(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137533
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】カテーテルおよび管状シャフトの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20230922BHJP
A61M 25/098 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A61M25/00 610
A61M25/00 504
A61M25/098
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043782
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】大嶽 祐八
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA02
4C267BB02
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB13
4C267BB15
4C267BB26
4C267BB40
4C267BB43
4C267CC08
4C267EE01
4C267GG04
4C267GG34
4C267HH04
(57)【要約】
【課題】製造時間を短縮できるとともに、コストを低減できるカテーテルおよび管状シャフトの製造方法を提供する。
【解決手段】先端から基端まで貫通するルーメン5を有する管状シャフト2を備えたカテーテル1であって、管状シャフト2は、ルーメン5を形成する内層10を有する管体100と、管体100の外周面に巻かれた造影部30と、を有し、造影部30は、X線不透過性を備えて管体100の外周面に巻かれた金属シート31と、X線不透過性材料および樹脂材料を含み金属シート31の一方面側に配置されて管体100の外周面に接着された造影接着剤32と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端から基端まで貫通するルーメンを有する管状シャフトを備えたカテーテルであって、
前記管状シャフトは、
前記ルーメンを形成する内層を有する管体と、前記管体の外周面に巻かれた造影部と、を有し、
前記造影部は、
X線不透過性を備えて前記管体の外周面に巻かれた金属シートと、
X線不透過性材料および樹脂材料を含み前記金属シートの一方面側に配置されて前記管体の外周面に接着された造影接着剤と、を有することを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記金属シートの厚さは、前記造影接着剤の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記金属シートの厚さは、前記造影接着剤の厚さよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記金属シートの厚さは、前記造影接着剤の厚さと等しいことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記管体は、前記内層を囲むように配置されて管状に編組された複数の線材を備える補強体を有し、
前記造影接着剤の一部は、前記複数の線材の隙間に配置されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記造影部は、前記管体の外周面に当該管体の軸心を中心に360度未満の範囲に巻かれたことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記造影部は、一方向へ長尺な帯状であり、前記管体の外周面に部分的に重複するように螺旋状に巻かれたことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記造影部の重複する部位は、当該造影部の基端側よりも先端側において多く形成されることを特徴とする請求項7に記載のカテーテル。
【請求項9】
先端から基端まで貫通するルーメンを有する管状シャフトの製造方法であって、
X線不透過性を備えた金属シートと、X線不透過性材料および樹脂材料を含み前記金属シートの一方面側に配置された造影接着剤と、を有するシート状の造影シートを、前記ルーメンを形成する内層を有する管体の外周面に巻きつけ、前記金属シートを前記造影接着剤により前記管体に接着してX線不透過性の造影部を形成することを特徴とする管状シャフトの製造方法。
【請求項10】
前記管体は、前記内層を囲むように配置されて管状に編組された複数の線材を備える補強体を有し、
前記造影部を前記管体の外周面に巻き付ける際に、前記造影接着剤の一部を、前記複数の線材の隙間に配置することを特徴とする請求項9に記載の管状シャフトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管等の管腔内で使用されるカテーテルおよび管状シャフトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外科的侵襲が非常に低いという理由から、カテーテルを用いた血管等の管腔内の治療が盛んに行われている。例えば、体内の複雑に分岐した血管へ選択的に導入して使用されるカテーテルは、一般的に、血管へあらかじめ導入されるガイドワイヤーに沿って選択的に押し込まれて、治療用の薬剤や診断用の造影剤等を基端側から先端側へ流通させる。
【0003】
造影カテーテルやサポートカテーテル等の製造には、押出被覆成形により長尺な管体を連続的に形成して加工を施す製造方法が使用される場合がある。この製造方法では、X線透視下での造影性を付与するためのX線造影マーカーをカテーテルの先端部に配置するために、金属製の造影マーカーをスウェージ加工によって管体にかしめる方法や、造影マーカーとなるものを管体に被覆してその外側を外層により覆う方法などが行われる(例えば特許文献1を参照)。特許文献1には、らせん状の造影マーカーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば押出被覆成形等により連続的に成形した管体に造影マーカーを配置する場合には、管体の成形工程に組み込まれないオフラインでの加工が必要となる。このため、造影マーカー(造影部)を配置された管状シャフトの製造時間が増加し、コストが上昇する。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、製造時間を短縮できるとともに、コストを低減できるカテーテルおよび管状シャフトの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するカテーテルは、先端から基端まで貫通するルーメンを有する管状シャフトを備えたカテーテルであって、前記管状シャフトは、前記ルーメンを形成する内層を有する管体と、前記管体の外周面に巻かれた造影部と、を有し、前記造影部は、X線不透過性を備えて前記管体の外周面に巻かれた金属シートと、X線不透過性材料および樹脂材料を含み前記金属シートの一方面側に配置されて前記管体の外周面に接着された造影接着剤と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成したカテーテルは、X線不透過性を備えた金属シートをX線不透過性材料を含む造影接着剤により管体に接着して形成されているため、管体への造影接着剤および金属シートの配置が非常に容易であることから、製造時間を短縮できるとともに、コストを低減できる。
【0009】
前記金属シートの厚さは、前記造影接着剤の厚さよりも大きくてもよい。これにより、カテーテルは、金属シートによって高いX線造影性を得ることができる。
【0010】
前記金属シートの厚さは、前記造影接着剤の厚さよりも小さくてもよい。これにより、カテーテルは、金属シートを薄く形成して管状シャフトの剛性の極端な増加を抑制できる。
【0011】
前記金属シートの厚さは、前記造影接着剤の厚さと等しくてもよい。これにより、カテーテルは、X線造影性の付与と、管状シャフトの剛性の極端な増加の抑制とを、バランスよく両立できる。
【0012】
前記管体は、前記内層を囲むように配置されて管状に編組された複数の線材を備える補強体を有し、前記造影接着剤の一部は、前記複数の線材の隙間に配置されてもよい。これにより、カテーテルは、造影接着剤の管体に対する接着強度を増加できる。また、造影接着剤の一部が複数の線材の隙間に配置されることで、補強体よりも径方向外側に配置される造影接着剤のみの層を薄肉化して管状シャフトの小径化を促進できる。
【0013】
前記造影部は、前記管体の外周面に当該管体の軸心を中心に360度未満の範囲に巻かれてもよい。これにより、造影部が周方向において重複しないため、管状シャフトの外径が大きくなることを防止できる。また、術者が、X線造影装置により得られる画像から、周方向に形成される造影部が設けられる部位と設けられない部位の濃淡を区別して把握しやすいため、カテーテルの向きを容易に把握できる。
【0014】
前記造影部は、一方向へ長尺な帯状であり、前記管体の外周面に部分的に重複するように螺旋状に巻かれてもよい。これにより、術者が、X線造影装置により得られる画像から、造影部の重複する部位と重複しない部位の濃淡を区別して把握しやすいため、カテーテルの向きを容易に把握できる。
【0015】
前記造影部の重複する部位は、当該造影部の基端側よりも先端側において多く形成されてもよい。これにより、術者がX線造影装置により得られる画像から識別しやすい造影部の重複する部位が、先端側に多く配置されるため、位置を優先的に把握することが望まれる管状シャフトの先端部の位置を、術者が効果的に把握できる。
【0016】
上記目的を達成する管状シャフトの製造方法は、先端から基端まで貫通するルーメンを有する管状シャフトの製造方法であって、X線不透過性を備えた金属シートと、X線不透過性材料および樹脂材料を含み前記金属シートの一方面側に配置された造影接着剤と、を有するシート状の造影シートを、前記ルーメンを形成する内層を有する管体の外周面に巻きつけ、前記金属シートを前記造影接着剤により前記管体に接着してX線不透過性の造影部を形成することを特徴とする。
【0017】
上記のように構成した管状シャフトの製造方法は、造影接着剤および金属シートの両方を使用することで、薄いために取り扱いが困難となり得る貼り付ける前の金属シートの形状を、造影接着剤により維持できるため、作業性が向上する。さらに、金属シートに固定された造影接着剤を管体に貼り付けるのみで造影部を管状シャフトに形成できるため、製造時間を短縮できるとともに、コストを低減できる。なお、製造されるカテーテルは、造影性を造影接着剤および金属シートの両方により付与されるため、十分な造影性を得ることができる。
【0018】
前記管体は、前記内層を囲むように配置されて管状に編組された複数の線材を備える補強体を有し、前記造影部を前記管体の外周面に巻き付ける際に、前記造影接着剤の一部を、前記複数の線材の隙間に配置してもよい。これにより、本製造方法は、造影接着剤の管体に対する接着強度を増加できる。また、造影接着剤の一部が複数の線材の隙間に配置されることで、補強体よりも径方向外側に配置される造影接着剤のみの層を薄肉化して管状シャフトの小径化を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係るカテーテルを示す平面図である。
【
図2】実施形態に係るカテーテルの先端部を示す断面図である。
【
図4】実施形態に係るカテーテルの外層を透過して示す平面図である。
【
図5】管体に造影シートを取り付けている状態を示す断面図である。
【
図6】第1変形例であるカテーテルの外層を透過して示す平面図である。
【
図7】第2変形例であるカテーテルの外層を透過して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法は、説明の都合上、誇張されて実際の寸法とは異なる場合がある。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。本明細書において、カテーテルの生体管腔に挿入する側を「先端側」、操作する側を「基端側」と称することとする。
【0021】
本実施形態に係るカテーテル1は、経皮的に腕の動脈や下肢の動脈に挿入されて、治療や診断等を行うために用いられる。カテーテル1は、
図1に示すように、長尺な管状シャフト2と、管状シャフト2の基端に連結されるハブ3と、管状シャフト2およびハブ3の連結部位に設けられる耐キンクプロテクタ4とを有している。
【0022】
管状シャフト2は、
図1~4に示すように、当該管状シャフト2の軸心方向Xに沿って長尺な、可撓性を有する管状の部材であり、基端から先端にかけて内部にルーメン5が形成されている。ルーメン5は、カテーテル1の血管への挿入時に、ガイドワイヤーが挿通される。また、ルーメン5は、薬液や塞栓物質、造影剤、医療器具等の通路として用いることもできる。
【0023】
管状シャフト2の有効長は、特に限定されないが、例えば100mm~3000mmである。なお、管状シャフト2の有効長は、血管やシース等内へ挿入可能な部位の長さである。本実施形態において、有効長は、耐キンクプロテクタ4の最先端から管状シャフト2の最先端までの長さである。
【0024】
管状シャフト2は、複数の層で構成されており、ルーメン5の内表面11を形成する内層10と、内層10の外側に形成される補強体20と、内層10および補強体20の外側に配置される造影部30と、内層10および補強体20の外側に形成される外層40とを備えている。
【0025】
内層10は、内部にルーメン5が形成されている。内層10の内径は、特に限定されないが、例えば0.3mm~2.8mmである。内層10の構成材料は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等を適用でき、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)等の低摩擦材料等が好ましい。
【0026】
補強体20は、内層10の外周囲に、複数の線材21を、隙間を有するように管状に編組して形成される。補強体20は、同一方向の横巻きや、右巻き・左巻き等、巻き方向を変えながら線材21を巻きつけてもよく、また、巻きピッチ、格子間距離、周方向に対する傾斜角度等を位置によって変更してもよく、構成は特に限定されない。
【0027】
補強体20の線材21の線径(直径)は、特に限定されないが、例えば0.03mm~0.08mmである。
【0028】
補強体20に用いられる線材21は、ステンレス鋼、白金(Pt)・タングステン(W)等の金属線、樹脂繊維、炭素繊維、ガラス繊維等を適用でき、または、これらの線材21を複数併用してもよい。
【0029】
造影部30は、X線不透過性を備えた金属シート31と、金属シート31の内面側に配置される造影接着剤32とを有する。造影部30は、補強体20の外周面に、管状シャフト2の軸心を中心に360度未満の角度で巻かれている。したがって、造影部30は、管状シャフト2の軸心を中心とする放射方向である径方向に重複しない。すなわち、造影部30は、管状シャフト2の軸心と直交する断面において、C字状に形成される。このため、管状シャフト2の外径が大きくなることが抑制される。なお、造影部30は、補強体20ではなく内層10の外周面に巻かれてもよい。
【0030】
金属シート31は、薄く柔軟なシート状(箔状)である。金属シート31の構成材料は、X線不透過性の金属であれば特に限定されず、例えば白金、金、銀、タングステン、イリジウムまたはこれらの合金等である。
【0031】
造影接着剤32は、樹脂材料に微小なX線不透過性材料が分散するように混錬されて形成される。造影接着剤32は、金属シート31の内面側(管状シャフト2の軸心に向く側)の略全面に付着するように配置されている。造影接着剤32に含まれるX線不透過性材料の構成材料は、白金、金、銀、タングステン、イリジウムまたはこれらの合金による金属粉末、硫酸バリウム、酸化ビスマス、またはそれらのカップリング化合物のようなX線造影剤等である。造影接着剤32に含まれる樹脂材料は、例えばエポキシ樹脂等である。造影接着剤32に含まれる樹脂材料は、接着剤として機能すれば、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよい。造影性流動体120は金粉末を含む導電性インク、あるいは導電性はんだなどでもよい。
【0032】
金属シート31の厚み(径方向の厚み)T1は、好ましくは0.01μm~100μmであり、より好ましくは5μm~50μmであり、さらに好ましくは10μm~30μmである。造影接着剤32の厚み(径方向の厚み)T2は、好ましくは0.01μm~100μmであり、より好ましくは5μm~50μmであり、さらに好ましくは10μm~30μmである。金属シート31の厚みT1は、造影接着剤32の厚みT2よりも大きくてもよく、造影接着剤32の厚みT2よりも小さくてもよく、造影接着剤32の厚みT2と同等でもよい。
【0033】
外層40は、内層10、補強体20および造影部30の外周囲を覆う管状の部材である。外層40は、管状シャフト2の径方向外側の面である外表面41を形成する。
【0034】
外層40の構成材料は、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、或いはこれら二種以上の混合物等)、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリイミド、フッ素樹脂等の高分子材料或いはこれらの混合物等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を適用できる。
【0035】
ハブ3は、管状シャフト2の基端部が接着剤、熱融着または止具(図示せず)等により液密に固着されている。ハブ3は、ルーメン5内へのガイドワイヤーや医療器具の挿入口、ルーメン5内への薬液や塞栓物質、造影剤等の注入口等として機能し、また、カテーテル1を操作する際の把持部としても機能する。ハブ3の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート-ブチレン-スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂が好適に使用できる。
【0036】
耐キンクプロテクタ4は、管状シャフト2の周囲を囲むように設けられる弾性材料からなり、管状シャフト2とハブ3の連結部位における管状シャフト2のキンクを抑制する。耐キンクプロテクタ4の構成材料は、例えば、天然ゴム、シリコーン樹脂等が好適に使用できる。
【0037】
次に、本実施形態に係る管状シャフト2の製造方法について説明する。
【0038】
まず、製造者は、内層10の内径と等しい外径の長尺な芯線を準備する。次に、芯線上に内層10を形成する。内層10は、押出成形により形成されてもよく、またはディップ成形によって形成されてもよい。
【0039】
この後、内層10上の少なくとも一部を覆うように補強体20を形成する。補強体20は、編組機(ブレーダー)を用いて、内層10上に、複数の線材21を連続的に巻きつけて形成される。次に、内層10および補強体20を有する管状部品を、軸心方向Xにおいて所定の長さで切断し、
図5に示すように、管体100を形成する。補強体20はブレイド(編組)以外に、一方向巻きコイル、長軸に平行な線材あるいはこれらの組み合わせでもよくでもよく、補強体を有しないものでもよい。
【0040】
次に、金属シート31の一方面側に造影接着剤32が付着された帯状の造影シート101を準備し、造影接着剤32が管体100の外周面に接着するように、造影シート101を管体100の所定の位置に巻き付ける。造影シート101は、例えば、一定幅でロール状に巻かれて提供されれば、所定の長さを切り出して使用することが容易である。造影接着剤32は、熱可塑性樹脂にX線不透過性材料からなる微小な多数の粒子を混ぜたものであれば、管体100に接着された後に、または管体100に接着される前や接着される途中に加熱されることで流動的となり、補強体20の複数の線材21の隙間に入り込みつつ、内層10および補強体20に付着する。この後に、造影接着剤32は冷却あるいは硬化し、管体100に強固に接着される。金属シート31は、流動的となった造影接着剤32の流出や、造影接着剤32が外層40の樹脂材料と混ざることを抑制する。
【0041】
次に、内層10、補強体20および造影部30の外側に、
図2~4に示すように、外層40を形成する。これにより、管状シャフト2が完成する。外層40の形成方法は、特に限定されない。例えば、外層40は、押出成形により形成されてもよく、ディップ成形により形成されてもよい。または、外層40は、内層10、補強体20および造影部30の外側に外層40の素材となる管状部材を配置した後に、管状部材に熱収縮チューブを被せて加熱することで形成されてもよい。管状部材は、加熱により軟化または溶融しつつ、熱収縮チューブの収縮力によって内層10、補強体20および造影部30の外側に密着して接合される。この後、熱収縮した熱収縮チューブは取り除かれる。
【0042】
外層40を形成した後、芯線を内層10のルーメン5から引き抜く。この後、管状シャフト2にハブ3、耐キンクプロテクタ4を取り付け、必要に応じて他の部材(例えば、先端チップ)を取り付けて、カテーテル1が完成する。
【0043】
以上のように、本実施形態に係るカテーテル1は、先端から基端まで貫通するルーメン5を有する管状シャフト2を備えたカテーテル1であって、管状シャフト2は、ルーメン5を形成する内層10を有する管体100と、管体100の外周面に巻かれた造影部30と、を有し、造影部30は、X線不透過性を備えて管体100の外周面に巻かれた金属シート31と、X線不透過性材料および樹脂材料を含み金属シート31の一方面側に配置されて管体100の外周面に接着された造影接着剤32と、を有する。
【0044】
上記のように構成したカテーテル1は、X線不透過性を備えた金属シート31をX線不透過性材料を含む造影接着剤32により管体100に接着して形成されているため、管体100への造影接着剤32および金属シート31の配置が非常に容易であることから、製造時間を短縮できるとともに、コストを低減できる。また、カテーテル1は、造影接着剤32および金属シート31の両方によりX線造影性を付与されるため、金属シート31を薄く形成して管状シャフト2の剛性の極端な増加を抑制しつつ、十分なX線造影性を得ることができる。
【0045】
金属シート31の厚さは、造影接着剤32の厚さよりも大きくてもよい。これにより、カテーテル1は、金属シート31によって高いX線造影性を得ることができる。
【0046】
金属シート31の厚さは、造影接着剤32の厚さよりも小さくてもよい。これにより、カテーテル1は、金属シート31を薄く形成して管状シャフト2の剛性の極端な増加を抑制できる。
【0047】
金属シート31の厚さは、造影接着剤32の厚さと等しくてもよい。これにより、カテーテル1は、X線造影性の付与と、管状シャフト2の剛性の極端な増加の抑制とを、バランスよく両立できる。
【0048】
管体100は、内層10を囲むように配置されて管状に編組された複数の線材21を備える補強体20を有し、造影接着剤32の一部は、複数の線材21の隙間に配置される。これにより、カテーテル1は、造影接着剤32の管体100に対する接着強度を増加できる。また、造影接着剤32の一部が複数の線材21の隙間に配置されることで、補強体20よりも径方向外側に配置される造影接着剤32のみの層を薄肉化して管状シャフト2の小径化を促進できる。
【0049】
造影部30は、管体100の外周面に当該管体100の軸心を中心に360度未満の範囲に巻かれている。これにより、造影部30(金属シート31)が周方向において重複しないため、管状シャフト2の外径が大きくなることを防止できる。また、術者が、X線造影装置により得られる画像から、周方向に形成される造影部30が設けられる部位と設けられない部位の濃淡を区別して把握しやすいため、カテーテル1の向きを容易に把握できる。
【0050】
また、本実施形態に係るカテーテル1の管状シャフト2の製造方法は、先端から基端まで貫通するルーメン5を有する管状シャフト2の製造方法であって、X線不透過性を備えた金属シート31と、X線不透過性材料および樹脂材料を含み金属シート31の一方面側に配置された造影接着剤32と、を有するシート状の造影シート101を、ルーメン5を形成する内層10を有する管体100の外周面に巻きつけ、金属シート31を造影接着剤32により管体100に接着してX線不透過性の造影部30を形成することを特徴とする。
【0051】
上記のように構成した管状シャフト2の製造方法は、造影接着剤32および金属シート31の両方を使用することで、薄いために取り扱いが困難となり得る貼り付ける前の金属シート31の形状を、造影接着剤32により維持できるため、作業性が向上する。さらに、金属シート31に固定された造影接着剤32を管体100に貼り付けるのみで造影部30を管状シャフト2に形成できるため、管体100の成形工程に組み込まれないオフラインでの加工が必要であっても、製造時間を短縮できるとともに、コストを低減できる。また、本製造方法は、造影接着剤32および金属シート31の両方によりX線造影性を付与するため、金属シート31を薄く形成して管状シャフト2の剛性の極端な増加を抑制しつつも、十分な造影性を付与できる。
【0052】
管体100は、内層10を囲むように配置されて管状に編組された複数の線材21を備える補強体20を有し、造影部30を管体100の外周面に巻き付ける際に、造影接着剤32の一部を、複数の線材21の隙間に配置する。これにより、本製造方法は、造影接着剤32の管体100に対する接着強度を増加できる。また、造影接着剤32の一部が複数の線材21の隙間に配置されることで、補強体20よりも径方向外側に配置される造影接着剤32のみの層を薄肉化して管状シャフト2の小径化を促進できる。
【0053】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、
図6に示す第1変形例のように、造影部30は、管体100の外周面に当該管体100の軸心を中心に螺旋状に巻かれてもよい。螺旋状の造影部30は、管体100の軸心を中心に360度以上の範囲に巻かれてもよい。これにより、造影部30(金属シート31)が周方向において重複しないため、管状シャフト2の外径が大きくなることを防止できる。また、術者が、X線造影装置により得られる画像から、造影部30が設けられる螺旋状の部位と設けられない部位の濃淡を区別して把握しやすいため、カテーテル1の向きを容易に把握できる。
【0054】
また、
図7に示す第2変形例のように、造影部30は、一方向へ長尺な帯状であり、管体100の外周面に部分的に重複するように螺旋状に巻かれてもよい。すなわち、造影部30の螺旋のピッチが、基端へ向かって徐々に大きくなっている。造影部30の重複する部位33では、径方向に、金属シート31および造影接着剤32が交互に配置される。造影部30の重複する部位33は、重複しない1重の部位34よりも高いX線造影性を備える。これにより、術者が、X線造影装置により得られる画像から、造影部30の重複する部位33と、重複しない1重の部位34と、螺旋の隙間に位置して造影部30が設けらない部位35の濃淡を区別して把握しやすいため、特に外径が7Fr以上で肉厚のカテーテル1の向きを容易に把握できる。
【0055】
そして、造影部30の重複する部位33は、当該造影部30の基端側よりも先端側において多く形成される。これにより、術者がX線造影装置により得られる画像から識別しやすい造影部30の重複する部位33が、先端側に多く配置されるため、位置を優先的に把握することが望まれる管状シャフト2の先端部の位置を、術者が効果的に把握できる。なお、造影部30の重複する部位33は、軸心に沿って均一に形成されてもよく、または先端側よりも基端側において多く形成されてもよい。
【0056】
また、造影部30は、3重以上で巻かれて重複する部位を有してもよい。
【0057】
また、管状シャフト2に配置される造影部30は、軸心方向Xに1か所に配置されるが、軸心方向Xに2か所以上に配置されてもよい。
【0058】
また、造影部30は、補強体20に接触しなくてもよい。また、造影部30は、外層40の内側ではなく、外層40の外周面を覆うように形成されてもよい。
【0059】
また、カテーテル1は、冠動脈、腹部動脈、下肢末梢動脈、脳血管に至る血管あるいは脳血管、静脈などの血管のほか、胆管、気管、食道、尿道、またはその他の生体管腔内や体腔内に挿入されて、治療や診断等を行うために用いられてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 カテーテル
2 管状シャフト
3 ハブ
4 耐キンクプロテクタ
5 ルーメン
10 内層
11 内表面
20 補強体
21 線材
30 造影部
31 金属シート
32 造影接着剤
40 外層
41 外表面
100 管体
101 造影シート
X 軸心方向