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特開2023-137532管状シャフトの製造方法およびカテーテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137532
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】管状シャフトの製造方法およびカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
A61M25/00 504
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043781
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】大嶽 祐八
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267BB03
4C267BB12
4C267BB13
4C267BB15
4C267BB40
4C267BB43
4C267BB63
4C267CC08
4C267FF01
4C267GG34
(57)【要約】
【課題】製造時間を短縮できるとともに、コストを低減できる管状シャフトの製造方法およびカテーテルを提供する。
【解決手段】先端から基端まで貫通するルーメン5を有する管状シャフト2の製造方法であって、ルーメン5を形成する内層10を有する複数の管体100を並べて配置するステップと、流動性を有するX線不透過性材料および樹脂材料を含む造影性流動体120を、並べた複数の管体100の外周面にまとめて塗布するステップと、造影性流動体120を硬化させるステップと、複数の管体100を分離して、各々の管体100に、当該管体100の軸心を中心として円弧を備えた円弧部31と、円弧と異なる形状を備えた非円弧部32と、を有するX線不透過性の造影部30を形成するステップと、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端から基端まで貫通するルーメンを有する管状シャフトの製造方法であって、
前記ルーメンを形成する内層を有する複数の管体を並べて配置するステップと、
流動性を有するX線不透過性材料および樹脂材料を含む造影性流動体を、並べた前記複数の管体の外周面にまとめて塗布するステップと、
前記造影性流動体を硬化させるステップと、
前記複数の管体を分離して、各々の前記管体に、当該管体の軸心を中心として円弧を備えた円弧部と、円弧と異なる形状を備えた非円弧部と、を有するX線不透過性の造影部を形成するステップと、を有することを特徴とする管状シャフトの製造方法。
【請求項2】
前記複数の管体を並べて配置するステップにおいて、当該管体の軸心を略平行に同一平面上に配置し、かつ隣接する前記管体同士の外周面を離間させることを特徴とする請求項1に記載の管状シャフトの製造方法。
【請求項3】
先端から基端まで貫通するルーメンを有する管状シャフトを備えたカテーテルであって、
前記管状シャフトは、X線不透過性材料および樹脂材料を含む、360度に渡って全周的に形成される造影部を有し、
前記造影部は、前記管状シャフトの軸心を中心として、円弧を備えた円弧部と、円弧と異なる形状を備えた非円弧部と、を有することを特徴とするカテーテル。
【請求項4】
前記管状シャフトは、
前記ルーメンを形成する内層と、
前記内層を囲むように配置されて管状に編組された複数の線材を備える補強体と、
前記内層および前記補強体を囲む外層と、を有し、
前記造影部は、前記内層の外周面に接する第1接触部と、前記補強体の外周面に接する第2接触部と、を有する、ことを特徴とする請求項3に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記管状シャフトは、前記造影部の外周の少なくとも一部を囲むように曲げられた金属シートを有することを特徴とする請求項3または4に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管等の管腔内で使用されるカテーテルに使用される管状シャフトの製造方法およびカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外科的侵襲が非常に低いという理由から、カテーテルを用いた血管等の管腔内の治療が盛んに行われている。例えば、体内の複雑に分岐した血管へ選択的に導入して使用されるカテーテルは、一般的に、血管へあらかじめ導入されるガイドワイヤーに沿って選択的に押し込まれて、治療用の薬剤や診断用の造影剤等を基端側から先端側へ流通させる。
【0003】
造影カテーテルやサポートカテーテル等の製造には、押出被覆成形により長尺な管体を連続的に形成して加工を施す製造方法が使用される場合がある。この製造方法では、X線透視下での造影性を付与するためのX線造影マーカーをカテーテルの先端部に配置するために、主に金属製の造影マーカーをスウェージ加工によって管体にかしめる方法や、造影マーカーとなるものを再度管体に被覆してその外側を熱収縮させた熱収縮チューブにより覆う方法などが行われる(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-29910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば押出被覆成形等により連続的に成形した管体に造影マーカーを配置する場合には、管体の成形工程に組み込まれないオフラインでの加工が必要となる。このため、造影マーカー(造影部)を配置された管状シャフトの製造時間が増加し、コストが上昇する。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、製造時間を短縮できるとともに、コストを低減できる管状シャフトの製造方法およびカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する管状シャフトの製造方法は、先端から基端まで貫通するルーメンを有する管状シャフトの製造方法であって、前記ルーメンを形成する内層を有する複数の管体を並べて配置するステップと、流動性を有するX線不透過性材料および樹脂材料を含む造影性流動体を、並べた前記複数の管体の外周面にまとめて塗布するステップと、前記造影性流動体を硬化させるステップと、前記複数の管体を分離して、各々の前記管体に、当該管体の軸心を中心とする円弧を備えた円弧部と、前記円弧と異なる形状を備えた非円弧部と、を有するX線不透過性の造影部を形成するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した管状シャフトの製造方法は、複数の管状シャフトの造影部をまとめて形成できるため、製造時間を短縮できるとともに、コストを低減できる。
【0009】
前記製造方法は、前記複数の管体を並べて配置するステップにおいて、当該管体の軸心を略平行に同一平面上に配置し、かつ隣接する前記管体同士の外周面を離間させてもよい。これにより、本製造方法は、円弧部および非円弧部を有しつつ360度に渡って形成される造影部を、管状シャフトに容易に形成できる。
【0010】
カテーテルは、先端から基端まで貫通するルーメンを有する管状シャフトを備えたカテーテルであって、前記管状シャフトは、X線不透過性材料および樹脂材料を含む、360度に渡って全周的に形成される造影部を有し、前記造影部は、前記管状シャフトの軸心を中心とする円弧を備えた円弧部と、前記円弧と異なる形状を備えた非円弧部と、を有することを特徴とする。
【0011】
上記のように構成したカテーテルは、造影部が円弧部および非円弧部を有するため、術者がX線造影画像の濃淡により非円弧部と円弧部とを区別して把握しやすく、カテーテルの向きを容易に把握できる。
【0012】
前記管状シャフトは、前記ルーメンを形成する内層と、前記内層を囲むように配置されて管状に編組された複数の線材を備える補強体と、前記内層および前記補強体を囲む外層と、を有し、前記造影部は、前記内層の外周面に接する第1接触部と、前記補強体の外周面に接する第2接触部と、を有してもよい。これにより、造影部が内層および補強体の両方に密着して、造影部を管状シャフトに安定的に配置できる。
【0013】
前記管状シャフトは、前記造影部の外周の少なくとも一部を囲むように曲げられた金属シートを有してもよい。これにより、管状シャフトは、金属シートによって造影部のX線造影性を高めることができる。また、金属シートは、非円弧部を覆うように管体に巻かれることで、非円弧部の形状を望ましい形状に矯正することができる。また、カテーテルは、金属シートが設けられることで、金属シートが設けられる位置と設けられない位置を、X線造影画像により術者が識別しやすい。このため、術者が、X線造影画像により、カテーテルの向きを容易に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係るカテーテルを示す平面図である。
図2】実施形態に係るカテーテルの先端部を示す断面図である。
図3図2のA-A’線に沿う断面図である。
図4】実施形態に係るカテーテルの外層を透過して示す平面図である。
図5】管状シャフトの製造装置を示す斜視図である。
図6】複数の管体に造影性流動体がまとめて塗布された状態を示す断面図である。
図7】複数の管体から1つの管体を切り出した状態を示す断面図である。
図8】カテーテルの変形例を示す断面図であり、(A)は第1変形例、(B)は第2変形例を示す。
図9】カテーテルの第3変形例を示す断面図であり、(A)は製造している途中の状態、(B)は完成した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法は、説明の都合上、誇張されて実際の寸法とは異なる場合がある。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。本明細書において、カテーテルの生体管腔に挿入する側を「先端側」、操作する側を「基端側」と称することとする。
【0016】
本実施形態に係るカテーテル11は、経皮的に腕や下肢等の血管に挿入されて、治療や診断等を行うために用いられる。カテーテル1は、図1に示すように、長尺な管状シャフト2と、管状シャフト2の基端に連結されるハブ3と、管状シャフト2およびハブ3の連結部位に設けられる耐キンクプロテクタ4とを有している。
【0017】
管状シャフト2は、図1~4に示すように、当該管状シャフト2の軸心方向Xに沿って長尺な、可撓性を有する管状の部材であり、基端から先端にかけて内部にルーメン5が形成されている。ルーメン5は、カテーテル1の血管への挿入時に、ガイドワイヤーが挿通される。また、ルーメン5は、薬液や塞栓物質、造影剤、医療器具等の通路として用いることもできる。
【0018】
管状シャフト2の有効長は、特に限定されない。なお、管状シャフト2の有効長は、血管やシース等内へ挿入可能な部位の長さである。本実施形態において、有効長は、耐キンクプロテクタ4の最先端から管状シャフト2の最先端までの長さである。
【0019】
管状シャフト2は、複数の層で構成されており、ルーメン5の内表面11を形成する内層10と、内層10の外側に形成される補強体20と、内層10および補強体20の外側に配置される造影部30と、内層10、補強体20および造影部30の外側に形成される外層40とを備えている。
【0020】
内層10は、内部にルーメン5が形成されている。内層10の内径は、特に限定されないが、例えば0.3mm~2.8mmである。内層10の構成材料は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等を適用でき、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)等の低摩擦材料等が好ましい。
【0021】
補強体20は、内層10の外周囲に、複数の線材21を、隙間を有するように管状に編組して形成される。補強体20は、同一方向の横巻きや、右巻き・左巻き等、巻き方向を変えながら線材21を巻きつけてもよく、また、巻きピッチ、格子間距離、周方向に対する傾斜角度等を位置によって変更してもよく、構成は特に限定されない。
【0022】
補強体20の線材21の線径(直径)は、特に限定されないが、例えば0.03mm~0.08mmである。
【0023】
補強体20に用いられる線材21は、ステンレス鋼、白金(Pt)・タングステン(W)等の金属線、樹脂繊維、炭素繊維、ガラス繊維等を適用でき、または、これらの線材21を複数併用してもよい。
【0024】
造影部30は、X線不透過性材料および樹脂材料を含み、管状シャフト2の周方向へ360度に渡って全周的に形成される。造影部30は、円弧部31と、非円弧部32とを有している。
【0025】
円弧部31は、管状シャフト2の軸心と直交する断面において、管状シャフト2の軸心を中心とする円弧で形成される外周面を有する。非円弧部32は、管状シャフト2の軸心と直交する断面において、管状シャフト2の軸心を中心とする円弧とは異なる形状で形成される外周面を有する。本実施形態における非円弧部32は、平面部35と、円弧部31の外周面よりも径方向外側へ突出する凸部36とを有している。なお、非円弧部32の形状は、特に限定されない。
【0026】
造影部30は、内層10の外周面に接する第1接触部33と、補強体20の外周面に接する第2接触部34とを有する。なお、補強体20の外周面とは、補強体20の、管状シャフト2の軸心から離れる方向である径方向外側の面である。内層10の外周面と接する第1接触部33における造影部30の厚みT1は、好ましくは0.01mm~0.1mmである。補強体20の外周面と接する第2接触部34における造影部30の厚みT2は、厚みT1より小さく、好ましくは0.005mm~0.09mmである。
【0027】
X線不透過性材料は、白金、金、銀、タングステン、イリジウムまたはこれらの合金による金属粉末、硫酸バリウム、酸化ビスマス、またはそれらのカップリング化合物のようなX線造影剤である。造影部30は、後述するが、X線不透過性材料を樹脂材料に混練したペースト状の造影性流動体120(図5を参照)として内層10および補強体20の外周面に塗布された後に硬化されている。造影部30を形成する樹脂材料は、熱可塑性樹脂であってもよい。
【0028】
外層40は、内層10、補強体20および造影部30の外周囲を覆う管状の部材である。外層40は、管状シャフト2の径方向外側の面である外表面41を形成する。外層40の外径は、特に限定されないが、例えば0.4mm~3.0mmである。
【0029】
外層40の構成材料は、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、或いはこれら二種以上の混合物等)、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリイミド、フッ素樹脂等の高分子材料或いはこれらの混合物等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を適用できる。
【0030】
ハブ3は、管状シャフト2の基端部が接着剤、熱融着または止具(図示せず)等により液密に固着されている。ハブ3は、ルーメン5内へのガイドワイヤーや医療器具の挿入口、ルーメン5内への薬液や塞栓物質、造影剤等の注入口等として機能し、また、カテーテル1を操作する際の把持部としても機能する。ハブ3の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート-ブチレン-スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂が好適に使用できる。
【0031】
耐キンクプロテクタ4は、管状シャフト2の周囲を囲むように設けられる弾性材料からなり、管状シャフト2とハブ3の連結部位における管状シャフト2のキンクを抑制する。耐キンクプロテクタ4の構成材料は、例えば、天然ゴム、シリコーン樹脂等が好適に使用できる。
【0032】
次に、管状シャフト2の製造方法について説明する。
【0033】
まず、製造者は、内層10の内径と等しい外径の長尺な芯線を準備する。次に、芯線上に内層10を形成する。内層10は、押出成形により形成されてもよく、またはディップ成形によって形成されてもよい。
【0034】
この後、内層10上の少なくとも一部を覆うように補強体20を形成する。補強体20は、編組機(ブレーダー)を用いて、内層10上に、複数の線材21を連続的に巻きつけて形成される。次に、内層10および補強体20を有する管状部品を、軸心方向Xにおいて所定の長さで切断し、複数の管体100を形成する。
【0035】
次に、図5に示すように、複数の管体100の軸心が略平行となって同一平面上に位置するように、設置台110の上に複数の管体100を設置する。隣接する管体100同士の外周面は、離間させる。並べる管体100の数は、2つ以上であれば特に限定されない。なお、複数の管体100は、近接すれば接触しなくてもよい。また、複数の管体100のうちの、造影性流動体120が塗布される部位(造影部30が配置される部位)を含む一部のみが、軸心が略平行となって同一平面上に位置するように配置されてもよい。
【0036】
次に、図5~6に示すように、X線不透過性材料および樹脂材料を含む、ある程度の粘度を有するペースト状の造影性流動体120を、並べた複数の管体100の造影部30が形成される予定の位置に、管体100の軸心と垂直な方向へ線状にまとめて塗布する。造影性流動体120の塗布は、刷毛、スポンジ、スポイト、シリンジ、ローラ、ヘラまたはノズル等の塗布部111により行われる。なお、塗布部111の構成は、造影性流動体120を塗布できるのであれば、特に限定されない。造影性流動体120の塗布は、並べた複数の管体100の一方面ずつ行われても、または両方面を同時に行われてもよい。造影性流動体120は、例えば、一部が管体100に付着し、残りが管体100から垂れ流されるように供給されてもよい。造影性流動体120は、管体100の外周面に厚めに塗布されて、不要な部分を、センタレス加工等で除去されてもよい。造影性流動体120は、例えば加熱溶融された熱可塑性樹脂にX線不透過性材料を混ぜたものであれば、複数の管体100の外周面に塗布されることで、補強体20の複数の線材21の隙間に入り込みつつ、内層10および補強体20に密着する。この後に、造影性流動体120は冷却されて硬化する。造影性流動体120は、ある程度の粘度を有することで、管体100の外周面に塗布された状態を維持できる。また、造影性流動体120がある程度の流動性を有することで、隣接する管体100同士の最も近接する位置まで流動して到達できる。したがって、造影性流動体120は、各々の管体100の外周面を周方向へ360度に渡って覆うことができる。ある程度の流動性を有する造影性流動体120は、並べた複数の管体100の一方面側から供給されることで、管体100の反対面側まで到達することも可能である。造影性流動体120は金粉末を含む導電性インク、あるいは導電性はんだなどでもよい。
【0037】
次に、複数の管体100に渡って配置されて硬化した造影性流動体120を切断し、図7に示すように、内層10、補強体20および造影部30を有する管状部材を形成する。この後に、必要に応じて造影部30の形状を加熱や切除等で調整し、内層10、補強体20および造影部30の外側に、図2および3に示すように、外層40を形成する。造影部30の形状の調整では、例えばバリの除去が行われてもよい。これにより、管状シャフト2が完成する。外層40の形成方法は、特に限定されない。例えば、外層40は、押出成形により形成されてもよく、ディップ成形により形成されてもよい。または、外層40は、内層10、補強体20および造影部30の外側に外層40の素材となる管状部材を配置した後に、管状部材に熱収縮チューブを被せて加熱することで形成されてもよい。管状部材は、加熱により軟化または溶融しつつ、熱収縮チューブの収縮力によって内層10、補強体20および造影部30の外側に密着して接合される。この後、熱収縮した熱収縮チューブは取り除かれる。
【0038】
外層40を形成した後、芯線を内層10のルーメン5から引き抜く。この後、管状シャフト2にハブ3、耐キンクプロテクタ4を取り付け、必要に応じて他の部材(例えば、先端チップ)を取り付けて、カテーテル1が完成する。
【0039】
以上のように、本実施形態に係るカテーテル1は、先端から基端まで貫通するルーメン5を有する管状シャフト2を備えたカテーテル1であって、管状シャフト2は、X線不透過性材料および樹脂材料を含む、360度に渡って全周的に形成される造影部30を有し、造影部30は、管状シャフト2の軸心を中心として、円弧を備えた円弧部31と、円弧と異なる形状を備えた非円弧部32と、を有する。
【0040】
上記のように構成したカテーテル1は、造影部30が円弧部31および非円弧部32を有するため、X線造影画像に円弧部31および非円弧部32による濃淡が生じやすい。このため、カテーテル1は、X線造影画像により非円弧部と円弧部とを区別して把握しやすく、術者がX線造影画像の濃淡により造影部30の向きを特定でき、カテーテル1の向きを容易に把握できる。また、造影部30は、360度に渡って形成されるため、円弧部31および非円弧部32を有しても、術者は、X線造影画像によりカテーテル1の造影部30の位置を問題なく特定できる。
【0041】
管状シャフト2は、ルーメン5を形成する内層10と、内層10を囲むように配置されて管状に編組された複数の線材21を備える補強体20と、内層10および補強体20を囲む外層40と、を有し、造影部30は、内層10の外周面に接する第1接触部33と、補強体20の外周面に接する第2接触部34と、を有してもよい。これにより、造影部30が内層10および補強体20の両方に密着して、造影部30を管状シャフト2に安定的に配置できる。
【0042】
本実施形態に係るカテーテル1の管状シャフト2の製造方法は、先端から基端まで貫通するルーメン5を有する管状シャフト2の製造方法であって、ルーメン5を形成する内層10を有する複数の管体100を並べて配置するステップと、流動性を有するX線不透過性材料および樹脂材料を含む造影性流動体120を、並べた複数の管体100の外周面にまとめて塗布するステップと、造影性流動体120を硬化させるステップと、複数の管体100を分離して、各々の管体100に、当該管体100の軸心を中心として円弧を備えた円弧部31と、円弧と異なる形状を備えた非円弧部32と、を有するX線不透過性の造影部30を形成するステップと、を有する。これにより、管状シャフト2の製造方法は、複数の管状シャフト2の造影部30をまとめて形成できるため、製造時間を短縮できるとともに、コストを低減できる。造影部30は、360度に渡って形成されるため、X線造影画像によりカテーテル1の造影部30の位置を問題なく特定できる。
【0043】
管状シャフト2の製造方法は、複数の管体100を並べて配置するステップにおいて、当該管体100の軸心を略平行に同一平面上に配置し、かつ隣接する管体100同士の外周面を離間させる。これにより、本製造方法は、円弧部31および非円弧部32を有しつつ360度に渡って形成される造影部30を管状シャフト2に形成することが容易である。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、図8(A)に示す第1変形例のように、造影部30の非円弧部32は、径方向外側の面に凹部37を有してもよい。
【0045】
また、図8(B)に示す第2変形例のように、造影部30の非円弧部32は、複数の平面部35を有してもよい。そして、平面部35と円弧部31との間に、凸部36が形成されても、形成されなくてもよい。
【0046】
また、図9(B)に示す第3変形例のように、管状シャフト2は、造影部30の外周の少なくとも一部を囲むように曲げられた金属シート37を有してもよい。金属シート37は、X線造影性を備え、柔軟に湾曲可能な金属製の薄い板材である。金属シート37の構成材料は、例えば、白金、金、銀、タングステン、イリジウムまたはこれらの合金による金属粉末、硫酸バリウム、酸化ビスマス、またはそれらのカップリング化合物のようなX線造影剤等である等である。金属シート37の板厚は、好ましくは0.02mm~0.1mm、より好ましくは0.005mm~0.09mm、さらに好ましくは0.01mm~0.03mmである。これにより、管状シャフト2は、金属シート37によって造影部30のX線造影性を高めることができる。また、金属シート37は、図9(A)に示すように、非円弧部32を覆うように管体100に巻かれることで、非円弧部32の形状を望ましい形状(例えば、円弧形状)に矯正することができる。また、カテーテル1は、金属シート37が設けられることで、金属シート37が設けられる位置と設けられない位置を、X線造影画像により術者が識別しやすい。このため、術者が、X線造影画像により、カテーテル1の向きを容易に把握できる。造影部30が、熱可塑性樹脂を含んでいれば、加熱した金属シート37を造影部30に巻き付けることで、造影部30の非円弧部32の形状を矯正することが容易である。
【0047】
また、管状シャフト2に配置される造影部30は、軸心方向Xに1か所に配置されるが、軸心方向Xに2か所以上に配置されてもよい。
【0048】
また、造影部30は、補強体20に接触しなくてもよい。また、造影部30は、外層40の内側ではなく、外層40の外周面を覆うように形成されてもよい。また、管状シャフト2は、内層10、補強体20および外層40を有する構造に限定されない。
【0049】
また、カテーテル1は、胆管、気管、食道、尿道、またはその他の生体管腔内や体腔内に挿入されて、治療や診断等を行うために用いられてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 カテーテル
2 管状シャフト
3 ハブ
4 耐キンクプロテクタ
5 ルーメン
10 内層
11 内表面
20 補強体
21 線材
30 造影部
31 円弧部
32 非円弧部
33 第1接触部
34 第2接触部
35 平面部
36 凸部
37 凹部
37 金属シート
40 外層
41 外表面
100 管体
110 設置台
111 塗布部
120 造影性流動体
X 軸心方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9