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特開2023-137535水電解スタックの荷重制御方法、水素製造方法、水電解装置
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  • 特開-水電解スタックの荷重制御方法、水素製造方法、水電解装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137535
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】水電解スタックの荷重制御方法、水素製造方法、水電解装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/02 20210101AFI20230922BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20230922BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20230922BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20230922BHJP
   C25B 9/77 20210101ALI20230922BHJP
   C25B 15/00 20060101ALI20230922BHJP
   C25B 15/06 20060101ALI20230922BHJP
   C25B 9/60 20210101ALI20230922BHJP
【FI】
C25B15/02
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/23
C25B9/77
C25B15/00 302Z
C25B15/06
C25B9/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043786
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】濱口 豪
(72)【発明者】
【氏名】岩田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】香山 智之
(72)【発明者】
【氏名】池田 飛展
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021DC01
4K021DC03
(57)【要約】
【課題】荷重管理をより適正に行い性能を維持することを可能とする。
【解決手段】水電解スタックの内側の温度、電気抵抗、及び、水の流量の少なくとも1つから得られる水電解スタックの内側の状態から適正な荷重を判定し、水電解スタックへの荷重が適正な荷重となるように負荷を変更する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子電解質膜を挟んで一方側に配置されたアノード及び他方側に配置されたカソードを有する水電解セルが複数積層されて収納された水電解スタックの荷重を制御する方法であって、
前記水電解スタックの内側の温度、電気抵抗、及び、水の流量の少なくとも1つから得られる前記水電解スタックの内側の状態から適正な荷重を判定し、
前記水電解スタックへの荷重が前記適正な荷重となるように負荷を変更する、
水電解スタックの荷重制御方法。
【請求項2】
前記水電解セルによる通常の水素製造に加えて、請求項1に記載の水電解スタックの荷重制御による荷重制御を定期的に行うことにより水素製造を行う、水素製造方法。
【請求項3】
固体高分子電解質膜を挟んで一方側に配置されたアノード及び他方側に配置されたカソードを有する水電解セルが複数積層されて収納された水電解スタックを備える水電解装置であって、
前記水分解スタックには前記水電解スタックを押圧して前記水電解セルに荷重を負荷する押圧器と、
前記水電解スタックの内側の温度を測定するセンサ、電気抵抗センサ、及び、水の流量を得るセンサの少なくとも1つのセンサと、
前記押圧器、及び、前記センサからの信号を受信可能であるとともに、前記押圧器に送信可能に接続された制御器と、を備え、
前記制御器は、前記センサから前記水電解スタックの内側の温度、電気抵抗、及び、水の流量の少なくとも1つから得られる前記水電解スタックの内側の状態から適正な荷重を判定し、前記水電解スタックへの荷重が前記適正な荷重となるように前記押圧器に負荷の変更を指令する、
水電解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は水分解に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のネジ軸で締結したスタック構造であって、各ネジの軸力を均一化するため、複数の各ネジ軸に、それぞれ荷重計またはひずみ計を設置することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-147562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、荷重管理が初期状態しかなく、環境条件や運転条件、経時劣化に対して荷重管理が追従できず、リークや早期劣化を生じる虞がある。例えば荷重が不足するとシール性の低下よりリークを生じたり、水電解セルを構成する各層の密着度が低下して水電解の性能が低下したりする。一方、荷重が大きくなりすぎると水電解セルの層に負担がかかり破損を生じ、早期に劣化する虞がある。
【0005】
そこで上記問題に鑑み、荷重管理をより適正に行い性能を維持することを可能とする水電解スタックの荷重制御方法を提供することを目的とする。またこれを可能とする水素製造法法、水電解装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、固体高分子電解質膜を挟んで一方側に配置されたアノード及び他方側に配置されたカソードを有する水電解セルが複数積層されて収納された水電解スタックの荷重を制御する方法であって、水電解スタックの内側の温度、電気抵抗、及び、水の流量の少なくとも1つから得られる水電解スタックの内側の状態から適正な荷重を判定し、水電解スタックへの荷重が適正な荷重となるように負荷を変更する、水電解スタックの荷重制御方法を開示する。
【0007】
また、水電解セルによる通常の水素製造に加えて、上記方法による荷重制御を定期的に行うことにより水素製造を行う、水素製造方法を開示する。
【0008】
また、本願は、固体高分子電解質膜を挟んで一方側に配置されたアノード及び他方側に配置されたカソードを有する水電解セルが複数積層されて収納された水電解スタックを備える水電解装置であって、水分解スタックには水電解スタックを押圧して水電解セルに荷重を負荷する押圧器と、水電解スタックの内側の温度を測定するセンサ、電気抵抗センサ、及び、水の流量を得るセンサの少なくとも1つのセンサと、押圧器、及び、センサからの信号を受信可能であるとともに、押圧器に送信可能に接続された制御器と、を備え、制御器は、センサから水電解スタックの内側の温度、電気抵抗、及び、水の流量の少なくとも1つから得られる水電解スタックの内側の状態から適正な荷重を判定し、水電解スタックへの荷重が適正な荷重となるように押圧器に負荷の変更を指令する、水電解装置を開示する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、水電解セル、水電解スタックの荷重管理をより適正に行い性能を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は水電解装置10の構成を説明する概念図である。
図2図2は水電解セル21の構成を説明する概念図である。
図3図3は水電解スタック20の構成を説明する概念図である。
図4図4はコンピュータ60(制御器60)の概念図である。
図5図5は水電解スタックの荷重制御方法S10の流れを示す図である。
図6図6は水電解スタックの荷重制御方法S20の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.水電解装置
図1には1つの形態にかかる水電解装置10を概念的に表した。
本形態で水電解装置10は、水電解スタック20、酸素側経路30、水素側経路40、及び制御器60を有している。水電解装置10では、水電解スタック20に具備された水電解セル21に対して酸素側経路30から純水を供給して通電することで水を水素と酸素とに分解し、水素を得て水素側経路40に分離する。
【0012】
1.1.酸素側経路(給水側経路)
酸素側経路(給水側経路)30は、水電解スタック20に対して純水を供給し酸素を得る、配管を含む経路である。酸素側経路30ではポンプ31により水電解スタック20に向けて純水を供給し、発生した酸素及び使用されなかった水は水電解スタック20から排出されて気液分離器32に供給される。気液分離器32では純水と酸素とが分離される。分離された酸素は排出され、純水は再度ポンプ31に供給される。なお、不足した純水はポンプ33から気液分離器32に供給される。これらの各機器が配管により接続されている。
【0013】
1.2.水素側経路
水素側経路40は、水電解スタック20で分離した水素を取り出す配管を含む経路である。水素側経路40では水電解スタック20から排出された水素及び水(純水)が気液分離器41に供給される。気液分離器41では水と水素とが分離される。分離された水素は集められ、水はポンプ42で酸素側経路30の気液分離器32に送られて再び利用される。これらの各機器が配管により接続されている。
【0014】
1.3.水電解セル
水電解セル21は純水を水素と酸素とに分解するための単位要素であり、水分解セル21が複数積層されて水電解スタック20に配置されている。図2に水電解セル21の形態を概念的に示した。
【0015】
水電解セル21は複数の層からなり、固体高分子電解質膜22を挟んで一方が酸素発生極(アノード)、他方が水素発生極(カソード)となる。アノードは固体高分子電解質膜22側からアノード触媒層23、アノードガス拡散層24、アノードセパレータ25がこの順に積層されている。一方、カソードは固体高分子電解質膜11側からカソード触媒層26、カソードガス拡散層27、カソードセパレータ28をこの順に備えている。ここで、水電解膜電極接合体は、固体高分子電解質膜22、固体高分子電解質膜22のアノード側に配置されたアノード触媒層23、及び、固体高分子電解質膜22のカソード側に配置されたカソード触媒層26の積層体を意味する。水電解膜電極接合体の厚さは0.4mm程度が典型的であり、水電解セル21の厚さは1.3mm程度が典型的である。
各層は例えば次の通りである。
【0016】
1.3.1.固体高分子電解質膜
固体高分子電解質膜22はプロトン伝導性を有する膜の1つの態様である。本形態で固体高分子電解質膜22を構成する材料(電解質)は固体高分子材料であり、例えばフッ素系樹脂や炭化水素系樹脂材料等により形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜が挙げられる。これは湿潤状態で良好なプロトン伝導性(電気伝導性)を示す。より具体的にはパーフルオロ系電解質であるナフィオン(Nafion、登録商標)による膜が挙げられる。
固体高分子電解質膜22の厚さは特に限定されることはないが、200μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは30μm以下である。
【0017】
1.3.2.アノード触媒層
アノード触媒層(酸素極触媒層)23は、Pt、Ru、Ir等の貴金属触媒及びその酸化物を少なくとも1つ以上含む触媒を有する層である。触媒としてより具体的には、Pt、イリジウム酸化物、ルテニウム酸化物、イリジウムルテニウム酸化物、又は、これらの混合物が挙げられる。
イリジウム酸化物としては、酸化イリジウム(IrO、IrO)、イリジウムスズ酸化物、イリジウムジルコニウム酸化物等が挙げられる。
ルテニウム酸化物としては、酸化ルテニウム(RuO、Ru)、ルテニウムタンタル酸化物、ルテニウムジルコニウム酸化物、ルテニウムチタン酸化物、ルテニウムチタンセリウム酸化物等が挙げられる。
イリジウムルテニウム酸化物としては、イリジウムルテニウムコバルト酸化物、イリジウムルテニウムスズ酸化物、イリジウムルテニウム鉄酸化物、イリジウムルテニウムニッケル酸化物等が挙げられる。
【0018】
1.3.3.アノードガス拡散層
アノードガス拡散層24は、公知のものを用いることができるが、ガス透過性及び導電性を有する部材によって構成されている。具体的には金属繊維(例えばチタン繊維)または金属粒子(チタン粒子)などの焼結体からなる多孔質導電性部材等を挙げることができる。
【0019】
1.3.4.アノードセパレータ
アノードセパレータ25は、アノードガス拡散層24に純水を供給するとともに水が分解して発生した酸素が流れる流路25aを備える部材である。
【0020】
1.3.5.カソード触媒層
カソード触媒層26に含まれる触媒は、公知の触媒を用いることができ、例えば白金、白金被覆チタン、白金担持カーボン、パラジウム担持カーボン、コバルトグリオキシム、ニッケルグリオキシム等を挙げることができる。
【0021】
1.3.6.カソードガス拡散層
カソードガス拡散層27は、公知のものを用いることができるが、ガス透過性及び導電性を有する部材によって構成されている。具体的にはカーボンクロスやカーボンペーパー等の多孔質部材等を挙げることができる。
【0022】
1.3.7.カソードセパレータ
カソードセパレータ28は、水素イオンが還元されて発生した水素、及び、水素イオンが固体高分子電解質膜22を透過するときにこれに随伴した水が流れる流路28aを備える部材である。
【0023】
1.3.8.水電解セルによる水素の生成
以上説明した水電解セル21により次のように純水から水素及び酸素が生成される。従って、本開示の水電解セル及び水電解スタックは上記の他にも水素を生成するために必要な公知の部材や構成を備えることができる。
酸素側経路30からアノードセパレータ25の流路25aを通してアノード(酸素発生極)に供給された純水(HO)は、アノードとカソードとの間に通電することで、電位がかかったアノード触媒層23で酸素、電子及びプロトン(H)に分解される。このときプロトンは固体高分子電解質膜22を通りカソード触媒層26に移動する。一方、アノード触媒層23で分離された電子は外部回路を通りカソード触媒層26に達する。そして、カソード触媒層26にてプロトンが電子を受け取り水素(H)が発生する。発生した水素はカソードセパレータ28に達して流路28aから排出され、水素側経路40に送られる。なお、アノード触媒層23で発生した酸素はアノードセパレータ25に達して流路25aから排出され、酸素側経路30に送られる。
【0024】
1.4.水電解スタック
水電解スタック20は、上記した水電解セル21が複数(50枚~400枚程度)重ねられてなる部材であり、複数の水電解セル21に通電して水素及び酸素を生成する。また、本形態で水電解スタックは荷重を制御する手段を具備している。図3にその構成の概要を示した。
【0025】
本形態で水電解スタック30は、スタックケース50、エンドプレート51、水電解セル21、付勢部材52、押圧プレート53、ロードセル54、押圧器55、及び、各種センサ(不図示)を備えている。ここで水電解セル21は上記の通りである。
【0026】
スタックケース50は、重ねられた複数の水電解セル21及び付勢部材52をその内側に収納する筐体である。本形態でスタックケースは四角形の筒状で両端が開口しているとともに、一方の開口の縁に沿って開口とは反対側に板状の片が張り出し、フランジ50aを形成している。
【0027】
エンドプレート51は板状の部材であり、スタックケース50の開口のうちフランジ50aが形成された側の開口を塞ぐ。エンドプレート51はスタックケース50のフランジ50aとの重なり部分をボルト及びナット等により固定され、スタックケース50にフタをするように配置される。
【0028】
付勢部材52は、複数の水電解セル21とともにスタックケース50の内側に収まり、水電解セル21の積層体に対してその積層方向に押圧力を付与する。付勢部材52として例えば皿バネ等を挙げることができる。
【0029】
押圧プレート53は板状の部材であり、スタックケース50の開口のうちエンドプレート51が配置された側の開口とは反対側の開口を塞ぐ。本形態で押圧プレート53は図3からわかるように、スタックケース50の内側に配置され、付勢部材52に重ねられる。これにより押圧プレート53は水電解セル21の積層方向に移動可能とされる。
【0030】
ロードセル54は荷重を検知するセンサであり、水電解セル21が受ける荷重を測定して出力することができるように構成されている。ロードセル54は水電解セル21が受ける荷重を得ることができれば種類や配置される位置は特に限定されるものではなく、例えばひずみゲージ型のロードセルを適用することができる。
【0031】
押圧器55は押圧プレート53に対して押圧力を付与する機器であり、押圧力の負荷及び除荷ができるように構成されている。本形態ではサーボモータ55aにネジ軸55bが取り付けられた形態であり、サーボモータ55aによりネジ軸55bが回転し、ネジ軸55bが軸線方向に移動することで押圧プレート53を押圧し押圧力を負荷したり除荷したりする。
【0032】
不図示の各種センサは通常の水電解スタックに配置されているセンサであり、これには、水電解スタック20内の温度を得るセンサ、水電解セル21の積層体の電気抵抗を得るセンサ、供給される純水の流量を得るセンサを挙げることができる。
【0033】
1.5.制御器
制御器60は、本形態の水電解スタックの荷重制御方法を水電解装置10で行うための制御器である。制御器の態様は特に限定されることはないが、典型的にはコンピュータにより構成することができる。本形態では制御器60は押圧器55のサーボモータ55a、ロードセル54、及び、各種センサに電気的に接続され、ロードセル54、各種センサの測定結果を得るとともに、これに基づいてサーボモータ55aに指令をすることができるように構成されている。図4に制御器60としてのコンピュータ60の構成例を概念的に示した。
【0034】
コンピュータ60は、プロセッサーであるCPU(Central Processing Unit)61、作業領域として機能するRAM(Random Access Memory)62、記憶媒体としてのROM(Read-Only Memory)63、有線、無線を問わず情報をコンピュータ60に受け入れるインターフェイスである受信部64、及び、有線、無線を問わず情報をコンピュータ60から外部に送るインターフェイスである出力部65を備える。
受信部64にはロードセル54、各種センサが電気的に接続され、それぞれの値(圧力、温度、流量等)を信号として受信できるように構成されている。
一方、出力部65にはサーボモータ55aが電気的に接続され、コンピュータ60からの信号によりネジ軸55bを回転させる。
【0035】
コンピュータ60には、本開示の水電解スタックの荷重制御方法の過程を具体的な指令とし、これを実行するためのコンピュータプログラムが保存されている。コンピュータ60では、ハードウェア資源としてのCPU61、RAM62、及び、ROM63と、コンピュータプログラムとが協働する。具体的には、CPU61が、受信部64を介して取得したロードセル54、各種センサからの値を表す信号に基づきROM63に記録されたコンピュータプログラムを作業領域として機能するRAM62で実行することによって機能を実現する。CPU61が取得又は生成した情報はRAM62に格納される。また、本開示の水電解スタックの荷重制御方法の過程に基づき必要に応じて出力部65を介してサーボモータ55aに回転のための信号を送信する。
具体的な本開示の水電解スタックの荷重制御方法の内容については次に説明する。
【0036】
2.水電解スタックの荷重制御方法
2.1.第1の形態にかかる水電解スタックの荷重制御方法
図5に、第1の形態にかかる、水電解スタックの荷重制御方法S10(以下、「荷重制御S10」と記載することがある。)の流れを示す。図5からわかるように、荷重制御方法S10は、過程S11~過程S16を含んでいる。上記した制御器60に保存されるコンピュータプログラムは当該荷重制御方法S10の各過程を実行するための具体的なコンピュータに対する指令により構成されている。
【0037】
2.1.1.過程S11
過程S11ではロードセル53から水電解セル21に負荷されている荷重を取得する。
【0038】
2.1.2.過程S12
過程S12では各種センサから情報を取得する。具体的には水電解スタック21内の温度、水電解セルの積層体の電気抵抗、供給される純水の流量から選ばれる少なくとも1つを挙げることができる。
【0039】
2.1.3.過程S13
過程S13では制御器60で、過程S11で検知した荷重が適正範囲内であるかを判定する。この時には過程S12で得た値、及び、運転状況が考慮され、予め設定された荷重と対比して、当該荷重がその範囲内に収まっているかの判定が行われる。
過程S13でYesの場合には適正なので過程S11に戻る。
過程S13でNoの場合には不適正なので過程S14に進む。
【0040】
2.1.4.過程S14~過程S16
過程S14では、適正範囲を外れた荷重が過荷重であるかを判定する。Noである場合には過程S15に進み、制御器60が、負荷を増大させるようにサーボモータ55aを作動させる。Yesである場合には過程S16に進み、制御器60が、負荷を軽減させるようにサーボモータ55bを作動させる。
そして、再び過程S11に戻る。
【0041】
2.2.第2の形態にかかる水電解スタックの荷重制御方法
図6に、第2の形態にかかる、水電解スタックの荷重制御方法S20(以下、「荷重制御S20」と記載することがある。)の流れを示す。図6からわかるように、荷重制御方法S20は、過程S21~過程S26を含んでいる。上記した制御器60に保存されるコンピュータプログラムは当該荷重制御方法S20の各過程を実行するための具体的なコンピュータに対する指令により構成されている。
【0042】
2.2.1.過程S21
過程S21ではサーボモータ55aの現時点における回転角を取得する。
【0043】
2.2.2.過程S22
過程S22では各種センサから情報を取得する。具体的には水電解スタック20内の温度、水電解セル21の積層体の電気抵抗、及び、供給される純水の流量から選ばれる少なくとも1つを挙げることができる。
【0044】
2.2.3.過程S23
過程S23では制御器60で、過程S21で得たサーボモータの回転角が適正範囲内であるかを判定する。この時には過程S22で得た値、及び、運転状況が考慮され、予め設定された回転角と荷重との関係を対比して、当該回転角における荷重が適正範囲内に収まっているかの判定が行われる。
過程S23でYesの場合には適正なので過程S21に戻る。
過程S23でNoの場合には不適正なので過程S24に進む。
【0045】
2.2.4.過程S24~過程S26
過程S24では、適正範囲を外れた荷重に相当する回転角であるかを判定する。
Noである場合には過程S25に進み、制御器60が、負荷を増大させるようにサーボモータ55aを作動させる。
Yesである場合には過程S26に進み、制御器60が、負荷を軽減させるようにサーボモータ55aを作動させる。
そして、再び過程S21に戻る。
【0046】
3.効果等
本開示によれば、水電解装置において水電解スタックの荷重を適正に保つことができ、リークや早期劣化を抑制することができる。特に、水電解装置の稼働中における状況の変化に追随して荷重を調整することができるので、その効果をより高いものとなる。また、制御器を用いることでこのような制御がコンピュータプログラムにより自動に可能となる。
【0047】
また、水電解セルによる通常の水素製造に加えて、上記の水電解スタックの荷重制御による荷重制御を定期的に行うことにより水素製造を行うこともできる。
【符号の説明】
【0048】
10 水電解装置
20 水電解スタック
21 水電解セル
30 酸素側経路(給水側経路)
40 水素側経路
54 ロードセル
55a サーボモータ
55b ネジ軸
60 制御器
図1
図2
図3
図4
図5
図6