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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137530
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】キッチンペーパーロール
(51)【国際特許分類】
   A47L 13/16 20060101AFI20230922BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20230922BHJP
   D21H 27/32 20060101ALI20230922BHJP
   B32B 29/06 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A47L13/16 A
D21H27/00 F
D21H27/32 A
B32B29/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043778
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 遥絵
【テーマコード(参考)】
3B074
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
3B074AA01
3B074AB05
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CB00C
4F100DC13
4F100DD01A
4F100DD01B
4F100DG10A
4F100DG10B
4F100EA02
4F100EJ17
4F100JA13A
4F100JA13B
4F100JK06
4F100YY00A
4F100YY00B
4L055AH37
4L055AJ01
4L055AJ07
4L055CH20
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA15
4L055GA29
(57)【要約】
【課題】巻長が長くコンパクトであり、キッチンペーパーのカールの度合いが抑制された、キッチンペーパーの使い勝手が良好なキッチンペーパーロールの提供。
【解決手段】
それぞれエンボスが付与された2枚のシートが接着糊を介して一体化されたエンボス積層構造を有するとともに長手方向に沿って所定間隔毎に破断用ミシン目が形成されたキッチンペーパーがロール状に巻き取られたキッチンペーパーロールであって、キッチンペーパーの坪量は、32g/m2以上60g/m2以下であり、キッチンペーパーロールの巻長は、25m以上65m以下であり、キッチンペーパーロールの巻密度は、0.50m/cm2以上1.10m/cm2以下であり、キッチンペーパーのMD方向のプライ剥離強度とCD方向のプライ剥離強度との幾何平均プライ剥離強度は、0.100N以上0.165N以下であるキッチンペーパーロール。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれエンボスが付与された2枚のシートが接着糊を介して一体化されたエンボス積層構造を有するとともに長手方向に沿って所定間隔毎に破断用ミシン目が形成されたキッチンペーパーがロール状に巻き取られたキッチンペーパーロールであって、
前記キッチンペーパーの坪量は、32g/m2以上60g/m2以下であり、
前記キッチンペーパーロールの巻長は、25m以上65m以下であり、
前記キッチンペーパーロールの巻密度は、0.50m/cm2以上1.10m/cm2以下であり、
前記キッチンペーパーのMD方向のプライ剥離強度とCD方向のプライ剥離強度との幾何平均プライ剥離強度は、0.100N以上0.165N以下であることを特徴とするキッチンペーパーロール。
【請求項2】
前記破断用ミシン目の前記所定間隔は、180mm以上250mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のキッチンペーパーロール。
【請求項3】
前記キッチンペーパーの密度は、0.080g/cm3以上0.0130g/cm3以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のキッチンペーパーロール。
【請求項4】
前記接着糊による糊付け面積率が5%以上15%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のキッチンペーパーロール。
【請求項5】
前記エンボス積層構造は、ネステッドエンボス積層構造であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のキッチンペーパーロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
家庭の台所や飲食店の厨房等において、水分や油分の拭き取り等の用途でキッチンペーパーロールが使用されている。キッチンペーパーロールは、一般に、それぞれエンボスが付与された2枚のシートが接着糊を介して一体化されたエンボス積層構造を有するキッチンペーパーがロール状に巻き取られて成り、ホルダに巻き出し可能に装着されて使用に供される。使用時には、キッチンペーパーを、キッチンペーパーロールから必要量巻き出しつつ、キッチンペーパーにあらかじめ設けられた破断用ミシン目に沿ってカットして、水分や油分の拭き取り用等として用いる。
【背景技術】
【0002】
この種のキッチンペーパーロールでは、持ち運びや収納性の観点から、巻長を長くしたコンパクトなロールが求められている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開第2018-90270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、巻長を長くしたコンパクトなキッチンペーパーロールでは、概してロールの巻きが固くなる。それに伴って、使用時にキッチンペーパーを必要量だけロールから巻き出しカットして得られるキッチンペーパーのカールの度合いが増加し、場合によっては、キッチンペーパーは筒状に丸くなり、キッチンペーパーの使い勝手が悪化するという問題がある。
【0005】
本発明は、巻長が長く且つコンパクトなキッチンペーパーロールでありながら、キッチンペーパーの使用時にキッチンペーパーを必要量だけロールから巻き出してカットしたときに得られるキッチンペーパーのカールの度合いが不都合なく十分に抑制された、キッチンペーパーの使い勝手が良好であるキッチンペーパーロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行い、本発明者は、それぞれエンボスが付与された2枚のシートが接着糊を介して一体化されたエンボス積層構造を有するとともに長手方向(MD方向)に沿って所定間隔毎に破断用ミシン目が形成されたキッチンペーパーがロール状に巻き取られたキッチンペーパーロールであって、キッチンペーパーの坪量は、32g/m2以上60g/m2以下であり、キッチンペーパーロールの巻長は、25m以上65m以下であり、キッチンペーパーロールの巻密度は、0.50m/cm2以上1.10m/cm2以下であり、キッチンペーパーのMD方向のプライ剥離強度とCD方向のプライ剥離強度との幾何平均プライ剥離強度は、0.100N以上0.165N以下であるキッチンペーパーロールにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0007】
具体的には、本発明は、以下の構成を有する。
[1] それぞれエンボスが付与された2枚のシートが接着糊を介して一体化されたエンボス積層構造を有するとともに長手方向に沿って所定間隔毎に破断用ミシン目が形成されたキッチンペーパーがロール状に巻き取られたキッチンペーパーロールであって、キッチンペーパーの坪量は、32g/m2以上60g/m2以下であり、キッチンペーパーロールの巻長は、25m以上65m以下であり、キッチンペーパーロールの巻密度は、0.50m/cm2以上1.10m/cm2以下であり、キッチンペーパーのMD方向のプライ剥離強度とCD方向のプライ剥離強度との幾何平均プライ剥離強度は、0.100N以上0.165N以下であることを特徴とするキッチンペーパーロール。
[2] 破断用ミシン目の所定間隔は、180mm以上250mm以下である、[1]に記載のキッチンペーパーロール。
[3] キッチンペーパーの密度は、0.080g/cm3以上0.0130g/cm3以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載のキッチンペーパーロール。
[4] 接着糊による糊付け面積率が5%以上15%以下であることを特徴とする[1]から[3]のいずれかに記載のキッチンペーパーロール。
[5] エンボス積層構造は、ネステッドエンボス積層構造であることを特徴とする[1]から[4]のいずれかに記載のキッチンペーパーロール。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、巻長が長く且つコンパクトなキッチンペーパーロールでありながら、キッチンペーパーの使用時にキッチンペーパーを必要量だけロールから巻き出してカットしたときに得られるキッチンペーパーのカールの度合いが不都合なく十分に抑制された、キッチンペーパーの使い勝手が良好であるキッチンペーパーロールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るキッチンペーパーロールおよびキッチンペーパーの構成を説明する概略図である。
図2】キッチンペーパーロール製造設備の例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。以下の実施形態および図面は例示の目的で記載したものであり、本発明を限定するものではない。
【0011】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係るキッチンペーパーロールおよびキッチンペーパーの構成を説明する概略図である。図1の(a)は、本発明の第1の実施形態に係るキッチンペーパーロール1の全体斜視図である。図1の(b)は、図1の(a)における符号Ibで示される部分の概略的拡大図である。図1の(c)は、図1の(b)における符号Ic-Icで示される線に沿って取った概略的断面図である。
【0012】
(キッチンペーパーロール)
図1の(a)を参照して、本発明の実施形態に係るキッチンペーパーロール1は、2枚のシート11,12で構成されるいわゆる2プライのキッチンペーパー10が、円筒状の巻芯である紙管5にロール状に巻き回された、2プライのキッチンペーパーロール1である。
【0013】
(シート)
キッチンペーパー10の構成要素であるシート11,12は、繊維原料であるパルプ成分を含むスラリーを抄紙することによって得られる。
【0014】
(パルプ成分)
パルプ成分としては、木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプを挙げることができる。
【0015】
木材を原料として製造される木材パルプとしては、例えば、広葉樹パルプ(広葉樹クラフトパルプ(LKP))、針葉樹パルプ(針葉樹クラフトパルプ(NKP))、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプが挙げられるが、特に限定されない。
【0016】
木材以外の植物・動物を原料として製造される非木材パルプとしては、コットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。
【0017】
古紙パルプとは、古紙、すなわちいったん抄紙されたパルプを原料として製造されるパルプである。古紙パルプとしては、例えば、牛乳パックのような液体を充填包装するための紙パックを原料とする、いわゆるミルクカートンパルプ、新聞や雑誌等を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。
【0018】
パルプ成分は上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。シート11とシート12とで、パルプ成分を異ならせてもよい。これらパルプ成分はキッチンペーパー10の品質に大きく影響するので、要求品質に合わせて所定の種類および配合割合で適宜配合される。例えば、パルプ成分として、木材パルプのみを(100質量%で)用いることができる。
【0019】
木材パルプとしては、針葉樹パルプおよび広葉樹パルプから選択される少なくとも1種を好ましく用いることができる。針葉樹パルプは、繊維が長く強度があり、抄造されるシートに強度を付与することができる。また、広葉樹パルプは、繊維が短く、しなやかであり、抄造されるシートに均一性、地合いのよさ、柔らかさなどを提供することができる。本発明の実施形態において、針葉樹パルプと広葉樹パルプを併用することが好ましく、針葉樹クラフトパルプ(NKP)と広葉樹クラフトパルプ(LKP)を併用することがより好ましい。
【0020】
針葉樹パルプと広葉樹パルプとを併用する場合、針葉樹パルプと広葉樹パルプとの配合割合(質量比)を示すL/N比は、例えば、10/90~90/10とすることが好ましく、20/80以上とすることがより好ましく、30/70以上とすることがさらに好ましく、60/40以上とすることがさらになお好ましく、また、80/20以下とすることがより好ましく、70/30以下とすることがさらに好ましい。
【0021】
(任意成分)
シート11,12には、要求品質および操業の安定のために、任意成分として様々な薬品が添加されていてもよい。任意成分としては、例えば、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、柔軟剤、嵩高剤、染料、香料、分散剤、濾水向上剤、ピッチコントロール剤、歩留向上剤、サイズ剤等を挙げることができる。乾燥紙力剤としては、例えば、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド(PAM)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を挙げることができる。湿潤紙力剤としては、ポリアミドエピクロロヒドリン、尿素、メラミン、熱架橋性ポリアクリルアミド等を挙げることができる。柔軟剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、および両性イオン界面活性剤等を挙げることができる。上記の任意成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。シート11とシート12とで、任意成分を異ならせてもよい。
【0022】
(キッチンペーパー)
図1の(a)を参照して、本発明の実施形態に係るキッチンペーパーロール1において、キッチンペーパー10は、2枚のシート11,12で構成される2プライのキッチンペーパーであり、紙面全域(全面)に亘ってエンボスが付されているとともに、破断用ミシン目7が所定長L毎に形成されている。
【0023】
(エンボス)
エンボスとは、シートの両面のうちの一方の表面に凸部を、他方の表面にエンボス凸部の裏側で構成されるエンボス凹部を有する構成をいう。
【0024】
詳細には、図1の(b)および(c)を参照して、2プライのキッチンペーパー10を構成する2枚のシート11,12のそれぞれに、エンボス加工が施されており、それにより、シート11は、複数のエンボス部11eと、それを取り囲む非エンボス部11neとを含み、シート12は、複数のエンボス部12eと、それを取り囲む非エンボス部12neとを含む。
【0025】
図1の(b)は、キッチンペーパー10を、キッチンペーパー10を構成する2枚のシート11および12のうちキッチンペーパーロール1においてロール外側となるシート11の側から見た図である。以下、キッチンペーパー10を構成する2枚のシート11および12のうちキッチンペーパーロール1においてロール外側となるシートを、単に「外側シート」とも称し、キッチンペーパー10を構成する2枚のシート11および12のうちキッチンペーパーロール1においてロール内側となるシートを単に「内側シート」とも称するものとする。
【0026】
図1の(a)を参照して、本例では、外側シート11のロール外側面には、多数のエンボス部11eよって構成され平面視において略六角形を成すエンボスパターンが、互いの間に平坦部を挟んで、反復形成されている。図1の(b)を参照して、本例では、外側シート11の各エンボス部11eは、平面視において略三角形を示す点状の形状を有する。なお、このエンボスパターンの形状、およびエンボス部の形状は、例示であり、本発明を限定するものではない。エンボスパターンとしては、シートに対してその紙面の実質的全域に亘って形成される点状、線状、またはこれらを組み合わせたエンボスパターンが適用可能である。エンボス部の形状としては、三角形の他、円形、正方形、長方形、菱形、五角形、その他の多角形、花形など、任意の形状を適用可能である。
【0027】
図1の(c)を参照して、2枚のシート11,12は、介在する接着糊Gによって一体化されて、エンボス積層構造を形成する。図1の(c)の(i)および(ii)は、本発明の実施形態に採用し得るエンボス積層構造の形態の例を示す。
【0028】
(ネステッドエンボス積層構造)
図1の(c)の(i)に示される本実施形態の1つの態様において、外側シート11と内側シート12は、外側シート11のエンボス部11eのエンボス凸部が、内側シート12のエンボス部12eのエンボス凸部によって取り囲まれた非エンボス部12neの凹部に入り込むような形態で、接着糊Gを介して接合され一体化されて、エンボス積層構造を形成している。このようなエンボス積層構造は、「ネステッドエンボス積層構造」とも称される。
【0029】
シート12の非エンボス部12neは、ネステッドエンボス積層構造を可能とする限り、形状、寸法、分布、数を問わない。非エンボス部12neの形状は、対応するシート11のエンボス部11eと同様の形状(本例では、平面視において略三角形の点状)であってもよく、シート11のエンボス部11eとは異なる形状であってもよい。ネステッドエンボス積層構造を可能とするために、シート12の非エンボス部12neの凹部は、概して、シート11のエンボス部11eのエンボス凸部よりも大きい。エンボス部11eのエンボス凸部と、これを受け入れる非エンボス部12neの凹部との間に、隙間があってもよい。1つの非エンボス部12neの凹部の中に、複数のエンボス部11eの凸部が含まれる態様であってもよい。
【0030】
(Tip to Tipエンボス積層構造)
図1の(c)の(ii)に示される本実施形態の別の態様において、外側シート11と内側シート12とは、外側シート11のエンボス部11eのエンボス凸部の外部頂面と、内側シート12のエンボス部12eのエンボス凸部の外部頂面とが対接するような形態で、接着糊Gを介して接合され一体化されて、エンボス積層構造を形成している。このようなエンボス積層構造は、「Tip to Tipエンボス積層構造」とも称される。
【0031】
本発明の実施形態において、キッチンペーパー10のエンボス積層構造は、ネステッドエンボス積層構造であってもよく、Tip to Tipエンボス積層構造であってもよく、エンボス積層構造の形態に制限はない。また、シート11における複数のエンボス部11eの形状・寸法(頂面の面積、高さ)、分布は、一様であってもよく、また、多様であってもよい。同様に、シート12における複数のエンボス部12eの形状・寸法(頂面の面積、高さ)、分布は、一様であってもよく、また、多様であってもよい。このようなエンボス部としては、例えば、エンボス凸部頂面の面積を0.62mm2~1.73mm2とし、エンボス凸部頂面の高さを280μm~590μmとし、エンボス凸部密度を5個/cm2~12個/cm2とすることができる。
【0032】
なお、本例では、外側シート11のエンボス部11eは、ロール内側に向かって突出している。エンボス部をロール内側に突出させた構成によれば、キッチンペーパーロール1の表面にエンボス凹部があらわれ、手触りが滑らかになるという効果を奏し得る。しかしながら、本発明においては、これは必須ではない。1つの変形例として、図1の(c)の(i)に示されるネステッドエンボス積層構造を有するキッチンペーパー10を、シート11がロール内側のシートとなり、シート12がロール外側のシートとなるように巻き回してキッチンペーパーロール1としてもよい。これによれば、キッチンペーパーロール1の表面にエンボス凸部があらわれ、独特の手触り感や視覚的模様が得られるという効果を奏し得る。
【0033】
(接着糊)
シート11およびシート12を接合する接着糊Gには、積層構造を採るキッチンペーパーに採用される公知の接着剤を使用することができる。例えば、ポリビニルアルコール、デンプン、変性デンプン、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系接着剤等を使用可能である。
【0034】
(ミシン目)
本発明の実施形態において、キッチンペーパー10には、キッチンペーパーロール1から巻き出されたキッチンペーパー10をキッチンペーパーロール1から切り離すのを容易にするための、破断用ミシン目7を有する。
【0035】
詳細には、図1の(a)を参照して、キッチンペーパー10には、キッチンペーパー10の幅方向(CD方向)に延びる連続した小穴からなる破断用ミシン目7が、キッチンペーパー10の長手方向(MD方向)に沿って所定間隔L毎に形成されている。小穴は、カッターの刃先などのミシン目形成部材によって設けられた空間であり、その部分において、キッチンペーパー10の構成繊維は切断または分断されている。小穴は、任意の形状を取り得、例えば、スリットのような線状であってもよく、点状であってもよく、一点鎖線、二点鎖線のような形状であってもよい。
【0036】
(ミシン目の間隔)
本明細書において、この所定間隔L、すなわち隣接する2本の破断用ミシン目7間の距離Lを、「1カット寸法」とも称するものとする。また、1カット寸法だけ離間する隣接する2本の破断用ミシン目7の間に挟まれるキッチンペーパー10の区画を、「1カット」とも称するものとする。
【0037】
1カット寸法は、キッチンペーパーを使用する際に必要とされる紙量や使いやすさを考慮して、任意に設定することができる。キッチンペーパーロール1から巻き出されたキッチンペーパー10は、任意の破断用ミシン目7に沿って破断されて、キッチンペーパーロール1から1カット毎または複数カット毎のような任意のカット数の寸法となるように容易に切り離される。
【0038】
(紙管)
図1の(d)を参照して、紙管5は、円筒形状を有しており、その周りにキッチンペーパー10が巻き回されてキッチンペーパーロール1となる。紙管5の外径であるコア径DCは、キッチンペーパーロール1を回転支持するためのキッチンペーパーロール用ホルダの部材(コア芯やフック等)のサイズに応じて設定され、一般には、38mm~40mm程度である。
【0039】
(キッチンペーパーロールの巻径)
図1の(d)を参照して、キッチンペーパーロール1の巻径とは、キッチンペーパーロール1の形態にロール状に巻き取られたキッチンペーパー10のロール径(直径)DRをいう。本発明の実施形態において、キッチンペーパーロール1の巻径DRは、一般的なキッチンペーパーロール用のホルダに収まって、回転自在に支持され得るサイズに設定される。キッチンペーパーロール1の巻径DRは、例えば、100mm~134mmであり、110mm~120mmであってもよい。巻径DRは、例えば、ノギスなどを用いて測定することができる。
【0040】
(キッチンペーパーロールの巻長)
キッチンペーパーロール1の巻長とは、キッチンペーパーロール1において紙管5に巻き回されたキッチンペーパー10の長さをいう。本発明の実施形態において、キッチンペーパーロール1の巻長は、25m以上65m以下である。
【0041】
キッチンペーパーロール1の巻長が25m以上であると、1ロール当りのキッチンペーパー10の長さは長く、キッチンペーパーロール1の巻径を所定の大きさの範囲内とした場合に、スペースを取らないため、キッチンペーパーロール1の持ち運びに効率的であるとともに収納性に優れる。キッチンペーパーロール1の巻長が長くなると、概して、キッチンペーパーロール1の巻径は大きくなり、65mを超えると、キッチンペーパーロール1は、一般的なキッチンペーパーロール用ホルダに収まり難くなる。また、キッチンペーパーロール1の巻長が25m未満であると、1ロール当りの巻長が短く、キッチンペーパーロール1の巻径を所定の大きさとした場合に、キッチンペーパーロール1の持ち運びの効率や収納性の向上効果が小さい。
【0042】
キッチンペーパーロールの巻長は、例えば、キッチンペーパーロール1からキッチンペーパー10を巻き解きながらその長さを実測することによって求めることができる。
【0043】
(キッチンペーパーロールの幅/キッチンペーパーの幅)
キッチンペーパーロール1の幅とは、キッチンペーパーロール1に巻き取られたキッチンペーパー10の幅方向(CD方向)におけるキッチンペーパーロールの長さをいう。キッチンペーパーロール1の幅は、一般に、幅広のキッチンペーパーロールの断裁によって製品幅のキッチンペーパーロールを得る工程を含む製法に起因して、当該キッチンペーパーロールに巻き取られているキッチンペーパー10の幅と長さが等しい。本発明の実施形態において、キッチンペーパーロール1の幅は、一般的なキッチンペーパーロール用ホルダ内に収まり、その中で回転自在に支持され得る長さに設定される。キッチンペーパーロール1の幅、すなわちキッチンペーパー10の幅は、例えば、180mm~250mmであってもよく、210mm程度であることが多い。幅は、例えば、ノギスやメジャーなどを用いて測定することができる。
【0044】
(キッチンペーパーの坪量)
キッチンペーパー10の坪量は、キッチンペーパー10を構成する2枚のシート11,12とそれらの間に介在する接着糊Gとを合わせた平米あたりの重量である。キッチンペーパー10の坪量は、日本工業規格JIS P8124の規定に準じて坪量を測定することにより得ることができる。
【0045】
本発明の実施形態おいて、キッチンペーパー10の坪量は、32.0g/m2以上60.0g/m2以下である。
【0046】
キッチンペーパー10の坪量が32.0g/m2より低くなると、概して、含有パルプ量の減少などにより、キッチンペーパー10の強度が低くなり、また、吸水量や吸油量が低下して、使用感が悪くなり得る。
【0047】
キッチンペーパー10の坪量が60.0g/m2より高くなると、概して、キッチンペーパー10は紙厚が高くなり、キッチンペーパーロール1の巻径を所定の範囲内に収めることが困難となり得る。
【0048】
(キッチンペーパーの紙厚)
本明細書において、キッチンペーパー10の紙厚とは、キッチンペーパー1組当たりの厚さであり、介在する接着糊Gによって接合された、エンボスが付された2枚のシート11,12全体としての厚さをいう。キッチンペーパー10の紙厚は、例えば、ISO 12625-3に準じて、2つの平行な円形の加圧面を持つマイクロメータで、加圧面間にキッチンペーパー10を挟んで厚さを測定することにより求めることができる。ただし、厚さの測定中、加圧面間に加える圧力は2kPa±0.2kPaとする。
【0049】
本発明の実施形態に係るキッチンペーパー10の紙厚は、特に限定されないが、参考値として、例えば、300μm~600μmである。この紙厚の範囲であれば、キッチンペーパーとして使用する際の厚み感や強度を十分に発現し得るとともに、過度に嵩高とならず、キッチンペーパーロール1における所望の巻径および所望の巻長が確保される。
【0050】
(キッチンペーパーロールの巻密度)
本発明の実施形態において、キッチンペーパーロール1の巻密度は、0.50m/cm2以上1.10m/cm2以下である。
【0051】
本発明の実施形態において、キッチンペーパーロール1の巻密度は、次式(I)によって計算される。
(巻密度)=(巻長×プライ数)÷(キッチンペーパーロールの断面積) (式I)
【0052】
キッチンペーパーロール1の断面積は、図1の(d)に示されるキッチンペーパーロール1の側面において、キッチンペーパー10により構成されている部分の面積に相当する。つまり、キッチンペーパーロール1の断面積は、巻径DRを直径とする円の面積から、紙管5のコア径DCを直径とする円の面積を引いた面積となる。キッチンペーパーロール1の断面積は、次式(II)によって計算される。
(断面積)=(キッチンペーパーロールの巻径DR÷2)2×3.14-(コア径DC÷2)2×3.14 (式II)
【0053】
例えば、キッチンペーパーロール1の巻長が34m、巻径DRが118mmであり、紙管5のコア径DCが40mmである場合、キッチンペーパー10は2プライであるので、巻密度は、(34m×2)÷{(118mm÷2)2×3.14-(40mm÷2)2×3.14}を計算して、0.703m/cm2となる。
【0054】
キッチンペーパーロール1の巻密度が0.50m/cm2より低い場合は、概して、キッチンペーパーロール1の巻径は大きくなりがちであり、キッチンペーパーロール1の巻長が制限され得る。
【0055】
一方、キッチンペーパーロール1の巻密度が1.10m/cm2より高い場合は、ロール状に巻き回されたキッチンペーパー10に掛かるロール内部の圧力が過度に大きくなって、キッチンペーパー10のエンボスが潰れて柔らかい質感が損なわれたり、キッチンペーパー10に巻き癖がついて、キッチンペーパーロール1から巻き出されて切り離されたキッチンペーパー10のカールの度合いが高くなったりしやすい傾向にある。
【0056】
(キッチンペーパーの幾何平均プライ剥離強度)
本発明の実施形態において、キッチンペーパー10のMD方向のプライ剥離強度とCD方向のプライ剥離強度との幾何平均プライ剥離強度は、0.100N以上0.165N以下である。
【0057】
キッチンペーパー10のMD方向のプライ剥離強度をM(単位:N)とし、キッチンペーパー10のCD方向のプライ剥離強度をC(単位:N)としたときに、キッチンペーパー10の幾何平均プライ剥離強度は、式(M×C)1/2によって計算することができる(単位:N)。
【0058】
(キッチンペーパーのプライ剥離強度)
キッチンペーパー10のプライ剥離強度とは、2プライのキッチンペーパー10を構成する2枚のシート11,12を互いから剥離する際に必要とされる強度を指す。キッチンペーパー10のプライ剥離強度は、JIS Z 0237の引き剥がし粘着力の測定に準じて、例えば以下の方法により測定することができる。
【0059】
(プライ剥離強度の測定方法)
JIS Z 0237に規定された標準条件下で、キッチンペーパー10を裁断して、キッチンペーパーのMD方向を長手方向とした長さ300mm、幅24±0.5mmの試料1、およびキッチンペーパーのCD方向を長手方向とした長さ300mm、幅24±0.5mmの試料2を準備する。次いで、試料1を用いてキッチンペーパーのMD方向のプライ剥離強度を測定するとともに、試料2を用いてキッチンペーパーのCD方向のプライ剥離強度を測定する。
【0060】
具体的には、2プライのキッチンペーパーであるところの各試料について、各試料を構成する2枚のシート11,12のうちの一方のシートを両面テープで冶具板に貼着する。次いで、冶具板に貼着していない他方のシートを当該一方のシートから所定長さだけ剥離して180度折り返し、当該他方のシートの端部を、剥離試験用ロードセル(RTC-1250A、株式会社エー・アンド・デイ社製)の上側のチャックに固定する。次いで、一方のシートの端部を冶具板と共に剥離試験用ロードセル下側のチャックに固定する。次いで、上下のチャック間の間隔を8cmとする。
【0061】
次いで、両シート11,12を垂直方向に5±0.2mm/秒の速度で引張り(すなわち、設定引張速度は300mm/分)、両シート11,12の剥離に要した剥離強度を測定する。測定開始後、最初の10mmの長さの測定値をノイズとし、その後、他方のシートが50mm剥離されるまでのプライ剥離力の測定値を平均して、プライ剥離強度として使用する。詳細には、プライ剥離強度は0.001秒ごとに測定し、測定範囲の50mmのプライ剥離時間10秒の(すなわち、合計測定点は10000点)の測定値の平均値をプライ剥離強度とする。
【0062】
上記の試料1のようにプライ剥離強度の測定においてシートを引っ張る垂直方向をキッチンペーパー10のMD方向とする場合のプライ剥離強度を、「キッチンペーパーのMD方向のプライ剥離強度」という。また、上記の試料2のようにプライ剥離強度の測定においてシートを引っ張る垂直方向をキッチンペーパー10のCD方向とする場合のプライ剥離強度を、「キッチンペーパーのCD方向のプライ剥離強度」という。
【0063】
(作用効果)
本発明の第1の実施形態は、それぞれエンボスが付与された2枚のシート11,12が接着糊Gを介して一体化されたエンボス積層構造を有するとともに長手方向(MD方向)に沿って所定間隔毎に破断用ミシン目7が形成されたキッチンペーパー10がロール状に巻き取られたキッチンペーパーロール1であって、キッチンペーパー10の坪量は、32g/m2以上60g/m2以下であり、キッチンペーパーロール1の巻長は、25m以上65m以下であり、キッチンペーパーロール1の巻密度は、0.50m/cm2以上1.10m/cm2以下であり、キッチンペーパー10のMD方向のプライ剥離強度とCD方向のプライ剥離強度との幾何平均プライ剥離強度は、0.100N以上0.165N以下であることを特徴とする。
【0064】
本発明者は、鋭意検討の結果、キッチンペーパー10のプライ剥離強度と、キッチンペーパーロール1から巻き出されて切り離されたキッチンペーパー10のカールの度合いとの間に何らかの相関関係があることを見出した。詳細には、エンボス積層構造を有するとともに破断用ミシン目7が形成されたキッチンペーパーロール1において、キッチンペーパー10の坪量、キッチンペーパーロール1の巻長および巻密度を上記の範囲内とし、且つ、キッチンペーパー10の幾何平均プライ強度を0.100N以上0.165N以下とすることにより、キッチンペーパーロール1から巻き出されて切り離されたキッチンペーパー10のカールの度合いが不都合なく十分に抑制され得ることを見出した。
【0065】
キッチンペーパー10の幾何平均プライ強度が0.165Nより高い場合、キッチンペーパーロール1から巻き出されて切り離されたキッチンペーパー10のカールの度合いが大きくてキッチンペーパー10が使い難い傾向にある。また、キッチンペーパー10の幾何平均プライ強度が0.100N未満である場合、キッチンペーパー10の使用時、例えば水分の拭き取り時等に、キッチンペーパー10を構成する2枚のシート11,12間にプライ剥がれが生じやすく、水分の吸収性能が低下するなどの不都合が生じ得る。
【0066】
キッチンペーパー10の幾何平均プライ剥離強度が0.100N以上0.165N以下であると、キッチンペーパーロール1から巻き出されて切り離されたキッチンペーパー10のカールの度合いが不都合なく十分に抑制されるとともに、使用時にプライ剥がれが生じにくい、使い勝手のよいキッチンペーパーロール1が得られる。
【0067】
(本発明の実施形態に係るキッチンペーパーロールの製造方法の例)
本発明の実施形態に係るキッチンペーパーロール1を製造するための製造方法の例について説明する。図1に例示されるようなキッチンペーパーロール1は、例えば、以下のようにして製造され得る。
【0068】
(原反ロールの製造)
まず、キッチンペーパー10の構成要素であるシート11,12がロール状に巻き取られた原反ロールをそれぞれ製造する。詳細には、不図示の抄紙機を用い、抄紙用スラリー(紙料)から、幅広(キッチンペーパーロール1の幅の数倍から二十数倍程度の幅)で長尺なシート11,12を抄造しつつ巻き取って、シート11,12がそれぞれ巻き取られた単プライの原反ロールを製造する。
【0069】
抄紙機としては、例えば、ツインワイヤフォーマ方式、円網フォーマ方式、サクションプレストフォーマ方式、クレセントフォーマ方式等の知られている抄紙機を用いることができる。
【0070】
抄紙機は、クレープ加工を行うクレーピング部を備えていてもよい。クレーピング部では、原反ロール製造工程において、抄造されるシート(ウェブ)を乾燥させる間に、必要に応じて、シートに対し、クレーピングドクターによってクレープと呼ばれる非常に細かい波状の皺を付与することができる。クレープにより、シートに柔らかさ、嵩高さ(バルク感)、水分吸収性、美観(クレープの形状)、良好な手触り感などを付与することができる。
【0071】
また、抄紙機は、カレンダー部を備えていてもよい。カレンダー部では、乾燥されたシートに対して、必要に応じて、カレンダーロール対により上下からシートを挟み込み押圧する、カレンダー処理を施すことができる。これによって、シート11,12は圧縮されて、紙厚の調整および均一化、ならびに表面の平滑化などがなされる。なお、カレンダー加工部は抄紙機とは別に設けられていてもよく、カレンダー処理は、原反ロール製造工程以降の任意の製造工程において行われてもよい。カレンダー処理は、複数段階に分けて行われてもよい。
【0072】
(キッチンペーパーロールの製造)
図2は、本発明の実施形態に係るキッチンペーパーロール1を製造するために使用可能な製造装置の例を説明する図であり、特には、当該製造装置に適用可能な、エンボス積層構造形成部の例を示す部分的模式図である。
【0073】
図2に示される製造装置において、エンボスロール14,15は、所望のエンボスパターンに対応する凹凸部分を外周面に有するロールである。エンボスロール14,15の外周面には、所望のエンボスパターンに対応した凹凸部が形成されている。エンボスロール14,15の少なくとも凹凸部分は金属にて形成されており、エンボスロール14,15は、雄(凸)のスチールロールであってもよい。エンボスロール14,15は、図示しない駆動手段により回転駆動されるようになっている。
【0074】
ニップロール13,16は、エンボスロール14,15に当接させて用いられる従動ロールであり、円筒状の外形を有する。ニップロール13,16の表面部分は、弾性変形可能な硬質合成ゴムなどの硬質なゴム状弾性体にて形成されている。
【0075】
図2を参照して、シート11の原反ロール(不図示)から繰り出されたシート11は、ニップロール16に巻き掛けられ、ニップロール16とエンボスロール15との間のニップに通紙されて押圧されて、エンボスロール15の外周面の凹凸部分の形状に従うエンボスが付与される。
【0076】
一方、シート12の原反ロール(不図示)から繰り出されたシート12は、ニップロール13に巻き掛けられ、ニップロール13とエンボスロール14との間のニップに通紙されて押圧されて、エンボスロール14の外周面の凹凸部分の形状に従うエンボスが付与される。
【0077】
次いで、グルーパン21、ファウンテンロール18、トランスファーロール19、およびアプリケータロール20を含むアプリケータにより、エンボスが付与されたシート11のエンボス凸部の頂面に、接着糊Gが付与される。詳細には、グルーパン21に収容された液体状の接着糊Gは、回転するファウンテンロール18の表面に付着してピックアップされ、トランスファーロール19およびアプリケータロール20の順に転写され、次いで、アプリケータロール20とエンボスロール15との間に通紙されたシート11の表面のうち、アプリケータロール20と接する領域であるエンボス凸部の頂面に転写される。
【0078】
次いで、エンボスが付与されたシート12と、接着糊Gが付与されたシート11は、エンボスロール14、15間のニップに通紙され、次いで、マリッジロール17に巻き掛けられる。これにより、シート11とシート12は接着糊Gを介して接合されて一体化され、エンボス積層構造を有するキッチンペーパー10が形成される。
【0079】
ここで、エンボスロール15の外周面の凹凸部分の凸部がエンボスロール14の外周面の凹凸部分の凹部に嵌合するようにエンボスロール14,15を構成することで、ネステッドエンボス積層構造を得ることができる。また、エンボスロール15の外周面の凹凸部分の凸部がエンボスロール14の外周面の凹凸部分の凸部と対向するようにエンボスロール14,15を構成することで、Tip To Tipエンボス積層構造を得ることができる。
【0080】
キッチンペーパー10は、ダンサーロール22によって張力が調整されつつ、下流に送られ、ミシン目形成部(不図示)によって破断用ミシン目が形成される。
【0081】
ミシン目形成部は、端的には、送り込まれてきたシートに対してミシン目を形成する、ミシン目形成を施すユニットである。ミシン目形成部は、キッチンペーパー10を幅方向(CD方向)に横切る破断用ミシン目7を、キッチンペーパー10の長手方向(MD方向)に沿って、一定間隔L毎に形成可能に構成されている。破断用ミシン目7の形成には、知られている任意のミシン目形成手段を用いることができる。
【0082】
破断用ミシン目が形成されたキッチンペーパー10は、次いで、巻取部(不図示)に送られて、紙管5の周りにロール状に巻き取られる。ロール状に巻き取られたキッチンペーパー10は、幅寸法が製品サイズとなるように裁断されて、キッチンペーパーロール1が得られる。
【0083】
以上に説明した製造装置および製造方法は、例示目的であり、本発明を制限するものではない。本発明に係るキッチンペーパーロールの製造には、知られている任意の製造装置および製造方法を用いることができる。
【0084】
(発明の達成手段)
原反ロールを製造する抄紙工程は、(1)パルプの配合工程、(2)パルプの叩解工程、(3)薬品の添加工程、(5)脱水工程、(6)乾燥工程を含んでいてもよい。これらの工程における条件(例えば、針葉樹パルプと広葉樹パルプの配合比率、パルプの叩解度、添加薬品の種類や量、抄紙速度、クレープ処理条件、等)の変更により、シート11,12の紙質、例えば、シートのMD方向およびCD方向の強度を調整することができる。
【0085】
また、シート11,12に対するカレンダー処理の有無や処理条件(圧力、温度等)、エンボス加工条件(エンボス部の形状、個数、配置、エンボス高さ、密度、エンボスロールの硬度、圧力、エンボスロールの外周面の凹凸形状の組み合わせ等)や、キッチンペーパーロールへの巻取工程においてキッチンペーパーに掛ける張力の変更によって、シート11,12およびキッチンペーパー10の紙質、例えば、紙厚および密度やキッチンペーパーロールの巻密度を調整することができる。
【0086】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。特段の記載のない限り、第1の実施形態に適用可能な構成は、本態様に適用可能である。
【0087】
本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態の好ましい態様であり、隣接する2本の破断用ミシン目7の長手方向(MD方向)における所定間隔L、すなわち1カット寸法が、180mm以上250mm以下であることを特徴とする。
【0088】
(作用効果)
キッチンペーパー10の破断用ミシン目7の所定間隔(1カット寸法)Lが180mm未満である場合、および250mmを超える場合は、キッチンペーパー10の1カット寸法が小さすぎたり、大きすぎたりして、いずれの場合においても、カットされたキッチンペーパー10に発現するカールの影響が大きく、キッチンペーパー10丸まってしまい、キッチンペーパーの使い勝手が悪い。
【0089】
キッチンペーパー10の破断用ミシン目7の所定間隔(1カット寸法)Lが180mm以上250mm以下である場合は、1カット寸法にカットされたキッチンペーパー10は、カールの影響が小さく、カールの度合いが不都合なく十分に抑制された、使い勝手が良好なキッチンペーパーが得られる。
【0090】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。特段の記載のない限り、第1の実施形態に適用可能な構成は、本態様に適用可能である。
【0091】
本発明の第3の実施形態は、キッチンペーパー10の密度が、0.080g/cm3以上0.0130g/cm3以下であることを特徴とする。
【0092】
(キッチンペーパーの密度)
本明細書において、キッチンペーパー10の密度とは、キッチンペーパー1組あたりの密度であり、介在する接着糊Gによって接合された、エンボスが付された2枚のシート11,12全体としての密度をいう。キッチンペーパー10の密度は、例えば、ISO 12625-3に準じて、2つの平行な円形の加圧面を持つマイクロメータで加圧面間にキッチンペーパー10を挟んで測定した厚さ(すなわち、キッチンペーパーの紙厚)で、キッチンペーパーの坪量を割って、単位容積あたりの質量(単位:g/cm3)を計算することによって求めることができる。ただし、厚さの測定中、加圧面間に加える圧力は2kPa±0.2kPaとする。
【0093】
(作用効果)
キッチンペーパー10の密度が0.080g/cm3よりも低いと、単位容積あたりに含まれるパルプ繊維の量が少なくなり、水分の拭き取り時のようなキッチンペーパーの使用時に、キッチンペーパー10が破れやすくなる。一方、キッチンペーパー10の密度が0.130g/cm3よりも高いと、巻き癖がつきやすく、キッチンペーパーロール1から巻き出されて切り離されたキッチンペーパー10のカールの度合いが大きくなる傾向にある。
【0094】
キッチンペーパー10の密度が0.080g/cm3以上0.0130g/cm3以下であると、単位容積あたりに含まれるパルプ繊維の量は適切な範囲であり、キッチンペーパーロール1から巻き出されて切り離されたキッチンペーパー10のカールの度合いが不都合なく十分に抑制されるとともに、キッチンペーパー10を使用する際の破れにくさ(強度)が得られる。また、この密度範囲において、キッチンペーパー10は、水分などに対する吸水性を発現し得るとともに、拭き取り操作の際の柔らかさ、拭き取り面に対する追従性を示し得る。
【0095】
<第4の実施形態>
次に、本発明の実施形態の第4の実施形態について説明する。特段の記載のない限り、第1から第3の実施形態に適用可能な構成は、本態様に適用可能である。
【0096】
本発明の第4の実施形態は、キッチンペーパーロール1の接着糊Gによる糊付け面積率が5%以上15%以下であることを特徴とする。
【0097】
(糊付け面積率)
本明細書において、糊付け面積率とは、キッチンペーパー10の所定面積内に含まれる、接着糊Gによって接合された領域の合計面積の割合を百分率で表したものをいう(単位:%)。
【0098】
本発明の実施形態に係るキッチンペーパーロールの製造方法の例を第1の実施形態において上述したが、本発明の実施形態において、接着糊Gは、キッチンペーパー10を構成する2枚のシート11,12のうちの一方のシートのエンボス部の凸部の頂面にアプリケータにより転写によって付与することで、当該接着糊Gを介した両シート11,12の接合を可能にしている。そのため、例えば、接着糊Gが付与された領域の合計面積は、接着糊Gが付与されるべき(付与された)エンボス部の凸部の頂面の合計面積に相当するとみなして、計算により求めることができる。
【0099】
例えば、接着糊Gが付与されるべき(付与された)エンボス部の凸部について、頂面の単位面積(凸部1個あたりの頂面の面積、単位:mm2/個)、および密度(キッチンペーパーの単位面積当たりの凸部の個数、単位:個/mm2)を求め、これらの値から、糊付け面積率を計算してもよい。
【0100】
あるいはまた、糊付け面積率は、画像解析などによる実測値に基づいて求めてもよい。
【0101】
図1の(a)において符号Ibで示される領域は、反復形成されるエンボスパターンの最小単位の領域である。このような、反復形成されるエンボスパターンの最小単位の領域において、糊付け面積率を求めてもよい。これによると、キッチンペーパー10における複数のエンボス部の分布(配置のばらつき)が考慮され、測定領域によって得られる糊付け面積が異なるということが防止できる。
【0102】
エンボスパターンに性状の異なるエンボス部が含まれる場合(例えば、凸部の頂部の形状が、三角形、四角形、円形などと異なっていたり、サイズ違いにより頂面の単位面積が異なっていたりする場合)は、グループ分けしてそれぞれについて計算して足し合わせることによって糊付け面積率を求めてもよい。
【0103】
(作用効果)
接着糊による糊付け面積率が15%よりも大きいと、キッチンペーパーロール1から巻き出されて切り離されたキッチンペーパー10のカールの度合いが大きくなる傾向にある。また、接着糊による糊付け面積率が5%よりも小さいと、水分の拭き取り時等の使用時にキッチンペーパー10が破れ易くなったり、プライ剥がれが生じやすくなったりする。
【0104】
接着糊による糊付け面積率が5%以上15%以下の範囲であると、キッチンペーパーロール1から巻き出されて切り離されたキッチンペーパー10のカールの度合いが不都合なく十分に抑制されるとともに、使用時に破れたり剥がれたりし難い、使い勝手のよいキッチンペーパー10が得られる。
【0105】
<第5の実施形態>
次に、本発明の実施形態の第5の実施形態について説明する。特段の記載のない限り、第1から第4の実施形態に適用可能な構成は、本態様に適用可能である。
【0106】
本発明の第5の実施形態は、キッチンペーパー10のエンボス積層構造がネステッドエンボス積層構造であることを特徴とする。
【0107】
図1の(c)の(i)を参照して、キッチンペーパー10のエンボス積層構造がネステッドエンボス積層構造である場合は、エンボス部11eのエンボス凸部においてエンボス高さ方向(厚さ方向)に延びる柱状部分およびエンボス部12eのエンボス凸部においてエンボス高さ方向(厚さ方向)に延びる柱状部分は、互いに補強し合う位置関係で、シート11とシート12との積層構造を支えている。
【0108】
一方、図1の(c)の(ii)を参照して、キッチンペーパー10のエンボス積層構造がTip to Tipエンボス積層構造である場合には、当該柱状部分は、高さ方向において直列状の位置関係にあり、シート11とシート12とを離間させるが、積層構造を互いに補強し合う位置関係にはない。
【0109】
そのため、キッチンペーパー10のエンボス積層構造がネステッドエンボス積層構造である場合は、Tip to Tipエンボス積層構造である場合と比べて、構造がしっかりとしており、吸収性が高く、水分の拭き取り時等の使用時に、水分の裏抜けが生じ難いという効果が奏され得る。
【実施例0110】
(実施例1~7)
上述した(本発明の実施形態に係るキッチンペーパーロールの製造方法の例)に従って、第1表から第2表に示される本発明の実施形態に係る2プライのキッチンペーパーロールを製造した。エンボス積層構造は、ネステッドエンボス積層構造とした。
【0111】
なお、表中、「カット数」とは、1巻きのキッチンペーパーロールに含まれる1カット寸法のキッチンペーパーの領域の数であり、以下の関係式が成り立つ。
(巻長)=(1カット寸法)×(カット数)
【0112】
1カット寸法およびカット数は、破断用ミシン目形成手段により設定することができる。
【0113】
(比較例1~3)
実施例と同様のキッチンペーパーロールの製造方法に従って、第3表に示される比較例1~3のキッチンペーパーロールを製造した。
【0114】
製造された実施例および比較例のキッチンペーパーロールについて、以下の測定および評価を行った。なお、測定は、日本工業規格JIS P8111に準じた環境下(温度23±1°、湿度50±2%RH)で試料を調湿して行った。
【0115】
<測定>
〔キッチンペーパーロールの巻長[m]〕
破断用ミシン目形成手段において、1カット寸法およびカット数を設定し、これらの積を求めて、キッチンペーパーロールの巻長とした。
【0116】
〔キッチンペーパーロールの巻径[mm]〕
キッチンペーパーロールの外径をノギスにより測定し、小数点以下を四捨五入した。
【0117】
〔紙管のコア径[mm]〕
製造されたキッチンペーパーロールの紙管の外径をノギスにより測定し、小数点以下を四捨五入した。
【0118】
〔キッチンペーパーロールの巻密度〕
次式(I)に従って、キッチンペーパーロールの巻密度を計算した。
(巻密度)=(巻長×プライ数)÷(キッチンペーパーロールの断面積) (式I)
【0119】
なお、キッチンペーパーロールの断面積は、次式(II)によって計算される。
(断面積)=(キッチンペーパーロールの巻径DR÷2)2×3.14-(コア径DC÷2)2×3.14 (式II)
【0120】
〔キッチンペーパーの坪量[g/m2]〕
キッチンペーパーロールからキッチンペーパーを巻き解き、キッチンペーパーを構成する2枚のシートとそれらの間に介在する接着糊とを合わせた1組のキッチンペーパーの坪量を、日本工業規格JIS P8124の規定に準じて測定した。
【0121】
〔キッチンペーパーの紙厚[μm]〕
キッチンペーパーロールからキッチンペーパーを巻き解き、キッチンペーパーを構成する2枚のシートとそれらの間に介在する接着糊とを合わせた1組のキッチンペーパーの紙厚を、ISO 12625-3に準じて測定した。ただし、測定中、加圧面間に加える圧力は2kPa±0.2kPaとした。
【0122】
〔キッチンペーパーの密度[g/cm3]〕
キッチンペーパーロールからキッチンペーパーを巻き解き、キッチンペーパーを構成する2枚のシートとそれらの間に介在する接着糊とを合わせた1組のキッチンペーパーの坪量を、ISO 12625-3に準じて測定した1組のキッチンペーパーの紙厚で割って、単位容積あたりの質量(単位:g/cm3)を計算することによって求めた。ただし、厚さの測定中、加圧面間に加える圧力は2kPa±0.2kPaとした。
【0123】
〔糊付け面積率[%]〕
糊付け面積率は、画像解析による実測値に基づいて求めた。
【0124】
〔プライ剥離強度[N]〕
第1の実施形態の説明において上述した、JIS Z 0237の引き剥がし粘着力の測定に準じる(プライ剥離強度の測定方法)により、各試料について、キッチンペーパーのMD方向のプライ剥離強度M、およびキッチンペーパーのCD方向のプライ剥離強度Cを測定した。また、これらの測定値から、式(M×C)1/2によって、キッチンペーパーの幾何平均プライ剥離強度を計算した。
【0125】
<評価>
以下の項目について官能評価を行い、結果を記号で示した。
【0126】
〔カールの度合い〕
キッチンペーパーロールをJIS P8111に準じて調湿後、当該キッチンペーパーロールからキッチンペーパーを巻き解いて、最も内側から50カット目のキッチンペーパーをキッチンペーパーロールから切り離して、1カット寸法でのカールの度合いを測定した。カールの度合いは、巻き解いて30秒以内にキッチンペーパーの四隅が立ち上がるような表裏面の向きでキッチンペーパーを測定台に載置して、5分後のキッチンペーパーの四隅の測定台からの高さ寸法を測定し、キッチンペーパーの四隅の高さ寸法の平均値およびカールの状態に基づいて評価した。
◎:四隅の高さ寸法の平均値が45mm未満
〇:四隅の高さ寸法の平均値が45mm以上55mm未満
△:四隅の高さ寸法の平均値が55mm以上、あるいは内巻きにカールして測定不能
×:筒状
【0127】
〔プライ剥がれ〕
キッチンペーパーロールから巻き解いたキッチンペーパーを1カット寸法に切断し、当該1カット寸法のキッチンペーパーを、2プライを構成する2枚のシートを剥がすようにして手作業で剥離し、その剥離性に基づいて評価した。
〇:剥離時の抵抗が大きく、剥離しにくかった
△:剥離時の抵抗がそれほど大きくなく、適度な抵抗をもって剥がれた
×:剥離時の抵抗が小さく、簡単に剥れた
【0128】
<試験結果>
第1表から第3表に、試験結果を示した。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
【表3】
【0132】
第1表から第3表に示されるように、実施例1から比較例3(全試料)はいずれも、それぞれエンボスが付与された2枚のシートが接着糊を介して一体化されたネステッドエンボス構造を有するキッチンペーパーがロール状に巻き取られたキッチンペーパーロールであった。
【0133】
実施例1から実施例7のキッチンペーパーロールは、いずれも、キッチンペーパーの坪量が32g/m2以上60g/m2以下であり、キッチンペーパーロールの巻長が25m以上65m以下であり、キッチンペーパーロールの巻密度が0.50m/cm2以上1.10m/cm2以下であり、キッチンペーパーのMD方向のプライ剥離強度とCD方向のプライ剥離強度との幾何平均プライ剥離強度が0.100N以上0.165N以下であり、カールの度合いは◎、〇、△のいずれかであって不都合なく十分に抑制されていた。また、プライ剥がれは、〇または△であり、簡単に剥がれることがなく良好であった。
【0134】
比較例1,2は、実施例1から実施例5と、キッチンペーパーの坪量、巻長、巻密度、が同一であり、1カット寸法、カット数、巻径、コア外径も同一であった。
しかしながら、比較例1は、幾何平均プライ剥離強度が本発明の範囲外(下限未満)であり、カールの度合いは不都合なく十分に抑制されていたが、プライ剥がれは、剥離時の抵抗が小さく簡単に剥がれてしまい、劣っていた。
また、比較例2は、幾何平均プライ剥離強度が本発明の範囲外(上限超)であり、プライ剥がれについては、簡単に剥がれることがなく良好であったが、カールの度合いは、筒状に丸まるほど強く、劣っていた。
【0135】
比較例3は、実施例1から実施例5と、キッチンペーパーロールの巻密度が異なっていて本発明の範囲外(上限超)であるとともに、キッチンペーパーの密度が実施例よりも低めであった。比較例3は、プライ剥がれについては、簡単に剥がれることがなく良好であったが、カールの度合いは、筒状に丸まるほど強く、劣っていた。
【符号の説明】
【0136】
1 キッチンペーパーロール
5 紙管
7 ミシン目
10 キッチンペーパー
11、12 シート
11e、12e エンボス部
11ne、12ne 非エンボス部
図1
図2