ登録装置の構成例を示すブロック図
【
図3】第1実施形態に係る識別装置の構成例を示すブロック図
【
図4】第1実施形態に係る参照データ登録処理の手順を例示するフローチャート
【
図6】
図4の温度画像データ解析処理S13の手順を例示するフローチャート
【
図8】第1実施形態に係る識別処理の手順を例示するフローチャート
【
図9】第2実施形態に係る参照データ登録装置の構成例を示すブロック図
【
図10】第2実施形態に係る識別装置の構成例を示すブロック図
【
図11】第2実施形態に係る参照データ登録処理の手順を例示するフローチャート
【
図13】第2実施形態に係る識別処理の手順を例示するフローチャート
【
図14】本開示の実施形態の第1変形例における参照データの一例を示す表
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示の実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、出願人は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
(第1実施形態)
[1.構成]
[1-1.識別システムの構成の概要]
図1は、本開示の第1実施形態に係る識別システム1の構成例を示すブロック図である。識別システム1は、参照データ登録装置10と、識別装置20とを含む。参照データ登録装置10は、本開示の「識別情報登録装置」の一例である。
【0014】
参照データ登録装置10は、商品、製造直後の製品等の参照物体91の内部構造情報を含む参照データ19を生成する。参照物体91の内部構造は、参照物体91に励起源18により励起エネルギーを照射し、赤外線カメラ17で参照物体91の温度画像データを撮像することにより得られる。
【0015】
参照データ19は、参照物体91に付された固有の識別子(ID)の情報を含み、内部構造情報及び温度画像データの撮像条件等が、対応するIDに紐付けられる。IDは、例えば、参照物体91が複数ある場合、各参照物体91に固有のシリアルナンバーである。IDは、例えば、テキスト、バーコード、2次元コード等の形式でシールに記載され、このシールは参照物体91に貼り付けられる。あるいは、IDは、参照物体91に直接記載され又は刻印されてもよい。
【0016】
識別装置20は、対象物92が参照物体91と同一の物体であるか否かを識別する。具体的には、例えば、識別装置20は、対象物92に付与されたIDを読み取るなどして取得する。あるいは、対象物92に付与されたIDは、キーボード等の入力装置を介して、ユーザにより識別装置20に入力されてもよい。識別装置20は、取得されたIDに対応する温度画像データの撮像条件と同一の条件に従い、励起源28と赤外線カメラ27とを用いて対象物92の温度画像データを撮像し、対象物92の内部構造情報を含む照合対象データ26を生成する。識別装置20は、参照データ19と照合対象データ26とを照合することにより、対象物92が参照物体91と同一の物体であるか否かを識別する。
【0017】
商品、製品等の物体の、外部に露出した表面上の凹凸等の外観特徴を物体指紋とした物体指紋認証技術が知られているが、外観特徴情報は、これらの情報が付された後に、例えば流通の過程で、損傷、改竄等により変更されるおそれがある。従来技術では、外観特徴情報が変更されると、同一でない物体を同一と判断するなど、同一性を正しく識別することができないおそれがある。
【0018】
これに対し、本実施形態に係る識別システム1によれば、参照物体91及び対象物92の内部の特徴、欠陥等の内部構造情報に基づいて、対象物92と参照物体91との同一性を識別できる。内部構造情報は、外観特徴と異なり、容易に損傷を受け変更されることが少ない。
【0019】
また、内部構造情報は、対象物92の疲労損傷に寄与しない内部の特徴、欠陥等を含むため、識別システム1は、対象物92が疲労により損傷を受けたとしても、対象物92と参照物体91との同一性を識別できる。
【0020】
さらに、内部構造情報は、外観特徴と異なり、視認することが不可能又は困難であるため、識別システム1は、内部構造情報が人為的に改竄されるおそれを低減できる。
【0021】
[1-2.参照データ登録装置10の構成]
図2は、本実施形態に係る参照データ登録装置10の構成例を示すブロック図である。参照データ登録装置10は、CPU11と、記憶装置12と、入力インタフェース(I/F)13と、出力インタフェース(I/F)14とを備える。
【0022】
CPU11は、情報処理を行って参照データ登録装置10の機能を実現する。このような情報処理は、例えば、CPU11が記憶装置12に格納されたプログラム15の指令に従って動作することにより実現される。CPU11は、本開示のプロセッサの一例である。プロセッサは、情報処理のための演算を行う演算回路を含めばよく、CPUに限定されない。例えば、プロセッサは、MPU、FPGA等の回路で構成されてもよい。
【0023】
記憶装置12は、データ及び参照データ登録装置10の機能を実現するために必要なプログラム15を含む種々の情報を記録する記録媒体である。記憶装置12は、例えば、フラッシュメモリ、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)等の半導体記憶装置、ハードディスクドライブ(HDD)等の磁気記憶装置、その他の記録媒体単独で又はそれらを組み合わせて実現される。記憶装置12は、SRAM、DRAM等の揮発性メモリを含んでもよい。
【0024】
入力インタフェース13は、赤外線カメラ17からの温度画像データ等の情報を参照データ登録装置10に入力するために、参照データ登録装置10と赤外線カメラ17等の外部機器とを接続するインタフェース回路である。入力インタフェース13は、既存の有線通信規格又は無線通信規格に従ってデータ通信を行う通信回路であってもよい。
【0025】
出力インタフェース14は、参照データ登録装置10から情報を出力するために、参照データ登録装置10と外部の出力装置とを接続するインタフェース回路である。このような出力装置は、例えば励起源18、及びサーバ装置等の他の情報処理端末である。出力インタフェース14は、既存の有線通信規格又は無線通信規格に従ってデータ通信を行う通信回路であってもよい。入力インタフェース13及び出力インタフェース14は、同様のハードウェアにより実現されてもよい。
【0026】
赤外線カメラ17は、例えば、3μm~15μmの波長を有する赤外線を検知する赤外線センサを含む。励起源18は、例えば、キセノンランプ、レーザ光源、超音波を発生する振動子、電磁誘導を生じさせるコイルであるが、これらに限定されず、エネルギーを放射するものであればよい。例えば、励起源18がキセノンランプやレーザ光源である場合、励起源18は、フラッシュ発光して参照物体91をパルス加熱してもよい。励起源18が放射する光の波長は、赤外線カメラ17が検出する赤外線の波長と異なってもよい。
【0027】
[1-3.識別装置20の構成]
図3は、本実施形態に係る識別装置20の構成例を示すブロック図である。識別装置20は、CPU21と、記憶装置22と、入力インタフェース(I/F)23と、出力インタフェース(I/F)24とを備える。
【0028】
CPU21は、情報処理を行って識別装置20の機能を実現する。このような情報処理は、例えば、CPU21が記憶装置22に格納されたプログラム25の指令に従って動作することにより実現される。CPU21は、本開示のプロセッサの一例である。
【0029】
記憶装置22は、データ及び識別装置20の機能を実現するために必要なプログラム25を含む種々の情報を記録する記録媒体である。記憶装置22は、記憶装置12と同様の構成を有してもよい。
【0030】
入力インタフェース23は、赤外線カメラ27からの温度画像データ、参照データ19等の情報を識別装置20に入力するために、識別装置20と赤外線カメラ27等の外部機器とを接続するインタフェース回路である。入力インタフェース23は、既存の有線通信規格又は無線通信規格に従ってデータ通信を行う通信回路であってもよい。
【0031】
出力インタフェース24は、識別装置20から情報を出力するために、識別装置20と外部の出力装置とを接続するインタフェース回路である。このような出力装置は、例えば励起源28、報知装置29、及びサーバ装置等の他の情報処理端末である。出力インタフェース24は、既存の有線通信規格又は無線通信規格に従ってデータ通信を行う通信回路であってもよい。入力インタフェース23及び出力インタフェース24は、同様のハードウェアにより実現されてもよい。
【0032】
赤外線カメラ27及び励起源28は、それぞれ、赤外線カメラ17及び励起源18と同様の構成を有する。
【0033】
[2.動作]
[2-1.参照データ登録処理]
図4は、本実施形態に係る参照データ登録処理の手順を例示するフローチャートである。
図4の参照データ登録処理は、参照データ登録装置10のCPU11によって実行される。
【0034】
まず、CPU11は、温度画像データの生成条件(測定条件)を設定する(S11)。本実施形態では、温度画像データは、アクティブサーモグラフィにより生成される画像データである。したがって、ステップS11で設定される温度画像データの生成条件は、例えば、温度画像データのフレームレート、撮影時間、インテグレーションタイム等のサーモグラフィの撮影条件と、励起源18の励起方法、パワー、照射時間、照射周波数等の励起条件と、を含む。
【0035】
次に、CPU11は、ステップS11で設定された生成条件に基づいて、温度画像データを生成する(S12)。例えば、CPU11は、ステップS11で設定された励起条件に従って励起源18を動作させながら、ステップS11で設定された撮影条件に従って参照物体91の撮影を行い、温度画像データを生成する。ステップS12で生成された温度画像データは、引き続き次のステップS13で処理されてもよいし、記憶装置12又は外部のサーバ装置、記憶装置等に格納されてもよい。
【0036】
アクティブサーモグラフィでは、参照物体91に励起源18により励起エネルギーを与えながら、赤外線カメラ27からが時系列で温度画像を撮像する。アクティブサーモグラフィによれば、励起源18により与えられた励起エネルギーによって発生する参照物体91の温度変化に基づいて、参照物体91の内部構造を観察することができる。
【0037】
次に、CPU11は、ステップS12で生成された温度画像データを解析する(S13)。温度画像データ解析処理S13により、参照物体91の内部の特徴、欠陥等の内部構造を特定することができる。温度画像データ解析処理S13の詳細は後述する。
【0038】
CPU11は、ステップS11で設定された温度画像データの生成条件と、温度画像データ解析処理S13の解析結果とを、参照物体91のIDに紐付けて、参照データ19を生成する(S14)。生成された参照データ19は、例えば、出力インタフェース14を介して出力され、サーバ装置等の外部記憶装置に登録される。あるいは、参照データ19は、記憶装置12に格納されてもよい。
【0039】
図5は、参照データ19の一例を示す表である。参照データ19には、参照物体91のIDと、各IDに紐付けられた参照物体91の型番、温度画像データ、温度画像データの生成条件、温度画像データ解析処理S13の解析条件、解析結果、及び特徴データが格納される。参照データ19は、識別装置20による参照物体91と対象物92との照合に用いられる。
【0040】
[2-2.温度画像データ解析処理S13]
図6は、
図4の温度画像データ解析処理S13の手順を例示するフローチャートである。温度画像データ解析処理S13では、CPU11は、まず、
図4のステップS12で生成された温度画像データを取得する(S131)。
【0041】
次に、CPU11は、温度画像データに対して実行する解析の条件を示す解析条件を設定する(S132)。解析条件は、例えば、解析対象である温度画像のフレームの範囲、温度画像を時系列に取得する際のサンプリング周期、使用するフィルタの周波数範囲、フーリエ変換における解析周波数等である。解析条件は、予め定められてもよい。
【0042】
次に、CPU11は、ステップS132で設定された解析条件に従い、ステップS131で取得された温度画像データに対してフーリエ変換を実行する(S133)。フーリエ変換は、本開示の「直交変換」の一例である。例えば、CPU11は、温度画像の各画素における温度変化に対して時間方向のフーリエ変換を行うことにより、温度画像データを解析する。
【0043】
CPU11は、温度画像の時系列データを分析する際に、適用するフィルタの周波数帯域に応じて内部構造の深さ情報が反映された位相画像及び振幅画像を取得できる。ここで、参照物体91、対象物92等の物体の「深さ情報」とは、例えば、物体の表面からの深さに関する情報である。物体の表面は、例えば、赤外線カメラ及び/又は励起源に露出している物体の外面である。深さ情報が反映された位相画像及び振幅画像を取得することにより、物体の内部構造情報をより立体的に把握することができる。
図7を用いて、このような内部構造の深さ情報が反映された位相画像及び振幅画像について説明する。
【0044】
図7は、物体の溶接部分の位相画像及び振幅画像を示している。周波数帯域にA[Hz]を含むフィルタを提供すると、表層部の位相画像及び振幅画像を得ることができ、周波数帯域にB[Hz]を含むフィルタを提供すると、表層部より深部である中層部の位相画像及び振幅画像を得ることができる。さらに、帯域周波数にC[Hz]を含むフィルタを提供すると、中層部より深部である深層部の位相画像及び振幅画像を得ることができる。ここで、A>B>Cである。
【0045】
内部構造の形状が深さに応じて変わるため、
図7の位相画像及び振幅画像のいずれにおいても、適用するフィルタの周波数帯域が変化すると、画像も変化している。この変化により、物体表面からの深さに応じた内部構造の違いが分かり、物体の内部構造情報をより立体的に把握することができる。振幅画像には、物体表面の状態と内部構造の両方の影響が反映される。位相画像では、物体表面の状態の影響は低減され、内部構造の影響がより強く反映される。
【0046】
なお、溶接部分の温度画像データだけでなく、溶着部や接着部の温度画像データであっても、解析により内部構造の深さ情報が反映された位相画像及び振幅画像を取得できる。
【0047】
CPU11は、フーリエ変換された温度画像データに対して、温度画像のエッジを強調可能なハイパスフィルタ、温度画像を平滑化するガウスフィルタ等の画像処理フィルタを用いてフィルタ処理を実行してもよい(S134)。
【0048】
CPU11は、ステップS133の後、又はステップS134の後に、フーリエ変換された温度画像データの特徴量を抽出する処理を実行してもよい。抽出された特徴量は、特徴データとして参照データ19に格納される。
【0049】
また、温度画像データ解析処理S13では、赤外線カメラ17及び/又はCPU11の動作誤差や外部環境による誤差等を吸収するために、CPU11は、温度画像データに対して、正規化処理及び/又は2値化処理を施してもよい。
【0050】
正規化処理は、例えば、温度画像データの特定の領域又は全体の位相変化量又は振幅変化量を対象データとしてCPU11により実行される。例えば、正規化処理では、CPU11は、正規化後のデータの最小値が0、かつ最大値が1となるように対象データを正規化する。あるいは、CPU11は、正規化後のデータの平均が0、かつ分散が1となるように対象データを正規化する。
【0051】
CPU11は、例えば、温度画像データの輝度値ヒストグラムを利用して2値化処理を実行する。このとき、CPU11は、画素値が所定の閾値以上である温度画像データの画素を白色に設定し、所定の閾値未満である画素を黒色に設定する。2値化処理には、例えば、Pタイル法、モード法、判別分析法、動的閾値決定法、レベルスライス法、ラプラシアン・ヒストグラム法、微分ヒストグラム法等の公知の方法が用いられてもよい。
【0052】
上記のような画像処理フィルタによる処理、正規化処理、2値化処理は、赤外線カメラ17によって撮像された1枚あるいは複数枚の温度画像に対して実行されてもよく、得られた振幅画像、位相画像等に対して実行されてもよい。
【0053】
[2-2.識別処理]
図8は、本実施形態に係る識別処理の手順を例示するフローチャートである。
図8の識別処理は、識別装置20のCPU21によって実行される。
【0054】
まず、CPU21は、対象物92のIDを取得する(S21)。例えば、対象物92の表面、側面、裏面等にシールが貼られ、IDは、テキスト、バーコード、2次元コード等の形式でシールに記載される。あるいは、IDは、対象物92に直接記載され又は刻印されてもよい。
【0055】
次に、CPU21は、ステップS21で取得されたIDに対応する参照データ19を、参照データ19が記憶されている記憶装置から取得する(S22)。
【0056】
CPU21は、ステップS22で取得された参照データ19から、ステップS21で取得されたIDに紐付けられた温度画像データの生成条件を取得し、生成条件を赤外線カメラ27及び励起源28に設定する(S23)。
【0057】
次に、CPU21は、ステップS23で設定された生成条件に基づいて、温度画像データを生成する(S24)。温度画像データ生成処理S24は、
図4の温度画像データ生成処理S12と同様の処理である。
【0058】
CPU21は、ステップS24で生成された温度画像データを解析する(S25)。温度画像データ解析処理S25は、
図4の温度画像データ解析処理S13と同様の処理である。CPU21は、温度画像データ解析処理S25の結果を照合対象データ26として記憶装置22に格納してもよい。
【0059】
次に、CPU21は、温度画像データ解析処理S25の結果と、参照データ19内の解析結果とを照合する(S26)。照合処理は、対象物92と参照物体91との同一性を識別することを含む。ステップS26では、例えば、CPU21は、温度画像データ解析処理S25の結果と、参照データ19内の解析結果との一致の程度を示す指標である一致度を算出し、一致度が所定の閾値以上である場合、対象物92が参照物体91と同一の物体であると判断する。
【0060】
ステップS26の照合の対象は、対象物92及び参照物体91の温度画像そのものであってもよいし、フーリエ変換された温度画像データであってもよい。温度画像データにフィルタ処理が施される場合、ステップS26の照合の対象は、対象物92及び参照物体91のフィルタ処理後の温度画像データであってもよい。温度画像データの特徴量が抽出される場合、ステップS26の照合の対象は、対象物92及び参照物体91の特徴量であってもよい。
【0061】
CPU21は、ステップS26の照合処理の結果を、例えば記憶装置22、報知装置29、又はサーバ装置等の外部記憶装置に出力する(S27)。例えば、CPU21は、ステップS26の照合処理の結果、対象物92が参照物体91と同一の物体でないと識別した場合、報知装置29により、識別結果を示す情報をユーザに報知する。
【0062】
[3.効果等]
以上のように、識別装置20は、対象物92の内部構造を測定する赤外線カメラ27(測定装置)と、参照物体91の内部構造を測定することにより得られた参照データ19(第1の内部構造情報)を記憶する記憶装置22と、CPU21と、を備える。CPU21は、赤外線カメラ27から、赤外線カメラ27が対象物92の内部構造を測定することにより得た照合対象データ26(第2の内部構造情報)を取得し、参照データ19と照合対象データ26とに基づいて、参照物体91と対象物92とが同一の物体であるか否かを識別する。
【0063】
この構成によれば、識別装置20は、精度良く物体の同一性を識別することができる。例えば、識別装置20は、参照物体91及び対象物92の内部の特徴、欠陥等の内部構造情報に基づいて、対象物92と参照物体91との同一性を識別できる。内部構造情報は、外観特徴と異なり、容易に損傷を受け変更されることが少ない。内部構造情報は、対象物92の疲労損傷に寄与しない内部の特徴、欠陥等を含むため、識別装置20は、対象物92が疲労により損傷を受けたとしても、対象物92と参照物体91との同一性を識別できる。内部構造情報は、外観特徴と異なり、視認することが不可能又は困難であるため、識別装置20は、内部構造情報が人為的に改竄されるおそれを低減できる。
【0064】
参照データ19は、所定の測定条件に従って参照物体91の内部構造を測定することにより得られた情報であってもよい。記憶装置22は、参照物体91を特定するための第1のIDを、所定の測定条件を示す測定条件情報に紐付けて記憶してもよい。CPU21は、対象物92に対応づけられた第2のIDを取得し、第2のIDが第1のIDと一致した場合、赤外線カメラ27を、第1のIDに紐付けられた所定の測定条件に従って対象物92の内部構造を測定するように制御し、赤外線カメラ27から、照合対象データ26としての測定結果を取得してもよい。
【0065】
この構成によれば、上記効果に加え、第1のIDと製品、測定条件とを紐付けることにより一元管理を行い、内部構造情報が人為的に改竄されるなどの検査偽装を防止することができる。
【0066】
赤外線カメラ27は、対象物92に対して励起エネルギーを発する励起源28と共に利用されるサーモグラフィ装置であってもよい。参照データ19は、当該サーモグラフィ装置と同一の又は他のサーモグラフィ装置により得られた情報であってもよい。CPU21は、励起源28を制御して、対象物92に励起源28により励起エネルギーを与え、かつ、撮像された温度画像を赤外線カメラ27から取得することにより、照合対象データ26を取得してもよい。
【0067】
励起源28を利用して赤外線サーモグラフィ画像を得ることによって、より精度良く物体の内部構造を把握でき、より精度良く物体の同一性を識別することができる。
【0068】
温度画像は、時系列で撮像された複数の温度画像であってもよい。
【0069】
この構成によれば、時系列データを用いることで、識別処理において外部環境や物体表面の放射率の違いによる影響を低減でき、より精度良く物体の同一性を識別することができる。
【0070】
参照データ19は、参照物体91の温度変化に基づく情報であってもよい。照合対象データ26は、励起源28により与えられた励起エネルギーによって発生する対象物92の温度変化に基づく情報であってもよい。
【0071】
この構成によっても、より精度良く物体の内部構造を把握でき、より精度良く物体の同一性を識別することができる。
【0072】
参照データ19は、参照物体91の深さ情報を含み、照合対象データ26は、対象物92の深さ情報を含んでもよい。
【0073】
物体の深さ情報に応じた内部構造の違いが分かり、物体の内部構造情報をより立体的に把握することができる。
【0074】
参照データ19は、参照物体91の温度変化の位相に基づく情報であり、照合対象データ26は、対象物92の温度変化の位相に基づく情報であってもよい。
【0075】
この構成によれば、位相に基づく情報を用いることにより、参照物体91及び対象物92の表面の形状、表面の素材の放射率の影響等を低減することができる。
【0076】
CPU21は、赤外線カメラ27によって時系列で撮像された対象物92の温度を示す温度画像が示す温度画像データを直交変換することにより、対象物92内の一部分の温度変化の位相と、対象物92内の他の部分の温度変化の位相と、を算出してもよい。
【0077】
この構成によれば、位相に基づく情報を用いることにより、参照物体91及び対象物92の表面の形状、表面の素材の放射率の影響等を低減することができる。
【0078】
参照データ19及び照合対象データ26は、正規化及び/又は2値化された情報であってもよい。
【0079】
この構成によれば、赤外線カメラ17,27及び/又はCPU11,21の動作誤差や外部環境による誤差等を吸収することができ、より精度良く物体の同一性を識別することができる。
【0080】
識別装置20は、情報をユーザに報知する報知装置29を更に備えてもよい。CPU21は、報知装置29により、識別結果を示す情報をユーザに報知してもよい。
【0081】
この構成によれば、ユーザは、同一性の識別結果を知ることができる。特に、識別装置20は、参照物体91及び対象物92に同一のIDが付されているにもかかわらず、参照物体91と対象物92とが同一の物体でないという異常な事態と識別したことを直ちにユーザに報知することができる。
【0082】
(第2実施形態)
図9~13を用いて、本開示の第2実施形態に係る識別システムについて説明する。第1実施形態と比較すると、第2実施形態では、識別システムは、赤外線カメラにより得られた内部構造情報だけでなく、可視光カメラにより得られた外観情報をも用いて、対象物92と参照物体91との同一性を識別する。
【0083】
図9は、本実施形態に係る参照データ登録装置210の構成例を示すブロック図である。
図2に示した第1実施形態に係る参照データ登録装置10と比較すると、参照データ登録装置210は、可視光カメラ217から、参照物体91の外観を撮像することにより得られた可視画像データを取得する点で、参照データ登録装置10と相違する。
【0084】
可視光カメラ217は、本開示の「撮像装置」の一例であり、例えば、CMOS(Complementary MOS)、CCD(Charge Coupled Device)等の固体撮像素子によって撮像画像を生成する。
【0085】
図10は、本実施形態に係る識別装置220の構成例を示すブロック図である。
図3に示した第1実施形態に係る識別装置20と比較すると、識別装置220は、可視光カメラ227から、対象物92の外観を撮像することにより得られた可視画像データを取得する点で、識別装置20と相違する。可視光カメラ227は、可視光カメラ217と同様の構成を有する。
【0086】
図11は、本実施形態に係る参照データ登録処理の手順を例示するフローチャートである。
図11のステップS11~S13は、
図4に示した第1実施形態のステップS11~S13と同様である。
【0087】
本実施形態では、CPU11は、可視画像データの生成条件を設定する(S15)。可視画像データの生成条件は、例えば、可視画像データのフレームレート、撮影時間、参照物体91と可視光カメラ227との距離、レンズ情報等を含む。
【0088】
次に、CPU11は、ステップS15で設定された可視画像データの生成条件に基づいて可視光カメラ217によって撮像された可視画像データを取得する(S16)。
【0089】
この際、CPU11は、参照物体91の溶接部分などの温度画像データの測定箇所を含む可視画像データを取得し、記憶装置12又はサーバ装置等の外部記憶装置に記録してもよい。このように事前に参照物体91の測定箇所を記録することで、対象物92の照合時に記録した測定箇所を参照することができる。これにより、照合時に対象物92の部位全てに対して温度画像データを処理するのではなく、記録された参照物体91の測定箇所に対応する部位付近の温度画像データ処理を行うだけでよいため、CPU11のデータ処理量及び処理負荷を削減できる。
【0090】
次に、CPU11は、ステップS16で取得された可視画像データを解析する(S17)。可視画像データ解析処理S17により、CPU11は、参照物体91の外観、寸法、傷の有無及び形状等の外観情報を得ることができる。CPU11は、可視画像データに対するフィルタ処理、可視画像データの特徴量を抽出する処理等を実行してもよい。
【0091】
次に、CPU11は、ステップS11で設定された温度画像データの生成条件と、温度画像データ解析処理S13の解析結果と、ステップS15で設定された可視画像データの生成条件と、可視画像データ解析処理S17の解析結果とを、参照物体91のIDに紐付けて、参照データ219を生成する(S14)。
図12は、参照データ219の一例を示す表である。生成された参照データ219は、例えば、出力インタフェース14を介して出力され、サーバ装置等の外部記憶装置に登録される。
【0092】
図13は、本実施形態に係る識別処理の手順を例示するフローチャートである。
図13のステップS21~S25,S27は、それぞれ、
図8に示した第1実施形態のステップS21~S25,S27と同様である。
【0093】
本実施形態では、CPU21は、ステップS22で取得された参照データ19から、ステップS21で取得されたIDに紐付けられた可視画像データの生成条件を取得し、生成条件を可視光カメラ227に設定する(S221)。
【0094】
次に、CPU21は、ステップS221で設定された生成条件に基づいて可視光カメラ217によって撮像された可視画像データを取得し(S222)、取得された可視画像データを解析する(S223)。可視画像データ解析処理S223は、
図17の可視画像データ解析処理S17と同様の処理である。
【0095】
次に、CPU21は、温度画像データ解析処理S25の結果及び/又は可視画像データ解析処理S223の結果を、参照データ219内の解析結果と照合し(S224)、照合結果を記憶装置22、報知装置29、又はサーバ装置等の外部記憶装置に出力する(S27)。
【0096】
第1実施形態のステップS26では、CPU21は、温度画像データ解析処理S25の結果と、参照データ19内の解析結果との一致度が所定の閾値Th1以上である場合、対象物92が参照物体91と同一の物体であると判断する。一致度は、例えば、0~1の値を取り得る正規化された指標である。
【0097】
これに対し、本実施形態のステップS224では、CPU21は、例えば、以下の条件の少なくとも1つを満たす場合に、対象物92が参照物体91と同一の物体であると判断する。
(i)温度画像データ解析処理S25の結果と、参照データ219内の温度画像データ解析結果との一致度が所定の閾値Th1以上である。
(ii)可視画像データ解析処理S223の結果と、参照データ219内の可視画像データ解析結果との一致度が所定の閾値Th2以上である。
(iii)温度画像データ解析処理S25の結果と、参照データ219内の温度画像データ解析結果との一致度が所定の閾値Th3以上であり、かつ、可視画像データ解析処理S223の結果と、参照データ219内の可視画像データ解析結果との一致度が所定の閾値Th4以上である。
ここで、Th3<Th1であり、Th4≦Th2である。
【0098】
実際には対象物92が参照物体91と同一である場合であっても、可視画像を用いずに温度画像データに関する一致度のみを用いる場合、一致度がTh1より低いと、対象物92が参照物体91と同一の物体であると判断できない可能性がある。これに対し、本実施形態の条件(iii)によれば、温度画像データに関する一致度が、可視画像を用いない第1実施形態で求められる閾値Th1より低くても、閾値Th3以上であれば、対象物92が参照物体91と同一の物体であると判断できることがある。このように、温度画像データに関する一致度だけでなく、可視画像データに関する一致度を併せて考慮することにより、誤識別のおそれを低減することができる。
【0099】
なお、本実施形態の条件(iii)では、一致度の算出に温度画像データ解析処理の結果と、可視画像データ解析処理の結果を併せて考慮する例について、説明したが、対象物92と参照物体91の照合に用いる複数のデータは、これに限定されない。例えば、振幅画像と位相画像を併せて用いてもよい。
【0100】
(他の実施形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、上記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。そこで、以下、他の実施形態としての変形例を示す。
【0101】
(第1変形例)
上記実施形態では、識別子の一例として、シリアルナンバーであるIDを挙げた。しかしながら、本開示の識別子はこれに限定されず、温度画像データの生成条件及び解析条件等の条件を一意に参照できるものであればよい。例えば、識別子は、製品等の物体の型番であってもよい。
【0102】
図14は、識別子として型番を用いる場合の参照データ319の一例を示す表である。型番は、シリアルナンバーであるIDと異なり、複数の製品に同一の型番が対応することが通常である。また、この場合、参照データ319における温度画像データの生成条件及び解析条件は、型番が同一であれば同一であることが一般的である。そのため、識別子として型番を用いることで、温度画像データの生成条件及び解析条件等の条件を一意に参照することができる。また、参照データ319では、製造場所、製造時等の製造情報が型番に紐付けられている。
【0103】
これにより、対象物92に不具合が見つかった場合に、対象物92と参照物体91との同一性が識別できたときは、参照データ319を参照することにより、同様の不具合が発生し得る製品を製造した工場等の製造場所及び製造時期を特定することができる。このように、本変形例によれば、識別システム1は、製品の不具合の原因となった工場、製品ロット、製造時期等の調査に利用可能である。
【0104】
なお、温度画像データの生成条件及び解析条件は、型番が異なれば異なることが通常であるが、型番が異なれば必ず異なるとは限らない。例えば、型番B1と型番B2の製品に対する温度画像データの生成条件及び解析条件は異なるが、型番B1と型番B3の製品に対する温度画像データの生成条件及び解析条件は同一であってもよい。
【0105】
(第2変形例)
上記実施形態では、例えば
図4及び
図7に示すように、温度画像データ解析処理S13,S25が実行される例について説明した。しかしながら、本開示に係る識別システムは、参照物体91の温度画像と対象物92の温度画像とを照合できるものであればよく、上記の例に限定されない。例えば、温度画像データ解析処理S13,S25が実行されず、
図8のステップS26では、参照物体91と対象物92の温度画像そのもの同士が比較照合されてもよい。
【0106】
(第3変形例)
上記実施形態では、温度画像データに対して、直交変換の一例としてフーリエ変換を実行するステップS133を例示した。しかしながら、直交変換はこれに限定されず、例えば、離散フーリエ変換(Discrete Fourier Transform、DFT)であってもよい。
【0107】
(第4変形例)
上記実施形態では、温度画像がアクティブサーモグラフィで得られる例を説明したが、温度画像は、パッシブサーモグラフィで得られてもよい。
【0108】
(第5変形例)
上記実施形態では、赤外線サーモグラフィによって対象物92及び参照物体91の内部構造を測定する例について説明したが、測定方法は赤外線サーモグラフィに限定されない。例えば、識別システム1は、赤外線サーモグラフィの代わりに、X線等の放射線透過撮影、超音波探傷試験、渦電流探傷試験等の非破壊検査手法によって対象物92及び参照物体91の内部構造を測定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本開示は、物体の同一性を識別する識別システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0110】
1 識別システム
10、210 参照データ登録装置
12 記憶装置
13 入力インタフェース
14 出力インタフェース
15 プログラム
17 赤外線カメラ
18 励起源
19、219、319 参照データ
20、220 識別装置
22 記憶装置
23 入力インタフェース
24 出力インタフェース
25 プログラム
26 照合対象データ
27 赤外線カメラ
28 励起源
29 報知装置
91 参照物体
92 対象物
217、227 可視光カメラ