(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137527
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】歯車加工機およびその位相合わせ方法
(51)【国際特許分類】
B23F 5/16 20060101AFI20230922BHJP
B23F 5/22 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B23F5/16
B23F5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043775
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】余湖 健志
【テーマコード(参考)】
3C025
【Fターム(参考)】
3C025AA01
(57)【要約】
【課題】位相検出に用いる部品の追加を最小限にし、且つ手作業に起因するミスを防ぎつつ、ワークおよび工具の両方の位相を調整することが可能な歯車加工機を提供する。
【解決手段】本発明の歯車加工機100の構成は、取り付けられたワーク102を回転させるワーク主軸110と、取り付けられた工具104を回転させる工具主軸120と、工具主軸120の側面に取り付けられたレーザーセンサ130と、レーザーセンサ130を工具主軸120の軸方向に沿って回動させるセンサ回動装置140と、センサ回動装置140の回動角を制御する角度制御部152と、ワーク102および工具104の位相を検出する位相検出部154と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り付けられたワークを回転させるワーク主軸と、
取り付けられた工具を回転させる工具主軸と、
前記工具主軸の側面に取り付けられたレーザーセンサと、
前記レーザーセンサを前記工具主軸の軸方向に沿って回動させるセンサ回動装置と、
前記センサ回動装置の回動角を制御する角度制御部と、
前記ワークおよび前記工具の位相を検出する位相検出部と、
を備えたことを特徴とする歯車加工機。
【請求項2】
前記位相検出部は、前記センサ回動装置によって前記レーザーセンサを工具の軸方向に沿って回動させながらピークを検出して、前記工具の位相を検出することを特徴とする請求項1に記載の歯車加工機。
【請求項3】
ワークを回転させるワーク主軸と、工具を回転させる工具主軸と、前記工具主軸の側面に取り付けられたレーザーセンサと、前記レーザーセンサを前記工具主軸の軸方向に沿って回動させるセンサ回動装置と、前記センサ回動装置の回動角を制御する角度制御部と、を備えた歯車加工機の位相合わせ方法であって、
前記角度制御部による回動角制御によって前記レーザーセンサを前記ワークに向けて前記ワークの位相を検出し、
前記角度制御部による回動角制御によって前記レーザーセンサを前記工具に向けて前記工具の位相を検出し、
前記ワークと前記工具との位相合わせをすることを特徴とする歯車加工機の位相合わせ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具とワークとを同期回転させて歯車を加工する歯車加工機およびその位相合わせ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車加工機では、工具、例えばカッタとワークとを同期回転させて歯車を加工する際に、カッタとワークの位相合わせを行う必要がある。例えば特許文献1では、「カッタを駆動する工具主軸と、ワークを駆動するワーク軸と、カッタの位相を検出するカッタ位相測定部と、ワークの位相を検出するワーク位相測定部とを備える歯車加工機を用いて、カッタより靱性が大きく硬度が低いダミーカッタを取り付けて位相を測定し、ダミーカッタとワークとを噛合させて位置合わせし、ダミーカッタをカッタに交換して位相を測定し、ダミーカッタの位相に基づいてカッタの位相を補正する」歯車加工機の位相合わせ方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、ワークおよび工具の位相検出のためにそれぞれに専用センサおよび駆動装置が必要であり、ダミーカッタも必須であった。また、歯車加工機の位相合わせに用いられる他の技術としては、工具主軸にレーザーセンサを取り付けてワークの位相を検出する方法が用いられている。この方法では、予め機外で位相調整を行った工具を実機に搭載している。しかしこのような方法の場合、予め位相を調整した工具を作業者が実機に搭載する際に手作業が介在することとなるため、取付ミス、段取りミス、取付誤差が発生してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、位相検出に用いる部品の追加を最小限にし、且つ手作業に起因するミスを防ぎつつ、ワークおよび工具の両方の位相を調整することが可能な歯車加工機およびその位相合わせ方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の歯車加工機の代表的な構成は、取り付けられたワークを回転させるワーク主軸と、取り付けられた工具を回転させる工具主軸と、工具主軸の側面に取り付けられたレーザーセンサと、レーザーセンサを工具主軸の軸方向に沿って回動させるセンサ回動装置と、センサ回動装置の回動角を制御する角度制御部と、ワークおよび工具の位相を検出する位相検出部と、を備える。
【0007】
上記位相検出部は、センサ回動装置によってレーザーセンサを工具の軸方向に沿って回動させながらピークを検出して、工具の位相を検出するとよい。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の歯車加工機の位相合わせ方法の代表的な構成は、ワークを回転させるワーク主軸と、工具を回転させる工具主軸と、工具主軸の側面に取り付けられたレーザーセンサと、レーザーセンサを工具主軸の軸方向に回動させるセンサ回動装置と、センサ回動装置の回動角を制御する角度制御部と、を備えた歯車加工機の位相合わせ方法であって、角度制御部による回動角制御によってレーザーセンサをワークに向けてワークの位相を検出し、角度制御部による回動角制御によってレーザーセンサを工具に向けて前記工具の位相を検出し、ワークと工具との位相合わせをする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、位相検出に用いる部品の追加を最小限にし、且つ手作業に起因するミスを防ぎつつ、ワークおよび工具の両方の位相を調整することが可能な歯車加工機およびその位相合わせ方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態にかかる歯車加工機を説明する図である。
【
図2】
図1の歯車加工機のレーザーセンサが初期位置から回動位置に配置された状態を説明する図である。
【
図3】
図1の歯車加工機において、
図2とは異なるレーザーセンサの回動位置を説明する図である。
【
図4】
図1の歯車加工機において、レーザーセンサが待機位置に配置された状態を説明する図である。
【
図5】
図1の歯車加工機における工具主軸に取り付けられる工具を説明する図である。
【
図6】本実施形態にかかる歯車加工機の位相合わせ方法を説明するフローチャートである。
【
図7】
図1の歯車加工機に用いる工具が
図5(a)のスカイビングカッタであった場合の工具の位相検出方法を説明するフローチャートである。
【
図8】
図1の歯車加工機に用いる工具が
図5(b)のホブカッタであった場合の工具の位相検出方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
図1は、本実施形態にかかる歯車加工機を説明する図であり、レーザーセンサ130が初期位置P0に配置された状態を例示している。
図2は、
図1の歯車加工機のレーザーセンサが初期位置P0から回動位置P1に配置された状態を説明する図である。
図3は、
図1の歯車加工機において、
図2とは異なるレーザーセンサの回動位置P2を説明する図である。
図4は、
図1の歯車加工機において、レーザーセンサが待機位置P3に配置された状態を説明する図である。
【0013】
図1-
図4に示す本実施形態の歯車加工機は、ワーク102と工具104とを同期回転させて歯車を加工する装置である。歯車加工機100は、ワーク102を回転させるワーク主軸110、および工具104を回転させる工具主軸120を有する。ワーク主軸110にはワーク102が、工具主軸120には工具104が、それぞれ交換可能に取り付けられる。
【0014】
図5は、
図1の歯車加工機における工具主軸に取り付けられる工具を説明する図である。工具主軸120(
図1-
図4参照)に取り付けられる工具104としては、例えば
図5(a)に示すスカイビングカッタ104aや、
図5(b)に示すホブカッタ104bが挙げられる。
【0015】
図5(a)に示すスカイビングカッタ104aは、複数の刃106aが、工具主軸120の回転方向に歯車状に配置されている。
図5(b)に示すホブカッタ104bは、刃106bが工具長方向にねじ状に配置されている。またホブカッタ104bには、加工の際に発生した切り屑や粉を外部に逃すための溝108が形成されている。
【0016】
本実施形態の特徴として歯車加工機100は、レーザーセンサ130、センサ回動装置140、および歯車加工機100の動作を制御する制御部150を備える。レーザーセンサ130は測距センサであって、工具主軸120の側面に取り付けられた位相検出用のセンサである。センサ回動装置140は、レーザーセンサ130を工具主軸120の軸方向に沿って回動させる。
【0017】
本実施形態では制御部150は、角度制御部152および位相検出部154として機能する。角度制御部152は、センサ回動装置140の回動角を制御する。位相検出部154は、角度制御部152による回動角制御によってレーザーセンサ130をワーク102および工具104に向けることにより、ワーク102および工具104の位相を検出する。
【0018】
図6は、本実施形態にかかる歯車加工機の位相合わせ方法を説明するフローチャートである。本実施形態の歯車加工機の位置合わせ方法では、
図6に示すように、まず制御部150は位相検出部として機能して、角度制御部152によってレーザーセンサ130の回動角を制御し、レーザーセンサ130のワーク102に向けてレーザーを照射する(S202)。例えばレーザーセンサ130が
図1の初期位置P0にあった場合、角度制御部152はセンサ回動装置140の回動角駆動を制御し、レーザーセンサ130を工具主軸120の軸方向に沿って
図2の回動位置P1まで回動させる。
【0019】
そして制御部150はレーザーが照射された状態でワーク102を回転させ(S204)、位相検出部154はワーク102の位相を検出する(S206)。続いて位相検出部154は工具104の位相を検出する(S208)。
【0020】
(工具位相検出:工具104がスカイビングカッタ104aであった場合)
図7は、
図1の歯車加工機に用いる工具が
図5(a)のスカイビングカッタであった場合の工具の位相検出方法を説明するフローチャートである。工具位相を検出する際には、まず
図7に示すように、位相検出部154は、センサ回動装置140によってレーザーセンサ130を回動させる(S222)。
【0021】
例えばレーザーセンサ130が
図1の初期位置P0にあった場合、角度制御部152はセンサ回動装置140の回動角を制御し、センサ回動装置140はレーザーセンサ130を工具主軸120の軸方向に沿って
図3の回動位置P2まで回動させる。そして制御部150は、レーザーセンサ130を制御し、工具104(スカイビングカッタ104a)の工具諸元に基いた所定位置(刃106aの位置)に向けてレーザーを照射する(S224)。すなわち工具104がスカイビングカッタ104aであった場合には、
図5(a)に示すように1つの方向D1(所定位置(刃106aの位置)の方向)にレーザーを照射する。
【0022】
続いて制御部150はレーザーが照射された状態で工具104(スカイビングカッタ104a)を回転させる(S226)。レーザーの照射によって所定のピークが検出されたら(S228のYES)、位相検出部154は工具104の位相を検出する(S230)。レーザーの照射によって所定のピークが検出されなかったら(S228のNO)、位相検出部154は、例えば工具主軸120に所定の工具が取り付けられていない等の異常を検出する(S232)。
【0023】
(工具位相検出:工具104がホブカッタ104bであった場合)
図8は、
図1の歯車加工機に用いる工具が
図5(b)のホブカッタであった場合の工具の位相検出方法を説明するフローチャートである。
図8において、
図7と共通の動作については同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0024】
図8に示すように、レーザーセンサ130を回動させ(S222)、ホブカッタ104bの側面の所定位置に向けてレーザーを照射する(S224)。所定位置とは、刃106bがある範囲であればどこでもよい。ホブカッタ104bを回転させて(S226)、所定のピークが検出されたら(S228のYES)、位相検出部154は工具104の位相を検出する(S230)。
【0025】
レーザーの照射によって所定のピークが検出されなかった場合(S228のNO)、ピーク位置と溝108の位置が重なってしまっている可能性がある。そこで角度制御部152はセンサ回動装置140の回動角を制御し、センサ回動装置140がレーザーセンサ130を工具の軸方向に沿って回動させる。そして位相検出部154は、レーザーセンサ130が回動している状態で工具104(ホブカッタ104b)にレーザーを照射する(S242)。
【0026】
すなわち本実施形態の歯車加工機100の位相合わせ方法では、S242において工具104(ホブカッタ104b)の工具長方向にレーザーセンサ130の照射方向を変えながらピークを検出する(レーザー走査)。具体的には
図5(b)に示すように方向D2、D3、D4のようにレーザーセンサ130の照射方向を変える。なお工具長方向にレーザー走査している間は、ホブカッタ104bは回転させない。
【0027】
レーザー走査においてピークが検出されたら(S244のYES)、制御部150は、S224の動作に戻り、ホブカッタ104bを回転させて工具の位相を検出する(S230)。レーザー走査においてピークが検出されなかったら(S244のNO)、位相検出部154は、例えば工具主軸120に所定の工具が取り付けられていない等の異常を検出する(S246)。
【0028】
なお、レーザーを工具長方向に走査するとき、ホブカッタ104bの溝108にレーザーを走査させてしまう可能性もある。したがって、ピークが検出されなかった場合(S244のNO)であっても、すぐに異常検出(S246)とはせずに、ホブカッタ104bの角度を変えて、ふたたび工具長方向にレーザー走査(S242)してもよい。
【0029】
図7および
図8を用いて説明したように工具104(スカイビングカッタ104aやホブカッタ104b)を位相検出したら、制御部150はワーク102と工具104との位相合わせを行う。なおその後に工具104によってワーク102の加工を行う際には、レーザーセンサ130を
図4の待機位置P3(初期位置P0と同じであってもよい)に移動させる。
【0030】
上記説明したように本実施形態の歯車加工機100およびその位相合わせ方法によれば、レーザーセンサ130、およびレーザーセンサ130を回動させるセンサ回動装置140をそれぞれ1つずつ設け、センサ回動装置140によってレーザーセンサ130を回動させる。これにより、ワーク102および工具104の両方の位相を検出し、それらの位相合わせを行うことができる。
【0031】
上記構成によれば、位相検出に用いる部品の追加を最小限に留めることができ、装置コストの増大を抑制しつつ、上述した効果を得ることができる。またワーク102および工具104の位相を検出する際にて手作業が発生しないため、手作業に起因するミスを防ぐことが可能である。
【0032】
また本実施形態の歯車加工機100によれば、レーザーセンサ130を工具長方向に回動させながら工具に対してレーザーを照射することにより、スカイビングカッタ104aに加えホブカッタ104bの位相を検出することができる。これにより、位相検出の適用範囲が広くなるため、部品の共通化を図ることができ、装置コストの削減を図ることが可能となる。
【0033】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は斯かる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、工具とワークとを同期回転させて歯車を加工する歯車加工機およびその位相合わせ方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
100…歯車加工機、102…ワーク、104…工具、104a…スカイビングカッタ、104b…ホブカッタ、106a…刃、106b…刃、108…溝、110…ワーク主軸、120…工具主軸、130…レーザーセンサ、140…センサ回動装置、150…制御部、152…角度制御部、154…位相検出部